2015年12月25日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヤフー・シャープ・東芝・損保ジャパン日本興亜HD〜ヤフーの本当の課題は一休買収では解決しない

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヤフー 一休を買収へ
シャープ 液晶パネル事業買収を提案へ
東芝 テレビ、白物家電などに大ナタ
損保ジャパン日本興亜HD メッセージ買収を発表

─────────────────────────
▼ ヤフーの本当の課題は一休買収では解決しない/民泊制度を整える必要性
─────────────────────────

ヤフーは15日、ホテル・旅館予約サイト大手の一休を約1000億円で買収すると発表しました。
TOB(株式公開買い付け)を実施し、全株式を取得します。

高級なホテルやレストランの予約に強い一休を取りこみ、サービスの品ぞろえを増やす方針で、
てこ入れ中のインターネット通販を含め、急成長する電子商取引に経営資源を振り向けるとのことです。

ヤフーにとって障害になるような買収ではありませんが、一方で戦略的に重要性もあまり感じられない買収だと思います。

営業利益で約25億円、純利益で約16億円と利益が出ているので、プラスにはなるという程度でしょう。

率直に言って、営業利益が約25億円ですから、買収金額1000億円というと25年分に相当します。
あまり良い買収とは言えません。

ヤフーが抱えている本当の問題は、別のところにあります。
旅行関連で言えば楽天に負けていますし、ポータルサイトとしての地位もグーグルの後塵を拝しています。

資金が豊富にあるヤフーだから買収してしまったというところでしょう。

少し話は変わりますが、旅行市場に目を向けると、日本として取り組むべき別の問題があります。

先日、京都で無許可の「民泊」を営んだため逮捕者が出たと報じられました。
もちろん、法律違反は許可できることではありませんが、
全体として見れば「民泊」の制度をいち早く整えるべきだと私は思います。

今、京都は外国人観光客が多すぎて、学生の修学旅行の宿さえ確保できない状況になっています。

ただでさえ宿泊施設が足らないのに、特に京都はホテルの建設にも景観論争などもあって一筋縄では行きません。

外国人観光客が約2000万人来るとして、現状は1500万人分しか宿泊施設がありません。

残りの500万人分を確保するのは国として取り組む必要がある課題だと思います。

─────────────────────────
▼ シャープには守るべき高い技術などない、という事実を認めるべき
─────────────────────────

政府系ファンドの産業革新機構が、出資するジャパンディスプレイを通じて
シャープの液晶事業を買収することを提案する方針を固めました。

近々、シャープと取引銀行に提案し、本格的な買収交渉を開始すると見られています。

国内2大液晶メーカーの技術を結集し、韓国勢などライバルに対抗する考えです。

中小液晶パネルの世界シェアを見ると、ジャパンディスプレー(16.2%)とシャープ(14.7%)が合わさると、
トップのLGディスプレー(17.3%)を圧倒的に上回ることができます。

トップシェアを確保するというのは意味がありますし、良いことだと思います。

ただし、「シャープの高い液晶技術を守る」という発想があるとしたら、それは間違いです。

仮にシャープに高い液晶技術があったとしたら、今のような状況にはなっていないはずです。

すでに技術はコモディティ化しており、そのために韓国、中国の企業に足元をすくわれているのです。

一時期、鴻海による買収の話が持ち上がった時、「鴻海=黒船」でシャープの技術が盗まれると主張する人もいましたが、
そもそもシャープにはそんなものはないのです。

会社そのものが崩壊の危機なのですから、その事実を認識しておくべきでしょう。

同じく不振が続く東芝も、テレビや白物家電などの事業にようやく大ナタを振るう方針を明らかにしました。

2016年3月期に、2000億円を超えるリストラ費用を計上する方針で、国内外の拠点再編や人員削減で一気にウミを出し切り、
来期以降のV字回復につなげる考えです。

純損益の推移を見ると、09年にマイナス4000億円、今回マイナス5000億円で、この10年間の大幅のマイナスには目も当てられません。

セグメント別の利益を見ると、電力インフラやコミュニティソリューションは少し利益が出ており、
電子デバイスはやや大きな利益が出ています。

しかし、今回対象となっているパソコン、テレビなどのライフスタイル関連は大きな損失を計上しています。

パソコンは富士通と合併させるなどの方法もありそうですが、テレビその他は完全にギブアップ状態でしょう。

─────────────────────────
▼ 介護事業の利益を圧迫する2つのコスト/人生をエンジョイする事業の可能性
─────────────────────────

損保ジャパン日本興亜ホールディングスは18日、介護事業大手のメッセージを買収すると発表しました。

TOB(株式公開買い付け)を実施し、出資比率を現在の3.5%から51%以上に引き上げ子会社にするとのこと。
取得額は少なくとも260億円以上となる見通しです。

収益の多角化としての狙いでしょうが、介護事業は非常に難しい事業だと思います。
とはいえ、この事業は絶対に必要とされるものですし、介護離職ゼロを目指す政府方針の追い風もあると言えるかも知れません。

介護事業においては、お金を削って利益を出そうとするのは絶対に無理が出てきます。
本当に良心的に運営しようとすれば、必ず2つのコストがかかります。

1つは「施設の費用」です。ベネッセの介護施設ほど高級である必要はありませんが、
お風呂など含め、便利な施設として機能するためには、ある程度コストがかかります。

もう1つは「人件費」です。人を削ってしまうと、個人への負担が大きくなり、ストレスがたまり、それがサービス上大きな問題になります。

この2つのコストが大きく、実際のところなかなか利益が出にくい事業です。

もし私なら介護という段階の前に、「人生をエンジョイする事業」に取り組むことで利益を出せるかも知れないと考えます。

オーストラリアの年金ファンドに、廃業したリゾートホテルをたくさん買って、
年金加入者には半額でバケーションに招待するというサービスを展開しているところがあります。

2週間程度の長期滞在にもうってつけで、このようなスキームならば利益は出せると思います。

介護段階まで進むと難しいですが、その前の段階で一工夫してみるのは面白いでしょう。

---
※この記事は12月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は企業動向に関する話題をお届けしました。

なかなか利益が出にくい介護事業。大前は、自分自身ならば「人生をエンジョイする事業」
に取り組むことによって、利益創出を考えると言及しました。

当事者の立場で考えることは、思考力を鍛えるという点において重要です。
大前もこの方法で、様々な企業トップの視点で問題解決策を考え、
自分なりの見解を日ごろから打ち出しています。

ニュースを通じて情報をインプットするだけでなく「自分ならどうするか」考えを巡らすこと。
この習慣付けが、徐々に問題解決力の醸成につながっていきます。

2015年12月11日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

法人減税・2015年度補正予算案・国内経済〜企業の競争力と法人税率は無関係

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

法人減税 2016年度に29.97%へ引き下げ
2015年度補正予算案 総額3兆3000億円で最終調整
国内経済 7-9月期GDP成長率上方修正の可能性

─────────────────────────
▼ 企業の競争力と法人税率は無関係
─────────────────────────

自民、公明両党は企業の利益にかかる法人実効税率について、
現在の32.11%から2016年度に29.97%に引き下げる方針を固めました。

私は何度となく「企業の競争力と法人税率は無関係だ」と述べてきましたが、
安倍首相は、誰かから間違った情報として「法人税率が30%を下回ったら企業の競争力が高まる」
と吹きこまれて信じてしまったのでしょう。

安倍首相は事あるごとに「法人税率を下げるから、設備投資をしてくれ、賃上げをしてくれ」
と経済界に働きかけています。

しかし、設備投資も従業員給与も法人税率ではなく、
需要が見込まれているかどうかがポイントです。

かつて法人税率が40%を超えている時代でも、
需要があれば企業は設備投資をしていました。

逆に、アイルランドは法人税率が12.5%と非常に低い水準ですが、
設備投資が積極的に行われているわけではありません。

日本の法人税率が30%を下回ったからと言って、
世界中から企業が集まってくることもありません。

全く現実味のない議論が展開されていて、
こんな人たちが日本の国政を牛耳っていて大丈夫なのだろうか?と本気で心配になります。

─────────────────────────
▼ 1円でも国債返済に充てなければ、という危機感を持て
─────────────────────────

政府は4日、2015年度補正予算案を、総額3.3兆〜3.4兆円とする方向で最終調整に入りました。

「一億総活躍社会」の実現に向けた緊急対策に1兆円余りを盛り込む一方、
国債の発行額を当初の予定から4500億円程度減らす方針です。

このニュースも新聞で報道するにはみっともないレベルのものです。

今よりも税収が増えたならば、それは「全て国債返済」に充てるべきです。

「一部は返済で、残りは」などと、呑気なことを言っている場合ではなく、
今は1円でも多く国債返済を進めなければ、日本経済は危険な状態なのです。

一般会計税収の推移は確かに増加傾向にありますが、
これは消費税が5%から8%に上がった分であり、所得税や法人税が増えたわけではありません。

「今回の増加分を社会保障費にあてる」などと発表していますが、
日本という国家がどれほど危険な水準になってきているかを全く理解していないのでしょう。

約4000億円の削減と言っても、未だに新規国債発行額は30兆円以上になっており、
当初の目標である「赤字国債ゼロ」には程遠い状態です。

2020年までに新規国債発行をゼロにするという話は、どこにいってしまったのでしょうか。

─────────────────────────
▼ 安倍首相と黒田日銀総裁の間にできた溝
─────────────────────────

内閣府が8日に発表する7〜9月期の国内総生産(GDP)改定値で
成長率が上方修正される可能性が出てきました。

民間調査機関10社の予測平均では実質GDPは前期比年率0.01%減と横ばいになるそうですが、
私に言わせれば「まともに計算」していれば、おそらくマイナスだと思います。

役人が一生懸命GDPを計算する根拠を洗い出し、
再計算を繰り返していますが、小賢しい作業に過ぎません。

計算方法をいじるだけで、いつの間にか「GDP600兆円」も達成できた、
という夢でも見ているのでしょうか。

安倍首相は、2年半前に「2年後にGDP2%成長」という目標を掲げ、
黒田日銀総裁と一緒になってあらゆる手段を講じていくと発表していましたが、
全く目標達成できる気配すら感じません。

最近の黒田日銀総裁の「静かさ」を見ていると、このまま安倍首相の言うとおりにやっていたら、
いつか自分が日本国債暴落など取り返しの付かない事態の「トリガー」を引くことになる、
と気付いたのでしょう。

安倍首相が声高に経済界に発破をかけている一方で、黒田日銀総裁は沈黙を保ち続けています。

黒田日銀総裁は、自分が「最後のトリガー」を引く立場にあると気づき、おそれているのでしょうが、
安倍首相と黒田日銀総裁は一心同体で取り組んでくれなければ、それもまた問題だと私は思います。

---
※この記事は12月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は法人減税に関する話題をお届けしました。

法人税率を2016年度に引き下げる方針を固めた安倍首相。
これに対し大前は、企業の競争力と法人税率は無関係であると指摘しています。

問題解決においては、目的達成に向けたキードライバーを把握しておくことが重要です。

この認識を間違えているままでは、
いくら打ち手を講じても大きな成果を出すことはできません。

問題の構造や仕組みを正しく理解することが求められます。

2015年12月04日(金) 

■(1)〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アベノミクス・家計調査〜補正予算案の刺激効果は全く期待できない

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アベノミクス 2015年度補正予算案を指示
家計調査 10月の消費支出

─────────────────────────
▼ 経営の「ケ」の字も知らない政治家による政策
─────────────────────────

安倍首相は27日、2015年度補正予算案の編成を指示しました。

10月に大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)の国内対策や、
一億総活躍社会の実現に向けた政策が柱で総額は3兆円台となるとのこと。

低所得の年金受給者に3万円程度の給付金を支給するほか、
地方創生のための交付金を最大1000億円計上する見通しです。

民主党の岡田代表は安倍首相の方針に対して「選挙対策のばら撒き」だと批判していましたが、
ばら撒きかどうかは別としても、これらの政策に効果を期待することはできないでしょう。

年金受給者は賃上げ対象になりません。

一時的に3万円支給したところで、将来が不安なセグメントに属する人たちですから、
そのお金は貯金しておしまいでしょう。

この対策で消費につなげようというのは無理です。
マーケットにお金が出てくる可能性はありません。

また、担当大臣として地方創生に取り組んでいる石破氏も効果を出せていません。

交付金1000億円といっても、1800の市町村で配分すれば1億円にも満たない金額になってしまいます。

交付金補正予算というわりには、刺激効果は全く期待できないものばかりで、
どこかに少しお金が貯まるだけで終わりでしょう。

3年間で時給を1000円に、という対策にも首を傾げるばかりです。

確かに日本の時給は先進国に比べると低くなっています。
米国の最低賃金が時給12ドルほどで、日本は東京で900円代、徳島、沖縄など低い地域になると600円代です。

しかし、現実で言えば600円代の時給でも応募はありますし、生活費が違うので成り立つのです。
私も九州でエブリデイドットコムを経営していたのでその実情を知っています。

全国一律で時給を1000円にするというのもおかしな話ですし、国が主導する意図が理解できません。

600円代から見れば50%以上の値上げになりますから、負担はかなり大きくなります。

するともしこの政策を実施するとなれば、企業側の対応策は「人減らし」でしょう。
それ以外にはほぼ考えられません。

国はこの企業行動を理解できているのでしょうか?

経営の「ケ」の字も知らずに、選挙対策のために耳障りが良さそうな政策を並べるのは
いい加減にやめてもらいたいと思います。

─────────────────────────
▼ 個人消費が落ち込む事実を無視してアベノミクス第2幕
─────────────────────────

総務省が27日発表した10月の家計調査で、消費支出が2カ月連続の減少となったことがわかりました。

自動車やテレビパソコンの購入が落ち込んだことが原因とのことです。

一方、10月の失業率は人手不足などを背景に3.1%と20年3カ月ぶりの低い水準となり、
雇用改善が消費に結びつかない状況が続いています。

安倍首相の言葉を借りれば、「アベノミクス第1幕で景気が良くなり、雇用も増えて失業率も減った」ので、
「アベノミクス第2幕としてGDP600兆円・待機児童ゼロ・介護離職ゼロなどを目指していく」ということですが、
アベノミクス第1幕の柱でもあった「物価上昇率2%」はどうなってしまったのでしょうか。

個人消費はGDPの6割を占めます。その重要な指標である個人消費が2.4%減少しているというのに、
これについては一切回答していません。

2回目の首相就任から3年目を迎えても一向に効果が現れないまま、
アベノミクス第2幕に突入するというのですから、何とも驚くばかりです。

消費支出の内訳を見てみると、授業料などの教育費が「-13.4%」と大きく削られています。

その他、自動車関連費:-7.5%、保健医療:-7.0%なども比較的大きな減少が見られます。

一方で、設備修繕・維持、家賃など住居関連費は7.9%増加しています。
財布を預かる立場で考えれば、どこかを削らなくてはならないとすれば、このような結果になるのは頷けます。

そして、消費支出は全体として前年比で2.4%減少しているわけです。

このような事実にも関わらず「効果があった」と語る安倍首相は、一体何を考えているのか。
すでに私の理解の範囲を超えています。

---
※この記事は11月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週はアベノミクスに関する話題をお届けしました。

低所得の年金受給者に対し、給付金を支給する政策を打ち出した安倍首相。
これに対し、大前はマーケットにお金が出てくる可能性はないと指摘しました。

顧客の本当に求めていることを理解しないままでは、
施策の効果を出すことはできません。

そのセグメントはどのような特徴があるのか?
この視点を持ち、観察を行っていく必要があります。

打ち手から考えるのではなく、まず顧客を知ろうとすること。
解決策の立案において重要となります。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月