2016年10月28日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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タカタ・イオン・百貨店提携 〜資本業務提携を発表

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タカタ 出資の前提として法的整理を提案
イオン 最終赤字53億円
百貨店提携 資本業務提携を発表

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▼ タカタ再生の道。スポンサー企業と自動車メーカーの対立する利害
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相次ぐエアバッグ事故で経営悪化が懸念されるタカタの再建について、
スポンサー企業選びの入札に参加した5グループすべてが、
出資の前提として同社の法的整理を提案していることが先月29日、明らかになりました。

しかし、タカタの取引先で債権者でもある自動車メーカーは
法的整理を回避したい意向を示しており、最終的な再建策の行方は不透明な情勢とのことです。

タカタのリコール費用は数兆円規模になるとの試算があり、そうであれば倒産、
すなわち会社更生法を適用するほかありません。

しかしそうなると困るのが、自動車メーカーです。
法的整理を受け入れたタカタが責任を免れる一方、自動車メーカーが責任を追うことになります。
自動車メーカーとしては、あくまでタカタに矢面に立ってもらい、
後方支援する立場を取りたいところでしょう。

逆にタカタの買収を検討している企業からすれば、
会社更生法を適用し全ての株主も失って、ゼロの状態から始めたいはずです。

その上で、世界40箇所にある製造工場や販売会社など
タカタの資産を有効に活用する方法を見出したいところです。

自動車メーカーとしては苦しい立場です。
このまま放っておけば、タカタは会社更生法を適用し倒産するしかありません。
民事再生を望む声もありますが、現状を見る限り、非常に可能性は低いと私は見ています。

自動車業界の大きな動きとして、トヨタ自動車とスズキは12日、
業務提携に向けた検討を始めると発表しています。

環境や安全、ITなどの分野で経営資源を持ち寄り、
開発スピードを上げ、競争が激しくなる自動車業界での勝ち残りを目指すとのことです。

スズキの持つ軽自動車市場への強みもありますが、
トヨタにとって一番のメリットはインド進出でしょう。

スズキはインドで最大シェアを持っています。
インドの自動車市場は巨大であり、まだ成長段階にありますから今後に期待できるでしょう。

ただし、スズキの鈴木修会長は非常にプライドが高く、
これまでに提携してきたGMやVWとはことごとく上手く行かずに手を切っています。

トヨタとしては鈴木修会長の性格は百も承知でしょうから、急いで事をすすめる意思はないと思います。
ゆっくりと構えて、今は将来のための技術提携から始める、というスタンスだと思います。


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▼ 総合スーパー、百貨店の低迷。イオン、セブン&アイの打開策とは?
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イオンが5日発表した2016年3〜8月期の連結決算は最終損益が53億円の赤字でした。
集客力を高めるため、大規模な店舗改装に踏み切りましたが、
費用の負担を吸収しきれなかったことが原因とのことです。

イオンのセグメント別業績を見ると、GMS(総合スーパー)が大きな赤字を出しており、
ディスカウントストアーは利益が出るようになってきているのがわかります。

全体的には、ディベロッパー、銀行などの金融ファイナンスといったモール事業で利益を上げています。
しかしその中にコンビニがなく、ここがセブン&アイとの大きな違いと言えます。

イオンの大株主である三菱商事がローソンの直接支配を始めていることもあり、
今後イオンの中にローソンを取り込んでいく可能性もあると私は見ています。

GMS(総合スーパー)では主体的な販売業が伸びることは構造的に難しいですし、
少子化の時代背景を考えればなおさらです。

三菱商事が主体になって、ローソンとイオンを一緒に、
できれば合併も視野に入れて考えても良いと思います。

* * *

セブン&アイ・ホールディングスとエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)は6日、
資本業務提携すると発表しました。
株式を相互に持ち合うほか、苦戦が続く関西地区の百貨店事業で協力する方針です。

H2Oは、特に旗艦店の梅田店を筆頭に阪急百貨店の収益性が高くなっています。
H2Oは百貨店事業において高島屋と経営統合を図っていましたが上手くいかず、中止になったままです。

今回の提携は経営統合ほどのものではなく、もう少しライトなものです。
セブン&アイの中でも、まずはそごう・西武の有力な3店舗をH2Oにお願いする形でしょう。
関西ドミナント戦略を進めているH2O・阪急百貨店の調子は良く、
その勢いのままに三宮・神戸近辺を任せる流れだと思います。

百貨店業界全体の傾向としては落ちてきているので、
このような合従連衡は今後も必要になってくるでしょう。


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※この記事は10月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、GMS(総合スーパー)と百貨店を中心とした
小売業界についての話題をお届けしました。

今回の事例のように、自社の戦略を描く際は、
既存の自社リソースを活用するだけでなく
外部との連携も視野にいれる必要があります。

市場環境が厳しくなる中で、自社がいかに生き残っていくのか?

単一事業の戦い方だけでなく、複数事業を組み合わせた展開など、
経営者の視点で次の一歩を考える力が求められます。

2016年10月21日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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人工知能・米ヤフー・アジア主要企業 〜米有力5社が新団体設立

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人工知能 米有力5社が新団体設立
米ヤフー 「ヤフーメール」全ユーザーの受信内容監視に協力
アジア主要企業 カリスマ経営者、時価総額高める

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▼ 人工知能(AI)が与える未来とは?旅行業界への打撃を懸念
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グーグルを傘下に持つ米アルファベット、米アマゾン・ドット・コム、
米フェイスブック、米IBM、米マイクロソフトの5社は、先月28日、
人工知能(AI)の普及・啓蒙に向けた新団体を設立すると発表しました。

AI技術の進歩が加速し、様々な製品やサービスに広がるなか、
AIに関する人々の理解を深め、安全を確保するための共通の指針づくりに取り組むとのことです。

今後AIが与えるであろう影響を考えても、この連合体は非常に重要な役割を持つと思います。

シンギュラリティ(技術的特異点)について、グーグルの研究者は
「2045年には人間自身が未来を予測できなくなる」という仮説を発表しています。

その仮説によれば、その時点で人工知能(AI)が人間の能力を超える、ということです。
ナノテクノロジーサイズの人工知能も登場し人間と一体化していく、とのことです。

これが事実だとすれば、そのとき「学校」はどのような役割を担うべきか?
あるいは、そもそも人間とは何か?ということが問われることになるでしょう。

そのような事態にはならないという人もいますし、
同じような未来がもっと早いタイミングで訪れるという人もいます。

いずれにせよ、AIはあらゆる産業や生活に影響を与えていくのは間違いありません。
日本も受け身の姿勢ではなく、ぜひオリジナルな研究を進めて欲しいところです。

ビッグデータやAIの影響で、5年〜10年後にはブルーカラーの仕事だけではなく、
ホワイトカラーの仕事も10分の1になってしまうと言われています。

このとき、逆に人手不足になっているのは、
工事現場などのAIではカバーできない部分でしょう。

デスクワークばかりしていた人が、工事現場に出て仕事をすることはないでしょうから、
ここが課題になると私は見ています。

また、今プレイステーション4で大フィーバーになっているVR(仮想現実)は、
今後ゲーム以外の分野での展開が見込まれます。

ゲームでの熱が冷めて落ち着いたとき、私が一番期待しているのは「旅行」での活用です。
VRを使うと簡単に世界旅行を体験することができます。

味覚まで再現することはできませんが、
ビデオや映像どころではない「体験」は大いに需要があると思います。

ノルウェーのフィヨルドやアルプス山脈など、
高齢者の方でも気軽に旅行気分を味わえるようになるでしょう。

ただ、VRには身体的な影響について懸念もあります。
癲癇を誘発する、目に異常が出ることがあるとも言われています。
新しい技術だけに、人体への影響を考慮して体の機能を損なわないようにすることは
第1に考えなくてはいけないでしょう。


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▼ アジアは、フォードなどを筆頭に飛躍した米国と同じ成長段階に入った
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米ヤフーが米情報機関の要請を受け、「ヤフーメール」の全ユーザーの
受信内容の監視に協力していたことが明らかになりました。

ネット企業によるアカウントを限定しない大規模な監視は前代未聞。
同社が進めている米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズへの
事業売却手続きに影響が出かねないとの懸念も広がっています。

株主にもベライゾンにも何も伝わっていなかったということです。
今後の訴訟も考えると、これは大変な問題です。
マリッサ・メイヤー氏は、再びヤフーに泥を塗る形になりました。

不甲斐ない米ヤフーの失態が明るみに出る一方で、アジア企業の成長が著しく、
時価総額が大きく成長しています。
日経新聞は1日、「カリスマ経営者、時価総額高める」と題する記事を掲載しました。
アジアの主要上場企業「Asia300」が2000年以降に増やした時価総額を見ると、
カリスマ経営者の独創的なサービスの創出や巨大組織の新陳代謝を促す変革力があったと紹介しています。

中国のテンセントがアリババを抜いて、時価総額でアジアトップに躍り出ました。
中国のテンセント、中国平安保険、百度。そして韓国のサムスン電子に、台湾のTSMC。
これらの企業が大きく時価総額を伸ばしています。
創業者個人のキャラクターが目立ち、長期間経営に携わっているのが特徴です。
リーダーシップが発揮しやすいという反面、サムスン電子のように後継者が決まらない
という問題に発展することもあります。

アリババを抜いたテンセントは、スマホ向けアプリ「微信(ウィーチャット)」の
利用者が11億人規模に達しており、企業としても非常に大きな力を持つに至りました。

テンセント創業者の馬化騰など、まさに立志伝中の人です。
米国でも、フォードやエジソンといった名前が広まって、国が成長した時代がありました。
アジアも同じような時期を迎えているのだと思います。


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※この記事は10月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は人工知能(AI)についての話題をお届けしました。

大前は、AI技術の進歩が加速する中、
今後AIが与える影響と課題について解説しました。

取り巻く環境の変化に対し、理解を深め、
常に最新情報にアンテナを張ることは、
問題解決を行うにあたっても重要なポイントです。

特に、新たな技術が次々と現れてくる現代のビジネス環境では、
受け身ではなく自ら情報を取りにいき
時代を先読みすることで新たなチャンスを発見することができます。

2016年10月14日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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金融政策・フィンテック・世界金融市場 〜今さらインフレ期待を持ち出す黒田総裁の感覚は、かなりズレている

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金融政策 新たな金融緩和の枠組み導入
フィンテック 「もう1つの戦い」が映す邦銀フィンテックの死角
世界金融市場 市場が怯える「ABCDショック」
米ウェルズ・ファーゴ 口座無断開設問題で2度目の議会証言

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▼ 今さらインフレ期待を持ち出す黒田総裁の感覚は、かなりズレている
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日銀は9月21日に開いた金融政策決定会合で、
長短金利を誘導目標とする新たな金融緩和の枠組みを導入することを決定しました。

異次元緩和の導入から3年が経過し、日銀は金融政策の総括的な検証を実施。
物価上昇率2%の実現のためには、大胆な枠組みの変更が必要と判断したもので
今後必要な場合にはマイナス金利の深掘りなども実施する考えを示しました。

日銀の黒田総裁は、自らの政策に自信をなくしてしまったのでしょう。
「量」から一転して、「金利」や「イールドカーブ」といった言葉が出てくるようになりました。

その上、インフレ期待の状況を作り出したいと述べ、
将来モノの値段が上がるとなれば、消費者が今買ってくれるのではないかと見解を示しています。

私はこの発言を聞いて、驚いてしまいました。これは100年前の発想です。
世界でも例を見ない領域に突入している日本経済に適用できると本気で思っているのでしょうか?
さらには、10年国債について0%程度に誘導するようにイールドカーブコントロールを
行うとのことですが、はなはだ疑問です。

これまで何もコントロールできなかった日銀が、こんな難しいことをできるとは到底思えません。

そもそも、なぜアベノミクスが機能しなかったのか?

何度も述べてきたように、本質的な問題は低欲望社会にあります。
供給は旺盛でも、人はモノを欲しいと思っていないのです。
インフレで将来の物価があがると言われても、今の日本人にそれほど「今、欲しい」と
思うものがあるでしょうか?

世界中には日本の金融政策が機能するところもあるでしょうが、
今の日本ではむずかしいということはこれまでの事実が証明しています。

もっとこの点を深掘りして、本質を見極めて欲しいところです。
今さらインフレ期待を持ち出すなど、黒田総裁の感覚はこんなにズレていたのか?
と情けなくなります。


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▼ 日本にフィンテックが育ちにくい理由
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日経新聞は、9月26日『「もう一つの戦い」が映す邦銀フィンテックの死角』
と題する記事を掲載しました。

これは、日銀が金融政策の枠組み修正を発表していた21日の同じ時刻に、
金融庁と日本経済新聞社が主催するフィンテックサミットが開かれ、
日銀の岩下直行フィンテックセンター長が、国内銀行の対応の遅れを指摘した、と紹介。

しかしその背景にはベンチャーなど新規参入者がシェアを拡大しづらく、
競争原理が働かない金融業界を作ってきたことがあるとし、
金融技術が爆発的に進歩する中、日本の金融が競争力を高めるには何が必要か、
まずは日銀が真剣に考える必要があると指摘しています。

日本でフィンテックが発達しにくい原因は、何でもかんでも規制をしてきたためです。
銀行とのやり取りは、すべて全銀システムを通す必要があるなど、
例をあげれば枚挙にいとまがありません。

私に言わせれば、諸悪の根源は金融当局の過剰規制なのに、
よくもこのような発言ができるものだと思います。


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▼ 米国、ドイツ、中国など、世界経済はどこも手探り状態が続いている
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日刊ゲンダイは先月29日、『市場が怯える「ABCDショック」』と題する記事を掲載しました。
これは、現在の金融市場の懸念はABCDで表されるとする市場関係者の見方を紹介したもの。

リーマン・ブラザーズの負債総額は約70兆円でしたが、
ドイツ銀行はその4倍の260兆円に達すると見られ、Dショックの先には世界危機を上回る
世界恐慌が待っている危険性が高いとしています。

Aはアメリカ(America)におけるトランプ大統領の誕生、
Bは英国のEU離脱(Brexit)、Cはチャイナ(China)の景気減速、そしてDがドイツ銀行です。

トランプ大統領の誕生という可能性は、かなり低くなってきているので、
それほど気にする必要はないかも知れません。

英国のEU離脱問題は、将来的にスコットランドなどがUK(ユナイテッドキングダム)から
離脱する可能性が高く、そちらのほうが深刻です。
そして、中国(チャイナ)の景気減速は、米国バブル崩壊後の1929年の世界大恐慌に
匹敵するような事態を引き起こす可能性があります。これは大きな問題です。

そして、ドイツ銀行の問題。
これは南欧から欧州全体に波及して、かなり面倒なことになると思います。
独メルケル首相は「国は支援しない」と表明し、ドイツ銀行側も自力で解決できると述べています。
しかし年初からすでに株価は50%落ち込んでいます。

ドイツ銀行は、クローバック条項を適用すると数千億円の返金を受け取れるとのことです。
ただ、この数千億円があってもドイツ銀行を救済するには全く足りません。

世界中の銀行がドイツ銀行と深い関係を持っています。
ドイツ銀行に何かがあると、経済が好調なドイツに影を落とすだけでなく、
その影響はかなり大きなものになります。
10兆円、20兆円という規模の金融不祥事のトリガーになるかも知れません。

ドイツ銀行と同様、大きく揺れているのが米ウェルズ・ファーゴです。
スタンプ会長はクローバック条項の適用だけでなく、辞任を強く求められる始末で、
破綻に追い込まれる可能性すらあります。

米ウェルズ・ファーゴといえば、リーマン・ショック後、
もっとも元気があった米国一の銀行です。

その銀行が解体の憂き目にあうかもしれない、という事態に陥っています。

米ウェルズ・ファーゴ、独ドイツ銀行の問題があり、
そして中国経済の危機も存在しています。

米国FRBは今年中にもう1度利上げを行うと発表していますが、
世界中みんなが手探り状態で、あまりいい状況とは言えません。


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※この記事は10月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は金融政策についての話題をお届けしました。

新たな金融緩和の枠組みを導入すると発表した日銀。
大前は、これに対して日本の本質的な問題を見極めるべきだと主張しました。

問題解決者への第一歩として、本質が何かを問い続ける姿勢は、
常に持っていなければならないものです。

問題が発生した場合も、
「なぜ」を繰り返し考え続けることが重要です。

今回の大前の視点も、「そもそもなぜアベノミクスが機能しなかったのか?」
を考えることから始まっています。

2016年10月07日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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成田空港・傾斜マンション問題 〜新滑走路を作ったところで成田空港が上向かない理由

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成田空港 新滑走路建設案を了承
傾斜マンション問題 傾いていない棟も含め全4棟の建て替えを決議

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▼ 新滑走路(第3滑走路)を作ったところで成田空港が上向かない理由
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国と成田国際空港会社、千葉県、地元自治体で構成する「四者協議会」が開かれ、
空港の南東側に長さ3500メートルの新滑走路(第3滑走路)を建設する案が了承されました。

また、夜間の飛行制限時間帯も短縮する方針も確認され、
今後本格的な協議を経て合意した後、具体化に向けた手続きに着手する方針です。

今さら3500メートルの滑走路を作ることができるなら、今まで何故着手しなかったのか?
これまで成田空港の問題として取り上げられたことは何だったのか?という気持ちになります。

しかも、夜間の飛行時間もわずか4時間増えるだけ(午前1時〜5時)という中途半端さ。
世界の主要な空港は、当たり前のように24時間体制です。

もともと成田空港の建設にあたっては、
「羽田空港の拡張」「東京湾の真ん中に新空港建設」「成田に新空港建設」という3つの候補がありました。

東京湾の真ん中よりも成田のほうが、建設コストが50億円ほど低いという理由で、
最終的に成田が選ばれました。私に言わせれば、全く理解できないフィージビリティです。

東京からの距離などを考えれば、50億円のコストは無視できるレベルの金額です。
そんなこともわからずに、成田空港の建設を決定した人には大いに責任があると思います。

しかし、小池都知事の言葉を借りれば「空気が決めた・・・」ということで、
成田空港の建設についても責任者は不明確です。

成田に限らず、日本の空港行政は目に余るものがあります。

例えば、伊丹空港と関西国際空港の問題です。
伊丹空港を建設したものの騒音問題などで反対運動もあり、
伊丹空港を潰す前提で関西国際空港の建設が始まりました。

ところが実際に関西国際空港が完成しても、伊丹空港はなくならず、
そのまま利用されることになりました。

反対運動をしていた人たちの中にも、騒音対策費などの補助を求めて、
伊丹空港の存続を希望する人がいたようですが、何よりも大阪の財界が手の平を返しました。

あれだけ関西国際空港をプロモートしていたのに、
結局、自分たちが東京に行くときに関西国際空港だと不便だということで、
伊丹空港の存続に動いたのです。

責任者が不明確なままで許される問題ではないと私は思います。
少なくとも、昔の運輸省にいた責任者と言える立場の人間には出てきてもらいたいところです。

羽田空港は滑走路を順調に広げて、第4滑走路まで保有しています。
これはアジアの空港でトップです。この段階にいたって、ようやく成田空港はお尻に火がついて
焦り始めたのでしょうが、私はそもそも成田空港が上手く行くイメージが持てません。

成田空港にはLCC専用の第3ターミナルがあります。私はここを使うと、「人生の悲哀」を感じます。
第2ターミナルからの距離も遠く10分以上歩かなければなりません。
全体として質素で、中にある飲食店なども明らかに他のターミナルとは違います。
貧相というと大げさかも知れませんが、そういう印象を与える設計だと感じます。

他の空港でもLCCの場合、ボーディング・ブリッジが用意されず、
タラップを直接自分で降りる必要があったりします。それでも、歩く距離はたかが知れています。
重たいスーツケースを持たせて10分以上歩かせるようなことはまずありません。

ようするに、「こういう神経」の持ち主が成田空港を運営している限りは、
第3滑走路を作ったところで大きく改善していくことはないと私は思います。

単に滑走路の数の問題ではなく、空港会社としての実力において
世界の空港と比べて圧倒的に競争力が不足していると思います。


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▼ 傾いていない棟まで建て替えはやや理不尽だが、将来の抑止力となる
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横浜市都筑区の大型マンションが傾いている問題で、
マンションの管理組合は傾いている1棟を含む全4棟の建て替えを決議しました。

来年4月にも解体作業を始め、約3年半で完成する計画です。
工事費用の約400億円は、三井不動産レジデンシャルと三井住友建設などの事業主側が負担する考えです。

以前にも似たような事例がありましたが、それは決着まで約10年かかりましたから、
今回1年で片がついたのは画期的だと言えるでしょう。
関わった企業が、三井不動産レジデンシャルなど資金的に余裕がある企業だったのも大きな要因だと思います。

工事費用400億円とのことですが、これ以外にも建て替え期間中の代替住まいの手配などもあるので、
さらに高くつく結果になるはずです。かなりの負担にはなるでしょうが、
今後手抜き工事が行われないために、いい教訓になると思います。

ただ傾いていない棟まで建て替えるというのは、やや理不尽にも感じます。
おそらく日本以外の国ならばあり得ない決定です。
逆に言えば、これも「少しでも手抜きがあると大変なことになる」という抑止力となるでしょう。

今後マンションに住む人にとっては、これらのお金が上乗せされていくことになります。


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※この記事は10月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は成田空港に関する話題をお届けしました。

大前は、同空港は空港会社としての実力において、
世界の空港と比べて圧倒的に競争力が不足していると指摘しました。

その要因を探るためには、今現在の事象で判断するだけではなく、
長い期間で振り返ってみることも重要です。

なぜ現在の状況になってしまったのか、
昔の意思決定にまで踏み込んでいくと、
過去と現在がつながり、問題の本質がみえてきます。

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