■2011年04月22日(金)  被災地復興策
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛被災地復興策
   〜政府は新しい「東北の強み」を内外に示せ!
 
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被災地復興
住宅建築制限を延長
政府の対応
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 ▼被災地復興の2つのプランとは?
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菅政権は東日本大震災の被災地復興をめぐり、無秩序な乱開発を防ぐ
 ため、現在2カ月以内となっている住宅などの建築制限期間を最長
 8ヶ月に延長する方針を固めました。

 また各地の農地を集約して大規模化を進める一方、壊滅した小さな
 漁港も拠点ごとに集約するための法案を今国会に提出する方針を固め
 ています。

 東北地方を新たな「食糧供給基地」と位置づけ、攻めの復興策を目指す
 考えです。

 涙ぐましいくらいに私が提言したアイデアが採用されています。提言
 した立場として、いくつか補足しておきたいと思います。

 まず基本的なアイデアは、土地の低い場所には公的な施設や緑地を置き、
 人は高台に住むという方針にあります。漁民の人たちにも高台から
 通勤してもらい、漁港を集約するスタイルです。

 このアイデアの実現にあたって、個々人が「自分の土地だから、好き
 に建築していいだろう」ということになってしまうと全体設計が崩れ
 てしまいます。

 それを避けるために政府は、住宅などの建築制限期間を現在の2ヶ月
 から8ヶ月へ延長する方針なのです。

 ここから先、大きく2つの方法が考えられます。1つは政府が土地を
 買いあげて、明確なプランのもと大々的に開発を行うというものです。

 この方法も悪くはないのですが、「土地を買いあげる費用」や「土地を
 新たに開発する費用」など莫大なコストがかかるのが難点です。

 もう1つの方法が、オーストラリアで採用されている「フラットプレ
 イン」というコンセプトです。

 オーストラリアでは、洪水などによって水没した地域は歴史的に把握
 できているので、該当する土地を販売する際には「洪水で水没する
 危険性がある」ことを明文化することが義務付けられています。

 これにより土地の価格は安くなりますが、万一洪水に襲われたとしても
 「その危険性を承知で購入した」のだから特段補償を迫られることは
 ありません。

 日本に当てはめて考えれば、「津波プレイン」といったところでしょう。
 政府は「津波に襲われたら水没する危険性がある土地」として「指定」
 するだけで良いのです。

 現地を見てきた人によると、今回の東北地方の津波被害も驚くほど
 正確に「被害が及ぶ範囲・地域」の予想は当たっていたとのことです。

 であれば、このような地域に「津波プレイン」の考え方を適用して
 用途制限をかけるのも不可能なことではないでしょう。

 それでも危険地域内に「住居」を構えたいという人がいれば、
 「自己責任でやってください」と言えると思います。

 この方法は政府が「土地を全て買いあげる費用」を負担する必要が
 ないのがメリットです。

 今回の震災による被害状況を見ると、地震そのものによる被害よりも
 津波による被害がより大きいのです。

 この点に鑑みても「津波プレイン」的な発想は現実的で、
 かつ資金的にもリーズナブルで良いと私は思っています。

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 ▼復興のためにも、日本政府はコミュニケーションのミスをなくせ 
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 東北地方の復興にあたり、工場や支店などを東北から別の場所へ移す
 などした企業を呼び戻すためには、東北で「新しい産業を興す」必要
 があると考えている人もいると思います。理論的には理解できるので
 すが、私は現実的には難しいと感じます。

 東北地方はこれまでにも「バイオ」「地熱発電」を始め、東北発の
 新しい産業を興すことを何度かチャレンジしてきましたが、
 どれも成功したとは言い難いです。

 東北大学の金属材料研究所などは世界的に見ても最先端の研究をして
 いて、新しい鉄鋼素材の開発などを行っていますが、それでも実際
 には産業として実を結ぶには至っていません。

 なかなか新しい産業が立ち上がらない中で、電子部品の開発など
 昔ながらの産業に依存する形になっていました。それが今回の震災で
 拠点を移してしまわれる可能性に直面しているのが現状です。

 こうした経緯を見ても「新しい産業を興す」ことよりも、放射能汚染
 の問題を解決し海岸沿いに豊かにある海産物をいち早く復興させる
 ことを優先させるべきだと私は思っています。

 また、現在外国人が日本から一時退避をしていて、多くの外国人が
 日本に来ることを恐れている状況にあります。

 この点について、アジアの拠点としての日本(東京)の立場が危うく
 なるのではないかと懸念している人もいるようですが、私はそれほど
 心配していません。

 というのは、今回多くの外国人が日本国外に退避してしまったのは
 「勘違い」によるものであって、現実的に東京がそれほど危険な状況
 になったためではないからです。勘違いの理由が明確になれば、再び
 外国人は東京に戻ってくると思います。

 それよりも問題なのは、外国人に勘違いをさせてしまった日本政府の
 コミュニケーション能力にあります。

 結局、「日本政府は原子炉について事実を公開していないのではないか?」
 「本当は公開している以上の大きな事故なのにそれを隠蔽しているの
 ではないか?」という疑いを抱かれているというのが、根本的な問題です。

 外国人や海外からのこうした疑念に対して、日本政府はこの期に及んで
 福島第1原子力発電所の事故評価をチェルノブイリと同等の「レベル7」
 に引き上げると発表しました。そして「やはり日本政府は隠していたのか」
 との評価になったわけです。

 事故発生当初から私は今回の事故レベルは「レベル6」だと主張してきました。

 今でも福島第1原発の事故レベルは「レベル6」が適切だと思います。
 当初は「レベル4」だと発表していたのに、ここに来て「レベル7」
 に引き上げたのは、最悪の意思決定だったと私は思います。

 せっかく復興の道が見えても、政府のコミュニケーションのミスに
 よって世界から誤解を受けてしまっては元も子もありません。

 これからの復興のためにも、政府には改めて国内外から誤解を招かな
 いような正しい情報開示と情報提供の徹底を図ってもらいたいと強く
 願っています。

■2011年04月15日(金)  そうですよネ!
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『風評被害と自粛モード
    〜「説明下手」な政府がもたらした二次災害』
 
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放射線物質拡散予測を公開 気象庁HP
農畜産物被害 農産物出荷規制を見直し
食品輸入規制 日本食品の全面禁輸を一時検討 インド政府
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 ▼放射線の危険性について、過剰反応しないこと
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福島第1原子力発電所事故で、気象庁は5日、国際原子力機関
(IAEA)
 の要請に基づいて同庁が作成した放射性物質の拡散予測をホーム
ページ上に公表しました。

 気象庁の拡散予測は、「1ベクレルの放射性ヨウ素131
が標高20-500メートル
 の高度で72時間放出された」という条件に基づき、気象情
報などを加味して割り出されたものとのことです。

 放射性物質の拡散状況を見ると、浪江町や飯舘村は非常に危険な
レベルにあると言わざるを得ないと思います。

 今回の拡散状況で特徴的なのは、放射性物質が一様に円形に広
がっておらず、まるでブーメランのような形で広がっている点にあります。

 これは放射線の大きな特徴で、風の影響を強く受けた結果です。
放射性物質が放出された際、強い風がどちらから吹いていたのか、それが拡
散する範囲を決定します。

 福島第1原発から直近の地域では、約1000ミリシーベ
ルトの放射線量が蓄積していくという、非常に危険なレベルです。

 その1つ外側の地域では約500ミリシーベルトの放射線量と
測定されています。
 このレベルでも、大騒ぎするほどではありませんが、念のために
避難勧告を出すべきだと思います。

 先日私は福島第1原発から半径30km圏内の住人に対し
ては、一週間くらい
 帰宅しても平気なので、そのように伝えてあげるべきだと述べま
したが、放射線量が減る見通しも立たない今の状況を見ていると、少々厳
しくなってきたと感じます。

 ただし大げさに捉えるのではなく、放射線量の危険性について客観的な
 事実を把握しておくことも大切だと思います。

 先に避難勧告を出すべきだと言った500ミリシーベルトの放射線量とは、
 1年間外で放射線を浴び続けたとして、それを原因として発がんする確率が
 たとえて言えば、「1万人に1人」から「1万人に2人」になるというレベルです。

 おそらく毎日2箱〜3箱喫煙する場合の方が、よほど肺がんになる確率は
 高いでしょう。

 このような事実を私たちが認識しているという前提で「どうしても
 帰宅したい人は、自分でリスクを知った上で自主的に行動してく
ださい」という米国型の方法もありかもしれません。

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 ▼ 日本政府の情報の伝え方が、外国人の誤解を招いている
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 枝野官房長官は4日、県単位で実施してきた農産物の出荷制
限を改める
 方針を明らかにしました。市町村や各県の地域ごとに設定、解除できる
 ようにするとのことです。

 また、政府は8日、水田の土壌で、放射性セシウムの検出値
が1キロ・
 グラム当たり5000ベクレルを超えると、コメの作付けを制限する
 方針を明らかにしました。

 県単位から市町村単位への変更に基本的に賛成ですが、農産物の出荷
 制限は「県単位ではなくできればロット単位で」というのが私の以前
 からの提言です。もう一歩踏み込んで欲しいところです。

 その上で「水洗い」する効果をもっときちんと伝えるべきです。「この
 くらいの数値なら、水洗いでここまで落ちる」という基準を示して
 くれれば、国民としても「安心して食べられる」心境になるでしょう。

 この後の展開として予想されるのは、放射線が地中の農作物に影響を
 与え始めるということです。

 まずほうれん草などの葉っぱに付着したものが問題となったわけ
ですが、
 今後は「たまねぎ・じゃがいも・ごぼう」などへ連鎖していきます。

 この流れは自明です。ゆえに仮に「じゃがいもから放射性物質を検出」
 というニュースが流れても、一喜一憂せずに冷静に対処することが
 大切です。

 実際問題としては、地中にある茎が放射線に汚染された場合、葉っぱ類
 とは違い、水洗いしても効果はありません。その時の対処は改め
て考える
 必要がありますが、過剰に反応するのは避けたいところです。

 また稲の作付けを制限する方針とのことですが、この適用範囲を福島県
 全体とするなら、これは過剰反応だと私は思います。

 国内が混乱しているだけでなく、海外でも放射性物質の流出について
 誤解され、日本製品に対する警戒が広がっています。

 インド政府は5日、福島第1原発事故に伴う放射性物
質の影響を考慮し、
 日本からの食品輸入を3カ月間、全面的に禁止するとのこと
でしたが、
 8日にはまだ決定を下していないと発表しました。

 一方で欧州連合(EU)加盟27か国は8日、日本
からの輸入食品の
 放射性物質検査で、EUよりも厳しい日本の暫定規制値を採用し、
 検査を強化することを決めています。

 これら諸外国の一見厳しく思える対応については、日本政府に責任が
 あると私は感じます。日本政府がもっと明確に指標を示していれば、
 このような事態はさけられたでしょう。

 「この地域までの農作物の出荷を禁止する」「外国に輸出されている
 ものは、こういうルートで出荷しているものだから安全だ」という
 ような情報公開です。

 日本政府からの抗議を受けて、インドは一度決定した食品輸入の全面
 禁止を「検討中」という段階に戻しました。これはインドにしても、
 情報が不足しているために「絶対的な自信」がないのだと思います。
 やはり日本の情報公開に問題があるということです。

 また「情報の伝え方」も誤解や過剰反応を生む原因になっています。
 今回の震災を「東日本」大震災と伝えていますが、このように伝えら
 れれば外国からすると「日本の半分はダメなのか」となってしまい
 ます。

 阪神淡路大震災では敢えて「淡路」を付け加え、激甚災害の大きさを
 強調するという手法を採用しました。

 今回もそれに倣ったのでしょうが、国内政治的に良くても、外交と
 しては失敗です。米国で言えば「東日本=東海岸(EAST COAST)」
 というレベルですから、誤解を招くのも当然です。

 日本政府の「伝え方」に問題があるために、外国人を不必要に不安な
 気持ちにさせています。

 現時点で言えば東京の放射線量は全く問題ないレベルですが、それでも
 外国人はきれいサッパリ東京から居なくなりました。

 お陰で外国人向けのホテルは閑古鳥が鳴き、日本行きの飛行機もガラ
 ガラといった状況です。

 被害範囲をきちんと限定して説明し、危険な地域・安全な地域を明確
 にしないとこの状況はずっと続いてしまうでしょう。

 さらには自粛ムードが手伝って、日本に訪れた外国人からすれば
 「イベントもほとんどが中止になって日本全体が暗くなっている、
 やっぱりひどい状況だ」という印象を持ってしまうのは当然です。

 地震によって大ダメージを受けた今、経済もコケたら目も当てられま
 せん。政府は情報を正しく公開すること、そして誤解を与えないよう
 に伝える方法について、もう1度考えてもらいたいと思います。


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  この大前研一のメッセージは4月10日にBBT757chで放映された  
  大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
  再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点はいかがでしたでしょうか。
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 原発事故後、福島付近にお住まいの方はもとより、関東以西そして
世界各国が現状と今後について大きな不安を抱えています。

 なぜここまで不安心理が拡大しているのか。

 不安に思うものが、「放射能」という目に見えない、
 得体のしれないものだからということはあるでしょう。

 しかしそれをさらに悪い方向に増殖させているのは、
 間違いなく情報の伝え方と質があまりに粗悪であることです。

 この問題について本当に知りたいことが伝わっている、
 と感じている方がいったいどれほどいるでしょうか。

 テレビはほぼ24時間放映されていますが、おそらく24時間
見続けていても不安を取り除いてくれる情報は伝わってこないでしょう。

 聞き手がその判断の為に本当に知りたいと思っていることを伝える。

 このような「相手の事を考え、それに応える形のコミュニケーション」
は日常でもビジネスでも常に必要とされています。

■2011年04月08日(金)  大前さんを復興大臣に
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『電力使用制限〜節電ではなくピーク抑制で経済への打撃を
最小限に』
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電力使用制限
今夏の計画停電回避へ
電力使用制限発令

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▼電力抑制のための、さらなる施策
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 今夏の計画停電を回避する策の一つとして、菅政権が
 電気事業法27条に基づく電力使用制限令を発動する方針
 を固めました。

 石油危機に見舞われた1974年時には量を抑えましたが、
 今回は「ピーク」を抑えるため昼間の時間帯の消費電力カットを
 狙う方針です。


 蓮舫節電啓発担当相には申し訳ないですが、ようやく「節電」
 ではなく「ピーク抑制」という私の主張が 政府にも届き始めた
 ようです。
 この方針は非常に良い傾向だと思います。
 兎にも角にも「計画停電」だけは絶対に避けるという強い決意
 が必要です。

 震災後、私は何度かこのテーマについて提案をしてきました。
 これまでは「計画停電による経済的なダメージ」
「節電よりもピーク時の圧縮」などの重要性を説明してきました。
 今回さらに突っ込んで、今後の「重要な視点・施策」について
 見ていきたいと思います。


 まず注目すべきは揚水発電です。
 東電の管内には意外と多くの揚水発電所があります。
 東電全体のキャパシティの約10%に当たる442万
kwhの揚水発電が
 可能だと言われています。

 原子力発電や石炭火力発電は発電量を上下させるには不向きなため、
 ピーク時の発電量のバランスを取る際には火力発電で調整することが
 よくありますが、揚水発電はこれをサポートすることができます。

 夜間の余裕があるときに原子力発電所からの余剰電力で下池から
 上池へ水を汲み上げておき、夏の暑い昼間などに上池から水を
 落とすことで発電することができるからです。
 日立製作所などは揚水発電が得意ですし、世界最大の揚水発電所は
 群馬県にある神流川発電所です。


 加えて、東西グリッドの拡大です。私の友人の試算によると、
 1000万kwhくらいの送電を可能にするには2年ほどで
 約7000億円〜8000億円の工事費になるとのことです。
 中部電力の一部では50サイクルの発電が可能で、東電の管内まで
 直接送電できる可能性があるそうですが、この辺りも同時に
 進めていくべきでしょう。

 次世代送電網として注目されている「高圧直流(HVDC)送電
システム」に
 ついても検討する余地はあると思いますが、
 日本勢はアセア・ブラウン・ボベリ(スイス)、シーメンス(ド
イツ)、
 アルストム(フランス)などの外国勢の後塵を拝していて
 追いつけていません。原則として日本の電力会社は外国からの購入
 をしていませんが、この際検討しても良いかもしれません。

 そして私が菅首相だったら、「今年の夏限定で原子炉の再開」
 について認可を得るように動きます。
 国家的な危機という点を考慮し、これまでの反省を踏まえて改善
 をするので今年の夏だけ限定で原子炉を作動させることを
 地元住民の方に協力を仰ぎます。
 来年以降も継続するかどうかは別途協議とします。


 最後に「警報システム」を作るべきだと考えています。
 地震警報や津波警報と同じように、消費電力量が供給上限の
5%以内
 に迫ってきたらテレビや携帯電話を通じて、国民に警報するという
 仕組みです。国民一人ひとりに「あとどの程度余裕があるのか」
 に関心を持ってもらうのです。
 花粉情報などと基本的に同じ仕組みですから比較的スムーズに
 導入できると思います。

 もし「5%以内」になったら、冷暖房、テレビ、電
灯、PCなどは止め、
 5階以下のエレベーターへの乗降を控えてもらいます。
 重要なのは絶対に停電は避けることであり、
 特に電気が必要な商売や産業は原則停電しないということです。

 これから日本は年間の消費電力量が最も多い8月を迎えます。
 1年間を通してみると、産業部門と運輸部門で消費電力量の
 約70%を占めていますが、この時期は家庭の消費量も増えます。
 産業が夏休みに入ると共に、個人が冷房を使ってテレビを見るなど
 消費電力が膨らむためです。
 ですから私は夏の甲子園の中止・延期を提案しているわけですが、
 中止・延期にしなくとも「消費電力が上限の5%以内」の状況
 になったらテレビ中継は消すべきでしょう。
 これだけでも相当の効果があると思います。

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 ▼原子力産業、東電の将来とは?
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 こうした状況の中、原子力産業の将来にも注目が集まっていますが、
 私は次のような指針に基づく「原子力産業の再構築」が必要だと
 思っています。

 まず海外では一般的になりつつある「垂直分業」です。
 原子力発電は民間ではなく公営とし、そこから9電力に売電
します。
 そして送電網は公営で全国ネットとし、基本的に9電力には
配電を
 任せるのです。

 9電力への売電には外資や民間の参入を許可すれば、オース
トラリア
 などは喜んで自国のエネルギーを売りに来ると思います。
 また、ロシアのサハリンでLNG発電して稚内に送電するとい
う仕掛けも
 考えられます。
 将来的には稚内から東北を経由して東電の管内まで配電できると
思います。
 日本では発電所を作る際に住民対策だけで10年の時間を費
やすことも
 珍しくありませんから、非常に有効な手段でしょう。

 企業に目をむけたとき、東芝・日立・三菱の3社は、WH・
GE・AREVAの
 傘下で仕事量の確保を図る以外に手はないでしょう。
 国としては、国策として原子力の技術者の温存を図るべきだと
 思います。
 そして、「現場の知恵」として今回の事故の反省を活かして、
 既存の柏崎刈羽原子力発電所や福島第2原子力発電所などの
再生に
 役立てるべきでしょう。

 東電に関してはGM型の破綻処理をして、
 東電生産事業会社・発電会社・配電会社になる以外に
 道はないでしょう。

 すなわち、原子力は公営会社に売却・譲渡、高圧送電網も
 公営会社に売却・譲渡、配電会社として新たに発足する
 ということです。

 新たに誕生する「公営の原子力発電会社」は、9電力のうち
 希望するところから原子力発電所を全て譲り受けます。
 そして、安全審査、住民対応、オペレーションは
 全て「国の責任」で行います。
 同時に安全委員会、保安院などを統合して「経済産業省」とは
 独立した組織を作ることが重要だと私は思います。

 「経済産業省」はどちらかというと原子力を推進していく組織です
 から、規制には力を注いできていませんし、現在の安全委員会、
 保安院などの構成メンバーは東電や関電と関係性を持っていて、
 とても中立的な立場で判断できるとは思えません。
 国の組織としてよりニュートラルな組織を作ることが肝要だと
 思います。

 今回の事故の結果、「想定外の経済的ダメージ」が大きく、
 これを一刻も早く解決することも重要だと感じています。
 計画停電と節電を誤解し、東京の街でさえ「暗く」なってしまい、
 外国人が気味悪がってしまう事態になっていますし、交通機関が
 受けた打撃の後遺症も未だに残っています。
 また大げさな自粛ムードもやめてもらいところです。
 震災のダメージに加えて自粛し過ぎて経済がダメになったら、
 本当に日本は目も当てられない状況になります。

 首都圏から関西への疎開もあり大阪の不動産業者が忙しくなった
 とか、またコンサートやレストランがこぞって省電をしている
 せいで、“商売あがったり”と言う人はたくさんいます。

 私には不必要に日本経済の評判を落としているように思えます。
 結果、不必要に日本経済に打撃を与え続けています。
 一刻も早くこのような行為はやめてもらいたいと
 私は強く思っています。



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  この大前研一のメッセージは4月3日にBBT757ch
で放映された  
  大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
  再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点はいかがでしたでしょうか。
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 大前がここまで電力について様々な提言をするのは、
 その経済に与える影響がまさに甚大であるから。

 今後の日本の復興を、大きな視野で考えれば、現段階での
 日本経済の衰退は絶対に避けなければなりません。

 都市機能や住宅の再建、被災地域の経済復興、電力供給体制の
 確保など、これから取り組まなければならないことは
 山ほどありますが、その実行をより可能なものにするのは、
 強い日本経済です。


 できるだけ高い視点から、大きな視野を持って、
 今何に取り組むべきかを考え、解決策を見つける。

 私たちは常にこの姿勢を持つ必要があります。

■2011年04月02日(土)  さすが大前さん
原子力の専門家である大前さんの提言には納得です。

┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『原発事故〜コミュニケーション不足が引き起こした人災』

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 農畜産物被害 野菜から放射性物質検出で摂取制限指示
 水道水汚染 水道水から放射性ヨウ素
 海水汚染 近くの海水から放射性物質
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 ▼汚染についての政府の伝え方がパニックを引き起こした
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 厚生労働省は23日、福島県など4県に対する一部農産
物の出荷停止
 措置を踏まえ、宮城県など隣接する6県に対しても農畜産物
の放射性
 物質検査を実施するよう指示しました。

 同日、茨城県内5市村の水道水から、乳児向けの暫定規制値(1
キロ
 当たり100ベクレル)を超える放射性ヨウ素が相次いで検出
されて
 います。

 また経済産業省原子力安全・保安院(NISA)は26
日、東京電力福島
 第1原子力発電所の放水口付近の海水から、法定の濃度限度を約
1250倍
 上回る放射性ヨウ素131が検出されたと発表しました。

 野菜、水道水、海水と相次ぐ汚染報道に、日本中が騒がしくなって
 しまいました。どうしてこのような事態が生じたのか?と考えて
みると、
 やはり「すでに炉心溶融(メルトダウン)は起こっていたのだ」と
 判断するべきだと私は思います。

 こうした事態の中、政府の対応にはいくつかの「過ち」があったと
 私は見ています。まず「避難勧告が曖昧だったこと」です。

 例えば、私ならば次のように指示をします。

 ・現段階では原子炉の直近地域以外なら24時間〜48
時間ほどの帰宅
  なら安全
 ・長期的の避難になるので、引越しを覚悟して今必要に応じて帰宅して
  準備をして欲しい

 このように明確に伝えれば問題はなかったと思います。

 風評による問題も含めて、フードチェーンの被害が拡大していますが、
 これも要注意です。

 ロシアのチェルノブイリ原子力発電所事故の際にはフードチェーン被害
 は欧州全体に及びましたし、米国のスリーマイル島原子力発電所事故
 の後も被害は大きく広がりました。

 この点でも、日本政府の発表には問題があったと私は思います。
 「放射線量の説明」「出荷停止・制限」に言及し、「国民の皆さん注意
 してください」と言われてしまったら国民の不安感情は高まるだけ
 です。

 さらには、福島・茨城に対しては全面的に出荷停止を命じてしまいま
 した。これがさらにパニックに拍車をかけ、被害を拡大してしまった
 原因だと思います。

 国民の不安を煽らないためには次のポイントを説明すれば良かったの
 です。

 ・年間許容量を超える放射線がほうれん草から検出された
 ・ほうれん草を毎日1年間食べ続けると問題が出るかもしれない
 ・念のため、食べる前に水でよく洗うこと
 ・生産者は出荷ごとに検査を受けること
 ・検査の結果、特に数値が高い出荷ロットに関しては出荷を控える

 このように伝えていれば、スーパーからほうれん草やペットボトルの
 水がなくなってしまうというパニックは避けられたと思います。

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 ▼ 問題が多い計画停電は人災だ
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 今回の日本政府の対応の中で最大の過ちは、東京電力の「計画停電」
 を許可したことです。計画停電による経済的なダメージは、想定の
 範囲を超えていると私は感じています。そもそもピーク時の電力を
 抑えることができれば良いのに、「節電」と勘違いした「行き過ぎた
 自粛」が散見されます。

 交通機関は運行量を制限し、築地に行っても魚も野菜もなく、公共の
 建物を利用したコンサートなどは軒並み中止という始末です。関西
 方面にホテルを借りきって“疎開”する人も出ているようです。

 これらの中には本来必要のない「自粛」があります。それによって
 莫大な経済的な損失が生まれています。「これは東電が作り出した
 人災」だと私は声を大にして言いたいと思います。

 東電が正しく説明をして、ピーク時の電力量を下げるための施策を
 考えれば、乗りきれる事態です。私に言わせれば、朝早くから計画
 停電を実施しても意味はないですし、今のところ週末も節電の必要性
 は薄いはずです。

 この計画停電は今年の冬まで継続の見通しとのことですが、
 「全力」でこれを阻止する必要があると思います。

 試算すれば分かりますが、火力発電所の復旧や東西電力グリッドの
 結合などによって夏までに確保される電力を考慮すると、現状から
 最大で約25%程度の電力の削減を実現できれば良いのです。

 「サマータイム2時間」「事業所の操業曜日の平準化」「夏
の甲子園
 中止」「大口料金のアップ」など、私は削減策をいくつも提案し
ました。

 このようなアイデアを広く募集して、可能なものから実現していけば
 良いと思います。それだけで「25%の電力削減」を実現する
ことは
 可能でしょう。

 また政府は22日、東日本大震災の復興に向けた施策を統括
的に担当
 する「復興庁」を設置する方針を固めたとのことですが、本当に必要
 なのは「省庁」ではなく「ビジョン」だと思います。

 阪神淡路大震災の後、神戸は復興しましたが、まさに「復興」しただけ
 であり、「新しい神戸の街」として生まれ変わってはいません。これは
 「復興」を目的としたためです。東北についても同じことが言えます。

 高台に設計する新しい街、これまでに類を見ないコンセプトの漁港
 など、新しいものを創る「ビジョン」があれば、今だからこそ色々
 なことが実現できるはずです。

 ぜひ「復興」にとどまらず、新しい「ビジョン」を持った人がリーダー
 として立ち上がって、新しい東北を創りだしてほしいと願っています。

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