2015年04月17日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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フィリップス・GEヘルスケア・自動車業界〜選択と集中を考える

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フィリップス 2事業を投資ファンドに売却
GEヘルスケア・ジャパン MRIの新製品を発売
米テスラ・モーターズ EV世界出荷台数1万30台
BMWグループ・ジャパン アマゾンで新車販売を開始
仏ルノー ルノー株の買い増しを発表
中国自動車大手 あえぐ中国ブランド車

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▼フィリップス、GEの選択と集中の方向性に疑問
-------------------------------------------------------------

オランダのフィリップスは先月31日、自動車用照明と発光ダイオード(LED)照明部品の
両事業を投資ファンドに売却すると発表しました。

両事業を統合した新会社ルミレッズの株式の80.1%を28億ドル(約3360億円)で売却するとのことです。

この経営方針は、正直私には理解できません。

フィリップスが強さを誇っているのは、ヘルスケアと照明です。
その照明の大部分を売却するというのです。

さらには、コンシューマー用品でも、調理器具、理美容器具を残して、テレビ事業などは売却する方針です。

かつて松下電器が憧れたフィリップスの面影はありません。
GE、シーメンスと共に世界市場をほぼ独占しているメディカル・ヘルスケア分野は残るものの、
不安を拭いきれません。

大胆に「選択と集中」をしているとも言えますが、もう少し粘るべきだと私は感じています。

実際、投資ファンドは「買う」という判断をしているわけですから、
何とかする算段があるのでしょう。

なぜフィリップスではできないのか?と思ってしまいます。

* * *

GEヘルスケア・ジャパンは、日本の技術陣が開発を主導した
磁気共鳴画像装置(MRI)の新製品を9日発売しました。

脳の病気の診断に必要な複数の画像を1回で撮影できる新技術を搭載。

スキャンにかかる時間を従来の15分前後から5分程度と約3分の1に縮めました。
GEヘルスケアが世界展開するMRIの主力製品となるとのことです。

私も年に1回はMRIで検査をしているのでわかりますが、
かつては1時間ほどかかっていたMRI検査ですから、5分というのは画期的だと言えるでしょう。

この新商品の性能は素晴らしいのですが、
一方でサービス事業や金融事業を大々的に売却する経営方針には疑問を感じます。

10日には、約265億ドル(約3兆1800億円)規模の不動産や関連金融資産を売却すると発表しました。

不動産事業、金融事業を売却し、縮小を図り、
ビッグデータを活用したメーカーとして製造業に回帰するとのことです。

9兆円もの資金を株主還元するとも発表していますが、
私にはもはや「店じまい」「バーゲンセール」に感じられます。

GEキャピタルの業態はお金を大量に抱えなくてはならず大変なのはわかりますが、
わざわざ回り道をしてGEキャピタルを経営してきた意味がなくなってしまいます。

9兆円もの資金を株主還元した後、どのような道を歩むのか、私は懸念しています。


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▼テスラ、電気自動車普及の壁/アマゾンでのBMW電気自動車販売は話題性づくり
-------------------------------------------------------------

米テスラ・モーターズは、2015年1〜3月期の電気自動車の世界出荷台数が
前年同期比55%増の1万30台にのぼり、四半期として過去最高となったと明らかにしました。

中国では苦戦しているものの、米国を中心に高級セダン「モデルS」の販売が好調だったとのことです。

日産の電気自動車も世界で6万台販売されているそうですが、充電施設不足で苦戦しています。

テスラのほうが走行距離は長いのですが、それでもこの問題は避けられません。

テスラの昨年1年間の販売台数は約17,000台とのことです。
この規模では大々的に充電施設を作る動きも取れません。

この壁をどう突き抜けて行くか?今、ちょうど苦しいタイミングなのかも知れません。

* * *

BMWグループ・ジャパンは1日より「Amazon.co.jp」にて同社の電気自動車「BMW i3」の新車販売を開始しました。
日本には「i3」を販売するディーラーが46店舗ありますが、ネット販売でさらにその販路を広げようとしている狙いです。

販路を広げると言っても、実際にはアマゾンで車がどんどん売れていく、ということにはならないでしょう。

今回の狙いは、アマゾンのレコメンド機能を活用し、実際に電気自動車に興味を持つ人が、
他のどんな商品に関心を持っているのかなど、属性データを把握することだと言われています。

カーボンで作られた電気自動車は、「環境に対する意識が高い人」をターゲットにしていましたが、
なかなかディーラー経由では売れないため、マーケティングリサーチをしたいのかも知れません。

ただ、私はほぼ「話題性」を狙ったものだと見ています。


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▼ルノー、日産は仏政府に実権を握られた/中国製の自動車に警戒心を見せる中国国民
-------------------------------------------------------------

フランス政府は8日、自動車大手ルノー株を証券会社から買い増すと発表しました。

最大12億3200万ユーロ(約1600億円)を投じ、保有比率を19.74%に引き上げる方針です。

フランスでは法律が改正され、2年以上株を保有している人の影響力が大きくなります。

フランス政府としては、ゴーン氏の任期が残り2年という、今このタイミングで
15%から20%程度に保有比率を高めておくことで、将来の影響力を発揮したい狙いでしょう。

日産も大株主ですが、日産には「投票権がない」という不公平な条件を受け入れています。

過去に日産が苦しい状況の時に株式を持ってもらったという経緯もあり、致し方なかったのでしょう。

日産もルノーも会長はゴーン氏ですが、ゴーン氏もフランス政府に首を握られる格好になり、
ますます日本の社員、ディーラーの影響力は低下するでしょう。

これは、ルノーにとっても日産にとっても、良いことではないと私は感じています。

* * *

日経新聞は、4日「あえぐ中国ブランド車」と題する記事を掲載しました。

3日に出そろった主要な自動車大手の2014年12月期決算では、
比亜迪(BYLAWS)や吉利汽車など独立系を中心に大半が大幅減益に陥りました。

新車需要の大半は海外ブランド車に流れる構図がより鮮明になり、
知名度や技術力で劣る中国車がいよいよ窮地に追い込まれていると指摘しています。

一時中国では、雨後の筍のように自動車会社が立ち上がりました。
例えば、吉利汽車などは、フォードの傘下にあったボルボを買収するなど好調さを見せていましたが、
結局、ボルボは売れても自社ブランドの車が売れない状況になっています。

中国政府は懸命にテコ入れを図っていますが、
中国の国民が「中国製の自動車」に対して強い警戒心を持ってしまっています。

政府の言いなりにならない中国国民という構図が浮き彫りになってきています。

---
※この記事は4月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、医療機器メーカーや自動車業界の企業動向をお届けしました。

事業を売却し、選択と集中を図ったフィリップスとGEヘルスケア・ジャパン。
戦略の基本として、選択と集中という考え方があります。

これは、自社の強みを把握し、そこにリソースを注ぎ再編成を行うことで、
業績や事業価値を上げようとする考え方です。

ただし選択と集中の意思決定を行うためには、様々な要素を考慮する必要があります。

多くのステークホルダーに影響が出てくる重要な決断だからこそ、
「本当にやるべきなのか?」というゼロベースの観点での検討が求められます。

2015年04月17日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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フィリップス・GEヘルスケア・自動車業界〜選択と集中を考える

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フィリップス 2事業を投資ファンドに売却
GEヘルスケア・ジャパン MRIの新製品を発売
米テスラ・モーターズ EV世界出荷台数1万30台
BMWグループ・ジャパン アマゾンで新車販売を開始
仏ルノー ルノー株の買い増しを発表
中国自動車大手 あえぐ中国ブランド車

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▼フィリップス、GEの選択と集中の方向性に疑問
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オランダのフィリップスは先月31日、自動車用照明と発光ダイオード(LED)照明部品の
両事業を投資ファンドに売却すると発表しました。

両事業を統合した新会社ルミレッズの株式の80.1%を28億ドル(約3360億円)で売却するとのことです。

この経営方針は、正直私には理解できません。

フィリップスが強さを誇っているのは、ヘルスケアと照明です。
その照明の大部分を売却するというのです。

さらには、コンシューマー用品でも、調理器具、理美容器具を残して、テレビ事業などは売却する方針です。

かつて松下電器が憧れたフィリップスの面影はありません。
GE、シーメンスと共に世界市場をほぼ独占しているメディカル・ヘルスケア分野は残るものの、
不安を拭いきれません。

大胆に「選択と集中」をしているとも言えますが、もう少し粘るべきだと私は感じています。

実際、投資ファンドは「買う」という判断をしているわけですから、
何とかする算段があるのでしょう。

なぜフィリップスではできないのか?と思ってしまいます。

* * *

GEヘルスケア・ジャパンは、日本の技術陣が開発を主導した
磁気共鳴画像装置(MRI)の新製品を9日発売しました。

脳の病気の診断に必要な複数の画像を1回で撮影できる新技術を搭載。

スキャンにかかる時間を従来の15分前後から5分程度と約3分の1に縮めました。
GEヘルスケアが世界展開するMRIの主力製品となるとのことです。

私も年に1回はMRIで検査をしているのでわかりますが、
かつては1時間ほどかかっていたMRI検査ですから、5分というのは画期的だと言えるでしょう。

この新商品の性能は素晴らしいのですが、
一方でサービス事業や金融事業を大々的に売却する経営方針には疑問を感じます。

10日には、約265億ドル(約3兆1800億円)規模の不動産や関連金融資産を売却すると発表しました。

不動産事業、金融事業を売却し、縮小を図り、
ビッグデータを活用したメーカーとして製造業に回帰するとのことです。

9兆円もの資金を株主還元するとも発表していますが、
私にはもはや「店じまい」「バーゲンセール」に感じられます。

GEキャピタルの業態はお金を大量に抱えなくてはならず大変なのはわかりますが、
わざわざ回り道をしてGEキャピタルを経営してきた意味がなくなってしまいます。

9兆円もの資金を株主還元した後、どのような道を歩むのか、私は懸念しています。


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▼テスラ、電気自動車普及の壁/アマゾンでのBMW電気自動車販売は話題性づくり
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米テスラ・モーターズは、2015年1〜3月期の電気自動車の世界出荷台数が
前年同期比55%増の1万30台にのぼり、四半期として過去最高となったと明らかにしました。

中国では苦戦しているものの、米国を中心に高級セダン「モデルS」の販売が好調だったとのことです。

日産の電気自動車も世界で6万台販売されているそうですが、充電施設不足で苦戦しています。

テスラのほうが走行距離は長いのですが、それでもこの問題は避けられません。

テスラの昨年1年間の販売台数は約17,000台とのことです。
この規模では大々的に充電施設を作る動きも取れません。

この壁をどう突き抜けて行くか?今、ちょうど苦しいタイミングなのかも知れません。

* * *

BMWグループ・ジャパンは1日より「Amazon.co.jp」にて同社の電気自動車「BMW i3」の新車販売を開始しました。
日本には「i3」を販売するディーラーが46店舗ありますが、ネット販売でさらにその販路を広げようとしている狙いです。

販路を広げると言っても、実際にはアマゾンで車がどんどん売れていく、ということにはならないでしょう。

今回の狙いは、アマゾンのレコメンド機能を活用し、実際に電気自動車に興味を持つ人が、
他のどんな商品に関心を持っているのかなど、属性データを把握することだと言われています。

カーボンで作られた電気自動車は、「環境に対する意識が高い人」をターゲットにしていましたが、
なかなかディーラー経由では売れないため、マーケティングリサーチをしたいのかも知れません。

ただ、私はほぼ「話題性」を狙ったものだと見ています。


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▼ルノー、日産は仏政府に実権を握られた/中国製の自動車に警戒心を見せる中国国民
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フランス政府は8日、自動車大手ルノー株を証券会社から買い増すと発表しました。

最大12億3200万ユーロ(約1600億円)を投じ、保有比率を19.74%に引き上げる方針です。

フランスでは法律が改正され、2年以上株を保有している人の影響力が大きくなります。

フランス政府としては、ゴーン氏の任期が残り2年という、今このタイミングで
15%から20%程度に保有比率を高めておくことで、将来の影響力を発揮したい狙いでしょう。

日産も大株主ですが、日産には「投票権がない」という不公平な条件を受け入れています。

過去に日産が苦しい状況の時に株式を持ってもらったという経緯もあり、致し方なかったのでしょう。

日産もルノーも会長はゴーン氏ですが、ゴーン氏もフランス政府に首を握られる格好になり、
ますます日本の社員、ディーラーの影響力は低下するでしょう。

これは、ルノーにとっても日産にとっても、良いことではないと私は感じています。

* * *

日経新聞は、4日「あえぐ中国ブランド車」と題する記事を掲載しました。

3日に出そろった主要な自動車大手の2014年12月期決算では、
比亜迪(BYLAWS)や吉利汽車など独立系を中心に大半が大幅減益に陥りました。

新車需要の大半は海外ブランド車に流れる構図がより鮮明になり、
知名度や技術力で劣る中国車がいよいよ窮地に追い込まれていると指摘しています。

一時中国では、雨後の筍のように自動車会社が立ち上がりました。
例えば、吉利汽車などは、フォードの傘下にあったボルボを買収するなど好調さを見せていましたが、
結局、ボルボは売れても自社ブランドの車が売れない状況になっています。

中国政府は懸命にテコ入れを図っていますが、
中国の国民が「中国製の自動車」に対して強い警戒心を持ってしまっています。

政府の言いなりにならない中国国民という構図が浮き彫りになってきています。

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※この記事は4月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、医療機器メーカーや自動車業界の企業動向をお届けしました。

事業を売却し、選択と集中を図ったフィリップスとGEヘルスケア・ジャパン。
戦略の基本として、選択と集中という考え方があります。

これは、自社の強みを把握し、そこにリソースを注ぎ再編成を行うことで、
業績や事業価値を上げようとする考え方です。

ただし選択と集中の意思決定を行うためには、様々な要素を考慮する必要があります。

多くのステークホルダーに影響が出てくる重要な決断だからこそ、
「本当にやるべきなのか?」というゼロベースの観点での検討が求められます。

2015年04月10日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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ニコン、ABCマート、ドン・キホーテHD、カルビー 〜主要プレーヤーの状況から市場動向を考える

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ニコン 連結営業利益370億円
ABCマート 連結営業利益400億円
ドン・キホーテHD 時価総額で三越伊勢丹超えの衝撃
カルビー 連結営業利益240億円見通し


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▼厳しい状況が続くニコン/好調さを見せるABCマート
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ニコンの2015年3月期の連結営業利益は前期比41%減の370億円前後となり、
従来予想を約10億円上回ったとのことです。

主力のデジタルカメラと半導体露光装置の販売台数は計画を達成しました。

円安や生産コストなどの削減も寄与したと報道されていますが、これは記事の書き方次第でしょう。

売上は対前年度41%落ち込んでいますが、その下方予想よりは10億円上回ったというだけです。

ニコンの売上が4割落ち込むというのは、まさに業界そのものが厳しい状況にあることを示しています。

連結営業利益370億円というのは流石ニコンだと思いますが、
スマートフォンにカメラを奪われてしまった今、
これから先もカメラそのものを持ち歩かない人が増えていくでしょう。

キヤノンも同様ですが、この流れは非常に苦しいと言わざるを得ません。

一方、好調さを見せているのが、ABCマートです。

ABCマートの2015年2月期の連結営業利益は400億円程度と前期比17%増加、
12期連続で過去最高を更新したとのことです。

「ニューバランス」など有力ブランドスニーカーの販売が好調で、
都心部や観光地の店舗で、訪日外国人客が増えたことも追い風となった模様です。

いわゆるイオンモールのような場所に入っている新興小売業の代表格が、
ニトリ、しまむら、そしてABCマートです。

それぞれの特徴を見てみると、しまむらは売上高が大きいのですが、収益に陰りが見えます。

一方、ニトリは売上も利益も順調に伸びています。
大塚家具は内紛を終えたばかりですが、外の敵であるニトリ、イケアは相当手強い相手だと思います。

ABCマートの特徴は、売上高はそれほど大きくありませんが、利益が大きいことでしょう。

日本の靴は儲からないと言われてきましたが、まさに赤丸急上昇中という勢いです。


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▼流通業に新機軸を打ち立てたドン・キホーテ/ペプシコとの提携で飛躍するカルビー
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ビジネス情報サイト・ビジネスジャーナルは1日、
「ドン・キホーテ、三越伊勢丹超えの衝撃」と題する記事を掲載しました。

これは、ドン・キホーテの2015年1月30日時点の時価総額は6783億円で東証1部の小売業の6位となり、
百貨店業界首位の三越伊勢丹HDのそれ(同6635億円)を上まったと紹介。

カリスマ経営者の安田隆夫氏は、6月30日に開催される定時株主総会後に会長を退く方針で、
好調を花道に引退するとのことです。

火事を起こしたり、様々な騒ぎを起こして話題になったこともありますが、
安田氏が一代での流通業の中に新しい形態を確立したのは、見事と言うしかないでしょう。

ドン・キホーテの特徴は、売上も伸びていて、さらに収益性が高いことです。

百貨店も今でこそ売上が回復してきていますが、どうしても利益率は低くなってしまいます。

利益率が低いために、時価総額が上がりません。これはスーパーという業態でも同じ問題を抱えています。

結局のところ、すでに時代は「百貨」ではないということです。

流通業のチャンピオンである三越伊勢丹が、ドン・キホーテに時価総額で追い抜かれるというのは、
そういうことを示しています。

安田氏は会長を退き、引退するとのことですが、本当に他人に任せることができるのか?
と言うと、なかなかそうはいかないとも感じます。

* * *

カルビーの2015年3月期は、連結営業利益が前期比約2割増の240億円前後になる見通しです。
従来予想を15億円ほど上回り、6期連続で最高益を更新します。

国内は朝食などに食べるシリアル「フルグラ」の増産体制を整えた成果が出るほか、
米国や韓国など海外の菓子事業の伸びも寄与するとのことです。

カルビーは2009年に米ペプシコと提携しました。
株式を20%保有してもらい、ペプシコからの経営陣の派遣も受け入れました。

また同年、元ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長の松本晃氏がカルビーの会長に就任し、
アメリカ式の経営スタイルへ転換を図りました。

このように外資に対してオープンな態度をとるのは、
CPG業界(Consumer Packaged Goods)では非常に珍しい事例です。

ペプシコと事業提携、そしてイノベーションとコスト削減など、
ペプシコの良いところを取り込んだ結果、見事に売上も収益も伸ばしてきました。

「海外スナック」や「シリアル」が伸びているのは、ペプシコが持つ
カルビーと同様のポテト系スナックの全米No.1である「フリトレー」との連携が大きいでしょう。

提携が実を結びつつあるとわかります。

役員構成も非常に特徴があります。代表取締役会長・CEOの松本氏は、
伊藤忠入社後、ジョンソン・エンド・ジョンソン社長を歴任した人物です。

そして社外取締役に、キッコーマン取締役会議長の茂木氏、カゴメ相談役の富岡氏、
一橋大学・IMD教授の一條氏、フリトレー・トルコ、ペプシコの幹部ユームラン・ベバ氏など、
かなり多様な構成になっていると思います。

ペプシコの株式保有率は決して高くありませんが、この提携は非常に上手く機能しています。

日本では非常に珍しい事例であり、今後もカルビーの動きには注目していきたいと思います。

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※この記事は4月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はニコンの企業動向について解説をお届けしました。

市場分析を行うに当たって重要となるのが、
主要プレーヤーの動きを注意深くウォッチすることです。

主要プレーヤーを中心とした情報収集は、
業界構造の全体像や市場動向の理解に役立ちます。

また市場動向の理解は、取り巻く環境の変化への気付きや、
売上を増大させるためのチャンスを発見することにもつながっていきます。

問題解決は、このように全体の流れを掴むことからスタートするのです。

2015年04月03日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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リークアンユー氏死去・財政健全化・国の連結バランスシート・電源構成〜やるべきことをやらない日本の政治家の姿

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リー・クアンユー氏が死去
財政健全化、はや暗雲
国の連結バランスシート 2013年度末時点の債務超過額451兆円
電源構成 2030年の原発比率「20%が下限」

-------------------------------------------------------------
▼日本の政治家とは一線を画するリー・クアンユー氏の思考力と行動力
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シンガポールのリー・クアンユー元首相が先月23日、同国内の病院で死去しました。
91歳でした。国葬は29日に営まれました。

リー・クアンユー氏は善意ある独裁者と言われるほど、強力なリーダーシップを発揮し、
天然資源も何もなかったシンガポールを、今では一人あたりGDPで日本を上回り
5万ドルを超えるレベルにまで発展させた立役者です。

私は数十年前、シンガポールから国家戦略のアドバイザーの依頼を受けたことがありましたが、
当時のリー・クアンユー氏は、ケンブリッジ大学で学んだ英国教育の影響が大きかったのでしょうが、
「2次産業がなくして国は成り立たない」と考えていました。

時計や造船などの産業を興すつもりだったようです。

私はその意見に反対し、実現しつつあるASEANに目を向け、
この枠組の中で実質的な首都の立場を取ることができれば、
サービス業や金融業の3次産業だけでやっていけるとアドバイスしました。

残念ながら、リー・クアンユー氏には受け入れられず、
結局シンガポールはオランダから別のアドバイザーを連れてきて2次産業を始めました。

しばらくして、その2次産業が上手くいかず、再度私のところへ依頼が来たのですが、
すでに私はマハティール氏のアドバイザーに就任していましたので断りました。

その後、リー・クアンユー氏も3次産業へ目を向けて、結果としてシンガポールは、
規制を撤廃し外国企業を誘致することでサービス業や金融業といった第3次産業で見事に大成功を収めました。

最初は私の意見を受け入れなかったリー・クアンユー氏ですが、
一度気が付くと、行動は迅速で徹底したものでした。

シンガポールでは法律で長髪とチューインガムを禁止しています。
その理由は、シンガポールが「ホテルモデル」だからです。

すなわち、シンガポールは世界中からお客さんに来てもらうホテルであり、
国民はそのホテルの従業員と同じなのだから、
長髪やチューインガムは許されない、ということです。

このあたりの徹底ぶりが、善意ある「独裁者」と言われる所以でしょう。

またリー・クアンユー氏は、インドにシンガポール型の工業団地を作る手伝いをするなど、
色々とシンガポールでの成功モデルを使って、他人を助けていました。

非常に影響力のある人でした。

決して仲が良くなかったマレーシアのマハティール元首相も、
今回の訃報を受けて「アジアの偉大な指導者を失った」と功績をたたえたそうです。

どうしたら日本でも、リー・クアンユー氏やマハティール氏のような政治家が出てくるのか?
と聞かれることがありますが、率直に言うと私は「頭の構造が違う」とさえ感じます。

日本の政治家にも期待したいところですが、今の日本の政治家を見ていると、正直、難しいかも知れません。


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▼日本の政治家は、問題を見て見ぬふりをするしかできなくなったのか。
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政府が夏につくる財政健全化計画に、はやくも暗雲が漂いはじめました。

安倍首相は消費税率10%への引き上げ延期を決めた2014年11月、日本財政への信認が
損なわれないように取りまとめを約束したものの、先月13日の衆院財務金融委員会では、
「10%までは消費税を上げるが、それ以上の引き上げで税収を増やすことは考えていない」
と言い切ったとのことです。

もし消費税を10%以上の引き上げを封印するとしたら、
GDPが2%成長をしても基礎的財政収支はプラスに転じず、
GDPが1%成長なら横ばいから悪化していく試算になります。

財務省が先月27日発表した、負債が資産を上回る「債務超過額」は
451兆円と1年前に比べて4兆円増えて過去最高になっています。

資産が伸びているから大丈夫などと言っていた政治家もいましたが、賞味の負債で450兆円です。

国民一人あたり450万円の借金になり、どう考えてもこれを返済するのは難しいでしょう。

このような社会で、どう希望を持てばいいのか?どうすればいいのか?

これらの点について、私の意見をまとめた本(「低欲望社会」)を近いうちに上梓する予定です。
ぜひ手にとって見て下さい。

日本の政治家について言えば、もはやこれらの試算が発表されても、
安倍首相を筆頭に問題から目をそらし、現実逃避しているだけで解決策は見えてきていません。
非常に残念なことです。

* * * * *

経済同友会は先月24日、2030年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)と原子力発電の比率について
「原発依存度は20%程度を下限とすることが現実的だ」との提言を発表しました。

電源別発電電力構成比を見ると、3.11以降、石炭、LNGなどが増えて、
クリーンエネルギーという観点で言えば、完全に悪化しています。

さらに重要なのは、ベースロード電源を確保できないことでしょう。

日本でベースロード電源になり得るのは、石炭と原子力くらいでした。
太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーは「気まぐれ」ですから、ベースロード電源としては不安です。

現実的に言って、原発の割合を2割ほどにすれば日本の電源構成は安定するでしょう。

今の日本における原発への逆風の中、経済同友会が発表した内容は正論だと思います。
しかし、一方で政府の対応がよろしくありません。

この正論の正しさを、国民に説明する必要があります。

例えば、柏崎刈羽原発は福島第一原発の教訓をすべて反映させて、3000億円もの資金を投じて改善しています。

福島で何が起きたのか?どうすれば避けられたのか?という点を、
政府は国民にわかりやすく説明するべきです。

やるべきことをやらない日本の政治家の残念な姿が、ここでも現れてしまっています。

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※この記事は3月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は財政健全化について解説をお届けしました。

記事中、大前は日本の政治家について、
問題から目をそらし現実逃避をしていると指摘しています。

仮に、代案となる「実行しやすい」解決策を提示したとしても、
それが本質を見失っている限りインパクトを生み出すことはできません。

多くの場合、解決策の実行に阻害要因はつきものです。
この阻害要因を取り除き、解決策を推し進めていくことが重要です。

問題の解決を先送りせず、自らが使命感を持って動くこと。
これはProblem Solverの基本姿勢です。

2015年04月03日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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リークアンユー氏死去・財政健全化・国の連結バランスシート・電源構成〜やるべきことをやらない日本の政治家の姿

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リー・クアンユー氏が死去
財政健全化、はや暗雲
国の連結バランスシート 2013年度末時点の債務超過額451兆円
電源構成 2030年の原発比率「20%が下限」

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▼日本の政治家とは一線を画するリー・クアンユー氏の思考力と行動力
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シンガポールのリー・クアンユー元首相が先月23日、同国内の病院で死去しました。
91歳でした。国葬は29日に営まれました。

リー・クアンユー氏は善意ある独裁者と言われるほど、強力なリーダーシップを発揮し、
天然資源も何もなかったシンガポールを、今では一人あたりGDPで日本を上回り
5万ドルを超えるレベルにまで発展させた立役者です。

私は数十年前、シンガポールから国家戦略のアドバイザーの依頼を受けたことがありましたが、
当時のリー・クアンユー氏は、ケンブリッジ大学で学んだ英国教育の影響が大きかったのでしょうが、
「2次産業がなくして国は成り立たない」と考えていました。

時計や造船などの産業を興すつもりだったようです。

私はその意見に反対し、実現しつつあるASEANに目を向け、
この枠組の中で実質的な首都の立場を取ることができれば、
サービス業や金融業の3次産業だけでやっていけるとアドバイスしました。

残念ながら、リー・クアンユー氏には受け入れられず、
結局シンガポールはオランダから別のアドバイザーを連れてきて2次産業を始めました。

しばらくして、その2次産業が上手くいかず、再度私のところへ依頼が来たのですが、
すでに私はマハティール氏のアドバイザーに就任していましたので断りました。

その後、リー・クアンユー氏も3次産業へ目を向けて、結果としてシンガポールは、
規制を撤廃し外国企業を誘致することでサービス業や金融業といった第3次産業で見事に大成功を収めました。

最初は私の意見を受け入れなかったリー・クアンユー氏ですが、
一度気が付くと、行動は迅速で徹底したものでした。

シンガポールでは法律で長髪とチューインガムを禁止しています。
その理由は、シンガポールが「ホテルモデル」だからです。

すなわち、シンガポールは世界中からお客さんに来てもらうホテルであり、
国民はそのホテルの従業員と同じなのだから、
長髪やチューインガムは許されない、ということです。

このあたりの徹底ぶりが、善意ある「独裁者」と言われる所以でしょう。

またリー・クアンユー氏は、インドにシンガポール型の工業団地を作る手伝いをするなど、
色々とシンガポールでの成功モデルを使って、他人を助けていました。

非常に影響力のある人でした。

決して仲が良くなかったマレーシアのマハティール元首相も、
今回の訃報を受けて「アジアの偉大な指導者を失った」と功績をたたえたそうです。

どうしたら日本でも、リー・クアンユー氏やマハティール氏のような政治家が出てくるのか?
と聞かれることがありますが、率直に言うと私は「頭の構造が違う」とさえ感じます。

日本の政治家にも期待したいところですが、今の日本の政治家を見ていると、正直、難しいかも知れません。


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▼日本の政治家は、問題を見て見ぬふりをするしかできなくなったのか。
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政府が夏につくる財政健全化計画に、はやくも暗雲が漂いはじめました。

安倍首相は消費税率10%への引き上げ延期を決めた2014年11月、日本財政への信認が
損なわれないように取りまとめを約束したものの、先月13日の衆院財務金融委員会では、
「10%までは消費税を上げるが、それ以上の引き上げで税収を増やすことは考えていない」
と言い切ったとのことです。

もし消費税を10%以上の引き上げを封印するとしたら、
GDPが2%成長をしても基礎的財政収支はプラスに転じず、
GDPが1%成長なら横ばいから悪化していく試算になります。

財務省が先月27日発表した、負債が資産を上回る「債務超過額」は
451兆円と1年前に比べて4兆円増えて過去最高になっています。

資産が伸びているから大丈夫などと言っていた政治家もいましたが、賞味の負債で450兆円です。

国民一人あたり450万円の借金になり、どう考えてもこれを返済するのは難しいでしょう。

このような社会で、どう希望を持てばいいのか?どうすればいいのか?

これらの点について、私の意見をまとめた本(「低欲望社会」)を近いうちに上梓する予定です。
ぜひ手にとって見て下さい。

日本の政治家について言えば、もはやこれらの試算が発表されても、
安倍首相を筆頭に問題から目をそらし、現実逃避しているだけで解決策は見えてきていません。
非常に残念なことです。

* * * * *

経済同友会は先月24日、2030年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)と原子力発電の比率について
「原発依存度は20%程度を下限とすることが現実的だ」との提言を発表しました。

電源別発電電力構成比を見ると、3.11以降、石炭、LNGなどが増えて、
クリーンエネルギーという観点で言えば、完全に悪化しています。

さらに重要なのは、ベースロード電源を確保できないことでしょう。

日本でベースロード電源になり得るのは、石炭と原子力くらいでした。
太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーは「気まぐれ」ですから、ベースロード電源としては不安です。

現実的に言って、原発の割合を2割ほどにすれば日本の電源構成は安定するでしょう。

今の日本における原発への逆風の中、経済同友会が発表した内容は正論だと思います。
しかし、一方で政府の対応がよろしくありません。

この正論の正しさを、国民に説明する必要があります。

例えば、柏崎刈羽原発は福島第一原発の教訓をすべて反映させて、3000億円もの資金を投じて改善しています。

福島で何が起きたのか?どうすれば避けられたのか?という点を、
政府は国民にわかりやすく説明するべきです。

やるべきことをやらない日本の政治家の残念な姿が、ここでも現れてしまっています。

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※この記事は3月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は財政健全化について解説をお届けしました。

記事中、大前は日本の政治家について、
問題から目をそらし現実逃避をしていると指摘しています。

仮に、代案となる「実行しやすい」解決策を提示したとしても、
それが本質を見失っている限りインパクトを生み出すことはできません。

多くの場合、解決策の実行に阻害要因はつきものです。
この阻害要因を取り除き、解決策を推し進めていくことが重要です。

問題の解決を先送りせず、自らが使命感を持って動くこと。
これはProblem Solverの基本姿勢です。

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