2017年01月27日(金) 

01 今週の 大前研一ニュースの視点

米トランプ大統領・ドル相場 〜トランプ大統領の頭にある経済理解は、30数年前のもの
米トランプ大統領 トランプ氏が第45代米大統領就任
ドル相場 「我々の通貨は強すぎる」
トランプ大統領の頭にある経済理解は、30数年前のもの

ドナルド・トランプ氏が20日、第45代米大統領に就任しました。
トランプ大統領は就任演説で、あらためて「米国第一主義」を掲げるとともに、「私の今日の宣誓は米国民全員のために奉仕する誓い」だと述べ、国民に結束を呼びかけました。
しかし、ワシントンではトランプ氏の就任に対する抗議デモが行われ、警察との衝突が起きるなど社会の分断が浮き彫りになっています。
就任演説を聞いた率直な感想を言えば、「最悪」の一言に尽きます。トランプ大統領の頭の中にある経済理解は、30数年前に米国人が日本人に対して持っていた発想です。第2次産業に限られた話であり、時代錯誤も甚だしいと思います。
米国における第2次産業は、米国企業によって淘汰されました。その後、レーガン革命によって、通信、金融、ICT等の分野が台頭し、大いに繁栄しました。
現在、米国の約80%は第3次産業に従事しています。第2次産業で敗北した人たちが、「雇用を取り戻す」というトランプ大統領のメッセージを受けて支持したのですが、現実的にはまず不可能でしょう。
膨大な数の米国企業が世界に出ていきました。それこそトランプ大統領自身が個別に声をかければ、数社は戻ってくるかも知れませんが一部分にすぎないでしょう。
そもそもウォルマートやコストコなどを見ても、米国の外で一番条件が良い場所で作って、それを米国に持って帰ってきていること自体、お客さん(米国民)にとっては大きなメリットのはずです。
このような事実を無視して、「America First」だけを叫ぶトランプ大統領を見ていると、日米貿易戦争当時の黄禍論を思い出します。
米国は第3次産業の発展で「強くなりすぎている」というのが事実であり、トランプ大統領の認識は完全に間違っていると私は思います。
「世界を見ず、米国だけ強く」そんなことは成り立たない

またトランプ大統領の演説の中で、「アメリカ」というキーワードだけが強調され「世界」という言葉が出てこなかったのも非常に残念でした。
端的に言えば、世界に対しては「全てを反故にする」という姿勢を見せています。
NAFTA、WTO関連も白紙にするという話も聞こえてきますし、「なぜ欧州と徒党を組むのか?」と述べ、NATOすら見直すと言われています。
トランプ大統領は「米国のことしか考えない」と発言していますが、それでは今の世界は成り立ちません。
ISを徹底的に叩くと言っていますが、現実的には無理でしょうし、ISを追い込めば追い込むほど、結果として米国の都市がより不安定になることは容易に想像できます。
トランプ大統領の世界に対する理解は、「不動産屋」の域を出ていません。
ICTやサービス業に対する理解が乏しいから、第3次産業の発展のおかげで米国は世界に迷惑なくらい強くなってしまったこともわかっていないのでしょう。
トランプ大統領の通貨に対する理解もおかしなものです。
「我々の通貨(ドル)は強すぎる」と述べたそうですが、これも「(輸出を前提にした)製造業で競争力を持つには、通貨が弱い方がいい」という前提であり、昔の第2次産業のことしか理解していない発言です。
今の米国は日用品の大半を中国などの輸入に頼っているので、米ドルが弱くなれば物価は上がります。
また、中国を為替管理国と批判しながら、自らが先頭に立って為替管理の発言をしています。もはや支離滅裂だと言わざるを得ません。
米国内の大統領就任時の好感度調査によると、トランプ大統領は「好感を持てない」割合が過半数になっています。
これまでの大統領の中でも、極めて悪い結果です。トランプ大統領を選んだ人たちの中にも、「ここまでひどいとは思わなかった」と気づいた人もいると思います。
最終的にヒラリー氏よりも得票数は少なかったのに、大統領に選ばれてしまったのは、今の制度の問題点を浮き彫りにしたと言えるでしょう。
今後、トランプ大統領によって世界は大迷惑を被ることになると思いますが、しばらくは放っておくしかないと思います。今のトランプ大統領を説得できる人がいるとも思えません。
今のままの経済政策を実行し続ければ、米国は大変なことになるでしょう。
内閣の中にはまともな人もいますし、いずれトランプ大統領自身が立ち行かない状態に陥ると私は見ています。
トランプ大統領の就任演説を見て、「テレビタレントとして良いのかも知れないが、米国、そして世界のリーダーとしての器ではない」と強く感じました。
この記事は1月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、トランプ大統領の方針の問題点についてお届けしました。
トランプ大統領の就任演説に対し、時代錯誤も甚だしいと指摘した大前。
本件については様々な議論がなされていますが、皆さんはこの演説をどのように見ますか?
本質を見極めるには、歴史の流れをもとに、取り巻く環境をファクトで押さえることが重要です。
そうすることで、声の大きさにとらわれず、真実に近づくことができます。

2017年01月20日(金) 

06 あとがき
01 今週の 大前研一ニュースの視点

エニグモ・ニトリHD・ドトール 〜伸びしろは「電車でニトリ」
エニグモ 百貨店脅かす8万人のバイヤー
ニトリHD 伸びしろは「電車でニトリ」
ドトール 「ドトール」が復権へ?
ボーダレス・ワールドの時代、現地バイヤーにもっと活躍してほしい

日経新聞は先月30日、「百貨店脅かす8万人のバイヤー」と題する記事を掲載しました。
これは、ファッション通販サイト「BUYMA(バイマ)」の商品取扱高が300億円を突破する見通しを紹介。
海外に住む「パーソナルショッパー」と呼ばれる出品者との個人間取引を仲介するサービスで、日本では手に入らない商品が現地に近い価格で入手できることや、豊富な品揃えが人気を集めているとのことです。
昔、私も百貨店の仕事を手伝っているときに同じようなモデルを提案したことがあります。
海外に駐在している人、在住の人に「バイヤー」になって、独自に商品を選定してもらい、直接日本へ販売するというモデルです。
百貨店もバイヤーを使っていますが、百貨店を通すと価格が跳ね上がってしまいます。
現地では2000円で売られているものが、日本へ来ると1万円になるのが普通です。
百貨店を通さない場合だと、日本市場に魅力を感じた企業が直接オリジナルブランドを展開したり、あるいは総代理店が輸入販売を統括してきましたが、いずれの場合でも日本での販売価格は現地価格の3倍〜4倍でした。
BUYMA(バイマ)では、現地のことをよく知っている主として主婦など8万人が「バイヤー」になっています。
例えば、彼らの販売価格は、現地価格に5%程の手数料を上乗せした程度で収まることもあります。
場合によっては、「バイヤー」が現地のメーカーと親しくなって安く仕入れられると、販売価格と現地価格がほとんど同じになるケースもあります。
今の時代、物流コストはどんどん下がり、また数日あれば日本へ商品を送ることができますから、このような「バイヤー」はますます活躍できると思います。
中国の越境ECも話題になっていますが、本質は同じです。中国人留学生を活用して、彼らがサイトを作って越境ECを展開しています。
日本から「爆買い」がなくなったと言われていますが、越境ECという形に変わって活発になっています。
中国政府は、日本での爆買いに対して高い税金をかけましたが、越境ECについては税率を上げていません。
この税率を上げると、さすがに国民の怒りを買うのを恐れているのかもしれません。私はボーダレス・ワールドの提唱者です。越境ECもBUYMA(バイマ)も大歓迎です。
私の好きなワインは現地では19ユーロですが、日本の楽天では1万8,000円、六本木のお店に行くと6万円になります。世界中の壁をなくし、こうした価格差が少なくなり、より取引が活発になって欲しいと思います。
ニトリ「後から配達」モデルは新しい局面、他産業も参考にすべき

日経新聞は5日、『伸びしろは「電車でニトリ」』と題する記事を掲載しました。昨年12月、ニトリの新宿タカシマヤタイムズスクエア店がオープンしたことを紹介。
2015年試験的に出店したプランタン銀座店が盛況で、以降百貨店から出店依頼が相次いでいて、価格戦略、為替対策も万全の同社の業績見通しは良好とのことです。
これまでニトリは、展示面積の問題もあり、都心を避けて郊外型で展開してきました。
試験的に出店した銀座店では、その場で商品を持ち帰ってもらうのではなく、お届けは宅配便という方法を採用しました。
お店で「見て、注文」して、後から「届けて」もらう。このスタイルが成功するとわかったのは、ニトリにとって新しい局面を迎えたと言えるでしょう。
関東の東急沿線、関西の阪急沿線は、お金持ちが多いと言われています。
この人たちをターゲットに考えると、高齢化しているため「買って持ち帰る」のは難しいことが想像できます。
阪急の場合には外商が強く、外商メインで対応していますが、東京では外商よりも「自分で来て、後から届けてもらう」というスタイルが合っている気がします。
このモデルは、郊外型の店舗展開をしている他の企業・産業にとっても、大いに参考になると思います。ABCマート、しまむらなどは、大いにニトリのモデルを研究するべきでしょう。
* * *
小学館の情報サイトは、『「ドトール」が復権へ?』と題する記事を掲載しました。
コーヒーショップチェーン最大手の「ドトール」について、かつてのサラリーマンが利用する喫煙者向けの喫茶店というイメージが変化し、昨今では学生や若い女性の支持も集まっていると紹介。
禁煙や分煙が進んでいることや、気取らずに入れることが魅力とする利用者の声を紹介しています。
タバコのイメージが強かったドトールですが、現在は大型店の一部で分煙が残るものの、多くの店舗では完全禁煙になっています。
私も散歩のついでにドトールに立ち寄ることが多いのですが、スイカも使えるし、非常に便利だと感じています。
市ヶ谷付近の靖国通り沿いだけで3店舗もあり、いつも混雑しているお店、いつも空いているお店、日によって状況が異なるお店、と三者三様です。
さすがに隣接しすぎているのでは?と感じますが、このあたりは見直す余地があるかも知れません。

■2017年01月14日(土)  全く同感
多くの東京都民の支持を得て都知事となった小池百合子氏は、「豊洲移転問題」「五輪会場問題」で大きな注目を浴びた。だが、大前研一氏は「『小池劇場』はもうすぐ幕を閉じる」と予測する。

 * * *
 昨年、大きなムーブメントとなった「小池劇場」は、遠からず幕を閉じるだろう。

 なぜなら、小池知事は「都民ファースト」「東京大改革」というスローガンを掲げているが、細かい議論になると“チープ”なアイデアだけが先行していて、具体的に何をやりたいのか、よくわからないからである。

 たとえば、東京オリンピック・パラリンピック競技会場計画の見直し問題。

 小池知事は、ボートとカヌー・スプリントは「海の森水上競技場」(東京湾岸)の代わりに「長沼ボート場」(宮城県)や「彩湖」(埼玉県)、バレーボールは「有明アリーナ」(江東区)の代わりに「横浜アリーナ」(横浜市)、水泳は「オリンピックアクアティクスセンター」(江東区)の代わりに「東京辰巳国際水泳場」(同)と、いずれもすでに決定していた新設会場ではなく既存施設を活用する案を提示した。

 しかし、結果は3会場とも変更を断念することになった。森喜朗・大会組織委員会会長の“圧勝”である。

 この問題は国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者の合意が必要なのだから、もし本当に計画を翻したいのであれば、圧倒的な代案を出さねばならない。「あちらは300億円だが、こちらは200億円」という程度では優位差にならないのだ。

 バレーボール会場を横浜アリーナに変更するという案も、横浜の林文子市長が難色を示したら、あっという間に消えてしまった。それもこれも小池知事のブレーンやアドバイザーが出してきたアイデアがチープで中途半端だったからである。

 そういうお粗末なブレーンやアドバイザーは“ダメコン”(ダメなコンサルタント)と同じようなものだ。
ダメコンは会社の診断をして「悪いところが28ありました。これをすべて解決してください」と言い、見えている現象を逆さまにして提言にする。つまり、「他社に比べて営業力が弱い→営業部を強化しましょう」「必要経費の全体像がわかりにくい→経費を見える化しましょう」という具合だ。

 だが、どんな会社でも診断すれば50や100は悪いところが見つかるものである。そして、その根本的な原因は、突き詰めると1つに絞り込むことができるはずであり、そこだけ直せば、あとの問題は自然に直るケースが多い。

 小池知事は防衛相時代などを見ると、周りから“悪者”を見つけて叩くことで人気を得てきた感があるが、それは「政治家」がやることだ。

 知事は「政治家」というより行政の長、それも東京都知事は13兆6500億円の予算と16万6000人の職員を擁する日本有数の「超巨大組織のトップ」であり、いわば大企業の経営者と同じである。

 企業経営の視点で考えると、小池スタイルでは大組織の東京都はうまく動かせない。大企業の経営者の鉄則は、自分が何もしなくても組織がしっかり動くようにすることだ。小池知事のようにありとあらゆる問題に自分がコミットし、“ダメコン”のような「有明アリーナ新設は高い→安く済む横浜アリーナを使いましょう」という程度の“改善案”を次から次へと繰り出す手法は、東京のトップとしては失格だ。

 組織論から言えば、初歩的かつ決定的なミステイクを犯している。それは、大組織のトップは「自ら細かいアイデアを出してはいけない」ということだ。

 自分が細かいアイデアを出せば、相手(森会長ら)から欠点を指摘され、つぶされてしまう。だが、相手に代替案を出させれば、否定されることはない。要するに、大組織のトップが中途半端なアイデアを出すと、前に進まないのだ。

 では、小池知事は東京オリンピック・パラリンピック競技会場計画の見直し問題にどう対応すべきだったのか?

 方法は2つしかない。1つは日産自動車のカルロス・ゴーン社長スタイルで「とにかくコストを3割削減してください」と言い張ることだ。「そうしないと、東京は応分の負担はできない」という条件のもと、相手にコスト削減のアイデアを出させるのだ。そうすれば攻守が逆転する。

 もう1つは、組織の変更を要求し、自分たちが意思決定においてより強い立場になることだ。その上で最強のチームを作り、じっくり時間をかけて相手の主張を崩していけばよい。

 もし私が小池知事だったら、前者を選ぶだろう。そのほうが追い込む立場が強くなり、都民にもわかりやすいからである。


2017年01月13日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

米トランプ次期大統領・米製造業・米ロ関係・米朝関係 〜トヨタは米国での貢献を主張せよ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

米トランプ次期大統領 ユダヤ資金の軍門に下ったトランプ
米製造業 メキシコ工場建設を中止
米ロ関係 ロシア外交官35人を国外退去処分
米朝関係 トランプ新大統領は金正恩政権を崩壊させるのか?

─────────────────────────
▼ カジノ王が注目する日本市場/トヨタは米国での貢献を主張せよ
─────────────────────────

JBプレスは先月27日、「ユダヤ資金の軍門に下ったトランプ」と題する記事を掲載しました。
トランプ氏が大統領選の後半で、ユダヤロビイストから巨額な資金提供や支援を受けていたとのこと。
トランプ氏も米産業界や政界を牛耳る影の影響力に傾倒する動きを見せており、
これらを外交政策に反映させることになれば、
次期政権はジョージ・ブッシュ以上の戦争政権になる危険性があるとしています。

カジノ王・アデルソン氏。この人が大統領選において
トランプ陣営に25億円(一説には18億円)規模の最大の寄付をした人物だと言われています。
米国とイスラエルの二重国籍を持ち、ユダヤロビイストの中核を担う人です。

アデルソン氏のトランプ氏に対する影響力は非常に大きく、
安倍首相がトランプ氏に会いに行ったら、「IR法(カジノ法)を通せ」と
言われたことからも伺えます。
アデルソン氏は2年ほど前に来日したこともあり、
現地を視察するなど日本市場への関心の高さを示していました。

日本は民族資本でカジノをやろうと思っているかもしれませんが、
いざ始まったら米国からの圧力がかかり、
アデルソン氏のような人物がメインになる可能性は十分にあります。
私は、日本に1兆円規模の資金と投じてくれるなら、それでも悪くはないと感じています。

カジノそのものは200億円ほどでつくることができるので、
残りのお金を集客施策に使うなど、その他の活性化施策など様々なものに使えます。
シンガポールのマリナベイサンズも5000億円の資金が投じられましたが、
カジノの建設費は200億円程度でした。
残りはツーリスト、会議、その他インテグレーテッドリゾートの建設に充てられました。
シンガポールにとってはGDPへの影響も大きく効果的だったと思います。

このように見ると、日本は開き直って、
アデルソン氏に主導権を握って実行してもらうというのもありかも知れません。

* * *

米フォード・モーターは3日、メキシコでの工場新設をとりやめ、
代わりに米ミシガン州の工場で電気自動車(EV)と自動運転車をつくると発表しました。
フォードはメキシコの新工場で小型車をつくり米国に逆輸入する計画でしたが、
トランプ次期米大統領は、大統領就任後は高関税をかけると公言。
同様にゼネラル・モーターズやトヨタにも矛先を向けています。

矛先を向けられたトヨタとしても困った事態になったと感じているでしょうが、
トヨタはこの20年間でどの米国メーカーよりも米国に貢献してきたという事実を
毅然と説明するべきだと思います。
この20年間、トヨタは米自動車業界で最も雇用をつくった企業です。
他の企業はリストラを実施しましたが、新しい雇用をトヨタ以上に生み出していません。
トヨタは米国内で多くの自動車を販売できる体制を築き、
多数のトヨタ傘下の部品会社を米国に連れてきており、
これによって米国内に数百万の雇用を生み出しています。

メキシコ工場については、グローバル戦略の一貫であり、
多くはメキシコ国内、中南米中心であり、一部が米国に輸入されるに過ぎないこと、
また逆に米国で作ったトヨタ車を中南米に輸出することが可能ということも説明すればよいでしょう。

トランプ氏はツイッターで即座に反応するという「短気」な一面を見せています。
まともに対応する必要はありません。
フォードのように計画中止などを明言せず、とりあえず様子見で構いません。
決してパニックになる必要はありません。


─────────────────────────
▼ ロシアが仕掛けているのはハイブリッド戦争/北朝鮮の短距離ミサイルがソウルを火の海にする可能性
─────────────────────────

オバマ米大統領は先月29日、ロシア政府が米大統領選に干渉するためサイバー攻撃を仕掛けたとして、
米国駐在のロシア外交官35人の国外退去処分など新たな制裁措置を発令しました。
これに対してロシアのプーチン大統領は即座に報復措置を取らないことを表明。
トランプ氏はプーチン氏について「非常に賢明だ、頭がいい人だとずっと思っていた」と
ツイートしました。

今のロシアは「サイバー攻撃」というよりも「ハイブリッド戦争」に力を入れています。
これはハードウェアの戦争ではなく、経済的手段やメディアを利用する方法です。
今回もロシアは米国に対してハイブリッド戦争を仕掛けていた可能性があると思います。

ハイブリッド戦争では、相手の社会に深く入り込んで、内部から政治的意思をくじきます。
例えば、ドイツに対してはドイツ在住のロシア人を動員し、反メルケル・デモを突如実施しています。
他にも、ロシア語を話す少女がドイツ在住の難民に暴行されたというデマを拡散しています。
これにより難民に対する圧力が加わり、ドイツ政府は窮地に追い込まれました。

ロシアとドイツ(プーチン大統領とメルケル首相)は本来仲が良かったのですが、
対露制裁にドイツがNATOと一緒に加わったことにプーチン大統領が怒りを覚えたのかも知れません。
なぜ、両者の関係性がおかしなものなっているのか、正確なところはわかりません。

* * *

JBプレスは4日、「トランプ新大統領は金正恩政権を崩壊させるのか?」と題する記事を掲載しました。

トランプ氏は1月2日、ツイッターで「北朝鮮は、アメリカに到達する核兵器の開発の最終段階にあると
言うが、そんなことは起きない」とコメントした。
発言を遡ると北朝鮮の在り方を根本から変えさせるためには、
中国との対決も辞さない姿勢が見て取れるとし、この動きは当然のことながら
日本の安全保障にも激動をもたらすとしています。

仮に北朝鮮から大陸間弾道ミサイルが発射されたら、
米国も同様のミサイルは保有しているので10倍の報復をすることは可能でしょう。
問題は、米国からの報復を受けて北朝鮮が韓国や日本に中距離、
短距離ミサイルを発射する可能性があることです。

ソウルに向けた短距離ミサイルであれば、あっという間に1000発以上打ち込めるはずです。
もしこれをやられたら、ソウルが火の海になることは現実的に考えられます。
米国にもこれを防ぐことはできないでしょう。

北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを発射しても、最終的には圧倒的に米国が勝つことは間違いありません。
しかし、短距離、中距離ミサイルを韓国や日本に打ち込んできたときの「生身の影響」は
決して無視できるものではありません。
トランプ氏は「そんなことは、おきない」と発言しているようですが、
とにかく「早まらない」でほしいと心から祈っています。


---
※この記事は1月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は、トランプ次期米大統領の打ち出す政策が
日本自動車業界へ与える影響についてお届けしました。

高関税をかけるという矛先がトヨタにも向かっていることに対し、
大前は、トヨタは米国へのこれまでの貢献内容を説明すればよいと主張。

このように、政治・ビジネスの世界では交渉の場面が多数あり、
相手の次の一手が読めない中においても、
自社に有利な状況を作っていく必要があります。

そのためには、自社の基本姿勢や戦略的アプローチを基に
冷静な判断を行うことが大切です。

2017年01月03日(火) 
人口減と高齢化社会。日本は直面する深刻な問題に手を打てていない。

厚生労働省が発表した統計によると、2016年に国内で生まれた日本人の子どもは過去最少の98万1千人で、統計を始めた1899年以降初めて100万人を割り込む見通しになりました。
死亡数が出生数を上回る「自然減」は10年連続で、人口減に歯止めがかからない現状が示されています。
何とも言えない重苦しいニュースと言わざるを得ません。日本社会は高齢化していますから死亡数が増加するのは当たり前です。
かつては戦後の第1次ベビーブームがあり、その人たちが子どもを産んで第2次ベビーブームがありました。しかし、その後の第3次、第4次へと続くことはありませんでした。その結果、出生数は100万人を下回りました。
日本は年間に約30万人ずつ人口が減っています。今後、50万人、60万人と減少幅は大きくなっていくでしょう。そうなっていくと、1年間で鳥取県や高知県が1つ消滅してしまうのと同じインパクトがあります。
現状からすれば、日本が人口増に転じることは考えられません。確実に日本の将来は人口が減っていきます。
移民政策など対策はありますが、移民に対する反発、欧州の例にみる社会的な問題に鑑みると、一筋縄ではいかないでしょう。
そもそも安倍政権が強くハンドルを切って舵取りをすることも考えられません。
人口が減っていき、同時に高齢化社会が進みます。国民一人ひとりの負担額は大きくなっていきます。そういう深刻な問題に日本は直面しているのです。
成長戦略を実現するためには、政治家として討ち死にする覚悟が必要

日経新聞は、23日「構造改革なき予算案、アベノミクスに綻び」と題する記事を掲載しました。第2次安倍政権発足後で5度目の予算案が決定したことを紹介。
保育士の待遇改善や研究開発費を増加しながら新規国債の発行は減らした、と政府が自画自賛するものの、痛みを伴う中長期制度改革は手付かずのままで円安や超低金利の追い風に頼るアベノミクスの綻びが示されたとしています。
日経新聞も今さらアベノミクスに「綻び」などと言っていますが、私に言わせれば最初から綻んでいます。アベノミクスは何の効果も生んでいません。
今回の予算を見ていても、過去の反省もなく、構造改革も手付かずのままで、消費税も先延ばしにしたままになっています。
未だに2020年にプライマリーバランスの黒字化を掲げているようですが、もはや奇跡が起きても不可能な状況です。
公債発行額は増加し、国の借金は膨れ上がっています。一般会計の歳出を見ると、社会保障費が増加していることがわかります。
また国債費が23兆円もあります。今の日本財政を個人で例えるなら「年収500万円の人が、毎年300万円借金を増やしていて、その借金総額が1億円」という状態です。
これで支払いができると思う方がおかしいでしょう。
今、生まれてきた人は1億円の借金の重圧を背負っていくことになります。日本の政治家はこの問題をどのように考えているのか。どう解決しようとしているのか。
私には全く理解できません。「成長戦略」と軽々しく口にしていますが、全く本質をわかっていません。成長戦略を成功させた政治家はいません。
成長戦略の基本的な方針は「規制撤廃」です。レーガン氏やサッチャー氏が示した成長戦略も、規制撤廃から始まっています。
安倍政権はそれすら実行していませんが、仮に規制撤廃をしたら何が起こるか?
まず既存の産業がつぶれます。その後、十数年の時を経て、ようやく新しい産業や会社が成長の軌道に乗り始めます。成長戦略の効果が現れてくるのは、10年以上先になるのです。
政治家はすぐに結果を示して選挙に臨む必要があります。レーガン氏もあれだけのことを実行しながら、その結果が現れてきたのはビル・クリントン氏の時代でした。
レーガン氏もサッチャー氏も、この点で言えば非常に気の毒だと思います。
先に保護されている産業から失業者が大量に出ます。その痛みを伴うことを覚悟しなければ「成長戦略」などと言えたものではありません。
日本の政治家もこの前提を理解した上で、成長戦略の効果は10年以上先であり、政治家としては討ち死にする覚悟で取り組まなければ何も実現しないと思います。
日本には、ドイツのシュレーダー氏、英国のサッチャー氏、米国のレーガン氏などに匹敵する政治家は見当たりません。安倍首相は最も悪い事例です。
耳当たりのいいことばかり言って、100年前の経済学で金利とマネーサプライで何とかできると思っています。
これまで安倍首相からの個人攻撃をおそれて、日本のマスコミはほとんど批判的な記事を書いていませんでしたが、ようやく日経新聞が一石を投じたというところでしょう。
この記事は12月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの
内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、人口動態にみる日本高齢化社会の問題についてお届けしました。
人口減少が続き、高齢化が進んでいく日本。深刻な問題に直面していますが、果たして自分たちの問題として危機感が持てているでしょうか。
明日にはきっと問題が解決するのではないか、という安易な期待を持って、現実から目を背けていてはいけません。
問題解決者は、常に現実に向き合い、冷静な判断をしていくことが大切です。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月