2017年04月28日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日米経済対話・トヨタ自動車・米中関係 〜中国問題と北朝鮮問題は全く別もの

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日米経済対話 3分野で具体的成果めざし
トヨタ自動車 1500億円の追加投資発表
米中関係 中国を為替操作国に指定するわけがない

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▼ 米国が狙う2国間協定は断固拒否すべき
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日米両政府は18日、2月に安倍首相とトランプ米大統領との会談で
合意した日米経済対話を行い、貿易・投資ルールなど3つの分野で
具体的な成果を目指す方針で合意しました。
対話後、ペンス米副大統領は「TPPは過去のもの」と述べ、
2国間の貿易交渉に軸足を置く方針を改めて表明。
経済対話が将来的に日米FTA交渉に発展することに期待感を示しました。

日本は米国を除く11カ国でTPPの継続を進めようとしています。
米国としてはこれを阻止し、「米国対日本」「米国対韓国」
というような2国間協定に持ち込みたいという狙いでしょう。

例えば、食肉の輸入を見ると、国内に流通しているものは
輸入品が国産品よりも多くなっており、その輸入量では
米国よりも圧倒的に豪州が優位に立っています。
もしTPPが実現していても、米国は豪州の牛肉には及ばなかったでしょうが、
さらには豪州と日本は先行的に2国間協定を締結していて、
関税が10%低いというコスト競争力があるので、
米国としては全く歯が立たない状況です。

米国の狙いは、2国間協定に持ち込み、最悪でも豪州と同じ条件、
願わくば豪州よりも有利な条件を引き出したいところでしょう。
かつて20年間にわたって日米貿易交渉を見てきた私に言わせれば、
米国との2国間協定は絶対に進めるべきではありません。
TPPを反故にしたのは米国なのだから、はねつけてほしいと思いますが、
安倍首相の態度を見ていると何とも懸念を感じてしまいます。


トヨタ自動車は10日、米国ケンタッキー州の完成車工場に
13億3千万ドル(約1500億円)を追加投資すると発表しました。
米国で、今後5年で投じる100億ドルの計画の一部で、
これまでトヨタのメキシコ工場建設を批判してきたトランプ大統領も、
一定の評価を示すコメントを寄せています。

ケンタッキーの工場というのは、トヨタが世界に保有する工場の中でも
最大規模の工場です。実際のところ、追加投資をしたところで
雇用はそれほど増えないでしょうが、トヨタとしてはケンタッキーや
インディアナなどで、トランプ政権にアピールをすることが重要です。

これまでは、特に発表などせずに投資をしてきたものを、
あえて大体的に公表しています。
これは表面的な意味でのトランプ政権への対応です。
トランプ大統領に批判されたと言っても、メキシコの工場も閉鎖して
いませんし、トヨタは自分たちのペースで淡々と物事を進めています。

自動車業界では、「SUV」によって勝ち組と負け組が
明確にわかれる結果となっています。セダンは軒並み落ち込んでいて、
SUVで出遅れたメーカーが負けています。
米国自動車メーカーはSUVに弱く、苦戦しています。
機能的な側面だけで言えば、東京でSUVに乗る意味はないですし、
ましてBMWやポルシェのSUVとなるとなおさらでしょうが、
「SUV=カッコイイ」という流行ができあがっています。



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▼中国問題と北朝鮮問題は全く別もの/シリア攻撃の背景にイバンカ氏の存在
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トランプ米大統領は16日、北朝鮮が日本海側の東部・新浦付近で
中距離とみられる弾道ミサイル一発を発射後、初めてツイッターに投稿し、
「北朝鮮問題で我々に協力してくれているというのに、なぜ中国を
為替操作国に指定するというのか。指定するわけがない」と述べました。
北朝鮮への圧力強化へ向け、中国の役割に改めて期待を示した形です。

トランプ大統領は、中国に対して100日間の猶予を与えたので、
その間に北朝鮮問題で貢献しろというスタンスですが、
米国民でトランプ大統領に投票した人は、一体どう感じているでしょうか?

選挙期間中、あれだけ「中国は為替操作国ナンバーワン」だと
言っていたのに、北朝鮮問題に協力してくれたら為替操作国ではなくなる、
とはおかしな話です。そもそも、中国の問題と北朝鮮の問題は
全く別ものであり、関係性がありません。私には全く理解できません。


英フィナンシャル・タイムズは「トランプ大統領にまだバノン氏が必要な理由」
と題する記事を掲載しました。これは、バノン首席戦略官は、
トランプ政権内で戦略的な頭脳に近いものを持っている唯一の人物と紹介。
NSCからはずれたものの、シリア攻撃には反対したという
バノン氏の本能は健全としています。

全体を通してトランプ戦略は成り立たせるためには、
バノン氏は不可欠な存在でしょう。
悪いところはたくさんありますが、バノン氏がいなくなれば、
オバマ政権と何ら変わらないものになるという指摘です。
これは一部正しいと思いますが、私はバノン氏を排除するのが
正しいと思っています。

トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が、
バノン氏とナバロ氏を排除する方向で動き、
日に日にその役割が大きくなってきています。
大きな事業も持っている人物ですから、コンフリクトが起こらないように、
事業と政務を切り離すことが必要でしょう。

一方、トランプ米大統領の最初の妻の次男であるエリック・トランプ氏が
英テレグラフ紙のインタビューに応じ、シリア攻撃に踏み切った大統領の決断
の背景に長女イバンカ氏の後押しがあったのは確実との見方を示しました。

イバンカ氏が「子供がやられている、赤ちゃんにサリンなんてとんでもない」
という類いのことを言って、トランプ大統領に決断を促した、
とも一部のメディアで報じられています。もちろん、
イバンカ氏の発言に決定的な証拠があったわけではないでしょうから、
恐ろしい話ですが、米国は同じようなことを過去にも行っています。

イラクによるクウェート侵攻後、イラク軍兵士が保育器に入った新生児を
取り出し放置して死に至らしめた、とクウェートの少女に証言させました。
これが湾岸戦争の大きな布石にもなりましたが、後年、
この少女は駐米クウェート大使の娘で、証言は捏造だったと判明しています。

今回もアサド側が本当に化学兵器を使用したのかどうか、判断できません。
そもそも、シリアをそれほど重要視していないと語っていた
トランプ大統領が、急に方針を変更して動き出したのは腑に落ちません。
エリック・トランプ氏が言うように、
イバンカ氏の影響があったというのは、頷けます。



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※この記事は4月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米中関係の話題をお届けしました。

トランプ大統領は、北朝鮮への圧力強化へ向け、
中国に対する期待をツイッターで示しました。

これに対して大前は、中国の問題と北朝鮮の問題は
全く別ものであり、関係性がないと指摘しています。

今回のトランプ大統領のメッセージの根拠を冷静に読み解くと、
納得できるものではありません。

このようなニュースを目にしたときは、
「このメッセージは論理的か?」「万人に正しいと主張できるか?」
「誰が言っても、何度言っても、同じ答えが出るか?」
と自分のアタマで考えることが重要です。

また、自分のアタマで考えるためには、「ことばのすじみち」を
正しく理解し、使いこなすことが必要です。

これらを日々繰り返し訓練をしていくことで、
自らの頭脳の働きで、より正しい発想や決断を導くことが出来ます。

2017年04月21日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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東芝・ローソン・セブン&アイHD 〜ローソンがセブン-イレブンに追いつくには?

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東芝 東芝映像ソリューション買収へ交渉開始
ローソン 玉塚元一会長が5月末退任
セブン&アイHD 米スノコLPからコンビニ、GS取得

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▼ 東芝はこれほど追い込まれる状況ではない。上場にこだわらずLBOせよ
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経営再建中の東芝のテレビ事業を巡り、トルコの家電大手ベステルは10日、
「東芝のテレビ事業(テレビ事業子会社の東芝映像ソリューション)
買収に向けた交渉を開始しました。ベステル社はグローバルブランドを取得し、
国際市場における地位の強化と販売を増やす戦略方針ですが、この事業の買収には
中国の海信集団(ハイセンス)なども関心を示しているとのことです。

米国におけるシャープブランドを買い取った美的集団は、
それだけで大きな利益を上げました。逆に言うと、シャープは欧州や米国など
海外におけるブランドを売ってしまって、取り返しがつかない事態になったと言えます。
ベステルという会社はしっかりした企業であり、東芝を買収する力は十分にありますが、
やはり日本人の心情からすれば、買収は控えてもらいたいと感じるのは当然でしょう。

東芝はもともと三井銀行との強い関係性を持っていました。現在の三井住友銀行では、
住友系が強いので東芝支援もそれほど力が入っていないのかもしれませんが、
そもそも私に言わせれば、今の東芝再建の方法は愚の骨頂です。
東芝メディカルを始め、とにかく売れる事業から売ってしまう、
という方法で進めています。IQが足らないのではないかと思います。

東芝の綱川社長は、「きちんと決算をすること」「上場を維持すること」
という2つを大前提にしています。しかし、これは大きな間違いです。
もし私ならば、今現在の東芝の時価総額は約8000億円まで下落していますから、
上場にこだわらずLBOを仕掛けます。

東芝の半導体事業は2兆円の価値があるとも言われています。
その東芝全体を今ならたった8000億円で買えるわけです。
経営陣が責任を持って銀行から資金を借りてもいいでしょう。
LBOをして非上場にして十分な時間を確保します。非上場になれば、
決算を延ばしても構いませんし、何なら会計事務所を変更してもいいでしょう。
ゆっくりと時間をかけて考えることも出来るはずです。

その上で回復してから再上場すれば、半導体事業部で2兆円を超える価値があるなら、
3割程度を手放すだけで一気に借金は返済できます。
これなら何一つ事業を売却する必要はありません。

このような案も出ていないのだとすれば、完全に経営マインドが失われていると思います。
旧三井銀行なら、この案を提示すれば喜んでサポートしてくれるでしょう。
間違っても、投資銀行にアドバイスを求めてはいけません。投資銀行は、買ったり、
売ったりしたときの手数料でビジネスをしているので、私のような案は提示しないでしょう。

今の東芝に対して、まともなアドバイスをしてくれる人はいないのでしょうか。
しっかりとした経営経験がある人がいないのでしょう。東芝という会社は、
良い資産を持っています。本来、今のように追い込まれる状況ではありません。
このままだと、東芝が単なるエレベーター会社になってしまいます。


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▼ ローソンがセブン-イレブンに追いつくには?/セブン-イレブン米国強化の意図
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ローソンは12日、玉塚元一会長が5月末に退任すると発表しました。
玉塚氏はファーストリテイリング社長などを経て2010年にローソンに入社。
14年から社長、16年から会長として同社の経営を率いました。
このタイミングでの退任について玉塚氏は「三菱商事を巻き込み総合力をつけられた」とし、
ローソンの今後の業容拡大への道筋は整ったと強調しました。

三菱商事対伊藤忠商事、という商社同士の戦いが明確になってきました。
三菱商事としては、ローソンを完全子会社化して、人材も送り込んでいきたい
と昔から考えていました。前社長で三菱商事出身の新浪氏が三菱商事からの圧力を嫌って、
玉塚氏を抜擢して後継者にしました。しかし結果としては、
玉塚氏には様々な意味で三菱商事をはねつけることができず、
三菱商事は資本比率を増やし、予定通りローソンは三菱商事の直営になりました。

三菱商事が大きく動く契機となったのは、コンビニの国内店舗数の争いでしょう。
相変わらずセブン-イレブンが断トツで、ローソンは伸び悩み、合併を繰り返した
ファミリーマートがローソンを抜きました。伊藤忠の直接の影響力が見え始めた
ファミリーマートを見ていて、三菱商事も焦りを感じたのだと思います。
そして、玉塚氏が詰め腹を切らされることになったのでしょう。

コンビニ1店舗あたりの1日売上高を見ても、セブン-イレブンが65.7万円と断トツ。
ローソン(54万)とファミリーマート(52.2万)は似たようなレベルです。
三菱商事は卸や食品関係で強みを持っていますから、
それを活用することで打開したいところでしょうが、私は難しいと感じています。

セブン-イレブンがローソンやファミリーマートに比べて圧倒的に優れているのは、
商品開発力だと思います。ラーメン有名店とのコラボラーメンの商品化などを見ても、
セブン-イレブンは非常に上手です。三菱商事のノウハウが活きてくるのは
原材料に近い部分なので、今のコンビニ業界で大きな力を発揮できるとは私には思えません。

セブン&アイ・ホールディングスは6日、米国の中堅コンビニエンスストア、
スノコLPからコンビニとガソリンスタンド計約1100店舗を取得すると発表しました。
買収額は33億ドル(約3650億円)で、国内市場の伸びが鈍くなるなか、
成長余地のある米国で早期に1万店体制を築く考えとのことです。

元々セブンイレブンは、米国のサウスランドという会社が保有していました。
当初は、サウスランドとライセンス契約を結び、日本のセブン-イレブンが立ち上がり、
最終的に米国の本社も買収して現在に至ります。日本では2万店まで広がっています。
2番目に店舗が多いのはタイで、米国は韓国と同じくらいで、約8500店舗に過ぎません。
これではみっともない、ということで米国の強化に乗り出したというところでしょう。

米国のコンビニはもともと新聞やコーヒー、タバコを買う程度のもので、
それを日本で進化させて逆に米国にノウハウを持ち込んで変革をしてきました。
それでも未だに、米国やオーストラリアのコンビニは、「ガソリンを入れに来る」
という人が大勢います。そのガソリン代の支払いをするついでに、
コンビニ店内で買い物をするという程度です。実際、今回買収したスノコLPも
ガソリンスタンドに併設した店舗が多くなっています。

米国はスーパーマーケットが24時間営業しているため、
日本ほどコンビニに対して24時間営業のありがたさはありません。
その中で、「ガソリンのついで」という立場から脱却し
日本のようなコンビニとして進化させていくのは、大きなチャレンジでしょう。
これから米国市場を数倍にするという目標でしょうから、注目したいと思います。


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※この記事は4月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、コンビニ業界の話題を中心にお届けしました。

玉塚元一会長が5月末に退任すると発表したローソン。

そのローソンに対して大前は、三菱商事のノウハウが
今のコンビニ業界で大きな力を発揮できると思えないと言及しています。

大前が記事中で、「セブン-イレブンが圧倒的に優れているのは商品開発力だ」
と指摘しているように、KFSを見つけるには、業界における成功者は何を行い、
何が強いのか、他の競合と何が違うのかを観察・分析する必要があります。

KFSがシェアの違いを引き起こすメカニズムを観察して、
説明できるようにすることが重要です。

2017年04月14日(金) 
01 今週の 大前研一ニュースの視点

米入国審査・米個人情報問題・米トランプ政権 〜米国に大打撃を与えかねないトランプ大統領の軽率なロビー活動
米入国審査 審査で個人情報の提供要求へ
米個人情報問題 米ツイッターへの個人情報開示命令取り下げ
米トランプ政権 スティーブン・バノン氏をNSC常任委員から除外
米国に大打撃を与えかねないトランプ大統領の軽率なロビー活動

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは4日、トランプ政権が米国への渡航希望者に対し、携帯電話に登録された連絡先やソーシャルメディアのパスワードの提出を義務付けることを検討していると報じました。短期滞在者のほか、「ビザ免除プログラム」に参加している日本や英国、豪州などの同盟国を含む38カ国・地域に対しても適用される見通しとのことです。
トランプ大統領は、「根拠もなく何かを言ってみては、引っ込める」というのを繰り返していますが、これも同様でしょう。実はこの事態はロビー活動を背景としています。
米国は、中東や北アフリカの8カ国から米国に向かう直行便で、携帯電話よりも大型のタブレット端末やパソコンなどの持ち込みの禁止を発表しています。不思議なのは、9つの航空会社が運営する10の空港から出発する便を対象とする一方、「米国の航空会社は許可されている」ということです。なぜ、このようなことになっているのか?
ドバイのエミレーツ航空などは国から補助金をもらって、大量にエアバスなどを購入しています。米国からすれば、これはロビー活動に他ならないという見解です。そのような制度がない米国の航空各社は、競争環境を阻害すると主張しています。このような背景のもと、米国政府はエミレーツ航空などからの米国直行便でパソコンの持ち込みを禁止しました。
トランプ大統領のこれまでの行動を見ていると、ほぼ全てがロビー活動です。フォードが「日本市場は不公平だ」と主張すれば、証拠も根拠もないままにオウム返しに、「日本は不公平だ」と発言します。今回の事態も、トランプ大統領のロビー活動の一環だったということです。
ところがロビー活動においても、先を見据えずにやってしまうのがトランプ大統領の弱いところです。8カ国からの直行便で携帯電話よりも大型のタブレット端末やパソコンなどの持ち込みを禁止した結果、今、米国の旅行業界はパニックに陥っています。それはコンベンション業界の落ち込みです。これまで、米国では学会や様々な業界の国際会議が数多く開催されていました。そのうえ、7カ国(当初。後にイラクを除外し6カ国)から米国への入国制限まで課されるとなると、現実的に国際会議の開催は不可能です。
国際会議などは1年前、2年前から予約するものですが、すでに今後の予約は激減しており、巨大産業である米国の旅行業界に大きな影を落としています。
必要十分なことでなくても、「とりあえずロビー活動ならやっておこう」という軽々しさがトランプ政権にはあります。今回の個人情報の提出については論外であり、まずあり得ない話です。こんなことをすれば、米国への入国そのものが激減し、大打撃を被ることになると思います。
先日トランプ政権は、米ツイッターに対する、政権を批判するアカウントの身元情報の開示命令を取り下げましたが、これも同様にトランプ政権の軽々しさの現れでしょう。
捜査とは別に、政府系機関が政府を批判する職員を水面下で探ろうとしたものですが、ツイッターが訴訟に持ち込んだことで米政府も矛を収めざるをえなくなった形です。政府系機関の職員で政府に批判的な人には、給与を支払う必要がないという意見もあったそうですが、いかにもトランプ大統領らしい発想だと思います。
バノン氏はホワイトハウスから追放されるだろう

トランプ米大統領が米国家安全保障会議(NSC)を再編し、 側近のスティーブン・バノン米首席戦略官・上級顧問をメンバーから外したことが5日わかりました。 トランプ氏は政権発足後、外交・安保の専門家ではないバノン氏を常任委員に抜てきしていた一方で、 中核メンバーである統合参謀本部議長、国家情報長官(NID)を非常任委員に降格していましたが、 この人事に与野党から反発の声が上がっていました。
おそらくこれでは収まらず、バノン氏を永久追放するという動きを見せると思います。 マクマスター氏が進言したと言われていますが、実際に主導しているのはジャレッド・クシュナー氏(トランプ大統領の娘婿)でしょう。 クシュナー氏が中心となり、バノン氏を追い出すグループを形成しています。 それはNSCの常任委員にとどまらず、ホワイトハウスから追放するというところまで見据えているはずです。
トランプ政権の諸悪の根源は、このバノン氏とピーター・ナバロ氏と言われていましたが、 現時点では見当違いな大統領令を発令させて目立っているので、まずバノン氏に白羽の矢が立ったというところでしょう。
バノン氏は嫌われていましたが、ある意味、トランプ政権の特徴的な存在です。 バノン氏が抜けると、残るのはウォールストリート出身のお金持ちと軍人、 という他の政権と代わり映えがしない顔ぶれになります。
また残るナバロ氏も、思ったよりも存在感が薄く、トンラプ政権らしさを体現することはなさそうだと感じます。 対中強硬派として知られる人物ですが、先日フロリダで行われた米中首脳会談を見る限り、その存在感はゼロに等しかったと思います。
この記事は4月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの 内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、米入国審査・米トランプ政権の話題についてお届けしました。
トランプ大統領の軽率なロビー活動により、国際会議などの予約が激減し、 旅行業界に大きな影を落としている米国。
これに対して大前は、トランプ政権の軽々しさの現れだと指摘しています。
ファクトをしっかり把握せずに人の意見や流行に左右されてしまうことは、 よくある問題解決の失敗例としてあげられます。
また、問題を引き起こしている本質的な要因が不明なまま、 対症療法的に飛びついてしまうことも、同様です。
ビジネス上の様々な問題解決を行う際には、本質的な問題を発見し、 これに対して、仮説作成とファクトに基づく検証を繰り返し、 当を得た解決案を立案・実行することが重要です。

2017年04月07日(金) 
01 今週の 大前研一ニュースの視点

EU情勢・英EU離脱問題 〜EU離脱について基本的なシミュレーションすらできていなかった英国
EU情勢 英なき構想、揺らぐ結束
英EU離脱問題 リスボン条約50条にもとづきEUに離脱通知
EU、ユーロは通貨統合を超えて、あらゆる基準を合致させる方向へ

日経新聞は先月26日、「英なき構想、揺らぐ結束」と題する記事を掲載しました。英国を除く欧州連合27カ国は、ローマで首脳会議を開き、将来像を描いた「ローマ宣言」を採択したとのこと。意欲のある一部の国だけが先行して統合を深める「マルチスピード構想」が柱となったものの、裏返せば統合に消極的な国は置いてきぼりにすることを意味しており、すべての加盟国が一緒に行動するという伝統の精神は明らかに変質したとしています。
ローマ法王が欧州の各国首脳を前にスピーチをしましたが、すでに英国は参加をしていませんでした。今、EU、ユーロは通貨統合にとどまらず、あらゆる基準を合致させていく方向へ動いています。
例えば、ギリシャ破綻を契機として、国家予算もEUの承認を必要とするように動いています。各国で「イカサマの予算」を作られると、EU全体にとって致命的になる可能性があるからでしょう。さらに銀行の管理にも介入する姿勢を見せています。イタリアの銀行など、かなり審査が怪しいところもあり、これらについてもEUが管理するかもしれません。
これまでの全員一致という行動する方針から、マルチスピード構想に変わりましたが、これにはポーランドなど東欧が抵抗しています。トゥスクEU大統領のお膝元が反対するという、大統領にとっては気の毒な結果です。国内の政敵に足元をすくわれてしまいました。
EU離脱について基本的なシミュレーションすらできていなかった英国

英国のメイ首相は29日、欧州連合(EU)に離脱を通知しました。英国の駐EU大使が、EU基本条約であるリスボン条約50条に基づき、トゥスクEU大統領にメイ氏が署名した書簡を手渡しました。これにより、離脱条件などを決める原則2年間の交渉が正式に始まることになります。
英国BBCでは、EU離脱に伴う法的リスクについて、今になって気づいて青ざめている英国議会の様子が放映されていました。EU離脱に伴って、様々な分野で法的リスクが発生するとのことです。具体的には、労働法、会社法、環境・エネルギー、通信など多岐にわたり、約1万2000の法律が不足するそうです。
EUに加盟しているときには、国内法とEU法に齟齬が生じた際には、 EU法を優先するというルールで運営されていました。 ゆえに無意識のうちにEU法を使っていたけど、実は国内法には対応するものが存在しない、 という法律が1万2000もあったということです。
保守党は「必要なものから作ればいい」と主張していますが、労働党は 「保守党に任せて作らせたら、何を作るのかわからない。信用できない」と反論していて収拾がつきません。 挙げ句の果てには、だったらEU法を英国法に「コピペしてしまえばいい」という発言まで飛び出す始末でした。 まさか、歴史ある英国の議会で「コピペ」発言を聞くことになるとは、私も驚きました。
しかし、実際のところそれほど切羽詰まっていて、大騒ぎの状態です。 その上、EU離脱によって法整備だけでなく、金銭的な影響が出る分野もあります。 例えば、英国の酪農家はEU法を尊守していれば、一定の補助金を受給できていました。 しかし、仮に同じ内容の国内法を準備しても、当然のことながら補助金は支給されません。 酪農家への補助金総額は30億ポンドとのことで、これがなくなったらやっていけない、と酪農家の人たちは嘆いています。
また、大学や研究所に対する補助金も同様です。英国の大学や研究所は非常にレベルが高いところが多く、世界中から優秀な人材を呼び寄せています。欧州からも多数の研究者が英国に来ていて、莫大な補助金が支給されていました。EUを離脱すれば、この補助金もなくなってしまいますが、とても英国政府が支払えるとは思えません。
酪農家や大学、研究所の人たちは、「なぜ、EUを離脱する必要があるのか?」と今になって強く感じているでしょう。英国のメイ首相は「英国に有利になるようにする」と言っていますが、欧州側が「勝手に離脱する英国に有利な形にはしない」という態度ですから、現実的に難しいでしょう。
さらに重要なのは、英国からの輸出の問題です。英国は離脱交渉と並行して輸出問題などを議論したいと主張しています。すなわち、EUと英国のFTAを希望しています。しかし、欧州側は全く受け入れる姿勢を見せていません。その議論の前に、過去に英国がEUメンバーとして支払う必要があった分担金を支払え、と主張しています。その額は7兆3000億円です。
この過去の分担金を支払えなければ、離脱の議論は進まないでしょうが、すでにEU離脱の届け出を提出してしまいました。このままだと、リスボン条約が規定する2年が経過したら、もろもろの条件交渉がまとまっていなくても、強制的にEUから外に出ることになります。
日産は英国のサンダーランド工場で多くの自動車を作って欧州に輸出しています。このまま2年後になると、自動車には強制的に「10%の関税」が課せられます。これはパニックを引き起こすと思います。英国のメイ首相は「今と同じ条件」で交渉したいようですが、とても受け入れてもらえる状態ではありません。
これら一連の状況を見ていると、明らかに英国はEU離脱した場合の基本的なシミュレーションすらできていなかった、と言わざるを得ないと思います。タイムリミットは2年間です。私は、英国が大チョンボをやってしまった、と感じています。
この記事は4月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの 内容を一部抜粋し本メールマガジン向けに編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?

今週は、EU情勢・英EU離脱問題の話題についてお届けしました。
労働法、会社法、環境・エネルギー、通信など、EU離脱に伴って、様々な分野で法的リスクが発生する英国。
これに対して大前は、EU離脱について基本的なシミュレーションすらできていなかったと指摘しています。
実行する解決策を選択する際には、網羅的に検討した解決策アイデアに関して意義と実現要件を明確にする必要があります。
今回の一連の流れをみていると、どうすればリスクを最小化できるか?という実現要件のシュミレーションもできていないままEU離脱を決めたといっても過言ではありません。
新しい解決策ほど、「どうすれば実現できるか」という発想が大切となります。

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