2016年09月30日(金) 

01 今週の 大前研一ニュースの視点

米ヤフー・個人情報流出・米HP・米ゴルフ用品大手 〜米HPが韓国サムスン電子のプリンター事業を買収
米ヤフー 5億人分以上の個人情報流出
個人情報流出 WADA情報流出に「多くの疑問」
米HP 韓国サムスン電子のプリンター事業を買収
米ゴルフ用品大手 米ゴルフスミスが連邦破産法11条適用申請
マリッサ・メイヤー氏が隠蔽していたのなら、大きく自らを傷つける結果になる

米ヤフーは22日、5億人分以上の名前、メールアドレス、電話番号、暗号化された形のパスワードなどの個人情報が流出したと発表しました。
2014年の後半に流出していたとのこと。クレジットカードや銀行口座などの決済情報の流出は確認されていないとしています。
単一サイトからの流出としては史上最大とみられ、同社は特定の国家が支援するグループによるサイバー攻撃とみているとのことです。
私はこの事件によって、マリッサ・メイヤー氏が個人的に大きく傷つく可能性が高いと思います。
7月の時点でこの事実を把握していたにも関わらず、公表しないままベライゾンへのヤフー本体の売却を進めていたのだとすれば、犯罪にも近い非常に汚いやり方です。
ベライゾン側は買収を今年いっぱいでまとめる意向を発表していましたが、この事件によって大きくずれ込む可能性があります。
買収額も約5000億円から、かなり買い叩かれる結果になると予想されます。訴訟社会の米国ですから、今後立て続けに個人訴訟が起こってくると思います。それを誰が負担するのか、という大きな問題が残ります。
グーグルからヤフーへ移ってきたマリッサ・メイヤー氏でしたが、大きな貢献も出来ないままに、ベライゾンへヤフー本体を売り飛ばして終わりました。
その上、意図的に今回の事実を隠蔽していたとすれば、個人的に大きく傷つく結果になっても致し方ないでしょう。
それにしても、過去の個人情報流出事件を見ても、5億人分という規模は断トツです。
ロシアが要人情報を収集したかったという見方がありますが、最近のロシアはこの方面の動きが非常に活発です。
世界反ドーピング機関(WADA)がロシア系サイバー組織のハッキングを受けて、インターネット上に選手の医療情報が流出した問題について、ロシアのプーチン大統領は16日、「多くの疑問が浮上した」「他の選手が禁じられている薬物を、健康な選手が服用しているようだ。また、深刻な病や障害に苦しんでいる人々が何らかの薬物使用の疑惑をかけられ、パラリンピック出場を禁止された」と述べたとのことです。
ロシアのニュースを見ていると、非常に面白いものがありました。
プーチン氏が米国の選手を一人ずつ取り上げて、どのような薬物摂取をしているのか確認し、ロシアでは同じことをやった選手が出場を禁止された、と事細かく指摘して「二重基準」を批判していました。
「ハッカー行為を賞賛することは出来ないが、これらの事実を前にして欧米社会がいかにロシアに偏見を持っているか詳らかになった」と述べるくらいですから、プーチン大統領の悔しい思いが感じられます。
オリンピックは一部の選手が出場できましたが、パラリンピックはロシアの全選手が出場禁止なったので、悔しい気持ちでいっぱいだったはずです。
サムスンのプリンター事業売却は、事業の選択と集中の意思表示

米ヒューレット・パッカード(HP)は12日、韓国サムスン電子のプリンター事業を買収すると発表しました。買収額は10億5000万ドル(約1070億円)。
HPは複合機技術に強みを持つサムスンを取り込むことで、一段の成長を目指すとのことですが、私には少し疑問が残ります。
プリンター・複写機の事業ではサムスンではなくHPが世界一であり、この方面におけるサムスンの技術力はそれほど高くありません。
むしろ日本のリコーやキャノンのほうが技術的に優れています。
サムスンは技術力を求めて、シャープのプリンター事業を買収するのでは?と言われたこともあったほどです。
もちろん、韓国内でそこそこの売上高はあるので買収する意味はありますが、技術的に欲しいものがあるとは思えません。
逆にサムスンの立場から見ると、何から何まで抱えるのではなく、選択と集中の意思表示をするという意味はあるかも知れません。
サムスンは多くの事業を手がけてきましたが、今は半導体とスマホ事業が頼みの綱。
半導体も好調と不振の激しい業界なので、今は伸びていますが今後を考えると不安が残ります。
プリンター事業を売却したところで、1000億円程度ですから、金額面では大きなインパクトはありません。
事業を「売却」するということに、選択と集中のメッセージを全社員に伝える意味はあるでしょう。
スタープレーヤー不在で、米国ゴルフビジネスは衰退の一途

米ゴルフ用品小売り大手のゴルフスミス・インターナショナル・ホールディングスが14日、米連邦破産法11条の適用を申請しました。
米国では男子ゴルフ界で圧倒的な強さを誇ったタイガー・ウッズのスキャンダルをきっかけにゴルフ人気が低下。競技人口の減少でゴルフ用品の販売が低迷し、米ナイキや独アディダスもこの事業からの撤退を決定していました。
ゴルフは昔ほど盛り上がらない状況に陥っています。ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッズといったスタープレーヤーがいないのが大きな原因でしょう。
また、若い人にとってはプレー時間の長さも影響しているはずです。私自身もかつてはゴルフをやっていましたが、あまりに時間がかかりすぎるので、今はやっていません。
さらに日本のゴルフは、ハーフを終えて食事になり、それからハーフに向かいます。
欧米では食事の前後で1ラウンドずつ回ります。ハーフで終わるのは日本と韓国くらいではないでしょうか。
何だか食事のために出かけているようにさえ感じてしまいます。今の私はバイクやスノーモービルを楽しんでいます。
将来、バイクもスノーモービルもできなくなったら、ゴルフをやってもいいかと考えています。
かつては旺盛を極めたゴルフビジネスが米国で明確に停滞し、関連ビジネスも大きく衰退しつつあるのは、間違いありません。
この記事は9月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、サムスンのプリンター事業売却の話題をお届けしました。
大前は、HPとサムスンそれぞれの立場から、その意図を読み解いています。
ニュースを読む際には、記事の内容をそのまま受け取るのではなく、その背景を考えることが大切です。
その過程を経ることで、世の中で起きている現象の本質を捉える力を養うことができます。

2016年09月23日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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三菱商事・JR九州 〜三菱商事がローソンを主導しても上手く行かない理由

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三菱商事 ローソン子会社化で最終調整
JR九州 JR九州の上場を承認

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▼ 三菱商事がローソンを主導しても上手く行かない理由
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三菱商事が、コンビニエンスストア大手ローソンを子会社化する方向で
最終調整に入ったことが明らかになりました。

三菱商事は、TOB(株式公開買い付け)を通じ、
ローソンの株式の保有比率を現在の33.4%から50%以上に引き上げる方針で、
買収額は1500億円前後になると見られています。

三菱商事にとって、株式の保有比率を引き上げるのは簡単だと思いますが、
その結果、三菱商事が主導してローソンの経営が上手くいくのか、大いに疑問を感じます。

ローソンの経営を立て直した新浪氏は、最初は三菱商事から出向という形でしたが、
最終的にはローソンに転籍しました。
三菱商事から距離を置いてから会社として立ち直ったと言っても過言ではないと私は思います。

三菱商事と言えば、生活、機械、新産業・金融、地球環境・インフラ、
化学品、エネルギー(非資源)、金属(非資源)、エネルギー(資源)、金属(資源)など
様々な事業を展開しています。
これらの事業の中で、特にエネルギー関連のものは巨額な利益を出すこともあります。

三菱商事の良くない癖は、こうした大規模な事業・利益があると、
ローソンのように堅実に成長させていく事業・経営に対して、
著しく重要度が下がることです。

確かに、トップに立つ人物によってはローソンのような経営を
きめ細かく進めることもありますが、総じて言えば、消費者関連ビジネスは得意ではありません。

大きく資源開発に投資して、一気に莫大な利益を上げる(あるいは損失を出す)
というほうが、三菱商事らしいと言えます。

ファミリーマートが合併して、セブンイレブンに並ぶほどの店舗数になって、
三菱商事はローソンに対して危機感を持ったのでしょう。
今回のTOBに対して、ある新聞は「価格が下がり、味が良くなる」ことが
期待できると報じていましたが、私はそんな簡単にうまくいくわけがない、と感じています。

三菱商事が主導することで上手くいくなら、これまでの間にとっくに結果が出ているはずです。

コンビニの売上高を比較すると、セブンイレブンの1店舗当たりの売上高が
圧倒的に高いことがわかります。セブンイレブンの1店舗あたりの1日売上高は約65万円です。

ローソンは約54万円で頑張っていますが、それでも及びません。

実際、一昨年はじめてセブンイレブンが四国に進出したとき、ファミリーマートなど
他のコンビニをやっていた人がセブンイレブンに乗り換えたら、それだけで売上が倍増したそうです。
セブンイレブンのブランド・商品力は、頭一つ抜けています。
1つ1つの細かい商品の違い、その積み重ねです。

ローソンの経営の舵取りをするということは、こういうきめ細かい点まで考慮する必要があります。

これができるかどうかは携わる人物次第でしょうが、
IT関連事業でさえも上手くいかない三菱商事ですから、
ローソンにとっては必ずしもいい方向ではないと思います。

とは言え、三菱商事が持っている食品卸関連事業などは大いに役に立つでしょうから、
ローソンは三菱商事と離れすぎても良くないと思います。

上手く三菱商事の持つ資産を活用することです。


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▼ JR九州は、鉄道事業以外でここまでできる、という良い見本
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東京証券取引所は15日、JR九州の上場を承認しました。
これによりJR九州は、10月25日に市場1部または2部に上場する見通しです。

想定される時価総額は3900億円と見込まれ、
今年の国内案件では「LINE」に次ぐ大型上場となる見通しです。

JR九州、JR四国、JR北海道は、本州の3社(JR西日本、JR東日本、JR東海)に比べて、
かなり不利な状況にあり、赤字路線が多いのが現状です。

赤字幅は小さくなっているものの、運輸事業は非常に厳しい状況で、
JR九州にとっても、まず手を付けるべきは赤字路線の整理になると思います。

JR九州の場合には、外食、流通など他の事業で成果を出していて、
特に駅ビル・不動産の開発事業は上手くいっています。JR博多駅など好例でしょう。
阪急や東急ハンズがテナントに入り、上層階は会議室としての貸出など
ビジネスユースにも対応しています。
今度は大阪・船場地区の「帝人ビル」の土地を取得するとも報じられています。

鉄道事業は赤字ですが、全撤廃するのは住民サービスの観点から望ましくありません。
できる限り赤字幅を抑えながら、こうした駅ビル・不動産事業の圧倒的な収益源を、
さらに大きくしていくのが良いでしょう。

中曽根元首相の頃に始まったJRの改革は、このJR九州で4社目の上場になります。
JR九州は、JR四国・JR北海道と共に不利な立場でしたが、
ひたすら事業戦略を磨いてきて、ここまで辿り着きました。

組合のストライキですぐに電車が止まっていた時代から、よくここまで変革してきたと思います。
特にJR九州は懸念されていました。今回、国からの借入も取り込んだまま上場しますが、
国としても上場後に売却すれば、それなりの売却益が出るでしょうから悪い話ではないと思います。

JR四国、JR北海道も同様に期待したいところですが、前途多難な状況です。
北海道は市場規模が小さいのが難点です。
四国は市場規模としては何とかなりそうですが、全体としてのまとまりがないのが課題です。

九州は「福岡」、北海道は「札幌」と中心が決まっているのに対して、
四国は「松山」「高松」「徳島」「高知」それぞれが中心だと思っているので、
四国全体としての戦略を作るのが難しいと私は感じています。

JR九州は、鉄道事業以外でここまで成果を出せる、という良い見本です。
JR四国、JR北海道も簡単なことではないと思いますが、ぜひ参考にして欲しいと思います。


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※この記事は9月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、三菱商事によるローソン子会社化への動きをご紹介しました。

きめ細かな取り組みの積み重ねによって売上高を伸ばしたセブンイレブン。
大前は、三菱商事に同社のような経営ができるか疑問を呈しています。

ライバル企業との競争に勝つためには、
描いた戦略を徹底的に実行できる、組織の力が求められます。

では組織の実行力はどう高めればよいのでしょうか?

それは決して容易なことではありません。
自社の強みだけでなく、弱みも含めて、現実に徹底的に向き合うことが必要です。

そうすることで、組織の現場のどこに課題があるかが分かり、
ケイパビリティを高めることにつなげることが出来ます。

2016年09月16日(金) 
新型iPhone・地域活性化・ベネッセHD 〜ウーバーは日本敗北宣言
タカタ 候補企業の一次入札実施へ
新型iPhone iPhone7を16日発売
任天堂 アップル発表会で放った「3本の矢」
NTTドコモ 勝者なき「後ろ向き」の紛争
地域活性化 ウーバー、京都で始動
ベネッセHD 安達保氏が社長就任へ
タカタのスポンサーになる企業は、どこまで補償責任を負うのか?

相次ぐエアバッグ事故で経営悪化が懸念されているタカタが、再建スポンサーとなる候補企業の一次入札を今月19日に実施することがわかりました。
スポンサーはこれまでの選定で絞られており、ダイセル、米KKRなど7社が参加する見通しとのことです。
1兆円以上の補償費用が発生すると言われています。
現在、リコールについては車メーカーが支払いをして対応していますが、最終的にどのような形で落ち着くのか、まだわからない状況です。
よくこの不明瞭な段階でスポンサーとして手を挙げられるものだと思います。最終的には、スポンサー企業が全てを負担するとなると、誰も引き受けてくれないでしょう。
iPhone7のフェリカ対応には、スマホらしさを期待したい

米アップルは7日、iPhone7を16日に発売すると発表しました。
耐水性を高めたことやカメラ機能を強化したほか、日本で発売される端末に限りフェリカを搭載するのが特徴です。
発表会には「マリオの父」である任天堂の宮本茂氏が登壇し、iOS向けアプリ「スーパーマリオラン」を発表するサプライズもありました。
日本の立場からすれば、フェリカの搭載は利便性があると思いますが、私としてはもう1つ工夫が欲しいと思います。
単にクレジットカード決済ができるだけならば、すでにアンドロイド端末に先行されている状況ですし、せっかくなら「スマホらしさ」を求めたいところです。
例えば、銀行口座にアクセスして普通預金から資金移動できるようにするとか、月末まで待って引き落としを可能にするとか、スイカ用に1万円以上チャージできるようにするとか、色々と考えられるはずです。
フェリカには対応できる能力があるので活用すべきです。
クレジットカードを前提にして考えるだけでは効率が悪いこともありますし、スマホらしい使い方を考えてもらいたいところです。
日本向けにはフェリカ対応で利便性があがるiPhone7ですが、米国の専門家からかは「アップルはイノベーションがなくなった」と酷評されています。
本業復帰の任天堂、今後の業績にも期待。

東洋経済オンラインは9日、「任天堂がアップル発表会で放った「3本の矢」」と題する記事を掲載し、任天堂がiOS向けに3つのアプリを配信することを明らかにしました。
1つ目は「スーパーマリオラン」で定番ジャンルに新風を起こし、「ファイアーエムブレム」は壮大な人間ドラマがシェアを巻き起こし、3つ目の「どうぶつの森」はポケモンよりスマホに向いているかもしれないと、3本の矢の威力について解説しています。
ようやくディー・エヌ・エーとの提携が功を奏してきました。
任天堂はスマホには臆病でしたが、手がけてみれば、想像以上に昔から持っている素材・コンテンツが「当たり」だったということでしょう。
ファイアーエムブレムも、スーパーマリオも、スマホの縦型のスクリーンに見事に対応しているようです。
実際の販売状況を見守る必要はありますが、基本的に「スーパーマリオ」「ポケモン」が商売の種になるのは、任天堂にとって本業復帰であり良いことだと思います。
NTTドコモが大型買収・提携の失敗を繰り返す理由

日経新聞は、9日「ドコモとタタ、勝者なき「後ろ向き」の紛争」と題する記事の中で、NTTドコモとインド最大財閥タタ・グループの提携解消を巡る紛争がもつれにもつれていると紹介しています。
過去にもNTTドコモはいくつか大きな買収・提携の失敗をしていますが、その苦い経験を日本企業は伏せようとし、同じ失敗を繰り返してしまいます。
経営者が代わってしまい、経験を糧とできないのです。
また、投資銀行の口車に乗ってしまうという側面もあるでしょう。
三公社五現業のような会社の経営者の場合、資金に余裕ができたとき、投資銀行から話を持ちかけられてプライベートジェットでお出迎えされたりすると、舞い上がってしまい冷静な判断ができなくなります。
NTTドコモの場合、タタ・グループとの提携について、どこに問題があったのか?
インドの携帯電話市場は確かに成長していましたが、すでに参入しようとしたときには強者が決まっていました。
ドコモとタタ・グループが組んだところで、7番目のポジションから上がれず、喧嘩別れに終わってしまったということです。
ウーバーは日本敗北宣言/ベネッセの課題は収益の落ち込みの激しさ

過疎対策や教育格差の是正など地方の課題解決に、インターネット企業が取り組む事例が増えています。
京都府では、NPO法人が配車アプリ大手の米ウーバーテクノロジーズの技術を採用して、スマートフォンを使った有償の運送事業を開始するなど新たな動きが広がっています。
これは一言で言えば、日本における「ウーバーの敗北宣言」です。
ウーバーの脅威に対して、日本交通などを中心に複数のタクシー会社が同じシステムを使うようになりました。
この結果、運転手をお金で買うようなことをしてもコストに見合わず、ウーバーとしては入り込めない状況になりました。
地域活性化は、本業として入り込めないウーバーとしての「敗北宣言」に他なりません。
* * *
ベネッセホールディングスは9日、10月1日付で福原賢一社長の後任に米カーライルの日本法人会長を務めている安達保取締役が就任する人事を発表しました。
ベネッセの問題は、売上の落ち込みよりも、収益の落ち込みが激しいことです。
これまで収益の源泉であった国内教育事業のボリュームが低下し、ほとんど収益がなくなってしまいました。一方で介護事業などは伸びています。
安達氏は元マッキンゼーの方で私もよく知っています。売上ボリュームよりも、収益の落ち込みが激しいという課題を解決できると思います。期待したいところです。
この記事は9月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、米ウーバーテクノロジーの新しい動きをご紹介しました。
このニュースを、日本における「ウーバーの敗北宣言」であると、大前は読み解いています。
ニュースを読む際には、記事の内容をそのまま受け取るのではなく、その背景を読み解くことが大切です。
「なぜ、そうなったのだろうか?」「それは、何を意味するのだろうか?」日ごろからの訓練を繰り返すことで、世の中を俯瞰的に、かつ、深く見る眼が養われていきます。

2016年09月09日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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完全失業率・金融政策 〜いい加減、金利やマネーサプライで景気刺激ができるという認識を改めよ

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完全失業率 雇用加熱、さえぬ消費
金融政策 金融緩和では止められない成長力の低下

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▼ アベノミクスは、前提としている経済認識がすべて間違っている
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日経新聞は先月30日、「雇用加熱、さえぬ消費」と題する記事を掲載しました。
総務省が発表した7月の完全失業率は3.0%と前月から0.1ポイント下がり、
21年2カ月ぶりの低水準となりました。

それでも7月の実質消費支出は前年同月より0.5%減少しており、
雇用増がパートなど非正規労働や低賃金の仕事に偏り、家計の財布の紐が緩まず、
消費に結びつかない現状としています。

日本のように完全雇用に近い状況で、お金をばら撒いて景気刺激をするという
経済理論は世界中を見渡しても例がありません。
そんなことをしても、インフレになるだけで効果はないからです。

日本の場合には、低欲望社会で高齢者がお金を溜め込んでいるため、
インフレにすらなりません。アベノミクスで28兆円ものお金をばら撒いて、
景気刺激を試みている理由が私には理解できません。

失業率は下がり続け、有効求人倍率は上がっています。
日本は雇用に対してはタイトな状況だと言えるでしょう。

パートやフルタイム以外で働く人が増え、これがクッションになっていますが、
この点は世界中どこの国でも同じです。

そのような状況で、実質消費支出は対前年比で下がり続け、
消費物価指数も下がっています。

日本経済の特徴は、どこが悪いというわけではないものの上がっていかない、
ということです。これは、安倍首相が考えているような「金利」「マネーサプライ」
ではないところに、景気が上向かない本当の理由があるからです。

日本には1,700兆円の個人金融資産が眠っています。
しかし、将来への不安からこのお金がマーケットに出てきません。
給料を上げても、不安のほうが勝ってしまうのです。

日本の経済政策として第1に考えるべきなのは、
この1,700兆円のお金が出てくるようにすることであり、
「賃上げ」でも「非正規雇用の正規化」でもありません。
アベノミクスの前提になっている経済の認識はすべて間違っているのです。

安倍首相の周囲にいる人の中に1人でも理解できる人がいれば、と思います。
また彼らの多くは「株価が上がれば景気がいい」と思い込んでいますが、
これもとんでもない認識間違いです。

例えば、社員をどんどん解雇して企業収益を上げれば株価はあがりますが、
それで景気は良いことになるでしょうか?

株価と景気は関係ありません。
安倍首相を含め、絶望的に現状認識が間違っていると思います。


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▼ いい加減、金利やマネーサプライで景気刺激ができるという認識を改めよ
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そして、残念なことにこの認識間違いをしている人は日本だけではありません。
世界の中央銀行首脳らが集まる国際経済シンポジウムで、
低成長・低インフレで苦戦する中銀の政策限界論をめぐり、激論が交わされたと紹介。

経済の勢いが構造的に弱まっている時には、
金融政策が効果を発揮しにくいことが浮かび上がったとし、
各国政府はこうした金融政策依存に陥らないよう
潜在的な成長力を引き上げる方策に全力をあげるべきとしています。

私に言わせれば、私の本を一冊でも読んでくれれば話は終わるはずです。

昔の経済理論のままで、「どうもうまくいかない」と悩んでいる人たちばかりです。
金融緩和では成長力の低下を止められない、とのことですが当たり前です。
成長力というのは、人が増えている、人が育っているといったことを意味するはずです。

将来に対して期待が持てて、この国は良くなっていくと思えば、
放っておいても勝手に設備投資をするものです。

かつての日本で言えば、金利が5%でもお金を借りて設備投資をしていました。
逆に、そういう期待感がなければゼロ金利であっても投資はしないのです。

潜在成長力を引き上げようとスローガンを掲げても、
日本のような国では投資する理由にはなりません。

30歳でも将来に不安を感じて貯金をし、60歳でも不安で、80歳になっても
いざというときのために貯金をしている国民です。

大仰なスローガンを掲げるよりも、政府が老後の面倒はすべて見るから心配ない、
と言えればそれだけで解決します。

日本の経済学者も、そして米国からやってきたクルーグマン氏でさえ、
この現実が見えていません。

日本の現実にとって重要なのは、マクロ経済ではなくミクロ経済です。
個々人の財布がどうなっているのかを見て感じられなければ、
一向に問題は解決しないと思います。


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※この記事は9月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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大前は、アベノミクスの前提になっている経済の認識は
すべて間違っていると述べています。

では、正しい認識を行うためには、何が重要なのでしょうか?

それは、経済学者の発言やニュースの情報などを鵜呑みにするのではなく、
ファクトをもとに自分の頭で論理的に考え、世の中の動きを読み解くことです。

そうすることで、いま、本当に取るべき問題解決策が見えてきます。

2016年09月02日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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三菱地所・出光興産・サウジアラビア情勢 〜丸の内の開発に欠けているのは、賑やかさ・親しみやすさの演出

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三菱地所 純利益274億円
出光興産 出光問題が踏み越えたレッドライン
サウジアラビア情勢 サルマン副皇太子が来日へ

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▼ 丸の内の開発に欠けているのは、賑やかさ・親しみやすさの演出
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三菱地所が先月4日に発表した2016年4〜6月期連結決算は、純利益が前年同期比18%増の274億円でした。
賃貸住宅などの保有物件の売却益が寄与し、また新規稼働したオフィスビルも貢献したとのことです。

決算の数字は良かったとのことですが、株価は冴えない状況が続いています。
三菱地所は丸の内に固執し過ぎていて、かつそれほど大胆なことをしないのが特徴です。
今後、多くのスペースを必要とする予定もないので、期待値という意味で上限が見えてしまうのでしょう。

三菱地所は丸の内仲通りの再開発を行い、商業施設をオープンさせ、
飲食店や小売店を入れるなど、サラリーマンが会社帰りに立ち寄れる空間への転換を図りました。

しかし、ここには例えば新橋烏森通りのような賑やかさ、ざわざわ感がありません。
どこかよそよそしい印象を受けます。
また、目的のお店を目指して行く人はいるかも知れませんが、
それこそ新橋のようにそぞろ歩きしている人が圧倒的に少ないのも特徴です。

盆踊りを開催するなど盛り上げようという気持ちは感じますが、
憩いの場と称して「ソファ」を置いてしまうあたりは、どこか「ズレ」ていると思います。
屋台とまでは言いませんが、もう少しざわざわする感じを演出するようにしたほうが良いでしょう。
八重洲地下街のほうがよほど賑やかさを感じます。

外国人で皇居に向かう人の多くは、徒歩であの辺りを通っていると思いますが、
土日と夜は死んだも同然の雰囲気です。彼らに訴求する力が弱すぎます。
せっかくの一等地なのに、非常にもったいないと思います。

三菱地所には、賑やかさや親しみやすさを演出する能力を身につけてもらいたいところです。


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▼ 出光創業家は顔を洗って出なおすべき。サウジアラビアの重要性を理解せよ。
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日経新聞は、先月22日「出光問題が踏み越えたレッドライン」と題する記事を掲載しました。

出光創業家が昭和シェルとの合併に反対している問題は、
当事者が考える以上に根の深い部分に踏み込んでしまったと指摘しています。

6月末、創業家が公開した文書に対してサウジアラビアの国営石油会社・サウジアラムコが
怒っているとの観測が石油関係者の間に広がったとし、
日本への石油輸出の扉を閉じさせる状況を放置するのは石油会社にとって自殺行為だとしています。

この指摘はまさにその通りで、創業家が「ウチはイラン系の会社」だと述べたのは大きな間違いです。

創業当初イランから輸入したのは事実でしょうが、
今現在の輸入元はサウジアラビアのアラムコが約40%で、イラン系はわずか1%に過ぎません。
この状況で、自分たちはイラン系列だからと異議を唱えても、何も説得力はないでしょう。

日本全体の原油輸入先で見ると、1位:サウジアラビアで30.7%、
2位:UAE:22.7%、3位:カタール:13.0%と続き、イランは6位で4.6%です。
日本にとっても、サウジアラビアがどれだけ重要な存在であるか、理解できるでしょう。

そして、サウジアラビアとイランは犬猿の仲です。
サウジアラビアはスンニ派の盟主であり、一方のイランはシーア派の盟主です。
IS問題を含め、両者は平行線をたどっています。
そういう状況を理解せず、わずか1%しか輸入していないのに「イラン派」と
表明してしまうのは軽率過ぎます。反対するならば、他の理由をたてるべきでした。

現在はアラムコに足を向けて寝られないほど依存している状況です。
創業家の発言が英語になって現地に伝わってしまうのは大きなマイナスだと思います。

そして、このようなタイミングでサウジアラビアのサルマン副皇太子が来日します。

政府は先月24日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が
8月31日〜9月3日に来日すると発表しました。
滞在中に天皇陛下と会見するほか、安倍晋三首相と会談する予定とのことです。

サルマン副皇太子は、脱石油を含めて、現在のサウジアラビア全体の舵取りを担っている人物です。
国王からの信頼も篤く、絶大な権限を持つ人物です。
油の問題やサウジアラビアの将来において最も重要な人物の1人でしょう。

来日に際しては、日本も安倍総理に加えて天皇陛下が会見するというのも頷けます。
通常、天皇陛下が副皇太子に会うことは少ないはずですが、
日本側も重要性を理解しているということです。

こうした状況、事の重要性を理解して、出光の創業家は顔を洗って出直したほうが良いでしょう。
私は何度か指摘したことがありますが、浜田氏は少々出すぎたことをする傾向があります。

サルマン副皇太子は日本のアニメが好きだということで、
根本的には日本に対して悪感情は抱いていないはずです。
今回の件で憤りを覚えていないことを願いたいと思います。


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※この記事は8月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、三菱地所の話題をお届けしました。

三菱地所に対し、賑やかさや親しみやすさを演出する能力が
欠けていると指摘した大前。

その提案は、自らの体験に基づいたものです。
体験により自ら直接得ることのできる1次情報は非常に貴重です。

街を歩きながら、世の中のニーズをいかに発見するのか。
新しい兆しを把握するためには、世の中を観察する力が求められます

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2011年01月 02月 03月 04月 05月 
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