2015年06月26日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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米ベンチャー企業・ツイッター・米アマゾン・欧州流通大手〜余剰時間を活かすアイドルエコノミー

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米ベンチャー企業 CEO、経営力より創造力
ツイッター 苦境に立つツイッター
米アマゾン・ドット・コム 商品配送を「一般市民に依頼」へ
欧州流通大手 非中核事業の売却を加速

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▼専門の経営者を連れてくるのではなく、創業者を育てる重要性
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日経新聞は16日、「CEO、経営力より創造力」と題する記事を掲載しました。

米有力ベンチャーキャピタルの創業者のベン・ホロウィッツ氏に
現在のシリコンバレーとそこから次々と誕生しているベンチャー企業についてインタビューし、
「今はアマゾン・ドット・コムのクラウドサービス『AWS』と数人のエンジニアとノートPCがあれば起業できる。
CEOに求められるのは経営の経験や巧みさよりイノベーションを生み出す創造力だ」と指摘しています。

ホロウィッツ氏といえば、ネットスケープの創業者です。
ネットスケープ自体は失敗に終わりましたが、AOLへの売却を経てベンチャー投資家に転じました。

今では米国でもトップのベンチャーキャピタルを経営しています。
投資先には、エアビーアンドビー、ツイッター、スカイプなどそうそうたる名前が並びます。

そのホロウィッツ氏は「専門の経営者を求めない」ことの重要性を述べています。

ベンチャー企業を立ち上げた人は、創業時には良いものの、
会社の規模が大きくなるとマネジメントに課題を抱えるというのが、これまでの典型的なパターンでした。

その場合、IBMなどの大きな会社のマネジメント経験がある人を連れてくるのが常識になっています。

しかしホロウィッツ氏は、そのような人物を連れてきても
「イノベーションを起こさないため」さらに停滞することになると指摘しています。

企業がさらに革新していくためには、創業者に経営の勉強をさせて、彼らをプロの経営者に育てることが重要だと。

たしかに頷ける話だと思います。最たる例はアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏でしょう。

破壊的なパワーを持ち続けるジェフ・ベゾス氏が経営者として舵をとっているからこそ、
アマゾンは革新を続けているのだと私も思います。

一方、ホロウィッツ氏の投資先でもあるツイッターは苦境に立たされています。

わずか2年前、フェイスブックに次ぐ圧倒的存在感を誇ったツイッターですが、
もはや米国では上位20位圏外のアプリになった、とフォーブスの情報サイトが紹介しています。

動画やメッセージングの要素が足りないなど、変化のスピードの遅さが主な要因だと指摘しています。

米国人が利用しているメッセージアプリの上位を見ると、今のところツイッターはフェイスブックに次ぐ2位ですが、
Google+、インスタグラム、ピンタレスト、リンクドイン、スナップチャットなど、いずれも手強い競合が追いかけてきています。

また、米国人が利用しているSNSというアンケートでは、フェイスブックメッセンジャー、
スナップチャット、iMessage、Googleハングアウト、WhatsAPP、Viber、Lineといった名前が並びます。

Lineは日本とアラビア語圏が中心と言われていましたが、英語圏でも意外とユーザーを獲得しているようです。


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▼アマゾンの配送サービスは、アイドルエコノミーの良い事例
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16日付ウォールストリート・ジャーナル紙が報じたところによると、米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムは、
配送専門会社ではなく一般の人々に所用の目的地に向かう途中でついでに商品を届けてもらい、
代金を支払うことが可能になるモバイル端末のアプリを開発していることがわかりました。

さすが、アマゾンだと思います。これは私が言うところの「アイドルエコノミー」の非常に良い例です。

以前、「エブリデイドットコム」というネットスーパー事業を展開していたとき、パンを配達する会社を買収しました。

またパン以外にも、忙しい母親のために家族の弁当や総菜などを早朝届けるサービスを展開しました。

このとき配達をやってもらっていたのが、通勤前のサラリーマンです。

会社に出かける前の2時間ほどを使ってもらい、配達を依頼しました。
配送料は宅配専門業者よりもかなり安くなりました。

一昔前なら牛乳配達くらいしか選択肢がなかったサラリーマンの朝の「余剰時間」を活用した事例です。

これをさらに発展させたのが、今回のアマゾンの例です。
堀江貴文氏も自身のメディアで「これは面白い発想だね。ついにここまできたか、という感じ。
一度体験してみたい」とコメントしていますが、彼にはこの価値がよくわかっているのでしょう。

アマゾンが流通革命を起こしつつある一方で、既存の流通大手の苦戦が見て取れます。

欧州流通大手が非中核事業の売却を加速しています。
独メトロは15日、百貨店事業を28億2500万ユーロ(約3920億円)でカナダの流通大手に譲渡すると発表し、
また英テスコは韓国事業売却の検討を始めたとのことです。

流通業は国際化にチャレンジしてもほとんど上手く行きません。

テスコも韓国で成功していると言われていましたが、実態は違ったようです。
テスコの最終利益の推移を見ると、どんどん落ちてきています。

約2年前米ウォルマートの新CEOに就任したダグ・マクミロン氏も、
1000万点の配送を手がけると力を入れているようですが、難しいかも知れません。

既存店の売上を見ると地を這うような状況ですし、
追撃してくるアマゾンの流通業の伸びを見ていると圧倒的な差を感じます。

ウォルマートにしてみれば、「何かやらなくては」という気持ちもわかりますが、
海外に出ても上手くいかず非常に難しい状況に置かれています。

かつて向かうところ敵なしの状態だったウォルマートも、苦境に立たされています。

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※この記事は6月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はアマゾンの新しい配送サービスについて解説をお届けしました。

余剰時間を活用したサービス。
大前はこのような事例をアイドルエコノミーと呼んでいます。

慣習や既存の価値観にとらわれたままでは普段と同じ見方しかできません。

今までになかったような新しいモデルを発見するには、
ゼロベースの観点で様々な切り口を試してみることが重要です。

幅を広げた検討が、斬新な解決策を導くことにつながります。

2015年06月19日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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スズキ・NTTデータ・パナソニックヘルスケア 〜スズキの後継者選びはすでに失敗している

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スズキ 85歳"怪物"スズキ社長、辞めたくても辞められない事情
NTTデータ カーライル・アンド・ガラガーを買収
パナソニックヘルスケア 独バイエルの医療機器事業を買収

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▼スズキの後継者選びは、すでに失敗している
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ビジネスジャーナルは、8日、
「スズキ、85歳“怪物”鈴木社長、辞めたくても辞められない事情」と題する記事を掲載しました。

これは、11日の決算会見で、鈴木修会長兼社長が事実上「90歳まで続投」を宣言したことを受けたもので、
背景には独大手フォルクスワーゲンとの資本提携の解消をめぐる裁判やダイハツとのシェア争いがあるとし、
2015年度の軽自動車市場は再びヒートアップすると指摘しています。

日本の偉大な経営者が抱える典型的な問題だと言えます。

鈴木修社長の後継者は長男とのことですが、その長男にしても「いい年齢」でしょう。

その年齢になっても、株主や銀行から信任を得られていないということは、
鈴木修社長が後継者の育て方を間違えたと言わざるを得ないでしょう。

鈴木修社長は偉大な経営者ですが、
「後継者を選ぶ」という経営者として一番大切な儀式にはすでに失敗したということです。

あの経営の神様と言われた松下幸之助氏にしても後継者選びには失敗し、
当時松下電器は長い間、大混乱に陥りました。

偉大な経営者は、偉大な後継者を選ぶ、
あるいはそのような人物が登場する組織を作り上げることができない場合が多いと感じます。

本田宗一郎氏も最後まで現役を貫くつもりだったそうですが、
二人三脚で一緒に歩んできた右腕の藤沢武夫氏とともに、ある日突然退任しました。

その際、藤沢氏は「もう会社に来てはいけない」と本田宗一郎氏に言ったそうです。

このくらい徹底的しないと、後継者に道を譲るのが難しいのです。

鈴木修社長は、言うまでもなく、経営者として非常に優秀な人物です。

フォルクスワーゲンとの交渉のこともあり、現在85歳ですが90歳まで現役を続行すると宣言しました。
確かにまだまだ頭脳は明晰ですが、将来のことを考えれば、投資家が不安になるのも致し方ないところでしょう。


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▼NTTデータの買収は失敗する可能性大/パナソニックの買収は意味不明
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NTTデータは8日、米カーライル・アンド・ガラガー・コンサルティンググループを買収すると発表しました。

買収金額は2億1250万ドル(約265億円)。
NTTデータのITサービスや技術力とカーライルのコンサルティングのノウハウを組み合わせることで、
海外での金融機関向け事業を強化する狙いとのことですが、私はこの買収は上手くいかないと思います。

おそらくカーライル・アンド・ガラガー・コンサルティンググループの株式の大半は、
創業者と重役パートナーが保有していると思います。

その人たちが、この買収により、265億円をポケットに入れることになります。

この会社の規模からすると、その恩恵を受けるのは100人くらいでしょう。
仮に100人だとすれば、一人あたり約2億円のお金を得ることになります。

ITコンサルティング会社の場合、上流工程を担う人がクライアントへの提案からシステム要件の設計までを担当し、
下流工程はそこで決定した事項をシステムに落としこむ作業がメインになります。

すなわち、「考える人(上流工程)」と「作業する人(下流工程)」が二極化しています。

買収により億単位のお金を得るのは、上流工程を担当する人たちです。

この人たちがお金を受け取って、わが世の春を謳歌するがごとく、
バケーションをとって好き放題にし始めたら、企業としてのパフォーマンスは著しく低下します。

このような場合には、例えば買収後も5年間は勤続することを条件にお金を渡す、
という取り決めをしておくべきなのです。

投資銀行が上手に取り計らっていればよいですが、今回の場合はどうなのでしょうか。

NTTは過去にも同じような失敗例が数多くあります。

最近の例で言えば、2010年にNTTグループが約21億ポンド(約2860億円)で買収した南アフリカの
IT大手ディメンション・データという会社がありますが、結局買収後も営業利益も売上も上がっていません。

コンサルティング会社やシステム会社といった業態の企業を買収する場合、
こちら側から経営陣が乗り込んで、積極的に経営の舵取りをするくらいの人がいなければ、まず成功しないでしょう。

しかし実際にはそのような人物がいないから買収するわけで、
日本企業は米国の投資会社によって何度も煮え湯を飲まされています。

私が記憶する限り、NTTだけでも10〜20も事例があります。

* * *

パナソニックヘルスケアホールディングスは10日、
独医薬大手バイエルから糖尿病患者向けの血糖測定器事業を買収すると発表しました。

買収額は約1380億円で、世界に広がるバイエルの販路を手に入れ、
製販一貫体制を築く考えとのことです。

しかし、製販一体化と言っても、そもそも今回買収する糖尿病患者向けの血糖測定器は、
パナソニックヘルスケアがOEMで作っているものです。

確かにそれを上手に売ってくれているとも言えますが、
それだけで1300億円の価値があるのか疑問が残ります。

もっとも私には、元をただせば、
なぜパナソニックはヘルスケア子会社を切り離したのかが今ひとつ理解できません。

パナソニックは子会社だったパナソニックヘルスケアの株式の80%を、KKRというファンドに売却しています。

三洋時代から持っていた開業医が利用する日本一のシステムなども保有していましたが、
それらも含めて手放しました。

バイエルから糖尿病患者向けの血糖測定器事業を買うのなら、
手放した中にもっと良い事業があったのでは?と思ってしまいます。

単なる販売会社を1300億円で買収するという、

今回のパナソニックヘルスケアの決断は、
パナソニックがパナソニックヘルスケアを売却した理由とともに私には全く理解できません。

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※この記事は6月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はNTTデータの企業買収に関する話題をお届けしました。

記事中、ITコンサルティングにおいて上流工程は考える人、
一方の下流工程は作業する人と大前は解説しています。

では、この「考える人」になるための条件は何でしょうか?

事実に忠実になり考え、物事の本質を見出すこと…
常に顧客に軸足を向けること…
戦略を練り業績にインパクトを創出すること…

考える人とは、このような問題解決者の特性を携えています。

変化の激しい時代。自分の未来を切り拓くには、
より高い視座で物事を思考できる問題解決者になることが求められます。

2015年06月12日(金) 
(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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ベンチャー投資・米ベンチャー企業 〜巨大ベンチャーが打ちだす新しいコンセプト

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ベンチャー投資 総額100億円目標のファンド組成
米ベンチャー企業 巨大ベンチャー、米に続々

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▼橋下氏がいなくても、関西発のベンチャー企業を目指して
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関西を基盤とする独立系ベンチャーキャピタルのハックベンチャーズは、
先月28日、IoT関連のベンチャーに投資すると発表しました。

2016年6 月末まで二次募集を行い、ファンド総額は100億円を目指すとのことです。

ドレイパーグループなどもファンドを組成していて、関西を中心に盛り上がりを見せていますが、
そもそも橋下大阪市長がきっかけでした。

関西発のベンチャー起業を促したいとのことで、姉妹都市であるカリフォルニア州サンフランシスコへ
行く予定でしたが、従軍慰安婦に関する発言によって訪米を断られることになってしまいました。

当時、ベンチャー関連のイノベーションセンターの設立に関わっていた
校條(めんじょう)氏を橋下大阪市長に紹介したのは私です。

結局、橋下氏は途中でつまずいてしまいましたが、融資も集まっているし、
オリジナルの構想を進めていこうということで、100億円のファンド組成につながっています。

校條氏は派手な方ではありませんが、非常に優秀で橋下氏ともいい関係を築いていました。

シリコンバレーへの訪問が実現していれば、色々と前進したと思います。

橋下氏としても残念な想いは強いでしょうが、身から出た錆ですから致し方ありません。

橋下氏がいなくても、諦めきれない人たちが大阪を中心とした
ベンチャー組成を推し進めようと頑張っています。

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▼オフィス賃貸の新しいコンセプトを打ち出しているwework
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日経新聞は、7日、「巨大ベンチャー、米に続々」と題する記事を掲載しました。

創業間もない米国のベンチャーの間で、未上場の巨大企業が続々と生まれています。

情報技術(IT)分野を中心に企業価値が10億ドル(約1250億円)を超す企業は直近で65社となり、最近1年半で倍増。

高利回りを期待する投資家や、インターネットを介した小口資金調達の広がりが、
起業や事業拡大を後押ししているとのことです。

正直に言えば、若干、米国はバブルなので、時価総額は「高め」に見積もられていると思います。

ウーバーテクノロジーズが約5兆円、スナップチャット及びパランティアが約2兆円、
イーロン・マスクのスペースXが1兆5000億円、そしてピンタレスト、エアビーアンドビー及び
ドロップボックスが1兆2000億円〜3000億円になっています。

中でも私が注目している企業の1つが、イスラエル人のアンドリュー・ニューマン氏が
米国で作った「wework」という企業です。

起業したばかりの人を中心に、オフィスをサブレット(サブリース)するというサービスを展開しています。

通常、オフィスを借りるためには書類の準備などが必要ですが、
「wework」を利用すれば書類の準備もデポジットも必要ありません。

例えば、椅子1つ借りるなら35ドル程度で契約出来てしまいます。

またピンタレストなどの企業の拠点展開の事務所としても利用されています。

ピンタレストはシリコンバレーに本社がありますが、
「wework」を活用して、ニューヨークの事務所、テキサスの事務所を展開しています。

ビジネスウィーク誌の特集によると、「wework」が保有しているスペース総面積は
300万平方フィートになり、エンパイアステートビルの全フロア面積225万平方フィートを上回るとのことです。

600億円の資金調達にも成功し、時価総額は6000億円規模になっています。

面倒な書類手続きが不要で、インターネットで手軽に申し込めること。

そして、共同スペースがあり、夕方5時からビールが無料だったり、卓球台があったり、
パーティ開催があったり、社交性が高い空間になっていることもポイントだと思います。

日本ではウーバーも厳しい状況にあり、エアビーアンドビーは旅館業法に違反しているなどと
指摘され苦戦していますが、米国はこのような新しいコンセプトに好意的です。

私としては、「wework」のコンセプトも非常に面白いし、
日本でも同じようなことをやってみる価値があると感じています。

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※この記事は6月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は米ベンチャー企業の動向をお届けしました。
バブルの状況もあり、巨大企業が続々と生まれています。

今回の解説記事で紹介したweworkなどを始め、
新しいコンセプトを打ち出す企業が躍進を遂げています。

新たなコンセプトを打ち出すためには、一見ばらばらな情報を組み合わせて、
独自の切り口を提示することが必要です。

これまでとは違った視点で、
新しい構想や概念を生み出す能力が必要となってきています。

2015年06月10日(水) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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アスクル・日本生命保険・サントリー 〜創業時の輝きを失ってしまったアスクル

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アスクル 340万株上限に自社株買い
日本生命保険 野村総研と資本・業務提携
サントリー JTの自販機事業を買収

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▼かつての経営戦略が鈍り、「残念な」会社に成り下がったアスクル
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アスクルは19日、発行済み株式総数の約6%にあたる340万株を上限に
自社株買いすると発表しました。

取得総額の上限は140億円で、これにより主要株主であるヤフーの議決権比率が上昇し、
同社の連結子会社になる見通しとのことです。

アスクルほど「残念な」会社はないかも知れません。

一時期は飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長して、非常にいいポジションを確立しました。

主に中小企業や小さな事務所に対して、翌日配達、
すなわち「明日来る」という戦略を打ち出し、大ヒット。

そのうち、重たい飲み物などを持ちたくないというニーズにも応えて、
配送商品の拡大にも成功しました。

しかしその後、経営戦略が鈍り、低迷してしまいました。

私は好調な頃のアスクルについて、将来取るべき戦略を示したことがあります。

築き上げた顧客関係を活用し、その社員の家族にまで関係性を広げるという方針です。

社員の家族旅行のようなニーズも含めて、拡大していけば非常に面白いことになるし、
様々な提携が可能になる、と。

当時の私の見通しでは、顧客の関係性の輪を10倍以上に広げていけると感じていました。

まさに、「アスクル2」として新しい領域を目指すべきだと述べました。

しかしその後のアスクルは、新しい領域に踏み出すことなく、
同じことばかりを繰り返して、いつの間にか輝きを失ってしまいました。

そして低迷した結果、ヤフーに買収されるに至ったということです。

他人に議決権を握られてしまうとは、アスクル創業時の輝きは露ほども残っていないと言えるでしょう。

「アスクル2」の構想が実現していれば、家族にもメリットがあり、
非常に魅力的な会社として発展できると思っていましたが、本当に残念な会社に成り下がってしまいました。

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▼日本生命が野村総研に依頼する理由は何一つ理解できない
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日本生命保険は26日、野村総合研究所と資本・業務提携すると発表しました。

日生が約260億円で野村総研の第三者割当増資を引き受けて、現行0.5%ほどの出資比率を3%に上げるとのこと。

野村総研が持つ先端情報技術を使って効率的なシステムをつくるほか、
ビッグデータを活用した新しい保険商品の研究にも取り組む狙いだそうですが、
「なぜ、野村総研なのか?」「なぜ、資本提携する必要があるのか?」私には全く理解できません。

そもそも日本生命はシステム子会社を持っています。また、規模に差はありますが
ニッセイ基礎研究所というシンクタンクも持っているのですから、
野村総研ではなく、そちらを使えばいいはずです。

さらに、3%の出資で260億円というのも意味不明です。
3%程度の保有率では、実質的には何ら意味は持ちえません。

そこに260億円支払うのなら、出資などせず、普通に野村総研に業務を委託すれば良いでしょう。
おそらく、2億円〜3億円のプロジェクトで十分働いてくれるはずです。

これらのグループ会社が、何かしら大きな問題を抱えているのか?
そうでなければ、説明がつかないほど私は理解に苦しみます。

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▼サントリーが自販機シェアを取りに行くのは、非常に有効な手段
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サントリー食品インターナショナルは25日、
日本たばこ産業(JT)の飲料自動販売機事業を買収すると発表しました。

買収額は約1500億円。業界2位サントリー食品の自販機は約63万台に増え、
首位日本コカ・コーラグループ(約83万台)に近づくことになります。

自販機シェアを見ると、83万台のコカ・コーラが圧倒的に強く、
2位のサントリーの49万台でも約半分という状況でした。

今回、JTの飲料自販機事業を買収することで、
サントリーは63万台になり、コカ・コーラに迫ってきました。

同時に、アサヒビールの27万台に対しては大きな差をつけた形になります。

今後、サントリーとしては商品数が少ないので、
JTから商品も買うなど商品ラインナップを揃える必要はあるでしょう。

実態を見れば、自販機シェアは、直接的に飲料シェアにつながりますから、
今回の買収はサントリーにとって非常に意味があると私は感じています。

最近、1つのメーカーの商品だけが並ぶ自販機ではなく、
売れ筋のものをメーカーに関係なく並べている自販機も増えてきています。

伊右衛門を始め、商品力に自信があるサントリーにとってはここも有効活用したいところです。

今回の買収額1500億円について、「その資産価値や営業利益からすると、割高ではないか?」
と感じている人もいるかも知れませんが、私はおそらく妥当な金額だと思っています。

自販機の価値を考える上で重要な要素に、自販機を置かせてもらう「地面の利権」があります。

自販機を設置する許諾をとり、ローカルの電気を引いて自販機を稼働させる必要があります。

こういった調整を1件ずつ行うことを考えると、17万件の交渉に要する稼働・コスト・時間は馬鹿にできません。

手売りに比べると、自販機は設置数でほぼシェアが決まりますから、収益の見込みも安定しています。

これらを考慮すると、1500億円も高くはないと判断したのだと思います。

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※この記事は5月31日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はアスクルに関して記事をお届けしました。

「明日来る」という戦略を打ちだし成功を収めた同社。
しかしその後、新領域に踏み出せず低迷し、買収されるに至りました。

同じことを延々と繰り返しているだけでは、
変化の激しい現代のビジネス社会についていくことは出来ません。

顧客の変化を敏感に感じ取り、まだ満たされていないニーズに対して
新しい戦略を考えることが、生き残るために求められています。

そのためには、どういった切り口で世の中を見るのが良いのか?
問題解決において重要な視点です。

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