2016年06月24日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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訪日外国人客数・周遊ルート〜もっときめ細かく日本を堪能してもらえるプランを

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JTB 最大793万人の個人情報流出
訪日外国人客数 今年の訪日外国人客数 1000万人超
ラオックス ラオックス株が年初来安値
周遊ルート 新たに4周遊ルートを認定
国内リゾート 北海道苫小牧市で大規模開発
ピーチ・アビエーション 2020年度までに40機体制に

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▼ JTB個人情報流出は、パスポート情報が大きな問題
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大手旅行会社JTBは14日、最大で約793万人分の個人情報が
流出した可能性があると発表しました。

旅行商品を販売する子会社i.JTBの社員が取引の航空会社を装ったメールの
添付ファイルを開いたところ、パソコン6台とサーバー2台が次々と
標的型ウィルスに感染したということです。

ベネッセ、ヤフーなど個人情報流出の過去にもいくつかの事例がありますが、
今回の場合にはパスポート情報が含まれている点が大きな問題だと思います。

この情報が中国系と言われている人たちに渡ると、
パスポートの偽造などに利用される可能性も考えられます。

取引先を装ったメールの添付ファイルを開いてウィルスに感染してしまったということですが、
きちんとしたセキュリティソフトを使用していれば、
防ぐことができたのではないかと思います。

その意味で、セキュリティを見直す必要もあるでしょう。
いずれにせよ、パスポート情報が含まれているのは、由々しき問題だと思います。


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▼ 訪日外国人客数の見通しと今後の企業への影響は?
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観光庁の田村長官は15日開いた記者会見で、
2016年の訪日外国人について6月5日時点で1000万人を超えたことを明らかにしました。

日本政府観光局が15日発表した5月の訪日外国人客数は、
前年同月比15.3%増の189万4000人で、5月としては過去最高でした。

若干、訪日外国人客数に陰りが見えるタイミングもありますが、総じて上向いています。

ただし、一人あたりの観光客が使うお金が減ってきているのが課題です。

このまま推移すれば、政府が見込む3000万人には届かないかもしれませんが、
今年中に2000万人を突破するのは間違いありません。

ホテルそのものが埋まっていて、にっちもさっちもいかない状況となっていて、
宿泊施設をどうするのかというのは大きな課題です。

このような状況を受けて、免税品大手のラオックス株が17日に続落し、
一時前日比7%安の80円と連日で年初来安値を更新しています。

いわゆる「爆買い」ブームが一巡したことに起因するとも言われていますが、
それよりも中国政府が外から持ち込む商品について高い関税を設定したことが
影響しているのだと私は思います。

訪日外国人の一人あたりの買物額は減少傾向にありますが、
そこまで大きなものではありません。

ラオックスが一喜一憂するほどではないと思いますが、
株価は敏感に反応してしまうのでしょう。

今後、爆買一巡というニュースを受けて、
他にも影響を受けるところが出てくる可能性もあると思います。


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▼ もっときめ細かく日本を堪能してもらえるプランを
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観光庁は14日、訪日外国人に長期滞在を促す広域の周遊ルートを
北海道、関東、山陰、沖縄の4地域で認定したと発表しました。

国が資金面で支援し、官民一体で宣伝したり旅行商品をつくったりして
訪日客を呼び込む狙いとのことですが、実際には難しいところがあります。

これまでの11ルートに加えて、新たに4つのルートを設定しましたが、
いずれもこれまでにずっと要望があったところで、
一般旅行客には行きづらいところも含まれています。

日本のてっぺん・北海道ルートや、沖縄の離島を回る沖縄ルートなど、
3泊〜4泊の旅行で来日する人にとっては現実的ではないでしょう。

また東京回廊のルートは、東京周辺ばかりであまり魅力的には見えません。

鳥取県と島根県のルートは私は推したいところです。
出雲大社だけではなく、見どころがたくさんある地域です。
萩から下関に向かう道も美しいですし、ぜひ外国人観光客に見てもらい場所です。

大雑把に4つルートを追加するのではなく、
もう少しきめ細かく海外の代理店にも理解しやすいプランを練ってもらいたいところです。
現状だと、単なる官公庁のリップサービスという意味合いが強いだけだと感じます。


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▼ メディカル・ツーリズムのニーズは高い/LCC唯一の成功事例
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森トラストの森章社長が個人で全額出資する投資会社、MAプラットフォームが
北海道苫小牧市で大規模なリゾート開発を始めます。

北海道に一週間程度滞在する海外の富裕層の需要を取り込むということで、
総事業費は600億円で2020年の部分開業を目指すとのことです。

目指すのはいわゆるメディカル・ツーリズムです。
ホテル1つと、その周辺に1つ330坪もあるコテージを用意。
一週間の滞在期間中に、若干の治療やダイエットなどができるという施設になります。

こうした施設は米国には数多く存在し、中国の富裕層を想定するとニーズは高いはずです。
日本のメディカル・ツーリズムとなれば、
中国だけでなくロシアの富裕層も取り込める可能性も高いでしょう。
韓国、シンガポール、インドも力を入れている分野です。


格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションは14日、
2020年度までに機材数を現在のほぼ2倍の40機に増やす方針を明らかにしました。

同日発表した16年3月期単独決算は営業利益が前期の2倍強の61億円でした。

累積損益も解消したということで、LCCの中で唯一健全な経営状況で回り始めたと言えます。
ANAが資本参加していますが、20機〜40機となると単体としても
十分独立してやっていける規模になったと見て良いと思います。


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※この記事は6月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は周遊ルートに関する話題をお届けしました。

新しく4つの周遊ルートを発表した観光庁。
大前は、3〜4泊で来日する観光客にとって、
そのルートは現実的ではないと指摘しています。

要望に基づいて単純にサービス設計をしようとしても、
その内容が顧客のニーズを満たすものでなければ、
施策として効果を生み出すことは期待できません。

解決策の立案は、きめ細かな情報収集や分析の上に成り立つものです。
インタビューや現場の視察などを重ねることで、
より意味のある施策を導き出すことが出来ます。

2016年06月17日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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待機児童問題・空き家対策・ホテル規制緩和〜突然の容積率アップ容認、国交省はその根拠を示せ

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待機児童問題 保育施設に国有地を活用
空き家対策 全国の空き家、空き地情報を集約
ホテル規制緩和 宿泊施設の容積率を緩和

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▼ 保育施設に国有地活用も空き家バンクも、単なる選挙対策
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財務省は、今夏にも社会福祉法人が国有地に保育施設をつくりやすくするための優遇策を設けます。
土地などを借りる際に支払う保証金の免除や国有地に関する情報提供の拡充が柱とし、
国有地の有効活用で待機児童の解消をめざす考えです。

選挙前ですから、聞き心地のいい施策は全部やっておこう、という魂胆でしょう。

ただし、待機児童問題の本質は、土地ではなく、厳しすぎる法律にあります。
いくら国有地を開放したところで問題解決にはつながらない、と私は感じます。
土地だけで解決すると思っているのならば甘すぎます。

同様に国土交通省が発表した空き家対策も、完全に選挙対策でしょう。

国土交通省が全国の空き家や空き地の情報を集約する見通しが明らかになりました。
地方自治体が個別に運営する「空き家バンク」の情報を一元化し、
購入希望者がインターネット上で条件に合う物件を見つけやすくするとのことで、
税制などでの空き家対策に加えて情報提供を拡充することで、
民間の不動産関連ビジネスの拡大につなげる狙いということです。

情報を一元化といっても、どのくらいメリットがあるのか疑問です。

新潟の人が沖縄の空き家を探すなら利用価値はあるかもしれませんが、
実際にはネット上に溢れている情報だけで事足りるケースがほとんどだと重います。

現在、総住宅数に占める空き家率は13%を超えてきています。
日本中、空き家だらけになってきています。
連載している雑誌の中で「持ち家を買ったほうがいいのか?賃貸のほうがいいのか?」
というような質問を受けることがあります。

空き家の状況に鑑みれば、借りたほうが経済的なメリットは大きく、
終の棲家とするのなら別ですが、若いうちからローンを組んで購入する必要はないでしょう。

空き家バンクを作るよりも、このようなお金の相談にのってあげるほうがよほど役に立つと思います。
あくまでも、わかりやすい選挙対策という以上の意味はないでしょう。


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▼ 突然の容積率アップ容認、国交省はその根拠を示せ
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全国的なホテル不足を解消するため、宿泊施設の容積率の緩和を検討していた国土交通省は、
現在の1.5倍もしくは300%分の上乗せまでを認める方針を決めました。

新制度に基づくホテルは早ければ2016年度中に着工する見通しで、
20年の東京五輪・パラリンピックまでに整備が進みそうという見通しとのことです。

東京五輪に向けて、2000万人〜3000万人の訪日外国人観光客を受け入れる体制を作るどころか、
現状宿泊施設の不足が深刻化しています。

シティホテル、ビジネスホテルともに稼働率は8割を超えて、
時期によっては、アパホテルでさえ1泊3万円という高騰ぶりです。

その対策として、国交省は突如として、宿泊施設の容積率を
現在の1.5倍もしくは300%分の上乗せまでを認める方針を打ち出しました。

一切根拠を示さない突然の発表です。私は全く理解できません。

「宿泊施設が足らないから、容積率を増やします」というなら、
なぜ最初から基準を上げておかないのか?物理的な理由はないのでしょうか?

あまつさえ、普通のビルでも一部を宿泊施設とすれば容積率300%分の上乗せを認めるそうです。
一体、何を根拠として認めているのか、わかりません。
建物の上を高速道路が通っていて活用できない場合には、
その隣の建物に空中に建築をする権利を移せるというのも、その根拠が理解不能です。

容積率は安全性を基準として決められているべきです。
ところが、今回のことで建築基準法の基準は、
国交省が「適当に決めていただけ」ということがわかりました。

何ら数学的、科学的、物理的根拠もなく、
国交省が条件を勝手に決めていたとすると、独裁国家と同じだと私は思います。

安倍首相が訪日外国人観光客数3000万人を目指すと言ったから、
宿泊施設だけ特別扱いするというのはあり得ません。

今回の発表に対して、国交省は袋叩きにあうべきだと私は思います。
「今までの容積率の根拠を示せ」「宿泊施設だけを認める理由は何か?」
「安全性との関係性はどうなっているのか?」と。

普通の国であれば、厳しく追求するはずです。
それができないのが、今の日本です。

単なる選挙対策という意味の無さ以上に、この問題を通じて危機感を抱く部分です。


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※この記事は6月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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全国的なホテル不足解消に向け、
宿泊施設の容積率を増やす方針を発表した国交省。
それに対して、大前は「一切根拠を示さない突然の発表」
と指摘しています。

解決策や方針を示す場合は、納得できる根拠を基に分析し、
それが客観的にみて最も有効であることを主張する必要があります。

そうでなければ、文中にあるように「適当に決めた」印象を
もたれてしまい、信用を得ることは出来かねません。

解決策の実行において、周囲を納得させることは必須事項です。
ファクトとロジックに基づき、人を巻き込んでいく姿勢が求められます。

2016年06月03日(金) 
地方創生は憲法改正をしない限り、実現不可能

日経新聞は20日、『「地方創生」尻すぼみ』と題する記事を掲載しました。これは政府が20日、地方創生の新たな基本方針の素案を公表したことを受けたものです。
地方創生は安倍首相が政権の目玉に掲げたテーマですが、いまは「一億総活躍社会の実現」に押され、注目度が低下。
東京一極集中の是正などの目標も達成の見通しは立っていないとし、政府・与党内では「尻すぼみ」と指摘する声も上がっている、と紹介しています。
「地方創生」という言葉だけが独り歩きしているだけで、全く実態が伴っていません。地方創生に本気で取り組もうと思うなら、地方の自立を妨げている憲法の内容を改正する必要があります。
中央省庁がすべてを仕切る現在の憲法のままでは、地方創生など絶対に不可能です。それを1,000億円程度で実現しようというのは、笑ってしまうレベルです。
根本的な問題に着手しないで、言葉遊びをしているだけに私には感じられます。クーポンを配りまくった、かつてのふるさと創生事業と同じです。
アベノミクスで惨敗し、アベノミクス2が出てきたと思ったら、今度は「1億総活躍社会の実現」というスローガンが登場しました。
ところが、保育園の問題、女性の社会参加の問題など、どれ1つとして具体的に実行されたものがなく、まるで蜃気楼のように実態がありません。安倍首相の特徴です。
1つでもいいから、何か実行して具体的に形にしてもらいたいと思います。言葉遊びだけを続けてきて、最後の最後は「リーマン・ショック前の状況と同じ」などと発言し、国民に恐怖感を与えています。
民進党の岡田代表は「アベノミクスの失敗を認めるべき」と発言していますが、これは正しいと思います。
1億総活躍プランの根本的な矛盾。言葉遊びはやめよ

政府は18日、経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の素案と、人口1億人を維持するための「ニッポン一億総活躍プラン」をまとめました。
2021年度までに国内総生産(GDP)を600兆円に増やす目標の実現に向け、働き方改革による生産性の向上や、少子高齢化の克服に力を入れることなどを打ち出したもので、成長路線による経済再生の道を引き続き模索するものになっているとのことです。
かつて竹中平蔵氏が「骨太」と打ち出し方をして以来、何かとこの言葉が便利に使われてきましたが、私に言わせると「内容が薄い」ものが非常に多いと感じます。当時、竹中平蔵氏が打ち出した骨太計画も結局、ほとんどが実現されずに終わっています。
この政府発表を見るだけでも、やはり「言葉遊び」をしているにすぎないとわかります。
1億総活躍と言いながら、一方では生産性の向上やAIの活用を図ると言います。これは明らかに矛盾しています。生産性を向上させ、AIやロボットの活用が進むほど、どう考えても失業が増えて雇用が減ります。
言葉遊びだけで、いくら何でも鈍感に過ぎると思います。
保育士の問題は「人手不足」ではない

政府は保育や観光の分野で深刻な人手不足の解消に向け、実態に合わなくなった規制の緩和に動く方針を明らかにしました。
保育士の賃金引き上げや国家資格がなくても有償で通訳ガイドをできるようにする方針で、人手不足が日本経済の成長を妨げないように、人材確保に本腰を入れるとのことです。
根本的な問題として、「人手不足」は問題ではありません。私は昔からずっと指摘しています。
例えば、子育てが終わって家にいる主婦を活用します。彼女たちに待機児童の面倒を見てもらうような、義理の里親制度を作ればいいのです。高齢者はたくさんいるのですから、あっという間に実現できます。新しく何かを大々的に導入する必要などありません。
保育士の資格登録者は増えているのに、勤務する人が増えないのは、待遇の問題などがあるのでしょう。ここを掘り下げてもっと勉強すべきです。ただ1万円を渡しておしまい、では何の解決にもつながりません。
資格無しで通訳ガイドを可能にするのも、おかしな話です。通訳の資格を持っていても実際に役に立たないのならば、資格試験の内容を変更するべきです。資格がなくてもいいというのは、本質論ではありません。
また、通訳が英語に偏りすぎているのも問題です。中国語などは、中国人留学生ができるように制度を整えてあげても良いでしょう。実際には非公式で通訳をやっている人も多いと思いますが、留学生の収入が高くなると奨学金制度に抵触する恐れもあります。
その他、耕作放棄地も増えるなど、様々な規制が時代に合わなくなってきています。今の時代に適した形で運用できるように、表面的なことではなく、本質を見極めて欲しいところです。
この記事は5月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は地方創生・経済財政政策・規制緩和の話題をお届けしました。
保育や観光の分野の「人手不足」解消に向け、実態に合わなくなった規制の緩和に動く方針を発表した政府。
これに対し大前は、表面的なことではなく、本質を見極めて対策を打つよう指摘しています。
有効な打ち手を考えるためには、まず本質的な問題を発見することが重要です。
取り巻く環境を理解し、現状を正しく認識することで問題を特定でき、対処療法ではない、インパクトある施策の創出につなげることができます。
制度や待遇、規制などの見えやすい事柄のみに目を向けていては、場当たり的な解決策しか考えることはできません。

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