2014年01月26日(日)09:16 
┌──────今日の注目の人───────┐



  「“分かち合い”の精神を
   教えてくれた靴磨きの少年」
         

     
 ジョージ・アリヨシ(第3代ハワイ州知事)


   ※『致知』2014年2月号
     連載「私の座右銘」より


└────────────────────┘


私が最初に日本の地を踏んだのは1945年、
第二次世界大戦が終わって間もなくのことでした。


アメリカ陸軍に入隊したばかりの頃で、
焼け残った東京丸の内の旧郵船ビルを兵舎にして
GHQ(連合国軍総司令部)の通訳としての
活動を行ったのです。


私は日系アメリカ人です。
両親はともに九州の人で、福岡出身の父は
力士を辞めた後に貨物船船員となり、
たまたま寄港したハワイが好きになってそのまま定住した、
という異色の経歴の持ち主。


ここで熊本出身の母と出会って結婚し
私が誕生しました。


私は高校を出て陸軍情報部日本語学校に
学んでいたことが縁で、
通訳として日本に派遣されることになりました。


東京で最初に出会った日本人は、
靴を磨いてくれた7歳の少年でした。


私は思わず、

「君は子供なのに、
 どうしてそういうことをやっているの」

と質問しました。


少し言葉を交わすうちに、
彼が戦争で両親を亡くし、
僅かな生活の糧を得るために
この仕事をしていることを知りました。


その頃の日本は厳しい食糧難に喘いでいました。
それに大凶作が重なり1千万人の日本人が
餓死すると見られていました。


少年はピンと姿勢を伸ばし、
はきはきした口調で質問に答えてくれましたが、
空腹であるとすぐに分かりました。


兵舎に戻った私は昼食のパンに
ジャムとバターを塗ってナプキンで包み、
他の隊員に分からないよう
ポケットに入れて少年のもとに走り、
そっと手渡しました。


少年は

「ありがとうございます。
 ありがとうございます」

と何度も頭を下げた後、
それを手元にあった箱に入れました。


口に入れようとしないことを
不思議に思って、

「おなかが空いていないのか」

と尋ねると、
彼はこう答えたのです。


「僕もおなかが空いています。
 だけど家にいる3歳のマリコも
 おなかを空かせているんです。
 だから持って帰って一緒に食べるんです」


私は一片のパンをきょうだいで
仲良く分かち合おうとする、
この少年に心を揺さぶられました。


この少年を通して
「国のために」という日本精神の原点を
教えられる思いがしたのです。


「いまは廃墟のような状態でも、
 日本人が皆このような気概と心情で生きていけば、
 この国は必ず逞しく立ち直るに違いない」


そう確信しました。
果たしてその後の日本は
過去に類のないほど
奇跡的な復興を遂げ、
世界屈指の経済大国に成長しました。


通訳として日本に滞在したのは僅か2か月です。
しかし、私は今日に至るまで
この少年のことを忘れたことがありません。


日本に来るたびにメディアを通して消息を捜したものの、
ついに見つけることはできませんでしたが、
もし会えることがあったら、
心からの労いと感謝の言葉を伝えるつもりでいます。


  * * *

その後、アリヨシ氏はいかにして
日系人として全米初の州知事となったのか。
州政運営の支えとなった両親の教えとは──。


続きはぜひ『致知』2月号P72〜P73をご一読ください。


※まだ『致知』をお読みでない方は、
 この新春正月号(2月号)からのスタートをお勧めします

2014年01月25日(土)09:47 
┌─────今日の注目の人───────┐



  「勝利の神様に好かれる法則」
         

     
  谷川浩司(日本将棋連盟会長)


   ※『致知』2014年2月号
     特集「一意専心」より


└───────────────────┘


いろんな体験を通じて実感するのは、
勝負で一番大切なのは、
優勢の時に焦らないということ、
劣勢の時に諦めないことだと思います。


優勢の時は早く勝って楽になりたいし、
劣勢の時もやっぱり負けて早く楽になりたい
という気持ちというのがあります。


けれども負け将棋の時でも、
あるいは辛い時期でも
とにかく自分の最善を尽くしていくこと。


その積み重ねがやっぱり長い目で見ると
大きな差になって表れてくると思います。


また、運というのも
勝負と深く関わっていると思いますね。


私は、一人ひとりが持っている
運の量っていうのは平等だと思うんです。


そして、運が悪い人というのは、
つまらないところで使っているんじゃないかと思うんです。


将棋の棋士を見ていると、
例えばトップクラスの棋士が
やっぱり一番将棋に対する愛情、敬意を
持って接していますね。


対局前の一礼にしても、
羽生さんをはじめとするトップの人ほど
深々と礼をするんです。
その姿勢は相手が先輩でも後輩でも変わらない。


そして対局後に「負けました」と言うのは
一番辛いですけれども、
それもやっぱり強い人ほどハッキリ言うんですね。


それから、棋士の中には対局開始前
ギリギリにやってくる人もいます。


さすがにトップ棋士は
対局の10分、15分前には
ちゃんと対局室に入るけれども、
そういう心掛けのできていない人は、
電車が遅れたりしたら大変です。


なんとか対局に間に合ったとしても、
その人はそこで運を使い果たしていると思うんです。


将棋も囲碁も先を読みますが、
どんなに頑張っても
どこか読み切れない部分があります。


そういう最後の最後、
一番大事なところで
運が残っているかどうかというのが
非常に大事だと思うんです。


ですからどんな対局であっても、
与えられた条件で最善を尽くして
運を味方につけることが大事です。


対局の持ち時間を残して
勝負をあっさり諦めるような人は、
やっぱり成績も振るわないし、
最後の最後の大事な場面で
勝ちを逃すことが多いような気がします。


私は最近「心想事成」という言葉が好きで
よく揮毫させていただくんです。


心に想うことは成るという意味ですが、
そのためには平素からどれだけ本気で
勝負に打ち込んできたかということが
大切だと思います。


真剣に、本気で打ち込んできた時間が長く、
思いが強い人ほどよい結果を得ることができるし、
そのための運も呼び寄せられるのではないでしょうか。


勝負の神様はそういうところをきちんと見ておられるし、
それはその対局の時だけでなく、
普段の生活すべてを見ておられると思うんです。


もちろん人間ですから
一日中将棋のことを
考えているわけにはいきませんが、
体の中心に将棋というものが
軸としてあるか、
そこが問われると思います。


  * * *

その他、

・最年少名人への道のり

・大事なことは「負けをどう生かすか」

・逆境の乗り越え方

・見えない力をどう呼び込むか

・頂を目指すことで見えてくるもの


続きはぜひ『致知』2月号P8〜P17をご一読ください。

2014年01月22日(水)11:33 
皆さんは、杉山龍丸という人物を
ご存じでしょうか。


インドで「緑の父」と尊敬される
日本人ですが、
その名前や功績は
殆ど知られていません。


私財を投じ、不毛の地と言われたインドに植林し、
稲作や農作物ができる土壌に変え、
多くのインド人を飢餓から救いました。


その知られざる生涯とは──。


┌─────今日の注目の人──────┐



「グリーンファーザー・杉山龍丸の生涯」
         

     
  杉山満丸(九州産業高校教諭)


   ※『致知』2014年2月号
     特集「一意専心」より


└──────────────────┘


父・龍丸が初めてインドを訪れたのは
昭和37年、43歳の時でした。


数か月にわたりインド国内の現状を
つぶさに見て歩きました。


同年12月、パンジャップ州の
総督と面会した際、


「インドの生活を豊かにするためには
 どうしたらいいか」


という質問に対し、龍丸は


「木を植えることです」


と答えます。


当時、インドは食糧不足で、
街には物乞いの人が溢れ、
餓死者も後を絶たない状況だったのです。


原因はインドの砂漠化でした。
インドは古代より森の木を切り倒し
文明を開いてきたため、
土地がやせ、大地の水がなくなり、
地面が乾燥し、不毛の地となってしまっていたのです。


龍丸はパンジャップ州の植林事業の指導を
引き受けることになりました。


周辺の地形を調べると、
首都デリーからアムリッツァル市までの
約470kmの国際道路は
北側のヒマラヤ山脈と並行していることに気づきます。


この道路に沿って木を植えていけば
根が地下に壁のようなものをつくり、
そこにヒマラヤに降った雨を溜めることができ、
大地に水分が蓄えられ、
穀物や野菜を育てることができると考えたのです。


植えるのはユーカリにしました。
根が深く伸び、生命力も強く、何より成長が早い。
さらに成長すればパルプや建築資材として
売れることも魅力でした。


それから間もなくのことです。
龍丸の下にインドで大飢饉が発生した
との連絡が入ります。
この飢饉は3年にもおよび、
実に500万人もの餓死者が出ました。


「この飢饉を救う方法を教えてください」


インドにいるガンジー翁の弟子たちからの懇願に、
龍丸は黙っていられませんでした。


活動資金をつくるため、
父の茂丸、祖父の久作から譲り受けた
4万坪の杉山農園の土地を切り売りすることに、
なんの躊躇もありませんでした。


再びインドへ渡った龍丸は、
何百、何千という餓死者の亡骸と、
生きるために物乞いする子供たちを目の当たりにし、


「この地獄から一刻も早く
 人々を救わなければならない」


と、改めて一刻も早く木を植え、
森をつくることを誓ったのでした。


ユーカリの植林事業はデリーからアムリッツァルまでの
470kmの国際道路沿線両側に、
2本ずつ、4m間隔で植えることにしましたが、
当然現地の人たちの協力が必要になります。


最初は突然やってきた日本人の申し出に
訝る人たちも多かったことでしょう。


しかし、龍丸の説得により
地域の農民たちを巻き込んでの
植林事業はスタートしました。


「タツマルは私たちの心と話した」


とは、一緒に木を植えた方からの言葉ですが、
私心のない龍丸の情熱が言葉の壁を超え、
彼らに伝わったのでしょう。


そうして、7年の歳月をかけて
470kmものユーカリの並木が完成し、
その周辺の土地は水分を含んだ土壌に
代わっていきました。


しかし、本当の挑戦はこれからです。


  * * *

この後、龍丸が成した2つの奇跡とは。
彼の人生からいま私たちが学ぶべきこととは何か──。


続きはぜひ『致知』2月号P34〜P37をご一読ください。

2014年01月21日(火)13:06 
┌──────今日の注目の人────────┐



    「仁を発揮して生きる」
         

     
   安岡定子(こども論語塾講師)


 ※『致知』2014年2月号
  連載「子供に語り継ぎたい論語の言葉」より


└─────────────────────┘


私が教室でお子さんに接する時、
繰り返しお話ししているのが
仁の大切さです。


小さいお子さんには一言で
「思いやり」と説明していますが、
この仁を孔子はとても重視していて、
仁について語った章句は100を超えます。


お子さんに


「仁と聞いてまず思い出すのは、
 どの章句ですか」


と質問すると、最も多いのが


「巧言令色、鮮なし仁」
(上手に飾りすぎた言葉の人や、
 上辺ばかり格好をつけた表情の人には仁が欠けている)


次に挙がるのは


「剛毅木訥、仁に近し」
(心がしっかりしていて、
 口べたで飾り気がない人は
 仁者に近いということができる)


です。


そして、もう少し年齢が上がると、
今回ご紹介する


「仁に里(お)るを美と為す。
 擇(えら)びて仁に處(お)らずんば、
 焉(いずく)んぞ知なるを得ん」


の章句を挙げる子が何人も出てきます。


これは私の好きな章句の一つで、


「仁の心を大切にする態度が美しいのだ。
 自分で選んで仁から離れてしまっては、
 どうして知恵のある立派な人と言えようか」


という意味です。


私が好きな理由の一つは
表現の美しさです。


里という文字を「おる」と読ませています。
この「おる」は「人物がいる」「物を置く」という意味で、
私にこの章句を教えてくださった先生は


「心の中心に仁を置き、
 それを拠り所として生きるのは
 なんて美しいんでしょう」


と説明されていました。


孔子は人間は皆、仁の心を持って生まれてきている
という性善説の持ち主でした。


仁を拠り所として生き、
どのような厳しい状況に置かれたとしても
仁を発揮していく、という
理想の生き方を貫いたのです。


ですから私もお子さんに
この章句を紹介する時、


「みんな仁を持って生まれてきているのに、
 それを形にできないのはもったいないでしょう。
 どのような時も思いやりに溢れた人になりましょうね」


という言い方をします。


そしてこう続けます。


「誰でも優しい気持ちは持っています。
 人に優しくされたら嬉しいし、
 困っている人を見たら自然に助けたい
 という気持ちが湧いてくる。

 その時大切なのは、
 その思いを行動に移せるかどうかですね。
 優しくされたら素直に感謝の気持ちを表現し、
 困っている人にはさっと手を貸して
 あげられる人になりましょう。
 ただ単に言葉を知っているというだけでは
 意味がありませんよ」


思いを行動に移すのは確かに難しい部分もありますが、
それを実践することで初めて
人としての成長があること、
「知恵のある立派な人」とはそういう人であることを
お子さんには伝えます。

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