2017年05月26日(金) 
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【1】今週の 〜大前研一ニュースの視点〜
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≫ ソフトバンクグループ・ZARA・リユース業界・ファーストリテイリング 〜独自の物流・製造システムを持つZARAの圧倒的な強さ

ソフトバンクグループ Tモバイルにスプリントとの統合提案へ
ZARA 自前主義で一人勝ち
リユース業界 リユース業界の悲鳴
ファーストリテイリング 若者の留学支援へ

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【2】問題解決力トレーニングプログラム より
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【3】問題解決力トレーニングプログラム より
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【6】あとがき
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■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ソフトバンクグループ・ZARA・リユース業界・ファーストリテイリング 〜独自の物流・製造システムを持つZARAの圧倒的な強さ

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ソフトバンクグループ Tモバイルにスプリントとの統合提案へ
ZARA 自前主義で一人勝ち
リユース業界 リユース業界の悲鳴
ファーストリテイリング 若者の留学支援へ

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▼ソフトバンク・ビジョン・ファンドに見るサウジアラビアと孫正義氏の思惑
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日経新聞が11日報じたところによると、ソフトバンクグループが
米携帯電話3位のTモバイルUSに、米子会社で同4位のスプリントとの
経営統合を提案する見通しが明らかになりました。
近いうちに、親会社である独ドイツテレコムに申し入れる方針で、
実現すれば統合新会社は契約者数でベライゾン・コミュニケーションズ、
AT&Tの米2強に匹敵する規模となります。

最近のソフトバンクには大きな動きが見られます。
Tモバイルとの統合の話に加え、中国でウーバーを駆逐した
ディディ・チューシンに約5500億円を出資しました。
ソフトバンクは、インドやシンガポールでも同様の企業に投資していますが、
中国でもウーバータイプの事業展開を狙っています。
そして、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資募集が完了しました。

これだけ大きな動きを見せているソフトバンクですが、
セグメント別の業績を見ると、特にスプリントの売上は大きいものの、
利益はさほど出ていません。有利子負債の金額は、
スプリントを買収した時期から膨れ上がり、14兆円規模になっています。

米国の携帯電話の契約数では、ベライゾンとAT&Tは
順調に毎年契約者数を伸ばしています。
Tモバイルとスプリントが統合すれば、
AT&Tとほぼ同じ規模になり、シナジー効果も期待できます。
ただし、Tモバイルの買収は巨額な投資になります。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドでは、
サウジアラビアから約4兆5000億円の出資を取り付けました。
大きな金額だと感じる一方、トランプ大統領が訪問し、
あっさりと約12兆円規模の兵器売却でサウジと
合意したのを見ると何とも複雑な気持ちです。
その他、アブダビ、UAE、シャープ、アップル、
クアルコムなど様々な出資が決まり、
全体として10兆円ファンドがようやく立ち上がりました。

ファンドの主導権をめぐって、
サウジアラビアとの調整に苦労したと聞いています。
サウジアラビアとしては、油がなくなったあとの産業を
視野に入れて役立つ投資をしたい、という気持ちが強くあります。
ですから、極端なことを言えば、21世紀型の新しい産業でなくても、
サウジアラビでやってくれるなら古い産業であってもいい、
という気持ちだと思います。

一方、孫正義氏の想いは純粋に21世紀型の産業に役立てる
という点にあり、その孫正義氏への牽制の意味もあり、
サウジアラビアと孫正義氏の間で主導権をめぐって
交渉が繰り広げられたそうです。



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▼独自の物流・製造システムを持つZARAの圧倒的な強さ
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日経新聞は12日、「ZARA 自前主義で一人勝ち」と題する記事を掲載しました。
流行をとり入れつつ低価格を誇るファストファッションは
伸び悩みが指摘される中、「ZARA」ブランドを展開する
スペインのインディテックスが力強い成長を維持していると紹介。
トレンドの小さな変化を逃さず、機動的に生産量を調整することで
高利益率を生み出すとともに、情報発信の拠点と位置づける
店舗のデザインも自社で担うなど徹底的な自前主義が強みの源泉としています。

世界のファストファッションをリードするZARAを展開する
インディテックス。次ぐスウェーデンのH&M、日本のユニクロ、
いずれも田舎から始まった企業です。
インディテックスは売上も利益率も断トツで、
ZARA以外にもブランドを抱え、時価総額は13兆円を超えています。
スペインの片田舎で創業し、大きくなった今でもそのままです。
創業者はビル・ゲイツに次いで世界で2番目の大富豪としても有名です。

ZARAの強さは、自社でデザインから物流までをこなすシステムを
構築していることです。ターンアラウンドタイムの速さも見事です。
東京でこういうファッションが流行しているという情報をキャッチしてから、
約2週間でそれが製品化されます。全世界7000店舗の店長らが
待ち行く人の気になるファッションを写真で撮影し、本社へ送ります。
それを本社ではデザイン化し、製品ラインにのせていくのです。

ユニクロは、来年の春用のファッションを大量に1000万着作る、
という手法です。これは「外れた」ときの損害が大きいのですが、
ZARAのシステムだとこのリスクがほとんどありません。
ここがユニクロとの違いであり、
独自の物流システムと製造システムを持つZARAの強さです。



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▼リユース業界がメルカリに食われるのは必然だ
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東洋経済オンラインは8日、
「メルカリに食われる、リユース業界の悲鳴」と題する記事を掲載しました。
ハードオフコーポレーションやトレジャー・ファクトリーなど
リユース・大手の低迷が続くと紹介。フリマアプリ・メルカリの拡大で、
個人間取引が実店舗からネットへシフトしていることが要因で、
急成長を遂げるメルカリとリユース業界がどのように戦うのか、
正念場を向かえているとしています。

私は、正念場を向かえたのではなく、すでに戦いは決していて
リユース業界は淘汰されていくことになると思っています。
リユース業界は、洋服10着まとめて3000円で買取り、
売る方も何とかお金になったからよかった、というモデルです。
ある意味、中古品の収拾業者的な役割もあります。

それに対してメルカリは、欲しいものが見つかれば個人間で売れます。
3万円で購入したものが1万円で売れる、というのもよくある話です。
洋服10着を回収的な意味もあって、3000円で買い取る業者と、
個人間のニーズをマッチングさせて1着1万円で売買できるようにしたメルカリ。
現在メルカリは国内で3500万ダウンロード。
100万件規模の出品があり、半分は売れるということです。

リユース業界にとっては「悲鳴」ではなく「絶命」でしょう。
中古品に価値を認めないというこれまでの業界構造が崩れ去る、
それが是正されていく流れです。
淘汰されていくのは、当然の結果だと私は思います。



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▼留学生支援なら、何かしらのプレッシャーをかけるべき
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「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、
私財を投じて若者の米大学への留学を支援する
一般財団法人「柳井正財団」を設立しました。
ハーバード大やエール大など指定大学の学士課程の合格者37人を対象に、
ひとりあたり年間7万ドル(800万円)を4年間支給するもの。
「多様性の中で日本人の良さ、長所を発見してほしい」と語りました。

私なら大学に限定せず、ベトナムやネパールなどに数年間行って
学んでくるというのも選択肢に加えるかも知れません。
柳井氏のプロジェクトで注意すべき点は、せっかくお金を出すなら、
学生がバケーション気分で終わらないように、
何かしらの強いプレッシャーをかける必要があると私は思います。

来日している留学生を見ても、親がお金持ちの学生のほうが
勉学に集中していないように感じます。
柳井氏が親にかわって資金を提供してくれたら、
それだけでちゃんと勉強するのか?というと、疑問だと私は感じます。
単に「(お金を提供してくれて)ありがとう、柳井さん」
で終わってしまっては意味がないので、何か仕掛けを考えると良いでしょう。




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※この記事は5月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ZARAやリユース業界の話題を中心にお届けしました。

情報のキャッチから製品化まで約2週間という
ターンアラウンドタイムの速さが圧倒的な強さになっているZARA。

このように、市場での競争力を上げるためには、
選択した市場セグメントや差別性に
最適な事業構造を作り上げることが非常に重要です。

他のファストファッションと違い、
ZARAは自社でデザインから物流までをこなすシステムを
構築しているからこそ圧倒的な強さを実現しています。

このように競合と違う事業構造を作りこむ際は、
違う市場のモデルを参考にすることが大切です。

自分の業界だけをみるのではなく、
この事業構造は自社にも使えるのでは?という目線で
他の業界で成功している企業を見る必要があります。

2017年05月19日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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フランス大統領選・ルノー・日産 〜史上最年少大統領のマクロン氏の前途は多難。ルペン氏の敗因と国民戦線の今後は?

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フランス大統領選 エマニュエル・マクロン氏が勝利
ルノー・日産 マクロン新大統領に身構えるゴーン氏

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▼史上最年少大統領のマクロン氏の前途は多難。ルペン氏の敗因と国民戦線の今後は?
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フランス大統領選の決選投票が7日行われ、
中道系独立候補エマニュエル・マクロンが勝利しました。
得票率は66.1%で、ルペン氏を大きく上回る過去3番目の大差となりましたが、
投票率は74.4%と1969年以来の低水準で、投票を棄権、
もしくは無効票を投じた有権者も全体の3分の1にのぼったということです。

マクロン氏は歴史上最年少のフランス大統領になりました。
マクロン氏に次ぐのは、ナポレオン三世ということですから、
150年以上前の話です。
当初は有力候補ではありませんでしたが、二大政党が共倒れして、
国民戦線とマクロン氏個人の戦いになったことが幸いした結果だと言えるでしょう。

総選挙に向けて候補者を擁立するにあたり、
マクロン氏は無所属だったため、新たに「共和前進党」を創設しました。
定数577議席の小選挙区制に対して、
出馬する428人の公認候補を発表しました。

フィールズ賞を受賞した数学者など、ほとんどが政治素人で、
その顔ぶれは半数が男性、半数が女性とのことです。
さて、この陣容でどこまで票が伸ばせるのか?というのが見ものですが、
フランス国内ではすでに「白けている」状態になっています。
ルペン氏には投票したくなかったという消極派も多く、
棄権・無効票が多かったのも事実です。
想像以上にマクロン氏の実態は知られておらず、
支持者が少ないのでは?と懸念も広がります。

個人的には、ドイツとの関係最強化を打ち出しているのは嬉しく感じます。
ドイツ、フランスがガッチリと手を組んでいれば欧州は安定します。
一方、フランス国内の経済の立て直しは大変でしょう。
フランスは官僚が強い国であり、自由主義経済とは程遠い状況です。
オランド政権は経済的には停滞の5年間と言われていますが、
マクロン氏にこの経済の停滞を乗り越えるビジネス経験があるのかというと、
疑問の余地が残ります。率直に言って、前途多難であることは間違いないでしょう。

マクロン氏に敗れたルペン氏は失望感に打ちのめされており、
次の総選挙に出馬しないのではないかとも言われています。
もしルペン氏が出馬しなければ、
彼女を次ぐ人材は今のところ見当たりません。

大統領選における20年間の国民戦線への投票率の推移を見ると、
一時落ち込んだ時期もありましたが、基本的には投票率をのばしてきました。
ここでルペン氏が退いてしまうと、これまでの苦労が水の泡になると言えます。

ルペン氏の敗因はテレビ討論だったと私は感じています。
ルペン氏は、あまりにも経済に対して常識がないことを露呈してしまいました。
英国がすでにEUを離脱「した」と過去形で語ってしまうなど、
最低限のことさえ理解していないと思われても仕方ありません。
その結果、急激に人気が失墜して敗北しました。



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▼フランス政府のルノーへの政治介入は、日産にとっても重大事項
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今、マクロン氏がフランス新大統領に就任して、
政府介入を恐れ身構えているのが、ルノーのカルロス・ゴーン会長でしょう。
マクロン氏は、オランド政権で経済産業デジタル相を務めていたとき、
ルノーへの政治介入を測ったことがあります。

フランス政府はルノーの最大株主です。マクロン氏は、
株式を長期保有する株主の議決権を2倍にできる「フロランジュ法」
を盾に取り、ルノーへの経営関与を強めようとしました。
このときは日産にとって最悪のケースにならずに落ち着きましたが、
もしまた再燃したら今度はどうなるのかわかりません。
場合によっては、ゴーン氏を解雇することすらできるでしょう。

日産にとっては、フランス政府がルノーをどう扱うのか、
というのは非常に重要な問題です。
今後のフランス政府の動きには注目しておく必要があるでしょう。



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※この記事は5月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、フランス大統領選の話題を中心にお届けしました。

歴史上最年少のフランス大統領となったマクロン氏。

経済的に停滞した5年と言われたオランド政権から
山積みする課題を引き継ぎことになり、
フランス国内の立て直しは前途多難だと大前は言及しています。

このような状況下では、やみくもに解決策を実行していくのではなく、
まず、記憶や勘に頼らず、本質的な課題を徹底的に分析することが重要です。

また、解決策の立案においては、
「制約条件」に制約されない柔軟な発想が必要となります。

2017年05月13日(土) 

≫ LVMH・米医療機器大手・米食品大手 〜LVMHとナイキの買収戦略、ブランド戦略の違いとは?

LVMH アルノー家がディオールを完全子会社化
米医療機器大手 CRバードを買収
米食品大手 アドバンスピエールを買収

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【2】問題解決力トレーニングプログラム より
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≫2017年7月開講クラス募集中! 『20代向け 考える力・書く力講座』

6ヶ月間、オンライン講義視聴と演習を繰り返し
論理的に物事を考え、伝える力を鍛える

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【3】問題解決力トレーニングプログラム より
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≫「問題解決ベーシック思考コース」6月開講クラスは【5月25日(木)15:00】まで

考える/ 表現するための基本となる国語を見直すところからはじめ、
問題解決に必要な思考力を鍛える

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【4】BOND-BBT MBAプログラム より
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「子育てと子どもの教育」に関するトーク&交流イベントなどを開催

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【6】あとがき
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■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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LVMH・米医療機器大手・米食品大手 〜LVMHとナイキの買収戦略、ブランド戦略の違いとは?

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LVMH アルノー家がディオールを完全子会社化
米医療機器大手 CRバードを買収
米食品大手 アドバンスピエールを買収

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▼ LVMHとナイキの買収戦略、ブランド戦略の違いとは?
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高級ブランド世界最大手の仏モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)は
先月25日、同社を実質的に支配するアルノー家のグループ会社が
クリスチャン・ディオール社を完全子会社にすると発表しました。
現在74%を出資していますが、残りを121億ユーロ(約1兆4520億円)
で取得するとのこと。ディオール事業をLVMHに集約し、総合的な
ブランド戦略を展開できるようにする狙いです。

LVMHは世界最大の高級ブランドのコングロマリットで、
次のようなブランドを抱えています。

・ワイン・スピリッツ:ドン・ペリニヨン、モエ・エ・シャンドン、ヘネシー等
・ファッション・レザーグッズ:ルイ・ヴィトン、ロエベ、ジバンシィ、リモア等
・パフューム・コスメティクス:ゲラン、アクア・ディ・パルマ等
・ウォッチ・ジュエリー:ショーメ、タグ・ホイヤー、ウブロ、
ブルガリ、フレッドリテイリングの、ル・ボン・マルシェ、DFS等

ハイエンドブランドに集中しているのが特徴です。空港内にある
免税店の半分以上は、このコングロマリットが保有するブランドで
占められていることも珍しくありません。買収に次ぐ買収で、
非常に効率が良いブランド構成を確立していると思います。

かつて私がナイキの社外取締役だったとき、LVMH社を訪問して話を
聞かせてもらったことがあります。LVMH社は買収にあたって、
経理業務などを整理し改善し、またグループ内の複数のブランドで
まとめて広告出稿して有利に交渉を進めるなど、グループとしての
効果を最大限に活用する一方、買収先の元々のクリエイティブや
デザイナーはいじらない、とのことでした。
この両軸が、LVMHが買収を成功させているコツだと私は思います。

逆に、私が社外取締役を務めていたナイキは、買収しても全てを
ナイキ流にしてしまう、という方法でした。
コールハーンを買収したあとの展開も、まさに典型的でした。
ナイキの買収戦略として、必ずしも成功したとは言えません。

ナイキという会社全体で見ると成長をしていて問題はありません
でしたが、結局、すべてを「自分化=ナイキ化」してしまうなら、
何のための買収なのか?ということになります。
ユニクロも似たような課題を抱えています。
ユニクロと自社で作ったGUブランドは上手くいっていますが、
買収したブランドはそれほど成功していません。

LVMHは、「変えるべきところ」「変えてはいけないところ」を
明確にしています。グローバルブランドを買う以上、その価値は
ブランドやデザインにあるのですから、
そこはいじるべき箇所ではない、と私は思います。


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▼米国の医療用品業界、食品業界で進むトップ企業による買収
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米医療用品のベクトン・ディッキンソンは先月23日、
同業の米CRバードを240億ドル(約2兆6400億円)で買収すると
発表しました。バードは血管疾患や感染予防、外科手術などの
専門分野に強みを持ち、これによりベクトンは事業領域を拡大し
海外展開も模索する考えです。

ベクトン・ディッキンソンは医療用品業界で、圧倒的な強さを
見せています。インスリンの注射器やヒト白血球細胞群を自動で
分離解析するフローサイトメトリーシステムで世界トップシェアを
誇り、売上高が約1兆5000億円、営業利益も約1500億円。
時価総額は約4兆5000億円、従業員約4万5000人の巨大な企業です。

今回買収したCRバードは、注射器や輸血用機材などを扱っていて、
売上高が約4000億円です。この売上高からすると、買収金額の
約2兆円は高すぎるとも感じますが、CRバードが血管、泌尿器、
主要や外科専門領域で製品を提供することで、医療用品、検査機器の
会社として、さらに立場を強くすることができます。

知名度を考えると、ハード部門は残りつつも、ブランドは
ディッキンソンで統一されると思います。従業員も約6万人規模に
なり、世界のトップ企業は、このレベルまで達しています。


米精肉最大手のタイソン・フーズは25日、調理済み食品製造の
アドバンスピエール・フーズを32億(約3552億円)ドルの現金で
買収すると発表しました。成長力のある調理済み食品を傘下に収め、
収益の柱に育てるとともに、冷凍デザートなど周辺事業の売却し、
食肉や食肉総菜関連に注力する考えとのことです。

米国の食肉加工会社の売上高を見ると、タイソン・フーズがトップで、
アメリカンフーズ、カーギルのミート部門がその後に続きます。
最大手のタイソンがアドバンスピエールを買収し、もっと大きくなります。

食品業界で支配力が強まると、どこかのタイミングで値上げに
踏み切ります。そういう意味では対抗できる企業があると
良いのですが、タイソン・フーズは、これまでにも買収を重ねてきて、
巨大化してきました。世界的に大きな影響力を持ち始めている
一例だと思います。



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※この記事は5月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、LVMHとナイキの買収戦略、ブランド戦略の話題をお届けしました。

世界最大の高級ブランドのコングロマリットとなっているLVMH。

M&A成功の要素の一つとして、まず、「戦略の適合性」が挙げられます。

LVMHが、「変えるべきところ」「変えてはいけないところ」を明確に
しているように、「そもそも自社の戦略が明確か」
「自社の戦略と適合しているか」という点が評価のポイントとなります。

また、同じように見える事業でも、事業の本質は異なってきます。
フレームワークを駆使して事業構造の分析を効率的に行い、
その事業の価値を生み出す源泉を深く理解する必要があります。

2017年05月05日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米エアビーアンドビー・武田薬品工業・スタートトゥデイ 〜香川県でエアビーアンドビー活用の取り組み開始

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米エアビーアンドビー 香川で宿泊施設開拓
武田薬品工業 長谷川閑史会長が6月退任
スタートトゥデイ ゾゾフリマを6月末終了

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▼ 香川県でエアビーアンドビー活用の取り組み開始
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民泊仲介の米エアビーアンドビーと地域振興に取り組む
NPO法人アーキペラゴが連携し、香川県内で宿泊施設の開拓に乗り出しました。
瀬戸内海の離島などの宿泊施設に対して、エアビーアンドビーへの登録を
後押しするとともに瀬戸内海クルーズなど体験型観光のメニューを揃え、
国内外からの観光客を呼び込む考えとのことです。

エアビーアンドビーは、違法・脱法などと批判されていますが、
宿泊施設に登録を促すという今回のスキームなら何も問題はありません。
宿泊施設の集客支援にもなりますし、お互いに良いことだと思います。

昨年だけでもエアビーアンドビーを利用した海外観光客は350万人。
都道府県別の延べ宿泊者数に占める外国人比率を見ると、
東京、大阪、京都が30%に達しているのに対して、香川は10%です。
まだまだ伸びる可能性は十分です。吉野川などの名所を
上手く利用したプランを打ち出しても良いでしょうし、
このスキームは上手くいくと思います。


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▼国際化に成功した武田薬品の今後の課題
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武田薬品工業は先月13日、長谷川閑史会長が6月の定時株主総会後に退任し、
相談役に就くと発表しました。長谷川氏は社長在任時、
ミレニアム・ファーマシューティカルズ(米国)、ナイコメッド(スイス)の
大型買収を牽引した他、2014年にCEOに就任した際には、後任に
同社初の外国人社長であるクリストフ・ウェバー氏を据える人事を行いました。

長谷川氏の在任期間を振り返ると、
猛烈な台風のように様々なことを実行しました。
日本でも有数の製薬会社であったものの、
大阪のドメスティックな企業だった武田薬品工業は、
あっという間に国際化に成功しました。
ミレニアム・ファーマシューティカルズ(米国)、
ナイコメッド(スイス)の大型買収だけでなく、
和光純薬工業を富士フィルムに売却するなど多くのことを手がけました。

ウェバー氏を社長に据えて、長谷川氏はCEOになり、
その後スケジュール通り、会長職を経て今回退任となります。
トップ人事でこれほど予定通りになることはあまりありません。
非常に珍しいことだと思います。

長谷川氏が去った後、残った武田薬品の課題は、
「もう昔の姿には戻れない」ということです。
役員の大半も外国人で、完全に国際化した企業になりました。
武田薬品ほど国際化に成功した事例は、日本の製薬業界ではめずらしいことです。

日本で育った社員が、この国際化した武田薬品という組織の中で
実力を発揮できるか。スイス、カナダ、米国などの競合企業に対抗しながら、
成長していける人材がどれほどいるか。
おそらく、このまま出世できるのか不安を感じている社員もいるはずです。
今後、武田薬品がどのような姿を見せてくれるのか、期待したいところです。



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▼フリマで圧勝するメルカリにも宅配の課題
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衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは
6月末で顧客同士の古着売買を仲介するサービス「ゾゾフリマ」を終了する
と発表しました。2015年12月にサービスを開始しましたが、
利用者数や取扱金額が想定した数値に達しませんでした。
今後は主力の通販サイト事業などに経営資源を集中するとのことです。
フリマについては、米国と日本で5000万人の会員を獲得しているメルカリが圧勝し、
手も足も出ないという状況になっています。

そのメルカリは、家具や家電など大型の商品の配送サービスを始めるとのことです。
メルカリのサービスは、「個人対個人」「CtoC」です。
宅配も個人で行っていましたが、大型商品については利便性も考慮して、
メルカリが配送をするということです。私が以前から提唱している
「ラストワンマイル」の問題です。メルカリにしても、
CtoCだけではやりきれない問題になってきたということだと思います。


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※この記事は4月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、エアビーアンドビーの話題をお届けしました。

NPO法人と連携し、香川県内で宿泊施設の開拓に乗り出したエアビーアンドビー。

これに対して大前は、宿泊施設に登録を促すという今回のスキームは
上手くいくだろうと言及しています。

今回のように連携や提携で補完的な機能分担や価値提供を行うことで、
高い競争力を獲得し、競合に対する持続的な優位を確保することができます。

提携のパターンは、これ以外にも、航空業界のアライアンスのような、
同業社による規模やエリアの拡大、コンビニや塾など事業ノウハウを
他社に供与しその対価を徴収するフランチャイズなどがあります。

違法・脱法と批判をされていますが、このような連携や提携により、
規制を乗り越え、ビジネスを展開する新たなスキームになるかもしれません。

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