2016年05月20日(金) 

01 今週の 大前研一ニュースの視点

燃費データ不正問題〜日産が三菱自動車を手に入れるメリットとは?
燃費データ不正問題:燃料代、軽自動車税など差額補償
日産が三菱自動車を手に入れるメリットとは?

三菱自動車による燃費データの不正問題で、三菱自と日産自動車は9日、対象車の顧客に燃料代や軽自動車税などの差額を補償する方針を決めました。また、日産自動車は約2000億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得することでも合意に至りました。
三菱自動車をめぐる可能性は大きく3つあったと思います。1つは、東風汽車・中国第一汽車などの中国メーカー。将来の排ガス規制への技術トラブルもあり、三菱自動車の技術力や経験は手に入れたいと思っていたはずです。
もう1つが、グーグル・アマゾン・テスラなどの米国勢。電気自動車、自動運転車などの開発にあたり、実際に製造する技術を持つ三菱自動車は狙い目だったでしょう。
そして最後が、これまで三菱自動車と関係が深かった日産自動車による買収でした。
今回のゴーン氏の行動力と素早さは「さすが」だと思います。三菱自動車の株式34%を保有するのに費やす約2000億円を投じるとのことですが、日産にとっては安いものでしょう。
まず、日産にとって大きなメリットになるのが「シェア」獲得です。軽自動車の新車販売台数における日産のシェアは11.1%で、三菱は3.2%です。数字だけを見ると三菱の影響力は小さいですが、実際には日産の製造も三菱が担当していますから、数字以上に効果的だと思います。
そして新車販売台数全体で見ると、三菱は100万台に達しています。腐っても鯛と言えるでしょう。
ルノー・日産が約852万台ですから、三菱を合わせると900万台を突破します。そうなると、GMとVWが視野に入ってきて、一気に世界トップ2、3に食い込める可能性が出てくるのです。これは日産にとって、千載一遇のチャンスだと思います。
次に、ロシアやオーストラリアなどの地域における「三菱のブランド力」も大いに魅力的です。日産も日米欧以外のインドネシアに強いなど、似たような強みを持っています。特に、今ゴーン氏の頭の中には「ロシア」があるはずです。数年前ロシアのアフトワズ社の経営権を所得(株式を50%保有)しているほどですから重要視しているでしょう。
そのロシアにおいては、パジェロ、ランサーを擁する三菱ブランドが高いブランド価値を持っています。ロシアはモスクワ以外に目を向けると、まさにパリ・ダカールラリーを行うような地形が多く、そんな地域で乗る車としてパジェロやランサーは最適です。三菱はパジェロの生産を中止する意向らしいですが、おそらくゴーン氏は復活させると思います。
さらに、インドネシアや、かつて工場があったオーストラリアでも、三菱ブランドは人気があります。ルノー・日産が手を出せていない地域で、三菱は強いブランド力を持っているのでこれは大いに活用できるでしょう。
ゴーン氏は今後どう動くのか?三菱自動車を完全子会社化するのか?

現在、34%まで三菱自動車株を保有したゴーン氏は今後どう動くのか?おそらく狙いはこうだと思います。
まず、このままだと三菱自動車は燃料不正問題の損害賠償で、莫大な損失を出すことになると思います。このとき、三菱の上場を維持したままにしておきます。莫大な損失を計上したことで、一気に三菱自動車の株価は下落します。その最安値でゴーン氏は三菱自動車の株を全部買おうとしているのではないかと、私は見ています。
こうした動きを制約されないために、他人にちょっかいを出させないために、34%の株を保有して「つばをつけた」状態にしているのでしょう。自分で買っておいて価値を下げ、安くなったら全部買う。カルロス・ゴーンという人は、こういう発想をする男だと思います。
日本人には理解しづらいかも知れませんが、中近東のビジネスだとこの程度のことは普通だと言えます。三菱商事、銀行、重工とそろっていても、日本の貴族みたいなものですから、中近東のレバノンにルーツをもち、厳しい国際競争環境で揉まれたゴーン氏からすれば相手にもならないでしょう。
実際、三菱自動車を完全子会社化するかはわかりませんが、どのようになっても「三菱」というブランドは残すでしょうし、残さなければ意味がありません。ロシア、インドネシア、オーストラリアなど、少し変わった地域における三菱ブランドの強さ、知名度を捨てるのはナンセンスです。果たして、ゴーン氏の思惑通り進むかどうか、今後の展開に注目したいと思います。
この記事は5月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は三菱自動車と日産の話題をお届けしました。
三菱自動車の株式取得を行ったカルロスゴーン氏。大前は、その行動力と素早さに「さすが」であると言及しています。
変化が激しいビジネス社会においては、自社にとってのチャンスを察知する能力が求められます。またそのチャンスは、自社の強みや業界構造を熟知しているほど掴みやすくなるものです。
取り巻く環境を理解する視点を持ち、常にアンテナを張ろうとすること。問題解決を行うにおいて、重要なポイントです。

2016年05月13日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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三菱重工業・シャープ・日本電産・タカタ・国内ホテル業界〜三菱自動車の最大の問題は何か?

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三菱重工業 三菱重工に相次ぐ試練
シャープ 連結最終赤字2500億円
日本電産 大西徹夫氏が顧問就任へ
タカタ エアバッグのリコール対象 1億台超に拡大へ
国内ホテル業界 お台場の大型ホテルを買収へ

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▼ 三菱自動車の最大の問題は?
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日経新聞は先月25日、「三菱重工に相次ぐ試練」と題する記事を掲載しました。

三菱重工業は25日、大型客船の建造が遅れたため2016年3月期に508億円の特別損失を新たに計上すると紹介。
筆頭株主でもある三菱自動車で燃費データの改ざんが発覚。
相次ぎ襲いかかる試練が先行きに影を落としていると紹介しています。

上記以外にも、サンオノフレの原子炉で蒸気発生器の不具合で1500億円〜2000億円の賠償が発生する可能性があり、
原動機、船、自動車などトラブルを抱えている事業があちこちにあります。

MRJの納品も完了しておらず、遅々として進まないうちに優位性も失われてしまうかも知れません。

各事業の業績を見ると、なんとか純利益は出しているものの、
それぞれの事業で1000億円単位の損失が計上される可能性があり、全く油断はできないでしょう。

そして、三菱自動車の問題は深刻です。私が一番問題だと思うのは、
三菱自動車の社内に「自分たちの会社だから何とかしなくては」という雰囲気がない、ということです。

三菱自動車は三菱重工業とクライスラーとの合弁事業としてスタートしました。

その後、ダイムラーとの資本提携、トラックやバスなど大型車事業の分社化などを経て現在に至っていますが、
結局のところ「銀行・商社・重工」が資本を入れて経営に口を出す体質になってしまっています。

当然のことながら、トップも送り込まれてくる形になっていて、
現在の相原社長が久しぶりの生え抜きトップになるまで、
三菱自動車の中から上がっていくシステムにはなっていませんでした。

ちなみに相原社長は三菱重工の元社長の息子です。
三菱自動車の社内からすれば、技術的には良いものを持っていても、被征服民族のように感じているかもしれません。

商社も銀行も重工も無責任極まりないと私は思います。そして、結果としてそれが
三菱自動車の社内においても、内部の人が責任を感じる雰囲気を失わせてしまったこと。
これが最大の問題だと思います。

今後、三菱自動車はどうなるのか?
この社内カルチャーを見る限り、おそらく第3者委員会を作ったところで改善するのは難しいと思います。

最終的には身売りしか道は残されていないでしょう。技術力を求めて、
資金が豊富な中国や米国の企業が買収に名乗りをあげる可能性は大いにあると思いますし、それしかないと感じます。
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▼ 債務超過のシャープは買収してもらえただけで、ありがたい
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経営再建中のシャープが、2016年3月期連結決算で2500億円規模の最終(当期)赤字に陥る可能性が明らかになりました。

私は以前から、決算を締めたら赤字になるのでは?と警鐘を鳴らしてきましたが、予想通りの展開になりました。

日本国内には、なんとなくシャープが鴻海に騙されたという印象を持つ人もいるようですが、実際には逆でしょう。

おそらく鴻海は最終的な債務超過を知っていたと思います。債務超過の企業を買ってくれるだけでも、ありがたいと思うべきでしょう。

そのシャープの社員の受け入れ先として、日本電産が名乗りを上げています。
日本電産は25日、シャープの大西徹夫前副社長執行役員を5月1日付で顧問に迎える人事を発表しました。

日本電産ではシャープの片山幹雄元社長も副会長を務めていますが、
永守重信会長兼社長は、シャープ出身者の採用が100人を超えたことを明らかにし、
「希望があれば、計300人ぐらいは採用したい」と述べたとのことです。

日本電産に行けば、永守会長兼社長の元、従順になる必要がありますが、
それでもシャープにいるよりもマシだと思う人も多いと思います。

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▼ タカタの将来に光は見えない
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タカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)対象が
現在の約6千万台から1億台超に拡大する見通しが明らかになりました。

米道路交通安全局が5月中にも対象の拡大を決定する見通しです。

いわゆる「底なし沼」状態です。リコール費用で1兆円以上となると、そうとう厳しい状況です。

タカタとしては、共同開発をしてきた自動車メーカーにも一部負担を依頼しているようですが、
現状は芳しくないようです。

最も親密な関係だったホンダも、経営陣が実態を隠してきたことに嫌気が差したこともあり、
今は距離を置いています。

再建といっても、タカタは東京電力のような公共事業体ではありませんから、
その道はかなり厳しいものがあります。

奇策を含めて考える必要があるでしょう。買収してくれる企業があるか?というと、
1兆円の負担がなければ可能性はありますが、1兆円を負担するとなると無理でしょう。

そうなってくると、倒産する以外にはほとんど考えられません。非常に厳しい状況だと思います。

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▼ オークラブランドを利用した見事な転売事例
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不動産大手のヒューリックは、東京・お台場の大型ホテル「グランパシフィック LE DAIBA」を
京浜急行電鉄から5月に買収すると発表しました。

買収額は600億円超で、運営はホテルオークラが行うということです。
京急がいかに経営下手か、を物語っています。

ヒューリックは600億円で買って、運営をホテルオークラに任せるだけ、
いわゆる「右から左」へ転売して収益を出す、ということです。

そもそも場所を考えれば、一泊1万円強の金額で提供しているのがおかしな話だと思います。
きちんと手を入れて演出すれば、2万〜4万の宿泊費を設定できるはずです。

「価値」を作るという意味では、今後海外のブランドも利用できるでしょう。

とりあえず、「オークラ」というブランドを利用することで、いきなり価値創出に成功しました。
これは1つの見事な転売成功事例になると思います。

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※この記事は5月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は三菱自動車の話題をお届けしました。

社員が責任を感じる雰囲気を失わせてしまった同社。
大前は記事中、この点が最大の問題であると解説しています。

問題解決において、会社を変えるためにはトップではなく、
社員一人ひとりの行動が重要となります。

トップにまかせるのではなく、当事者として自ら問題を認識し、
解決の糸口を見つけ、そして反対勢力を巻き込み実行していくことが必要です。

分析のテクニックを身につけるだけでなく、前提としてこのような「姿勢」がなくては、
問題解決者として成果を出すことは出来ません。



2016年05月06日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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森ビル・耐久消費財〜耐久消費財では景気を刺激することはできない

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森ビル 虎ノ門地区の再開発計画を発表
耐久消費財 テレビの平均使用年数 2015年度は8年

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▼ 都心の建築ブームの危険性。オリンピックへの期待が大きすぎる
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森ビルは先月13日、東京港区の虎ノ門地区の再開発計画を発表しました。

複合施設の虎ノ門ヒルズを囲むように、地上36階建てのビルと56階建ての住宅棟を建設するもので、
事業総額は4000億円になる見通しとのことです。

対面にヒルズビジネスタワー、ヒルズステーションタワー、レジデンシャルタワーを臨む
アンダーズ東京を始め、虎ノ門付近の開発は着実に進んでいます。

多くは2020年のオリンピック前に完成する予定で進められています。

特に虎ノ門と新橋間を結んだマッカーサー道路は、
今後湾岸までつながってオリンピック時には大動脈として活用される予定です。

虎ノ門と羽田空港間のアクセスは、約15分で行けるようになるので格段によくなります。

一方で、都心に事務所が集中しすぎてしまい、
果たして完成しても空室を作ることなく埋まるのか?という懸念もあります。

仮にすべてが埋まったとしても、ドーナツ化現象が加速することになります。

さらに玉突き現象で、
ペンシルビルなど古いビルに空室ができて賃料が上がらない状態になってしまいます。

その結果、都心の賃料も上がりにくくなる可能性があります。

1995年頃から10年間ほど、ちょうど同じような現象に悩まされましたが、
それが繰り返されるかも知れません。

虎ノ門付近の再開発を別にしても、都心の建築ブームは少し行き過ぎている感があります。

ややオリンピックを過大評価しているのではないかと私は思います。

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▼ 耐久消費財では景気を刺激することはできない
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内閣府の消費動向調査によると、
自動車など長く使う耐久消費財の使用期間が伸びていることがわかりました。

携帯電話、自動車のそれは右肩上がりの状態です。

2015年度のテレビの平均使用年数は前年度より0.6年長い8.0年になっています。

15年ほどの期間で見ると、約10年弱だった使用期間が短くなってきています。
色々と新しいものを発売し、刺激している結果です。

ただし、それでも絶対的な使用期間として見ると長いと言えます。

私は98年からずっと同じテレビをメインで使っていますし、
寝室においている別のテレビも長く使っています。

耐久消費財はほぼ100%浸透するものなのです。

日本全体で約8000万台の買い替え需要とすれば、10年の買い替え期間ならば「800万台/年」、
5年だと「1600万台/年」の買い替えになります。

つまり、買い替え需要は耐用年数の逆数に比例します。

耐用年数が1年伸びると、需要が10%落ち込むということもあり得ます。

一生懸命新しいものを作って市場を刺激しようとしても、なかなか驚かない時代になってきています。
そもそも昔から使っているものがダメになりません。

テレビ市場で言えば、液晶テレビが登場して以来、革命的な変化は起きていません。

根本的にここがひっくり返らない限り、需要が伸びることは期待できないでしょう。

こうした耐久消費財の使用期間の長期化が、消費不況の理由の1つになっていることは間違いありません。

だからといって、耐久消費財で景気を刺激しようとするのは間違いだと私は思います。

エコポイントの結果を見てもわかるように、
そんなことをしても不況になっただけで根本的な変化はありませんでした。

選挙目当ての短絡的な政策では意味がありません。いい加減、日本の政治家も学ぶべきでしょう。

耐久消費財で景気を刺激するのではなく、サービス業、旅行業、飲食業など
その他の分野で新しい需要を生み出し、景気を刺激する必要がある、ということを理解して欲しいものです。

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※この記事は4月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は耐久消費財の話題をお届けしました。

大前は、テレビや自動車の長期使用が、消費不況の要因であると指摘。

耐久消費財の買い替え需要ではなく、
成長が期待される分野で、需要創出を行う必要性を解説しました。

これは問題解決において重要な視点です。
どの市場ならば成果を上げることができるのか、正しく把握することが求められます。

まずは世の中のトレンドを掴むこと。
そしてその上で、高い成長性が見込まれる分野に絞っていくことが、
大きなインパクトにつながっていきます。

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