2015年07月31日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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国内ホテル・地方空港・日経新聞社〜エアビーアンドビーの整備を急げ

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国内ホテル 都市のホテル不足深刻
地方空港 息吹き返す静岡空港
日経新聞社 英FT買収でピアソンと合意

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▼エアビーアンドビーの整備を急げ/静岡空港の救いの神は春秋旅行社
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日経新聞は、23日、「都市のホテル不足深刻」と題する記事を掲載しました。

訪日外国人の増加に加え、為替の円安傾向で日本人観光客の旅行先も海外から国内にシフトしている現状を紹介。
旅行会社は限られた客室を確保しようと躍起で、ビジネス客の宿泊先確保にも影響が出始めているとのことです。

特に顕著なのは中国人観光客でしょう。

彼らはビジネスホテルでも利用しますので、大阪などはホテルの稼働率が90%近くになっている状況です。

ここまで稼働率が上がってしまうと、ホテルのサービスレベルはがくんと落ち込んでしまい、
ホテルビジネスそのものに影響を与えます。

東日本大震災の後、日本のホテル稼働率は60%台まで下落しました。

その状況からここまで上がってきているわけですが、
今気付いて「これから建設しよう」と考えても3年〜4年はかかってしまいますので現実的ではありません。

外国人が長期滞在する場合には、エアビーアンドビー(Airbnb)の活用などを推し進めるべきだと私は思います。

日本には空き家が多いですし、子供が成長して部屋が空いているという家も多いはずです。

それらをまとめて、外国人観光客の数十%は民間で受け入れられる体制を整えてほしいところです。

外国人でホテルが溢れかえってしまうと、日本人の旅行にも影響が出てきます。

少なくとも4年〜5年のうちにエアビーアンドビー(Airbnb)を制度化するべきだと私は思います。

***

読売新聞は、23日、「ロビーにあふれる中国人客、息吹き返す静岡空港」と題する記事を掲載しました。

日本を訪れる中国人観光客の目的地が地方へ広がっていて、
その玄関口としてにぎわいを見せている代表例が静岡県の富士山静岡空港だと紹介しています。

飛行機が到着するたびに空港ロビーは中国人客らであふれているとのことです。

静岡空港に就航する国際線は13路線週47便で、1年前の3路線週13便から大幅に増加しています。

これは上海春秋国際旅行社のおかげです。
春秋グループ会長の王正華氏が非常に日本に詳しく、小豆島ツアーなど旅行の企画も細やかに設計しています。

閑古鳥が鳴いていた静岡空港にとっては、まさに救いの神でしょう。

私としては、王正華氏に勲一等を授けてもいいのではないかと思うほどです。

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▼日経新聞は、FT買収を契機にして、企業や財界と距離をおくべき
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日本経済新聞社は、23日、英国の有力経済紙フィナンシャル・タイムズ・グループ(FT)を
買収することで同社の親会社である英ピアソンと合意しました。

8億4400万ポンド(約1600億円)で全株式を取得する予定です。

メディアブランドとして世界屈指の価値を持つFTを日経グループに組み入れ、
グローバル報道の充実とデジタル事業など成長戦略の推進につなげる狙いとのことですが、
私に言わせれば、「笑ってしまう買収」だと思います。

なぜなら今でも日経新聞の記者は、欧州でフィナンシャル・タイムズを読み、
それをもとに記事を書いているからです。

私が知っている限り、欧米に行って現地において自力で取材をできる記者はほとんどいません。

米国に行けばウォール・ストリート・ジャーナルを、欧州に行けばフィナンシャル・タイムズを読み、
それを参考にして記事を書き、日本へ送っているのが現状です。

FTを買収したら、大手を振ってフィナンシャル・タイムズの記事を参考にしていると
胸を張れるということでしょうか?笑ってしまう話です。

最近の日経新聞を見ていると、アジアに力を入れているのがわかります。

FTとしても、日経のアジア強化を取り込みたいのかも知れません。

日経側としては今回の買収をいい機会として、クオリティペーパーとして一皮むけてほしいところです。

日経新聞に対する海外のマスコミの評価は決して高くありません。
それは日経新聞が企業や財界と寄り添っている姿勢に起因しています。

例えば、オリンパスの不正を暴いたのは日経新聞ではなく、フィナンシャル・タイムズでした。

タカタの問題を取り上げたのも、日経新聞ではなく、ニューヨーク・タイムズでした。

日本の新聞社として先陣を切って不正を暴くべき立場なのに、
企業や政府にべったりで何もできなかった日経新聞。

海外のマスコミの批判の半分は嫉妬も含まれているでしょうが、残り半分は事実として認めざるを得ません。

企業から広告をもらっているなど、色々な事情があるのはわかりますが、
せっかくFTの買収をするのですから、FTからの良い影響を活用して企業とも財界とも距離をとるべきでしょう。

そして、フィナンシャル・タイムズレベルの新聞として、
日本やアジアで立場を作ってほしいと思います。

これが実現できれば、買収には大きな意味があるでしょう。

私に言わせれば、今の日経新聞の体質を継承するなら、
企業や財界にべったりの「大手町新聞」として別会社にしたほうがいいとさえ感じます。

今の日経新聞社にとって、買収額の1600億円は決して安くありません。

せっかくそれだけの資金を投じて買収するのですから、
将来を見据えて世界レベルの新聞になる足掛かりにしてほしいと思います。

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※この記事は7月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は国内ホテル業界に関する話題をお届けしました。

外国人観光客の増加により上昇しているホテルの稼働率。
これに対して大前は、空きスペースを活用する
エアービーアンドビーの整備を提言しています。

「新しいホテルの建設」という現実的ではない従来策にこだわっていては、
良い解決策は見えてきません。

これまでとは違う視点で「ずらして」思考することが、
全く新しい解決策を導くことにつながっていきます。

ゼロベースの観点で様々な切り口を検討し、
考えの幅を広げることが重要です。

2015年07月24日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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任天堂・堀場製作所〜任天堂はスマホゲーム化を推進せよ

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岩田聡氏が死去 2002年に任天堂代表取締役社長
堀場雅夫氏が死去 堀場製作所最高顧問

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▼任天堂の経営課題は、とにかくスマホゲーム化を推進すること
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任天堂社長の岩田聡氏が11日、胆管腫瘍のため死去しました。55歳でした。

岩田氏は大学卒業後、後に任天堂の子会社になるゲームソフト開発会社「ハル研究所」に入社し、
凄腕のプログラマーとして知られ、「星のカービィ」など数多くのヒット作を世に送り出しました。

任天堂は黒字転換を果たしたものの、売上は減少傾向にあります。

今後、誰がどう引き継いでいくのかは大きな課題と言えるでしょう。

岩田氏は、故・山内氏から任天堂の社長を引き継いだのが42歳の頃。
山内氏から引き継いだという「使命感・責任感」もあり、おいそれと後継指名をできなかったのかも知れません。

任天堂は山内氏が社長の頃は、天才クリエイターとして宮本茂氏(現 専務取締役)が活躍していました。

その後岩田氏が社長になって、DSやWiiといった新しいコンソールを発売。
これが大ヒットして、任天堂は時価総額2兆円規模まで大きくなりました。

しかしこのときの成功体験が裏目に出て、「(新しいコンソールでの成功という)夢をもう1度」という想いが強すぎて、
スマホゲームへの参入が遅れました。

世の中がスマホゲームへ傾斜していく中、明らかに任天堂の舵取りは遅すぎました。

ようやくディー・エヌ・エーと提携し、スマホゲーム化への道を歩み始めましたが、
この分野になると竹田氏(現 専務取締役)も宮本氏(現 専務取締役)も難しいかも知れません。

世界的に最も有名なのは宮本氏でしょう。

数々のヒット作を生み出し、ものすごい実績を上げている人です。

宮本氏が社長になるのが順当な人事だと言えますが、
あまり「経営」は得意な方ではありません。

また、とにかく「ゲームを作りたい」という想いが強く、長い間課長に留まっていたという人です。

今、任天堂という「会社」をまとめられるのは、
事務方とも言える君島氏(現 常務取締役)だと私は思います。

任天堂にとって今最も重要な経営課題はディー・エヌ・エーとの提携を実行に移し、
スマホゲームを完成させることです。

現時点では、提携が空中分解する可能性もありますから、
とにかくいち早く軌道に乗せることが重要だと思います。

任天堂には古いゲームでもスマホ化すればヒットしそうなコンテンツがたくさんあります。

クリエイターとしての手腕がなくとも、事務方の経営者として「ディー・エヌ・エーとの提携」を軌道に乗せること、
それが今任天堂に求められていることだと私は感じています。


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▼堀場雅夫氏 後継者へのバトンタッチが早く、見事だった
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計測機器メーカー、堀場製作所の創業者で最高顧問の堀場雅夫氏が14日、肝細胞がんのため死去しました。90歳でした。

堀場雅夫氏といえば、非常に面白い人という印象が強く残っています。

「おもしろおかしく」をモットーにしていて、今でも堀場製作所の合言葉になっています。

堀場雅夫氏が見事だったのは、息子の厚氏に早々と社長を譲り、
自らは会長職でもなく最高顧問という立場にとどまり、後継者問題を抱えなかったことでしょう。

この点、同じような境遇にあるスズキの鈴木修氏とは大きく異なります。

自分の目が黒いうちに引き継いでおけば、自らが助手席にいて、
隣に座る後継者を指導してあげることもできます。

鈴木修氏の場合、今必死に後継者を育てようとしていますが、
明らかにタイミングを逸したと言わざるを得ません。

堀場雅夫氏は、非常に個性的で主張が強い人でしたが、経営の引き継ぎはスムーズで見事でした。

堀場製作所は現在も順調な経営を見せており、すばらしいと思います。

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※この記事は7月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は任天堂に関する話題をお届けしました。

記事中、大前は任天堂のキーパーソンがどのような人物であるかを交えながら、
スマホゲーム化を推進すべきと解説しています。

企業変革を成功させるには、取り巻く環境を理解し方向性を示すことも重要ですが、
企業の内情までを踏まえたリアリティある実行案が求められます。

数字だけを見るのではなく、現場の状況も踏まえた分析をすること。
成果を導くために必要な考え方です。

2015年07月17日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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中国ガス田開発・尖閣諸島問題・上海協力機構〜中国ガス田開発に目くじら立てる必要は全くない

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中国ガス田開発 軍事拠点化の可能性に言及
尖閣諸島問題 日本の領土と認識の文書公開へ
上海協力機構 「ウファ宣言」採択し閉幕


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▼中国ガス田開発に目くじら立てる必要は全くない
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中谷防衛相は10日、中国が東シナ海に建設している新たな海洋プラットホームが軍事拠点化される可能性に言及し、
日本の安全保障にとって新たな脅威になるとの認識を示しました。

東シナ海のガス田開発をめぐり、中国が2013年6月以降、日中中間線の中国側海域で
プラットホームの建設を拡大しており、菅官房長官も記者会見で
「中国側の動きを注視し、引き続き警戒監視をしっかり行っていきたい」と牽制しています。

私に言わせれば、中国がガス田を掘りたいなら好きなようにさせれば良いのです。

私はボーダレス経済の提唱者です。

もし中国がガス田を掘り当てたのなら、安い国際価格で買ってあげればいいだけです。

オホーツク海で「流し網漁」が禁止された時にも騒がれていましたが、
あんな危険な海で漁業をするのはロシアに任せて、収穫されたものを購入すればいいのです。

どうしても「日本がやらなくてはいけないこと」ではないのなら、目くじらを立てる必要はないと思います。

軍事拠点としての活用に懸念しているというのも、私には不思議です。

もし本当に中国が軍事拠点を置くのなら、もっと尖閣諸島に近い場所のほうが良いでしょうし、
あえてこの場所を選択しないと思います。

仮にその可能性があっても、採掘に利用されるリグを破壊するのはそれほど難しいことではないでしょう。

また、根本的に今回の中国ガス田に関して言えば、採算がとれる可能性は非常に低いと私は見ています。
同じような事例を見ても、深いところまで掘ってみたものの採算コストがかさんでしまい、黒字にならない場合がほとんどです。

中国は経済の成長が止まってしまっていますし、このガス田も下火になっていくと思います。


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▼尖閣諸島問題について、中国側は派手に議論したいわけではない
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政府は沖縄県石垣市と連携し、中国が同県・尖閣諸島を日本の領土と認識していた根拠となる
1920年の中華民国から日本人への感謝状を2015年度内にも公開する予定。

これは1920年、尖閣沖で遭難した中国漁民を救助したことに謝意を示す中で、
漁民の漂着場所を「沖縄県八重山郡尖閣列島」と明記しているとのことです。

このような「証拠」を出そうと思えば、いくらでも出てくるでしょうが、
中国側が納得するかは疑問です。

そもそも中国側は帰属の議論は棚上げにしつつ、日本の実効支配を認めていました。

そのような状況において、石原慎太郎氏がお金を集めて民間で買い取ると言い出した結果、
歴史的な背景や経緯を知らない当時の民主党政権が国有化してしまったのが問題でした。

現状で言えば中国側も所有権について分が悪いのは百も承知でしょうが、
歴史的に見れば、尖閣諸島は「明」に帰属していた時代もあれば、
「沖縄」に帰属していた時代もあれば、どの時点で考えるのかによって変わってしまいます。

中国も日本も「現状のまま変更せず放っておく」という暗黙の了解があったにも関わらず、
事前説明もなく、突然日本が国有化に踏み切ったことに対して中国は怒りを感じているのでしょう。


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▼抗日戦勝70年記念式典と称する歴史認識の間違い
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ロシア、中国、中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)は10日、
首脳会議を開き、「ウファ宣言」を採択して閉幕しました。

ロシアのプーチン大統領は中国が9月に開く抗日戦勝70年記念式典に
SCO加盟国の首脳がそろって出席すると表明しています。

インドとパキスタンの加盟手続きを開始することも決めたとのことです。

EU、米国、日本が手を組んでロシアに対抗しているということを受けて、
上海協力機構が「政治運動化」してしまっている状況だと思います。

インドとパキスタンにも上海協力機構の正式メンバーとして声がかかっており、
両国は抗日戦勝70年記念式典にも招待されているそうです。

驚くべきは、抗日戦勝70年記念式典には日本の安倍首相も招待されていることです。

さすがに安倍首相が出席するとは思えませんが、数日ずらして近くまで行くという話も聞きます。

飛んで火に入る夏の虫にならなければ良いのですが、安倍首相としては国内が不安定な状況が続いているので、
中国との関係性を改善し、良い材料にしたいのでしょう。

それにしても、今回の「抗日戦勝70年記念式典」というのはおかしな話です。

もし「抗日戦勝」というのなら、蒋介石に敬礼し、馬英九氏を呼ぶべきだと私は思います。

終戦時の中国は国民党政権であり、今の中国共産党が「戦勝」したわけではありません。
実際に勝った人とは違うのですから、私ならそんな人から招待されても絶対に出席しないでしょう。

むしろ、世界に対して「中国共産党は当事者ではなかった」という事実を知らしめるべきだと思います。

中国共産党にとっては存立基盤に触れることですから、彼らは激怒するでしょう。
しかしそれこそ、歴史を直視し正しい歴史認識を持つのなら、事実を認めるべきだと思います。

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※この記事は7月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は中国のガス田開発について解説をお届けしました。

大前は記事中、日本がやる必要がないことであれば、
他国に目くじらを立てる必要はないと言及しています。

皆さんは「やるべきこと/やらなくても良いこと」を分けて考えられていますか?

複雑なビジネス環境において、やるべきことは一見するとたくさんあると思われがちです。

しかしリソースが限られている中では、
どの課題に取り組めば効率的に問題解決できるかを考えることが大切です。

闇雲にあたるのではなく、勘所をつけてから動き始めること。
より大きなインパクトを出すために必要な、問題解決の考え方です。

2015年07月10日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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中国経済・海外M&A・米石炭火力発言規制〜中国小売業の苦悩とEコマース

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中国経済 先進国銀行による中国融資急減
中国小売市場 百貨店・スーパー苦戦
海外M&A 中国企業の成功例少なく
米石炭火力発言規制 環境保護局の規制は「不適切」
英BP 米政府、メキシコ湾岸5州と和解


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▼党主体の人為的な経済では、もはやごまかしきれない
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日経新聞は、先月29日、先進国銀行による中国向け融資が2014年10〜12月期に急減したと報じました。

減少額は510億ドル(6兆2000億円)で、
四半期としてはリーマン危機後の08年10〜12月期に次ぐ大幅なものになります。

また、3日の上海株式市場では、上海総合指数が下げ幅を拡大。
前日比5.77%安の3686ポイントで取引を終了。

上海総合指数は昨年7月から急騰し、6月12日には約7年ぶりの高値をつけましたが、
その後約3週間で29%急落しています。

かつて中国は海外からの直接投資ができませんでしたが、香港経由ならば可能になりました。

その結果、多くの外国企業が香港経由で中国への投資を開始しました。

外国企業が融資をしてくれるのはありがたいことですが、
一方で「逃げ足」が早いというのが難点です。

上海市場もこの一週間だけでも12%下落するという勢いです。

経済成長の末期にありながら党利党略のために無理矢理に株式市場を高めていこうとした結果でしょう。
これは日本も他山の石とすべきでしょう。

中国政府は自らがコントロールできる国内の金融機関に買い支えの指示をしているようですが、
実質経済がおかしくなっている以上、党主体の人為的な経済ではもはやごまかしきれないでしょう。

不動産を中心としたバブル崩壊の現象、銀行からの融資が滞りノンバンクが暗躍しているという状況です。

このような状況を中国共産党が経済を含めて牛耳っていけるのかどうか、私は疑問に感じています。


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▼中国小売業の苦悩とEコマース/海外M&Aはかつての日本と同じ失敗
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また中国ではネット通販の台頭により百貨店・スーパーが苦戦しています。

インターネット通販が小売市場全体の1割を占めるまでに急成長し、
実店舗を抱える小売店の競争が激化しているとのことです。

中国ではモールや百貨店の建設が早く、
実際テナントが入っていない「ゴースト化」しているものが多く見られます。

さらにアリババのようなEコマースが増えたこともあり、ネット通販が主流になってきています。

先進国の場合にはEコマースが普及する前に、
モールや百貨店が建設されましたが、中国やインドではEマースが同時に普及しています。

これがモールや百貨店のゴースト化を助長しています。

このような背景もあり、中国では不動産が活性化しない可能性が高いでしょう。
それよりも、配送業等が伸びてくるかも知れません。

これまでとは大きく事情が変わりつつあり、中国の小売業にとっては大きな悩みになっています。

* * *

日経新聞は1日、「中国企業の海外M&A、成功例少なく」と題する記事を掲載しました。

それによると、中国企業が海外で実施した企業買収の総額は2008年の約100億ドル(約1兆2000億円)から
14年に570億ドルに膨らんだ一方、期待する効果を発揮できていないと報じています。

どこの国でもM&Aが成功する確率は高くありません。中国だけ「奇跡」が起こるはずもありません。
高値掴みしすぎていますし、母国における経営力も十分に養われていません。

これは日本企業が30年前に味わった失敗です。
中国企業もその塗炭の苦しみを味わう時がきたということでしょう。

「お金があるから買う」だけでは上手くいきません。
中国はかつての日本と同じ道を歩んでいます。


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▼米国のエネルギー産業の状況/英BPにとって2兆3000億円の和解は大成功
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米連邦最高裁判所は29日、環境保護局(EPA)が2012年に実施した石炭火力発電所への環境規制について、
電力業界の対策費用を考慮していないとして「不適切だ」との判断を下しました。

これは普通の国の規制とは逆になっています。

米国の場合は石炭がメインになっているため、ここに規制をかけると対策費用だけで1兆2000億円規模になり、
コストが大き過ぎると判断されたということです。

米国では、シェールガスなどの割合も増えてきていますが、
一方でスリーマイル原発事故があっても原子力発電は2割をキープしています。

ここは注目しておくべき点だと思います。

* * *

英BPは2日、2010年4月にメキシコ湾で起こした原油流出事故を巡り、
米連邦政府やメキシコ湾岸の5つの州と総額で最大187億ドル(約2兆3000億円)を18年間にわたって支払うことで和解しました。

これはBPにとって非常に素晴らしい和解でしょう。
経営破綻に追い込まれてもおかしくない事故でしたから、和解がなければ経営的に厳しい状況でした。

2兆3000億円を18年払いはBPにとって現実的な数字です。
事故の処理がおさまってきて、比較的穏便に交渉が進んだ結果だと思います。

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※この記事は7月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は中国Eコマースの話題をお届けしました。

小売り市場全体の1割を占めるまで成長したネット通販。
百貨店のゴースト化の助長など従来の小売業にとって大きく事情が変わりつつあります。

自社の業界を取り巻く環境はどうなっているのか?

変化の激しい時代においては、この視点を持ち、常にアンテナを張ることが重要です。

まずは業界を知り、自社の置かれている状況を知ること。
問題解決のアプローチにおいて、最初に押さえるべきポイントです。

2015年07月03日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
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少子化問題・耕作放棄地問題・成長戦略〜話題のキーワードを並べただけの戦略は無意味

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少子化問題 2015年版「少子化社会対策白書」を決定
耕作放棄地問題 放棄地確認「毎年せず」9割
成長戦略 日本再興戦略素案まとめ

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▼少子化対策として、難民、移民の受け入れ体制を整えることが必要
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政府は22日の閣議で2015年版「少子化社会対策白書」を決定しました。

女性の平均初婚年齢は13年時点で29.3歳、第1子出産時の平均年齢は30.4歳と
いずれも1980年からの30年間あまりで約4歳上昇。

若年層の所得の伸び悩みや出産後の女性の就労継続が厳しい状況が
晩婚化・晩産化の背景にあると指摘しています。

初婚年齢、出産時年齢の上昇と言っても、この年齢が上がり続けることはないでしょう。

現実的に出産できる年齢には上限がありますし、また「結婚しない、恋人を欲しくない」
という人の割合が3分の1も占めているからです。

少子高齢化問題を考えるとき、「少子化」については抜本的なところから考えていく必要があります。

その際には、他の国の事例も大いに参考にするべきでしょう。

例えば、フランスやスウェーデンは、事実婚が社会的に認知され、法的な保護も与えられています。

今の安倍政権は、伝統的な結婚観に手を付けたくないと、この問題を避けているのが見え見えです。

また最近、日本の難民認定率(0.2%)が低すぎると世界から批判を受けていますが、
これを実現するためには、着実なプロセスを構築する必要があります。

例えば、オーストラリアでは、オーストラリア本土ではなく、難民を周辺の島国などに送り、
難民認定後もそこに定住させる政策を実施してきました(中断した時期もあり)。

このオーストラリアのプロセスが良いかどうかは別として、日本でも難民を受け入れる何かしらのプロセスが必要でしょう。

例えば、どこかの島などで難民を受け入れ、そこで2年間ほどで義務教育、社会化教育をほどこします。

もちろん、母国でのデータと照合し、犯罪歴などがないことを確認した上で、
最終的に日本で働くことが出来るグリーンカードを発行します。

もし本気でやるのならば、毎年5万人くらい受け入れる体制を作るべきだと思います。

日本の人口減少を避けるためには、年間30万人の受け入れが必要ですから、足りない分は移民で補うしかありません。

しかし、30万人のうち10%だと多すぎるので、数%程度を難民で受け入れるのが良いでしょう。

それが先進国としての日本の役割の1つだと私は思います。


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▼農地に対する課税を公平に行うべき
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耕作放棄地の多い100市町村の9割近くが、税法が定める毎年の土地利用状況の確認調査を行わず、
適正に課税できなくなっていることが日本経済新聞の調査でわかりました。

実態を把握できないため耕作放棄地も課税上は固定資産税が軽い農地と見なされ、
持ち主が土地を手放さないケースが多く、農業の生産性を高める大規模化を阻む一因となっているとのことです。

都市型サラリーマンは資産を全て把握されて、固定資産税も含め現実的に課税されているのに対して、
これは非常に不公平であり是正されるべきです。

耕作放棄地は40万ヘクタール(滋賀県とほぼ同じ面積)もあると言われています。

ヘリコプターを飛ばせば、税法通り毎年調査ができるはずですが、
3年に1度の調査、あるいはそれすらも実施されていないのが実態です。

本来、農地の種類別に固定資産税の算出が異なります。
一般農地だと「千円/10a(アール)」という課税イメージですが、
市街化区域農地だと「数千円/10a(アール)」〜「数十万円/10a(アール)」にもなります。

これらを把握できておらず、農地の実態とおりに課税できていません。

おまけに農地は相続税の猶予があります。
都市型サラリーマンとの差がこれ以上拡大すると、税務署に対する大きな批判になっていくと思います。

税務署としては、この格差の是正は命がけで取り組むべき課題です。

さらには、正しく把握して農地課税するとなると、課税負担に耐えかねて、
農地を手放す選択をする人が増えるはずです。

これが大規模農地化や企業の農業参入につながっていきます。

あるいは、その他の土地活用にもなるでしょう。

結局、70歳を超えるような高齢の人が農地として持っているだけで、
何もせず放置している状態が一番良くないのです。

この状態を放っておいたのは、農水省、財務省、各都道府県、全ての怠慢であり、
この怠慢の連鎖を断ち切ることが重要だと思います。


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▼ロボット、ビッグデータなどキーワードを並べただけでは無意味
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政府は22日、構造改革を進めて日本の生産性向上を狙う成長戦略「日本再興戦略」の素案をまとめました。

それによると、ロボット開発やビッグデータへの投資を企業に促すほか、
地方経済や中小企業にも改革を求めるとのことですが、これはあまりにひどい内容です。

これまでに発表された成長戦略も実現性が乏しく褒められたものではありませんでしたが、
今回のものは、「ロボット」「ビッグデータ」などキーワードを並べただけで、誰が読んでも「弾不足」に過ぎます。

日米安保に意識を向けている安倍首相はもはや、アベノミクス、成長戦略に興味がなくなっているとさえ感じます。
マーケットも同じような懸念を感じ始めています。

適当に聞きかじった言葉を並べても何の意味もありません。

1つ1つの施策についてもっと真剣に議論すべきことは沢山あります。

「生産性を高める」と一言で言っても、色々と考えるべきことはあります。
日本で最も生産性が低い産業はサービス業で、米国の生産性の約50%程度です。

一方で、就業人口の70%はサービス業という事実もあります。

ということは、もし米国並みにサービス業の生産性を高めると、
「日本では30%の失業者が出る」ということもあり得るのです。

この実態を考慮しながら、失業する人たちのスキルを高度なものにする再教育機関を準備しなければいけないでしょう。

最低限、このくらいの事実を踏まえて対応策を考えるべきです。

取ってつけたように、「ロボット」や「ビッグデータ」といった
最近話題のキーワードを並べ立てているだけでは、全くお話になりません。

情けないとしか言えません。

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※この記事は6月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は成長戦略について解説記事をお届けしました。

大前は、日本のサービス業の生産性を米国並みに高めた場合、
30%の失業者が出る可能性があると指摘しています。

新しい打ち手を考える際は、
ネガティブインパクトの影響まで意識する必要があります。

この点が考慮されていない打ち手にはリアリティがなく、
実行に移すことは難しくなってしまいます。

考えの幅を広げ、起こりうるであろう様々な影響を検討しつくすこと。
これは、問題解決における基本的な思考方法です。

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