2014年07月27日(日) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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広域電力・原発再稼働・燃料電池〜思い込みに陥らないための思考習慣

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広域電力運営: 電力広域的運営推進機関が設立総会
原発再稼働問題: 川内原発の安全審査
燃料電池車: 水素ステーション

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▼ 高圧送電会社を中核とした構想を理解すべし
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全国規模での電力融通の司令塔となる
「電力広域的運営推進機関」が17日、都内で設立総会を開きました。

近く経済産業相に設立の認可を申請し、
来年4月に発足するとのことですが、
私はこの中途半端な組織はいかがなものかと思っています。

私は一貫して、高圧送電会社を国の唯一の組織とすべきと
主張しています。

配電会社には各地方で独占を許可し、高圧送電会社は、
9電力がそれぞれ所有する高圧送電網の「資産」を
持ち寄って設立します。

発電は自由化し、基本的に誰でも参入できるようにし、
そこで作られた電気は高圧送電会社が買い取ることで、
全国どこにでも責任をもって送電します。

ソーラー発電や風力発電など、1000ボルト以下のものは
この送電網では送れないので、その場合には
ローカルの配電会社を使えば良いでしょう。

経産省の人に、私は何度もこの構想を
説明していますが、発送電分離などと言って、
錯綜していて、一向に理解してくれません。

なぜ今回のような中途半端な組織を作ってしまうのか、
私は理解に苦しみます。

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▼ 原発の課題を全てハードウェアに帰結させてしまっているのは問題
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原子力規制委員会は16日、九州電力が再稼働に向けた
安全審査を申請していた川内原子力発電所1、2号機について、
事実上の合格を決定しました。

東京電力福島第1原発事故をふまえた新たな規制基準を
川内原発が初めてクリアしたとのこと。

九電は今秋の再稼働をめざしていますが、
地元自治体の同意が残る課題になります。

川内原発、伊方原発などは私に言わせれば、
ものすごく地理的な条件が良い原発です。

それでも「桜島が噴火したらどうするのか?」などという人がいますが、
それを言い出したら「隕石が落ちてきたらどうするのか?」
と言うのと同レベルだと思います。

今の審査基準だと審査委員の人が何か口を開けば、
延期になるかあるいは莫大な金額の改修が必要になっています。

この点は大きな問題だと私は感じています。

柏崎刈羽原発などはすでに数千億円の改修を行っています。

運転経過年数別に見ると、40年以上経過した原発は
絶対にペイしないでしょう。

30年〜39年のものでも、おそらく無理です。
29年未満がボーダーラインになると思います。

結局、不安の全てをハードウェアに帰結させて
しまっていることが原因です。

私は「どんな状況になっても冷却できれば良い」と
思っていますが、実際にはとてつもない高さの
防波堤も作らされています。

日本は新しい原子炉は作らないという方針なので、
いずれ原発がなくなる日が来ます。

その時、CO2の問題はどうするのか?など課題は残っていますが、
現状で言えば「それはそのときになったら考えればいい」
というのが国民・マスコミの感情だと言えるでしょう。

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▼ 水素が安全でクリーンエネルギーというのは、大きな勘違い
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CO2の問題について、多くの人が勘違いしていることで
気になっているのが水素ステーションに関するニュースです。

JX日鉱日石エネルギーは「究極のエコカー」とされる
燃料電池車に、燃料の水素を供給する施設である水素ステーションを
2018年度をめどに100カ所設置すると発表したそうです。

安倍政権が掲げる「成長戦略」にも、水素ステーションの整備が
組み込まれてきましたが、お話になりません。

日経新聞をはじめ多くの人が勘違いをしています。

水素を社会インフラにすることは、日本という国では絶対に不可能です。

福島第一原発の爆発は、原子炉が爆発したものではなく水素爆発でした。

水素というのは恐ろしい気体です。

この事実を理解せず、水素ステーションなどと言っても、
福島第一原発のような爆発が1回でも起きたら、
今度は「水素が危険だ!」と手のひらを返すに決まっています。

実験段階では問題ないかも知れませんが、水素ステーションという形式で
水素をそこら中に置くというのは、神経質な日本の国民性を考えても、
絶対に上手くいかないと思います。

燃料電池車についても、万一衝突事故が起こってガソリン自動車と接触したら、
それこそ大爆発してしまいます。

こうした危険性をしっかりと理解すべきです。

またもう1つ水素について誤解されているのが、
「安価」かつ「クリーンエネルギー」ということです。

水素を作る最も一般的な方法は、水を電気分解させることです。

しかし、これはコスト面で原子炉に依存した方法です。

原子炉が夜間電力を半額にしていたから、それを利用する燃料電池車のコストも
安いという話であり、仮に風力発電で水素を作るとなったら、
値段が高くなりすぎて実現しません。

また水素は燃えても水になるだけだから「クリーン」だという人がいますが、
これは全く違います。

確かに燃える段階ではクリーンかも知れませんが「水素を作る」タイミングで
大量の炭酸ガス(CO2)が発生するからです。

この対策として、産油国で水素を作ってそれを日本に運んでくれば良いのでは?
ということで一部の造船会社が色めき立っていますが、結局CO2は発生しているので意味がありません。

CO2の問題は、地球温暖化への対策ですから、
日本という地域だけの問題として捉える時点でおかしな話です。

燃料電池車など、自動車会社は30年前から研究しています。

極端に言えば、今すぐ発売することも可能でしょうが、
彼らは事実を知っていますから、誰も水素を信用していないと思います。

福島第一原発で起きた爆発。あの恐ろしい景色は、水素爆発です。

水素は安全でクリーンエネルギーなどと、いい加減な発言をするのは
やめてもらいたいと心から思います。

それこそ、専門家が出てきて安倍政権の成長戦略が
いかに危険なものかを説明して欲しいとさえ思っています。

(※この記事は7月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております)

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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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究極のエコカーとして、その技術に注目が集まる水素自動車。

今回大前は、水素の性質に注目して、水素自動車導入による
安全面やコスト面、そして環境面で抱えるデメリットを指摘しました。

テレビや新聞を見て、無意識のうちに頭の中で「水素=クリーンで安全」
という概念ができていないでしょうか?

私たちはちょっとした情報で思い込みに陥ってしまい、
一度はまってしまうとなかなか抜け出せないものです。

思い込みに陥らないためには、常にメディアの情報を疑って捉え、
自らファクトベースで考える習慣をつける必要があります。

2014年07月18日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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タイヤ世界大手・ソニー・JR九州〜市場の大きな流れを理解する

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タイヤ世界大手: 世界で競うブリヂストン VS ミシュラン
ソニー: 教育用システム開発大学に販売へ
JR九州: 2016年度までの上場検討

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▼ 世界を見据えるブリヂストン、世界一へ
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日経新聞は2日、タイヤ世界首位を争うブリヂストンと
仏ミシュランを比較・分析する記事を掲載しました。

これはブリヂストンの2013年12月期の自己資本利益率(ROE)が
12.7%とミシュランを逆転したと紹介。

円安に加え、米事業の改革が功を奏したものですが、
配当性向では依然として、ミシュランに見劣りするとし、
今後は市場との対話にも注力する必要があると指摘しています。

日本ではダントツのブリヂストンも、世界ではミシュランや
グッドイヤーの後塵を拝してきましたが、ついにグッドイヤーを抜き、
さらにミシュランも上回る数値を見せてくれています。

時価総額、売上、純利益、ROE、そしてシェアもミシュランを
上回るようになったとのことです。

この業界におけるミシュランの重要性は、
ラジアルタイヤの発明にあります。

それまではナイロンなどの繊維コードのタイヤが主流でしたが、
一気にスティールコードのタイヤに代わりました。

一昔前見かけましたが、道路でタイヤのパンク修理をする人の姿を、
今はほとんど見ることはないはずです。

それはラジアルタイヤのおかげです。

ブリヂストンを含め、業界中の企業がラジアルタイヤの開発には
苦労しましたが、ようやくミシュランと同程度のものが
作れるようになってきました。

ブリヂストンはフォードとの関係性が強いファイアストーンを
買収し、米国でのポジションも築き上げつつあります。

世界の覇権を狙える立場だと言っても過言ではないでしょう。
後は配当だけという印象です。

ぜひ今後の頑張りに期待したいと思います。

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▼ 学校の校舎を建てただけで教育事業と言うな
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ソニーは電子ペーパーを活用した教育用システムを開発し、
今秋に大学に販売する見通しが明らかになりました。

紙の感覚で文字を書ける電子ペーパーをノート代わりに使い、
教材やテストなどを無線でやり取りできるとのこと。

印刷物をなくし丸ごと電子化することで、効率化や学生との
コミュニケーションの向上につなげる狙いです。

私達のように十数年間にわたってオンライン教育事業を
展開している身から言わせてもらえば、はっきり言って
「バカにしている」レベルのニュースです。

情けなくなるくらいに「コンテンツ不在」「経験不在」であり、
ハードウェア主体のゼネコン国家では何も実現できない、
と指摘したいところです。

このようなことに対して、IT投資の予算を割り当てる国も
どうかしていますし、事業化を目指すというソニーもひどいものです。

教育というのは「コンテンツ」が最重要であり、
さらに「先生」の質や「教材」の作り方などを考慮すべきです。

今回のように「システム開発をして大学に販売します」
というのは、何十年も前から聞いている話ですが、
まともに実現されたことはありません。

学校の校舎を建てているだけの話で、
教育事業として成立しないのです。

IT投資にもなっていないレベルです。

一度、ぜひ我々のところに来て、コンテンツやその作り方を見て、
自分たちに同じレベルのことができるのか?を問いかけて欲しいと思います。

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▼ JR九州は本業・鉄道事業の業績改善が必須
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国土交通省は、国が全株式を持つ九州旅客鉄道(JR九州)を
2016年度までに上場させる検討に入りました。

収益力が高まり、上場後も安定的に経営できる環境が
整ってきたと判断。

売却益の一部は北海道、北陸で建設中の整備新幹線の
開業時期を早める財源に充てるとのことです。

JR九州、JR四国、JR北海道は、経営安定基金からの
助けを得て、運用益を出せています。

JR九州の経常利益の内訳を見ると、関連事業や流通業などが
好調だとわかります。

一方で、本業の鉄道事業は苦戦しています。
100億円規模の損失になっています。

これを改善しない限り、上場しても
おかしな構図になってしまうでしょう。

日本初のクルーズトレインとした話題になりましたが、
「ななつ星 in 九州」だけではダメなのです。

鉄道事業の損失を、これからの1年〜2年で
解消しなければいけないと思います。

駅ビルなどの事業も好調で、日本では珍しいほど
その他事業で利益を上げているので、
ぜひ本業の改善に正面から取り組んで欲しいと思います。


(※この記事は7月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております)

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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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ブリヂストンが勢いを見せ、時価総額や売上をはじめとする
各数字でミシュランを上回ってきました。

このブリヂストンとミシュランが凌ぎを削るタイヤ業界について、
繊維コードからスティールコードのタイヤへ代わっていく
技術の流れを、大前は解説していきました。

このように企業を分析しようとする際、個々の企業の取組みを見る前に、
まずは市場の大きな流れを理解することが重要です。

全体像を理解してから細部を見ていくという順序で考えることで、
大局的な視点を持って企業の取り組みを観察することができます。

2014年07月11日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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味の素・東芝・Airbnb〜グローバルな視点で市場を観察する

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味の素: スイス・ワイルド社の買収に名乗り
東芝: ブルガリア・エネルギーから原発受注見通し
Airbnb: 空き部屋60万室、宿泊革命

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▼ 味の素の世界化へ向けた動き/東芝は欧州原子炉に活路
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味の素がスイスの食品原料メーカー、ワイルド・フレーバーズの
買収に名乗りを上げたと報じられましたが、その後、産経新聞は
穀物加工の米アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)が
味の素に競り勝ったと報道しています。

味の素は3000億円で買収を計画していたということです。

ワイルド・フレーバーズは、ドイツ・ハイデルベルグで
設立された、売上規模が1200億円程の企業です。

創業家のワイルド家が経営していますが、米ファンドのKKRが
35%ほど株式を保有しています。

おそらく、このファンドはすぐに売却に応じると思います。

世界の食品香料業界を見ると、
スイスのジボダンが最大企業です。

続いて、同じくスイスのフィルメニッヒ。

ここはダニスコというかつて世界最大規模を誇っていた
デンマークの会社を取り込んでいます。

日本の高砂香料も比較的大きく世界第5位です。

ワイルドフレーバーズは高砂香料に次いでいて、
ほぼ同程度の規模と言えるでしょう。

私は今回の味の素の動きを知りませんでしたが、
もともと食品添加物の会社ですから、
その意図は十分に理解できます。

私ならば、ワイルド・フレーバーズよりも、
その前にダニスコを選んでいたほうが良かったと思います。

一方で、東芝がブルガリアの国営電力会社から
原子力発電所を受注する見通しとなりました。

米子会社のウエスチングハウス(WH)が原発1基を受注し、
原発運営会社の株式も一部取得する案が有力視されています。

東芝は一生懸命原子炉を作ろうと動いてきましたが、
なかなか受注できずに苦しんでいました。

欧州は原発に対して積極的な動きを見せています。

特に油がない地域では顕著です。

フランス以外は原子炉から離れる傾向に
ありましたが、今は英国のようにもう1度
原子炉に回帰する国も出てきています。

このような動きは東芝にとっては
良いニュースだと思います。

実際、東芝の株価も上昇しましたし、
今後の展開に期待したいところです。

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▼ 世界中に広がるAirbnbなどのサービス。日本は独自の規制を考えなおすべき
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日経新聞は、先月17日、「空き部屋60万室 宿泊仲介」と
題する記事を掲載しました。

米西海岸発の「宿泊革命」が世界に広がっているとし、
仕掛け人は2008年創業の米ベンチャー、
Airbnb(エアビーアンドビー)だと紹介しています。

今回紹介されているAirbnb、そしてタクシーの
UBER(ウーバー)は、まさにスマホ時代、
SNS時代の寵児と言える存在です。

Airbnbは60万室を仲介するに至り、世界のホテルチェーンの
トップ5に入る規模になっています。

上場すれば、時価総額は1兆円規模になると見込まれています。

日本では、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)と
提携して展開していくと話題になっています。

日本も空き部屋が12%あると言われていますから、
Airbnbの仕組みが機能すれば、相当な大儲けが可能だと思います。

しかし、日本には旅館業法という独自の規制があり、
国内で宿泊の営業をするには旅館免許が必要になります。

これが非常に大きな問題になります。

おそらくCCCは旅館業法に抵触しないように、
日本国内向けではなく、海外向け(海外旅行をする人向けの)
サービス展開を考えているのではないかと私は見ています。

先日、外国人観光客向けの簡易宿泊所を無許可で
営んだとして、英国籍の若者が旅館業法違反で逮捕されました。

NHKは英国人男性が手錠をかけられている場面を
放映していましたが、私はそれを見て
「NHK側の姿勢」に問題を感じました。

世界的に、これだけSNSが普及した時代において、
むしろ日本の旅館業法のほうが世界の常識から
外れているのであって、その点を問題提起すべきだと思います。

これ見よがしに、知らずに日本独自の規制に違反してしまった
外国人を槍玉に挙げても、何ら建設的ではないでしょう。

世界の常識は全く違います。

米国では家一軒を貸し出すこともありますし、
イタリア人などは夏になったら自宅をドイツ人に貸し出して、
自分たちはポルトガルにバカンスに行ったりします。

貸し借りについて、ヤフオクと同じような評価制度もあって、
ある程度抑止力もあり、安心して利用できる仕組みもあります。

AirbnbもUBERも、あっという間に「日本をのぞいて」
世界中に広がりました。

これらのサービスが日本独自の規制について、
日本政府とどのように戦っていくのか注目したいと思います。


(※この記事は7月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております)

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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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Airbnbの宿泊仲介・空き部屋シェアのサービスが世界的に拡大しています。

しかし日本において、Airbnbが展開しているサービスを普及させるには、
旅館業法という日本独自の規制がハードルになっていると大前は指摘しました。

海外では急速に広がっているサービスでも、
日本では規制のために普及できていない場合もあるのです。

このように国内市場を海外の目線で見てみることによって、
その特徴が分かってきます。

グローバル化の波が押し寄せている現在、
海外など別の視点も持ってマーケットを観察する力が求められます。

2014年07月04日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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>>空港運営権・パイロット不足〜海外からの人材受け入れの必要性を考える

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・空港運営権 関空、伊丹の運営権売却
・パイロット不足 パイロット不足対策まとめ

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▼ 空港運営のポイントは、日本の縦割り行政がどれだけの自由を認めるか
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関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の事業運営権の売却に
向けた入札条件が明らかになりました。

両空港を運営する新関西国際空港会社に対し、
原則として運営期間の45年間、毎年488億円以上を支払うとのこと。

総額は最低で約2兆2千億円となり、同社はこの収入で
約1兆2千億円の債務と金利負担分を完済する方針です。

この数字を達成するためには、50%程度利益率が
高くならないと現実的ではないでしょう。

オーストラリアのマッコーリー銀行などであれば、
経験もありますから十分実現できる数字だと私は思います。

ただし、日本の場合には役所が縦割りになっているため、
どの程度自由度が与えてもらえるのか、疑問の余地があります。

ボーディングゲートのこと、乗り入れの条件のこと、
あるいは周辺の土地に対するアクセスについてなど。

例えば、関空の場合には空港にアクセスする際に、
必ず有料道路を使って橋を渡らなくてはいけません。

本来は代替としての無料道路がなく、
有料道路のみというのは認められないはずですが、
関空ではそのような状態になっています。

もし私が経営者なら、「有料道路のみは法律違反」だと
道路公団に交渉を持ちかけ、無料で渡れるように働きかけると思います。

また、検疫や税関の問題、消防署や警察との関係はどうなるのか?

など、様々な課題があります。これらを決定していくためにも、
縦割りの日本の行政がどこまで自由を認めてくれるのか、
非常に重要なポイントでしょう。

今の日本は金余り状態なので、低金利で借り入れ可能です。

ゆえに、日本で借りたお金をオーストラリアなどで
運用して利回り5%もつけば御の字です。

しかし結局のところ、こうしたエコノミクス的なメリットはあっても、
日本の縦割り行政がどこまで自由を認めてくれるのかがはっきりしないと、
本当の意味でメリットもわからなくなってしまいます。

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▼ 世界市場からパイロットを調達し、管制塔の改革から着手せよ
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国土交通省の有識者会議は27日、深刻なパイロット不足への
対応策をまとめました。

自衛隊OBによる民間転身の促進や現在64歳までとする
年齢制限の緩和など即戦力の活用と、パイロットを養成しやすい
環境整備の両面から対策を盛り込んでいます。

人手不足の影響は格安航空会社(LCC)の欠航などで
旅行やビジネスに影響が出始めており、
国が本腰を入れて対策に乗り出す構えを見せています。

日本はパイロットの絶対数が少ないのが、大きな課題です。

パイロット総数が6800人しかいない上に、その大部分の5686人が
エアラインのパイロットで、全く余裕が無い状態です。

一方、米国は総数270000人もいて、そのうち主要エアラインの
パイロットはわずか10分の1で28000人に過ぎません。

さらに軍隊の中にもパイロットが多数います。

英国でも、総数18000人に対して、エアラインのパイロット数が3688人です。

日本がどれだけ切羽詰まった状況にあるのか理解できると思います。

自衛隊OBによる民間転身の促進や年齢制限の緩和などの
対策が挙げられているようですが、私に言わせれば
「外から輸入する」のが最善策だと思います。

飛行機はもともと国際的なものですし、機体を製造しているのも、
エアバス、ボーイングという海外メーカーです。

特に私が推したいのは、管制塔に外国人を配置するという方法です。

世界的に見て日本人は英語が上手くありません。

日本人が管制塔にいても、やはり海外のパイロットとの
相性はあまり良くない印象があります。

米国ではエアラインからリストラされた人材が
たくさんいますし、台湾やイスラエルなど元軍人の
パイロットも世界中にはたくさんいます。

元の人数が少ない日本人パイロットでどうにかしようとするのではなく、
何万人、何十万人単位でいる市場から人材を引っ張ってくる発想が必要でしょう。

そして、管制塔の改革から先に着手するのが良いと私は思っています。

(※この記事は6月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております)

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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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深刻なパイロット不足に悩まされている日本の航空業界。

今回、大前は各国の数値と比較して日本のパイロットの少なさを
指摘した上で、海外人材の登用を提案しました。

諸外国と比べてみると、他の国では日本の何倍ものパイロットを
保有しており、日本のパイロットがいかに少ないかがわかります。

パイロットの絶対数が少ない日本の中だけで解決しようとしている限り、
この問題を解消するのは難しいかもしれません。

このように、あくまで数値などのファクトに基づいて現状理解をしなければ
効果的な打ち手を考えることはできず、状況を打破することはできません。

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