2016年08月26日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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セブン&アイHD、日立建機、ディー・エヌ・エー、クラウドワークス 〜日本にも、ようやくクラウドワーキングが根付いてきた

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セブン&アイHD 「セブン-イレブン」世界店舗数 7月末で6万店突破
日立建機 インド売上高578億円見通し
ディー・エヌ・エー 株価は首位独走中
クラウドワークス クラウドワーカー数が100万人突破

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▼ オリジナル事業を日本化し、世界に展開できた珍しい事例
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セブン&アイ・ホールディングスは17日、コンビニエンスストア「セブン‐イレブン」の
世界の店舗数が7月末で6万店を突破したと発表しました。

同社は1927年に米国テキサス州で創業し、1971年には24時間営業を開始。
アジア・欧州など世界17の国と地域に進出し、小売業として世界最大の店舗数となります。

セブン-イレブンは米国のサウスランドという会社が始めた事業です。
それをイトーヨーカ堂にいた鈴木敏文氏が提携し、日本で普及し始めました。
その後、サウスランドの経営状態が悪化し、米国以外のセブン-イレブンの権利を
約650億円で買収しましたが、さらに後、サウスランドそのものを買収するに至りました。

最終的にサウスランドを買収したのですから、
同じ意味を持つM&Aに二重に支払ってしまった、と言っても良いと思います。

結果的には、当時のイトーヨーカ堂は資金が豊富でしたし、
十分な成果も得られたので問題にはなりませんでした。
そして、今ではこの事業が稼ぎ頭となっています。

全世界で6万店という巨大なリテール組織であり、
日本では珍しくオリジナルの事業を買収し、日本化しました。

そしてフランチャイズ方式ではあるものの、世界に展開した事例です。
欧州はスイス系やドイツ系の同業がメインですが、アジアを主として成功しました。

日本で約1万9,000店、次いでタイが約9,000店、米国・韓国が約8,000店、台湾が約5,000店になります。

日本でも強いという印象がありますが、
世界レベルで見ると6万店というのはなかなか素晴らしい数字だと思います。


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▼ インドの実需は堅調なものの、すぐに情勢が変わる可能性を警戒
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日立建機の2017年3月期はインドの売上高が前期比43%増の578億円まで伸び、
連結売上高に占める比率も8%と、初めて同社の中国事業の売上高を上回る見通しが
明らかになりました。

中国経済が鈍化する一方、インドはモディ政権の発足後、インフラ整備が活発で、
油圧ショベルの需要が伸びていることが背景にあるとのことです。

世界的には建機市場は、キャタピラーにしてもコマツにしても決して堅調とは言えません。
そんななかで、油圧シャベルで見ると他の国を差し置いて、インドだけが断トツで伸びています。

北米、西欧も2014年までは伸びていましたが、すでにマイナスに転じていて、
インドだけが50%増となっています。

日立建機の数字で見ても、日本もオセアニアも北米も、
そして中国も下がっている中、インドだけが伸びています。

日立建機だけの数字とは言え、インドが中国を上回ったというのは
ある種異常な事態だと思います。

かつての中国ほどではないにしろ、インフラ整備に入ったということでしょう。
日本も新幹線の受注などもあり、しばらくはインド需要に期待できるかも知れません。

ただし、モディ首相が再選されるかわからないところがありますし、
インドという国は調子が良くなっても、すぐにブレーキがかかる「癖」があります。

その点は警戒しておく必要があるでしょうが、
現時点でインドの実需が堅調であることは間違いありません。


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▼ ディー・エヌ・エーには任天堂とのコラボへの期待
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日経新聞は16日「ディー・エヌ・エー、株価は首位独走中」と題する記事を掲載しました。

これは、東京株式市場でディー・エヌ・エーの上昇基調が続いており、
昨年末から15日終値までの上昇率は5割超と、
日経平均株価の採用銘柄の中で断トツを誇ると紹介。

傘下のプロ野球・横浜DeNAベイスターズの主催試合の観客動員数が増えていることや、
任天堂と共同開発するスマートフォン向けゲームへの期待が高まっていることが要因としています。

時価総額そのものよりも、今年になってから「5割」増加したという点に注目するべきでしょう。
傘下のプロ野球球団・ベイスターズの収支が赤字から黒字に転換する見込みが高そうです。

現在、観客動員数は1位の広島、2位の巨人に続く3位です。
もしかしたら2位を狙えるかも知れませんが、3位で留まれれば十分だと私は思います。
ただし、全体の影響から見るとプロ野球球団のそれは小さいものです。

現在、ディー・エヌ・エーは任天堂と共同でポケモンGOのようなゲームの開発に着手しています。
聞くところによると、4つ進めているということで、これらのゲームに
ポケモンGOと同じような魅力があれば、という期待感があるのでしょう。

もちろんゲームは発売してみないとわからない部分も多いですが、
現在の同社株価は大いに期待含みで伸びているという状況です。

期待通りの成果を見せて欲しいところです。


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▼ 日本にも、ようやくクラウドワーキングが根付いてきた
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クラウドソーシング大手のクラウドワークスは14日、
会員数(クラウドワーカー数)が100万人を突破したと発表しました。

2012年3月のサービス開始から50万人突破までに2年1カ月かかったのに対し、
100万人突破はその1年4カ月後と、会員数増加ペースが早まっているとのことです。

クラウドワークスの吉田社長はアタッカーズ・ビジネススクールの出身で、
会員数が60万人くらいのときにお会いしました。
それから、あっという間に100万人です。

登録クラウドワーカーの最高年収は約2,400万円、最高年齢が85歳とのことです。
それだけ優秀な人も登録しているし、仕事が来る需要もある状況になっています。

国籍、住所が日本以外の人も数十%いるそうです。
海外出向組みの奥様など、海外にいて日本語ができる人にとっても
良い機会になっているのだと思います。

以前、私はクラウドソーシングの世界チャンピオンとも言える
米国のoDesk(現Upwork)を紹介したことがありますが、
日本でもようやく同じように「クラウドワーキング」という働き方が
根付いてきたのだと感じています。


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※この記事は8月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、クラウドワークスの話題をお届けしました。

同社のサービス会員数が100万人を突破し、
「クラウドワーキング」という働き方が根付いてきたと紹介。

世の中が急速に激しく変化している今の時代、
会社だけでなく、個々人にも「稼ぐ力」が要求されます。

ビジネス環境が変わり、従来の仕事がなくなったとしても、
時間と場所にとらわれず、これから必要とされる仕事を見出し、
自分で仕事を創っていく姿勢が求められます。

2016年08月19日(金) 

01 今週の 大前研一ニュースの視点

ドラッグストア業界・ベネッセHD・カタログ通販 〜一世を風靡したカタログ通販も、新しい変化が求められる
ドラッグストア業界 マツキヨが首位陥落の危機
ベネッセHD 営業赤字7億1800万円
カタログ通販 カタログ通販、逆風やまず
ドラッグストア業界も、コンビニ業界のような差別化が求められる時代

まぐまぐニュース!は、先月21日「マツキヨが首位陥落の危機。」と題する記事を掲載しました。
ドラッグストア業界では、これまでマツモトキヨシとツルハホールディングス、サンドラッグの三者が業界首位の座を争っていました。
2014年から再編を進めてきた流通大手イオンの子会社であるウエルシアホールディングスが、売上高でマツモトキヨシに迫る業界2位に浮上してきています。
品揃え以外の差別化として、「調剤事業」「カウンセリング営業」「プライベートブランド商品」が現在の鍵となっており、今後この分野で各社の競争が激化していくことになりそうとのことです。
このニュースではマツキヨに迫る勢いと報じていますが、実際にはマツモトキヨシ、サンドラッグ、ツルハシHDなどの売上高が5,000億円弱に対して、ウエルシアは1,919億円に過ぎず、CFSコーポレーションの1,205億円を足してみても、まだ第2軍というところでしょう。
ドラッグストア全体の売上高と店舗数の推移を見ると、業界として大きく成長してきたことはわかります。
店舗数は2万件に達し、コンビニに比肩するレベルになっています。売上高も2兆円規模ですから、流通網として地位を確立したと言えるでしょう。
そして業界はいまだに群雄割拠といった状況です。売上高3,000億円を超える企業が7社、8社も存在する一方で、トップでも1兆円に達していません。
今後重要になってくるのは、いかに独自の特徴を出していくか?ということです。ドラッグストアは、どこに行っても基本的に売っているものが同じで特徴がありません。
例えば、コンビニ業界ではセブン-イレブンが惣菜部門に力を入れて特徴を打ち出すなど、各社が特徴を出そうとしています。
ドラッグストアに入ってそのような特徴を感じることはまずありません。
つい先ごろまでは中国人の観光バスがドラッグストアの前に停まって、いわゆる爆買いもありましたが、すでにそんな光景は目にしなくなってきています。
そんな他力本願ではなく、プライベートブランドを含め、独自の特徴を打ち出して差別化を図り、そして収益力を高めることが求められる時代になったということだと思います。
受験業界、英語業界も根本的な構造変化が見られる

ベネッセホールディングスが1日発表した2016年4〜6月期連結決算は、売上高が前年同期比2%減の1056億円、営業損益が7億1800万円の赤字でした。
4〜6月期で営業赤字になるのは上場以来初めて。
主力の「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」の会員数の減少に歯止めがかかっていないことが主な要因とのことです。
4〜6月期は新学期ですから、この業界は調子が良くて当たり前です。この不調の原因をどこに求めるか?が非常に重要だと思います。情報漏洩問題に起因する一時的な影響と考えるのか、業界の構造的な問題と考えるのか。
少子化は進み、大学全入時代となり、受験そのものが以前に比べて易しくなっています。
受験そのものにお金をかけることよりも、どこかの大学に入れればいい、と考える人も増えていると思います。そのような時代の流れだとすれば、これはベネッセにとって、そして受験業界にとって大きな構造上の問題です。
ベネッセは原田会長兼社長が退任し、福原氏が新社長に就任しました。
プロ経営者の代表とも言われた原田氏は、アップルの後、マクドナルド、ベネッセと渡り歩きましたが、結果としては非常に不運でした。
はたして新社長の福原氏は、ベネッセが直面する構造上の問題をどう捉えるでしょうか。
私は以前ベネッセ創業者の福武氏と話をしたことがありますが、その際に福武氏が「サラリーマンを相手にしても儲からない」から企業研修などに手を出さない、と言っていたのが印象に残っています。
親が子どものために支払う受験業界、国家制度のある介護業界など、ベネッセが参入している業界を見ると、なるほど福武氏の考えにもとづいているとわかります。
しかし福原新社長がこれから舵取りをする時代においては、全く別の新しい事業展開を求められると私は思います。
ベネッセはベルリッツという世界的な英語研修企業を買収し傘下に収めています。
ベルリッツの特徴は高額だけど丁寧に教えてくれる、というもの。私もかつてドイツ語を習いに行ったことがあります。
数十年前ならともかく、すでに語学はオンラインで安く勉強できる時代になっています。高額な授業料を支払ってでも、徹底的に教えてもらいたいという人が、どのくらいいるでしょうか。
ここにも、受験業界と同じく構造上の問題が見え隠れしています。こうした本質的な問題に目を向けて、チャレンジしていくことが、ベネッセに求められていることだと私は感じています。
一世を風靡したカタログ通販も、新しい変化が求められる

日経新聞は、2日「カタログ通販、逆風やまず」と題する記事を掲載しました。ニッセンホールディングスは2日、2016年12月期の連結最終損益が105億円の赤字になる見通しを発表しました。
11月に親会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社になることが決定したほか、千趣会などライバルも苦戦が続き、「脱・カタログ」や顧客の絞り込みといった生き残り策が欠かせなくなっているとのことです。
この業界も、基本的に大きな構造上の問題を抱えています。
千趣会などカタログ通販は一世を風靡しましたが、今はスマホが普及し、カタログどころかパソコンさえ使わないEコマース全盛の時代です。カタログ通販の需要は明らかに低下しています。
しかもカタログ通販は、Eコマースに比べてコストも高くつきます。
印刷代が安い米国を活用するなど工夫はしているようですが、それでも割高と言わざるを得ません。カタログが届いて実際に注文が入るのは数日間だけですから、費用対効果も良くないでしょう。
こうしたことを踏まえて、問題解決に乗り出さなければいけません。
たとえばカタログにのせる内容を売上トップ10%に絞り、カタログそのものを薄くしてコストダウンを図ることもできるでしょう。
あるいは、通販生活のように「物語性」を全面に出し、しかも著名人・有名人が推奨することで販売の差別化を図るのも1つの策です。
通販生活は、長年この方法を使い、すでに固定客を掴んでいるおかげで、他社のようには苦戦していません。
ニッセンにしても千趣会にしても、かつてのカタログ通販のやり方では通用しない時代になったということを認め、この構造上の問題にどう取り組むのか、ここが非常に重要なポイントだと思います。
この記事は8月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、ベネッセHD、カタログ通販業界の話題をお届けしました。
大前は、それぞれの業界について、構造上の問題を指摘しつつ、新たなチャレンジをしていくことが重要であると解説しています。
変化の激しい時代において、かつてのやり方は通用しなくなりつつあります。
従来ではなく「今」において何をすることが成功要因であるのか?KFS(Key Factor of Success)を掴むことが、企業の生き残りのために必要です。
業界のKFSは何か?常に問い続けることが、戦略家の一歩目となります。

2016年08月12日(金) 

01 今週の 大前研一ニュースの視点

ライフネット生命・ロボアド・電子カルテ 〜電子カルテの普及には、国の明確な方針が必要
ライフネット生命 ネット生保の草分けに転機
ロボアド AIが株を売買する未来
電子カルテ 病床持たないクリニックの導入率35%
成長鈍化は危険信号。ライフネット生命は岐路に立たされている

日経新聞は1日、「ネット生保の草分けに転機」と題する記事を掲載しました。
保険業界に新風を吹き込んだライフネット生命保険は、設立10年の節目を迎え、競合生保の増加で新規契約の伸び悩みに直面して、保険ショップなど販路の拡大に乗り出したものの、対面販売への傾斜は割安な保険料を阻害しかねず、新たな成長への道は険しいとしています。
ライフネット生命は、生命保険という商品のコスト構造を明らかにして、「なぜ従来の保険よりも安いのか?」を明確に説明しました。
そのような保険商品の売り方が、お任せではなく理屈で考えるタイプの人に受け入れられて契約数を伸ばしてきました。
ところが、ここに来て新規契約高が落ちてきています。当然、累積はされていますが、成長が止まったことは否めません。
経常収益が伸びていても純損失が膨らんでいる状況ですから、成長が止まってしまうと厳しい状況です。
さらに突き抜けてボリュームを確保する必要があります。
その苦境に対して、保険ショップなどの販路拡大に活路を求めたのですが、これはなかなか成功しないでしょう。
コミッションが高いですし、そもそも対面販売をするなら、ライフネット生命の特徴が失われ、「既存の生保会社とどこが違うの?」「インターネットを使うから安かったんじゃないの?」ということになります。
従来の日本の生命保険会社は、ライフテーブルの計算で(私に言わせれば)「イカサマ」をやっていました。
寿命の計算方法などで、差益が何重にも出るような仕組みを作り上げていました。
ライフネット生命は、その構造を指摘し、正しい数字を明確に説明するという形をとってヒットしました。その船出は好調でした。
しかし成長が鈍化しているにも関わらず、まだ赤字のフェーズだったとわかった今、大きな岐路に立たされています。
今後、理屈で買ってくれる層が増えないと厳しいでしょうし、似たようなオールネットの生保会社も出現しているので決して楽観できない状況です。
ロボアドのほうが、人間の勘よりも信用できる?

ズーオンラインは先月25日、「AIが株を売買する未来」と題する記事を掲載しました。
現在注目を集めているFinTech(フィンテック)の中に、ロボアド(ロボット・アドバイザー)という資産運用サービスがあると紹介。
利用者のリスク許容度や投資目標に合わせて、AIが自動でポートフォリオを組んでくれるというもの。
ロボアドによる資産運用額が2020年には最大2兆ドルに達する試算を紹介しています。
残念ながら、この記事は「お粗末」なレベルでした。記事の中で紹介されている実績は、ある担当者が10万円の資金からロボアドを活用した結果が紹介されていましたが、10万円では数百円得したというレベルです。
しかも、最終的には「チャラ」だったという内容でした。
ただし、確かにロボアドが台頭してきて、今後大きくなっていく流れはあります。ロボアドが米国企業でも広まっているのも事実です。
Vanguard、Charles SCHWAB、E TRADEなど多くの企業が取り扱っています。手数料が、普通のアドバイザリー手数料と比べるとそうとう安くなっています。運用額で見ても、すでに何千億円というレベルのものもあります。
今後、ロボアドの流れは大きくなると思います。これまで人間の「勘」に頼っていた部分をロボアドが代行することになります。
不安に感じる人もいるでしょうが、私に言わせれば、日経新聞をななめ読みしているような人の「勘」に頼るほうがよほど危険です。「みんなが上に行くと言えば、上」と判断する人たちです。
経済誌が来年の経済見通しなどを発表しますが、当たった試しがありません。
資産運用に携わる人間の「勘」も、そういうレベルだと認識すると良いでしょう。その意味ではロボットのほうが良いと言えるかも知れません。
電子カルテの普及には、国の明確な方針が必要

厚生労働省の医療施設調査によると、2014年の電子カルテ利用率は400床以上の病院の77.4%に対し、病床を持たないクリニックでは35.0%に留まったとのこと。
全国には約10万のクリニックがあるため、6万5000のクリニックが紙のカルテを使っている計算になり、診療報酬引き下げで経営環境が厳しくなる中、高額のIT投資に踏み切れない現状が明らかになりました。
「国の方針」を明確に打ち出して対応しなければ、一生、電子カルテが普及することはないでしょう。「便利だから使ってください」「業績がよくなりますよ」と呼びかける程度ではダメです。
米国の場合には、5年以内に電子カルテにしなければ罰金、逆に電子カルテを採用するなら補助金を、という強い方針を打ち出しました。
そして、プラクティス・フュージョンという電子カルテを無料で提供する会社も現れて、何十万人という開業医が導入しました。
ある程度の規模の病院なら高額の電子カルテシステムを導入できますが、開業医のレベルでは手が出ないのが実態です。日本の場合は、導入率が25%にも達していません。
電子カルテは関わる人が全員導入していないと、意味がありません。病院が電子カルテを使っていても、処方箋は未対応のため手書きで書かされるなら無意味です。最初から最後まで電子カルテのデータを活用できるようにすることです。
電子カルテを使って一気通貫でデータ管理ができれば、ネットやスマホで患者自身も確認できますし、病院が変わっても煩わしいことが減ります。
医院・クリニックだけでなく、患者側の利便性も重要ですし、それを訴えることも必要です。
電子カルテは個人情報なのでプライバシーの問題など考慮すべき点もありますが、日本はそれ以前に厚生労働省が入り口を仕切っていないために、全く前へ進んでいない、というのが現状です。
この記事は8月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、電子カルテの普及に関する話題をお届けしました。
現時点の普及状況は、理想からかけ離れた状態であるのは明らかです。
電子カルテの利用率を上げるために、どのような戦略を立てるべきか?過去のやり方の延長だけでは、普及を進めることはできません。
一段視点をあげた解決策を立案することが重要であり、そのためには戦略的思考が必要となってきます。

2016年08月05日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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インドネシア情勢・マレーシア高速鉄道 〜マレーシア高速鉄道受注には、経済の膨らみをトータルでアピールすべき

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インドネシア情勢 閣僚級13人交代の内閣改造実施
インドネシア高速鉄道 インドネシア高速鉄道に暗雲
マレーシア高速鉄道 越境高速鉄道を2026年開業へ
韓国超高速交通計画 「ハイパーループ」開発に着手

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▼ インドネシア閣僚の強力な陣容。特にムリヤニ氏に期待したい
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インドネシアのジョコ大統領は先月27日、経済関連を中心に閣僚級の13人を交代させる
大規模な内閣改造を実施しました。
これは世界銀行専務理事のスリ・ムルヤニ・インドラワティ氏を財務相に登用するなど
経験豊富な人物をそろえたのが特徴。成長率が鈍化している国内経済のてこ入れを図る考えです。

私はジョコ大統領には全く期待していませんが、今回の閣僚人事は驚くほどの陣容だと感じました。
例えば、治安閣僚を歴任した有力退役軍人ウィラント元国軍司令官が治安調整相、
世銀専務理事のスリ・ムルヤニ元財務相が再び財務相に返り咲きました。
他のメンバーを見ても、かなり強力な布陣です。
ジョコ大統領は頼りないだけに、これくらいの思い切ったことをやらないとインドネシアはやっていけないでしょう。

特に期待したいのは、ムリヤニ氏です。
第1次ユドヨノ政権下では財務相として、税収増や税関の汚職追及などに着手しました。
公務員の汚職を避けるため給与水準を引き上げるなど改革を進めましたが、
経済界から疎まれて追放される形になりました。
しかし、ムリヤニ氏の優秀さは世界が知るところであり、世銀の専務理事に就任しました。
極めて優秀な人であり、アジア人としての誇りでもあります。
その人物が戻ってくるとなって、どのくらい鋭い切れ味を見せてくれるのか、期待したいと思います。


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▼ 問題が表面化してきた中国のインフラ投資
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日経新聞は先月28日、インドネシア初の高速鉄道が着工して7月末で半年がたつと紹介。
中国企業とインドネシア国有企業の合弁会社が建設を進めているものの、
土地収用や事業許可が進まず、中国の銀行からの融資もまとまらず、
資金不足にもあえいでいると指摘しています。
対中姿勢の微妙な変化を背景に、ジョコ氏が見直しを宣言する可能性もゼロではないとしています。

このような事態を招いたのは、ジョコ大統領が日本を出し抜くような形で、
日本から提示された設計図を全て中国に渡してしまったためです。
私がジョコ大統領に期待できないと感じる一例です。

結局、中国からお金が回って来ず、土地の収容もうまくいかないままです。
再来年には完成予定ですが、いまだにブルドーザーが一部地域の整地作業を進めているにすぎず、
予定に間に合うとは到底思えません。
中国側もすでに熱が冷めてしまって、知らぬ存ぜぬを決め込んでいる様子です。

中国のインフラ輸出案件を見ると、総じて上手くいっていません。
メキシコ、タイ、インドネシア、米国、ベネズエラ、ミャンマー、
英国、スリランカなどを相手に、鉄道・発電所・港湾施設を請け負っていますが、
その多くはおそらく上手く行かないだろうと思います。

中国主導の「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に日本も乗っかるべき、
という意見も未だに耳にしますが、こうした事例を見てもインフラ投資というのは
それほど簡単なものではないとわかります。

その具体的な事例が次々と表面化しつつあります。


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▼ マレーシア高速鉄道受注には、経済の膨らみをトータルでアピールすべき
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シンガポールとマレーシア政府は先月19日、2026年をめどに
シンガポール─クアラルンプール間を結ぶ越境高速鉄道を開業する方針を確認しました。

年内にも詳細を盛り込んだ2国間協定を結び、
2017年中の鉄道建設・運営会社の国際入札の実施を目指すとのこと。
日本、中国、韓国の受注競争が本格化する見通しです。

これは日本もぜひ受注したい案件の1つです。
もしマハティール氏がいれば、日本が選ばれたでしょうが、
今回は「中国、韓国、日本」の三つ巴の戦いです。
先ほどのインドネシアにおける中国の問題がどれほど影響するか、
ポイントになるかも知れません。

私が日本に期待するのは、経済の膨らみを踏まえたトータルのアピールです。
物理的に350キロを1時間半で結ぶのは簡単に実現できます。
JR東日本ならば、鉄道部分にとどまらず、駅ナカ・駅地下の設計、
Suicaカードを含めて周辺の経済を取り込むところまで提案可能なはずです。

そこまで踏み込んで提案できれば、住民のメリットも大きく、相当なプラス評価だと思います。
全体の経済的な膨らみがどれだけあるのかをアピールできれば、
違う観点からの競争となって日本は優位に立てると思います。

また高速鉄道と言えば、韓国の蔚山科学技術大(UNIST)が、先月21日、
ソウル-釜山間を16分で走ることのできる「夢の列車」開発に着手することを明らかにしています。
「ハイパーループ」と呼ばれる交通システムで、減圧したチューブ内をカプセル状の車両が
空中浮上し進むことで、最高時速1200キロを実現するというものです。

実物の完成目標は5年後、研究費として14億ウォン(約1億3000万円)が投じられる計画ですが、
ネットユーザーからは「こんなものに着手するよりも、今走っている新幹線を日本並みに
定刻通り発着させる方が先だ」と批判や懐疑的な声が上がっています。


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※この記事は7月31日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、インドネシアやマレーシアの情勢に関する話題についてお届けしました。

マレーシア高速鉄道の受注競争が三つ巴の戦いとなっている中、
大前は、日本は「経済の膨らみを踏まえたトータルのアピール」ができれば
優位に立てると解説しています。

このように、自分たちの強みを活かした打ち手をとることは、
問題解決においても重要な姿勢です。
そのためには、市場情勢や競合など、取り巻く環境を理解し、
大きな視野であらゆる可能性を検討していくことが大切です。

そうすることで、自社ならではの、
大きなインパクトが見込める施策の創出につながっていきます。

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