2017年07月28日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ロシアゲート問題/オバマケア代替法案/米トランプ政権/トランプ大統領 〜党内での影響力の低下も見え始めているトランプ大統領

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ロシアゲート問題 「ロシア元工作員」が会合同席
オバマケア代替法案 新たに2人が反対表明
米トランプ政権 スパイサー大統領報道官が辞任
トランプ大統領 トランプ氏の外交政策を「信頼する」22%

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▼明らかになってきたトランプ大統領とロシアの蜜月関係
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トランプ米大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏が
昨年6月、民主党候補クリントン元国務長官に
不利な情報を提供するとしたロシア人弁護士と面会した問題で、
ロシア情報機関の元工作員とされるロビイストら
少なくとも8人がこの会合に参加していたことが分かりました。

ドナルド・トランプ・ジュニア氏が、
うかつにもEメールを見せてしまい、自分たちがロシアとの関係を
上手く利用しようとしていたのが露見してしまいました。
ロシアの富豪の1人であるオリガルヒと呼ばれる政商との関係性を含め、
トランプ大統領とロシアとの繋がりがどんどん明らかになっています。

「トランプタワーはマネーロンダリング装置だ」と
著作の中で指摘したジャーナリストのクレイグ・アンガー氏は、
さらにユーチューブでトランプタワーの内情を公開しています。

トランプタワーはロシアとすでに十数年にわたってべったりの関係で、
ロシアの金持ちが名前を変えて複数個購入しており、
トランプタワーはそれで潤っているなど。
さらに、トランプ大統領とロシアとのコネクションは、
こんなものではないと言いたい放題の様相を見せています。
ついにトランプタワーの内情まで明らかになり、
トランプ大統領=ロシアという構図が白日の下にさらされようとしています。

そのような中、トランプ大統領の共和党内における
パワーバランスも変化していると感じます。


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▼党内での影響力の低下も見え始めているトランプ大統領
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米上院で与党共和党が成立を目指す医療保険制度改革(オバマケア)
見直しのための代替法案を巡り、共和党議員2人が17日新たに反対を表明しました。
これにより合わせて4名が反対し、成立に必要な過半数は得られないことから
上院共和党トップのマコネル院内総務は
「残念だが代替法案は成功しそうにない」との見解を示しました。

民間保険の加入率の推移を見ると、
低所得者用の公的な保険・メディケイドは増加傾向にあり、
無保険の割合が減ってきているのがわかります。
このような効果が認められる一方で、
オバマケアの社会的な負担は大きく、
保険会社が疲弊しているのも事実です。

そこで、オバマケアに代わるものとして自分たちが何を準備するかは置いておいて、
まず「オバマケアを放棄する」というのがトランプ大統領のプランでした。
しかし無計画にオバマケアを放棄しても、
2400万人が無保険状態になり大きなダメージを受けます。

当然のことながら、これは来年の選挙にあたって大きな影響力を持ちます。
これには「賛成できない」と反対表明する人が共和党の中にも出てきました。
トランプ大統領の党内のおける発言力・影響力が落ちてきている証拠でしょう。



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▼陣営もぐちゃぐちゃ、世界からの評価も下がる一方
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そんな中、選挙期間中から報道官を務めていた
スパイサー大統領補佐官が辞任を発表しました。
トランプ大統領が元ゴールドマン・サックスの
アンソニー・スカラムッチ氏を報道責任者に指名し、
スパイサー氏が愛想を尽かしたという形でしょう。
トランプ大統領としては、報道官の仕事が上手く機能していない
と判断してスカラムッチ氏に声をかけたのでしょうが、
トランプ大統領の発言をフォローしていく報道官は大変な職務だと思います。
すでに、トランプ陣営は内部もぐちゃぐちゃの状態です。

トランプ大統領への世界からの評価も下がる一方です。
世界37カ国4万人を対象に行なった世論調査の結果によると、
トランプ大統領の外交政策を「信頼する」との回答は22%に留まり、
昨年のオバマ前大統領時の64%を大きく下回りました。
また全体の75%がトランプ氏の印象を「傲慢」と回答し、
「狭量」「危険」「強い指導者」などが続いたとのことです。

財界には、「米国人であることを恥じる」と発言する人も出てきています。
トランプ大統領の支持者の中で、今なら投票しないと回答した人は
8人に1人とのことです。この割合でも選挙ではヒラリー氏の勝利になりますが、
思ったよりも少ないというのが私の率直な感想です。
良くも悪くもトランプ大統領はカラフルで、
ヒラリー氏は目立たないのかも知れません。

米国が世界の中でどれほど落ちぶれてきたかを考えると、
トランプ大統領が失地回復のために、
中近東、北朝鮮、中国に対する政策で挽回を図る可能性があります。
この点は注意深く見守る必要があると思います。
ただし実際のところ、右腕だったスティーブン・バノン氏の
影響力も低下しており、挽回施策も難しいのが現状でしょう。

すでに「トランプ大統領とは何者だったのか」という分析、
すなわち「(トランプ大統領が)いなくなった」
ことを前提に分析する必要が出てきたと私は感じています。


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※この記事は7月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、トランプ大統領やオバマケアの話題を中心にお届けいたしました。

より多くのアメリカ人に手ごろな医療保険を提供し、
医療と保険の質を高めつつ、医療保険企業を規制して
医療コストを減らすことを目的としたオバマケア。

無保険の割合が減り、効果が認められる一方で、
オバマケアの社会的な負担は大きく、
保険会社が疲弊しているのも事実です。

見直しのための代替法案を巡り、
共和党内でも反対に表明する人がでてきていますが、
意思決定を行うに当たっては、正しく問題を認識し、
問題を解決するための具体的な行動案を設計し、
その効果や影響を評価した上で解決策を選択する必要があります。

影響の連鎖の探求やリスク許容限界の設定などを行った上で、
意思決定を行う必要があります。

2017年07月21日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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世界金融市場/アルゼンチン情勢/清水港/名古屋再開発 〜世界的な金余り。アルゼンチンの100年債にお金が集まる理由

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世界金融市場 1900兆円が玉突き「安全資産」バブル崩壊の足音
アルゼンチン情勢 満期100年の超長期債発行
清水港 清水、クルーズ船寄港急増
名古屋再開発 「貸オフィス」オープン相次ぐ

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▼世界的な金余り。アルゼンチンの100年債にお金が集まる理由
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日経新聞は10日、『1900兆円が玉突き「安全資産」バブル崩壊の足音』
と題する記事を掲載しました。
わずかな利回りを求めて債券や株式に殺到していた年金などの
投資マネーがざわついています。
欧米の景気拡大を受け、FRBやECBが金融緩和縮小を示唆していることが背景にあるとし、
これまで安全資産として買われていた銘柄からの資金流出が本格化する
世界的な官製バブル崩壊の足音が近づいているとしています。

人気株になればなるほど買われます。
なぜこの株を買うのか?なぜこの通過を買うのか?説明できないことが多く、
ほとんどの場合、「みんなが行く道と同じ道」を歩むというだけです。

世界的な金余りの状況が続いており、
アルゼンチン政府が償還までの期限が100年に及ぶ
「超長期債」を発行して話題になっています。
発行額は30億ドル(約3400億円)で、利回りは約7.9%です。
アルゼンチンは200年前の建国以来、
これまでに8回債務不履行に陥っていますが、
世界的な低金利という運用難を背景に
投資家から3倍超の申し込みがあったとのことです。

これも狐につままれたような状況です。
歴史的に見れば、100年前のアルゼンチンは世界有数の経済大国でしたから、
100年後に期待できなくはありません。
しかし現在の格付けで見れば「B」で、
カンボジア、キプロス、ベトナムと同じレベルです。
そのアルゼンチンの100年債に3倍の申込みがくるというのは、
怖いもの見たさ、あるいは100年間あれば
何かあるかも知れないという期待でしょうか。
償還能力があるのか説明不能ですが、
それでもお金が集まるというのは、
世界的な金余りの状況をよく表していると思います。


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▼清水港の果たす役割は大きい
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日経新聞は11日、「清水、クルーズ船寄港急増」と題する記事を掲載しました。
静岡県清水港へのクルーズ船寄港は今年44回を予定し、
前年の3倍に達する見通し。
富士山だけでなく食や農産物といった大都市にはない魅力を打ち出すとして、
クルーズ船各社は寄港を増やす計画です。
港や周辺施設の受け入れ体制は準備不足が目立っており、
外国人を引き付ける地元の観光資源開拓が喫緊の課題としています。

今回清水港にクルーズ船を送ってくるのが、ゲンティン香港。
マレーシアでカジノを運営し、シンガポールでも
セントーサ島のマリーナベイ・サンズを経営しています。
ゲンティン香港は日本政府が出入国管理をやってくれるなら、
清水港を母港化するという姿勢まで見せています。
それほど日本へクルーズ船を派遣するのは定着化してきています。

港湾別のクルーズ船の寄港回数を見ると、圧倒的に博多。
次いで、長崎や横浜など。
清水は2016年にはたった16回だったのが今年は44回を予定しています。
ゲンティン香港が本腰を入れてくれるとなると、
静岡県にとっては相当ありがたい話です。
静岡県知事は、一泊してくれた場合の優遇措置も検討しているそうですが、
確かに大きな効果があるでしょう。
一泊すれば、富士山、伊豆半島、熱海などを見て回ることができます。
そういう意味でも、清水港の役割は大きなものになっています。


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▼名古屋は事務所不足が顕著
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日経新聞は12日、『名古屋、「貸しオフィス」オープン相次ぐ』
と題する記事を掲載しました。
中部でビジネス拡大を目指す外資系企業やベンチャー企業が、
少人数や短期に利用できる手軽さから貸しオフィスを機動的に活用しています。
2027年のリニア中央新幹線開業などを控え、
JRゲートタワーなど名古屋駅前に複合高層ビルがほぼ満室の状況です。
貸しオフィスが普及すれば企業規模の限られる新規参入企業などを
呼び込む効果も期待できるとしています。

名古屋の空室率は6%を割り込んで5%に達する勢いを見せています。
場所によっては空室がありますが、
特に名古屋駅周辺はオフィス不足が目立ちます。
トヨタなどが保有するビルは家賃が高いので、
まずは貸オフィスでやってみるという流れは当然とも言えるでしょう。
家族を東京においたまま、1.5時間で通勤すると考えれば、
名古屋駅周辺のオフィスなら十分可能です。

名古屋はプロジェクトで一時的に滞在する人が多く、
ITビジネスのスタートアップを狙うというのは少し違うかも知れません。
いずれにせよ、名古屋でオフィス・事務所は不足しています。




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※この記事は7月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、世界金融市場の話題を中心にお届けいたしました。

アルゼンチンの超長期債のお申し込み状況からも
世界的な金余りな状況となっています。

しかし、大切なことは、今ある資金を運用するだけでなく
一人一人が「稼ぐ力」を身につけることです。

インターネットの普及とそれに続くデジタル化や
グローバル化、AIの登場などが進む今、
従来までの仕事では利益が出なくなり、
「仕事がなくなる」時代へと移り変わりつつあります。

従来の仕事がなくなるならば、それに代わって
これから必要とされる仕事を見いだし、自分で仕事を創っていく。

そういう発想こそが、求められています。

2017年07月14日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日欧EPA/工学系教育 〜EPAで関税が撤廃されてもワインにはさほど影響なし

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日欧EPA 日欧EPAで大枠合意
工学系教育 工学系教育の見直しを提言

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▼EPAで関税が撤廃されてもワインにはさほど影響なし
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安倍首相は6日、ベルギーのブリュッセルで
EUのトゥスク大統領とユンケル欧州委員長と会談し、
日本とEUの経済連携協定(EPA)の締結で大枠合意しました。
EU側が日本車にかける関税を協定発行後、
7年かけて撤廃する一方、日本はEU産チーズで低税率の輸入枠を
数万トン分新設することなどで折り合ったもので、
日欧間の貿易が活発になり双方のGDP押し上げ効果などが期待されます。

EUの主な貿易相手をみると、輸出相手として日本は6位でロシア以下。
輸入相手としても6位でトルコの下になり、
それほど大きな立場ではありません。
日本側の輸入品を見ると、医薬品が断トツで、
自動車、有機化合物、原動機、肉類などが続きます。

EPAの報道でワインへの影響が取り上げられることがありますが、
ワインの輸入量はそれほど大きくはありません。
また、実は関税も決して高くありません。
私はワインを個人で1ダース、2ダースと輸入することがありますが、
ワインの関税は125円/リッターに過ぎません。
例えば現地で5万円の高級ワインを輸入しても、
関税は125円/リッターなのであってないようなレベルです。

ワインの価格が日本で高騰してしまうのは、
関税ではなく、輸入代理店・総代理店と呼ばれるところが、
価格を釣り上げているからです。私が好きなワインに、
ルーチャのブルネッロ・ディ・モンタルチーノというものがあります。
現地価格19ユーロで、輸入して関税を払っても
3000円を超えることはありません。
このワインが日本の通販サイトでは18,000円で売られていて、
レストランのメニューでは6万円になっています。
ワインに関して言えば、問題の本質は税金ではありません。

その他の食べ物を見ると、パスタもそれほど影響はないでしょう。
一方、肉類は現在の関税が482円/キロですから、
これが撤廃されると大きなインパクトがあります。
スペインのイベリコ豚などが有名ですが、
その他にもハンガリーやポーランドなど
東ヨーロッパ系統の肉類には期待できると思います。
チーズは品種によって大きく条件が異なりますが、
安い枠を新設してくれるのは日本としてはありがたいでしょう。

欧州と日本のEPA協定にカリカリしているのが米国です。
これによって、日本における米国の農産物のポジションが
落ち込むことは間違いありません。TPPから撤退したものの、
その後何も手を打てていないトランプ大統領も、
この点の指摘を受けたのでしょう。
あわてて貿易問題を持ち出し始めたのは、このためだと私は見ています。

関税以外の合意として、日本地方自治体に欧州企業が入札できるなど、
今後何か大きな違いを生み出すかもしれません。
また、相互の地理的表示(GI)保護制度を
認め合うことになったのは非常に良いことだと思います。



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▼大学と大学院の一体化など、愚の骨頂。大学院は専門性を高める場所
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文部科学省の有識者会議は、先月27日、
工学系教育の見直しに関する提言をまとめました。
大学工学部の4年と大学院修士課程の2年で一体的な
カリキュラムを組む学部修士6年一貫制の導入を柱とするもので、
AIやビッグデータなど技術革新が目覚ましい一方、
従来の工学系教育は分野ごとの縦割りが顕著で
時代の波に対応できない、との声が上がっていました。

これは全く最悪の政策です。このような判断をするとは、
とても有識者と呼ぶべきではないと私は思います。
重要なのは、学部と修士課程の一体化ではなく、
高校から工学系の授業を始めることです。
日本の工業高校では一部授業に取り入れていますが、
普通高校でも工学部的な授業をはじめるべきだと思います。
その上で、高校と大学で連携をとるのも良いでしょう。

しかし大学院というのは、全く別で考えるべきです。
大学院の目的は、修士課程、そして博士課程を通じて専門性を高めていくことです。
例えば、米国のMITには全米・全世界の工学部から優秀な学生が集まり、
大学院では彼らがさらに専門性を磨きます。
この「専門性」こそ、大学院が持つ優位性であり重要な要素です。

学部と大学院の一貫性では、このような専門性を打ち出すことはできません。
専門性は博士課程とつながっています。
博士課程の学生が修士課程の学生に教えてくれる、
あるいはさらに高い専門性を持つ世界的権威の先生が直接教えてくれる環境。
この専門性を持つのは大学院であり、
大学ではこのようなことは無理です。
工学部と修士過程を一緒にしても、全く専門性は生まれず、
どちらにとっても良いことはありません。

どのような有識者会議だったのか私は知りませんが、
このような提言をするというのは世界の現状を知らないのでしょう。
全ての工学部は、最高の大学院に行くことを目的として勉強するべきです。
安易に一緒にしても、緩い環境を生み出し、
ほとんど役に立たない人間を作り出すだけになってしまう、と私は思います。




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※この記事は7月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、日欧EPAの話題を中心にお届けいたしました。

大前は記事中で、関税撤廃による影響について触れていますが、
PEST分析のようなマクロ環境分析は戦略立案において、非常に重要です。

自社で提供している製品、サービスや目の前の顧客だけをみていると
その市場の外側で何が起こっているのかが、見えなくなってしまいます。

環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探り、
現在の環境とともに将来の環境に基づいて戦略を立案することが大切です。

そのためには、戦略家のマインドとして、
PESTに対する情報感度を常に高くすることです。

特にテクノロジーに関しては、重要かつスピードが速いため、
感度を高くすることが必要です。

2017年07月07日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米テスラ/ロッテHD 〜テスラは中国市場を狙える/中国国産車が海外に出るには20年必要

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米テスラ 米テスラ株が反発
ロッテHD 重光武雄名誉会長が取締役退任

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▼テスラは中国市場を狙える/中国国産車が海外に出るには20年必要
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先月20日の米株式市場で電気自動車(EV)のテスラの株価が4営業日ぶりに反発しました。
自動運転機能を搭載したEVで2016年に発生した死亡事故について、
米運輸安全委員会が前日に公表した報告書で
「ハンドルに手を置いて操縦するようテスラが運転手に繰り返し警告していた」
ことが指摘されたのを好感した動きと見られています。

2016年に死亡事故が発生した時には、「テスラの失敗」と指摘され、
テスラの先行きに疑問を投げかけられました。
しかし今回の報告書で、テスラの自動車は運転手に対応するように警告しており、
運転手がそれを怠ったという事実が判明しました。

一般的に自動運転には4つの段階があります。巷で話題になるような
人間が関わらないでいい完全自動走行はレベル4です。
レベル1は「加速・操舵・制動」のいずれかを
システムが対応するというものです。
このレベルでも、難しい課題が未だに残っています。

例えば、急に人間が飛び出してきたら
自動的にブレーキをかけることはできても、
カンガルーや鹿といった人間以外のものを検知できないことがあります。
オーストラリアの人身事故の多くはカンガルーとの接触ですから、
無視できるものでもありません。

レベル2になると「加速・操舵・制動」の複数をシステムが担当します。
そして、レベル3になると「加速・操舵・制動」の
全てをシステムが担当できるようになります。
ただしこの場合も、システムから要請を受けた時には
ドライバーが対応する必要があります。
つまり、2016年に発生したテスラの事故は、
レベル3においてシステムの要請をドライバーが無視した結果でした。
レベル4になってようやく全くドライバーが関与しない、
完全自動走行になります。
レベル4実現の見込みは2024〜25年頃と言われています。

2016年の死亡事故で一時的に下落したテスラの株価は、
また上昇の兆しを見せています。
今後も期待できる材料があると私は見ています。
それは「中国市場」の可能性です。
イーロン・マスク氏も当初は中国市場への展開に難色を示していましたが、
実際にテスラのシェアを見ると、中国において
米国市場に引けを取らない数字を残しています。

中国市場の大きさも魅力的です。中国の自動車生産台数は約2800万台で、
米国の約1700万台よりも、1000万台以上多くなっています。
電気自動車でみても、米国の約16万台に対して
中国では約50万台生産されています。
さらに中国政府が、電気自動車用の充電ステーションの
建設に力を入れると発表していますから、
今後はさらに期待できます。現状でもテスラは、
フォードやGMの時価総額を上回っていますが、
中国において優位なポジションを確立できるとなると、
さらに上の段階へ突き抜けた存在になるかも知れません。

中国の自動車市場について、中国の国産メーカーが力をつけて
中国車を海外へ輸出してくることがあるのではないか?
という意見もありますが、私はそう簡単ではないと見ています。
中国で生産される2800万台のうち2000万台は、
外資系企業と合併するなど、何かしら外資に依存しているものです。
残りが純国産の中国車になりますが、これらを海外に売り出すためには
それぞれの国で「販売網」を構築する必要があります。

かつて日本企業は、米国で販売網を構築するのに約20年かかりました。
それだけ販売網・サービス網を構築するのは大変な仕事です。
もしやるなら、ファーウェイがエジプトに進出したように、
どこか1つの国を選んでやっていくべきでしょう。

しかし実際のところ、あまりに急速に成長してしまったこともあり、
中国の経営者には20年という長期スパンを持っている人は少ないので、
実現性は低いと私は思います。仮に目指す経営者がいたとしても、
私の経験から言えば「20年」は必要です。



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▼ロッテのお家騒動は、決着を見た
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ロッテホールディングスは先月24日、定時株主総会を開き、
創業者の重光武雄名誉会長の取締役から外れる人事案を可決しました。
一方、創業家長男で前副会長、重光宏之氏が
自身の取締役への復帰などを求めた株主提案は否決され、
これにより次男で副会長、重光昭夫氏が
日韓のロッテグループを掌握することになります。

日本のロッテは、元住友銀行の佃氏が代表取締役を務め、
重光昭夫氏と一緒にやっていく体制が固まったと見ていいと思います。
創業者の重光武雄名誉会長の取締役退任人事が通ったということは、
従業員持株会なども重光昭夫氏を支持したということでしょう。

お家騒動で世間を賑わせたロッテですが、今回で決着したと思います。
重光宏之氏は、現在公判中の立場にある重光昭夫氏を批判していますが、
株主総会で可決されてしまいましたから、もうこれ以上は難しいでしょう。

ロッテは日本で創業した会社ですが、韓国のほうが大きく、
今では5大財閥に入り込むほどになっています。
流通、化学・建設業に強く、その建設に対する強みを活かして
日本での展開も試みましたが、上手く行きませんでした。
結果として、日本のロッテは「お菓子のロッテ」のままです。
佃・昭夫コンビになって、今後のロッテを
どう舵取りしていくのか注目していきたいと思います。



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※この記事は7月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、テスラの話題を中心にお届けいたしました。

2016年の死亡事故で一時的に下落したテスラの株価は、
再度、上昇の兆しを見せています。

そして、そのテスラに対し、「中国市場」の可能性から
今後も期待できる材料があると大前は指摘しています。

戦略の中でも市場の選択は戦略の中心となり、
どの市場に経営資源を投入するかは重要となります。

また、市場を選択する際には、規模、成長性、
潜在的な成長余地などを考慮していく必要があります。

大前も記事中、中国市場の大きさの魅力について触れていますが、
人口動態や関連機器販売量など市場規模を推進する要因や、
先行市場との比較などから、市場の潜在的成長性を
判断することができます。

どの市場を選択するかによって、
その後のビジネスのスケールや成長スピードは大きく左右されます。

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