2012年07月06日(金) 

┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
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┗━┛ 『鴻海(ホンハイ)と経営者像 〜提携のやり方を考える』
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 尖閣諸島問題
 日本との共同開発案を提案
 液晶パネル
 奇美実業 液晶パネルから実質撤退

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 ▼ 鴻海・郭台銘会長の尖閣諸島発言は、売名行為
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 電子機器の受託製造で世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業
 グループの郭台銘会長は18日、台湾も領有権を主張している、
 沖縄県・尖閣諸島について、
 
 「日本が望むなら私が出資する。日台双方で東シナ海の油田共同開発を行って
 共に利益を生み出したらよい」と述べたとのことです。

 おそらく、この発言は「本気」ではなく「売名行為」だと私は感じました。

 「本気」で「日本と一緒に利益を」と考えているのではなく、仮に
 「5000億円」を出してでも「売名行為」になれば得だと考えていると思います。

 郭台銘会長という人物はそういうことができる人なのです。

 日本側がこの提案に頷く可能性は極めて低いことも理解した上で、
 このタイミングでこの発言ができるのは恐ろしいところです。

 ただし基本的には商売人ですから、巨大な事業を展開している中国から今回の
 発言について叩かれたら、あっという間に静かになるでしょう。

 数ヶ月前シャープが鴻海と提携を発表した際、郭台銘会長の性格を考えると、
 「提携」ではなく「買収」であり、都合が良いように
 「シャープが利用されるだけ」になるかも知れないから
 注意をしたほうが良いと私は述べましたが、今も同じ気持ちです。

 液晶パネルの主力工場である堺工場の運営子会社
 「シャープディスプレイプロダクト」について、大日本印刷と
 凸版印刷による出資が遅れると発表しています。

 事務手続きの問題もあるのでしょうが、おそらく鴻海の存在が影響していると
 思います。
 
 大日本印刷と凸版印刷もシャープが相手だと思っていたのに、
 急に郭台銘会長が登場したのです。

 出資が遅れてしまうのも当たり前です。

 シャープの株価は下落してきていて、数ヶ月前鴻海と提携時に7000億円を
 割り込んだ時価総額は、6月29日時点で4400億円になってしまいました。

 シャープの堺工場運営子会社への鴻海の出資予定は660億円ですが、
 未だに4分の1しか支払われていません。

 このままシャープの株価が下がり続ければ、運営子会社への投資資金を
 シャープ株そのものの購入に充てることで、自然と持ち株比率を15%、30%、
 40%と上げていくのを狙っているのではとさえ勘ぐってしまいます。

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 ▼ 経営者の人物を知ることが、重要な要素
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 台湾の石油化学大手、奇美実業は液晶パネル事業から実質撤退します。
 
 筆頭株主である液晶パネル世界3位の奇美電子の役員3人が、先月28日付けで
 辞任し、今後は第2位の株主である鴻海精密工業が実権を握るということです。

 ここでも「美味しい」ところを持っていくのは、鴻海・郭台銘会長です。

 奇美実業の液晶パネル事業を引き継ぎ、シャープの工場も手に入り、
 郭台銘会長としては笑いが止まらないのではないかと思います。

 シャープのある会議の場で郭台銘会長は
 「今の鴻海の時価総額なら、シャープを丸ごと買収できる」と発言し、
 シャープの幹部に圧力をかけたと言われています。

 郭台銘会長という人物をよく知らず、人物査定もしないままに
 手を組んでしまったことが間違いだったと言わざるを得ないでしょう。

 一昔前なら、例えば米国企業に目を向ける場合、GE、IBMなどの超大手企業を
 知っていれば事足りましたが、今はすっかり時代が変わってしまいました。

 今は世界に影響力を与え得る新しい会社が、続々と登場しています。

 しかも同じ人物が2回、3回と起業するのが当たり前です。

 例えば、イーロン・マスク氏はPayPal社の前身であるX.com社を起業し、
 さらにはロケット製造会社や太陽光発電会社も起業しています。

 こうした状況の中で、特に海外の企業と付き合っていくには、
 その経営者の人物をよく知ることが大切です。

 台湾に関して言えば、何年間にも渡って私は100回以上足を運んでいますし、
 友人も100人以上います。

 その上で、鴻海・郭台銘会長という人物について「知っている」のです。

 インターネットで情報を調べただけで「知っている」というのとはまるで
 次元が違います。

 最近の経営コンサルティングの役割の1つには、こうした経営者の
 人物査定をした上で「この会社は注意したほうがいい」と指摘できる
 ことが挙げられると思います。

 経営者の性格まで理解した上で、誰と組むべきかを
 言えなければならないのです。

 国内の経営者であれば、それほど注意を払わなくても耳に入ってくるかも
 知れませんが、海外の経営者についてはそうはいきません。

 海外の企業と手を組むという場合には、経営者の人物について調べてから
 決断することが大切だと思います。
 
 
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  この大前研一のメッセージは7月1日にBBT757chで放映された  
  大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
  再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 企業を見ていく際には、商品や財務などのいくつかの切り口がありますが、
 その内の一つとして経営トップを査定する必要もあります。

 経営者の実績だけではなく人柄まで理解することが、提携に当たっては
 大切な要素かもしれません。

 このように、切り口を整理し、漏れなく把握するための論理的思考が
 ビジネスでは求められます。

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