2017年10月27日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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中国情勢/スペイン情勢 〜大国になりつつある中国。国家として本質的な問題に対処せよ

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中国情勢 中国共産党大会が開幕
スペイン情勢 カタルーニャ州の自治権一部停止を閣議決定

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▼大国になりつつある中国。国家として本質的な問題に対処せよ
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5年に1度開催される中国共産党大会が18日、開幕しました。
冒頭に演説した習近平国家主席は、
「共産党政権下での発展は他国に新たな選択肢を示した」とし、
中国が「世界の舞台の中心に立ち、人類により大きな貢献をするときが来た」
と強調。また、腐敗撲滅運動により党幹部を含む
150万人を処分したとし、1期目の成果を強調しました。

中国は自身が偉大な国になったと主張したい気持ちが大きいのでしょう。
確かに米国に並ぶ大国になりつつあり、軍事的にも強国になってきています。
しかし、一方で同時に起こっている腐敗体質について
何ら問題が解決されていないのが問題です。

中国の腐敗は共産党一党独裁が長期間続き、
許認可を全て掌握していたことに根本的な原因があります。
腐敗撲滅運動として約150万人の処分をしたと発表していましたが、
そもそも根っこが腐っているのではないか?
という点については、何ら対処していません。
そしてこれは一般民衆も感じていることだと思います。

習近平国家主席の演説を聞いていても、
中国の本当の問題には全く触れていなかったと私は感じました。
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、
ミンスキー・モーメントからの離脱が難しい状況にある、
という中国経済の問題点について発言していますが、
習近平国家主席からはこの点についての言及もありません。
私に言わせれば、このような本質的な問題を認識しているのかさえ疑問に思います。

中国という国が大国になっていくのは良いことですが、
その一方で失敗した時の影響も大きくなるという点が重要です。
世界中の国が膨張気味の中国をどうにか吸収しようとしていますが、
うまく吸収しきれなかったり、あるいは軍事戦略に利用されたりしたらどうするのか?
世界はいまだに大国への道を歩みつつある中国を消化できていない、
という状況だと思います。

ミャンマーのロヒンギャ問題では、
世界中からアウンサンスーチーへの批判が高まっていますが、
中国は認める立場をとっています。これはミャンマーに港をつくり、
インド洋への足掛かりにしたいと目論んでいるためです。
このように中国は、いまだに利己的な他国との付き合い方をしています。

残念ながら私が見ていた限りでは、今回の共産党大会で
こうした中国の本質的な問題にメスを入れるような発言はなく、
その対策についても触れられていませんでした。


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▼カタルーニャ州独立運動の行方とその影響
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スペインのラホイ政権は21日、
独立を目指して憲法違反を重ねているとして、
カタルーニャ自治州政府の権限を奪う自治権の停止に
踏み切ることを閣議決定しました。
月内にも上院が承認する見通しで、中央政府の権限で州議会を解散し、
6ヶ月以内に議会選を実施する方針です。

ラホイ政権にはそれほど力はないと思っていましたが、
想像以上に強固にカタルーニャ州を押さえ込んでいます。
EUが同じ立場をとっているのも強みになっているのでしょう。
カタルーニャ州は議会を解散させられてしまうと選挙になりますが、
そのままなし崩し的に独立運動を止められてしまうのか、
これから数週間がまさに瀬戸際です。

カタルーニャ州がバスク州や英国の北アイルランドのように
テロリスト化すると大変な事態になります。
そうならないためには、スペイン政府とカタルーニャ州で
話し合いをするしかありませんが、政府側がそれを拒否しています。

バスク州は徴税権を認められ、やや安定していますが、
ZARA本社があるガリシア州など独立志向が強い自治州は他にもあります。
また少し毛色が異なりますが、イベリア半島のジブラルタルも、
今後問題が出てくる可能性が高い地域です。
ジブラルタルは英国領になっていてスペインは返還を求めていますが、
英国はそれに応じていません。

英国がEUから正式に離脱すると、
ジブラルタルとスペイン間の行き来に制限がかかります。
これまではEU加盟国同士なので自由でしたが、
国境審査が入るとなったらスペインにとって非常に面倒なことになります。
来年11月に予定されているブレキジットに向けて、
両者はさらに揉めることになると思います。

また、カタルーニャ州の独立運動に刺激されて、
イタリアのロンバルディア、ヴェネト、ピエモンテなど、
もともと独立運動をやっていた地域では自立の気運が高まるかもしれません。
イタリアという国は郷土色が非常に強い国です。
独立運動にまで発展する可能性は低いと思いますが、
何か動きがあってもおかしくはありません。

私はかつて地域国家論という本を書きました。この本は、
スペインのカタルーニャ州、ガリシア州、カナダのケベック州などで、
教科書の1つとして使われていました。
そのおかげで、こうした地域に呼ばれて講演をしていた時代があります。
私は日本でも道州制を推奨していますし、
世界のこのような地域でも自立して欲しいと思うところがあり、
今回のようなニュースを聞くと心が痛む部分があります。
心情的にはカタルーニャ州に徴税権を与えるぐらい
自立させてあげればよいのではないかと感じています。



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※この記事は10月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、中国の話題を中心にお届けいたしました。

中国は米国に並ぶ大国になりつつあり、
軍事的にも強国になってきています。

しかし、その一方で、同時に起こっている腐敗体質について
何ら問題が解決されていないのが問題だと
大前は記事中で指摘しています。

習近平国家主席は、腐敗撲滅運動による成果を強調していますが、
それは、単なる現象への対症療法にすぎません。
対症療法をいくらやっても本質的な問題が解決されなければ、
また別の形で問題が出てきます。

問題解決に関して「本質的な問題」と「単なる現象」を区別し、
本質的な問題に焦点を合わせることが重要です。

2017年10月20日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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衆院選/希望の党/受動喫煙防止条例 〜希望の党が空中分解するのは必然

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衆院選 自民、公明が300議席に迫る勢い
希望の党 衆院選公約に「ユリノミクス」
受動喫煙防止条例 受動喫煙防止条例が可決、成立

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▼希望の党が空中分解するのは必然
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日本経済新聞社が、10〜11日に行った序盤情勢調査によると、
自民、公明両党で300議席に迫る勢いとなったことがわかりました。
小選挙区に野党の候補が複数出馬することで、
政権批判票が割れ、与党の候補が相対的に浮上しています。
時事通信の調査でも、比例代表の投票先は自民が3割を超えて
最も多く、次いで希望の党の11.8%となっています。

「排除の論理」発言で物議を醸し、
一気に小池氏への支持は落ち込んだ様子を見せています。
今や希望の党陣営は、希望どころか失望状態で
選挙事務所も葬式のように静かだと聞きます。
結局のところを言えば、「上から目線」「自己主張が強い」
「プライドが高い」という小池百合子氏の正体が現れてきた結果でしょう。
これでは、さすがに「小池ブーム」が巻き起こることもないでしょう。

一方で民進党の前原氏は、希望の党にすがって党員を引き連れた挙句、
小池氏に「排除の論理」を持ち出され、肩透かしを食らいました。
結果として、前原氏も「分別の無さ」「統率力不足」
「交渉力の無さ」「リーダーシップの欠如」など、
その正体を露わにした形となりました。

最終的に残るのが自民党というのは、
あまりにも醜悪に過ぎると思いますが、これが現状です。

小池氏が「波」を起こすためには、
やはり出馬することが必須だったと感じます。
都政を投げ出すことに批判の声も出るでしょうが、
後継者次第では、十分な納得感を得ることも可能だったと思います。

代表という立場を取りながら、出馬もせず、
首班指名のアイデアもないのは無責任に過ぎると思います。
特に、首班指名を決定しないのは致命的です。
日本維新の会と連携しても、維新の会代表の松井氏も国会議員ではなく、
首班指名対象にはなりません。
これでは有権者としては誰に投票すればいいのか、判断できないでしょう。

今回の選挙では、比例代表を見越して無所属になるわけにはいかないので、
とりあえず希望の党に所属したという人が大半でしょうが、
現在の状況からすれば、当選さえできれば小池氏はすでに不要な存在であり、
その後も一緒に歩むのは不可能だと考えていると思います。
選挙が終われば、希望の党が空中分解することは間違いないでしょう。
小池氏の無責任さが招いた結果として、必然だと感じます。


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▼小池氏には、一貫した主張や姿勢が全く見られない
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今回の選挙にあたり、小池氏は公約と政策集で安倍政権の経済政策
「アベノミクス」について「一般国民に好景気の実感はない」
と指摘し、民間の活力を引き出す「ユリノミクス」で
成長と財政再建の両立を目指すとしました。消費増税は
「景気が失速する可能性が高いため凍結」と強調し、増税分の代替財源で
「約300兆円もの大企業の内部留保の課税を検討する」と発言していました。

深く考えずに、周囲にいるアドバイザーのささやきを、
そのまま言葉にしてしまったのでしょうが、
あまりにもお粗末です。自民党の麻生太郎氏から、
内部留保課税について「二重課税になる」と
指摘を受けていましたが、まさにその通りです。

内部留保はすでに法人税を支払った後に残っているお金ですから、
これに課税するなら二重課税になります。
小池氏は、そもそも内部留保の仕組みや
基本的な企業会計のことすら理解していないのでしょうか。

また、理解してもいないことを軽々しく発言してしまうこと自体、
大きな問題だと私は感じます。
都民ファーストを掲げたときには、公明党と手を組みましたが、
憲法改正には反対する立場の公明党と連携することは、
小池氏の態度として一貫性を欠くものでした。
結局、この頃から、「目の前のことだけ」を対処し、
とりあえずその場をしのいでいく、という姿勢は変わっていません。

小池氏が進めた政策で唯一良かったのは、
「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」でしょう。
先日、東京都議会で賛成多数で可決され、成立しました。
ただし、この政策も甘い部分があります。
例えば、レストランなどで適用されるものではなく、
主に家庭においての努力目標にとどまっています。
罰則もありません。方向性としては良いと思いますが、
このままでは、いい加減な努力目標のままで終わってしまうでしょう。



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※この記事は10月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、選挙の話題を中心にお届けいたしました。

誰と誰がどういう形で手を組むのか、最後までもつれ、
混迷した選挙戦になりそうです。

昨今の国際情勢や、国内政治の状況の中、
今を生き抜くために個人でできることは、
『情報を集め、自分の意見を形成する能力を磨く』ことです。

総選挙の後に「○○党が△△人当選した」
などと目先の結果を見て騒ぐのではなく、
「こんな制度で本当に日本を維持できるのか」
というように、前提となる法律や制度にも
まず、疑問を持つことが重要です。

自分で疑問を持ち、自分で調べるという姿勢が身につけば、
それだけで強力な力を持つことができます。

疑問を持ち、自分で調べ、自分の判断で生きていく
工夫をするための「自分で考える力」が必要です。

2017年10月13日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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コンカー/産業革新機構/リョービ/楽天/ソフトバンクグループ/トヨタ自動車/米携帯大手 〜楽天のフリーテル買収は成功、ソフトバンクのスプリントは苦戦

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コンカー Suica利用データで経費精算
産業革新機構 「再生」に傾く革新機構
楽天 大赤字のフリーテルを買収する計り知れないメリット
リョービ 電動工具事業を京セラに譲渡
ソフトバンクグループ 日本電産・永守重信氏が社外取締役退任
トヨタ自動車 アメリカでHV車基幹部品生産へ
米携帯大手 スプリント株急落

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▼コンカーのシステムは領域を広げるべき
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出張・経費管理システムを手がけるコンカーは先月25日、
交通系電子マネー「Suica(スイカ)」の利用データを使った
経費精算サービスの実証実験を始めると発表しました。
事前に登録したスイカで鉄道やタクシーに乗ると、
日付や運賃など利用実績を自動でシステムに転送するもので、
2019年度末までの実験結果を踏まえサービス化を検討するとのこと。

コンカーはドイツのSAPが買収した企業で、
出張経費などのシステムを提供しています。
日本法人は、セールスフォースやマルケトの日本法人を
共同出資で設立したサンブリッジが
米国の本社と共同出資で立ち上げた会社です。

残念ながら今回発表されたシステムなど、
コンカーの業務領域を考えると、
ホテルやレンタカーも扱っているので、
対象領域は少し狭いのではないかと私は感じています。


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▼焼け太りする産業改革機構
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日経新聞は先月25日、
『「再生」に傾く革新機構 50倍に膨れあがった原点』
と題する記事を掲載しました。
東芝が半導体メモリー事業の買収で主要な役回りを演じた
官民ファンド・産業革新機構について、
設立当初の主目的はベンチャー投資で、
原資もわずか400億円だったものの、
現在は投資枠2.1兆円の巨大ファンドになっており、
この機構が20225年3月末までの時限組織であることを踏まえ、
今こそ過去の設立経緯や成果の十分な検証が必要としています。

本来は創業関係の投資が目的だったので、原資も400億円程度でしたが、
はじまってみると革新機構ではなく、
「救済機構」になってしまい、一気に資金が膨らみました。
経産省にしてみれば、自分たちが顎で使えるようなモノですから、
非常に便利なものになっていると思います。
結果として、焼け太りのように2.1兆円にまで
ふくらんでいるのは経産省らしいやり方だと思います。


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▼楽天のフリーテル買収は成功、ソフトバンクのスプリントは苦戦
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ダイヤモンド・オンラインは先月29日、
「楽天が大赤字のフリーテルを買収する計り知れないメリット」
と題する記事を掲載しました。今回の買収は楽天にとって、
買収価格が安い・比較的簡単に黒字化が見込める・
本業にとってもプラスなどのメリットがあると紹介しています。
楽天の携帯電話事業と合わせると大きくなる目処は立ちますし、
ユーザー一人あたり4800円で獲得できたとなると、割安でしょう。

一方、ソフトバンクが傘下におさめている
米スプリント社について、先月25日の米株式市場で株価が急落。
過去4カ月で最大の下げを演じています。
孫正義会長は強気の発言をしていましたが、結局、
ドイツテレコム傘下のTモバイルと合併する可能性が高く、
現在デューデリジェンスが行われているようです。
こうなってくると、株価が下落するのは致し方ない状況でしょう。

またソフトバンクグループは29日、日本電産の永守重信会長兼社長が
30日付で社外取締役を退任すると発表しました。
「本業との兼務が困難となった」としていいます。
かつて私も社外取締役を務めていて、1期2年で退任しました。
私は退任するとき、孫正義会長から
「自分に対して色々と忌憚なく言ってくれる人はいないので」
と慰留されましたが、おそらく永守氏も同じような立場だったのだろう、と思います。


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▼転換期を迎えた電動工具市場/トヨタがHV強化する重要性
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ダイカスト金型鋳造大手のリョービは先月29日、
電動工具(パワーツール)を手掛ける国内外事業で新会社を設立し、
新会社の80%の株式を京セラに譲渡すると発表しました。
これにより京セラは電動ドライバーや切断機などの品揃えを
強化するとともに、リョービは主力のダイカスト部分に
経営資源を集中する考えです。
リョービの主力であるダイカストの1つが電動工具です。
それを売却してしまうというのは、
KKRが日立工機を買収した事例も含め、
電動工具という市場が1つの転換期を迎えているのだと感じます。

トヨタ自動車は米国での生産体制を強化し、
米国地域の五つの工場に合計で約3.7億ドル(約414億円)
を投資すると発表しました。EVだけでなく、
HVへ投資するのは非常に良いことだと思います。
都市で走る時には電気で動くように再設計すれば、
環境対応車として通用するはずです。
「環境対応車」として扱えるというのは、
トヨタの戦略上も極めて重要な要素だと思います。



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※この記事は10月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

先月25日の米株式市場で株価が急落した
ソフトバンクが傘下におさめている米スプリント社。
現在デューデリジェンスが行われているようで、
株価が下落するのは致し方ない状況だと大前は指摘しています。

デューデリジェンスのように会社を包括的に分析するのは、
一見、現場と関係ないと思われますが、
分析した結果に見えてきた穴は、現場に必ず影響が出ます。

例えば、M&Aで会社が思わず高値で買ってしまったつけは、
無形固定資産としてBSに表れ、その分だけ
現場は売上をあげなければならないなどの影響が出てきます。

自分には関係のないことだと思うのではなく、
まずは、自分の会社を実際に分析してみることが大切です。

2017年10月06日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ドイツ連邦議会選/英EU離脱問題/イラク情勢/スペイン情勢 〜イラクのクルド自治区、スペインのカタルーニャ州など独立問題の対策は重要

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ドイツ連邦議会選 メルケル首相が4選へ
英EU離脱問題 第4回交渉会合が終了
イラク情勢 住民投票で「独立賛成」が92.73%
スペイン情勢 カタルーニャ投票所 約1300箇所を制圧

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▼メルケル首相。議席は減ったものの、連立樹立はそれほど難しくない
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ドイツ連邦議会下院選挙の投開票が、先月24日行われ、
メルケル首相が率いる与党・キリスト教民主・社会同盟が
246議席を獲得し、第1党を維持しました。
メルケル氏の首相4選が確実になりました。
一方、新興右派の「ドイツのための選択肢」が94議席を獲得し、
初の国政進出で第3党に躍進。
大幅に議席を減らした与党は今後、
他の党との連立を模索することになりますが、
安定した政治基盤が築けるかが焦点となります。

メルケル首相は、半年前あるいは1年前には
今回の選挙に負けるかもしれないと言われていました。
その状況考えると、今回の結果は「負けていない」
「そこまでひどくない」と言えるでしょう。

「難民受け入れをドイツ国民は誇りに思うべき」
とメルケル首相は発言しています。
難民のピークは2016年で、今年になって落ち着いてきてはいます。
それでも、このような発言をした上で再選されたというのは、
すごいことだと思います。

今回の選挙で、与党は議席数を減らしてしまいましたが、
メルケル首相にとっては連立の交渉はそれほど難しくないでしょう。
社会民主党は嫌がると思いますが、
その他の政党をいくつかかき集めてくれば、
連立を成立させることは可能でしょう。

先月27日、ショイブレ財務相が退任を発表しました。
ショイブレ氏と言えば、最も安定し信頼されている人物であり、
ギリシャの破綻に際して改革を迫るなど、
ユーロにとっても守護神のような存在でした。
財務相を退任し、名誉職のポジションに就くのでしょうが、
メルケル首相としては、空いた財務相のポストを利用しつつ
連立の交渉材料にすることも可能でしょう。

また欧州の状況変化と言えば、英国のEU離脱を巡る第4回交渉会合が、
先月25日〜28日まで開かれました。交渉に先立ち、
メイ首相が離脱後も2020年まではEU予算の分担金を支払うとともに、
「EU加盟中にした約束を英国は守る」と表明しました。

これにより、EU側からも評価する声が上がりましたが、
EU側と英国側が試算する精算金の差は大きく、
協議の進展には時間がかかりそうです。
とりあえず、少しだけ譲歩してきた、ということころでしょうが、
まだまだ英国側とEUの主張には隔たりがあり、
その距離は離れていると言わざるを得ません。



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▼イラクのクルド自治区、スペインのカタルーニャ州など独立問題の対策は重要
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イラクのクルド自治区で、イラクからの独立の是非を問う投票が
先月25日行われ、開票の結果、独立賛成が92.73%に達したことがわかりました。
自治政府は民意を示すのが目的で、直ちに独立はしないとしていますが、
長年の悲願であるクルド人独立に向けた機運が一層高まる見通しです。

かつてオスマントルコが分割され、
現在のトルコ、イラン、イラク、シリアになりました。
この時、3000万人以上の国家を持たない最大の民族が誕生しました。
トルコの約25%はクルド人で、イランは約17%、イラクは約27%になります。

今回独立しようとしているのは、イラクの中でも油田が豊富な地域です。
IS対策として活躍した地域で、その勢いにのって独立まで発展しています。
当然のことながら、イラクは独立に反対していますが、
この地域が独立するとトルコにも大きな影響がでてきます。
トルコ、イラン、イラク、シリアのいずれも反対しています。

今のところ、欧州、国連、米国なども独立に反対していますが、
この問題はサウジアラビアがどのような態度に出るかによって、
さらに炎上していく可能性があります。
IS対策としての功績を認め、それに報いながらも、
どのように対処していくのか、非常に重要な問題です。
この独立運動を、もし世界全体で潰してしまったら、
この地域のクルド人がIS化する可能性もあり、
より大きな問題になってしまうでしょう。

同じく独立問題で揺れているのが、スペインです。
スペイン北東部カタルーニャ自治州で先月30日、
分離独立を問う住民投票が行われる投票所のうち、
約1300箇所を警察当局が制圧し、住民の立ち入りを禁止しました。
スペイン中央政府は、投票は憲法違反として
実力行使も辞さない姿勢を示していましたが、
カタルーニャ州政府は日本時間の1日夕方からの投票を実施し、
混乱が広がる可能性があります。

おそらくカタルーニャの独立は、賛成多数で可決されます。
カタルーニャは、すでに自治を確立している地域で、
経済的には首都のマドリッドよりも大きくなっています。
ピカソを始め、天才的な偉人を多数輩出している地域としても有名です。

スペインには、カタルーニャ以外にも、バスク、アンダルシア、
ガリシアなど独立主張のある地域が存在しています。
スペイン全体としてみると、特色の違う寄り合い所帯といった感が否めません。
現状で言うと、カタルーニャ、バスクが大きな問題になっています。

今回のカタルーニャ独立の住民投票を、
スペインは何とかして事前に押さえ込もうとしていますが、
おそらく無理でしょう。また無理矢理押さえ込もうとすれば、
バスク地方のようにテロが発生する可能性もあるので危険です。

スペインからカタルーニャ地方が独立すると、
スペインの国力は1/5程度減少します。
首都マドリッドとカタルーニャのバルセロナは、
物理的には新幹線でたった2時間ほどの距離です。
何とかうまく収まれば良いのですが、この問題は尾を引きそうです。
イラクのクルド人問題と同様、世界にはこのような問題が、
いまだにたくさん存在しています。



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※この記事は10月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、世界の独立問題の話題を中心にお届けいたしました。

カタルーニャの独立問題やイラクのクルド人問題と同様、
世界にはこのような問題がたくさん存在しています。

これらの問題から「国家とは何か」ということが問われ、
国民国家の定義や枠組みが揺さぶられるという意味で、
大きな変化が予感されます。

中央政府との対立というドメスティックな図式で捉えているようでは、
分離独立しても成功はおぼつきません。

独立した地域が世界からヒト、カネ、モノを
いかに誘致して繁栄するか、すなわち、
世界地図の中でいかに自分の魅力をプロットできるかという視点、
構想力を持てるかどうかが重要になってきます。

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