2014年10月31日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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ヤフー・IBM・マイクロソフト・NTTデータ〜競合優位性の打ちだし方を考える

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米ヤフー 純利益約7250億円
米IBM 半導体製造部門を譲渡
米マイクロソフト アジュールを拡充
NTTデータ 独ダイムラーのシステム開発

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▼ 米ヤフー、IBM、マイクロソフトが置かれた状況と課題
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米ネット大手ヤフーが21日発表した7〜9月期決算は、
純利益が前年同期の約23倍の67億7400万ドル(約7250億円)となりました。

これは、大半が9月に上場した中国アリババ集団の株式売却益によるものです。
一方、営業利益は55%減と低迷しています。

マリッサ・メイヤーは何を考えているのか?私には理解できません。

アリババの株式売却で利益を計上しても、営業利益が減少していては、
CEOとしての責任を問われるべきでしょう。

ソフトバンクもアリババ株を大量に保有していて、約7兆円の含み益になると思いますが、
米ヤフーとは違い、株式を今すぐに売却して利益を上げようとはしないと思います。

米ヤフーがアリババ株を売却するのは、
私が思うにマリッサ・メイヤーの報酬体系と関係がある気がします。

もしそうだとすれば、マリッサ・メイヤーの経営力を疑問視せざるを得ないと同時に、
非常に器の小さい人物だと感じてしまいます。

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米IBMは20日、不採算の半導体製造部門を米半導体受託製造会社の
グローバルファウンドリーズ(GF)に譲渡すると発表しました。

IBMは今後、3年間にわたり計15億ドル(約1600億円)をGFに現金で支払うとのこと。
構造改革を急ぎ、人工知能型コンピューター「ワトソン」など
付加価値の高い事業に経営資源を集中させる方針です。

半導体事業といえば、長らくIBMの中核事業として位置づけられてきました。
その事業を1600億円の現金を「支払ってまで」譲渡したいというのは、
不採算事業として「行き着くところまで」追い詰められてしまったのだと思います。

2000年には売上構成比のトップはハードウェアで42%でしたが、
2013年には、グローバルテクノロジーズ(ITインフラ等)が38.7%、
ソフトウェアが26%になっており、ソフト化・サービス化の流れに乗ってきました。

それでも、コアとなるところは技術を握っていないと差別化出来ませんし、
グーグルやAmazonというクラウドコンピューティングサービスが得意な
会社と競合していくためには、性能が良いサーバーも必要でしょう。

これらの点に鑑みると、IBMは非常に思い切った決断を下したと私は見ています。

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米マイクロソフトは20日、企業向けクラウドサービス「アジュール」を拡充すると発表しました。

オーストラリアにデータセンターを新設するほか、
米デルや分散処理ソフトの米クラウデラなどと提携する方針とのことです。

マイクロソフトも、グーグルやAmazonと競争していくためには、
かつてのようにWindowsだけではなく何か別の特徴を打ち出さなければいけない状況になっています。

オーストラリアには、地盤の安定度などから多くの企業がデータセンターを置いています。
時差の兼ね合いも悪くないのが特徴です。

今回発表されたマイクロソフトの「アジュール」は、使いたいときに使いたい分だけ
利用できるというもので、5分で仮想マシンが稼働し、VPNを通じて
社内ネットワークにもつなげることが可能という特徴があります。


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▼ NTTはグループ統合を検討すべき/日本の大企業はテスラと離れていく
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19日の日経新聞が報じたところによると、
NTTデータは独ダイムラーの業務システム開発と運用を受注したことが判明しました。

100億円規模ということですから、なかなか大きな数字だと思います。

私は、このタイミングでNTTグループ全体として「まとまる」という方向性に向かうべきだと思います。

もともと1社独占を避けるために、NTTが分断されました。
現在、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTdocomo、そしてNTTデータがあります。

しかし時代は変わり、今ではソフトバンクのほうが大きくなっているわけですし、
何より世界と競合していくと考えれば、相手はグーグルやAmazonです。

NTTデータ単体で考えるのではなく、
NTTグループ全体がまとまってやっていくことをぜひ検討して欲しいとお思います。

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独ダイムラーは21日、米電気自動車メーカー、
テスラ・モーターズとの資本提携を解消したと発表しました。

ダイムラーは2009年5月にテスラに約9%出資しています。

車載用電池の開発ノウハウなどを吸収する一方で、
ベンチャー企業のテスラの事業の立ち上げを支援。

今年に入りリチウムイオン電池関連の合弁会社の全株式を取得していました。

テスラ・モーターズのCEOイーロン・マスクという人物は、
性格的に大企業と一緒にやっていくのが向いていないのかも知れません。

私が思うに、イーロン・マスクという人は、「我が道を行く」というタイプなのでしょう。

トヨタもテスラと資本提携していますが、すでに株式の一部を売却しています。
開発する車種など、トヨタともあらゆる面で意見が一致しない状況だったと聞きます。

一緒にやるメリットがないので、
今後、さらにトヨタもテスラの株式を売却していくのではないかと思います。

他の日本企業の動向で言えば、パナソニックだけは、
アリゾナの大規模電池工場にどっぷり関わっているので、
気軽にテスラと手を切ることはできない状況でしょう。

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※この記事は10月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しています
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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、企業動向の話題を中心に解説していきました。

かつて中核だった半導体事業を切り離し、経営資源を集中させたIBM。
そして新たな特徴を打ち出すためにクラウドサービスを拡充したマイクロソフト。

このように、自社の優位性を築いていくためには
変化する市場ニーズや競合の動きを正しく把握することが必要です。

それらを理解した上で、どこに軸足を置くべきなのか?

真の顧客価値を定義・構築することが、
業績向上に大きく影響してきます。

2014年10月24日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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年金運用・ラップ口座・国内株式市場・リクルートHD〜調達した1000億円をどう使うか?

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年金運用 確定拠出年金見直しへ
ラップ口座 主要4社残高が2兆円超
国内株式市場 PBR1倍割れが5割
リクルートHD 東証一部に新規上場

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▼ 年金について国任せではなく、「自分でやる」という意識を植え付けるべき
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厚生労働省は14日、運用成績によって将来もらう年金額が変わる
確定拠出年金(日本版401k)の見直しに着手しました。

公的年金の目減りがさけられないなか、老後の備えを厚くするため、
企業年金制度の加入者を増やす考えとのことです。

また、約130兆円の公的年金を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は17日、
国内株式での運用比率の目安を12%から20%台半ばに大幅に引き上げる方向で調整に入っています。

低収益の国債中心の運用を改め、年金給付の原資を増やす狙いです。

GPIFに関しては、塩崎恭久厚生労働相が「日本の株価を支えるにはこれしかない」と
一生懸命取り組んでいます。

国債中心で進めていると、日本国債が暴落したら目も当てられない事態をまねきます。
国債が安全ではない時代だということは忘れてはいけません。

確定拠出年金については、先進国の年金給付水準を比べてみると日本の課題が見えてきます。

サラリーマンとして受け取っていた最後の給与を100とすると、
だいたいの国は50〜60程度が年金として給付されます。

米国はやや水準が低いですが、私的な年金も含めると70程度になります。
そのような中、日本は30程度しか年金として受け取れません。

以前、年金と同じように毎月支払われるという仕組みを持つ、
一時払い養老保険がありましたが、いつの間にか下火になってしまいました。

人情としては、最後の給与の6割〜7割り程度は毎月支払われて欲しいところでしょう。

国に任せて安心ではない時代ですから、政府は国民に対して、私的な年金運用も含め
「自分たちでやらなければいけない」というメッセージを伝えるべきだと私は思います。

そのような中、日経新聞が13日報じたところによると、富裕層などの個人がまとまった資金の運用を
金融機関に任せる「ラップ口座」の残高が2014年9月末で2兆円を超えたことがわかりました。

これは前年同月比2倍、3月末に比べて6割強増加したもので、脱デフレへ期待が広がるなかで、
長期の資産づくりを目指す金融商品の一つとして関心を集めているとのことです。

当初は1億円から認可対象でしたが、現在は300万円から可能になっています。

米国ではこのような「お任せ」の形態は非常に一般的ですが、
日本ではかつて多くの事故を招いたことから、取引一任勘定取引を禁止とされてきました。

ここに来て、時代背景もあって、その状況が変わってきているということでしょう。


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▼ リクルートは調達した1000億円で何をやるべきか?
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東京株式市場で投資尺度のPBR(株価純資産倍率)が1倍割れとなる銘柄が増え、
17日は東京証券取引所第1部の5割を占めました。

世界的な株価の急落で投資家心理が弱気に傾き、
理論上の「解散価値」とされる1倍割れとなっても買われない状況です。

1倍割れということは、時価総額が帳簿価格よりも低い状態で、非常に珍しいことです。
極端なことを言えば、買収して解体して売りさばくだけで利益になるでしょう。

世界的に見ても、政治・経済にいい材料がなく、
米国企業の業績は良いのですが、それだけでは力不足ということでしょう。

このように国内株式市場が冷え込んでいる中、リクルートホールディングスは16日、
東京証券取引所第1部に株式を新規上場しました。

初値は3170円と公募・売り出し価格(公開価格)の3100円を上回りました。

初値をもとにした時価総額は1兆8100億円で、1990年以降に新規上場した企業では
NTTドコモ(7兆4600億円)、日本たばこ産業(JT)(2兆8700億円)に次いで3番目の大型上場となりました。

リクルートは、創業者の江副氏が東京大学在学中から始めた企業で、
非常に長い歴史を持っています。

江副氏はリクルート事件後、リクルートからは身を引くことになりましたが、
その後も株式投資を始め、若手の音楽家への投資・支援事業、
外国人向けのウィークリーマンション事業など、色々な事業へ意欲を見せていました。

もともとリクルートは上場しないというポリシーでしたが、江副氏は色々な事業を展開するにあたり、
保有している株をキャッシュに変えたいと思うようになっていたようです。

私も江副氏とは面識がありましたが、非常に立派な経営者だと思います。

世の中を見る視点が鋭く、今のリクルートの土台を築き上げた人物です。

昨年、亡くなられてしまいましたが、もし今回の上場を目にしていたら、
新規事業を始められる資金ができたと喜んでいたことでしょう。

3年連続で売上も利益も全て右肩上がりという絶好調を示して上場を果たしたリクルートですが、
今後の展開には課題もあります。

今回、約1000億円の資金を調達したわけですが、それを何に使うのか?
既存の事業領域でみると、国内にはそれほど投資できるものは残っていません。

今まで手を付けていない、インターネット関連事業の買収などは検討の余地があると思います。

そうなると、海外を模索することになると思いますが、
すでにアデコなどリクルートよりも大きな企業が展開しています。

中途半端な大きさの人材会社を買収しても、太刀打ち出来ないでしょうし、
規模で闘うには1000億円では足りません。

江副氏の後継者であるリクルートの経営陣が、
このあたりの課題をどのように乗り越えていけるか、注目していきたいと思います。


※この記事は10月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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上場することで1000億円を手に入れたリクルート。
今後、何に投資をしていくかが課題となっています。

大前は記事中、インターネット関連事業の買収の余地や、
海外展開の難しさについて言及しましたが、皆さんはどう考えますか?

もし自分が○○だったらどうするのか?
正解が決まっているわけではありません。

現在進行形で起きているリアルなケースに対して、思考訓練を重ねることが、
問題解決に必要となる「自ら考える力」の習得につながっていきます。

2014年10月17日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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景気動向・カジノ法案〜問題解決における成功要因を考える

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景気動向 8月の景気動向指数 前月比1.4pt低下
カジノ法案 カジノ法案迷走 日経新聞


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▼ ついに、アベノミクスのメッキが剥がれてきた
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内閣府が発表した8月の景気動向指数(2010年=100)速報値は、
景気の現状を示す一致指数が108.5と、前月に比べて1.4ポイント下がりました。

景気の基調判断は「足踏み」から4カ月ぶりに下方修正し、景気後退の可能性を示唆する
「下方への局面変化」とし、増税に天候不順が重なり、景気は2月から8月まで短期の
「ミニ後退」になったとの見方が市場関係者に出ています。

これまで散々と、4月から6月期は下がっていても、7月〜8月には挽回すると
述べていたエコノミストがいますが、現実はこの通りです。

「足踏み」から「下方への局面変化」などというのも、
単なる役人言葉で全く意味が無いと私は感じます。

天候不順の影響はあると思いますが、それよりも「心理的な」側面のほうが重要です。

国民が身構えて、消費心理が冷え込んだというのが一番大きな要因です。

アベノミクスと騒がれていましたが「結局、自分の生活がどのように具体的に良くなるのか実感できない」
という人がほとんどでしょう。

おそらく今後の数ヶ月で、「アベノミクスは失敗だった」と言われる時期が来るはずです。
東京オリンピックまでは首相を続けると表明していますが、
安倍首相にとっては大きな逆風が吹き荒れることになります。

アベノミクスの最大の問題は、3本目の矢である「成長戦略」が全く機能していないことです。

私に言わせれば、「形容詞」が多すぎて、何ら具体性がありません。

「女性が輝ける」「若者が行きたくなる」などと耳障りのいい言葉を並べても、
ただそれだけで景気は回復しないのです。

ついに、アベノミクスのメッキが剥げかけてきているのを感じます。


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▼ カジノは儲かるというのは、大きな幻想
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カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案を巡り、
推進派の国会議員でつくる「国際観光産業振興議員連盟」が迷走しています。

利用者をいったんは外国人に限定するとしていましたが、
一定の要件を満たせば日本人も利用できるよう再修正する方針を決めたとのことです。

私が15年ほど前に提案したのは、米軍が所有している「横浜ノースドッグ」でカジノを開くというものです。

カジノの主催を米国ということにして、日本人の入場者は
パスポートを必要とするというルールにすれば良いと提案しました。

場所としても、瑞穂埠頭・桟橋付近は、利用されていなかったので、
施設を一新してカジノを作るにはうってつけでした。

カジノを巡る問題として、パチンコと同様に、国民の生活が乱れるという懸念があります。

シンガポールのカジノでは、同様の懸念への対処として、
シンガポール人はお金を払わないとカジノに入れないというルールを作っています。

日本でも見習って、日本人が気軽には入れないように課金するなどの
工夫をするべきだという意見が出てきました。

しかしこうなってしまうと、「そもそも日本でカジノを作る意味があるのか?」という話になります。

そんな話もあって、カジノ法案というのは迷走、後退しているというのが現状でしょう。

ただし私がより本質的な問題として指摘したいのは、「カジノは儲かる」というのが幻想だということです。

カジノを作って経済的な効果として成功したのは、米国のネバダや香港のマカオを見ても、「他に何もない地域」です。

そのマカオでも、カジノは急失速していています。かつてはマネーロンダリングを巧みに操る
中国人が大量に押し寄せていましたが、最近ではめっきり中国人が減ってしまいました。

すると、一気にカジノは斜陽産業に成り下がってしまいました。

同様の現象は、マカオに限らず、オーストラリアのケアンズやタウンズビルなど、
他の場所でも見受けられます。

カジノが儲かると思っている時点で、少しズレています。

もし日本にカジノを作ったとしても、一般人の感覚で考えられないような
高額なチップを賭けてくれる「おかしな中国人」が来てくれなければ上手くいきません。

地域振興に役立つなどと言われていましたが、ようやく何の関係もないと気付き始めたというところでしょう。


※この記事は10月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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記事中、カジノが斜陽産業に成り下がった背景を取り上げました。

大前はカジノ成功の条件として、
中国人を呼び込むことが必要であると解説しています。

このように、問題解決においては事実から
成功要因=キーサクセスファクターを見つけ出すことが重要です。

これなくして、インパクトある結果をもたらすことはできません。

2014年10月10日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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移民政策・有給休暇・国家戦略特区・地方創生〜本質的問題に向き合う姿勢を考える

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移民政策:海外人材に日本で能力発揮を
有給休暇:企業に有給休暇の義務付け検討
国家戦略特区:福岡市、兵庫県養父市の区域計画を認定
地方創生:地方活性化へ

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▼ 移民政策は考えないのは、問題解決を放棄しているだけ
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安倍首相は1日、政府が検討している外国人労働者の受け入れ拡大に関し、
「多様な経験、技術を持った海外の人材に日本で能力を発揮してもらうものだ。安倍政権は、いわゆる移民政策を取ることは考えていない」
と述べたとのことですが、全くもって愚かな発言だと私は思います。

このようなことを敢えて発言する必要がありません。

「移民政策を考えていない」ということは、すなわち日本が抱える最大の問題の1つである
「若い労働力の不足」問題を考えずに、問題解決を放棄しているというのと同義です。

能力が高い人だけ受け入れたいといいますが、それも特区に限ったことで、
全く実情を知らないとしか思えません。

通常、移民政策の準備に5年〜6年の期間が必要となります。

「普通の移民政策はやりません」ではなく、これから移民政策の準備を開始し、
5年〜6年かけて「秩序だった移民受け入れが可能になる」ようにしていくと表明するべきです。

安倍首相は、自らの発言が日本の将来の問題解決を放棄しているのと
同じだということにすら、気づいていないのでしょう。


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▼ 有給休暇の取得率を上げるには、機械的なルールを定めよ
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厚生労働省は企業に対して社員の有給休暇の消化を義務付ける検討に入りました。

社員の希望をふまえ年に数日分の有休の取得日を企業が指定するとのことです。

主要国の有給休暇取得率を見ると、日本の割合は非常に低くなっています。
ブラジル、フランス、香港は100%で、やや低めでも米国71%、韓国70%となっています。

それに対して、日本はわずか39%です。

日本の場合、有給休暇の取得率の低さを補うように、
国民の休日を増やしているということも影響しているのだと思います。

有給休暇の取得率を上げるには、いくつかの対応策があります。

・年度を超えた有給休暇の繰越しをなくす、あるいは減らす
・余った有給休暇を企業が買い取る
・取得率が50%だったら、次年度は有給休暇日数を10%減らす

など、考えれば他にも案は出てくるでしょう。

また取得率が低い理由をしっかりと調査して、上司からの圧力が問題なら、
パワハラの問題として対処することも忘れてはいけません。

ただ、「有給休暇を取得しないなら、来年は2日間減る」となれば、
多くの人は上司の言いなりにはならない気もします。

いずれにせよ、有給休暇の消化率は100%というのが想定ですから、
そうなるように「機械的に」ルールを決めて実行していくことが、
この問題を解決する方法だと私は思います。


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▼ 規制緩和などは、特区限定ではなく全国で展開すべき
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政府は9日、国家戦略特区諮問会議を開き、
福岡市と兵庫県養父市の区域計画を初めて認定しました。

福岡市はイノベーションの推進・新ビジネス創出、
養父市は農地の有効利用というのが主な目的と定められています。

具体的な施策内容を見てみると、
正直、こんなものを成長戦略と呼ぶのはお恥ずかしいというレベルです。

例えば福岡市では雇用条件の明確化のために「雇用労働相談センター」を設置し起業を支援、
あるいはエリアマネジメントに係る道路法の特例でMICEを誘致、
イノベーションの推進・新ビジネス創出とあります。

これらが国の成長戦略につながるとは私には全く理解できません。

また改正特区法による規制緩和として、医師でなくても病院のトップになれる、
家事サービスを外国人に開放するなど、「医療・女性の就労促進・起業・教育・労働」の
分野においていくつかの項目が挙げられていますが、
これらも特区に限らず全国で展開するべきことだと私は思います。

結局、役人が握っている既得権益を離さないという、悪習が残っているのでしょう。

先日、石破地方創生相が特区の意義を語ったと知り、その内容に非常に驚きました。

「東京は交通や人材など様々な集積がある。それを生かした事業をしたい。東京が日本全体をけん引しないといけない」と、
特に東京の強化を述べたと言います。

「東京一極集中是正を目指すために、東京を強化しその活性化がアクセルになる」
というのはどうにも理解し難いロジックです。

そもそも、私は石破氏にも何度か説明していますが、
地方創生で成功した事例は世界中を見渡してもほとんどありません。

東京も1つの地方として考えて「東京の強化=地方創生になる」というのは
あまりにも飛躍したロジックであり、もう少しまともに考え直してもらいたいと思います。

※この記事は10月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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若い労働力不足の問題から目を遠ざけている安倍首相。
大前はこの事態を、日本の将来の問題解決を放棄していると指摘しました。

解決すべき本質的問題と知りながら、
なぜ計画的な実行に落とし込むことができないのでしょうか?

問題解決において最も重要なステップが「解決策の実行」です。
しかし多くの場合、阻害要因を排除したり人を巻き込んだりする必要があるため、
計画的に進めることが難しいプロセスでもあります。

いかに複雑な現実に向き合うことができるか?
真の問題解決者にはこのようなスタンスが求められます。

2014年10月03日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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欧州エネルギー情勢・ロシア経済・日ロ関係〜日本政府の失策を考える

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欧州エネルギー情勢 :東シベリアの天然ガス
ロシア経済 :ロシア政府、大富豪の資産奪う
日ロ関係 :プーチン大統領 APECでの首脳会談を提案

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▼ 東シベリアの巨大油田を中国に。日本にとっては最大級の失策だ。
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ロシア最大の国営ガス会社、ガスプロムは東シベリアの巨大ガス田で
開発する天然ガスの輸出先を中国に限定する方針を発表しました。

アレクサンドル・メドベージェフ副社長がモスクワで明らかにしました。

これはロシアと中国が、5月このガス田で産出する天然ガスを
パイプラインで中国に供給する契約に調印したことを受けたもの。

東日本大震災後に浮上した日本との共同開発や対日輸出の可能性はほぼ消えてしまいました。

私は声を大にして、日本政府の失策を追求したい気持ちです。

ウクライナ問題で欧米と一緒になってロシアへ経済制裁している場合ではなかったのです。
いち早くロシアのプーチン大統領を日本に呼び、エネルギー問題について、
日本のプラスになるような解決策を見出すべきでした。

従来通り米国に追随する形で、何らロシアに歩み寄らない日本の姿勢を見て、
ロシアは諦めてしまったというところでしょう。

本当に日本にとって、大失策以外の何物でもないでしょう。

シベリア地区の巨大なガス田であるチャヤンダから、
日本へパイプラインを引くチャンスだったのに、みすみす逃してしまい、
結局日本は昔からあるサハリンからのパイプラインに依存する形は変わりません。

この既存のパイプラインについても、私はいくつかの提案をしています。
森喜朗元首相からロシア側に伝わってくれていると思いますが、実現するのかどうか定かではありません。

今回、チャヤンダから中国へ引かれるパイプラインは数兆円規模のプロジェクトです。
わざわざ1ヶ月前の起工式にはプーチン大統領が、現場まで行って参加しています。

チャヤンダからハバロフスクまでパイプラインが引かれ、そこから中国へ向かいます。
ハバロフスクから日本につながるパイプラインは実現できませんでした。
チャヤンダの巨大な油田を、全て中国に持って行かれたというのは、本当に大失策です。

11月に予定されていたプーチン大統領の訪日もなくなり、
APECの際に安倍首相と首脳会談の予定とのことです。

せめて、ここでは何かしらの成果を期待したいところです。

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先日、日経新聞では、北方4島の人口増加が報じられていましたが、
歯舞、色丹、国後で1万人程度、択捉で6700人程度です。

北方4島が日本に返還されたときの受け入れ体制を懸念する声もありますが、
これくらいならまったく問題ないでしょう。

また、逆にかつて北方4島に住んでいて今網走に登録されている人もいますが、
すでに年齢が80歳くらいのはずですから実際にはほとんど帰る人はいないと思います。

今の規模なら、全て日本で面倒を見るのでも全く問題はないでしょう。
ぜひロシアにそのような提案をしてもらいたいところです。


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▼ 経済制裁を受けたロシアは、危険なマッチポンプ状態になっている。
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日経新聞は先月20日、「ロシア政府、大富豪の資産奪う」と題する記事を掲載しました。

同国15位の富豪とされるウラジミル・エフトゥシェンコフ氏が16日に
マネーロンダリング(資金洗浄)で在宅逮捕された事を紹介。

欧米の対ロ経済制裁の強化による打撃は、今やロシア経済の中核である石油産業に及んでいるとし、
ロシア国営企業やプーチン氏に近い富豪は、事業拡大が望めないため、
民間の企業家から資産を奪い埋め合わせをしようとしていると指摘していますが、
これは少しいい過ぎかも知れません。

そもそもプーチン大統領は、この程度の経済制裁では屈しないでしょう。

むしろ恐ろしいのは、このような理不尽ないじめを受けて、ロシア国民が反発することです。

今、ロシアではプーチン大統領の人気が高くなっていて、
「危険なマッチポンプ」状態になりつつあると私は感じています。

かつて日本が「鬼畜米英」と扇動し、
多くの国民がその思想に染まったときと状況が似ています。

ロシア国民は生活が不便で苦しいことに対して、政府や国家に不平を言うのではなく、
この苦難に耐えなくてはいけないという状態になっています。

一方的に追い込む政策の過ちを再び繰り返しているように私は感じています。

※この記事は9月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しております


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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従来通りの米国追随で大規模プロジェクトへの参画機会を失ってしまった日本。
結果、中国に案件を持っていかれたことを大前は失策と言及しました。

皆さんのビジネスでは「従来通り」という枠にとらわれ、
思考の幅を広げられず、機会を逃してしまっていることはありませんか?

より大きいインパクトを創出するためには、
会社や上司が考える既存フレームを疑うことも必要です。

考えの軸足の置き方次第で、大きくインパクトに違いが出てきます。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月