2015年09月18日(金) 
■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

国内株式市場・国内経済・日本郵政〜古い20世紀型の経済論はもはや通じない

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

国内株式市場 日経平均が前日比1343円高
国内経済 4-6月期GDP 前期比年率1.2%減
日本郵政 郵政3社の上場を承認

-------------------------------------------------------------
▼日本の景気は上向いていない。株価上昇は、ショートカバーの結果に過ぎない
-------------------------------------------------------------

9日の東京株式市場で日経平均株価は急反発し、前日比1343円高の1 万8770円で終了しました。

上げ幅は1994年1月以来、約21年7カ月ぶりの大きさです。
短期マネーの買い戻しに、海外勢の高速・高頻度取引が重なったことが要因と見られています。

21年ぶりの株価上昇に興奮している人が大勢いますが、全体的な値動きを見ると株価が2万円を超えた後、
緩やかな下げ基調になっています。

その中で空売りを仕掛けている投資家が約40%いて、彼らがリスクを回避するために買い戻したために、
一時的に株価が上がりました。いわゆる「ショートカバー」です。

ゆえに、これは「技術的な」ことであり、日本の景気、ファンダメンタルなどは全く関係がありません。

その証拠に、翌日には約400円一気に株価は下落しています。

一部のマスコミが経済トレンドのように解説していますが、全く的を射ていません。
恐怖におののいたトレーダー心理を理解していないのでしょう。

問題は揮発性の高い状態が続いていて、外国人の売り買いが全体の7割を占めることだと私は感じています。

彼らはプログラム売買をしつつ、巨額の資金を動かします。完全に素人が手を出せる状況ではなくなっています。

そのような中、内閣府が8日4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値を発表しました。
物価変動の影響を除く実質で前期比年率1.2%減と、速報値の1.6%減から上方修正された形です。

設備投資は下方修正されましたが、消費や輸出の停滞で製造業の抱える在庫が積み上がり、結果としてGDPの上方修正につながったとのことです。

私に言わせれば、上方修正等と言ってもGDPがマイナス成長であることに変わりはなく、
そもそもアベノミクスでは、今ごろ2%成長を達成しているはずでした。

実質GDP成長率の推移を見ても、今後も上昇していく気配は感じません。

また、部門別に見ても好材料が見当たりません。
例えば、住宅投資で消費者の支出が伸びているとか、輸出・設備投資が伸びているとか、そういう材料がありません。

この状況を見ると、アベノミクスは何に効果があったのか?と疑問に感じます。
結局、何にも効果を発揮していないという状況だとわかるだけです。

この状況に対して日銀の黒田総裁も頭を悩ませていることと思います。
打開するために、黒田バズーカ第3弾を出すのかどうか。

しかし、財政状況の悪化リスクを高める可能性も高いですし、場合によっては国債暴落のトリガーを引きかねません。

私は何度も繰り返し話をしていますが、日本社会は「低欲望社会」です。
1700兆円の個人金融資産、340兆円の企業プール資金は、いずれも表に出てこないまま眠っています。

いくら日銀や政府が息巻いても意味はなく、「低欲望社会」の本質を理解した手を打たなければいけません。
古い20世紀型の経済論は通じないのです。

その意味で言えば、未だに「インフレターゲット」を提唱する人がいて、私は驚いてしまいます。
先日のBusinessweek誌には、「インフレターゲットを目指しても、誰も当たっていない」という記事が掲載されていましたが、まさにその通りです。

私はインフレターゲットには大きな2つの問題があると思っています。
1つは、インフレターゲットという施策は、20世紀型の古い経済論なのでもはや効果がないということ。

そして、もう1つには万一、本当にインフレになったらそのままハイパーインフレになる可能性があることです。
インフレターゲットと言いつつアベノミクスを提唱する人は、私に言わせれば無責任極まりない人だと思います。


-------------------------------------------------------------
▼小泉改革の成れの果て。郵政3社のゆがんだ上場
-------------------------------------------------------------

日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の東証一部への株式上場が10日、承認されました。

株式時価総額は3社あわせて13兆円を超え、1987年2月に上場したNTT(約25兆円)に次ぐ規模になります。
現在株式は政府が保有していて、最終的に3割は持ち続けるとのことです。

ホールディングカンパニーの下、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命という3本柱の事業を展開しています。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は利益を出していますが、郵便事業は103億円の営業赤字を計上しています。

今回の上場は、先行きの暗い郵便事業を外出しにして、取り敢えず日本郵政として上場して資金を調達するという形です。

そもそも小泉元首相の郵便改革のときには、上場した資金を利用して日本の借金返済という話でしたが、
今回は市場から約1兆3000億円の資金調達し、これを震災復興に充てるということです。

日本郵便という赤字事業を隠しておいて、残りの2つの事業だけを表に出して上場するわけですが、
全体で見ても先行きは明るくありません。

現状で言えば、日本郵政グループ全体で利益は出していますが、経常利益は逓減しています。

そして、ゆうちょ銀行で資金は持っていても、それを運用できないという問題があります。
かんぽ生命についても同様です。

上場したのは良いですが、ここから先13兆円の時価総額を維持できるのか?と考えると、問題は山積しています。

通常、今の日本郵政のような経常利益の推移で上場することはできません。

過去に上場したNTT、JR東日本、JTとは違う「ゆがんだ上場」だと私は見ています。

1兆3000億円もの資金を市場から調達することで、市場をもゆがめます。

様々な問題がありますが、小泉改革の重要な結末として、この事実を受け止めるしかありません。

---
※この記事は9月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


-------------------------------------------------------------
▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
-------------------------------------------------------------

今週は国内経済の話題をお届けしました。

20世紀の経済論で考えているアベノミクス。
大前は、低欲望社会の性質を理解する必要があると指摘しました。

打ち手を実施する際、現状の本質を把握していない限り
成果の創出は難しくなってしまいます。

変化の激しい時代。
過去の考えや成功法に頼っていては問題解決はできません。

今起こっていることに目を向け、それに相応しい打ち手を検討することが重要です。

2015年09月11日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

マイナンバー・消費増税対策・ゆう活・安全保障関連法案〜マイナンバーによって国民の生活はどう変わるのか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

マイナンバー 改正共通番号制度
消費増税対策 軽減税率の骨格まとめ
ゆう活 朝型勤務「ゆう活」大失敗
安全保障関連法案 違憲と言わざるを得ない

-------------------------------------------------------------
▼マイナンバーによって国民の生活はどう変わるのか?を具体的に
-------------------------------------------------------------

税と社会保障の共通番号(マイナンバー)の利用範囲を拡大する改正マイナンバー法が3日、
衆院本会議で可決、成立しました。

今年10月から12桁の共通番号(マイナンバー)を記した「通知カード」が簡易書留で各世帯に送付され、
来年の1月から利用がはじまるものです。

マイナンバーを導入することで、行政手続きが簡素化すると言いますが、
もう1つ国民にとっての利便性が具体的にイメージできません。

コンビニで住民票が取れる、予防接種の案内が来ると言われても、その程度のものかと感じてしまいます。

医療費控除で領収書は不要とのことですが、健康保険証が不要になるのかどうかも定かではありません。

もうちょっと具体的に「国民にとっての」利便性を示すべきでしょう。

マイナンバーは銀行口座を紐付けて相続税などの管理もしっかりと行う予定とのことですが、
あまりに複雑なシステム・ルールにしても運用が大変です。

政府は消費税率を2017年4月に10%に引き上げるのに合わせて
一部の商品の税率を低く抑える軽減税率の骨格をまとめています。

軽減税率の対象を広げつつ税収減を抑えるため、所得別の限度額を採用することや
マイナンバーの仕組みを活用して還付することなどが盛り込まれていますが、これがあまりに複雑過ぎます。

私の理解で言えば、例えばコンビニで「煙草・ティッシュ・食料品」を購入した場合、
食料品を分けて把握する必要があり、マイナンバーを提示しなければいけません。

そして、そうやって1年間で購入した食料品がマイナンバーに紐付けられていて、
所得の低い人には後から還付すると言うことです。

国民は食料品を買うたびにマイナンバーを提示する必要があり面倒ですし、高リスクです。

1年間紐付けられたデータから還付金を算出するのも複雑です。

いくらコンピューターがあるからといって、こんな計算をさせる必要があるとは思えません。

「エンゲル係数」は決まっているのですから、それを参考にして所得税で調整すれば良いと私は思います。

来年からマイナンバーを使いはじめるということですが、もっと何度もシミュレーションするべきことがあるはずです。

国民の使い勝手はどうなのか、どんなシーンでどう使うのか、1年間使うと国民にはどんなメリットがあるのか。

おそらく国民は何も具体的に理解できていません。


-------------------------------------------------------------
▼安倍首相も高村副総裁も、もっと他に政治家としてやるべきことを
-------------------------------------------------------------

日刊ゲンダイは『朝型勤務「ゆう活」大失敗』と題する記事を掲載しました。
国家公務員約22万人を対象に、7月1日からスタートした「ゆう活」が8月末で終了した、と紹介。

仕事時間を1〜2時間ほど朝方勤務に前倒しして、その分、夕方は早めに切り上げて残業を減らそうという試みでしたが、
発案者である安倍首相は安保法制を成立させるために、戦後最長となる95日間の会期延長を決断しました。

多くの公務員が夜遅くまで、閣僚らの答弁準備などに拘束されていたとし、これでは単に“ブラック企業”と同じとしています。

言い出したときには興奮していたのでしょうが、企画倒れでおしまいです。

こんな制度よりもサマータイムを導入するほうがよほど効果的でしょう。

結局、「君たちだけ早く来い」で終わってしまい、何の反省もないという点では他の政策と同じです。

***

現在国会で審議をしている平和安全法制をめぐって、
高村正彦副総裁が「憲法の番人は最高裁判所であり、憲法学者ではない」と発言したとことを受けて、
元最高裁の山口繁氏が3日、共同通信の取材に応じ、
安全保障関連法案について「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」との見解を示しました。

これも私に言わせれば、高村副総裁の発言が不必要です。

現在の憲法を読めば、紛争解決の手段としての軍隊を持たないのですから、自衛隊そのものの存在も憲法違反になります。

集団的自衛権、自国の自衛権などと分けて考える余地はないでしょう。

今さら、山口氏が出てきて発言する必要もありません。

---
※この記事は9月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


-------------------------------------------------------------
▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
-------------------------------------------------------------

今回はマイナンバー制度の話題をお届けしました。
大前は、実施前にもっとシミュレーションすべきことがあるのでは?と指摘しています。

なぜそれを行うのか?どうやって運用されるべきなのか?
そして国民にはどのようなメリットがもたらされるのか?

全体像を整理することで、事前に検討すべき項目は浮かび上がってきます。

この項目が網羅化され、漏れのない状態になることで初めて、
十分な検討を行えるようになります。

このように抜け漏れのない構造を描き考えることは、
問題解決のアプローチにあたり必須となる手法です。

2015年09月04日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

異次元金融緩和・消費支出・アベノミクス〜「入口」から間違っているアベノミクス

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

異次元金融緩和 国債保有額301兆9144億円
消費支出 7月の家計調査
アベノミクス、再び争点

-------------------------------------------------------------
▼万一の際は、日銀が真っ先にひっくり返るという異常事態
-------------------------------------------------------------

日銀の国債保有残高が初めて300兆円を突破しました。
大規模な金融緩和で長期国債を大量に購入しているためで、長期金利は0.3%台半ばの低水準で底ばい。

市場に流通する国債のうち日銀が保有する比率は3割に達したとのことです。

この調子で日銀が買い増していくと、どんどん流動性がなくなるのでは?という懸念が出てきています。

国債残高がGDPの約2倍におよぶという危険な状況にも関わらず、
中央銀行である日銀のこのような動きに安心しているのか、海外の保有比率も若干伸びています。

一方、事情をよく理解している国内の銀行は国債を日銀に売って、
自分たちは海外の銀行に手を伸ばし、ドル化を図っています。

国債依存比率を下げることが重要だとわかっているのでしょう。

現在の日銀が保有する国債の金額・割合は異常です。
米国もFRBが国債を買い進めていますが、それでも450兆円ほどでGDPの半分にも達していません。

万一のことがあれば、日本は中央銀行が真っ先にひっくり返る状況で、洒落にもならない事態を迎えてしまいます。

そんな中、日経新聞は先月27日「アベノミクス、再び争点」と題する記事を掲載しました。

世界的な株価の乱高下を受けて、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の評価が与野党論戦の焦点に再浮上してきた、と紹介。

政府・与党は株価の下落は中国など海外要因によるもので、
アベノミクスの成果は出ていると強調するが、野党は成長戦略などの対応が不十分と追及する構えとのことです。

中国がこけてくれたおかげで、都合のいい言い訳材料になりました。

その前だったら、ギリシャを言い訳にしただけでしょう。

何はともあれ、アベノミクスは最初から機能していないし今後も機能するはずもない、私はずっとそう言い続けています。

アベノミクスは20世紀型の経済政策です。

「金利を下げればお金を借りてくれる」「市場にお金を供給すれば景気が良くなる」というのは21世紀には通用しません。

経済の原則が21世紀になって変わったということを、未だに理解していないのでしょう。

基本的に「入口」から間違っているわけですから、いくら待っても成果がでることはありません。

そして最も危険なのは、個人金融資産です。
銀行は政府の政策の裏をかいて、M&Aなどを使って資産のドル化を進めています。

万一、国債が暴落してもドルの資産があれば何とかなるからです。

しかし、個人ベースでみるとほとんど資産は円のみで、通貨を多様化させている人は一握りです。

銀行預金は安全ではありません。
万一の事態が起きたら目も当てられない状況になってしまうでしょう。


-------------------------------------------------------------
▼政府は、個人がお金を使いやすくなるメッセージを打ち出すべき
-------------------------------------------------------------

総務省が28日発表した7月の家計調査によると、
1世帯あたりの実質消費支出は前年同月比0.2%減の28万471円でした。

猛暑やボーナス支給という好条件が重なったにもかかわらず、2カ月連続の減少。

食品の値上げなどを背景に、年金収入で暮らす高齢者らが支出を抑えた影響が大きいとのことです。

アベノミクスは世紀の愚策ですが、ようやく新聞もこの類の記事を書いてくれるようになりました。

安倍首相は「報復」しますから、おそらく新聞社も恐る恐る書いていることと思います。

アベノミクスは20世紀の「高欲望社会」を前提にした経済施策ですから、
効果が出ないのが当たり前で、家計支出が伸びないのも必然です。

若者も高齢者も「低欲望」な時代です。
一方で、そんな個人が1600兆円もの莫大な資金を個人金融資産として持っています。

1600兆円といえば、GDPの3倍ですから相当な影響力があります。
この1600兆円を活気づかせることが重要です。

お金は持っているのに、漠然とした不安があるから、いざという時のためにお金を使わない人がほとんどでしょう。
自分のお金なのにフリーズしてしまっています。

「安心してお金を使って大丈夫です」「どうか人生を楽しんでください」という
メッセージを出して伝えていくべきだと私は強く思います。

政府は自らの政策で何とかしようと躍起になっていますが、そうではありません。

政府が考えるべきは、一人ひとりの心理を和ませることであり、良い人生を送ってもらうことです。

リラックスすれば、自然と持っているお金は出てくるはずです。無理やり給料を上げる必要などありません。

夏は暑ければ暑いほど、冬は寒ければ寒いほど、経済が活性化する時代は終わっています。

今の日本の状況を冷静に見つめ、政府はいち早く21世紀型の経済政策を打ち出すべきですし、
個人は万一に備えて資産の多様化を図るなど対策を講じてほしいと思います。

---
※この記事は8月30日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


-------------------------------------------------------------
▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
-------------------------------------------------------------

今週は金融緩和や消費支出の話題についてお届けしました。

20世紀型の経済政策であるアベノミクス。
大前は、「入口から間違っているから成果はでない政策」と指摘しています。

これはビジネスにおいても同様のことが言えます。
解決策を実行しても、それが本質を捉えたものでなければ意味はありません。

まず最初に問題の本質を見つけ出すこと。
これは問題解決のプロセスの「入口」であり、最も重要なステップです。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月