2013年08月30日(金) 

┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
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┗━┛『ルネサスエレクトロニクス・シャープ・ソニー〜ビッグデータ分析事業の課題を考える』
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 ルネサスエレクトロニクス 鶴岡、甲府工場を閉鎖へ
 シャープ マキタがシャープへの出資を決定
 ソニー ビッグデータ分析に参入

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 ▼ ルネサスエレクトロニクスもシャープも、経営方針が曖昧になっている
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 経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスは2日、
 生産体制を見直し、新たに鶴岡工場を3年以内に閉鎖、甲府工場を
 2年以内に閉鎖すると発表しました。

 6月のトップ就任後、初の会見に望んだ作田会長は、
 再度の追加リストラの可能性を示唆するとともに、車載機器と
 産業機器向け半導体に注力分野を絞り、再建を目指す考えを示しました。

 官民が出資し、何とかルネサスエレクトロニクスを救済しようと
 していますが、現状を見ると経営体制も定まっておらず、
 非常に難しい状況です。

 ルネサスエレクトロニクスは、NEC、日立製作所、三菱電機の3社が
 出身母体になっているわけですが、未だに合併して1つの会社として
 「体をなしていない」のが大きな問題だと思います。

 工場1つ1つがバラバラですし、それぞれにお客さんも異なります。

 地場との関係性もありますから、工場を閉鎖するといっても一筋縄では
 いきません。

 出身母体同士でのせめぎ合いもあるでしょう。

 これだけそれぞれの意見が異なる工場がある状況をまとめつつ、
 経営再建していくというのは、よほどの経営能力がないと難しいと思います。

 ルネサスエレクトロニクスと、ある意味、似たような状況に陥っていると
 感じるのが経営再建中のシャープです。

 シャープから出資の要請を受けている電動工具大手のマキタは
 20日までに出資する方針を決定しました。

 両社は5月に業務提携し、マキタが主力の電動工具で培ったハード技術と、
 シャープの電子制御技術を組み合わせてロボット事業への参入などを
 目指す考えで合意しており、報道によると出資額は数十億から
 100億円規模になる見込みとのことです。

 シャープは現預金がどんどん減り続けていて、鴻海との提携で一時的に
 上昇した株価も下落し、今では完全に低迷している状況です。

 そのような中、シャープは、クアルコム、サムスン電子から出資を受け、
 デンソーなど様々な企業からも出資を受ける予定と報道されています。

 しかし、これほど多くの企業から出資を受けてしまうと、シャープが
 どこに向かって舵をきるのか?というのは、非常に難しいと思います。

 出資している企業は、全て違う目的・思惑を持っているからです。

 このシャープの状況は、ある意味、ルネサスエレクトロニクスと同じです。

 私からすると、マキタがシャープと組んでロボット事業を展開できる
 イメージが湧かないのですが、それでもマキタは堅調な経営を
 していますから良いでしょう。

 問題なのは、このような形での出資が、結局シャープの経営再建の
 解決策につながらないのではないか、ということです。

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 ▼ フェリカの活用を今さら考え始めても、もう手遅れ
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 ソニーは19日、電子マネーに使われる自社開発の非接触ICカード技術
 「フェリカ」で、ビッグデータ分析事業に参入すると発表しました。

 フェリカはJR東日本のスイカなど国内商用ICカードのほとんどに
 使われており、累計発行枚数は6億6千万枚を超えています。

 この技術基盤を持つソニーが情報漏洩リスクを減らす新技術を開発、
 事業化することでビッグデータの国内利用に弾みがつく可能性もある、
 とニュースでは報じられていますが、私は無理だと思っています。

 そもそも、このような事業展開については10年前に
 私がすでにソニーに提案していることです。

 例えば、ある個人の行動についてICカードの移動データから、
 仕事帰りの移動だと分析できれば、帰りに立ち寄れる家の近くの
 デパートの特別ディスカウントをオファーすることが可能になるでしょう。

 フェリカの機能を使えば、さらに様々な「仕掛け」が考えられますが、
 当時のソニー経営陣は私の提案には興味を示さずに、フェリカを
 部品にしてバラ売りしてしまいました。

 当時から、ソニーが主導権を握って「仕掛け」を構築していれば
 良かったのですが、今となっては発行枚数6億枚といっても、
 それぞれデータの所有者が違っていて、統一されていません。

 あるデータはJR東日本で、あるデータはJR西日本、あるいは
 決済データはJCBといった状況です。

 これを共有化することは、今さら不可能でしょう。

 もし当時から、ソニーがフェリカをバラ売りせずに、
 最初から「仕掛け」を作って全体像を描いたビジネスを展開していれば、
 世界制覇も可能だったと私は思います。非常に残念です。

 世間ではビッグデータという言葉が、一人歩きしている節があります。

 そもそもスモールデータの分析すらできていないのに、
 ビッグデータの分析はできません。

 スモールデータで発想を固めて、それをビッグデータに
 活用していくから上手くいくのであって、最初から闇雲に
 ビッグデータをかき回しても、何も生まれません。

 今のソニーは、ビッグデータという言葉に踊らされている
 だけだと感じます。

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 この大前研一のメッセージは8月25日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 ソニーが非接触ICカード技術「フェリカ」を使っての、
 ビッグデータ分析事業に参入することを発表しました。

 しかし、バラ売りにされたフェリカはすでに6億枚発行されており、
 データの所有者がそれぞれ違っていることから、大前は
 フェリカを活用してビジネスを展開する難しさを指摘しました。

 フェリカ導入を検討する段階から、フェリカの持つ機能を
 活用して、更なる業績向上の機会がないか探していれば、
 ソニーは飛躍を遂げていたかもしれません。

 問題解決において、業績向上の機会を探す方法の一つとして
 「事業ドメインを拡大する」という考え方があります。

 自社の事業ドメインの拡大を考えることで、これまで気づかなかった
 新しいビジネスチャンスに巡り合えるかもしれません。
 

2013年08月23日(金) 
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『銀行検査・大学発ベンチャー・地下鉄新線計画・信用金庫〜日本の役人が主導する政策の特徴』
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 銀行検査 画一的な銀行検査を見なおし
 大学発ベンチャー 536社の67%が売上高1億円届かず
 地下鉄新線計画 開業29年で累積収支黒字の試算
 信用金庫 アジアへの事業展開が急拡大

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 ▼ 今の銀行には、まともな融資判断をするスキルがない
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 金融庁は独自の基準に基づいた画一的な銀行検査を見直す方針を
 明らかにしました。

 1990年代はじめのバブル崩壊後の不良債権処理を目的としてきた
 検査を転換し、融資先が健全かどうかの判断は銀行に大部分を
 ゆだねる方針とのこと。

 銀行がリスクをとりやすくなり、技術力はあるのに決算上は赤字に
 なっている中小・ベンチャー企業がお金を借りやすくなるということ
 ですが、これは全く実現性のない「嘘」だと私は思います。

 なぜなら銀行には「査定」するスキルがないからです。

 バブル崩壊以降、金融庁が作成したマニュアルにのみ
 従ってきた銀行には、「経営者を見て、事業計画を見て」融資を
 判断することができる人は育っていません。

 今、銀行は融資の際、必ず「抵当」を前提とします。

 かつて赤字で苦しんでいた松下幸之助氏に、銀行が
 「経営者としての松下幸之助を見込んで」融資してくれたという
 話は有名ですが、今では無理でしょう。

 金融庁も都合が良すぎる発表をしたものだと思います。

 自ら作成したマニュアルのせいで、融資判断ができない人材を
 育てておいて、今頃になって銀行にまともな融資判断を求めるとは
 支離滅裂です。

 さらに似たような事例を挙げれば、金融庁は3月、
 各財務局の認可を得た信金に対し、取引先企業が海外に作った
 現地法人に直接融資できるという政策を打ち出しています。

 愛知県瀬戸市の瀬戸信金や大阪府八尾市の大阪東信金が認可を得た他、
 およそ20の信金が準備に入ったそうですが、
 これも「本当に大丈夫か?」と疑いたくなります。

 国内で運用先がないからと言って、そのスキルもないのに
 海外直接投資を促すというのは、金融庁による規制緩和によって
 ノンバンクに投資して失敗した住専を思い起こさせます。

 役人が主導することというのは、基本的に同じパターンであり、
 全く進歩が見られません。

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 ▼ 大学発ベンチャーも聞こえはいいが、仕掛けそのものが間違っている
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 日本には、このような役人主導の辻褄の合わない政策が多すぎます。

 帝国データバンクが15日発表した大学発ベンチャー企業の
 2012年の売上高は、約7割は売上高が1億円を下回ったと言います。

 約半数は5000万円未満で、有望技術や特許を強みに設立しても、
 事業が軌道に乗らず苦戦が目立つとのことですが、
 これも日本の大学の先生の実態を知っていれば「当たり前」の結果です。

 小泉元首相が実施した「大学発ベンチャー1000社計画」をピークに、
 東大発バイオベンチャーなどがいくつか出てきた程度で、
 ジリ貧になっています。

 それでも、安倍政権下では、2012年度の補正予算で、
 産学共同研究や大学発ベンチャーへの出資金などの用途1800億円を
 割り当てていますが、この資金はどこに消えていくのでしょうか?

 大学の先生がベンチャーを起業したいなら、
 自由にやるのは良いことです。

 ただし、実行するなら、授業料の3分の1は配当金で賄うくらいの
 気合が必要でしょう。

 スタンフォードやMITとは異なり、日本の大学の先生には
 「起業意欲」そのものが低いと感じます。

 また資金を出すのは国ではなく、高齢者がエンジェル(投資家)に
 なるほうが良いと私は思います。

 そうすることで、高齢者が抱えている預貯金の流動性も
 高くなりますし、意義も大いにあります。

 これも役人主導の「仕掛け」そのものがよろしくない政策の
 代表例だと言えるでしょう。

 さらには、次のような事例もあります。

 東京都江東区は区内を南北に通る豊洲─住吉間の
 地下鉄新線計画について、70円の加算運賃を設定すれば開業から
 29年で累積収支を黒字にできるとの試算をまとめたそうです。

 しかし、これは建設費に国の補助を受けるには30年以内の黒字化が
 義務付けられているため、それに合わせて「29年」と
 言っているだけでしょう。

 実際に黒字になる確率は極めて低いと思います。

 これまでにも、飛行場を始め同じような試算をして建設された多くが
 採算割れしています。

 「基準ありきで、そこに合わせる政策」
 それが日本の役人が主導する政策にはよく見られます。

 結果として、不必要なものまで作ってしまうのです。

 このような事例は枚挙に暇がありません。

 それにも関わらず、その虚像のままを報道している新聞にも大いに
 問題があると私は感じます。

 上手く行っていない施策であれば、それは事実として
 しっかり書くべきです。

 役人が発表するままに報道しているだけでは、
 脳天気に過ぎると言わざるを得ないでしょう。


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 この大前研一のメッセージは8月18日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 今週は、政府から次々と発表された新しい政策を見ていき、
大前はそれら一つひとつの政策の問題点を明らかにしていきました。

 では、これらの政策に共通している問題点は一体何でしょう?

 それは実態に目を向けず、すべて予算や基準ありきで
 政策を立案していることです。

 大学発ベンチャー企業を例に取ってみれば、
 日本の大学にいる先生たちが持つ「起業意欲」を把握しないまま、
 予算に基づき税金を投じているだけです。

 実態をよく理解せずに政策を実行しても、
 効果はあまり期待できません。
 
 インパクトのある解決策を考えるには、まず実態を把握し、
 本質的な問題を理解するところから始まります。
 

2013年08月16日(金) 
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『東南アジア自動車市場とフォード・モーター〜見直されるフォードの経営哲学』
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 東南アジア自動車 1−6月新車販売台数 182万332台
 国内自動車大手 スズキ インドネシアに乗用車新工場を建設へ
 米フォード・モーター 日本とフォード、スレ違いの歴史

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 ▼ 再び見直されるヘンリー・フォードの経営哲学とは?
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 東南アジア主要6カ国の1〜6月の新車販売台数は
 前年同期に比べ15%増の182万332台。

 2013年通年では過去最高だった昨年と同水準となる見込みで、
 日本車のシェアは80%を突破したとのことです。

 日本車(トヨタ)の生産台数の全体で見れば、
 未だに米国が強いですが、タイが大きく伸びて
 2位になっています。

 また中国市場、欧州市場が伸び悩む中、インドネシア市場が
 欧州を抜く日も近いと思います。

 タイ、インドネシアといった東南アジアの持つウエートが
 重要になってきていると言えるでしょう。

 スズキは2014年を目処にインドネシアに乗用車工場を
 新設すると発表しました。

 投資額は約1000億円と言われていますが、
 これも東南アジア重視の流れでしょう。

 現在、インドネシア市場におけるシェアは、
 トヨタ、ダイハツ、三菱、スズキの順ですが、
 今回の投資によってスズキが2位に上がってくると思います。

 日本の自動車メーカーの目が東南アジアへ向き始めている中、
 先日、日経新聞は「日本とフォード、すれ違いの歴史」
 と題する記事を掲載しました。

 最近、日本とフォード・モーターには不協和音が多いとし、
 トヨタ自動車との提携を2年で解消することや、
 TPP交渉への日本の参加を反対していることを紹介。

 フォードのアラン・ムラーリー最高経営責任者(CEO)は、
 トヨタ生産方式を導入するなど親日派で知られることから、
 フォード創業家一族の影響力が働いていると分析しています。

 ちょうどヘンリー・フォード生誕150周年ということもあって、
 米国ではノスタルジックな雰囲気が強くなっています。

 今こそ、ヘンリー・フォードの時代に戻るべきじゃないか、
 という論調が強まっています。

 ヘンリー・フォードはT型フォードを大量生産し、同時に従業員に
 「高賃金」を支払うことを何回も演説したことで有名です。

 従業員が高い給料を手にすれば消費が拡大し、
 国全体が豊かになるという考えでした。

 当時においても、他の搾取的な資本主義者とは違う
 「経営者の鑑」だと言われていました。

 実際、米国の労働分配率を見ると、ヘンリー・フォードの時代から
 悪化の一途を辿っています。

 ヘンリー・フォードの時代には、資本家と労働者の分配率の差は
 今よりも小さかったのですが、両社の格差は段々拡大し、
 現在では資本家に傾いています。

 これは株式市場の優勢により、配当を行い、貯めた資産を海外に移す
 という流れがあり、労働者が重視されていないことが原因です。

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 ▼ デトロイト市の悲惨な状況は他人事ではない
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 フォードと日本の不協和音という意味を考える時には、
 米国の自動車産業の「聖地」とも言える「デトロイト」という
 街のことを念頭に置いておく必要があると思います。

 フォードのアラン・ムラーリー最高経営責任者(CEO)は評判が良く、
 優秀な経営者です。

 そのムラーリー氏が考えていることの1つは、
 「デトロイトを守る」ということです。

 ゆえに、TPPに対する日本の農業のごとく、
 デトロイトを守るために「ハンディキャップ」を獲得しようと
 画策しているのだと思います。

 ご存知の通り、先日デトロイト市は財政破綻しました。

 その結果、今のデトロイト市はどうなっているか?というと、
 1日のうちに十数件の放火や犯罪がある状況です。

 街灯も40%しか行き届いておらず、ますます犯罪が増えるという
 悪循環に陥っています。

 米経済誌フォーブス電子版が今年2月に発表した「惨めな米都市番付」
 でも、暴力犯罪の多さや高い失業率、人口の減少や金融危機の
 影響などにより、デトロイトがワースト1位になっています。

 日本はこれを他人事だと思っている余裕はありません。

 代表的な例を言えば、夕張市です。

 今日、同市の人口は最盛期と比較すると、10分の1以下に減りました。

 夕張市だけでなく、一昔前には「3割自治」と言われた
 日本の地方財政はさらに悪化しており、国の補助がなければ
 「1割自治」のレベルに落ちているところもあります。

 このような地域では、当然のことながら人口は減っていきますし、
 サービスレベルも下がっていきます。

 日本全体の人口が減っていく中、地方のオフィス空室率は
 高まる一方です。

 おそらく、今のままでは存続できない市町村が
 多く出てくると思います。

 デトロイト市の事例が、まさに日本の地方都市の明日の姿に
 なってしまうかも知れません。

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 この大前研一のメッセージは8月4日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 今、アメリカではヘンリー・フォードの経営哲学に
 注目が集まっているようです。

 その哲学とは、国全体を豊かにするため、
 大量生産を進めていきながら、従業員に高い賃金を支払い、
 消費を拡大しようとするもの。
 
 この経営哲学が再び注目されている背景には、
 一体何が起きているのでしょうか?

 今回大前は、「労働分配率」というデータを用いて比較することで、
 分配率が資本家に傾いている現状を明らかにしました。

 このように異なる2つの時代を、比較可能なデータを使って
 比べてみることで、今ある状況を定量的に捉えることができます。

 データに基づいて現状に目を向けてみることで、
 状況を正しく理解することができます。
 

2013年08月02日(金) 

┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『消費増税・貿易統計・TPP〜消費税引き上げの目的を考える』
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 消費増税 消費増税による影響検討を指示
 貿易統計 1−6月貿易赤字 4兆8438億円
 TPP TPP交渉に正式参加

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 ▼ 消費増税の再検討は危険な考え方/景気よりも財政問題が深刻
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 安倍首相が来年4月に予定する消費増税による景気や物価への影響を
 再検証するよう指示したことが26日明らかになりました。

 政府は法律で定めた通り消費税率を現行の5%から10%に
 2段階で引き上げる場合を含め、増税の開始時期や引き上げ幅を変える
 複数案を検討するとのこと。

 デフレ脱却を重視し、増税が来春以降の景気腰折れを招かないよう、
 追加的な景気対策の実施も視野に万全の準備で臨む考えのようですが、
 これは「危険」な考え方だと私は思います。

 消費増税については、民主党政権時に自民党も合意の上で
 可決されています。

 つまり、これは正式に「やらなければならない」ことです。

 実施を2段階にした上、さらに繰延べとなってくると、
 日本の財政規律の問題になるでしょう。

 これは国債の暴落を招く危険性すらあります。

 ゆえに、麻生財務相及び財務省は、何とか食い止めようとしています。

 安倍総理は事情を理解していないのか、1年で1%ずつなどと
 言っていますが、市場との対話という点で相当ハイリスクだと
 思います。

 消費増税を実施しても、きちんと3本目の成長戦略を描けば
 問題ないはずです。

 例えば、私が提案するような土地活用の規制撤廃などです。

 また、消費増税について、景気にどのような影響が出るのか?
 という議論があります。

 安倍総理も、景気の数字を見ながら消費増税のタイミングを
 秋に判断したい、などと述べていますが、根本的に間違っています。

 というのは、今の日本の最大の問題は景気の悪さ(不況)
 ではないからです。

 この20年間日本はずっと不況でしたが、それでも餓死者が続出する
 わけでもなく、失業率も4%台でスペインのような大きな数字には
 なっていません。

 つまり、日本という国は景気が悪くなっても、
 つぶれることはないのです。

 それよりも、GDPの2倍という歴史上類を見ない莫大な借金を抱えた
 財政こそが、日本の最大の問題です。

 約1000兆円の借金のうち、大半は自民党が生み出したものです。

 だから、今の政府はなるべく手を付けたくないという心理が
 働いているのでしょう。

 飛行機に例えるなら、不況というのは
 「乱気流になって揺れますのでご注意ください」程度の話ですが、
 財政問題は「墜落します」と同義です。

 かつて今の日本ほどの借金を抱えた国もなければ、
 そこから回復した国もありません。

 さらには、毎年80万人ずつ就労人口が減っていく日本では、
 借金を返す人がいなくなる時代が、すぐそこに迫っています。

 まず、この重要性を認識して欲しいと思います。

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 ▼ 日本は米国化し、輸入国になった
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 財務省が24日発表した貿易統計によると、1〜6月期の貿易収支は
 4兆8438億円の赤字でした。

 上期ベースでは3年連続の貿易赤字。

 赤字額は前年同期(2兆9168億円)を上回り、比較可能な
 1979年以降で最大となったとのことです。

 原発稼働を停止したため、燃料の輸入が増加したことが
 大きな要因になった、という報道もあるようですが、
 これは本質的な問題を指摘していません。

 確かに、直近の数字で輸入が大きく伸びていることは確かですが、
 貿易収支のグラフを長期スパンで見れば、
 右肩下がりの傾向にあるのは明らかです。

 増加したという鉱物燃料の輸入額も2008年と同レベルであり、
 突出して大きな数字だったというわけではありません。

 日本の貿易収支には、反転の兆しは全く感じられません。

 これは日本が米国化したことを意味しています。

 すなわち、日本は輸入国になったということです。

 今、日本企業は海外でモノを作って日本国内の販売網で販売する、
 という形態に変化しています。

 かつて米国が経験した「3つ子の赤字」問題のうち、2つの赤字を
 日本も抱えてしまっている状況なのです。

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 ▼ 安易に「国益」という言葉をつかって、ごまかすな
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 日本政府は23日午後、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に
 正式参加しました。

 日米両国を軸とする巨大な貿易圏作りが動き出し、
 アジア太平洋を巡る経済や安全保障の枠組みに大きな影響を
 与える見通しとのこと。

 私が気になったのは、交渉担当官がしきりに「国益」を
 強調していたことです。

 私に言わせれば、彼らが言う「国益」は「少数利益団体の利益」
 であって、本当の意味での「国益」ではありません。

 国民消費者から見れば、良いモノが安く購入できることは
 非常にいいことです。

 そうした観点を無視して、自分たちの都合だけで「国益」を
 語るのはおかしな話です。

 安易に「国益」などという言葉を使わずに、
 正直に言えば良いのです。

 自民党には「国益」と称して、利益を守るべき団体があって、
 そういう存在が自民党を支えているとも言えます。

 ただ、そのような事情は米国でも同じでしょう。

 オバマ大統領にしても理解できるでしょうから、
 「お手柔らかに」と言えば良いのです。

 こうしたことさえ理解できずに、安易に「国益」という言葉を
 使うのは、明らかに新聞記者の認識不足だと思います。

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 この大前研一のメッセージは7月28日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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 ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。
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 安倍首相は、景気への影響を見た上で、消費増税の開始時期や
 引き上げ幅を決めようとしているようです。

 しかし、そもそも消費税は何のために引き上げられるのでしょうか?

 日本はすでに歴史上前例のない額の借金を抱えており、
 一刻も早く解決に乗り出さなければ、財政が破綻してしまいます。

 財政破綻を回避するために消費増税を行おうとしていたものが、
 景気回復という異なる目的に基づいて消費増税を見直せば、
 根本的な問題を解決できません。

 取り組みを実行に移す際は、常に目的を意識する姿勢が大切です。
 

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