■2012年05月29日(火)  やっと自分で更新

┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛ 『ギリシャ情勢と経済成長 〜緊縮財政を考える』
 ──────────────────────────────────

 ギリシャ情勢 連立協議決裂で再選挙へ
 仏オランド大統領 独メルケル首相と会談
 世界株式市場 ギリシャ政局悪化でアジア市場が全面安
 
 -------------------------------------------------------------
 ▼衆愚政治に陥ったギリシャの将来
 -------------------------------------------------------------
 
 ギリシャのパプリアス大統領による主要政党党首の連立協議は15日決裂し、
 再選挙が決定しました。

 緊縮策反対を掲げる急進左翼進歩連合などが既存の2大政党との
 連立反対を貫いたもので、これを受けて6月17日再選挙が行われることが
 決定しました。

 政治空白が長期化することでEUなどからの支援停止が
 現実味を帯びてきました。

 そのような中、ギリシャ国内からの預金引出額が14日までに
 7億ユーロ(約710億円)に達したことが分かりました。

 今、ギリシャは典型的な「衆愚政治」に陥っていると思います。

 次の選挙では、緊縮財政に反対する急進左翼進歩連合が第1党と
 なりそうな勢いを見せていますが、一方でユーロからの離脱に関しては
 「残留」を希望しているギリシャ国民が78%という統計が出ています。

 ユーロ残留の条件として求められたために前政権では緊縮財政の
 実施を決定したわけですから、
 「ユーロへの残留を希望するけど、緊縮財政は嫌だ」というのでは、
 ギリシャ国民は甘すぎると指摘せざるを得ないでしょう。

 実際には英国の紙幣印刷を担う企業が、以前のギリシャの通貨単位である
 ドラクマの印刷を始めているとも言われており、秒読み段階との
 見方もあります。

 通貨単位がドラクマに戻ったときには大暴落が予想されますから、
 今の段階からユーロの引き出しという形で「預金引き出し」が
 始まっているとの見方もあります。

 今後さらに加速して、「兆」単位の資金が短期間に蒸発してしまう
 のではないかと私は見ています。

 技術的な意味では紙幣を印刷すれば「ドラクマ」に戻ることは可能ですが、
 国家機能の側面から見ると、短期的にはほぼ停止してしまうような
 相当厳しい状況が予想されます。

 ユーロからの脱退という事態を想定した際に厄介なのは、
 「マーストリヒト条約」にもユーロへ加わる方法は示されていますが、
 ユーロからの脱退方法はどこにも明文化されてしないということです。

 これは誰もが考えたくないと思っている事態なのでしょうが、
 実際にはギリシャ経済がデフォルトしてしまえば放っておくには行きません。

 難しい問題とは思いますが、ここを解決することが求められています。

 ギリシャの将来を想像すると、短期的には地獄のような状況に陥りますが、
 中期的に見ればドラクマという弱い通貨になることで、昔のように
 海外からの外国人観光客を呼びやすくなるというメリットもあります。

 日本は「円」という自国通貨を持っている点で、ユーロとの関係性のある
 ギリシャとは異なりますが、国家債務はむしろ日本のほうが大きく、
 明日は我が身と考えて慎重にギリシャが辿る過程を見ておくべきだと思います。

 -------------------------------------------------------------
 ▼緊縮財政と経済成長の両立という魔法は、誰も実現していない
 -------------------------------------------------------------
 
 フランスのオランド大統領は15日、ドイツを訪問しメルケル首相と
 会談しました。

 両首脳は緊縮財政と経済成長を両立させる経済政策に欧州が軸足を
 置くことで合意。

 ギリシャ不安を抑えこむため、初の首脳会談では歩み寄りの姿勢を
 見せた形ですが、欧州債務危機の対応でも緊密に連携できるか
 否かという点が次の試金石となりそうです。

 先のG8でも、米オバマ大統領が同じように「緊縮財政と経済成長の両立」
 という趣旨のことを述べていました。

 おそらく雇用対策を念頭においた発言とは思いますが、それにしても
 この種の発言の現実性を考えると私には疑問が残ります。

過去を振り返っても、現実に「緊縮財政と経済成長」を「同時に」
 成し遂げた事例はありません。

 小さな政府・緊縮財政という方法を取った場合、その成果・果実を
 受け取れるのは十数年先です。

 先のG8でもこの「時間軸」を無視して議論を進めてしまっています。

 そして、オランド大統領とメルケル首相の会談でも同様です。

 どのくらいの時間で緊縮財政を実施し、どのくらいの時間をかけて
 成長していくのか、という点が議論されていないのです。
 
 「先に緊縮財政を実施し、政府の介入を最小に留め、
 何年か先には成長戦略をとりやすい状況を作る」
 
 という理想的なシナリオを描いているのかも知れませんが、
 これも実際には難しいと思います。
 
 緊縮財政を実施しているうちに、政府の介入が増え、大きな政府になって
 いき、緊縮財政の実施と並行して、「アレはやってはいけない」などと
 規制強化が行われます。
 
 結果として、何年経っても経済が浮上しないのです。
 
 これは残念ながら、日本の例を見てもよく分かることです。
 
 「緊縮財政と経済成長の両立」という魔法を実現できた人はいるのか?
 と私は問い質したい気持ちです。
 
 仮に可能だったとしても「時間のズレ」にはどう対処するのか?
 この2つをそれほど簡単に両立できるならば、なぜ今世界経済が
 これほど苦労しているのか?
 
 という点も説明できないでしょう。
 
 ドイツとフランスでは現在置かれている経済状況がまるで違いますから、
 意見が合致すること自体、私には不思議です。
 
 今回は両首脳の初会談ということですから、「社交辞令」的な
 意味合いも強いのかも知れません。
 
 ただ、得てして政治家は「社交辞令的な甘い言葉」に弱いと感じます。
 さらに言えば、国民はもっと弱いでしょう。
 
 だから国家経済が危機に瀕していても
 「緊縮は嫌、増税も嫌、税金は低いほうがいい」となって国が前へ進めなく
 なってしまい、その結果、国債市場から退出を要求されてしまうのです。
 
 ギリシャの政局不安を受けて、16日のアジア市場は全面安となり、
 18日米株式市場でもダウ工業株30種平均は6日連続の下落で、
 週間では451ドル安と今年最大の下げ幅となっています。
 
 日経平均の下落幅が低かったのは、日本にとっては幸運でした。
 
 欧州の経済問題がアジア、日本、米国経済にどのように波及してくるのか、
 慎重に見ていく必要があるでしょう。
 
 そして、ギリシャ経済危機は日本にとって決して他人ごとではありません。
 
 ぜひ、今ギリシャで起きていることを「自分事」として見つめ
 直してみてもらいたいと思います。
 
 
  ==========================================================
  この大前研一のメッセージは5月20日にBBT757chで放映された  
  大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
  再構成しております。
  ==========================================================


 -------------------------------------------------------------
 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
 -------------------------------------------------------------
 
 ユーロ残留を希望する国民と緊縮財政に反対する政党の躍進。

 ドラクマに戻るにせよユーロに残るにせよ、事の本質を見出した
 上で選択していかなければ、解決できない状況かもしれません。

 一方で日本も明日は我が身。
 注意深く経過を追っていく必要があります。
 

■2012年05月19日(土)  更新しました
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛ 『日本のデフレ対策と経済構造 〜日本と米国の違いを考える』
 ──────────────────────────────────

 デフレ対策 「日本化」回避を強調
米株式市場 ダウ工業株平均 4年4ヶ月ぶり高値
米住宅ローン金利 30年固定型3.84%で過去最低を更新

 -------------------------------------------------------------
 ▼日本の景気対策がなぜ難しいのか?日本と米国の違いは?
 -------------------------------------------------------------

 「我々は(日本のような)デフレに陥るのを回避した」。
 
 バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は25日、米国は素早い
 政策対応をした結果、バブル崩壊後の日本のような長期の経済停滞は
 回避できるとの見通しを表明しました。

 一方、日本政府は27日、デフレ脱却に向けた対策を検討する閣僚会議を開き、
 デフレへの取り組み方針などを示した4原則を了承しました。

 非正規雇用と正規雇用の均衡処遇、医療、介護など成長分野の
 需要掘り起こしなどを盛り込んでいます。

 私に言わせれば、バーナンキ議長も「良く言ったものだ」と思います。

 米国は90兆円規模の資金を投入して日本と同じような状況を回避したと
 いうことでしょうが、結果として銀行は集約され、ほぼゼロ金利状態に
 なりましたから、「ほとんど日本と同じ」だと私は思います。

 また米国と日本では「条件」が異なる点も忘れるべきではないでしょう。
 日本は米国に比べても厳しい条件下にあります。
 
 少子高齢化が進み、国内の消費は上向く様子はなく、また外国人が
 入ってこないためにダイナミックな政策をとることも難しい状況です。
 
 バーナンキ議長が言う「インフレ政策」として資金をマーケットに
 供給しても、日本の場合にはマーケットが資金を吸収しないという
 問題があります。

 日本では、一部経営難に陥っている企業を除けば、構造的に企業が
 資金を必要としていません。
 
 通常、自己資金もしくは減価償却の範囲内で賄えてしまいます。
 
 実際、2001年〜2006年にかけて30兆円規模の資金が日銀から
 マーケットに投入されています。
 
 ところがニーズがないため、資金は吸収されませんでした。
 
 仕方なく日銀は資金を銀行に貸し出しましたが、銀行が中小企業に対して
 貸し渋ったため、亀井氏による悪名高い
 「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」につながってしまいました。
 
 結局、企業にせよ個人にせよ、お金を吸収できないというのが
 日本固有の大きな問題なのです。
 
 政府が決めたデフレ脱却の4原則を読みましたが、
 「成長産業には成り得ない」というのが私の感想です。
 
 例えば非正規雇用を正規雇用に変えたところで、
 需要創出にはつながらないでしょう。

 このような流れになると「官民連携ファンド」のようなものが立ち上がり、
 最後まで責任を持たない官僚が、後先考えずに大きな予算を組み、
 「バラマキ」をするという可能性が大ですが、
 何ら根本的な問題解決にはなりません。

 日本の場合、「銀行そのものが機能していない」という点が
 根本的な問題だと私は考えています。
 
 日本の銀行には「これぞ成長産業だから投資しよう」という見極める力が
 あるわけでもないですし、「成長産業」を育てていく力もありません。

 今や銀行は統合されてしまい、どこもかしこも同じような銀行に
 なってしまいました。

 かつて住友銀行と松下電器がそうであったように、
 企業と銀行は何十年に渡る互恵関係がありました。

 中小企業で言えば、あるときは銀行にお世話になり、あるときは銀行に
 預けておくという関係性です。

 今はそうした関係性がありません。

 中小企業としては「借りても、どうせ後から貸し剥がしにあう」
 のは分かっているので、そうまでして成長しようとは思わないというのが、
 本音だと思います。

 こうした日本の特殊事情を考えると、米国と日本を一元的に比較することは
 難しく、バーナンキ議長が誇りたい気持ちも分かりますが、
 経済状況の違いから見ると米国のほうが幸運だったと言えるでしょう。

 -------------------------------------------------------------
 ▼回復の兆しが見える米国経済。自国経済を理解していない米国経済学者
 -------------------------------------------------------------

 1日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、米経済指標の改善を
 好感して反発し、前日比65.69ドル高の1万3279・32ドルで取引を終えました。

 終値として2007年12月28日以来、約4年4カ月ぶりの高値水準を回復しました。

 今年、米国は大統領選挙の年なので、「失業率が下がっている」
 「経済は好調さを取り戻している」など、やや誇張された報道が目につきます。

 ダウ工業株30種平均の推移を見ると、リーマン・ショック以降も、
 リーマン・ショックほどではないですが、何度か「大きめの波」が
 襲ってきているのが分かります。

 1日数ドルずつ推移するという安定した状態から比べると、下がるときには
 一気に100ドル下がるという状況もあるので、経済そのものが
 「安定している」とまでは言えないでしょう。

 ただし全体の平均値で見るとリーマン・ショック以前の水準に
 回復しつつあります。

 日本は未だそこまで回復をしていませんから、その点は大きな違いと
 いえるでしょう。

 また住宅建設についても明るい兆しが見え始めています。

 米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)は3日、
 米国の住宅ローン金利が過去最低を更新したと発表しています。

 同公社の週間住宅ローン調査によると1週間の期間30年の固定金利は
 全米平均で前週比0.04ポイント低い年3.84%で、
 これまでの最低だった2月16日の3.87%を下回ったとのことです。

 固定金利は高くなりがちですが、3.8%というのはものすごく有利な
 数字だと思います。

 政治的な働きかけもあったと思いますが、基本的には市場が決めている
 固定金利として、この数字に定められています。

 一昔前からすると、夢のような水準です。
 住宅建設が少しずつ上向いてきている証拠だと思います。

 そんな中、5月7日号のNewsweek誌は表紙に「スーパーマン」を登場させ、
 「米国は未だにナンバーワンである!」という記事を
 大々的に掲載していました。

 私としては、また米国の悪癖が出てきたかと思いました。

 「the U.S. is better, stronger and faster」などと書いてありましたが、
 そもそも勝手に比較して「米国経済が衰えた」
 「中国にやられてどうしようもない」という記事を書くのも自分たち自身です。

 1年から2年周期で米国を非難したかと思うと、今回のように
 やっぱり米国は強いという記事を書いています。

 2009年3月以来S&P500の株価指数が104%上昇、2011年には6200万人の
 外国人旅行者の流入、アップルの好業績、2010年2月以来、民間部門での
 400万人の雇用創出など、確かに頷ける部分はあります。

 2011年の輸出額は約170兆円で2009年に比べて34%伸びているといいます。
 ドル安の背景を考えれば当然でしょう。

 さらに言えば、米企業は「特許」「ネットダウンロード販売」
 で莫大な利益をあげています。

 ここで注意してもらいたいのは、米国は世界で唯一「貿易という概念がない国」
 だということです。

 米国には国際貿易という考え方は必要ありません。
 なぜなら、ドルという自国通貨で決済できてしまうからです。

 わかりやすく言えば、何か海外のものが欲しいと思ったら、
 輪転機を回しさえすれば買えるのです。

 日本、中国、ブラジルなど世界の国々は、そんなわけにはいきません。
 何かを買うときには、まずドルを手に入れる必要があります。
 
 日本のように貯めているドルを使える国もあれば、
 借金をしてドルを手に入れる必要がある国もあります。

 こうした背景を理解せずに、かなり古い経済学を拠り所にしているのが
 米国の経済学者であり、彼らは自国の経済を正しく理解できていない、
 と私は感じています。

 日本は米国と貿易戦争を30年も繰り広げてきましたから、こういうことを
 分かっていますが、中国はまだこのあたりの事情を理解できてないと思います。

 私は中国に行った際には「日本の経験が中国でも役に立つ」と述べているのは、
 まさにこういう部分です。

 今、中国は貿易戦争真っ盛りで、米国に「いじめられている」最中です。

 ぜひ、日本の経験・事例を参考にしてもらいたいところです。


  ==========================================================
  この大前研一のメッセージは5月6日にBBT757chで放映された  
  大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
  再構成しております。
  ==========================================================


 -------------------------------------------------------------
 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
 -------------------------------------------------------------
 
 政府が掲げた脱デフレ4原則。
これに基づいた施策が、いま検討されています。

 ただし効果を上げるには、構造を掘り下げ、本質的問題を
 発見することが必須。

 アメリカの産業はなぜ資金吸収力があるのか?
 日本の産業にはそのモデルを当てはめることができないのか? 
 
 大きな観点から様々な情報を調べ、そこから本質となる1つの問題点を
 発見していくことが、確かな解決への第一歩となっていきます。  

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月