2014年11月28日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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沖縄県知事選・原発再稼働問題・再生可能エネルギー 〜意思決定の論理を考える〜

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沖縄県知事選: 前・那覇市長翁長雄志氏が初当選
原発再稼働問題: 敦賀原発2号機 直下に「活断層」を再認定
再生可能エネルギー: 買い取り手続き再開へ

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▼ 日本の歴史に隠されてきた「嘘」を知る
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米軍普天間基地の名護市辺野古への移設問題が最大の争点となった沖縄県知事選は16日投開票され、
無所属新人で辺野古移設反対を掲げる前那覇市長の翁長雄志氏が、
現職の仲井真弘多氏ら無所属3氏を大差で破り初当選しました。

翁長氏が当選したことで、普天間基地の辺野古への移設はなくなるのか?
というとそれほど単純にはいきません。

日本政府は、沖縄の「軍政」に関する当事者能力を持ち合わせていないからです。

米軍側も「日本政府の責任のもと」で辺野古への移設を進めるよう意思表示をしています。

実は、第二次世界大戦の末期あたりからの数十年間の歴史を見直すと、
そこには多くの「嘘」が存在しています。

沖縄返還に関する事実も、その最たるものです。

沖縄返還にあたっては、「民政」は日本に返すが、
「軍政」は引き続き米国(米軍)が掌握する、という約束だったのです。

ですから、沖縄県知事が誰になろうと、関係ないのです。

もちろん米国もあまりに手荒なことをして、
米軍撤退運動などを引き起こしても面倒でしょうから、上手にごまかすとは思います。

どのような懐柔策をとるにせよ、本質的に沖縄の軍政は米軍が握っており、
それは過去の歴史において日本政府と約束(密約)している、というのが動かしがたい事実です。

最近ではこのあたりの歴史の嘘も、
ウィキペディアで正確な情報が掲載されるようになってきました。

例えば、北方4島返還のダレス会談の件などを読むと、
日本がロシアともめているのは米国の思惑だとわかります。

その他にも気になることがあれば、ウィキペディアをぜひ読んでみると面白いでしょう。


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▼ 活断層=原発停止ではなく、きちんと検討すべき
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再稼働の可否が議論となっている日本原子力発電敦賀原発2号機について、
原子力規制委員会は19日、同機の直下に活断層があるとの評価を改めて示しました。

何かあると、原子力発電所の下に「活断層」があると話題になりますが、
日本ではそもそも活断層が存在しない地域を探すほうが難しいでしょう。

重要なのは、その活断層によってどの程度の地震が予想されるのか?
また、その地震に原子力発電所が耐えうるのか?ということを検討することです。

その検討結果として、無理だと判断するなら、原子力発電所を停止するのも良いでしょう。

しかし今の原子力規制委員会の態度は、原子力発電所の下に活断層が見つかったら、
「原発は即停止」という方針です。ここには根拠はありません。

また規則で言えば、直下に活断層が見つかった場合、
新しく原子力発電所を作ってはいけないと定められていますが、
既存の原子力発電所の下に活断層が発見された場合については、特に定めはありません。

直下に活断層があって地震が発生しても、新潟の大地震に耐えた柏崎刈羽原発の例もあります。

まともな検討もせず、「活断層=原発停止」という考え方は、私は間違っていると思っています。


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▼ 民主党への政権交代も期待できず
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大手電力5社は9月下旬から停止している
再生可能エネルギーの買い取り手続きを再開する方針を明らかにしました。

太陽光発電設備からの送電を中断する制度の拡大など
供給制限の仕組みを入れることを条件とし、
まず九州電力が年内にも受け入れ再開の方針を表明するとのことです。

この再生可能エネルギー政策は、民主党政権の最大の負の遺産の1つです。

東日本大震災と福島第一原発の事故を受けてパニックに陥った結果、
原発は全て停止、再生可能エネルギーの割合を20%にすると宣言しました。

太陽光などを高値で買い取るという方針まで打ち出す始末でした。

しかし実際に再生可能エネルギーの発電には、様々な問題が存在します。

たとえば太陽光発電では、太陽が照り続けた場合に、
大量のエネルギーを吸収する能力が太陽光発電システムのグリッドには備わっていません。

多くの人が一斉に太陽光を使うとなると、
サージが発生してしまいますから供給制限をする必要も出てきます。

このような点も含め、色々と取り決めなくてはいけなかったのです。

民主党が非現実的なプランを推し進めたのは、早計だったと言わざるをえないでしょう。

当時、民主党の仙谷氏は、太陽光エネルギーの蓄電はバッテリーで事足りると思っていたようです。
私の試算では40兆円を超えると指摘しましたが、結局、深く検討されることはありませんでした。

今、総選挙に向けて動き出しましたが、自民党への不信感も拭えないものの、
福島第一原発への対応、再生可能エネルギーの施策などを見ると、
民主党にも期待できないのが残念です。

私としては、政権交代する必要はないと思いますが、
自民党の圧倒的多数という状況は変化して欲しいと感じています。

アベノミクスのような中身が全く伴わない幼稚な戦略や嘘がまかり通る状況はやめて欲しいのです。

そのために野党側には、もう少しリーダーシップを期待したいところです。
選挙の戦略としては、対立候補を乱立せず、小選挙区1つに対して対立候補を1人で十分です。

そして「自民党 VS 民主党」などではなく「自民党 VS 野党」という図式を成立させるほうが良いと思います。

例えば「民主党」などを前面に出してしまうと、自分たちの不甲斐なさもあるので、
安倍政権の明確な失政を責めることができずに終わってしまうでしょう。
それを避けることが大事だと思います。

私に言わせれば、何の結果も出していない安倍政権が、
「アベノミクスの評価」などを問うこと自体が理解できません。

私なら「続けさせてくれ」と言えないでしょう。
ある意味、すごい度胸だと感心してしまいます。

また新聞などのジャーナリズムも、なぜまともに指摘しないのか、私には理解できません。

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※この記事は11月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は原発再稼働や再生エネルギーに関する話題をお届けしました。

いずれにも共通しているのが「十分な検討」をしていないまま、
ことを進めようとしている点です。

本当に原発を停止させる必要があるのか?
また、再生エネルギー政策を推進する必要があったのか?

意思決定に当たっては、思い込みではない論理的な検討が必須です。

あらかじめ命題を分解し成立条件を洗い出しておくことが、
正しい意思決定をするために求められます。

2014年11月22日(土) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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イスラム国〜立場や視点を変えて観察する重要性

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イスラム国 地上部隊派遣を検討

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▼ イスラム国への地上部隊派遣は、オバマ大統領への批判を強める
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米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は13日、
過激派「イスラム国」掃討のため米地上部隊をイラクやシリアに
派遣する案を「確かに検討している」と述べました。

一方、「イスラム国」は14日までに、イラクとシリアにまたがる
支配地域で独自の通貨を発行すると発表。

7世紀のカリフの時代にならい、金、銀、銅を材料に貨幣を鋳造し、
現代の「押し付けられた邪悪な世界経済システム」からの解放を
目指すということです。

「イスラム国」は、油田を奪っていますから、
そこから得られる資金で国としての体裁を整える準備に
はいったということでしょう。

国の定義という意味では、「国境」「通貨」「憲法」が必須です。

憲法はイスラム法があるので、通貨の鋳造に乗り出したということです。

また、「イスラム国」には明確な国境はないので、
国境を廃して国民国家の支配から解放されるべきという
「カリフ制」の考えを持ちだしています。

オバマ米大統領は米軍の派遣に反対の意向を示していましたが、
デンプシー米統合参謀本部議長、ヘーゲル米国防長官などは、
地上部隊の派遣を検討すべきという考えを示しています。

オバマ大統領も米国へ帰ったら、
意見を変えざるを得ないかも知れません。

イラクから撤退し、アフガニスタンでの紛争に傾注した
オバマ大統領の政策によって、とんでもない事態に発展しました。

ここからさらにイラクに地上軍を派遣するとなると、
オバマ大統領に対する国民の批判が高まるのは避けられないでしょう。


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▼ 帝国の崩壊は、それほど簡単に落ち着くものではない
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このような世界情勢の中で、
「米ソの対立」が未だに消えないのは何故なのか?と、
疑問に感じている人も多くいると思います。

ベルリンの壁崩壊から25年も経過しているのに、
近年では「新冷戦」という言葉も生まれるほどです。

一言で言えば、過去の歴史を振り返ってみても、
『巨大な帝国が崩壊した後、「崩壊」したからといって、
そう簡単に全てが片付くわけではない』ということだと思います。

今のウクライナなどを見ていても、
かつてのソ連がどれほど大きかったのか、
野放図に拡大していたのか、と私は思います。

ソ連の残骸は非常に広範囲に渡ります。

ウクライナ、ベラルーシなどは独立し、また管理されていた
多くの東欧地域は、ほとんどがEUに吸収されました。

今のロシアからすれば、自分たちはどれほど「縮小」したのか
と感じるでしょう。

ところが、それほど「縮小」したというのに、
かつて仲が良かった東欧地域から憎まれる始末で、
最後の最後まで一緒に戦っていたウクライナまで、
今はEUに加盟しようとしています。

ロシアからすると、面白い気持ちはしないでしょう。

逆に、徐々に縮小の一途をたどっているロシアからすれば、
「侵略しているのは、お前らのほうだ」という気持ちすら
芽生えてきていると思います。

そして、プーチン大統領のような強力なリーダーシップを
発揮する人物が出てくると、ロシアの国民の気持ちも高まります。

かといって、ロシアのトップにリーダーシップがないと、
チェチェンの問題などに対処できないでしょうから、
ロシアには強力なリーダーが求められているとも言えます。

ユーゴスラビアの規模でさえ、
崩壊後20年間も紛争が続きました。

ようやく、セルビア、コソボなど7つに分割されましたが、
あの小さな帝国でも分裂して落ち着くまで、そうとう大変でした。

ソ連という大帝国の規模を考えれば、時間がかかるのは当然でしょう。

歴史的に大帝国が崩壊するプロセスを見ると、
今のロシアの状況は良いほうだと私は思います。

ロシア、カザフスタン、ベラルーシなど、立場を変えて、
視点を変えて見ると、理解できる世界が変わります。

一度、そのような立場から世界を見てみると面白いと思います。

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※この記事は11月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今回大前は、ソ連崩壊後のロシアと東欧地域の国々について
それぞれの立場や視点で見ていくことについて解説していきました。

ニュースをはじめ、私たちが受け取る情報の中には
ある特定の立場や視点で観察されたものもあります。

そうした情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、
別の角度から見てみることで、新たな気づきが得られます。

ニュースの情報を読み解く際は、常に情報源がどこなのかを意識し、
見る角度を変えながら客観的に捉えていく必要があります。

2014年11月14日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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トヨタ自動車・ヤマハ発動機・ソニー・ソフトバンク〜人を巻き込む技術を考える

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トヨタ自動車 連結純利益1兆1268億円(14年4〜9月期)
ヤマハ発動機 連結純利益600億円(2014年12月期予想)
ソニー スマホ「撤退せず改革」
ソフトバンク 「金の卵」を生み続ける

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▼ トヨタは2兆円もの資金をどう使うべきか?
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トヨタ自動車が5日に発表した14年4〜9月期の連結純利益が過去最高を更新しました。

主力の北米市場で販売を伸ばし、新興国や消費増税後の回復が遅れる国内の低迷をカバーしました。

また、15年3月期の連結業績予想は上方修正しています。
売上高は前期比3%増の26兆5000億円、営業利益は9%増の2兆5000億円、
純利益は10%増の2兆円を見込んでいるとのことです。

好調だった2008年をも上回る数字になっており、
純利益で2兆円というのは、すごいレベルだと思います。

唯一の課題と言えば、この2兆円というお金をどう使うのか?ということでしょう。

トヨタが一番避けたい事態は、フォルクスワーゲンと
フィアットクライスラーの合併だと私は思います。

フォルクスワーゲンの欧州車をクライスラーの販売網を活用して
米国で販売することができるからです。

フォルクスワーゲンは販売台数約1000万台でトヨタと争っているわけですが、
フィアットクライスラーを買収すると、それだけで400万台プラスになります。

先日、フィアットクライスラーは上場しましたが、時価総額は1兆円です。

私がトヨタの経営者なら、ためらわずに買収を決断します。

2兆円の純利益の半分で買えるわけですから、全く問題ありません。
しかも2兆円は純利益ですから、キャッシュフローで見ればさらに余裕があります。

フォルクスワーゲンとの競争に終止符を打つには、この買収が最も効果的だと思います。

トヨタはこのような買収を好まない傾向にありますが、
放っておくと逆にフォルクスワーゲンに買収されてしまうかも知れません。

そうなってしまったら、もう遅すぎます。その前に手を打って、
いち早く「ダントツ」という状況を創りあげるべきだと私は思います。

市場でダントツの状況を創りあげて好調を見せているのが、ヤマハ発動機です。

ヤマハ発動機は6日、2014年12月期の連結純利益が
前期比36%増の600億円になる見通しだと発表しました。

ヤマハというと2輪車を思い浮かべる人も多いかも知れませんが、
2輪車の市場ではホンダに太刀打ち出来ていません。

ヤマハの調子が良い理由は、マリン関連です。
マリン関連の利益は400億円にも達し、世界でもダントツの1位です。

かつては、マークルーザーやボルボも競合していましたが、今は全く相手になりません。
完全にヤマハが独占し、圧倒しています。

市場を完全に独占したときの利益・強さというのを、
あらためてヤマハを見ていると感じます。


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▼ 混迷のソニー。敢えて「スマホ撤退しない」と発言する必要がない。
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ソニーの吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)は日経新聞のインタビューの中で、
今期大幅な赤字を見込むスマホ事業について構造改革の具体案を
来年2月頃に示すとしながら、中国で展開している10機種のうち、
数機種の中国専用モデルの開発を今期中に中止することなどを明らかにしました。

ソニーのセグメント別の売上を見ると、金融は変わらず黒字、
またゲームは今後期待できるかも知れないという状況です。

一方で、テレビは大した利益を出しておらず、モバイル関連は完全な赤字です。

このような状況を受けて、吉田CFOは
「次回の説明会でスマホの方向性を示す。スマホは撤退しない」と
発言したのでしょうが、私には理解に苦しみます。

わざわざ「撤退しない」などと発言したら、「撤退を検討している」
ということを明言しているようなものです。

平井社長が示す戦略と矛盾します。
CFOという立場にある人がこのような発言をするのは禁句だと私は感じます。


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▼ ソフトバンクは金の卵を産むガチョウ。孫社長のストーリーテリング力。
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インターネットメディア・ログミーは、4日、
「ソフトバンクは”金の卵”を生み続ける」と題する記事を掲載しました。

これはソフトバンクの第2四半期決算説明会で孫社長が語った話です。

私もこの孫社長の話を聞きましたが、正直、驚きました。
孫社長のストーリーテリングのレベルは高いと知っていましたが、
ここまで見事な話をするのかと感じました。

第2四半期決算説明会レベルで、あそこまでの話をされてしまうと、
他社は全く歯がたたないのではないでしょうか。

イソップ寓話の金の卵を産むガチョウになぞらえて、
ソフトバンクがまさに金の卵を産むガチョウだと紹介していました。

米ヤフーやアリババなど、これまでの投資の成功事例を見れば
ベンチャーキャピタルよりも優れた数字を残しているということ。

ウォーレン・バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイには、
バフェットプレミアムが乗っかった時価総額になっている一方で、
ソフトバンクの時価総額は逆に半減しているが、
これは孫正義ディスカウントであるということ。

バフェット氏がその実績から高い評価を受けるのは正しく、ソフトバンクも
いつの日か「もしかしたら金の卵をまた産んでくれるかもしれない」という
市場からの評価が、時代の経過とともに高まってくると思っていること。

そして、これからはインドへ投資をしていくということ…。

正直に言えば、アリババがなければ、
孫正義ディスカウントというほどの数字ではないのでは?
など、いくつか指摘したいポイントはありました。

しかしそれを差し引いても素晴らしいプレゼンテーションだったと思います。
ぜひ、実際の孫社長の説明動画を見て欲しいと思います。


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※この記事は11月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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自社を「金の卵を産むガチョウ」と表現した孫社長。
今回は、ソフトバンクの決算説明会に関する話題をお届けしました。

問題解決に必要なのは情報収集力や分析力だけではありません。
解決策実行のため、関係者を巻き込むプレゼンテーション力も必要です。

いくら長い時間をかけて作成した成果物でも、
プレゼンテーションの時間は15〜30分ほど。

このような短い時間の中で、実行に向けた情熱を聞き手に伝えられる、
高いレベルの技術が求められます。

2014年11月07日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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日立製作所・国内電機大手・タカタ〜価値ある情報収集を考える

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日立製作所 連結営業利益5800億円見通し
国内電機大手 電機大手8社の連結決算出揃い
タカタ 広がるリコール、タカタの甘い認識

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▼ 日立はまだまだ収益力を上げられる/ソニー不振の原因は社長にあり
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日立製作所は先月29日、2015年3月期の業績予想を上方修正し、
営業利益が前期比9%増の5800億円になる見通しを発表しました。

従来予想から200億円引き上げ、2期連続の最高益。
IT分野が好調なほか、中国向けの昇降機などインフラ関連も拡大しているとのことです。

確かに日立は好調ですが、GEなどに比べて見ても、
さらに収益力を上げることができると感じています。

最近の動きで特筆すべきだと思うのは、オーストラリアの資源大手リオ・ティントと
巨大鉱山の運営で連携するというものです。

リオが持つ鉱山の運営ノウハウと日立のインフラ管理技術を持ち寄り、
鉄鉱石の生産コストの約1割削減を目指すそうですが、
このような事業展開は非常に面白いと思います。

売上・利益の推移を見ると、日立の売上はほぼ横ばいで利益も6000億円です。
日経新聞を読んでいると、全てが右肩上がり状態だと感じてしまいますが、
日立が本格的に伸びるのはこれからですし、そのように手を打つべきです。

日本最大の企業集団ですから、やろうと思えば相当なことができるはずだと私は見ています。

***

国内電機大手の状況を見ると、日立だけでなく三菱電機や東芝なども調子が良い一方、
ソニーの苦戦が見て取れます。

先月31日に出揃った電機大手8社の2014年4〜9月期連結決算を見ると、
パナソニックや日立製作所などが大幅増益となるなど全体としては復調傾向でした。

一方で、ソニーは中国・韓国のメーカーの価格競争力の前にシェアが低下し、
再建の屋台骨であるスマートフォンも早々に失速し、構造改革の進捗と
稼ぐ分野の見極め具合で明暗が別れた形になっています。

ソニーの赤字の原因はどこにあるのでしょうか?

スマートフォン事業の不振が赤字の原因として、ソニーは先月30日スマートフォン事業を
手掛ける子会社ソニーモバイルコミュニケーションズの鈴木社長の退任を発表しています。

いわゆる、更迭人事でしょう。

しかし、問題があるのはソニーの平井社長だと私は思います。
そもそも、スマートフォン事業に選択と集中という判断をしたのは平井社長だからです。

私に言わせれば、サムソンやアップルという競合のこと、
将来価格が1万円に下落するという見通しを考えれば、
スマートフォン事業に手を出すこと自体が、経営者として失格です。

「今、儲かっているもの」に飛びついて、「選択と集中」するというのは、非常に単純な発想です。

もともとソニーといえば、「無から有を生む」という文化を持つ企業です。
それにも関わらず、スマートフォンや不動産など、目の前にぶら下がっている
美味しそうな果実に飛びついてしまうというのは、事業を自分で創ったことがない
サラリーマン社長の悲哀だと私は感じています。

また、ソニーの取締役会にも問題があります。

「モノ言う取締役会」として有名なソニーでしたが、今は全く機能していません。

ハワード・ストリンガー元社長も追い出すことが出来ず赤字を垂れ流し、
現平井社長もすでに4期連続の赤字です。

経営能力がない社長をクビにできない体制も改善すべき課題だと思います。


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▼ 原因救命されないと、タカタは会社存亡の危機
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東洋経済オンラインは先月27日、「広がるリコール、タカタの甘い認識」と題する記事を掲載しました。

2013年4月以降、タカタ製エアバッグに起因するリコールは、
トヨタ、ホンダ、日産など10社に広がり、自主回収まで含めると、
グローバルでは計1600万台に達すると紹介されています。

米メディアの批判報道は過熱し集団訴訟の動きもあるなど、
タカタが窮地に追い込まれていると紹介しています。

現状、タカタは400万台・400億円相当の対応になると見込んでいるようですが、
米国の報道だと一部の議員からは、全てを取り替えろという意見も出ているようです。

もし本当に全てを取り替えるとなると、1600万台を超えて3000万台〜4000万台に達すると思います。

こうなると負担額は3000億円〜4000億円になり、タカタの負担能力を超えてしまうでしょう。

なぜこんなにお金がかかるのか?というと、今のエアバッグはハンドルと一体化しているからです。

そのためエアバッグを取り替える場合、ハンドルごと取り替える必要があります。
ちょっとした部品交換では済まないのです。

また一番大きな問題は、原因が究明されていないことです。

フロリダやルイジアナなど、高温多湿な地域で発生する可能性が高いとも言われていますが、
確実なことは判明していません。

原因がわからない限りは、「全て取り替えろ」と言われても致し方ない状況になっています。

ホンダなどは長年タカタとの関係性もあって、それほど厳しい条件を突きつけていないようですが、
米国のユーザーからの突き上げが激しくなっています。

原因がはっきりしない限り、まだまだこの問題は広がるでしょうし、下手をすると命取りになります。

タカタは日本の中堅企業として非常に優秀な企業ですが、
壊滅的な打撃を受けつつあり、今、窮地に追い込まれています。

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※この記事は11月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し、本メールマガジン向けに編集しています
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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今回はタカタのリコールの事例を取り上げました。

不具合の原因が究明されないため、
数千億円を負担しかねない状況に同社は陥っています。

問題解決の基本として情報収集はかかせませんが、
闇雲ではなく効果的に作業を進めていく必要があります。

・分析するテーマを分解して、情報収集に必要な項目を考えておくこと
・関係者にインタビューを行い、得た情報を整理統合して仮説をつくっておくこと

このような準備を予め行っておくことで、
本質的問題の発見につながる、価値ある情報収集が可能となります。

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