2018年03月30日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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コンビニエンスストア/ドラッグストア/ハウステンボス/シマノ 〜コンビニ神話崩壊の兆し、勝利の方程式のほころび

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コンビニエンスストア コンビニ客減少続く
ドラッグストア ドラッグストアひとり勝ち
ハウステンボス お客と紡ぐ「100年構想」
シマノ 自転車、山登りも自在

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▼コンビニ神話崩壊の兆し、勝利の方程式のほころび
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日経新聞が報じたところによると、
コンビニ大手7社の既存店客数は前年同月比1.4%減となり、
16年3月から24カ月連続で前年を下回りました。
客数の集計を始めた2004年以降で最も長く前年比減が続いており、
ドラッグストアやインターネット通販の台頭に押され、
小売りの勝ち組だったコンビニの成長神話にも
陰りがみえてきたとしています。

コンビニがまだ普及していない地域もあるので、
そうした地域への進出を考えるとコンビニ業界全体としては
伸びていく可能性はあると思います。
しかし、既存店の客数がこれだけ落ち込んでいるというのは
かなり危機的な状況です。

このコンビニ苦戦の要因を作っているのが、ドラッグストアです。
ドラッグストア市場の2017年度の売上高は6兆8504億円となる見込みで、
2年連続で百貨店を上回っています。
粗利率の高い医薬品や化粧品で収益を確保し、
日用品などを安値で販売するモデルが成長の原動力になっていて、
今後はネット通販との競合や他業態の追い上げをどうかわすかが焦点になりそうです。

コンビニは、その名の通り利便性を売りにしていて、
決して価格そのものは安くありません。
一方、安い価格で勝負をしていたスーパーは自滅していきました。
こうした市場環境の中、ドラッグストアは医薬品・化粧品など
粗利が高いものを取り扱いつつ、
コンビニでも売っているような日用品などを
安く販売するという戦略を取りました。
これにより、じりじりとコンビニから
ボリュームを奪うことに成功してきたということでしょう。

コンビニの戦略は、セブン&アイ・ホールディングスの
鈴木敏文元会長が提唱した勝利の方程式があまりにも浸透しすぎました。
商品棚の管理、商品の回転の管理を重視し、
商品の価格にはそれほど重きを置いてきませんでした。
それは、生鮮食品などを極力避けてきたところにも表れています。

一方のドラッグストアは、
コンビニには置いていないような少し変わった商品や、
詰め替え商品を扱うなどの工夫をしてきました。
鈴木氏が牽引してきたコンビニの勝ちパターンの漏れている穴を
ドラッグストアは見事に突いてきたと言えるでしょう。


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▼ハウステンボスに城壁都市 お客と紡ぐ「100年構想」
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エイチ・アイ・エス会長兼社長の澤田秀雄氏は、
ハウステンボスを囲む城壁を作る計画を明らかにしました。
来場者からの寄付を建設費に充て、金額に応じて城壁に名前を刻んだり、
ICチップを埋め込んだりするということで、
城壁の中にはテーマパークや工場、
また独自の仮想通貨「テンボスコイン」が流通する
という構想を語ったとのことです。

今から数十年前、私は「お墓の問題」で似たような構想を描いたことがあります。
都心にはお墓がなく作ることも難しいので、
例えば利用しなくなったゴルフ場や
富士山の裾野といった地域にお墓を作る、というものです。
お墓の前で、おじいちゃんの生前の写真を見ながら、
楽しくピクニックをしてもいいでしょうし、
富士山の裾野ならBBQをしてから一泊できる施設を作ってもいいでしょう。

澤田氏の発想もよく似ていると思います。
日本のように寄付の文化が無い国民に対して、
寄付をしてくれたことに対して、
ちょっとしたお返しのような仕掛けをする、
というのも私もお墓ビジネスで考えたアイデアの1つでした。
澤田氏のハウステンボスのアイデアはさらに膨らんだものになっています。


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▼世界に誇るシマノの技術力による電動アシストに期待
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自転車部品で世界シェア8割を誇るシマノが、
電動アシスト部品の製造販売に乗り出しました。
国内ではママチャリの電動アシストが一般的ですが、
欧米では脚力が低下した中高年でも楽しめる
スポーツ車の新ジャンルとして注目を集めており、
シマノはガラパゴス化した国内市場に変革の風を吹かせたいとのこと。

世界最大の自転車メーカーと言えば、
台湾のジャイアント・マニュファクチャリングです。
この会社も自転車の部品はすべてシマノ製です。
それだけの技術力を誇るシマノが、
電動アシストに乗り出すというのは非常に期待が持てます。

欧米では中高年の人が電動アシストを利用しているということですが、
日本でも箱根や湯河原へ行くと自転車に乗っている中高年の方が増えていると感じます。
こうした人たちが電動アシストを利用することで、
自然に親しみながら自転車に乗る機会をより増やしていくというのは、
とても良いことだと思います。

自転車ギアの技術で世界最高水準を誇るシマノが、
本気で電動アシストに取り組んだら、
どのようなものを作ってくれるのか、
大いに期待したいところです。


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※この記事は3月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、コンビニやドラッグストアの話題を中心にお届けいたしました。

ドラッグストアやインターネット通販の台頭に押され、
小売りの勝ち組だったコンビニの成長神話にも
陰りがみえてきました。

これに対して、粗利率の高い医薬品や化粧品で収益を確保し、
日用品などを安値で販売するドラッグストアのモデルが
コンビニ苦戦の要因を作っていると指摘しています。

コンビニには置いていないような少し変わった商品や、
詰め替え商品を扱うなどの工夫をすることで、
コンビニの勝ちパターンの漏れている穴を突いてきたドラッグストア。

このように、戦略を描く際には、
市場のカギとなる場所を見つけることは非常に重要です。

ドラッグストアがじりじりとコンビニから
ボリュームを奪うことに成功してきたように、
市場のどこから進行して広げていくのか?
というようなストーリーを描くことが大切です。

2018年03月23日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中関係/日米関係/米韓関係/米通商政策 〜トランプ大統領は歴史を学び、少しでも知識をつけるべき

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米中関係 中国製品への追加関税
日米関係 日本がアメリカ車に「ボウリング球検査」
米韓関係 対韓貿易赤字を強調
米通商政策 米クアルコム買収阻止の大統領令に署名

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▼トランプ大統領は歴史を学び、少しでも知識をつけるべき
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米メディアが13日報じたところによると、
トランプ米大統領が検討する中国の知的財産権侵害への制裁措置を巡り、
追加関税の対象となる中国製品が最大600億ドル(約6兆4000億円)
に達する見込みが明らかになりました。
トランプ大統領は3月中にも制裁発動を決断する見通しで、
鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に踏み切る可能性があるとのことです。

このようなトランプ大統領の対応を見ていると、
実態をもう少し勉強してから数字を出してほしいと思います。
先日もトランプ大統領は、カナダのトルドー首相に対して
貿易赤字の不満を述べていましたが、
実態はトランプ大統領の発言とは異なっており、
後から米国政府が発言内容について修正をしました。

米国の貿易相手国別の貿易(財)収支を見ると、
財では中国やカナダに対して大きな赤字になっていますが、
サービス部門では圧倒的に米国が黒字になっています。
財とサービスを合計すれば、カナダに対して米国は貿易黒字の状態です。

トランプ大統領は事実を知らずにモノを言います。
これまでの小さなファミリービジネスの中では通用していたかもしれませんが、
米国の大統領としては明らかに資質を欠いていると感じます。

つい先日、日本に対しても驚くべき発言がありました。
日本がアメリカ製の車を国内市場から排除するために不当な検査をしているとし、
「アメ車に20フィート(約6メートル)の高さから
ボウリングの球を落として検査するんだ」と言い放ちました。

これに対して米政府は15日、
「トランプ氏の発言は冗談だった」と弁明しましたが、
冗談という以外には説明のしようがなかったということでしょう。
確かに非公開の場ではありましたが、それでも多くの聴衆がいる前で、
このような発言をするのは、まったく理解できません。

日本における自動車のメーカー別輸入車新規登録台数を見ると、
ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、BMW MINI、ボルボと続き、
米国車が売れていません。この点を指摘して、
米国車が売れないのは「何かしら日本側に問題があるからだ」
とフォードなどはよく主張します。

GMは中国でシェアを伸ばしていますが、
フォードはアジアで上手くいっていません。
日本も実質撤退している状況です。
フォードファミリーとトランプ大統領は親しい仲ですから、
トランプ大統領の発言の背景にはフォードのこともあるのかも知れません。

トランプ大統領の無知さ加減は、韓国に対しても発揮されています。
「私たちは韓国との貿易で非常に大きな赤字を抱えており、
一方では韓国を防衛している。貿易でお金を失い、
軍事費でもお金を失っている」と発言したそうです。

朝鮮戦争以降、米軍が韓国に駐留しているのは、
米ソ冷戦の最先端・橋頭保としての役割を果たすためであり、
米国の意思に基づいています。それを貿易問題と一緒に論じ、
あまつさえ批判するのは筋が違います。


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▼米国には歴史的に「難癖」をつける傾向がある
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トランプ米大統領は12日、シンガポール半導体大手
ブロードコムが提案している米クアルコム買収について、
国家安全保障上の観点から禁止する大統領令に署名しました。
この買収が成立すれば、今後10年以内に中国の同業ファーウェイが
関連技術を牛耳ることになるという懸念が背景にあるとのことです。

これもまた、歴史を全く知らないトランプ大統領が難癖をつけた事例です。
ブロードコムはシンガポールに本社がありますが、もともとは米国の会社です。
HPの半導体部門が起源となっているアバコがブロードコムを買収したのです。

税金の問題もあり、登記上の本社はシンガポールになっていますが、
ブロードコムのCEOはトランプ大統領に対して本社を
シンガポールから米国に移転すると表明しています。
それにも関わらず、今回ブロードコムの買収に難癖をつけたのは、
大手取引先にファーウェイが含まれているからでしょう。

ファーウェイは、創業者が人民解放軍にいた、
という理由で中国共産党との関係が深い、
との嫌疑からアメリカ市場からは実質的に閉め出されています。
トランプ大統領としては、この点を重視したのだと思いますが、
これも全くの見当違いです。

かつて富士通がフェアチャイルドを買収しようとしたとき、
米国から「国防上の理由」という何とも曖昧な理由で、
同じような難癖をつけられました。
歴史的に米国にはこうした難癖をつける傾向があります。
中国やシンガポールも米国の無知と戦う段階になったということでしょう。

ただし、トランプ政権になってから、
米国の無知さ加減は3倍ぐらいに増幅した印象です。
日本としては、安倍首相がトランプ大統領との
仲の良さを一生懸命アピールしていますが、
そんなことよりもやるべきことがあります。
日米間には、長い貿易戦争の歴史があります。
その歴史を踏まえた正しい認識を伝え、
トランプ大統領のおかしな発言に対しては、すぐに反論すべきです。
過去の歴史や実態を無視したトランプ大統領の無知な発言を
放置しておくべきではありません。

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※この記事は3月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米国の話題を中心にお届けいたしました。

トランプ大統領は3月中にも中国の知的財産権侵害への
制裁発動を決断する見通しで、
鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に
踏み切る可能性が明らかになりました。

これに対して大前は、実態をもう少し勉強してから
数字を出してほしいと指摘しています。

ファクトをしっかり把握せずに直感や感覚だけで判断することは、
よくある問題解決の失敗例としてあげられます。

また、問題を引き起こしている本質的な要因が不明なまま、
対症療法的に飛びついてしまうことも、同様です。

ビジネス上の様々な問題解決を行う際には、本質的な問題を発見し、
これに対して、仮説作成とファクトに基づく検証を繰り返し、
当を得た解決案を立案・実行することが重要です。

2018年03月16日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米朝関係 〜米朝直接会談の結果は、北朝鮮崩壊のシナリオしか考えられない

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米朝関係 5月にも米朝首脳会談

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▼米朝直接会談の結果は、北朝鮮崩壊のシナリオしか考えられない
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米政府は8日、トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩委員長の申し出を受け入れ、
直接会談に応じると発表しました。
米朝首脳会談が実現すれば歴史上初めてで、
朝鮮半島を中心とした東アジア情勢に大きな変化をもたらすとともに、
日本の外交・安全保障政策にも影響を及ぼすのは確実と見られています。

私はトランプ大統領の物事の進め方が好きではありませんが、
もしかするとこの交渉においては、トランプ大統領が圧勝してしまうかもしれません。
トランプ大統領はストリートファイターであり、
常にディール・交渉を前面に押し出してきます。
金正恩委員長との会談が実現した場合、
「ロケット開発、核開発をやめろ。やめなければ報復するぞ」
という態度で臨む可能性が高いと思います。

ここで金正恩委員長が受け入れなければ、
これまでのトランプ大統領のやり方からすれば、
すぐにでも戦争を引き起こす可能性があります。
「深刻さを見せつつ、すぐにでも殴り合う」
というやり方がトランプ大統領の特徴です。
私自身はこの手のやり方は全く好みではありませんが、
今回の北朝鮮との交渉においては功を奏するかもしれません。
その点から考えると、代理人ではなく、
トランプ大統領の特徴を活かして本人が交渉にあたるべきでしょう。

文在寅大統領の特使が北朝鮮に赴いた際に、金正恩委員長は
「体制が保証されるのであれば、核開発を中止しても構わない」
と述べたと言われています。この発言が本当であれば、
かなり深刻な内容を含んでいると思います。
つまり、金正恩委員長が亡命を希望しているのではないかということです。

現実的に、北朝鮮において金王朝が平和的に存続していくことは不可能です。
「体制を保証する」という「体制」とは金正恩委員長自身と
そのファミリーのことを指しているのでしょう。
北朝鮮においてはそれ以外考えられません。

2歩先まで考えれば、金正恩委員長が望んでいるのは
亡命以外にはないと私は思います。
トランプ大統領がこの事を見抜いていれば、
逃げ場所を用意してあげるということができるはずです。
トランプ大統領は交渉してうまくいかなければ、
その場で戦争を始めるという決断さえしかねない人物です。
金正恩委員長がトランプ大統領と1対1の会談に臨むのは、
かなりのリスクを負っていると思います。
それでも、金正恩委員長がトランプ大統領に呼びかけたのは、
国を空けて海外に行くことさえままならず、
体制が内部から崩壊する寸前の北朝鮮の状況では、
なんとか体制を保証してもらって逃げ場を確保したい
という一心からの行動だと思います。


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▼文在寅大統領との交渉を行っても、行き着く先は北朝鮮の崩壊
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現状においては、中国もロシアも蚊帳の外に置かれています。
中国は6カ国協議の議長として対話路線を押していましたが、
米朝直接対話となったらそのメンツは丸つぶれもいいところです。
もし米国がプレッシャーを弱めれば、
文在寅大統領と金正恩委員長の直接対話の可能性がありますが、
この場合でも最終的に行き着く先は北朝鮮の崩壊だと私は見ています。

文在寅大統領と金正恩委員長の直接対話を行ったとして、
次に考えられるステップは平和条約の締結、
国交の正常化、戦争状態の終結になるでしょう。
このシナリオの場合、北と南の間をある程度
人々が自由に行き来できるようにならざるを得ません。
そうなると、北朝鮮は半年も持ちません。

これまで北朝鮮は、国民に対して「南側(韓国)は貧しい」
と騙してきたわけですが、その嘘が露呈してしまいます。
そうなれば、ルーマニアのチャウシェスクと同様、
民衆蜂起によって体制が崩壊するのは目に見えています。

北朝鮮は、韓国と平和的な話し合いが行われたとしても、
その結果としては体制の崩壊以外に道は考えられません。
かつてのロシアやアルバニアの例を見ても、
厳しい情報統制をしていた国家が、それを維持できなくなったとき、
全体主義国家は脆くも崩壊します。
今の北朝鮮においても、国民に実態が明らかになれば、
いかにバカなことにお金を使って自分たちが
貧しい生活をさせられてきたのかと分かってしまうでしょう。

トランプ大統領と直接会談、文在寅大統領との直接対話のいずれの道を通っても、
北朝鮮の金王朝は終わる可能性が高いと私は見ています。
その可能性がいよいよ高くなってきたとき、
中国や韓国は、金一族を受け入れる姿勢を見せるかも知れません。
想像よりも早く、北朝鮮の金王朝は崩壊していく可能性が高くなっていると思います。


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※この記事は3月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米朝関係の話題を中心にお届けいたしました。

北朝鮮との首脳会談に応じると発表した米政府。

米朝首脳会談が実現すれば歴史上初めてで、
朝鮮半島を中心とした東アジア情勢に大きな変化をもたらすとともに、
日本の外交・安全保障政策にも影響を及ぼすのは確実と見られています。

北朝鮮の今後のシナリオについて記事中で言及していますが、
現在世界中で起こっていることや、今後起こりそうなことに注意を払い、
重要な変化を迅速に認識し、変化に適応することが大切です。

これは、経営においても同じです。

事前に複数のシナリオを想定し、
どの状況にも耐えうるようにすることで、
想定外の出来事でも慌てずに意思決定を行うことができます。

2018年03月09日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米通商政策/米トランプ政権 〜鉄鋼やアルミに関税を課しても、何1つ問題は解決しない

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米通商政策 鉄鋼、アルミの関税導入へ
米トランプ政権 クシュナー上級顧問の最高機密扱う資格取り消し

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▼鉄鋼やアルミに関税を課しても、何1つ問題は解決しない
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トランプ米大統領は1日、鉄鋼輸入品に対し25%、
アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を明らかにしました。
トランプ氏は「鉄鋼とアルミニウム産業をわが国の手に取り戻すだろう」
と語りましたが、中国、欧州、カナダなど主要な貿易相手国が
報復措置に出る可能性もあります。

この関税による規制は、トランプ氏が選挙中に公約していたものですが、
相変わらず思考能力がお粗末だと言わざるを得ません。
米国の雇用を守ると発言していますが、
関税を課すことで鉄鋼やアルミの値段が上がると、
例えば車の部品代金に影響し、最終的には消費者に全て還元されてしまいます。

世界の粗鋼生産能力を見てみると、ルクセンブルグのアルセロール・ミタル、
中国の宝鋼、河北鉄鋼、日本の新日鉄住金、韓国のボスコが上位を占めており、
米国の鉄鋼はすでに世界的に見るとマイナーになっています。
それらを守ってみたところで、それほど大きな影響は望めないでしょう。

既に米国産業は、海外から鉄鋼を輸入することで成り立っています。
トランプ氏は約22兆円の資金を投じてインフラ整備を進める
という強靭化計画を公約していますが、その費用さえも高くなり、
それを納税者が負担するということを意味します。

最終的には「止めておけばよかった」と後悔する可能性が高いと思いますが、
トランプ氏にはこの手を打つと次はどうなるのか?
という「次の段階を考える」という発想がありません。
町のチンピラの喧嘩と同じような発想で、
常に激情的な判断をしているため、今回もこのまま突き進むのでしょう。

米国の鉄鋼メーカーを見てみると、ニューコア、
アルセロール・ミタルUSA、USスチール、ジェルダウという上位陣のうち、
アルセロール・ミタルUSAはルクセンブルグ系、
ジェルダウはブラジル系であり、外資系企業です。
米国の鉄鋼会社を守っているつもりでも、
米国市場は既に外資系の手に落ちているというのが現実です。

米国からの鉄鋼の輸出先の上位は、カナダとメキシコ。
逆に米国の輸入元は、カナダ、ブラジル、韓国となっていて、
トランプ氏が頭の中に置いている中国は上位ではなく、
実はそれほど大きな影響力がありません。
そのことに気づいたのか、最近になって
「中国が過剰生産で値段を下げたことで、米国のメーカーが苦労している」
と発言内容を変えました。

各国の鉄鋼製品輸出における対米輸出シェアを見ると、
カナダ:約87%、メキシコ:約72%、ブラジル:約34%となっていて、
これらの国にとっては今回の関税の打撃は非常に大きいでしょう。
日本はそれほど影響を受けませんが、自動車業界で一部懸念が出てくるでしょう。
日本の自動車メーカーは、部品の現地調達率を高めてきました。
鉄鋼やアルミ関連の値段が上がると、
やはり最終的にはユーザーへの販売価格に影響してくることになります。

TIME誌は、トランプ氏が選挙の公約で救うと公言していた
「プアホワイト」に対して何一つ優遇するような政策を打ち出していない
と指摘する記事を掲載しました。減税にしても金持ち優遇の政策でした。
思い出したように「鉄鋼の関税を」とやっていますが、
この人たちの仕事は今や外資系メーカーによって支えられているという側面もあり、
トランプ氏の打ち出している政策は何ら意味を持ちえない可能性が高いと感じます。


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▼クシュナー氏の機密情報のアクセス格下げによるトランプ政権への影響
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米CNNが報じたところによると、トランプ政権のクシュナー上級顧問が
最高機密を取り扱う資格を失ったことが分かりました。
これにより、クシュナー氏が扱える政府の機密情報は大幅に制限されることになります。

今回はモラー特別検察官やFBIにも呼ばれた結果、
クシュナー氏はロシアとの接触が広いということで、
機密情報へのアクセスの資格を「最高機密」から「機密」
に格下げになったとのことです。

クシュナー氏は、イスラエルの問題などにおいて
サウジアラビアと交渉するなど、裏技の交渉が得意な人物です。
これまでトランプ氏が言ってきたことの多くは、
裏でクシュナー氏がお膳立てをしてきたことが殆どでした。
今回の機密情報の取り扱い資格の格下げにより、
今後クシュナー氏が能力を発揮するにも限界が出てくるでしょう。
これはトランプ政権にとっても痛手の1つになると思います。

先日、ヒックス広報部長が辞任し、
相変わらず1ヶ月で4人も辞任する事態が続いています。
まともな人物は、トランプ氏のサポートなどやっていられない
となって定着しないのも当たり前です。
トランプ政権は任命されていないポジションも多く、
任命されてもすぐに辞任し回転ドアのように人が入れ替わっていて、
全く安定感がありません。


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※この記事は3月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、トランプ大統領や米通商政策の話題を中心にお届けいたしました。

鉄鋼やアルミに関税を課す方針を明らかにしたトランプ大統領。

これに対して大前は、鉄鋼やアルミに関税を課しても、
何ら意味を持ちえない可能性が高いと感じると指摘しています。

問題解決を行うにあたっては、課題を定義し、
課題の構造化をした上で、実現可能性と効果のインパクトから
検討の優先順位づけを行う必要があります。

取り組みの効果が最もあがるように、
取り組み資源をどこに配分するか決め、そのために何を優先するか、
また、何に時間を使ってはいけないかを決めた上で、
解決策を立案していくことが重要です。

2018年03月02日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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朝鮮半島情勢/日韓関係/北朝鮮情勢 〜文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一

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朝鮮半島情勢 金正恩氏の親書手渡し
日韓関係 文在寅大統領が安倍首相に不快感
北朝鮮情勢 核開発は「再統一の野心から」

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▼日本射程内のミサイルは約200発。国防のためにもっと積極的な対応が必要
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平昌冬季五輪に合わせて韓国を訪問した金与正党第1副部長は先月10日、
文在寅大統領と会談し、金正恩委員長の親書を手渡しました。
金与正氏は口頭で『文在寅大統領に早期に会う用意ができている。
都合の良い時に北を訪問して下さることを要請する』
とする金正恩委員長のメッセージを伝え、これに対して文在寅大統領は
「これから条件を整え、実現していきましょう」と答えたとのことです。

現在北朝鮮のトップ数名がオリンピックの閉会式に参加するために
韓国を訪れていますが、おそらく閉会式だけでなく、
何らかのミーティングの場が設けられることは間違いないでしょう。

文在寅大統領の姿勢は、一貫して反米・親北です。
オリンピックが終わった後、米韓合同軍事演習が予定されています。
当然米国は予定通り実施の姿勢を見せていますが、北朝鮮は中止を求めています。
オリンピックへの北朝鮮選手団への派遣費用を3億円ほど負担するなど、
文在寅大統領は国連が禁止している北朝鮮との付き合いを続けています。
北朝鮮の非核化を目標とすることは国連の決議でもありますが、
今回のミーティングでも文在寅大統領が北朝鮮に
それを強く要求した報道は出ていません。

文在寅大統領の頭の中は、ほとぼりが覚めて
韓国と日本が手綱を緩めている間に北朝鮮に赴いて
関係修復を図りたいという思いが強いのでしょう。
北朝鮮に対する対話を重視した「南風政策」では、
過去に何度も騙されてきました。北朝鮮は、
援助を引き出しておきながら、結局は裏切って核開発を行ってきました。
文在寅大統領の対応を見ていて、日本を含め周辺諸国は
「また北朝鮮に騙されるのではないか」と警戒しています。

その文在寅大統領に対して、日本の安倍首相が米韓合同軍事演習を
冬季五輪後に予定通り実施するよう求めたことに、
文在寅大統領が不快感を示したと報じられています。
文在寅大統領は内政干渉だと主張しているとのことです。

北朝鮮が保有・開発した弾道ミサイルのうち、
韓国:約1000発、日本:約200発、米国:1発が
その射程範囲にあると言われています。
米国に届くミサイルの開発が成功したことで、
ようやく大きな問題となりました。
恐ろしいほどの数のミサイルが日本を射程圏内に捉えているわけですが、
今の日本ではこのミサイル攻撃にまともに対応できません。

抑止力とは、相手が攻撃してきた場合、軍事的な対応により損害を与えること、
またその姿勢を示すことで攻撃そのものを思いとどまらせることと定義されています。
しかし、今の日本の憲法ではこの抑止力を発揮することができません。
憲法においては専守防衛という概念ですから、
「1発だったら誤爆かもしれない。2発打たれたら本気と考えて対応する」
というようなほとんど冗談のような対応しかできません。

今の北朝鮮の軍事力を考えれば、抑止力だけではなく、
もっと積極的な対応が必要だと私は思います。
例えば、明確に北朝鮮のミサイルが日本を目指して
発射準備をしている証拠が見つかったならば、
こちらからミサイルあるいは戦闘機で
それらを破壊するという行動に出る必要があると思います。
こうした対応ができなければ、日本国民の安全は守れないでしょう。


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▼文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一
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河野太郎外相は先月16日、ドイツで開催された
「ミュンヘン安全保障会議」に出席し、
「北朝鮮は朝鮮半島再統一の野心があり、
目的達成のために核兵器を重要な手段と考えている」
と考えを示しました。また、米太平洋軍のハリス司令官も先月14日、
「長期的には北朝鮮が主導する『共産主義に基づく南北統一』を目指している」
との分析を示しました。

意外に感じる人が多いかも知れませんが、
「朝鮮半島を北朝鮮主導で統一するのも構わない」
という考え方を持っている文在寅大統領のような親北派の韓国人が一定数います。
これは北朝鮮と統一した結果、韓国が核保有国になれるからです。
韓国が核保有国になることは、米国が強く反対するため、
普通には実現することができません。
ところが、核を保有したままの北朝鮮と統一すると、
まるで裏口入学のような形で韓国は核保有国の仲間入りを果たせるのです。
河野氏が指摘したのはまさにこの点でした。

韓国の中には韓国が主導で、核を保有したままの北朝鮮を統一し、
やはり結果として韓国が核保有国になる
というシナリオ支持する人たちもいますが、
本質的に考えていることは同じです。
河野氏、ハリス氏という重要人物がこの点について
懸念する認識を示すのは当然であり、同時に非常に重要なことです。

文在寅大統領は、北朝鮮と仲良くして、日本や米国には気づかれないうちに、
韓国が核保有国になっていたというシナリオを
描いている可能性が高いと私は見ています。
「核なき統一」が日本と米国の主張であり、目指すべき形です。
韓国の考えているシナリオと日本・米国の考えているそれとの違いは、
今後さらに大きな問題となってくると思います。


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※この記事は2月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、朝鮮半島情勢の話題を中心にお届けいたしました。

韓国が核保有国になるための半島統一のシナリオに対して、
河野氏、ハリス氏という重要人物が
この点について懸念する認識を示しました。

これに対して大前は、韓国の考えているシナリオと
日本・米国の考えているそれとの違いは、
今後さらに大きな問題となってくると指摘しています。

北朝鮮の今後のシナリオについては、
自滅シナリオ、話し合いによる開国シナリオなど、
様々なシナリオが考えられます。

このようにあらゆるシナリオをあらかじめ想定しておくことで、
「想定外」の出来事を減らし、「立ち位置」の自由度を
増やすことが可能となります。

「もしも」の事態に真剣に取り組み対策を講じることで、
想定外の出来事に慌てることは少なくなります。

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