2015年01月30日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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トヨタ自動車・西武HD・日本電産・DMG森精機〜トヨタの競合はフォルクスワーゲン

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円安効果 円安でも輸出伸びぬ誤算
国債利回り 新発10年物国債利回り 一時0.255%
原油価格 ヤーギン氏「シェール革命はまだ続く」
ベネズエラ国債 格付けを2段階引き下げ
ブリジストン 4537円で上場来高値更新

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▼トヨタの競合相手は、フォルクスワーゲン
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トヨタ自動車は2015年のグループ世界販売台数を、
14年実績見通しより約10万台少ない1015万台程度とする方針を固めました。

新興国販売が不振なほか、国内の増税で軽自動車主体のダイハツ工業が落ち込む形になり、
これにより独フォルクスワーゲン(VW)が初の首位になる公算が大きくなりました。

トヨタはずっとGMに追いつけ追い越せという目標に向かっていました。
そして数年前、ついにGMを抜いて世界首位に踊りでましたが、
私はその際にも「これからの本当の競合相手はフォルクスワーゲンだろう」と意見を述べていました。

世界的な規模で、どの地域で強いのかを見ると、フォルクスワーゲンは新興国で強さを見せていました。

米国ではトヨタのほうが上回っていましたが、今後自動車産業が伸びる地域を考えれば、
フォルクスワーゲンに優位性がありました。

フォルクスワーゲンは中国だけで300万台販売しています。

一方、中国とインドで出遅れたトヨタは100万台に届いていません。

中国市場は2600万台が見込める規模ですから、
ここで大躍進できるかどうかは非常に大きいでしょう。

加えて、フォルクスワーゲンは、高級車のアウディの販売も好調です。

トヨタのレクサスは一時期米国で調子が良かったのですが、
今は50万台程度に落ち着いています。

アウディだけで数百万台販売し、ハイエンドで成功している点も非常に強いと感じます。

以上の点から、私は、トヨタはフィアットクライスラーを買収するのはどうかと提言しました。

トヨタは歴史的に買収を好まない会社なので実現するか疑問ですが、
今トヨタが抱える問題を解決するために、私なら今でもフィアットクライスラーを狙うでしょう。

逆に、トヨタが手を出さなければ、フォルクスワーゲンに買収される可能性もあるかも知れません。


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▼西武HDの株主サーベラスの動向
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19日の東京株式市場で、西武ホールディングスの時価総額が終値ベースで
9750億円と東京急行電鉄(9523億円)を上回り、私鉄で首位となりました。

西武HDが首位となるのは2014年4月に再上場してから初めてです。
訪日外国人が増えており、ホテル事業の好調で買いが入ったと見られています。

売上高、営業利益は4位ですが、時価総額で1位になりました。

保有しているプリンスホテルも、一時は閑古鳥が鳴いていましたが、
今では予約が取りづらい状況に回復しています。

今後注目されるのは、西武HDの株式の約35%を保有するサーベラスの動向です。

今まで上値が重たかったのは、値段が上がってくると
サーベラスから売り浴びせられるのではないかという懸念があったためです。

ここまで値段が上がってくると、サーベラスも、
もう少し長期間保有する可能性も十分にあると思います。

そもそも、今回ここまで「売り」が出ていないのは、何か「動き」があったのかも知れません。


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▼日本電産、DMG森精機のM&A戦略
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日本電産は22日、2015年3月期の連結純利益(米国会計基準)が
前期比33%増の750億円になる見通しだと発表しました。

過去最高を見込んでいた従来予想(22%増の690億円)から増益幅が拡大。

成長分野と位置づける車載用と家電・産業用のモーターや、
ハードディスク駆動装置(HDD)向けの小型精密モーター事業などが好調に推移しているとのことです。

日本電産については、日本では珍しいM&A戦略が結果を伴うのかどうか、
懸念されていましたが、この結果を見ると、良い方向に進んでいるのだと感じます。

すでに売上高1兆円が視野に入ってきており、
永守社長の性格からすると2兆円を目指すと言い始めそうですが、次の課題は後継者でしょう。

M&A戦略に対して、コアがない、伝統がないと言われたこともありましたが、
今回の数字を見ると、何となくまとまってきているのだと思います。

利益が出る会社にしたあと、最後の仕事としてぜひ後継者を見つけて欲しいと思います。

* * * * *

また、工作機械大手のDMG森精機も、大規模なM&Aを発表しました。

22日、DMG森精機は資本・業務提携する同業の独DMG MORI SEIKIに
TOB(株式公開買い付け)を実施すると発表しました。

TOBの期間は2月11日から3月11日の予定で、現在の24.3%の出資比率を50%超に引き上げる計画で、
売上高は約4400億円と、世界最大級の工作機械メーカーになるとのことです。

工作機械メーカーは、スイスやドイツに世界的な会社がいくつかありますが、
ギルデマイスターを傘下に収めることができれば、DMG森精機も非常に大きな存在になっていくと思います。

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※この記事は1月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、自動車業界に関する話題をお届けしました。

新興国で優位を見せるフォルクスワーゲン。

トヨタが同社に対抗するため、
大前はフィアットクライスラーの買収を提言しました。

問題解決の一つの手法としてM&Aがあります。
自社リソースのみに頼った戦略立案だけでなく、
外部の力の活用も含め、広い視野で検討することが大切です。

前提や制約条件を取り払い、自由度の幅を広げて発想すること。
よりインパクトの大きな解決策を立案するにあたり、重要な考え方です。

2015年01月26日(月) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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円安効果・国債利回り・原油価格・ベネズエラ国債・ブリジストン〜輸出が伸びないのは「必然」

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円安効果 円安でも輸出伸びぬ誤算
国債利回り 新発10年物国債利回り 一時0.255%
原油価格 ヤーギン氏「シェール革命はまだ続く」
ベネズエラ国債 格付けを2段階引き下げ
ブリジストン 4537円で上場来高値更新

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▼円安で輸出が伸びないのは「誤算」ではなく「必然」だ
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日経新聞は15日、「円安でも輸出伸びぬ誤算」と題する記事を掲載しました。

アベノミクスが始動して2年あまり。14日は円高に振れたものの、
円は米ドルに対して約40円安くなり、企業には円安で値下げ余地が
高まったはずなのに価格を武器にシェアを追う動きも一向に見られない、
と指摘しています。

「円安でも輸出伸びぬ誤算」「円安で企業が日本へ戻ってきている」など、
日経新聞もいい加減なものだ、と私は思います。

日本の電子業界を見ればわかりますが、電化製品の部品はほぼ全てが海外製です。
ということは、円安になると部品の輸入価格は上がります。

組立産業の8割は部品ですから、当然、製品原価も高くなります。
輸出競争力が伸びないのは「必然」であって、決して「誤算」ではありません。

また、円安になっても日本企業が国内に戻ってこないのも頷けるでしょう。

工場が国内に戻ってこないのは、他にもいくつか理由があります。

たとえば、海外に作った工場は新しく、国内に残っている工場は古いということ。
今さら数十年前に作った工場に戻るのは面倒です。

それに、リストラをする苦労も避けたいところでしょう。
今は中国で工場を閉鎖するのも簡単ではありません。

海外の工場は規模が大きいというのも大きな理由です。
だいたい海外では1つの工場で数千人から1万人が働いています。

日本に工場を戻したとして、同じような規模で再開できるか?というと難しいでしょう。

この20年間で大学進学率が上がる一方、日本のブルーカラーは激減しています。
中学・高校を卒業してすぐに工場で働く人が少なくなっています。

新聞記者もアベノミクスを提唱する人たちも、この程度のことは勉強しておいてほしいところです。
ミクロ経済学の基本レベルです。


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▼世界経済の状況、原油価格低下の影響は?
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長期金利の指標である新発10年債の利回りが一時0.255%と、過去最低をつけました。

また欧州もドイツの5年債利回りがマイナス圏で推移する状況になっています。

日米欧のいずれでも10年物国債の利回りが落ち込んでいます。

欧州では消費者物価指数もマイナスに転じ、日本型の病気が蔓延しつつあります。

日本では国債と社債の状況が逆転していますが、
これは会社のほうが国よりも安全だと思われているということです。

確かに異常事態ですが、国がつぶれてもグローバル企業は生き残るでしょうから、理に適っています。

また、日経新聞は、「石油の世紀」でピューリッツァー賞を受賞した
ダニエル・ヤーギン氏のインタビューを掲載しました。

ヤーギン氏は、米国の中小シェール企業の倒産が出始めているものの、
技術革新により採掘コストは低下しており、シェール革命はまだ続くと分析しています。

また、原油価格の反転は来年になるだろうと指摘しています。

ヤーギン氏はエネルギー問題にも詳しく、その指摘は非常に鋭いものがあります。

私が彼の著作を初めて読んだのは、「The Commanding Heights」(邦題:市場対国家 上下巻)という本でした。

規制緩和の意味、本当の市場主義とは、サッチャーが首相になるまでにどのような勉強をしてきたのか、
など、非常に示唆に富む本です。日本の政治家も、ぜひ一読して理解しておくべき内容だと思います。

ヤーギン氏の主張を踏まえて、私ならば「エネルギーがここまで低価格になるのなら、
円安政策ではなく、安いエネルギーを利用したアベノミクス第4の矢」を考えるでしょう。

ただし、注意すべきは、原油価格は過去10年においても、3回ほど50ドル付近まで低下したことがあります。
今回だけが特別というわけではないので、その点は理解しておくべきでしょう。

* * * * *

私たちにとってはあえて大騒ぎする事態ではありませんが、
ベネズエラは厳しい状況に追い込まれています。

米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは13日、
南米の産油国、ベネズエラの格付けを2段階引き下げ「Caa3」とすると発表しています。
「Caa3」というのは、ギリシャよりも低い格付けです。

一生懸命、中国やロシアに支援を求めて「物乞い外交」をしていますが、
私に言わせれば一度痛い目にあったほうがよいと思います。

ベネズエラの場合、産油価格の問題よりも、原油に依存しきって、
それを非常に高い「国家予算」に組み込んでいる点に問題があります。

要するに、無駄遣いの極みです。
故・チャベス元大統領の時代には、票獲得のために多額の資金がばら撒かれたと聞きます。

そういう無駄遣いが国家の体質としてしみついてしまっているので、
それを削らせるためにもここで一度歯止めをかけるべきだと思います。

一方、原油価格の影響を受けて好調を見せているのがブリヂストンです。
ブリヂストン株が15日、前日比7%高と商いを伴って急反発し、
4537円の上場来高値を付けています。

原油安でタイヤの原材料となる合成ゴムなどの価格が下がり、
利益率が改善するとの期待が広がったとのことです。

タイヤは原油そのものといってもいいくらいですから、
世界トップのブリヂストンが恩恵を受けるのも当然でしょう。

ただ原油価格の恩恵だけでなく、
ブリヂストンは非常にいい経営を続けてきていると私は思います。
この点も見逃してはいけないでしょう。

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※この記事は1月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は円安効果に関する解説記事をお届けしました。

「輸出伸びぬ誤算」「企業が日本へ戻ってきている」と言及した日経新聞。

電化製品のほぼすべての部品は海外である、というファクトさえ知っていれば、
この現象が誤算ではなく必然であるという構造を良く理解できます。

このように事実を押さえ、業界動向や特徴を把握することで、
初めて現象を正しく分析することが可能となります。

皆さんは、情報をしっかり調べた上で結論を導けていますか?
これに抜け漏れがあると、問題の本質を見つけることはできません。

2015年01月16日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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マカオカジノ・ベネズエラ経済・米シェール企業〜データの背景にある因果関係を考える

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マカオカジノ 2014年の賭博業収入
ベネズエラ経済 中国から財政支援で合意
米シェール企業 米WBHエナジーが破綻

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▼低欲望社会に順応した日本の課題
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マカオ政府は、2014年のカジノ総収入が3515億パタカ(約5兆3000億円)で、
前年比2.6%減少したと発表しました。

マカオのカジノ産業が02年の新規参入許可で拡大して以来、
総収入が前年比でマイナスになったのは初めてとのことです。

私は以前からマカオのカジノはいずれダメになると伝えてきましたが、
その通りの状況になってきました。

今のところ、前年比2.6%減少という程度ですが、
今後はさらに拡大していくのではないかと見ています。

マカオのカジノ産業は、中国の贈収賄によるマネーロンダリングに依存していました。

収入の内訳を見ても、VIPバカラが大きく割合を落としているのは、
まさに中国のマネーロンダリングが減少しているからです。

中国人はカジノでマネーロンダリングに成功すると、
そのままお金を中国に持ち帰れないため、そのお金で周辺地域のマンションを購入していました。

定期預金代わりに使っていたのでしょうが、今はこれも暴落しています。

日本でカジノを推進しようとする人も、闇雲に進めても失敗するのがオチですから、
マカオの事例を見ながら研究するべきでしょう。

カジノとは少し業界が異なりますが、パチンコ業界の苦戦を見ると、
日本という国がどのような状況にあるのか、感じ取ることができます。

一言で言えば、今の日本は「低欲望社会」です。
パチンコに限らず、競馬、ボートレース、競輪など、全て同じです。

そんなに無理してお金儲けしなくてもいい、面倒くさいじゃないか、
と感じる若者が増えているのです。

基本的に将来に対して「希望・望み」を持たない人が非常に多くなっています。

これには2つの大きな原因があると思います。
1つは、彼らが10代を過ごした時期、日本がずっと低成長社会であり、
そういう体験しか知らないからです。

将来像として描くのは、自分たちの親くらいであって、
かつて松下幸之助氏や本田宗一郎氏などが「世界」を目指していた時代とは、
上を見る感覚が違うのでしょう。

もう1つには、日本社会がデフレに対応したため、
頑張らなくても「何とか食っていける社会」になっているからです。

低成長にスライドした日本社会の中にあって、
成長しようという意欲が失われたのだと感じています。

一方でスポーツの世界などでは、高梨沙羅氏、羽生結弦氏、錦織圭氏など、
これまでは考えられないほど世界のトップレベルに達する人も登場しています。

これは「世界のトップ」が「見える化」しているからだと私は思います。
企業においても、日本社会を活性化するためには、「世界のトップの見える化」が重要ではないでしょうか。


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▼サウジアラビアが、米国のシェールオイルを破綻に追い込む狙い
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ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、中国北京で習近平国家主席と会談し、
中国から200億ドル(2兆4000億円)の財政支援を受けることで合意しました。

輸出の9割を原油に依存するベネズエラは、原油価格が1ドル下落すれば歳入は
年間7億ドル(830億円)減る構造で、大統領は対立してきた米国とも関係改善を探る動きを見せています。

ベネズエラは反米国の立場でキューバに加担していましたから、
キューバ問題にも波及していくと思います。

産油国それぞれの生産採算ラインと国家予算などを比較してみると、
今の原油価格が続くと、様々な影響が出てくるのがわかります。

ロシアは生産採算ラインは30ドル程度ですが、国家予算維持には110ドル必要なので、
予算を削るなどの工夫が必要でしょう。

ベネズエラは国家予算維持のためには、160ドル必要というほど
「油に依存しきっている」状態ですから、相当に厳しい状況です。

すでに市場はベネズエラは国家破綻するものと判断しています。

サウジアラビアの国家予算維持のためには、原油価格は90ドル程度必要になりますが、
これまでの蓄えもあるので、しばらく現状の40ドル〜50ドルでも持ちこたえられます。

ゆえに、サウジアラビアとしてはこのままの状況を継続させることで、
生産採算ラインが100ドルを超える競争力が乏しい米国のシェールオイルを
破綻させる狙いだと私は見ています。

先日、テキサス州でシェール開発を手掛けるWBHエナジーが
7日までに米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻しています。

おそらく米国シェールオイルの半分くらいがダメになると思います。

今後も、生産採算ラインが80ドル〜90ドル程度の企業が続々と破綻に追い込まれていくでしょう。

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※この記事は1月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今回はマカオのカジノ産業について解説をお届けしました。

前年比でマイナス収入となったカジノ産業。
大前は中国のマネーロンダリング減少に着目しています。

現象の背景では何が起こっているのか?

データを集めるだけでなく、その裏にある因果関係まで考えることが、
原因を明らかにするために必要となります。

情報から仮説を考え、検証していくこと。
このようなプロセスが、効率的な問題解決実行につながっていきます。

2015年01月09日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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地方創生・農協改革〜戦略のリアリティを考える

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地方創生 地方転職を支援
農協改革 農協法改正まとめ

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▼地方創生という言葉だけで、地方に仕事を作ろうとしても効果は期待できない
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政府は大都市圏に勤める大企業社員の、地方への転職を後押しするとのことです。

2015年度から都道府県ごとに専用窓口を設け、経営幹部を求める中堅・中小企業に
大企業の人材を紹介する方針を発表しました。

これもマイクロマネジメントの1つで、決して良い施策とは言えません。

地方に職がないので、その支援のために大企業の本社を誘致しよう、
ということですが効果は薄いと言わざるを得ません。

効果が薄いことに多額の税金を投入して、ますます地方が衰えていく流れになってしまいます。

現在、大卒者の就職内定率は7割ほどです。

就職できない人は、それでも都会に残り、パートタイムやアルバイトを選択しています。
地方にはその程度の仕事さえもない、というのが事実です。

一方で、高等専門学校卒の内定率は9割を超えて高く安定しています。

地方創生という言葉だけで片付けるのではなく、
大学の改革も同時に対処すべきです。

そう考えると、私なら大卒者を地方へ就職させるのではなく、
10〜20万人単位で海外に送るべきだと思います。

海外でのビジネス経験を持った人材が将来日本に戻ってきてくれることを考えると、
そのほうがよほど日本のためになるでしょう。

少し話題は変わりますが、山形県庄内町で、報酬アップを求める町議会に対し、
町長が「ボランティア議員による夜間・休日議会」の構想を逆提案し、真っ向から対立しています。

私はこの町長の意見に大賛成です。

そもそも地方議会にはそれほど大きな権限はなく、
中央の法律が規定している範囲内で条例を作ることができるだけです。

地方議会はフルタイムの職にせず、
1回の開催ごとに報酬を支払うという形でも十分だと思います。

庄内町の原田町長のような感覚を持った人が増えてくれれば、
地方創生の議論ももっと生産的なものになるだろうと感じます。


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▼JA全中の権限撤廃は、数少ない安倍政権の正論の1つ
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政府は今月始まる通常国会に提出する農業協同組合法改正案の骨格を固めました。

全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の指導・監査などの
権限を3年で全廃して任意団体に転換する方針を明らかにしました。

これは産業競争力会議における新浪氏の貢献が大きい施策です。

まさにこの問題を焦点として、佐賀県知事選挙が行われています。

農業が反転の兆しを見せないのだから、これまで指導してきたJA全中は役割を果たしていない。
ゆえに、JA全中の権限の撤廃を求めるという動きです。

そして、既得権益・政治権力の強い人を後ろ盾とする対立候補と争っています。

農協の組合会員数を見ても、正組合員数は右肩下がりです。

一方で、准組合員数は増加していますが、これは「なんちゃって農協組合」とも言えます。

農協系の金融商品は、金利が優遇されていたり、有利な条件のものが多いため、
それらを利用することを目的として会員になっているだけです。

農民の立場から見た問題は、依然として解決していません。

未だに農協経由で販売すると、いくつもの中間マージンが乗せられて、
最終消費者に届く頃には非常に高い値段になってしまっています。

だったら、直接注文を受け付けたほうが良いと判断するのは致し方ないでしょう。

JA全中から開放し、各農協であるべき姿を模索してもらうべきでしょう。

このJA全中の権限撤廃の動きは、新浪氏が農水省の役人と渡り合って、
ようやくここまで形にしてきました。

この施策は安倍政権による数少ない正論の1つだと思います。
ぜひ、今回の佐賀県知事選挙にも期待したいところです。

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※この記事は1月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今回は地方創生の話題を取り上げ解説しました。

効果の薄いであろう政策に税金を投入しようとしている政府。
労働市場の実態が把握できていないことが伺えます。

相手はどのような特徴があるかを事前の情報収集によって掴み、
それにあった打ち手を作る必要があります。

ビジネスにおいても同じことが言えるのではないでしょうか?

リアリティがないまま戦略を実行に移していては、
効果を出すことは出来ません。

2015年01月08日(木) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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LNG調達・省エネ建築・日立製作所〜ファクトに基づいた比較分析を考える

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LNG調達 LNG国際入札実施へ
省エネ建築 大規模施設建設に省エネ基準を義務付けへ
日立製作所 スイスABBと合弁会社設立へ

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▼日本のLNG価格は高すぎる/太陽光の新ルールは訴訟の山を引き起こす
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東京電力と中部電力は共同で液化天然ガス(LNG)の国際入札を実施します。

欧米の資源大手など約60社を対象に価格や輸送方法などの条件の提示を12月19日までに募り、
年明けにも調達先を選択。今年4月から年間数十万トンの規模で輸入を開始する方針です。

東京電力にしては歯切れよく「1兆円規模のコスト削減」などと発表していて感心していましたが、
委員会のメンバーを見るとBBT大学の宇田先生がいました。

宇田先生がブレーンとなっているのなら頷けます。

日本のLNG価格は非常に高く、16ドル/100万BTUです。

これはドイツよりも50%〜60%高く、
シェールガスで一気にコストダウンを実現した米国に比べると3倍の価格に相当します。

もう少し価格競争力を持たせる工夫をするべきで、
長期契約になってしまっている原油ペッグもやめる方向で検討するべきだと私は思います。

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経済産業省は12月18日、電力買い取りに関する新しいルールを発表しました。

大手電力各社に対して、日数の制限を設けずに電気の出力抑制を発電事業者に要請できる権限を
付与することなどを盛り込んだもので、買取価格も引き下げ、2015年度には1キロワット時あたり20円台とするなど、
太陽光への偏りを是正する内容となっています。

民主党政権の頃、再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%にすると大風呂敷を広げ、
太陽光については1キロワットあたり43円での買取を20年間据え置くと発表しました。

この条件で投資した人が大勢いますから、いまさら2015年度から条件が変わりますと言われても、
損失を補填してくれと訴訟の山になるのは必至でしょう。


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▼省エネ化は、新設などの条件を設けず、既存を含め徹底的に実施を
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国土交通省は12月18日の有識者会議で、商業施設やホテルなどを新築する際、
国の省エネルギー基準を満たすよう義務づける方針を示しました。

まずは床面積が2千平方メートル以上の大規模施設を対象とし、
基準に届かなければ着工を原則認めないとのこと。

来年の通常国会に新法を提出し、2017年度以降の義務化をめざす方向で検討に入っています。

部門別の最終エネルギー消費量構成比の推移を見ると、
上昇傾向にあるのは業務系のみで、家庭エネルギーが横ばいで、
運輸・産業のエネルギーが減少しつつあります。

そこで業務系に焦点をあてて対策をしようということでしょう。

狙いは悪くありませんが、私なら「新設で2千平方メーター」という条件は設けないでしょう。

既存のビルを含め、全ての商業施設について半減を命じるべきだと思います。
実際、日本以外の国ではそのように動いています。

エンパイヤーステートビルは100年以上の歴史がある古い建物ですが、
省エネの工夫をしてエネルギー使用量はおおよそ半分になっています。

産業関係で言えば、コンプレッサーとモーターの効率を2倍にするという法律を制定すべきだと思います。

「全ての施設で、半減する」という強い決意をもって臨んでもらいたいと感じます。


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▼ABBの技術を使って、国内の電力ネットワークなどを整備せよ
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日立製作所とスイスの重電大手ABBが高効率の送電分野の合弁会社を
日本に設立する方向で最終調整に入りました。

電力小売りの完全自由化や発送電分離など
電力システム改革で日本の送配電の設備需要は大きく増える見通しで、
両者は提携関係を築くことで国内電力会社からの受注獲得を優位に進める狙いです。

これは非常に良いことだと思います。
エネルギー使用量のピークは、地域によってズレてきます。

このとき、電力の融通が必要になりますが、
日本の場合には東西で電力の周波数が異なります。

そのため、フォッサマグナ付近に周波数変換器があるのですが、
私は以前から、この電力変換のキャパシティを3倍にするべきだと提言してきました。

しかし日本のメーカーには、そのような技術力がないので、
ABBやシーメンスなどの技術が必要だったのです。

これまで海外勢を爪はじきにしてきたものの、
ここに来てさすがに日立が動き出したということでしょう。

ABBやシーメンスなどの海外勢を毛嫌いせずに、彼らの技術を活用できれば、
国内電力ネットワークの整備だけでなく、ロシアから超高圧直流送電によって
電力を持ってくることも可能になります。

実際、ABBは中国で直流送電を実現しており、
7%しかロスを出さない技術を持っています。

日立がABBと組むメリットは非常に大きいと思います。

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※この記事は12月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今回はLNG価格や省エネ基準について解説記事をお届けしました。

・もう少し価格競争力をもたらす工夫をすべき
・新設で2千平方メーターという条件は外すべき

いずれの話題に関しても、ファクトに基づく客観的な分析を行いながら、
大前は意見を述べています。

分析の基本は「比べること」です。

業界動向を追い、自社の取り組みと比較してみることで、
はじめて施策内容の評価が行えるようになります。

問題解決においては、このような比べる視点を持って、
次の打ち手を検討していくことが必要です。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月