■2011年01月21日(金)  頼みの綱の外国人〜外国人をうまく取り込み経済活性化を目指せ
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
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┗━┛『頼みの綱の外国人
〜外国人をうまく取り込み経済活性化を目指せ 』
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 外国人入国者数
 2010年の入国者数 944万3671人
 外国人留学生
 約9割が「就活厳しい」
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 ▼昨年の外国人入国者数は「過去最高」ではなく、
  「失速の結果」に過ぎない
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 法務省が14日にまとめた統計によると、2010年に日本を訪れた外国人
 の入国者数は944万3671人と、前年に比べ186万2341人(24.6%)の
 大幅増になりました。

 アジア地域の景気回復のほか、中国人の個人観光ビザ発給要件の
 緩和などが要因とみられています。

 このニュースは外国人の日本への入国者数が「前年に比べて増加」と
 捉えるべきではないと私は思います。

 日本への外国人入国者数の推移を見ると、2007年に約900万人に
 達したものの翌2008年は殆ど横ばいで、2009年はリーマン・ショック
 の影響もあり大きく落ち込みました。そして2010年には回復したものの
 1000万人には届いていません。

※「外国人入国者数の推移」
 → http://www.lt-empower.com/mag2/konews/slide_110121.html#c01

 日本の近隣諸国には経済的に調子の良い新興国が多いので、
 2007年までの伸びを持続、さらに加速できていたなら、
 日本に訪れる人は現時点で1000万人を超えて然るべきだと
 私は思っています。

 2010年に1000万人を超えられなかったのは、尖閣諸島問題の影響で
 中国人観光客の数が激減した影響も大きいでしょう。

 今後、春節によって来日する中国人観光客の数は回復する可能性も
 あるかもしれませんが、今のところ中国の関心は日本以外に向きつつ
 あると私は感じています。

 総じて言えば、外国人の日本への入国者数を「過去最高」と見るので
 はなく、本来なら1500万人〜2000万人を目指せたはずが、日本ブーム
 に火がつかずに「失速した結果」だと受け止めるべきだと思います。

 では今後、日本が1500万人〜2000万人の観光客を呼び込める可能性
 が残されているかといえば、私は厳しいと見ています。というのは、
 日本には観光客を呼べる「素材」がないからです。

 例えばスキーブームなどと言っている人もいますが、世界のスキー場
 に比べると日本のそれは率直に言って「貧相」だと言わざるを得ません。

 また古きよき日本文化を求める外国人は多いのですが、日本は積極的
 に古い文化を壊してきてしまったため、残されているものは非常に
 少なくなっています。

 年間約4000万人の観光客を呼び込んでいるイタリアなどはどこに
 行っても観光地として成立していますが、それに比べると日本の
 「素材」では太刀打ちできないのは明白です。

 素材が悪ければリピートしてくれる可能性も低くなるでしょう。取り
 敢えず日本に1度訪れてみたという中国人観光客でも、2度・3度と
 日本に行きたいと思う人は非常に稀だと私は思います。この「素材」
 の悪さは致命的であり非常に深刻な問題です。

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 ▼ 外国人留学生が就職に苦労するとは、驚きだ
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 就職情報のディスコが先月まとめた調査によると、日本企業への勤務
 を検討する外国人留学生のうち89%が2011年の就職活動の見通しを
 「厳しい」と回答しました。企業の中には海外進出を見据えて外国人
 留学生を積極的に採用する動きも出てきていますが、留学生の立場と
 してはまだ楽観できる状況にはないようです。

※「留学生・日本人学生が就職先企業を選ぶ際に重視する点」
 → http://www.lt-empower.com/mag2/konews/slide_110121.html#c02

 この結果には正直、驚きました。日本企業はもっと積極的に外国人
 留学生の採用に動いていると思っていましたが、私が想像するほどには
 企業が外国人留学生にまで辿りつけていないということでしょうか。

 就職先企業を選ぶ際に重視する点に対する回答を見ると、日本人が
 「職場の雰囲気」「仕事内容が魅力的かどうか」を重視するのに対して、
 外国人留学生は「将来性」「働きがいがある」ことに重点を置いています。
 日本人に比べると、とことん働く姿勢というものが伺えると思います。

 また外国人留学生は語学が堪能です。少なくとも母国語と日本語と
 いう2か国語、アジア圏で香港・シンガポール以外の出身ならば、
 母国語・英語・日本語と3ヶ国語に通じている人も多いはずです。

 アジアの留学生のトレンドは、米国・英国・オーストラリアですから、
 日本への留学生というのはリスクテイカーとしての素養が高い人で
 しょう。私はこうした留学生をもっと日本企業が活用するはずだと
 思っていました。

 産業能率大学が昨年発表したアンケート調査では、海外で「働きたく
 ない」と答えた新人は49%で、2007年調査での36%から大幅に増え、
 内向き志向を強める若者の実態が浮かび上がったとのことでした。

 日本の若者が海外に行くことを拒むなら、外国人留学生は代役として
 うってつけでしょう。また、外国人留学生は、内向き志向を強める
 日本の若者に対して「意欲的な外国人留学生と競争しなければならない」
 という危機感を与えることで、日本人学生への刺激になると私は思い
 ます。

 引く手あまたかと思われる外国人留学生でも就職について厳しい認識
 をもっているとは、本当に驚きました。

■2011年01月17日(月)  多極化する世界経済の動向
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
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┗━┛『多極化する世界経済の動向
〜台頭する新興国と多額の債務を背負う先進国の構造』
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世界経済
 終わりに近づく西側の覇権
 インド市場
 インド、ロシア首脳 次世代戦闘機の共同開発で合意
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 ▼ 中国経済を軟着陸させることは不可能に近い
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 先月17日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「新たな均衡に向かう
 世界 終わりに近づく西側の覇権」と題する記事を掲載しました。
 これは台頭する新興国と多額の債務を背負う先進国の構造を指摘した
 ものです。

 そのような中、中国の国営紙チャイナデイリーは中国の著名な経済学者
 で中国人民銀行(中央銀行)の元通貨政策委員である余永定氏の寄稿
 を掲載しました。

 同氏は現在の中国経済について、「中国の成長モデルは持続不可能であり、
 緊急の経済・政治改革を断行しない限り、中国は突然の減速に見舞われる」
 として警鐘を鳴らしています。

 従来あまり見ることができなかった論調で、年頭にふさわしい内容だと
 私は感じました。

 余永定氏という中国の元高官が、現在の中国経済のモデルを否定して
 います。

 「中国の成長モデルは持続不可能」という指摘は、論理的に考えれば
 当たり前であり誰でもそう思っていることですが、未だに中国の中では
 広く支持されている意見ではありません。

 一部の識者の人が将来を憂い、警鐘を鳴らしているというのが実態
 でしょう。

 対する中国共産党の幹部は、これ以上経済運営が難しくなっては困る
 ということで、何とかして「軟着陸(ソフトランディング)」させたい
 と必死になっています。

 このような動きはバブル経済時の日本の大蔵省の反応と全く同じです。
 私が日本経済の危険性について指摘していると、当時の大蔵省の役人
 が私のところに来て「大蔵省が軟着陸させてみせるから、発言は控え
 てくれ」と依頼されたことがあります。結果は誰もが知っていると
 おり、見事にバブル崩壊が起こりました。

 今の中国もかつての日本と同様で、権力者・為政者が考えることは
 同じなのでしょう。しかしどんなに取り繕ってみても真実は1つしか
 ありません。

 大蔵省の役人が日本経済を軟着陸させることなどできなかったように、
 中国共産党の役人にしてもそれは不可能でしょう。そんな「魔法」の
 ような方法があると言うなら、ぜひ教えてもらいたいところです。

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 ▼ 世界全体は多極化する方向性へ
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 また「終わりに近づく西側の覇権」とありますが、正確に言えば米国
 の覇権が終焉し、一部欧州に移りつつあるというところだと私は感じ
 ています。

 ただし欧州も完全に米国に代わって覇権を確立できているわけではなく、
 その間に新興国が台頭してきています。今後、世界全体が5〜20の
 覇権群に別れていく可能性もあるでしょう。

 2015年までの主要国・地域の名目GDPの推移予想によると、
 約20兆ドルで(中国を除く)新興国全体とEUが並び、
 それに米国が続く形になる見通しです。
 中国は約10兆ドルで日本のおよそ2倍になるとの予測です。

※「主要国・地域の名目GDP」(チャートを見る)
 → http://www.lt-empower.com/mag2/konews/slide_110114.html

 細かい数値予測よりも、全体的に世界が多極化していくという方向性
 を認識することが重要でしょう。「多極化した世界観」を持つことは
 今後の世界経済を見ていく上で必須だと私は思っています。

 このような中で世界経済に占める重要性を増してきているのが
 「インド」です。

 ロシアのメドベージェフ大統領は先月21日、インドのシン首相と
 会談し、次世代戦闘機の共同開発で基本合意しています。

 インドは機体の購入を含め総額300億ドル(約2兆5000億円)を
 投資するとしていますが、米国・英国・中国の首脳も昨年揃って
 インドを訪れており、インド市場をめぐる争奪戦は今後さらに
 激しくなりそうです。

 インドは、ソ連邦時代から現ロシアとの関係は深く、逆に中国との
 関係はそれほど良くありませんでした。このロシアのメドベージェフ
 大統領によるインドとの交渉は、中国への対抗策としてかつてのよう
 な友好的な関係を築こうという狙いでしょう。

 軍事面でも協力関係を築く足がかりとして、戦闘機の共同を開発として
 ロシアが主力開発を担い、インドがそれを買うという構図です。
 メドベージェフ大統領は約2.5兆円の商談をまとめたことになります。

 今、インドには世界中からラブコールが届いています。世界各国、
 特にドルキャリー取引により米国からの資金が殺到している状況です。

 このまま放っておけば、インドは必ずハイパーインフレを引き起こす
 と思います。そうならないように、何とかインフレを押さえ込みながら
 必死で経済発展に転換していこうと進めている状況です。

 これからの世界経済を見ていくにあたっては、世界全体が多極化して
 いくという流れをぜひ意識してみて欲しいと思います。

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