2017年06月30日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米ベライゾン・コミュニケーションズ/米ウーバーテクノロジーズ 〜ヤフーに来てからのマリッサ・メイヤーは、自分の懐にお金を入れただけ

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米ベライゾン・コミュニケーションズ ヤフー中核事業の買収手続き完了
米ウーバーテクノロジーズ トラビス・カラニック氏がCEO辞任

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▼ヤフーに来てからのマリッサ・メイヤーは、自分の懐にお金を入れただけ
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米通信大手のベライゾン・コミュニケーションズは13日、
米ネット大手ヤフーの中核事業の買収手続きを完了したと発表しました。
ヤフーは社名を「アルタバ」に変更し、中国のアリババ集団や
日本法人・ヤフーの株式などを管理する投資会社となります。

2012年からヤフーを率いてきたマリッサ・メイヤーCEOは
退社するということですが、私は彼女のことを全く評価できません。
ヤフーに来てからの実績と言えば、アリババの株を売却して利益を出しただけです。
しかも、その理由はヤフーという会社のことを考えたものではない
と私は思います。おそらく自分自身のボーナスが
会社の利益に連動していたことが大きく影響しているでしょう。
会社にとって重要なことには何一つ着手せず、
自分のポケットに入るお金のことしか考えていなかった、
と私は感じています。

ソフトバンクの孫社長が、ヤフーに対して独自の検索システムを
作るべきだったという指摘をしています。
ヤフーはもともとエディターが人海戦術で
サイト情報を蓄積し検索サービスを提供していました。
そこに1998年グーグルが登場します。
グーグルは全自動でロボットによって世界中のコンピューターに
アクセスし、検索情報を蓄積しました。
ここに、両者の間に大きな力の差が生じました。
ヤフーもしばらくはグーグルの検索データを
利用させてもらっていましたが、結局、差別化もできず、
何ら特徴も打ち出せないままでした。

日本のヤフーは故・井上氏の手腕もあり、独自の成長を遂げました。
また井上氏の後は、スマホシフトに成功しています。
米ヤフーはスマホ対応が遅れ、PCで終わってしまったのも残念な点です。
米ヤフーについて打てる手はいくつもあったはずです。
しかし、グーグルでは輝かしい実績をあげたメイヤー氏は、
残念ながらヤフーでは自分の懐を潤すことしかしませんでした。
自分のポケットに多額のお金を取り込んだ一方で、
彼女は汚名をかぶって辞任していくのだと私は思います。


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▼誰もが賛同するウーバー・カラニックCEOの辞任/経営者は永久就職のメンタリティを捨てよ
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米ウーバー・テクノロジーズの共同創業者である
トラビス・カラニックCEOが20日、辞任すると発表しました。
セクハラ問題などが浮上する中、株主からの圧力が高まり
辞任に追い込まれた形ですが、取締役としては同社に残るとのこと。
一方、ウーバーはこれまでの方針を180度転換し、
スマートフォンのアプリ経由で運転手にチップの受取を認めると発表しました。

おそらくほとんどの人が、カラニック氏の辞任を聞いて賛同していると思います。
自分自身のウーバーのドライバーと口論し罵声を浴びせている様子を
撮影されインターネットで公開されたり、とにかく評判が悪い人物です。
ビジネスウィーク誌やTIME誌でも、批判されてきました。
カラニックCEOは仲のいい役員と2人で暴走し、
セクハラ・パワハラは日常茶飯事だったと暴露されています。

いわゆるユニコーンとしては世界一の企業価値を誇る一方で、
この企業体質では大企業に成長していくことはできないとも指摘されていました。
例えば、従業員に占める女性の割合は、
米国平均47%に対してウーバーは33%と低くなっています。
また管理職の女性割合も、ツイッター社の30%に対してウーバーは22%、
また管理職の77%が白人で占められているという指摘もありました。
あらゆる点において、ウーバーは社会的な責任を果たす企業としての
仕掛けを構築できていなかったという問題があったと言わざるを得ません。

カラニック氏本人としては、身内の不幸もあり一時休暇を
考えていたそうですが、最終的には初期の頃から投資してきた
大手のベンチャーキャピタルから、辞任を求められたとのことです。

企業文化を醸成する経営者の資質は、非常に重要です。
日本では「元リクルート」「元インテリジェンス」の人材に、
こういった資質を見出す人も多いと思います。
元リクルート、元インテリジェンスの特徴は、
入社したときに身分の保証をしない、ということだと思います。

かつてのリクルートでは10年で会社から追い出されました。
この「10年」というような期間設定がなく永久就職を前提とする企業の場合、
最初の10年は活躍しようもない環境になっていることがほとんどです。
そして、その環境の中で本人もさぼることを覚えてしまいます。
最初の10年が勝負、と言われていれば人は成長します。

私が在籍していたマッキンゼーも、毎年2割の社員をクビにしていました。
ですから、社員は5年目に残れるのは2割しかいないと思って仕事をします。
同時に追い出されたらどうしよう?と考えるので、一生懸命仕事に励みます。

クビを前提にすると人は勉強し成長しますが、
逆に永久就職のメンタリティでは人は育ちません。
日本の経営者に求めたいのは、永久就職のメンタリティではなく、
育てること・育てたら出していく、ということを当たり前にすることです。
出ていく人がいるから、また新しい人材が入ってくる余地が生まれます。
これが重要なメンテリティだと私は思っています。



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※この記事は6月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ヤフーやウーバーの話題をお届けいたしました。

人海戦術でサイト情報を蓄積し検索サービスを提供していた米ヤフー。
全自動でロボットによる検索情報を蓄積するグーグルの登場により、
両者の間に大きな力の差が生じました。

将来の環境を見通して、今後どのような市場が重要となるのか、
どういう差別性をとればよいのかを考えることは非常に重要です。

どこまで将来を見通すかは業界によって変わりますが、
ベースとなる環境変化を合理的に想定しておくことが大切になります。

2〜3つ違う未来を予想し、それぞれの未来について話し合うだけでも、
その環境が出現したときに素早く対応することができます。

どのような差別性をとればよく売れるのか?
今後、競合に勝つための事業のKFSはなにか?
など、競合より先を見通すことが重要です。

2017年06月23日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ヘルムート・コール氏/イギリス総選挙 〜メイ首相は、自分の認識間違いに気づき、やり直せ

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訃報 ヘルムート・コール氏が死去
イギリス総選挙 与党・保守党が過半数割れ

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▼東西ドイツ統一の立役者・コール元首相は、偉大な政治家・政策家だった
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ヘルムート・コール元ドイツ首相が16日、死去しました。87歳でした。
コール氏は、1982年の内閣不信任案でシュミット政権を倒し、首相に就任。
89年にベルリンの壁が崩壊すると外交交渉に奔走し、90年東西ドイツを統一。
また、首相在任中に欧州連合(EU)の基礎となるマーストリヒト条約に調印し、
名実ともに「欧州のなかのドイツ」を実現しました。

コール氏は10代の頃から首相を夢見た人物で、16年間首相を務めました。
コール氏の最大の貢献は、東西ドイツ統一にあたっての
「処置」が素晴らしかったことだと私は思っています。
東ドイツとの統一について明確なイメージを持っていました。

まずドイツが統一されて、かつての「強いドイツ」が
復活することに懸念を覚えるであろうロシアとフランスへの対処です。
そのために、フランスのミッテラン大統領、
ロシアのゴルバチョフ書記長と親密な関係性を築き上げました。

そして東西ドイツの統一に際して、
東ドイツ崩壊後は「一気に」統一を押し進めました。
当時、私は東ドイツにも足を運んでいたので実感していますが、
西と東の生活レベルの差は「20対1」ほどあったと思います。
コール氏は、一定額以上の貯金は強制的に東西の紙幣価値を
「2対1」(例外もあり)にすることで、
一気に東ドイツの生活レベルを上昇させて統一を果たしました。

また、旧東独諸州支援のために、連帯付加税を導入しました。
おそらく普通の国なら、このような税金を課されたら大騒ぎになったと思いますが、
コール氏のリーダーシップにより実現し、西ドイツの人たちは我慢したのです。

ドイツの統一を進めつつ、欧州への配慮も 忘れませんでした。
ドイツが強くなりすぎると良くないので、
マーストリヒト条約の発効とEU実現に動きます。
そして、共通通貨ユーロ導入にもつながっていきました。
単に政治理論におわるのではなく、実際にこれらの政策を粛々と実現していきました。

最終的に、東ドイツの復興が十分ではない、
という理由で選挙に敗北することになりましたが、
そのとき後継者としてメルケル氏を抜擢したのも慧眼でした。
西側から後継者を選んでいたら、今のドイツにはなっていなかったと思います。
東側の惨めな状況を肌で知っているメルケル氏はまさに適任でした。

ドイツには、アデナウアー氏、シュミット氏など
優れた政治家がたくさんいましたが、あの瞬間において、
あの状況の中で、世界・欧州が必要としていた人物として、
コール氏はパーフェクトな人物だったと思います。
政治と政策をマッチングさせた手腕は見事としか言いようがなく、
日本の政治家も少しでも見習ってもらいたいところです。


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▼メイ首相は、自分の認識間違いに気づき、やり直せ
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英国議会下院選挙の投票が8日行われ、開票の結果、
メイ首相率いる与党・保守党は318議席を獲得し第1党の座を守ったものの、
解散前から12議席減らし過半数割れとなりました。
メイ首相は少数政党の協力を得て続投を目指す考えを示しましたが、
政権運営は難しさを増し、EU離脱交渉にも影を落とすことになっています。

メイ首相は、発言と行動がバラバラで、
率直に言えば必要が無いことをやって自滅していると思います。
メイ首相の主張は、自分たちだけ「良いとこ取り」をしていて、
欧州の大陸側には全く受け入れてもらえていません。
私に言わせれば、そうとう考えているポイントがズレています。

そのような中でも、メイ首相は「選挙に大勝すれば交渉が有利に運べる」
ということでしたが、それすらできませんでした。
そもそも欧州側は「選挙に勝っても関係ない」と言っていたので、
誰も信じていなかったでしょう。
最近では、メイ首相は議会全体で十分に議論せずに、
側近のアドバイザー2人と密室政治を行っている、
ということも国民に露見し、さらに立場が危うくなってきています。

318議席では過半数に足らないので、
連立を組める相手を探すことになるでしょう。
労働党はもちろんのこと、スコットランド国民党とは組めないでしょう。
そうなると、次は10議席を獲得した
北アイルランドの民主統一党を狙う可能性が高いと思います。
しかし、北アイルランドの民主統一党とメイ首相では
主義主張の相違も少なくなく、これは単なる数合わせに過ぎません。

メイ首相が言うようにブレキシットを実現すれば、
北アイルランドとの間に境界ができてしまいます。
100万人近い人が通勤に利用しているというのに、
境界ができたら大変な事態になってしまうでしょう。
両者が組んだところで、北アイルランドが不安定になるだけで、
まともに連立政権が機能することはありません。

メイ首相は、今回の選挙の結果も踏まえて、
自分の認識間違いに気づくべきです。
客観的に見て、メイ首相がいう「ハード・ブレキシット」は
まず実現不可能です。もし、EUから離脱するにしても、
移民問題だけは条件付きで認めてもらいつつ、
他の貿易などの条件は現状のままでなければ、
交渉が成立することはないと思います。

結果としては、ブレキシットではなく、
移民の問題だけを再交渉という形に落ち着けるのが
実現可能なラインでしょう。それにしても、
すでにリスボン条約に基いて離脱の意思表示をしてしまっているので、
何もなければ2年後に自動的に抜けなくてはいけません。
この点においても、メイ首相は自分の選択を反省すべきだと思います。

そもそも移民問題を取り上げていますが、
これもメイ首相の認識間違いです。
欧州の若者の失業率を見ると、スペインやイタリアは
20%近くの高い水準にありますが、英国はドイツに次いで低く10%未満です。
「移民が仕事を奪ったために失業率が高くなっている、ゆえにブレキシットが必要だ」
というのは政治のレトリックであり、正しい認識ではありません。

メイ首相は数々の自分の認識間違いに気づき、それを認め、
その上で再度選挙をやり直すべきだと私は思います。
それくらいやらなければ、すっきりしませんし、
まともに政権を維持していくことは難しいと思います。




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※この記事は6月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ヘルムート・コール元ドイツ首相や
メイ首相の話題をお届けいたしました。

名実ともに「欧州のなかのドイツ」を実現させた
ヘルムート・コール元ドイツ首相。

政治と政策をマッチングさせた手腕は見事としか言いようがなかったと
ヘルムート・コール元ドイツ首相について言及する一方、
メイ首相に対しては、発言と行動がバラバラで、
必要が無いことをやって自滅していると大前は指摘しています。

記事中でも、メイ首相の移民問題の認識違いについて
指摘していますが、そもそもの現状認識が間違っていては、
元も子もなく、企業であろうと国であろうと迷走してしまいます。

まずは、現状を見誤らないこと。
そして、目指す状態を決め、それに向かってどの実現経路を
たどるかが重要です。

2017年06月16日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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人口動態統計/成長戦略/骨太の方針 〜出生率改善を本気で目指すなら、フランスの制度を研究せよ

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人口動態統計 2016年の出生数97万6979人
成長戦略 即効策なき成長未来図
骨太の方針 「骨太の方針」素案を公表


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▼出生率改善を本気で目指すなら、フランスの制度を研究せよ
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厚生労働省が2日発表した人口動態統計によると、
2016年に生まれた子どもの数は97万6979人で、
1899年に統計をとり始めてから初めて100万人を割り込みました。
1人の女性が生涯に産む子どもの数は1.44と前年を
0.01ポイント下回り、マイナスは2年ぶりとなりました。
出産適齢期の女性の減少が少子化に拍車をかけているとしています。

1970年代以降、ずっとこの傾向は続いており、
今や出生数よりも死亡数が上回る状態になっていて、
日本にとっては致命的な問題です。
これは構造的な問題ですから、今のままでは反転しないでしょう。

この状況を打開するためには、スウェーデンやフランスのように
「戸籍」という概念をなくすことが重要です。
すなわち、正式に結婚していなくても生まれた子供を認める、というものです。

実際、婚姻件数も減少していますから、
結婚に期待するべきではありません。
また年齢別の出生数を見ると、一番多いのは「30〜34歳」、
そして「25〜29歳」「35〜39歳」と続きます。
昔は20代後半が最も多かったのですが、
どんどん高齢出産の傾向が強くなってきています。
高齢出産になると、2人目、3人目が難しくなります。

この状況を考えても、戸籍をなくし、自然婚を認めて、
早い段階から出産しやすい環境を整える必要があると思います。
フランスでは、子ども手当が充実しています。
子どもを育てる過程で、金銭的に言えば2000万円ほどの
手当が受けられることもあります。

日本もフランスの制度を研究するべきです。
今の状況は、小手先の政策ではどうにもなりません。
根本的な制度、環境を見直して、
構造変化をもたらさなければ解決しないでしょう。



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▼具体案なし、実現性ほぼゼロ。成長戦略も骨太の方針もあいかわらず
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日経新聞は先月31日、「即効策なき成長未来図」と題する記事を掲載しました。
政府の未来投資会議で、様々な業種で企業からの申し出に応じて
規制を一時凍結する新たな仕組みを提唱されました。
特定の地域で展開する国家戦略特区に対し、
「プロジェクトごとの特区」といえるもので、
斬新なアイデアや技術をいちはやく取り込み、
新しい市場の創出につなげる狙いです。

しかし一方の労働市場や医療・介護の対策については、
目ぼしい具体策はなく、聞こえの良い未来像だけでは
絵に描いた餅になると指摘しています。

トラックの後続無人での隊列走行商業化など、
いくつか具体的で実現したほうが良いものも含まれていますが、
ほとんどはまさに「絵に描いた餅」そのものです。
せめて、トラックの後続無人での隊列走行などは
真剣に実現してほしいところです。
すでに外国では実施しているところがあるので、研究するべきでしょう。

また、成長戦略と同様に相変わらず何ら具体性もないのが、「骨太の方針」です。
政府は2日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案を公表しました。
人材への投資による生産性向上を柱とし、
幼児教育の早期無償化や待機児童解消を目指すことを明記。
また財政の健全化については、国と地方を合わせた基礎的財政収支を
2020年度までに黒字化する目標を堅持するとともに、
GDPに対する債務残高の割合を安定的に引き下げることを目指す、としています。

竹中平蔵氏以来、「骨太」という言葉がよく使われていますが、
私に言わせれば、中身はずっと薄っぺらです。
「債務残高をGDPに対して引き下げる」と言いますが、
具体的にどのような方法をとるのか?全く不明なままです。

「教育の無償化」も取り上げられていますが、
この財源はどこから持ってくるつもりなのでしょうか?
もしその財源があるなら、なぜ今までやらなかったのか?全く理解できません。
安倍首相は「最低賃金を年率3%引き上げる」と躍起になっていますが、
これは同時に「国外に脱出する企業が増える」という事実を
理解しているのでしょうか?おそらく、全くわかっていないと思います。

後発薬(ジェネリック)を2020年9月までに使用割合を80%にするなど、
ごく一部実現可能で有効なものがありますが、
ほとんどは具体案がない「希望」に過ぎません。
実現方法が全く示されていないものばかりです。
七夕の短冊ならまだしも、このようなレベルのものが、
政府の政策案として発表されるのは情けない限りです。



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※この記事は6月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、人口動態統計の話題をお届けいたしました。

2016年に生まれた子どもの数は、
統計をとり始めてから初めて100万人を割り込みました。

大前は記事中で、日本の今の状況は、
根本的な制度、環境を見直して、
構造変化をもたらさなければ解決しないと言及しています。

ここで大事なことは、現在の延長として解決策を考えるのではなく、
未来がどうなるかを推測し、その中でどうあるべきかを
考えることです。

問題を長期や全体の関係でとらえず、
現状を小さく打開するような打ち手や小さく改善するような
場当たり的な判断は根本的な解決の機会を失ってしまいます。

2017年06月09日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米エヌビディア/米マイクロン・テクノロジー/アマゾンジャパン/ギンザシックス 〜ギンザシックスが無料ポイントカードを発行しないワケ

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米エヌビディア 世界デジタルサミット2017開催
米マイクロン・テクノロジー 次世代DRAM量産へ広島工場に約2200億円投資
アマゾンジャパン アマゾンが最安値条件を撤回
ギンザシックス 無料ポイントカードを発行しないワケ

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▼エヌビディアが自動運転車に果たす役割
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デジタル分野の技術や展望を議論する「世界デジタルサミット2017」が
先月29日、30日、都内で開催されました。
その中で、米半導体大手エヌビディア日本法人の大崎真孝日本代表は、
「18年までに(バスなどが特定ルートを走る)『レベル4』の自動運転技術を確立する」
と述べるとともに、この技術により自動車事故が減り
社会的なイノベーションになると強調しました。

自動運転車の開発といえば、グーグル、アップル、テスラなどが
手掛けていることが報じられてきましたが、
エヌビディアはこれらの企業に対して、
チップ側の技術により問題を解決し助けることができるという立場です。

エヌビディアGPUという主にゲームで重要な役割を果たすチップの
製造を行っている企業です。現在、時価総額は9兆円。
IBM、マイクロソフト、SAPなどもGPUを活用していて、
トヨタとも自動運転車で協力しています。

人工知能の方法論では、1950年代の人工知能、1980年代の機械学習、
そして2010年からの深層学習という段階を踏んでいます。
深層学習では、新しい経験にもとづいてどんどん知能が高くなります。
エヌビディアが開発しているレベル4の自動運転技術を
確立するというチップは、まさに深層学習型です。
この段階で、完全に自動化の一歩手前まではいくと思います。
あとは緊急時の対応だけでしょう。

エヌビディアはチップを製造する企業ですから、
こうしたレベルの高いチップを開発し、
自動運転車の開発に取り組んでいるグーグル、アップル、
トヨタなどに活用してもらえればいいのです。



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▼DRAM市場は堅調。買収された日本勢はもったいなかった
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米半導体大手のマイクロン・テクノロジーは、
広島工場に今後2〜3年で20億ドル(約2200億円)を投じて、
スマホ向けの次世代半導体を量産する見通しが明らかになりました。
スマホやデータセンター、自動運転車などに不可欠な半導体の需要は活況で、
付加価値の高い前工程を受け持つ広島工場に積極投資し、
首位の韓国サムスン電子を追撃する考えです。

日本のDRAMメーカーは枕を並べてマイクロン・テクノロジーに買収されました。
それは残念でしたが、そのマイクロン・テクノロジーが
業界トップ2のサムスンとSKハイニックスを脅かす存在になりつつあります。

DRAM市場について悲観的な味方をする人もいますが、
市場規模の推移を見れば堅調であることがわかります。
また最近では、シリコンサイクルがなく、コンスタントに伸びています。
スマホによって世界で同時に使われるようになったためでしょう。

マイクロン・テクノロジーからすれば、バラバラでうまく機能しなかった
日本のDRAM各社を傘下に収められたのは儲けものだったと思います。
逆に言えば、そこで持ちこたえられなかったのは、日本としては残念でなりません。



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▼公取が入ってアマゾンは変わるのか?
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公正取引委員会は1日、アマゾンジャパンが出品者に
最安値を設定するよう求めていた契約条件を撤回すると発表しました。
こうした手法は、アマゾンに限らず小売業界で一般的に用いられてきたもの。
EC市場で急成長を遂げたアマゾンの支配力が強まりすぎるとして、
公正取引委員会が独禁法違反の疑いでアマゾンを
立入検査して調査を進めてきたものです。

今の日本のアマゾンは強すぎる状態になっていました。
東日販に対しても日販を通さずに直接取引を希望するなど
強い交渉を進めていたと聞きます。
この強い立場で、価格支配、流通支配をするのは
完全に独禁法と正面衝突するしかない状況でしたが、
アマゾンの強さに我慢できなくなった誰かが駆け込んだのでしょう。

アマゾンとしても、公正取引委員会の怖さは
十分に知っているので、すぐに対応しています。
最恵待遇条項を撤回し、好きな値段での設定を促しています。
対応としては、非常に無難なものです。

しかし実際のところ、アマゾンのボリュームが欲しいと思うところは、
最恵待遇条項がなくとも、最安値あるいは
それに近い価格を持っていくということになるだろうと思います。



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▼ビーコンによるCRMの課題
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日経新聞は先月31日、
「ギンザシックス 無料ポイントカードを発行しないワケ」
と題する記事を掲載しました。

ギンザシックスは従来の百貨店事業のCRM(顧客関係管理)を踏襲せず、
外国人観光客なども含めた来店回数が年に数回の顧客を重要視していると紹介。
ポイントカードを発行する代わりにアプリを充実させるとともに、
Bluetoothを活用したビーコンで情報発信やサービス提供を
行う取り組みが導入されているとしています。

これまでビックカメラやヨドバシカメラが代表するように、
ポイントカードを使ったCRMが一般的でした。
今回の仕掛けは、ポイントを発行せずに、
ビーコンで管理した情報をもとにする、というものです。
ビーコンで管理するとなれば、その人がどこにいるのか、
以前はどういうものを買ったのか、ということも詳細にわかるようになります。
そうすると、例えば、ビーコンで誘導しつつ、
大きな買い物をしてくれる可能性が高いという情報を得たら、
その人に対して個別に値引きに応じるという対応が可能になります。

かつてマレーシアのマハティール元首相が、
「キャッシュレスソサエティはカードフルソサエティだ」
と嘆いていたことがありますが、この仕組みを使えばカードフルからは解消されます。
一方で、ビーコンの課題は行き過ぎるとプライバシーの侵害になり、
不快感を与えてしまう結果になる、ということです。
そのさじ加減が非常にむずかしいところかもしれません。

2017年06月02日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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G7首脳会議・米朝関係・北朝鮮情勢 〜北朝鮮崩壊で各国が受け入れられるシナリオ

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G7首脳会議 北朝鮮、テロ対策など外交・安全保障で協調
米朝関係 米の「対話と圧力」甘い見積もり
北朝鮮情勢 日本政府が語らぬ「ミサイル飛来なら逃げ場なし」の現状

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▼信念なき発言で、もはや誰からも信頼をされないトランプ大統領
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主要国首脳会議が、先月26日、27日、
イタリア南部シチリア島のタオルミナで開催されました。
会議では英国マンチェスターで起きた自爆テロを受けて、
国際社会が協力することで一致する一方、
初参加のトランプ米大統領が各国の貿易障壁を批判し、
公平な条件を求めるなど貿易面では摩擦が鮮明になりました。

メルケル首相によると、「7カ国協議ではなく、1対6だった」
と言わせるほど、トランプ大統領が孤立していたとのことです。
欧州の報道を見ると、トランプ大統領の態度が
あまりに下品に過ぎてフィットしていない、と伝えていました。

トランプ大統領にとっては外交デビューであり期待されていましたが、
関税障壁のことなどすべて自分を中心に前に出ていくだけで、
米国の放送局でさえ「恥ずかしい、世界の指導者と同格ではない」と報じていました。

今回のG7でも一層明白になりましたが、
トランプ大統領が口先だけの「嘘つき」であるということが、
何よりの問題だと私は思います。

例えば、中東問題です。
選挙期間中はサウジアラビアやエジプトを持ち上げて、
ISやイランと徹底的に闘うと発言していました。
オバマ元大統領はイランと話し合いの場を持つに至りましたが、
それをすべて無にしました。それにも関わらず、自分の目の前に
スンニ派の人がいると手の平を返して歯の浮くような発言をします。
ローマ法王についても、散々喧嘩をふっかけていたのに、
いざ目の前に出ると「勉強になりました」という始末です。

米国の選挙民からすれば、トランプ大統領のあのキャンペーンは
一体何だったのか?と感じているでしょう。
NATOでも今回のG7でも、もはやトランプ大統領の言うことは、
何一つ信用されないというレベルになっていると私は感じて言います。

主要国首脳会議はかつてG8でしたが、ロシアが排除されてG7になりました。
今のトランプ大統領なら米国も除いて、
G6でもいいと欧州側は考えているでしょう。
結局、トランプ大統領には自分の信念がないので、
目の前のことだけを良く言う、という態度になってしまうのだと思います。




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▼日本に北朝鮮に対する抑止力はない/北朝鮮崩壊で各国が受け入れられるシナリオ
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日経新聞は「米朝関係 米の「対話と圧力」甘い見積もり」
と題する記事を掲載しました。
それによると、北朝鮮は21日、今年8回目となる弾道ミサイルを発射。
国際社会は発射のたびに非難するものの効果は薄く、
トランプ米政権の軍事圧力を見せかけと判断しているフシがあると紹介。
従来の方針を踏襲したに過ぎないトランプ政権の対話と
圧力路線の形骸化は否めないとしています。

G7を終えて、安倍首相はしきりに
「北朝鮮に対する圧力」が成果だと発言していましたが、
事実としてそのような報道は目にしません。
実際のところ、基本的に抑止論は成り立たないという事実を認めるべきです。
北朝鮮からミサイルが発射されれば、数分で日本へ着弾します。
それを守る術はありません。
この厳しい現実を政府や国民に知らせる必要があると私は思います。

マグマグニュースに掲載された
「北朝鮮情勢 日本政府が語らぬ「ミサイル飛来なら逃げ場なし」の現状」
という記事では、詳細にこの現実について紹介しています。
Jアラートとエムネットの双方を使って緊急情報が伝えられることになっていますが、
警報が鳴っても避難できる場所がありません。
仮にシェルターが近くにあっても、着弾するミサイルを回避するためには、
警報を聞いてから数分で避難を終えなければいけません。
これは現実的には不可能でしょう。

北朝鮮をどのように抑えるのか?という命題について、
米国は先制攻撃を想定していましたが、これも北朝鮮がミサイル発射ボタンを一斉に押したら、
韓国への攻撃を防ぐことはできないとわかりました。
おそらく、韓国では100万人規模の被害が出ると言われています。
現状で言えば、北朝鮮の初期攻撃を防ぐ手立ては見つかっていません。

北朝鮮に対して、トランプ大統領が期待するように
「中国が解決してくれる」というシナリオを推す人もいます。
このとき理解しておかなければいけないのは、
中国と韓国それぞれが受け入れる条件があるということです。
もし中国が北朝鮮の崩壊をもたらしたとしても、
中国が38度線まで領土を広げることは、韓国としては受け入れられないはずです。

逆も同様です。米国が韓国に力を貸して北朝鮮を崩壊させたとしても、
米軍が駐在するような形で北朝鮮の地域を支配することを、
中国は受け入れないでしょう。中国にしても、米国と直接国境を接するよりも、
緩衝材として北朝鮮が存在してくれる方がありがたいと感じているはずです。

北朝鮮が崩壊するシナリオを想定した場合、韓国が祖国統一を果たし、
米韓軍事同盟の及ぶところは38度線までとすること、
すなわち米軍のいない韓国として支配すること。
このようなシナリオしか中国は受け入れることはないと思います。



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※この記事は5月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米朝関係の話題を中心にお届けしました。

北朝鮮をどのように抑えるのか?という命題について、
現状で言えば、北朝鮮の初期攻撃を防ぐ手立ては見つかっていない
と大前は記事中で言及しています。

現代社会では、自然災害、テロなど、
起こる確率が低いと思われた想定外の事態が次々と起こっています。

このようなリスクを最小限に抑えるためには、
現在世界中で起こっていることや、今後起こりそうなことに注意を払い、
重要な変化を迅速に認識し、変化に適応することです。

もちろん、これは経営においても同じです。

事前に複数のシナリオを想定し、
どの状況にも耐えうるようにすることで、
想定外の出来事でも慌てずに意思決定を行うことができます。

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