2015年05月29日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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中国経済・中国自動車・アジア投資銀行〜失速に向かう中国経済を考える

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中国経済 中国経済の失速鮮明
中国自動車市場 4月の新車販売台数 199万4500台
アジアインフラ投資銀行 南アジアの発展へ協力強化
アジア投資 今後5年間で約13兆2000億円投資

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▼失速する中国経済とその影響
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ロイターは13日、「中国経済の失速鮮明」と題する記事を掲載しました。

中国の4月の鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資はすべて予想を下回ったと紹介。
政策緩和にも関わらず景気が回復に向かっていない現状が鮮明になったと指摘しています。

東洋経済オンラインでは、中国経済の失速について「超高層ビルの呪い」と指摘していました。

かつて米国はエンパイアステートビルを建築後に大恐慌に見舞われましたし、
同様にブルジュ・ハリファを建てた後、ドバイではドバイ・ショックが起こり、
ペトラスタワーを建てた後マレーシアはアジア通貨危機の打撃を被りました。

中国では世界第2位の高さになる超高層ビル・上海タワーがまもなく完成予定ですが、
これが中国経済の失速を示唆しているということになります。

超高層ビルというものは、経済の調子が良いから建築するもので、
その後経済が落ち込む可能性が高いという意味では、
「超高層ビルの呪い」もある程度蓋然性は高いと言えるでしょう。

実際今の中国経済を見ると、オーストラリアから中国向けの鉄鉱石は大きく減少し、
毎月8兆円規模のお金が中国から逃げています。

中国経済の雲行きが怪しくなり、中国では政府系の関係者までお金を国外に持ち出しているのが実情です。

* * *

中国汽車工業協会が11日、発表した4月の販売台数は前年同月に比べ0.5%少ない199万4500台で、
実質2年7カ月ぶりのマイナスとなりました。

中国は自動車販売で世界最大の市場ですから、自動車大手の戦略にも影響を与え始めています。

最近GMとフォルクスワーゲンは工場を増産できるよう体制を整えていますが、
GMなど主力車種を100万円値下げしてでも、工場をフル稼働させるよう努力しています。

ビジネスウィーク誌の記事では、トヨタはRAVE4という電気自動車を中国市場から撤退させたいのに、
中国が首を縦に振ってくれずに困っていると指摘されていましたが、
このような状況はトヨタなど日本企業にとってもいい迷惑でしょう。

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▼アジアインフラ投資の主導権を握る中国とインド
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中国の李克強首相は15日、北京の人民大会堂で訪中したインドのモディ首相と会談しました。

中国主導で創設するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の運用を巡り、
中印両国が連携して南アジアの発展に向けて協力を強化していくことで一致しました。

会談では、総額100億ドル(約1兆1900億円)規模の事業協力でも合意したとのことです。

アジアインフラ投資銀行の株式は、中国が約25%、インドが約15%を保有します。

中国が筆頭株主になり、インドが2位になり、主導権を両国で握るという構図が明確になってきました。

中国とインドといえばBRICsでの関係もありますが、
今回のアジアインフラ投資銀行においては更にその関係性が強くなったと言えます。

インドのモディ首相はTIME誌の表紙を飾るなど注目を集めていますが、
その理由の1つは中国経済が破綻した後、世界経済をけん引できるのはインドだと考えられているからでしょう。

国内ではそれほど評判が良いわけではないのですが、インド経済の状況はまずまずですし、
幸先の良いスタートを切ったと思います。

来日した際には、日本のことを最大の友人と評していましたが、
いつの間にか中国との関係性を強化してしまいました。

日本も米国も下手にインドに手を出すことができない状況になったと言えるでしょう。

そのような中、日本では安倍首相は21日、アジア開発銀行(ADB)と連携し、
アジアのインフラ整備に今後5年間で約1100億ドル(約13兆2000億円)を投じると表明しました。

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)には言及しなかったものの
「いかなる国の恣意的な思惑にも左右されない、フェアで持続可能なマーケットを作り上げよう」と語ったとのことです。

突然、降って湧いたように「13兆円」という金額が飛び出てきて、私には全くその裏付けが理解できません。
13兆円という金額は非常に大きいものです。

日本の紐付きODA投資にならないのならば、アジアの国にとっても非常に大きな力になるでしょう。

しかし、残念ながら私には「しっかり考えられた裏付けがあるプロジェクト」とは思えません。
AIIBに対抗して数字を「言ってみただけ」だと思います。

あるいは、みんなの願望を並べてみたら13兆円になったというだけでしょう。

日本国内の経済も大変な状況なのに、よく安倍首相は軽々しく発言できるものだと感じてしまいます。

13兆円の裏付けも、どのような見返りがあるのかも全く私は理解できません。

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※この記事は5月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はアジア投資に関する話題をお届けしました。

今後5年間でアジア開発銀行と連携し、約13兆円を投資すると表明した安倍首相。
しかし、その裏付けや効果までは言及されていません。

主張を支える論拠は何か?
またその論拠はファクトから導かれたものか?

このような論理構造を持って説明することは、
相手にメッセージを理解してもらうために重要です。

ファクトベースでのコミュニケーションを行うこと。
これは問題解決者の基本スキルです。

2015年05月22日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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コマツ・三井不動産・オフィス空室率・ソフトバンク〜観察と仮説構築を考える

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コマツ 「優等生」コマツを追い込んだ2つの"誤算"
三井不動産 連結純利益1001億円
オフィス空室率 東京都新5区のオフィス空室率
ソフトバンク 連結純利益6683億円

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▼優等生コマツでも、中国を読み違えた
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東洋経済オンラインは、13日、「優等生」コマツを追い込んだ2つの"誤算"と題する記事を掲載しました。

世界2位の建設機械メーカー、コマツが2016年3月期の売上高で減収減益を予想するなど、
苦戦を強いられている背景には、中国の景気減速と鉱山機械の需要縮小という2つの"誤算"があると紹介しています。

私に言わせれば、本当の原因は「中国」のみだと思います。
誤算ではなく、中国の景気を読み違えてしまったということです。

コマツの建設機械・車両の地域別売上高を見ると、米国の売上高が日本を上回っています。
キャタピラーの本拠地米国での結果ですから、大したものだと思います。

一方、中南米、アジアは伸び悩み、中国の影響を受けたオセアニアは減少しています。

中国の影響を受けて苦境に立たされているのは、コマツに限りません。
コマツ、キャタピラー、三一集団など、建設機械メーカーはどこも苦しんでいます。

コマツはその中でも、まだ利益が出ているので良い方でしょう。
ただし、これまでは礼賛されるばかりでしたが、若干そこに陰りが見え始めたという印象です。


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▼オフィス空室率は上がっていくのが普通
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三井不動産が11日発表した2015年3月期の連結決算は、純利益が前期比30%増の1001億円となり、
7期ぶりに過去最高を更新しました。

16年3月期も商業施設やオフィスビルの賃料収益が伸び、2年連続で過去最高益となる見通しです。
賃貸も分譲も非常に調子がいいようです。

ただし、不動産なので秋くらいになってくると落ち込んでくる可能性が高いでしょう。

また、オフィス仲介大手の三鬼商事が14日に発表した4月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、
全体の平均で0.04ポイント上昇し、5.34%となったとのことです。

上昇するのは22カ月ぶり。港区や中央区で、新しく大型のオフィスビルが完成したことが影響したとの見解です。

私は少し意見が違っていて、今の日本の状況を見ると、
オフィス空室率は「下がっていたのが不思議」であり、もっと上昇していくものだと思います。

今後、外資系企業が殺到してくるとも想像しづらいですし、政府の意向も地方拠点支援に向かっています。

港区の一部などで賃料が上がっていますが、今後は空室率が上昇すると私は見ています。

私のオフィス近辺(千代田区)でも、マンション建設が盛んです。
すごい勢いで都心に人が流れこんできているのがわかります。

一昔前に比べると、認可も建築も早くなっているのも要因でしょう。
それでも供給が勝る状態だと思います。

よほど日本の条件が改善し、外資系企業が戻ってくるとか、
シンガポールで非常事態が発生して日本へ拠点を移すなどの流れがない限り、
日本のオフィス空室率は上昇していくでしょう。


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▼ニケシュ・アローラ氏を選んだのは、投資事業のため
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ソフトバンクが11日発表した2015年3月期の連結決算は、
純利益が前期比28%増の6683億円と、5期連続で最高を更新しました。

一方、孫社長は「これまでメインは国内、海外はサブだった。これからはグローバルな会社になる」として
代表権のある副社長に米グーグルから引き抜いたニケシュ・アローラ氏を起用することを明らかにしました。

孫社長の意図するところは、「投資事業」へ力を入れるということでしょう。

事業面では米携帯電話大手のスプリントを買収し、
色々と尽力してきましたが、なかなか思うような成果に結びついていません。

想像以上に、ベライゾンやAT&Tの壁を厚く感じていると思います。

そこで、売却までを含めたオペレーションなどよりも、
どちらかと言えば、ウォーレン・バフェットのような方向性を考えているのでしょう。

巨大なソフトバンクグループを率いていくとすると、「投資」が重要です。

実際、アリババ、ヤフーなどの成功事例もありますし、次世代を見据えてインドにも仕掛けています。

これをソフトバンクのメインに据えるイメージだと思います。

これまでの実績を見れば、どこぞのベンチャーファンドよりも、
さらに言えばウォーレン・バフェットをも上回っていると言えます。

しかし、孫社長個人の才能・力量に追うところが大きく、
社内には目ぼしい人材が見当たらなかったため、今回ニケシュ・アローラ氏を招き入れたのでしょう。

数年間、一緒に仕事をした経験もありますし、
孫社長の「勘」とも言える絶妙な投資判断に近い感覚を持ちえている人物として期待しているのだと思います。

孫社長はソフトバンクアカデミアを主催し、10年かけて後継者を育成するという試みを実施していますが、
結局のところ、後継者は育てるものではなく、見つけるものだということでしょう。

英語が堪能な経営者だと、後継者に外国人を選択する傾向がありますが、あまり成功する確率が高いとは言えません。

失敗の代表例でいえば、ソニーの出井氏が選んだハワード・ストリンガー氏でしょう。
今回のニケシュ・アローラ氏は、一緒に仕事をした経験も踏まえて選ばれているので、そこまでの事態にはならないと思います。

ソフトバンクの事業を大きく、オペレーションとインベストメントにわける構想であれば、
インベストメント分野はニケシュ・アローラ氏に任せても大丈夫でしょう。

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※この記事は5月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はオフィス空室率に関して解説をお届けしました。

三鬼商事の発表に対し、オフィス空室率が下がっていることが
むしろ不思議であると大前は意見を述べています。

自分ならばどう考えるのか?

ニュースの情報をただ鵜呑みにするのではなく、それに対して
自身の意見をもつことが「考える力」を養うことにつながります。

身の回りの観察や世の中のファクトから、仮説を構築すること。

問題解決にあたっては、この仮説思考の精度が重要になってきます。

■2015年05月15日(金)  砂上の楼閣
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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財政健全化・国内株式市場・休眠預金〜問題解決者の姿勢を考える

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財政健全化 計画の基本方針固め
国内株式市場 日本株を買い支え、引き上げる7頭のクジラ
休眠預金 議員立法の素案まとめ

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▼日本の財政に対する安倍総理の姿勢
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政府は夏にまとめる財政健全化計画の基本方針を固ました。

2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする道筋として、
経済成長による税収増で7兆円、歳出削減などで9.4兆円を賄う計画です。

消費税の10%超への引き上げは当面検討しない予定とのことです。

経済成長による税増収ということで、GDP成長率2%を前提とした発表になっていますが、
あまりにも楽観的に過ぎて、私は目が点になりそうです。

経済が現状にしたがってベースラインのまま推移をすると、基礎的財政収支は一向に改善しませんし、
このままの状況ではGDP成長率2%を達成することも不可能でしょう。

なぜ、何ら実現性のない計画を発表しただけで安心して、財政の立て直しをやろうとしないのか、
消費税を10%のままで凍結と言えるのか、私には全く理解できません。

安倍総理に言わせれば、「経済成長すればいい」ということになるのでしょうが、
そもそもそれすらも今のままでは難しい上に、客観的に見れば経済成長したとしても、
程度が知れています。

安倍総理が言うようにGDP成長率2%を実現しても、2023年には基礎的財政収支を黒字化できません。

今、世界全体の傾向として、GDPに対する債務残高が増加しています。
しかし、その中にあっても日本は異常です。

かつて日本と同じ程度に債務残高を抱えていたイタリアもユーロの中にあって、
この15年間は、債務残高は対GDP比150%弱でやや落ち着きを見せています。

日本だけが200%を超えて突き抜けています。

市場の状況が変化すれば、日本は大変なことになる可能性があります。
安倍総理の脳天気さには開いた口が塞がりません。


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▼日本株が上がっている本当の理由とは?
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ニュースメディア・THE PAGEは、「日本株を買い支え、引き上げる7頭のクジラ」と題する記事の中で、
日本銀行、ゆうちょ銀行、かんぽ生命など巨額の公的マネーが日本株を買いまくっていると伝えています。

ここに、「なぜ今日本株が上がっているのか?」という問いに対する答えがあります。

「株価が上がっているのは、企業業績が良くなっているから」という回答もあるでしょうが、
もはや今の株価は企業業績だけで説明できる範囲を超えています。

日本の株高の原因は、公的年金ポートフォリオにあります。

日本株を買い支える7頭のクジラというのは、日本銀行、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、国民(GPIF)、
国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済の7つの公的資金です。

ちょうど1年ほど前に、「公的年金のポートフォリオ」が発表され、
その方針にしたがって、今これらの公的年金は巨額な資金を株に突っ込んでいるのです。

今後も、日本国債の割合を減らし、さらに日本株式を6ポイント増やす予定になっています。

外国株式(主に米国)も、25%まで買い進めることになっていて、
リスクが高い株式で50%を保有するというポートフォリオです。

株式市場は歓迎ムードですが、短期間のうちに無謀とも思えるほどの金額だと私は思います。

現状では、誰かが空売りを仕掛けても、買う力が強すぎて失敗に終わっています。

しかし、いくら政府から委託されたもので、巨額の資金だと言っても限界はあります。
この状況がどこまで続くのか、逆に言えばいつ終わりを見せるのか、要注意でしょう。

山高ければ谷深しと言いますが、その状況が秒読み段階に入ってきているように私は感じます。


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▼休眠預金は「富を生み出す」ために使え
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自民、公明、民主など超党派の議員連盟が、金融機関で10年以上取引のない
「休眠預金」を活用する議員立法の素案をまとめました。

使い道を「生活困窮者」「子ども・若者」「活力が低下する地域」の3分野の事業支援に
限定する内容を盛り込んだもので、今国会への提出をめざす考えです。

休眠預金の利用というのは、民主党政権時代には古川元久議員が取り組んでいたテーマで、
私はそのときから「休眠預金は若者の起業に利用してほしい」と意見を述べてきました。

なぜ起業なのか?というと、「富を生み出すのは起業しかない」からです。

そして、富を生み出す人が少ないというのが、日本が抱えている大きな課題の1つです。

今回超党派の議員がまとめた素案にある「生活困窮者」「子ども・若者」「活力が低下する地域」という使い途は、
単に「配分」しているだけであって、富を生み出していないのです。

富を生み出すのは企業であり、政府は配分しかしません。

政治家としては、美談につながると思っている施策なのでしょうが、私に言わせれば全く無意味です。

休眠預金という形でお金を残した先人たちも、この国を背負って立つ若者が何かをやりたいというときの支援に使う、
というのであれば文句はないはず、と私は思います。

富を生み出す人を作らないと、日本という国は発展しないのですから。

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※この記事は5月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は財政健全化に関して解説をお届けしました。

発表された財政健全化計画に対して、
あまりにも楽観的な内容と大前は指摘しています。

増税をせず、今回のような代案となる解決策を提示したとしても、
それが本質を見誤っている限りはインパクトを生み出せません。

解決策の実行に阻害要因はつきものです。
この要因を取り除き、解決策を推し進めていくことが
問題解決のアプローチにおいて重要となります。

解決を先送りせず、自らが使命感を持って人を巻き込むこと。
これは、問題解決者のあるべき姿勢です。

2015年05月08日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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米テスラモーターズ・独フォルクスワーゲン・仏ルノー 〜岐路に立たされるテスラモーターズ

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米テスラモーターズ 日本でEV充電拠点を拡大
独フォルクスワーゲン ピエヒ監査役会長が辞任
仏ルノー 「1株1議決権」提案が否認

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▼テスラとパナソニックの関係は続くのか?
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米電気自動車メーカー、テスラモーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は28日、
日本経済新聞のインタビューに応じ、日本でEVに無料で急速充電できる設備を
今年中に現状の5倍の30カ所程度まで増やす方針を明らかにしました。

将来的に全国数百カ所まで増やす計画とのことです。

今、日本においてテスラモーターズは岐路に立たされていると私は感じています。

テスラの車を購入した人の声を聞くと、フル充電には40時間もかかり、
急速充電の設備も不足しているので、実用に耐えないのが現状だとわかります。

また一部で指摘されていますが、日本で電気を作るためには
石油化学系のものを燃焼させる必要があるので、結局のところ充電拠点も「クリーン」とは言えません。

テスラはパナソニックを巻き込んで、アリゾナにリチウムイオン電池の大規模工場を作っています。

先日の発表によると、家庭やビル、大規模な太陽光発電所などで使える
据え置き型の蓄電池を8月にも発売する見込みで、価格を他社製品の半額以下に抑えるということです。

おそらくこの発表には、パナソニックも冷や汗をかいたのではないでしょうか。

実際に電池を作っているのは自分たちであり、その製品よりも半額以下で提供すると言われて、
不安に感じていると思います。

今後、テスラとパナソニックの関係性がどのようになっていくのかは注目していきたいと思います。

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▼フォルクスワーゲンを議決権ベースで支配しているのはポルシェ
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独フォルクスワーゲンは25日、フェルディナント・ピエヒ監査役会長が同日付で辞任したと発表しました。

お家騒動はひとまず幕を閉じましたが、新体制はグループの求心力を保ちながら、
不振の米国事業てこ入れなどでどこまで力を発揮できるかが試されるでしょう。

ピエヒ氏と言えば、20年以上にもわたってフォルクスワーゲンを成長させ、
今ではトヨタに比肩する会社を作り上げた功労者であり、大経営者だったと言えます。

しかし、これまでは良好な関係を続けてきた現ヴィンターコーン社長を批判する内容を
雑誌に語ったことで大騒ぎになり、お家騒動に発展してしまいました。

大株主であるポルシェ、従業員代表もヴィンターコーン社長を支持する側にまわり、
ピエヒ氏が窮する格好になっています。

株主構成を見ると、一般株主の保有比率も高いのですが、議決権がありません。

議決権ベースで見ると、ポルシェが50%を超え、ニーダーザクセン州が20%、
カタールのナショナルファンドが17%になっています。

この状況だと、さすがにピエヒ氏も黙らざるを得なかったでしょう。
一つの時代の終わりを示唆しているのかも知れません。

ただ、今後ヴィンターコーン社長がトヨタと競争していけるのかどうかというと、
私は疑問に感じるところもあります。

スズキの株を20%ほど保有していますが、資本提携が実を結んだとは言えず、提携解消の声も聞こえてきています。

このあたりも、どのように舵を取っていくのか、ヴィンターコーン社長の課題と言えるでしょう。

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▼追い込まれたゴーン氏は、フランス政府との関係改善を図る
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仏自動車大手ルノーは30日、年次株主総会を開催し、カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)ら
取締役会の意向である「1株1議決権」制度の維持を求める提案の採決を行いました。

結果は賛成60.5%、反対39.4%で、採択に必要な3分の2の賛成票が得られず、同案は否決されました。

今回のことでゴーン氏はフランス政府と対立した形になりましたが、
結局、フランス政府によって否決されてしまいました。

このまま両者の関係が悪化すると、3年後ゴーン氏の任期満了の際、
フランス政府がゴーン氏の排除に回る可能性も考えられます。

ゴーン氏としては避けたい状況でしょうから、
今後、急速にゴーン氏がフランス政府との関係改善に乗り出す可能性が高いと私は見ています。

日産からすると、同じ15%の株を保有していても、フランス政府には議決権があり、
日産には議決権がないという今の状況は、全く意味がないと言えます。

フランス政府は昨年「2年以上保有する株主の議決権を2倍にする」法案を通し、
今ではフランス政府の持つ、ルノーの議決権が2倍になっています。

ゴーン氏も追い込まれており、日産はさらにコケにされる可能性が高いと思います。

フランス政府にとってルノーは国策企業であり、その意味ではゴーン氏は危険視されていると思います。

野放しにすれば、ゴーン氏は安く生産できる世界の最適地に工場を移してしまうからです。
実際、ゴーン氏がCEOに就任以来、日産は日本国内の工場を整理・再編してきました。

フランス政府としては国内の雇用維持のため、そのような事態は避けたいはずです。

今後、ゴーン氏がフランス政府に歩み寄る際には、
「雇用を確保する」という条件を出すのではないかと私は見ています。

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※この記事は5月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週のニュースの視点では、自動車業界の話題をお届けしました。

年内に急速充電設備を増設する方針を発表したテスラモーターズ。

大前は実際の購入者の声を頼りに、
同社EVは日本市場において岐路に立たされているのでは?と指摘しています。

商品普及を考えるに当たり、
定量的なデータ収集以外にも顧客の生の声を聞くことは必須事項です。

インタビューを通して、数字からは見えてこない
ニーズを発見することができます。

これ無くしてリアリティある戦略は描けません。

2015年05月01日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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イオン・日本マクドナルド・JT・カゴメ・ルクアイーレ・ガンホー 〜問題解決の正しいプロセスを考える

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イオン 2015年度設備投資額1600億円見通し
日本マクドナルドHD 2015年12月期の改装店舗数230店
JT 飲料自販機事業売却へ
カゴメ 米プリファード・ブランズを買収
ルクア イーレ JR西日本、大阪駅リベンジの仕掛けとは?
ガンホー 連結営業利益190億円の模様

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▼マクドナルドの売上低迷の原因は店舗ではない/自動販売機網の価値は大きい
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イオンは2015年度の国内スーパーの設備投資を前年度比6割増の1600億円にします。
大手3社の総額は前年度比5割増の2600億円で、東日本大震災以降では最も高い水準になります。

また、日本マクドナルドホールディングスは店舗改装を加速させます。
2015年12月期の改装店舗数は230店程度とし、前期比で100店ほど上積みするとのことです。

イオンにしてもマクドナルドにしても、店舗の増加や改装などに手を付けても全く意味がないと私は思います。

店舗が売上低迷の原因ではないからです。

マクドナルドについては、何度も述べてきましたが、日本の中食市場、外食市場は競争が厳しく、
ハンバーガー以外の競合に負けているのが最も大きな原因です。

カフェとして考えても、ネット環境のあるところで落ち着いて過ごしたい人にとっては、
マクドナルドの店内の「臭い」は耐えられないので、他のお店へ行ってしまうのでしょう。

イオンもマクドナルドも、店舗にお金をかければ何とかなると思っているのは、
原因を把握しておらず、知恵が足らないと言わざるを得ません。

売上が低迷すると、すぐに店舗に原因を求めるのは一昔前のやり方です。

百貨店などでは、この定石が通用した時代もありましたが、今はすでにそうではありません。

根本的な原因を自覚しない限り、どちらも改善するのは非常に難しいと思います。

* * *

東洋経済オンラインは、7日「JR西日本、「大阪駅リベンジ」の仕掛けとは?」と題する記事を掲載しました。
昨年閉店したJR大阪三越伊勢丹が、新たにルクアイーレとして生まれ変わったと紹介しています。

生まれ変わったと言いますが、阪急にやられた三越伊勢丹が「見た目」を変えただけで、
果たしてこれでいいのか?大いに疑問です。

オープニングの際にはセールもあるでしょうから人は集まると思います。

しかし問題はそれ以降です。私は、そもそも導線に問題があると感じています。
根本的な問題を見誤っているとすれば、非常に厳しいでしょう。

一方、無店舗網とも言える「自動販売機」が大きな価値を持っている事例が日本たばこ産業(JT)です。

JTが飲料自動販売機の運営事業の売却を検討し、
サントリーホールディングスなどビール系大手3社が買収に名乗りをあげているとのことです。

自動販売機は陣取り合戦のようなもので、時間をかけてゆっくりと増やしていくしかありません。

サントリー、アサヒ、キリンにとって自動販売機分野では圧倒的にコカ・コーラの後塵を拝していますから、
JTの持つ自動販売機網は非常に魅力的でしょう。

JTは飲料事業からの撤退を決定しているとのことですが、この自動販売機事業はいい値段で売却できると思います。


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▼食品メーカーの海外M&Aに勝算があるのか?/ガンホーもヒット商品頼り
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カゴメは15日、米食品メーカーのプリファード・ブランズ・インターナショナル(PBI)を買収すると発表しました。

PBIは米国で急成長しているエスニック食品市場向けに、インドやアジア系メニューの電子レンジ対応商品を販売しています。

カゴメはPBI買収で米、印といった成長市場での事業展開を強化する狙いとのことですが、少し私には疑問です。

このようなニッチ商品で本当に良いのか?と思います。
日本国内の食品市場が拡大していないので、日本の食品メーカーは海外のM&Aに積極的です。

日清製粉は米穀物メジャーのカーギルから製粉4工場を買収、サントリーは1兆6000億円もの資金で米蒸留酒ビームを買収、
ミツカンも英蘭ユニリーバの北米パスタ事業を2180億円で買収、アサヒや味の素もそれぞれ積極的な買収を実施しています。

ミツカンがパスタ事業を買収した時にも驚きましたが、今回のカゴメの買収も「エスニック料理?」と感じてしまいます。

海外のM&A成功率はわずか5%程度です。この事実を踏まえ、私としては祈るのみといった心境です。

* * *

スマートフォン(スマホ)ゲーム大手、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの2015年1〜3月期の連結営業利益は、
前年同期比約3割減の190億円前後となったとのことです。

主力のスマホ向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)の課金収入が減ったことが響いたそうですが、
結局、ガンホーも主力ヒット商品頼りだったということでしょう。

グリーやディー・エヌ・エーも売上・収益ともに減少しつつあり、
ガンホーは頭一つ抜けていましたが、同じように落ち込みを見せています。

結局、パズドラがマンネリ化し、ブレイクするヒット商品が出ないと厳しいでしょう。

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※この記事は4月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は日本マクドナルドやイオン、ルクアイーレの話題を取り上げました。
各企業の動向に対して、売上低迷の理由は店舗ではなく他に原因があると大前は指摘しています。

なぜその解決策を実行するのか?
その解決策は有効であるのか?

過去とは状況が違う現代において、これまでの経験則に頼りきった行動を取ることは危険です。

先ずは情報収集を行い事実ベースで考えること。
原因を見極めるために、このようなプロセスから始めることが必要です。

これが問題解決に向けた第一歩となります

過去ログ 2010年12月 
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