2017年11月24日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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英EU離脱問題/イギリス情勢/ドイツ情勢 〜日本の政党はドイツの政党の政策に対する姿勢を見習うべき

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英EU離脱問題 ロシア関与のツイッターアカウント
イギリス情勢 保守党議員40人がメイ首相不信任に同意
ドイツ情勢 移民、財政問題で意見対立

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▼ロシアは欧米の情報操作に長けている
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英紙ガーディアンは14日、英国の欧州連合(EU)離脱を決めた
昨年6月の国民投票で、ロシア政府とのつながりが疑われる
ツイッターの多数のアカウントが離脱を支持する投稿を
繰り返していたと報じました。
また、英紙タイムズもロシア関連の15万以上のアカウントが
自動投稿の仕組みを使い、離脱投票の呼びかけを行っていたと報じています。

ロシアとしてはEU弱体化を狙い、
英国に離脱してもらう方が得策だと感じたのかも知れません。
かなり本格的な情報操作が行われています。

ロシアトゥデイやスプートニクニュースなどを使いながら、
対象国のシンクタンクに資金拠出し、クレムリンの意向に沿った見解を流布。
また映像も大いに活用しつつ、SNSやフェイクニュース作成集団を使い、
マルチメディアでクレムリンを利する情報を浸透させ、
自分たちに有利な政治議論が起こるように仕向けていると言われています。

英国のEU離脱についても、ロシアのこうした動きの影響を受けていたということが、
今ごろになってわかってきたということで、全くお粗末な話です。
米大統領選挙においても暗躍したように、
ロシアは相手の情報に入り込んで操作するのが非常にうまいと思います。

日本の対ロシア感情は必ずしも好意的ではありませんから、
日本に対する情報操作はそれほど上手く機能していないようですが、
欧米ではかなり成功していると言えるでしょう。


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▼今国民投票を行えば、英国民はEU離脱を選択しない
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英紙サンデー・タイムズが報じたところによると、
英国議会の保守党議員40人がメイ首相に対する
不信任表明に同意したことがわかりました。
閣僚の相次ぐ辞任やEU離脱交渉で進展がないことで、
メイ政権への逆風が強まっています。
英最大野党である労働党のコービン党首も
「メイ首相の指導力がないということが、あらゆる角度から示唆されている」
と指摘しています。

メイ首相の指導力の無さは言わずもがなですが、
母体の保守党が不信任に同意したというのは、
メイ首相にとってはかなり痛手でしょう。
私は任期である来年の3月までメイ首相は持たないと予想しています。
EU離脱交渉も上手くいっていませんし、
さらには外務大臣にボリス・ジョンソン氏を任命するなど
最悪の意思決定だと思います。

メイ政権は一度崩壊して、もう一度国民投票をやり直すべきでしょう。
再度国民投票を実施すれば、EU離脱に反対の国民が
過半数以上いるということが判明するのではないかと思います。
その結果をもって、EUも胸を撫で下ろすというシナリオを私は予想します。

そもそも、英国民はEUの離脱について
正確な情報を知らされないまま投票してしまった、というのが実情です。
「EUに帰属していることで、難民が来る」
「その結果、自分たちの職が奪われている」
というような「デメリット」ばかりを伝えられていました。
結局のところ、現在の英国は完全雇用に近い状況であり、
こうした情報も事実ではありませんでした。

EU離脱に伴い発生する8兆円の手切れ金のことや、
多数の外資系企業が、英国がEU離脱するなら
国外へ出ていくということなど、
EU離脱に伴うマイナス情報を知らされないまま
投票した人がほとんどだと思います。
今は冷静になって、EUに残った方が良いと考えている
英国民が多くなっていると私は見ています。


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▼日本の政党はドイツの政党の政策に対する姿勢を見習うべき
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ドイツのキリスト教民主・社会同盟、自由民主党、
緑の党による3党連立に向けた協議が、
メルケル首相の目指す16日の期限を過ぎてもまとまらず、
週末にずれ込む可能性が出てきました。
自由民主党のリントナー党首は、
デジタル化や欧州といったテーマでは
協議の進展がある程度あったが、
移民と財政問題を巡り意見が対立していると述べています。
もし3党が合意できなければ、再選挙の可能性も浮上してきます。

ドイツの「連立」に対する姿勢は非常に厳格です。
各党がそれぞれドキュメントを残しており、
「連立」にあたって合意文書が100ページを超えることもあります。

合意項目について、2ヶ月かけて1項目ずつ検討しています。
各党首が苦虫を噛み潰したような表情になるのも頷けます。
長い時間を掛けて、1つずつ合意形成を行っていくのは
非常に大変なことだと思います。
「いい加減な合意はしない」という、
いかにもドイツ人らしい姿勢です。

この姿勢は日本も見習うべきです。
本来、政党はそれぞれの主義主張を持っているべきです。
「連立」に際して各党の主義主張を調整し、
合意するのは簡単なことではありません。
日本ではいい加減な連立が多すぎます。
安保法制に反対でも、連立ありきで自民党と手を組む公明党。
その昔社会党と連立を組んだ自民党。
いずれも、党首が気軽に握手すれば連立が成立するというレベルで、
そこに主義主張が存在しているとは全く感じられません。

今ドイツでは、財政問題、移民問題、男女の権利問題、地球環境問題など、
様々なテーマで議論が行われています。
メルケル首相としても、連立ありきで妥協するわけにはいきませんから、
場合によっては再選挙をせざるを得ないという非常に苦しい状況です。

このようなドイツの各政党の主義主張に対する断固たる姿勢を見ていると、
日本の希望の党など軽すぎて情けない限りです。
さすがに選挙が終わった後、2ヶ月たっても政権が発足しない
というのは長すぎると思いますが、
日本の政党はドイツの政党を見習うべき点が多いと思います。


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※この記事は11月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、イギリスやドイツの話題を中心にお届けいたしました。

移民と財政問題を巡り意見が対立しており、
ドイツでは連立協議が行き詰まるなか、
再選挙へ踏み出す可能性も浮上してきました。

このドイツの「連立」に対する姿勢を例に挙げ、
日本の政党はドイツの政党を見習うべき点が多いと
大前は指摘しています。

長い時間を掛けて、1つずつ合意形成を行っていくのは
非常に大変なことです。

しかし、この合意形成のプロセスを行っておくことで、
意思決定をスムーズにできたり、
実行段階で関係者の協力が得やすくなったりと、
メリットも多くあります。

2017年11月12日(日) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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第4次安倍内閣/働き方改革/内部留保 〜「人づくり革命」と「生産性革命」を両輪にすること自体が矛盾

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第4次安倍内閣 安倍晋三氏が第98代首相就任
働き方改革 残業代8兆5000億円減少
内部留保 2016年度末時点で406兆2348億円

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▼「人づくり革命」と「生産性革命」を両輪にすること自体が矛盾
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安倍首相が1日の特別国会で第98代首相に選ばれ、
第4次安倍内閣が発足しました。
安倍首相は記者会見ですべての閣僚の再任を発表し、
引き続き経済最優先で取り組むと表明。
また、「人づくり革命」と「生産性革命」を車の両輪として、
デフレ脱却に向けて税や予算などの政策を総動員する考えを示しました。

この発表を聞いても、安倍首相が経済を全く理解していない、
ということがわかります。私に言わせれば、
「人づくり革命」と「生産性革命」が車の両輪になることは、
絶対にありません。なぜなら、この2つを同時に進めることは
矛盾をはらんでいるからです。

日本において生産性革命を起こそうとすれば、
コンピューター化、ロボット化は必須です。
それは今までの働き方をする人から仕事を奪い、
失業者が溢れることを意味します。
そして、本当の意味での「人づくり革命」は、
そのような「機械に置き換えられない仕事」ができる人材を
育てることにありますが、日本ではそれが実現できません。

機械や他国の労働者に奪われてしまう仕事ではなく、
もっと付加価値の高い仕事ができる人材を育てることが重要です。
それが出来ていないために、日本は一人当たりの労働生産性が
OECD加盟国の中で最低クラスで、過去20年間の名目賃金の推移では、
欧米が2倍近く増加しているのに対して、日本だけが落ち込んでいます。

この問題を深刻に捉えていない時点で、私には理解できません。
なぜ、これを政治問題化せずにいられるのでしょうか。
この重要な問題を5年間放置しつづけた内閣の問題を問うことなく、
また同じ人たちで組閣するというのですから、呆れるばかりです。

安倍首相は、「人づくり革命」「生産性革命」「デフレ脱却」
という3つのキーワードを並べ立てて、それらしく発言していますが、
全く実態が見えていませんし、危機感すら感じていないのでしょう。
トランプ大統領が来日すれば、ゴルフに明け暮れる
という安倍首相の能天気さが、日本の危機そのものを表していると私は思います。

また、政府が推進する働き方改革もお粗末な展開を見せています。
働き方改革で残業時間の上限が月平均で60時間に規制されると、
残業代は最大で年8兆5000億円減少するとの試算もあります。
残業代は、ある意味、給料の補てんになっていて、
GDPにも大きな役割を果たしています。
政府は杓子定規な対応で規制に動いていますが、
その実態・意味を理解できていないのでしょう。

安倍首相をはじめとして家業が政治家という人は、
会社の実態を見たことも経験したこともほとんどありません。
委員会を構成する大学の先生なども同様です。
残業代が減ると、安倍首相が公言しているGDPの2%成長から大きく遠のく、
ということすらわかってないのでしょう。



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▼一括採用をしていては、高度な人材育成はできない
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企業においても、同じように危機意識が足らず、
明確な対策を取れていません。
いまだに新卒一括採用を実施している日本企業が多く、
これが高度な人材が増えない理由の1つになっています。
50人、100人、1000人という規模で一括採用をすると、
その人の個性を見て判断して採用することができません。
個性や尖った才能に目を向けないというのは、
日本企業の最大の問題の1つだと私は思います。

そして、一括採用を通じて企業に就職した人の多くは、
新しいスキルを身につけてステップアップのためにやめるのではなく、
その会社が嫌になってやめます。
スキルアップ、ランクアップといった発展性がない場合が多いので、
環境として高度な人材が生まれにくい状況だとわかります。

しかもほとんどの日本企業は、日本人だけを採用していて、
世界から採用するというところに目を向けていません。
人事制度と教育制度の問題というのは、
日本企業が抱える最大のミスマッチでしょう。

財務省が9月1日に発表した法人企業統計によると、
企業が利益を蓄積した内部留保は2016年度末で
406兆2348億円となり初めて400兆円を超えたとのことでしたが、
ここにも日本企業が抱える問題が表れています。
日本企業の内部留保が増えているのは、
投資機会や成長機会がないために、
大きな設備投資などができる企業が少ないということです。

また、企業が稼いだ付加価値のうち、
どれだけ人件費に回したかを示す労働分配率は
アベノミクスが始まる前の2012年度は72.3%でしたが、
2015年度には67.5%にまで低下しました。
これでも世界的に見ると、決して低い水準ではありません。

この状況において、政府はさらに「賃上げ」を要請していますが、
労働分配率を上げる(=人件費を上げる)ためには、
生産性の向上が必須です。しかし、生産性が向上したとき、
事業機会が増えておらず、市場も成長していないのであれば、
必然的に人をクビにするしかありません。

インフレの時代であれば賃上げも簡単でしたが、
今の日本では労働者自身が「プラスになる仕事」
ができなければ賃上げはできません。
日本の労働者が「プラスになる仕事」に対応できなければ、
その仕事が他国の労働者、あるいは機械に奪われることになります。

賃上げというのは、この労働者の問題が解決しない限り、
実現できないのです。内部留保があるので、
その分を賃金にするという方法もありますが、
それでは企業の将来性はなくなります。
あくまでも賃上げ余力は生産性の向上にしかない、
と認識し対応するべきだと私は思います。



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※この記事は11月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、国内政治や政策の話題を中心にお届けいたしました。

「人づくり革命」と「生産性革命」を車の両輪として、
デフレ脱却に向けて税や予算などの政策を
総動員する考えを示した安倍首相。

それに対して大前は、日本は一人当たりの労働生産性が
OECD加盟国の中で最低クラスで、過去20年間の名目賃金の推移では、
日本だけが落ち込んでいるという問題を
深刻に捉えていないことが問題だと指摘しています。

記事にもあるように、本当の意味での「人づくり革命」は、
機械や他国の労働者に奪われてしまう仕事ではなく、
もっと付加価値の高い仕事ができる人材を育てることです。

イノベーションや業務の改善など仕事の生産性
を高めることに取り組むことで、
付加価値率や1時間当たりの売上高を高めることができ、
企業の稼ぐ力を高めることができます。

2017年11月03日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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経営者調査/三越伊勢丹HD/エイチ・ツー・オー・リテイリング/米IBM 〜5年後に不安を覚える経営者。座して死を待つ企業が多い日本の実態

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経営者調査 国内企業の7割超が今後5年の見通しに懸念
三越伊勢丹HD 三越伊勢丹フードサービス売却へ
エイチ・ツー・オー・リテイリング そごう神戸店で示す百貨店の未来図
米IBM 「ワトソン」無料提供を開始

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▼5年後に不安を覚える経営者。座して死を待つ企業が多い日本の実態
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日本能率協会が先月18日まとめた企業経営課題に関する調査で、
国内企業の7割超が現在の主要事業の5年後の見通しがつかない
と考えていることが分かりました。ITの急速な進展など、
経営環境の変化に危機感を持つ経営者が多い実態が示されました。

調査結果を見ると、3年なら何とかなると思う人と
そうではない人の割合が同じ位です。5年になると、
このまま通用すると思う人の割合はわずか15%です。
そして、10年になるとほとんどの経営者が、
今の事業では見通しがつかないと感じています。

今の世の中で起こっている大きな変革を考えると、
経営者はその実態をよく理解していると言えると思います。
問題なのは、現状を理解した上で、
対応できるように勉強しているのか?ということでしょう。
おそらく「座して死を待つ」という企業が大半です。

若い人にとってはそのような企業にいること自体、
不安を感じるはずです。その不安を払拭するために、
「自分にやらせてくれ」という態度で積極的に動ければ良いのですが、
残念ながら日本を見ていると、そうはなっていません。



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▼クイーンズ伊勢丹を手放すのは、三越伊勢丹に経営力がない証拠
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日経新聞が先月22日報じたところによると、
三越伊勢丹ホールディングスは子会社で高級スーパー
「クイーンズ伊勢丹」を展開する三越伊勢丹フードサービスの株式の大半を、
三菱グループ系の投資ファンドである丸の内キャピタルに
売却する方針を固めたことがわかりました。
三越伊勢丹フードサービスは16年3月期から債務超過に陥っており、
第三者に売却することで本体の財務負担を軽減する考えです。

クイーンズ伊勢丹は、成城石井とほぼ同じ業態で、
やや規模が大きいお店です。
私はかつてエブリデイドットコムの経営に携わっていた頃、
クイーンズ伊勢丹と提携していました。
生鮮食品を取り扱っていたので、クイーンズ伊勢丹から持ってきて、
それを販売する流れを作っていました。
商品的には申し分がないものを持っているので、
三越伊勢丹にクイーンズ伊勢丹を経営する総合的な力が不足していた、
ということでしょう。その上、丸の内キャピタルに売却するというのは、
さらにみっともない話だと私は思います。

丸の内キャピタルは、ローソンに出資をして経営再建に成功したと言われていますが、
当時の状況からすれば、セブンイレブンという良い先行事例があり、
新浪氏という経営者がいたことが大きかったと思います。

丸の内キャピタルに再建の手腕があったとは私は感じません。
そのローソンの成功からも時間が経過し、今丸の内キャピタルに
クイーンズ伊勢丹を再建させる力があるとは、なおのこと思えません。

三越伊勢丹は赤字で事業撤退をするというのが恥ずかしいので、
少しだけ資本を残しつつ経験のある丸の内キャピタルに売却するという、
体裁を整えるためのシナリオを作ったのだと思います。
非常にみっともない話だと私は感じます。



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▼阪急うめだ本店の成功要因。阪急沿線、梅田と神戸を抑える利点
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日経新聞は先月20日、「そごう神戸店で示す百貨店の未来図」
と題する記事を掲載しました。百貨店の阪急、阪神を傘下に持つ
エイチ・ツー・オーリテイリングが1日、
セブン&アイ・ホールディングスから「そごう神戸店」の経営を引き継ぎました。
訪日外国人客の利用増加などを追い風に、阪急うめだ本店が好調なことを踏まえ、
そごう神戸店も今後数年で「来て楽しむ百貨店」
への建て替えを視野に入れるとしています。

阪急うめだ本店は建て替えによって、
イベント型、ショールーム型とも言える百貨店に変身し、
それが成功を収めている大きな要因になっています。
エルメスの職人をフランスから呼んできて、
作業しているところを見せるようにするなど、
「見て楽しめる」空間を上手く演出しています。

今回、そごう神戸店の経営を引き継いだことで、
梅田と神戸を抑えることになります。これは面白いかもしれません。
阪急沿線も高齢化が進んでいます。その端にあるのが梅田と神戸です。
坂道が多く、店舗に出ていくのも避けたいという人がたくさんいます。
そういう人たちに外商をからめながら、
両端から攻めていくというのは上手くいくかもしれません。
今後の展開を見守っていきたいと思います。



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▼追い込まれるIBM。ワトソンを無料提供の次の展開が鍵
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米IBMは11月から主力製品である人工知能(AI)「ワトソン」
の無料提供を開始すると発表しました。
「会話」「翻訳」「文章を基にした性格分析」など
6つの基本機能を無料で提供するものです。
これによりこれまでの大企業などだけでなく、
中小企業はもちろん個人として活動するソフト開発者にまで
利用者の裾野を広げることで、新たなサービスの開発を促す考えです。

IBMとしては、競合が無料サービスを展開しているので、
やむを得ない施策だと思います。
全体としての売上も利益も減少傾向で、
何か手を打たなければいけないという状況です。
事業領域別の売上・利益を見ると、
労働集約型のコンサルティング関連事業の利益率が低い一方で、
クラウド領域は利益率が高く、ワトソンを要する
コグニティブ領域の利益率はさらに高くなっています。

IBMとしては戦略的にこの領域を拡大して行かなくてはならない、ということでしょう。
そこで無料サービスを展開する競争相手に対抗するために、
IBMもフリーミアム戦略で入り口を大きく広げる狙いです。
これにより、ある程度のボリューム増加は見込めると思いますが、
問題は次の展開です。無料サービスから有料サービスに
転換するための仕掛けをうまく機能させないと、
無料でサービスを提供して終わってしまいます。
無料で使い始めた人を、どれだけ高額のサービスにつなげていけるかが課題です。

上手く立ち回らないと、グーグルのような広告モデル(別の収入源)を
持っている企業に寝首を掻かれる可能性は大きいと思います。
その点では慎重に進める必要がありますが、
IBMとしては、そのようなリスクを承知の上で、
無料にせざるを得ない状況に追い込まれているというのが実情でしょう。



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※この記事は10月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、注目企業や経営者課題の話題を中心にお届けいたしました。

企業経営課題調査で、ITの急速な進展など、
経営環境の変化に危機感を持つ経営者が
多い実態が示されました。

それに対して大前は、経営者はよく実態を理解しているが、
問題なのは、現状を理解した上で、
対応できるように勉強しているのか?と指摘しています。

経営トップは常にアンテナを高くして、
自社や業界がどれだけの危機にさらされているのかを
正確に知覚し、正しい経営判断につなげていく必要があります。

そうすることで、環境変化の予兆を早く感じることができ、
いざその時が来た際に迅速に行動に移すことができます。

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