2013年03月29日(金) 
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『TPP・米韓FTA・自動車認証基準〜関連性を理解しながら情報を集める』
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 TPP コメ部分開放、対策費6兆円超
 米韓FTA 発行後1年間の米国向け輸出1.4%
 自動車認証基準 安全、環境性能などEUと基準統一へ

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 ▼ 農業対策費に税金を投じるなら、成果を見せるべき
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 日経新聞は24日、
 「ウルグアイ・ラウンドではコメ部分開放、対策費6兆円超」
 と題する記事を掲載しました。

 1986〜94年の
 関税貿易一般協定・多角的貿易交渉(ガット・ウルグアイ・ラウンド)
 の際、農業対策費では8年間に6兆円を超える予算が投じられたものの、
 農業の大幅な競争力強化にはつながらなかったと指摘。

 今回のTPP交渉参加に向けた対策について、自民党幹部は
 「具体的な事業の積み上げ方式を徹底し、バラマキを抑える」
 と強調していると紹介しています。

 私に言わせれば、農業・コメへの影響について
 日本は騒ぎ過ぎだと思います。

 発効1周年を迎えた米韓自由貿易協定(FTA)ですが、
 韓国では関税引き下げの恩恵を受けた工業品の対米輸出が伸びる一方、
 懸念された輸入急増による国内農業への打撃は限定的だったとする
 統計を公表しています。

 韓国でも日本と似たような懸念が強くありましたが、
 結局、国内農業への影響は大きくなかったのです。

 日本でも、かつて市場開放されたピーナッツ、さくらんぼ、
 牛肉、オレンジなどを見ると全く同じだと分かります。

 千葉県のピーナッツ、山形県のさくらんぼなどは、
 米国から輸入品が入ってきて、むしろ値段が高くなったほどです。

 またコメについては、再びミニマム・アクセスを適用する
 可能性が高いでしょうが、これは全く無駄なことです。

 コメの国内生産量と消費量の推移を見ると、
 この50年間で日本人の消費量は約半分に減少しています。

 高い関税を課して、見代わりに食べもしないコメを輸入するとは
 馬鹿げていると思います。

 コメも市場開放してしまえば良いのです。

 質の良いコメを求めて日本人は国内のコメを買い続けると思います。

 もちろん、そうではない部分には外国産のコメが
 入ってくると思いますが、それはしょうがないことです。

 かつて農業対策費で6兆円も投じたのに、
 全く効果は見られませんでした。

 私に言わせれば、お金が欲しいがゆえに騒ぎ立てていると感じます。

 今回、政府はTPPではバラマキを実施しないと言っていますが、
 まず信用できません。

 今騒ぎ立てている人たちを黙らせるには、お金という解決策が
 最も簡単な手段だと自民党は考えていると思います。

 一般国民からすると、税金を使うなと声を大にして
 主張したいところです。

 税金を使うのなら、その資金によってどのくらい競争力が
 増したのか証明するべきです。

 ウルグアイ・ラウンド以降、多額の資金がつぎ込まれたのに、
 日本の農業の生産性は高くなっていないし、
 競争力も増していません。

 きちんとした成果を出していないのだから、
 税金を使うべきではない、というのは真っ当な主張だと思います。

 この点をあいまいにしたまま、再び自民党がバラマキをするのなら、
 結局のところ「騒いだ者勝ち」ということです。

 一般国民からすると、踏んだり蹴ったりといった状況でしょう。


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 ▼ 米国車が売れないのは、非関税障壁が理由ではない
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 政府が自動車の安全や環境性能の認証基準を欧州連合(EU)
 などと統一する方向で検討に入ったことが分かりました。

 日本とEUは25日に東京で首脳会談を開き、経済連携協定(EPA)交渉の
 開始で正式合意しますが、日本側は焦点の自動車分野で市場開放に
 取り組み、EUに関税撤廃を求める方針です。

 これは日本にとっても大きなメリットがあると思います。

 自動車について言えば、米国とはこれほど話がスムーズに
 進まないでしょうから、まず欧州から始めるのは賛成です。

 日本の自動車産業について米国は、「市場が公平ではない」
 「軽自動車が優遇されている」など、色々と批判をしています。

 しかし、本音ではもし25%(ピックアップトラック)の
 関税が完全に撤廃されてしまったら、
 米国の自動車産業の首を絞めることになると理解しています。

 だから、TPP交渉でも自動車については、
 米国からハードルを設けたいという希望が出てくるはずです。

 未だに「非関税障壁のせいで米国車が日本で売れない」と
 主張する米国人もいますが、これは全くの見当違いです。

 米国車に競争力がないから、日本で売れないのです。

 その証拠に、欧州車は日本でも売れています。

 非関税障壁が理由であるなら、米国車と同様に
 欧州車も売れないはずです。

 結局、米国車が日本人にウケていないのです。

 これからTPP交渉が始まるわけですが、
 交渉官にはこのような事実についても米国側にはっきりと
 伝えてほしいと思います。


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 この大前研一のメッセージは3月24日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 TPP参加が、日本の農業に与える影響については、
 様々な意見が出されています。

 では、実際はどうなのでしょうか。皆さんはどのように
 調べて、結論を出しますか?

 今回大前は、米韓FTA発行後の状況や、
 日本で過去に市場開放された農産物を検証し、
 関税撤廃による農業への影響を考えていきました。

 ただ闇雲にたくさんの情報を集めるのではなく、
 考えるべき問題を明確にし、関連のある情報を
 効率よく集めていく必要があります。

 情報収集のやり方次第で、あなたの仕事の成果も
 変わってくるかもしれません。 

2013年03月22日(金) 
   
【1】今週の 〜大前研一ニュースの視点〜
    
  『震災復興と電力問題〜俯瞰的な視野であらゆる可能性を考える』

              
【2】問題解決力トレーニングプログラム より

≪ 締め切り迫る!開講10周年記念キャンペーンのご案内 ≫

   キャンペーン実施期間は3月27日(水)10時まで!
   春からのご受講をお考えの方は、この機会をお見逃しなく!   


【3】問題解決力トレーニングプログラム より

≪ 講座ガイダンス開催のご案内 ≫

   キャンペーン期間最後のガイダンスを3月25日(月)に開催!
   本日開催「オンラインガイダンス」のお申込みも受け付け中!

   
【4】ロジカルシンキング超入門トレーニング より

≪ 講座ガイダンス『体感ロジカルシンキング』のご案内 ≫

   今月最後のガイダンスを3月23日(土)に開催! 
   若手社員向けの教育プログラムをお探しの方もご参加ください!

        
【5】クリックアンケートのお願い 

   
【6】あとがきに代えて


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┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『震災復興と電力問題〜俯瞰的な視野であらゆる可能性を考える』
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 大規模災害対策 「大規模災害復興法」を4月上旬にも閣議決定
 震災復興 避難生活者 約31万5000人
 避難者対策 居住者向け放射線量の安全指針づくりに着手
 太陽光発電 再生可能エネルギーの価格政策を見直し
 発電燃料 火力発電の燃料価格が高止まり
 電力問題 今夏も節電要請の方針

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 ▼ リーダーシップを発揮し復興計画を立案し実行することが政府の役割
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 政府は大災害時の対応を迅速にするため、大規模災害復興法を
 4月上旬にも閣議決定し、今国会に提出する方針を明らかにしました。

 今後、想定される南海トラフ巨大地震や首都直下地震に備える考えです。

 つまり、地方自治体を超えて直接政府が指示をしていくということです。

 東日本大震災の際には、当時の菅首相が直接現地に乗り込んで
 指揮しようとしましたが、結局そういう制度がなかったために
 機能せずに終わってしまいました。

 大規模災害の際には、都道府県間、県・市区町村間のコーディネート
 などもあるので、政府が全責任を追って対応するのは極めて重要なこと
 だと思います。

 東日本大震災から2年を経て、仮設住宅などで避難生活を送る人は
 なお約31万、福島第1原子力発電所事故の影響で福島県から
 県外へ避難した人は5万7135人にのぼります。

 この事実から見れば、2年間にわたって日本はある意味において
 無政府状態だったと言わざるを得ないでしょう。

 私は震災の一週間後には復興計画案を発表しました。

 高台移住の提案、津波プレインの制定も含め、福島第1原発から
 5キロ圏内の居住できない旨をいち早く通達し、
 人生の計画を早めに立て直せるようにすべきだと述べました。

 いち早くこうした計画を立てて責任を持って実行するのが
 政府の役目だと思います。

 関東大震災のときは、短期間で対策案をまとめたと言います。

 当時よりも、日本の復興対策ブレーンの力は衰えたと言われても
 仕方ないでしょう。

 また未だに30万人の仮設住宅居住者がいるという異常事態に
 何とも感じていないことにも、私は驚いてしまいます。

 日銀人事やアベノミクスも大切かもしれませんが、
 その前に優先すべき事項があるということを自民党にも
 改めて認識してほしいと思います。

 自民党は避難者対策として居住者向け放射線量の安全指針づくりに
 着手したそうですが、これは早急に進めて欲しいところです。

 現在は長期的な除染目標の「年間積算線量1ミリシーベルト以下」を
 参考値としていますが、これは厳しすぎます。

 もっと現実に合わせた安全指針を策定し、一刻も早く
 帰ることが出来る人に戻ってもらえるようにするべきだと思います。

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 ▼ 何が何でも再生可能エネルギーではなく、石炭も検討の余地あり
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 政府は太陽光発電の急拡大を支えてきた再生可能エネルギーの
 価格政策を見直すとのことで、買い取り価格を2013年度から
 約1割下げる案を決定しました。

 当時の民主党政権が一部の業界に煽られて、20年間の固定買取制度を
 決めてしまったのですが、明らかに勇み足でした。

 かつてドイツやスペインでも20年間の固定買取を決定したことが
 ありましたが、最近になって価格を下げる方向で修正をしています。

 再生可能エネルギーの買取価格を高いままで固定していたら、
 おそらくゆがんだエネルギーミクスになるでしょう。

 太陽光、風力によって得られるエネルギーは気まぐれの要素が強く、
 それを貯めておくためのバッテリーをどう用意するのか?
 といった問題も解決されていません。

 さらに太陽光発電についてはあまりに高価格で買取価格を
 固定してしまったため、参入業者が増えすぎて困っている状況です。

 この程度の展開を予想することさえできなかったのは残念です。

 自民党は一刻も早く是正してほしいと思います。

 また再生可能エネルギーに固執する必要はなく、
 他のエネルギーについてもしっかりと検討することが大切です。

 例えば、火力発電に使う液化天然ガス(LNG)や重油の価格が
 高止まりしています。

 LNGのスポット価格は東日本大震災前に比べ9割上昇し、
 重油も6%上がっています。

 原子力発電所が相次いで停止したのに加え、中国や南米など
 新興国で発電燃料の需要が拡大しているためということもあります。

 もっとも、そもそも再生可能エネルギーの価格が高すぎる
 というのが問題なのです。

 2013.03.11号のBusinessweek誌でも記事になっていましたが、
 再生可能エネルギーの価格が高止まりしているのに対し、
 化石燃料の価格は下がってきています。

 二酸化炭素の排出という問題はありますが、カナダのように
 政府が負担を増やして対処するなど、方法を模索することは
 できるでしょう。

 特に石炭火力の発電コストは原子力に匹敵するほど低価格です
 (原子力:8.9、石炭火力:9.5、LNG火力:10.7、石油火力:36、
 それぞれ円/1キロワット時当たり、2010年の価格)
 から、これを利用しない手はないと思います。

 日本は歴史的に石炭に対するアレルギーがあります。

 世界的には発電量に占める石炭の割合は約40%ですが、
 日本は30%弱に過ぎません。

 中国は約80%、韓国、米国、ドイツも40%を超えています。

 日本は意識的に石炭を避けて比較的クリーンなLNGに傾いていましたが、
 ここに来て価格は高止まりしています。

 確かに石炭には二酸化炭素の問題がありますが、最先端の技術を
 利用することで、排出される二酸化炭素をクリーンなものに
 変えることも可能な時代になりつつあります。

 夏の電力需給のため東京電力が石炭火力発電所を新設する計画に、
 環境省が反対の姿勢を示していましたが、先日自民党によって
 ひっくり返されました。

 自民党は民主党に比べて現実的な判断を下したと言えるでしょう。
 盲目的に「再生可能エネルギーが良い」と考えるのではなく、
 様々な可能性を検討していくべきだと私は思います。

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 この大前研一のメッセージは3月17日にBBT557chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 「再生可能エネルギー」は、環境にとっては良いのですが、
 発電コストが高いというデメリットを抱えています。

 今回大前は、様々な発電エネルギーを比べ、
 これまで日本が避けてきた「石炭」という選択肢の有用性を
 述べました。

 このように、多くの選択肢を挙げ、それぞれの
 メリット・デメリットを整理することで、状況に合った
 選択が可能となります。  

 思い込みや常識にとらわれず、大きな視点で、
 あらゆる可能性を検討しなければ、取るべき有効な
 選択肢を見逃してしまうかもしれません。  

2013年03月15日(金) 
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『中小企業支援と産業競争力会議〜既存の枠にとらわれない発想の重要性』
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 中小企業支援
 中小企業金融円滑化法 再延長せず
 産業競争力会議
 産業の新陳代謝へ議論

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 ▼ 新たな受け皿は、サラ金業者
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 政府・与党は7日、3月末で期限切れとなる中小企業金融円滑化法を
 再延長しないことを決めました。

 中小企業団体などはさらなる延長を求めていましたが、
 安倍政権は再延長せず、中小企業の経営支援強化に
 軸足を移す考えとのことです。

 連立を組んでいる公明党は反対だったにも関わらず、
 自民党が「再延長しない」という決断をしたのは
 評価できると思います。

 しかし残念ながら、本質的な問題は何一つ解決されていません。

 数十万社ある中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)適用企業
 の中で、経営状態が特に危険視されている企業は5万社〜6万社あると
 言われています。

 現在の倒産件数の推移を見ると、40件/月というペースですから、
 モラトリアム法を再延長しない場合、倒産件数は
 一気に増加することが予想されます。

 このとき厳しい状況に追い込まれるのは、信用金庫や信用組合です。

 不良債権比率を見ると、1%〜2%の都市銀行に対して、
 信用金庫や信用組合は5%〜8%もあります。

 おそらく4月以降になると10%を超えてくると思います。

 今金融庁が密かに考えていることは、この銀行が抱える不良債権を
 別のどこかへ「飛ばして」しまうことだと思います。

 まさに住専の時と同じ対応です。

 また、資金繰りに窮した中小企業の消費者金融「サラ金」への
 需要も高まると言われています。

 法律改正によって景気が悪い消費者金融業界が、
 モラトリアム法の終了後、一気に活性化する見込みです。

 今、関連企業の株価が上昇している理由です。

 モラトリアム法の期限が切れると、参議院選挙前に一気に
 倒産企業が増加すると言われていましたが、これによって「徐々に」
 倒産企業が増えるという流れになると思います。

 このような対応をしたところで、結局のところ100兆円規模のお金を
 正常化するためには、住専の対応と同様に最低でも
 10年近い年月が必要となります。

 倒産企業数が5万社〜6万社と想定される一方、
 日本では新しい企業や産業が出てきてないことが、
 根本的な問題として非常に重要だと私は思います。

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 ▼ 新しい産業を起こすためには、規制撤廃と失業の山が前提
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 政府の産業競争力会議は6日、産業の新陳代謝を促し、
 成長産業に人材を移す対策の議論を始めました。

 民間議員が解雇ルールを法律で明確にするよう求めたのに対し、
 田村厚生労働相は、日本は解雇が容易な米国と雇用形態が異なるなど
 として慎重な姿勢を示したとのことです。

 産業競争力会議は、起業家、経営者、学者など
 あまりに発想が異なる人が集まっているので意見がまとまるとは
 考えられません。

 そして、自民党や役人の多くは基本的にTPPですら拒否する姿勢を
 示していますから、本気で「競争力のある産業を作ろう」と
 固く決意している人はいないのだと思います。

 私としては、なぜ三木谷氏や新浪氏が協力しているのかと、
 疑問に感じてしまいます。

 政治家や役人が、競争力のある新しい産業を
 作ろうとしないのは当然なのです。

 というのは、新しい産業を起こすためには「規制撤廃」が
 必須だからです。

 悩ましいことに「規制撤廃」をすると、それまで規制に
 守られていた産業は確実に潰れます。

 すなわち、新しい産業が生まれる前に、
 大量の失業が発生します。

 その後、10年〜15年経って、ようやく新しい産業が
 根付いてくるのです。

 今でこそ米国レーガン元大統領は偉大な大統領と言われていますが、
 その評価を受けたのは、通信・金融・航空・運輸などの産業において
 規制撤廃を行い失業の山を生み出した当時から約15年経ってからでした。

 日本に目を向けてみて、15年後の将来のために今目の前で
 失業者が溢れるような施策を、政治家や役人が選択できるでしょうか?

 産業競争力会議のメンバーに、それほど時間軸に対して
 許容力のある人はどれほどいるでしょうか?

 「規制撤廃をするなら、まず先に失業の手当てが必要」
 などと考えていては、絶対に上手くいかないでしょう。

 むしろ若者に自由を与えて、取り締まるのを控えるくらいが
 丁度良いと私は思います。

 理想を言えば、そのような状況になって、
 かつてのスティーブ・ジョブズのような人材が
 生まれてくれれば最高です。

 しかし今の日本の状況を見ると、規制撤廃を敢行し
 新しい産業を生み出すのは、まず不可能です。

 ゆえに以前から私は別の方法で景気を回復することを
 提唱しているのです。

 それが「心理経済学」です。

 新しい産業を生み出せないなら、今ある1500兆円の
 個人金融資産が市場に流れてくるような方法を考えるべきでしょう。

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 この大前研一のメッセージは3月10日にBBT557chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 長期的な成果を出すために、短期的成果を犠牲にしなければ
 ならないことは、ビジネスの場面ではよくあること。

 しかし、わかっていても、目の前にある利益を手放すことは、
 容易なことではありません。

 今回大前は、「心理経済学」という別の景気回復策を
 提唱しています。

 規制撤廃の議論に固執せず、状況を俯瞰的な視点で観察し、
 既存の枠にとらわれずに発想する術を持っているからこそ、
 他の選択肢を見つけることができるのです。

 皆さんも、柔軟な発想で選択肢を広げてみませんか?

2013年03月08日(金) 
      
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『北方領土問題と韓国の新大統領〜長期的な時間の流れで考える』
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 北方領土問題
 四島共同開発を呼びかけ
 韓国大統領
 朴槿恵氏が第18代韓国大統領に就任

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 ▼ 日本人は、北方領土問題の歴史的な経緯・実態を知るべき
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 ロシアのイシャエフ極東発展相は27日、北方領土問題について
 日露がまず四島の共同開発を通じて協力関係を築き、そのうえで
 解決を将来の世代に委ねるべきだとの見解を表明しました。

 また、プーチン大統領と森喜朗元首相の会談について
 「首脳会談実現への建設的な会談だった」と評価し、
 首脳会談での成果に期待を示しました。

 イシャエフ極東発展相には申し訳ないですが、
 日露の共同開発を日本側が受け入れることはないだろうと思います。

 共同開発となれば、帰属を明確にする必要が出てきます。

 またパスポートの問題など、細かい点の調整も必要になります。

 実は森喜朗元首相とプーチン大統領の間では、
 全く別の話し合いが進んでいます。

 それは
 「今年中にいくつかの案を提示し、それをベースにまた
 話し合いをしましょう」というものだと言われています。

 これは非常に上手な言い回しだと思います。

 四島同時返還ばかりを主張しても、
 堂々巡りになるだけで全く意味はありません。

 その点、この提案方法なら様々な可能性を検討できるでしょう。

 日本の北方四島に対する歴史認識は、
 ある意味において尖閣諸島に対する中国のそれに似ています。

 最近、尖閣諸島問題について中国は明らかに
 トーンダウンしています。

 これは歴史を調べるほど、自らの主張は証明しづらく、
 また本質的には台湾の問題だということが
 分かってきたからでしょう。

 日本でも北方四島返還についての歴史的経緯を
 知らない人が大勢います。

 そもそも日本が北方四島一括返還を請求したのは、
 1956年の米ダレス国務長官と重光外務大臣の会談がきっかけです。

 この時、米国は北方領土問題が解決に向かい、
 当時のソ連と日本が近づいてしまうのを避けたいと考えていました。

 それゆえ、沖縄返還の条件として、ソ連に四島一括返還請求を
 することを求めたのです。

 要するにソ連に対する米国の嫌がらせです。

 森喜朗元首相は正しく理解していますが、政治家の中にも
 この事実を知らない人はたくさんいます。

 今の時代、ウィキペディアなどを調べるだけでも、ある程度の
 情報を入手することは可能ですから、日本人として
 こうした歴史的な実態をもっと知っておくべきだと私は思います。

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 ▼ 朴槿恵大統領への期待感はゼロ。韓国の日本に対する反応は子供じみている
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 先月25日、朴槿恵(パククネ)氏が韓国初の女性大統領に
 就任しました。

 ソウルの国会議事堂前広場で開かれた就任式で朴氏は、
 「希望の新時代を拓く」と宣言。

 「第2の漢江(ハンガン)の奇跡」を成し遂げると述べ、
 経済成長による雇用創出などに全力を尽くす考えを強調しました。

 また北朝鮮に対しては核の放棄をあらためて求める一方、
 将来的には対話を目指す考えを示しました。

 朴槿恵大統領が言う「第2の漢江(ハンガン)の奇跡」には
 全く賛同できません。

 彼女の父親が成し遂げた「漢江(ハンガン)の奇跡」の
 影響でしょうが、正確に言えばあの時の復興と経済成長は、
 ソウル近郊に限られたものでした。

 大統領としては「韓国全土」について話をするべきだと
 思いますが、今表明している朴槿恵大統領の経済政策で
 韓国全体が経済的に大きく発展するとは全く思えません。

 結局、「漢江(ハンガン)の奇跡」という言葉遊びに
 終始しているだけだと私は感じています。

 また日韓関係については、「加害者と被害者という歴史的立場は
 千年の歴史が流れても変えることは出来ない」と述べていますが、
 全くお話にならない次元の低い見解です。

 こんなことを言い出したら、
 フランスとドイツはどうするのでしょうか?

 ドイツとフランスは、加害者と被害者が何度も入れ替わりながら、
 その歴史を刻んでいます。

 あるいは、カリフォルニアを奪われたメキシコは、
 今でも米国に文句を言い続けることになるのでしょうか?

 先日、韓国地裁が対馬の寺から盗まれた仏像の
 返還差止め判決を下しました。

 仏像は700年前の仏教弾圧時に朝鮮から日本に持ち込まれたもので、
 これを日本による略奪だと批判していますが、これもおかしな話です。

 700年前に日本に持ち込んだのは誰でしょうか?

 日本が自ら持ち込んだものではないのに、
 略奪だと言うのでしょうか?

 当たり前ですが、70年前の植民地時代とは全く関係ありません。

 植民地時代に日本が強引に持ってきたものではありません。
 
 とんでもない「言いがかり」だと思います。
 韓国は自国の歴史をしっかりと振り返るべきでしょう。

 残念ながら、朴槿恵大統領の演説を聞いていて、
 「この人なら大丈夫だろう」と思うところは1つもありませんでした。

 今の日本に対する韓国の反応はあまりに子供じみていると思います。

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 この大前研一のメッセージは3月3日にBBT557chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 北方領土問題や、日韓関係などを考える際、それぞれの国が
 歩んできた歴史に目を向ける必要があります。

 歴史を遡っていく際に大切なことは、長期的な時間の流れで
 見ていくこと。

 短いスパンで振り返ってみても、
 歴史全体の流れを捉えることはできません。

 ビジネスにおいても、なるべく長い時間の流れで見ることにより、
 市場や業界全体の流れを理解することができます。

2013年03月01日(金) 
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『TPP交渉参加と日本の農業改革〜価値ある情報を理解する』
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 農業改革
 農業の構造改革を加速
 TPP
 すべての品目が交渉対象

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 ▼ 日本の農業を成長産業に位置づけるなど、世界を知らなすぎる
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 安倍首相は18日、政府の産業競争力会議で今後の農業政策について
 「成長分野と位置づけ、産業として伸ばす。農業の構造改革を加速し、
 農産品、食品の輸出を拡大する」との考えを示しました。

 また同時に「『日本の農業は弱い』という思い込みを
 変えていくことが重要だ」と指摘したとのことですが、
 私は理解に苦しみます。

 産業競争力会議のメンバーには、竹中氏などもいるはずなのに、
 なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

 日本の農業を成長分野と位置づけて、あまつさえ輸出で
 1兆円規模を目指すなど、まず不可能です。

 主要国の平均経営農地面積を比較して見ると
 以下のようになっていて、日本の農業に国際競争力が
 ないことは一目瞭然です。

 米国:178.6、イギリス:55.6、フランス:48.6、ドイツ:43.7
 北海道:18.7、日本全国:1.8 (単位:ヘクタール)

 北海道でも米国の10分の1に過ぎませんし、
 それ以外の地域は箸にも棒にもかからないレベルです。

 世界的に見れば、オーストラリアの方が米国よりも、
 さらに広い農地面積を有しています。

 この現状で農業によって世界と戦おうなど、
 「井の中の蛙」の中でも相当レベルが低いと言わざるを得ません。

 また日本の農業について考えるとき、
 次の2点が重要だと私は思います。

 まず1つは、農作物は工業用品よりも嗜好品に近い感覚で
 捉えるべきだということです。

 市場が開放されたからと言って、必ずしも価格が安ければ
 受け入れられるわけではありません。

 日本でも、ピーナッツやさくらんぼの市場が開放されましたが、今でも
 千葉県のピーナッツ、山形県のさくらんぼの方が海外から輸入したもの
 よりも高値で売れており、見事に生き残っています。

 つまり、国際競争力とは関係なく、ニッチなニーズが存在するという
 事実を認識すべきだと思います。

 2点目は、日本では耕作放棄地も耕作放棄地面積率も共に増加し
 続けているということです。

 特にこの十数年間で、耕作放棄地に占める自給的農家と
 土地持ち非農家の割合がぐっと増えています。

 ウルグアイ・ラウンドの後、莫大な資金を投じて
 農耕地の拡大を図ったのに、結局は耕作放棄地に成り下がり、
 日本農業の弱体化は進む一方です。

 日本の農業従事者の平均年齢は65歳を超えていますから、
 頑張れと言っても体力的にも難しいでしょう。

 このような現状を踏まえて、
 「農業で国際競争力を持って成長分野と位置づける」など
 信じられない話です。

 もしかすると、この話題そのものが何かのためのフェイクなのかも
 知れませんが、それにしても「筋が悪い」話だと私は感じます。

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 ▼ 例外なき貿易自由化はあり得ない。米国にも悩みの種はある
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 日米両政府は22日、環太平洋経済連携協定(TPP)についての
 共同声明を発表しました。

 「あらかじめ、一方的に全ての関税撤廃を約束するよう求められる
 ものではない」としており、安倍首相は交渉への日本への参加について、
 「なるべく早い段階で決断したい」と意欲を示しました。

 TPPで米国が市場開放を求めて狙ってくるのは、農業に加えて、
 郵政(特に簡保)の利益だと思います。

 TPPによる「例外なき貿易自由化」の危険性を訴える人がいますが、
 実際にはどこの国でもあり得ません。

 米国にしてみても「悩みの種」はあるのです。

 米国の場合、それはGMとフォードです。

 両社ともピックアップ・トラックの業績が好調ですが、
 日本のピックアップ・トラックにのみ25%の関税をかけています。

 もしTPPによって、この関税が撤廃されれば、
 せっかく回復しつつあるGMもフォードも危ういかも知れません。

 特にフォードはかなり危険だと思います。

 ですから、全てをテーブルの上において議論したとしても、
 米国にも「これは例外にしてほしい」というものはあるはずだから、
 極端に恐れる必要はないのです。

 日本の場合、農業団体が騒ぎを大きくしている節があります。

 これは、おそらく補助金狙いでしょう。

 すでに補助金漬けの日本の農業が、さらに補助金をとるために
 騒動を起こしているというのが実態だと私は見ています。

 米国側の事情も分かっているので、安倍首相としては
 TPPへの参加を決断できると思います。

 党内の手続きは少々面倒になることが予想されます。

 おそらく、参議院選挙の直前まで引き伸ばして6月くらいが
 最終的な目安になるでしょう。

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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 安倍首相は、農業を成長分野と位置付け、国際競争力を
 上げようとしているようですが、
 日本は農業で世界と戦っていけるのでしょうか?

 それを考える上で、まずやらなければならないことは
 適切なデータに基づいて、現状を把握することです。

 やみくもに情報を集めるのではなく、
 価値ある情報に絞って収集し、分析することで、
 状況を正しく理解することができます。
 

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