2018年04月27日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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北朝鮮情勢/日米貿易〜トランプ大統領は、「TPPが何か」を本当のところは何も理解していない

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北朝鮮情勢 核、ICBMの実験中止を表明
日米貿易 「2国間貿易協定の方が望ましい」〜米トランプ大統領〜

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▼北朝鮮のICBMの実験中止は、まともに信じるべきではない
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北朝鮮の金正恩委員長は20日、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を
中止する方針を表明しました。「核武器の兵器化完結が検証された状況で、
北部核実験場もその使命を終えた」と述べたもので、
以降は強力な社会主義経済の建設と周辺国との緊密な連携と対話を
積極化する方針を示したとのことです。

この金正恩委員長の発言は信じないほうがいいと思います。
現在の北朝鮮の状況は、ICBMの開発が最終段階まで来ているものの、
最後に米国まで届くかどうかの瀬戸際で、そこに核を搭載して
米国本土で爆破できるかどうかという点についても、
最後の最後で苦戦しているのだと思います。

最後まで開発をしようとしていたのに完成しなかったとなっては立つ瀬がないので、
自ら「中止」したとすることで交渉材料の1つにできると考えたのでしょう。

この発言通りの方針であれば、ICBM以外の中距離、短距離ミサイルの開発も
やめるのが当然ですが、その点については一切触れていません。
また核放棄についても明言していません。

このような北朝鮮の背景を理解せず、トランプ大統領は脳天気に
「大きな進展で今後が楽しみだ」などと発言しています。
こんな北朝鮮の交渉術に引っかかってしまったら、不幸以外の何物でもありません。

これまでにも、北朝鮮との非核化交渉には失敗の歴史があります。
1994年からの米朝対話も、2003年からの6カ国協議も全て北朝鮮は反故にしてきました。
誰かがトランプ大統領にこの歴史を解説してあげるべきだと思います。

北朝鮮が恐れているのは、リビアのように米国主導で核放棄を強制されることです。
最低でも体制の保証を得たいと思っているでしょう。今回の金正恩委員長の発言の意図、
本当に意味するところを理解せず、トランプ大統領が信じてしまうのは、情けない限りです。
あまつさえ「この条件を引っ張り出したのは自分の功績」だと勘違いして、
秋の中間選挙に向けて好材料だと安く飛びつくのは、やめてもらいたいところです。


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▼トランプ大統領は、「TPPが何か」を本当のところは何も理解していない
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トランプ米大統領は18日、安倍首相との一連の会談後の共同記者会見で
「米国にとって2国間の貿易協定の方が望ましい」と述べ、
日米自由貿易協定(FTA)を含む交渉に意欲を示しました。
一方、安倍首相は「わが国はTPPが日米両国にとって最善と考えている」と強調。
自由貿易に関する認識の開きが浮き彫りになりました。

もともとトランプ大統領は選挙キャンペーン期間中からTPPを離脱すると公言し、
実際にTPP離脱のサインをしました。今になって、条件がよければ
TPPに復帰しても良いなどと発言していますが、正直に言ってトランプ大統領は
「TPPが何か」を本当のところは何も理解していないと思います。

例えば、TPPに関して「良い条件」「悪い条件」の具体的な内容について話してほしいと言っても
まともな回答は得られないでしょう。「今、なぜTPPがダメなのか?」と聞いても同様でしょう。
何も勉強せずに平気であれこれと発言してしまうのが、トランプ大統領の特徴です。

日本と米国との間に巨大な貿易赤字があり、これを是正することが重要だと、
トランプ大統領はしきりに訴えています。そして2国間協定(FTA)に追い込もうとしています。
FTAに関しては、過去の日米貿易戦争の頃に何度も検討したことがありますが、
米国は理不尽に業界の利益丸出しで交渉してくるため、非常にやりにくいところです。

そもそも、日本は過去30年間にわたって貿易赤字の解消のために米国と交渉を続けてきて、
自動車関連業界を中心に製造業の拠点の多くを米国に移しました。
その結果、米国で多くの雇用を創出しています。こうした貢献を全く知らずに、
貿易赤字を解消しろの一点張りで騒ぎ立てているのがトランプ大統領です。

30年前の無知な状況を繰り返しているだけで、勉強する気すらないのでしょう。
状況や相手のことを理解しようとはせず、とりあえず威圧的な態度を取って
相手から1つでも2つでも有利な条件を引き出そうという、
いわゆる「ディール」しかできない人物なのだと思います。

今米国は中国に対して、鉄鋼やアルミなどに関税をかけるなど貿易戦争を仕掛けていますが、
これは当然のことながら、中国に対してだけでなく、
オーストラリア、ブラジル、日本、シンガポールなど他国にも大きな影響を与えます。
それ故一筋縄ではいきません。

だからこそ、TPPで多国間協議をすることには大きな意味がありました。
そして、言い出したのはそもそも米国です。こうした歴史的な背景や意義を全く理解もせず、
勉強もせずに、言いたいことを言っているだけの人物など、私に言わせれば、
まともな話をするのは無駄だと思います。



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※この記事は4月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、世界情勢の話題を中心にお届けいたしました。

日米自由貿易協定(FTA)を含む交渉に意欲を示したトランプ大統領。
日本との自由貿易に関する認識の開きが浮き彫りになりました。

これに対して大前は、トランプ大統領は「TPPが何か」を
本当のところは何も理解していないと指摘しています。

今になって、「条件さえ良ければ」TPPへ加盟の可能性も
示唆しているトランプ大統領ですが、
意思決定を行うにあたっては、正しく問題を認識し、
問題を解決するための具体的な行動案を設計し、
その効果や影響、費やされるコストを評価し選択する必要があります。

このように、影響の連鎖の探求やリスク許容限界の設定などを
行ったうえで、意思決定を行うことが重要です。

2018年04月20日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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RIAZAPグループ/日野自動車/ファーストリテイリング/武田薬品工業 〜RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点

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RIAZAPグループ 湘南ベルマーレの経営権取得
日野自動車 商用分野で提携交渉
ファーストリテイリング 売上高1兆1867億円
武田薬品工業 「5兆円買収」でお粗末な市場対応

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▼RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点
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フィットネスジム運営のRIZAPグループは6日、
Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表しました。
現在の筆頭株主である三栄建築設計と合弁会社を設立し、
ベルマーレが実施する約1億円の第三者割当増資を引き受けるとのことです。

今回の買収は金額がそれほど高くないので
目くじらを立てるほどのものでもないかもしれませんが、
お金が有り余っているという理由で買収をするのは
経営者として「緩い」と私は思います。
お金があると色々な人が近づいてきます。
大切なのは買収をした後の経営力があるかどうかです。

RIZAPの過去を振り返ると、これまでに成功した事業はほぼ1つだけで、
その他の事業はほとんど失敗しています。
経営で重要なのはKFSであり、そこに集中するべきです。
RIZAPはまだ無駄遣いをできるような時期ではないと思います。

成功したRIZAPのダイエット・減量事業にしても、
その成功ノウハウはインストラクターの教え方に依存する部分が大きいと私は感じます。
優秀なインストラクターであれば将来独立する危険性も高いですし、
その他の面も含めまだまだ企業として土台を安定させなければいけないでしょう。
むやみにあれこれと買収をしている暇はありません。

ビジネス・インサイダーは13日、
『「5兆円買収」でお粗末な市場対応』と題する記事を掲載しました。
アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を検討していると報じられ、
武田薬品工業の株価が急落しました。
買収額が約5兆3000億円にのぼることを嫌気したもの。
これを受けて行われたウェバー社長の説明も、
資金調達の方法に触れないなど不十分なもので
市場の疑念はさらに深まったとしています。

長谷川会長も退任し、ウェバー社長のタガが外れても
抑えることができる人がいないのだと思います。
ウェバー社長は目付け役がいなくなり、シャイアーを買収したら、
すべてが上手くいくという夢物語を見ているように私は感じます。

5兆円の会社を買収して、その後の勝算はどのように描いているのか。
武田薬品は2008年にミレニアム、2011年にはナイコメッドを買収し、
相当な資金を使いました。今ようやく落ち着きを取り戻してきたタイミングで、
5兆円の買収をする意義があるのか。不安視されても致し方ない状況だと思います。

純損益は回復したとはいえ、一昔前に比べると大したレベルではありません。
そして何より問題なのは財務状況です。かつては2兆円ほどあった現金も、
ナイコメッドとミレニアムの買収などもあり、今は2000億円ほどしかありません。

そんな状況にも関わらず、武田薬品は時価総額に対して
3〜5%という高配当をしており、
最近になって社債と借入が大きく増えているのも頷けます。

武田薬品の時価総額は株価が下落し、
約3.9兆円に落ち込んでいます。このような財務状況にあって、
自社よりも高い時価総額のシャイアーを買収することになります。
果たして資金調達はどうするつもりなのか?
ここが一番大きな問題だと思います。



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▼VWと日野という意外な組み合わせに期待/ユニクロの現状は柳井社長の思惑通り
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日野自動車は12日、独フォルクスワーゲンの子会社と
トラックやバスなど商用車の分野で提携交渉に入ると発表しました。
電動化や自動運転技術の開発、物流など幅広い分野で協業する方針です。
これについて日野自動車の下社長は、
「商用車の先進技術は乗用車の延長線だけでは対応できない」と述べ、
親会社トヨタとの連携だけでは生き残れないと強調しました。

フォルクスワーゲンもディーゼルの排ガス問題を乗り越えて上向いていたので、
この提携は少々意外でしたが、絶妙です。
世界的に見るとトラックやバスといった商用分野には、
スウェーデンのスカニア、ドイツのマンといった強豪がいます。
この欧州勢に食い込んでいくためには、
フォルクスワーゲンが日野自自動車と手を組むのは相性がいいと思います。

欧州では人手が不足しているので、
トラックやバスを連結するという需要が高くなっています。
日野自動車は技術力が高く、こうした需要に対応しやすくなるでしょう。
最終的には、自動運転で2台のトラックやバスを
連携するレベルまで目指していると思いますが、
大掛かりな実験は日本ではなかなか難しいので、
欧州に進出することは日野自動車にとってもメリットは大きいでしょう。

トラックの世界販売シェアを見ると、ダイムラーを筆頭に、
中国の第一汽車、東風汽車など、さらにはインドのタタと続いていて、
フォルクスワーゲンと日野自動車は10位前後に位置しています。
三菱ふそうも取り込み、圧倒的なシェアを誇っているダイムラーに対抗するためには、
フォルクスワーゲンと日野自動車が抜本的な技術提携をして
力を合わせる時期なのかも知れません。
ダイムラーへの対抗馬という意味では、
意外な組み合わせで面白いことになることを期待したいところです。

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが
12日発表した2018年2月中間連結決算は、
売上高が前年同期比16.6%増の1兆1867億円、
営業利益が30.5%増の1704億円で、中間決算として過去最高。
アジアなど海外事業の伸びが大きく、
中間決算では初めて海外売上高が国内売上高を上回りました。

柳井社長は、売上が1兆円突破したときに5兆円まで目指すと発言していました。
今順調に売上は2兆円をクリアし、利益も出しています。
そして、海外事業が国内事業を上回るというのも、
柳井社長の発言通りの結果になっています。
ユニクロの店舗数推移を見ると、海外が激増していることがわかります。
海外にも非常に大きな店舗も作っていますし、営業利益も十分です。
柳井社長が目指す目標に向かって、努力してきた賜物といえるでしょう。



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※この記事は4月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表したRIZAPグループ。

これに対して大前は、まだ無駄遣いをするような時期ではなく、
経営で重要なKFSに集中すべきだと指摘しています。

KFSは、競争環境において他社との優位性を築くのに、
最も重要な要素となります。

経営には、必ず1つか2つの成功の鍵があり、事業というのは、
良いことを全部をやっていては駄目になります。

本当にこれだと思ったことを徹底して実行することで、
事業の成功に近づくことができます。

2018年04月13日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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自動運転規制/米テスラ/ライドシェア/ドイツ自動車大手 〜ライドシェアの未来像と日本メーカーにとっての危機とは?

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自動運転規制 自動運転事故は車の所有者に賠償責任
米テスラ 「モデルS」のリコール開始
ライドシェア 大手米ウーバーのアジア事業を買収
ドイツ自動車大手 移動サービス事業を統合

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▼ライドシェアの未来像と日本メーカーにとっての危機とは?
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東南アジア配車サービス最大手のグラブは先月26日、
米最大手ウーバーテクノロジーズの東南アジア事業を買収すると発表しました。
ライバルを買収し、東南アジア市場で圧倒的なシェアを確保する考えですが、
これについてフィリピン競争委員会は競争法に関する審査を終えるまで
フィリピン国内の事業統合を延期するよう命令を出したとのことです。

グラブは非常に大きな会社へと成長しつつあります。
実はこの買収の背景にはソフトバンクの差し金もあったのでは?
と言われています。ソフトバンクは、グラブにもウーバーにも投資をしています。
ウーバーは、中国市場を滴滴出行に売却する形で撤退しましたが、
フィリピンでも同じような形をとるつもりなのでしょう。

結果として、東南アジアはグラブ1社、
中国は滴滴出行1社が独占する形になります。
フィリピンでは選択肢が少なくなるということで、
今回の件がいわゆる独禁法に抵触するのではないかと指摘を受けています。

ライドシェアの会社は、今後車が自動運転になることで
さらに重要度が増していくと思います。
自動車メーカーは直接顧客とつながっていませんが、
ライドシェアの会社は顧客と直接つながります。
その点で、自動車メーカーよりも強さを発揮してくる可能性が高いでしょう。

独ダイムラーと独BMWは先月28日、ライドシェアなどの
移動サービス事業を統合すると発表しました。
ダイムラー子会社のカー2ゴーとBMW傘下のドライブナウを
軸に幅広いサービスで統合するもので、
BMWのハラルト・クリューガー社長は
「統合は新しい競合への強いメッセージだ」と語りました。

バンクーバーなどで私が見かけた光景から言えば、
カー2ゴーの影響は相当大きいと感じます。
約3000台のメルセデスがばらまかれていて、
消費者はスマホで予約して好きなときに乗ることができ、
自分で車を所有する必要はありません。
それでも都合がつかない場合には、
ウーバーを利用すれば事足りてしまいます。

ダイムラーとBMWが競合するのではなく、
統合するという選択肢をとったのは、
日本の自動車メーカーにとっては大きな脅威だと思います。
こうした移動サービスがさらに普及すると、
あえてトヨタや日産の車を選ぶ人は少なくなる可能性が高いからです。

ちょっとした距離を乗るだけであっても、もし選べるのであれば、
「ベンツSクラス」に乗りたいという人は多いでしょう。
逆に、安さを追求するのであれば、小さい車を選択すればいいだけです。
日本車は、高すぎず安すぎず、という中間層に位置しているので、
選ばれなくなる可能性が懸念されます。
日本のメーカーはこの脅威を感じて、準備をしておくべきだと思います。

外国勢に目を向けると、ディーゼルの燃費不正問題で
大炎上したフォルクスワーゲンが、生き残るのではないかと、
ビジネスウィーク誌で特集されていました。
一時期は倒産するかもしれないと言われていましたが、
一気にEVへ舵を切って将来像を示した戦略が功を奏した形です。

また、不正問題発覚で株価は下落しましたが、
中国市場で販売が好調だったおかげで
世界的に見ると売上はそれほど減少しませんでした。
中国では良くも悪くも、この程度の不正は
大きく問題視されなかったということでしょう。
逆に米国では不正について大騒ぎになりましたが、
もともと販売が不調だったので売上に対する影響は少なかった
という何とも皮肉な結果になりました。


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▼自動運転の賠償責任は、将来的に車種の売れ行きを大きく左右する
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政府は先月30日、自動運転中の車の事故について、
原則として車の所有者に賠償責任を負わせる方針を決めました。
これは運転手が乗った状態で限られた条件で運転を自動化する
「レベル3」までが主な対象で、メーカーの責任は車のシステムに
明確な欠陥がある場合のみとする方針です。

これは、もしかしたら大変な事態を招いてしまうかも知れません。
この場合、もし自動運転が可能な車種について
事故率のデータやレポートが発表されたら、
特定の車種に注文が殺到する可能性があります。

車の所有者として賠償責任を負わされるとしたら、
事故が少ない車種を購入したいと思うのは自然な流れでしょう。
もしそうなれば、統計的なデータや消費者レポートのようなものが
車のシェアに多大な影響を及ぼすことになるでしょう。

私としてはレベル3の自動運転くらいまでは、
このような規制については発表せず、
もう少し見守る姿勢を取った方が
良かったのではないかと思っています。

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米電気自動車(EV)専業のテスラは先月29日、
主力車種「モデルS」のリコール(回収・無償修理)
を始めたと明らかにしました。
寒冷地で使われる路面凍結防止剤の影響で
パワーステアリングのモーターを固定しているボルトが
腐食する恐れが判明したということで、
2016年4月以前に製造した12万3000台が対象となるとのこと。
ブランドイメージのさらなる毀損につながる可能性があります。

苦戦続きだった「モデルS」について、
ようやく量産のメドがついてきた矢先に、
このリコール問題が発覚しました。
米国の自動車メーカーの業績と時価総額を見ると、
テスラは売上高ではフォードやGMの10分の1にすぎないのに、
時価総額では両社に匹敵するほど評価されています。
一時期に比べると時価総額はやや下がりましたが、
それでも市場の期待は非常に大きいことが伺えます。

エイプリルフールの日に、イーロン・マスクCEOは
「イースターエッグを土壇場で大量販売するなど
資金調達に奮闘したにもかかわらず、
残念ながらテスラは完全に経営破綻してしまった」
と冗談ツイートをしていましたが、
テスラの置かれている状況を考えると、
こんな冗談はやめてほしいところです。
疑う余地がないほどIQが高いイーロン・マスク氏ですが、
EQはそれほど高くないのかもしれません。

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※この記事は4月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、自動車業界の話題を中心にお届けいたしました。

ライドシェアなどの移動サービス事業を統合する
と発表した独ダイムラーと独BMW。

これに対して大前は、ダイムラーとBMWが
競合するのではなく、統合するという選択肢をとったのは、
日本の自動車メーカーにとっては大きな脅威だと指摘しています。

今回のダイムラーとBMWの例のように、
グローバル化、競争激化、技術革新のスピードが上がり、
企業が自社の経営資源のみで成長を目指すことが
難しくなっていることから、戦略的提携が加速しています。

連携や提携で補完的な機能分担や価値提供を行うことで、
高い競争力を獲得し、競合に対する持続的な優位を
確保することができます。

2018年04月06日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米フェイスブック/個人情報流出問題/米アマゾン・ドットコム 〜 フェイスブック問題の本質は、「完全に」アカウント削除ができないこと

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米フェイスブック 時価総額約8兆4000億円減
個人情報流出問題 シリコンバレー、始まった「逆回転」
米アマゾン・ドットコム 時価総額約81兆8000億円

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▼フェイスブック問題の本質は、「完全に」アカウント削除ができないこと
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フェイスブックの個人情報が流出していたことが発覚して以降、
株価が先月27日までに18%下落し、時価総額も約8兆4000億円減少しました。
沈静化へ向けて、マーク・ザッカーバーグCEOは、
議会で証言する考えを示していますが、
一部の投資家からは今回の件を受けて、
米国内外でフェイスブックやグーグル、ツイッターに対して、
より厳しい規制が課されるのではないかと懸念が上がっています。

このフェイスブックの問題は非常に深刻です。
フェイスブックの株価を見ると大暴落というほどではありませんが、
18%の下落は大きいと思います。米国上場企業の時価総額を見ると、
アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフトに続いて、
バークシャー・ハサウェイが5位にランクインしています。
さらに中国アリババ、JPモルガン、ジョンソンアンドジョンソン、
エクソンモービルが上がってきています。
これまで上位はIT企業が独占してきましたが、
この1ヶ月間のIT企業の時価総額の下落は非常に激しいものになりました。

環境、社会性、ガバナンスの頭文字をとったESGという考え方があります。
投資判断として、財務諸表ではなく、ESG要素を考慮する投資を「ESG投資」と呼び、
2006年アナン国連事務総長(当時)が機関投資家に呼びかけたことでも話題になりました。
今後は、より一層この考え方が浸透してくるかもしれません。

今回のフェイスブックの問題で一番厄介なのは、
最終的に「完全に」自分のアカウントを削除することができない、
あるいは非常にそのプロセスが難しいということです。
単に自分のアカウントを削除しただけでは、自分とつながっている友達、
その友達とつながっている友達などのところに残っている情報までは削除されません。
そうした部分から、個人情報が漏れる可能性が残っています。

例えば私で言えば、過去に名刺交換などで知り合った人が数千人単位になりますが、
そのすべてにおいて私の情報を削除することはほぼ不可能だと言えるでしょう。

先日のビジネスウィーク誌に「Where's Our Digital EPA」
という記事が掲載されていました。
ここでは、デジタル社会でもEPAに匹敵する組織が必要ではないかと提言しています。

EPAは環境政策全般を担当する行政組織で日本の環境省に相当します。
人の健康や、大気・水質・土壌などに関する環境の保護・保全の役割を担っています。
「Where's Our Digital EPA」は、デジタル社会においても、
EPAのような存在が必要ではないか、ということです。
このままだと、フェイスブックという樽から汚れた油が流れ続けてしまう、と指摘しています。

フェイスブックは当初、個人情報を転売された自分たちは、
犠牲者であると発言していましたが、問題の本質はそこではありません。
フェイスブックに登録している人が、もう登録を抹消したいと思っても、
その情報を完全に削除できないということが
一番深刻な問題であるということが明らかになってきました。

日経新聞は、先月28日「シリコンバレー、始まった「逆回転」」
と題する記事を掲載しました。
個人情報の不正流出にからみ、規制論が高まる可能性がある一方で、
フェイスブックなどのIT企業が持つ高い技術力や
イノベーションを生む力は米経済の成長エンジンでもあり、
米産業の行方を決める歴史的な日になるだろう、としています。

かつてマイクロソフトは独占禁止法に違反しているとされ、
裁判を経験しています。あの時ビル・ゲイツ氏は弁護士に任せず、
裁判をすべて自分自身で対応していました。
今回のフェイスブックの問題で、ザッカーバーグCEOが
どのように対応するのかは注目したいところです。



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▼アマゾンの躍進に反比例で窮地に陥っているUPS
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先月20日の米株式市場でアマゾン・ドット・コムの時価総額が初めて
アルファベット(グーグルの親会社)を抜き、
アップルに次ぐ世界2位に浮上しました。
アマゾンは2月14日に初めてマイクロソフトを上回り、
時価総額で世界3位に浮上したばかりでしたが、
ネット通販とクラウド事業を柱に成長期待を背景に買いが続いています。

アマゾンの時価総額が大きくなる一方で、
米トランプ大統領は自身のツイッターで米アマゾンを名指しで
「税金を払っていない。数千の小売業を廃業に追いやっている!」などと批判しています。

税金問題以上に、深刻だと認識されてきているのがUPSの赤字問題です。
日本でもアマゾンのために、ヤマト運輸や佐川急便が大変な事態に陥りました。
ようやく値上げなどの対処をした結果、今は一息ついた状態です。

アメリカにおいてはアマゾンの影響力はさらに大きいですから、
UPSのような配送業者にかかる負担は遥かに大きなものになっています。
現状では、UPSは1個配送するたびに、1.5ドルの赤字になっているそうです。
超優良企業だったUPSが困窮しつつあります。

トランプ大統領の狙いとしては、配送業務に関わる多くの選挙民に対して、
自分がその処遇を改善したのだというわかりやすいアピールの場にしたいのだと思います。
私としてはこうしたアピールの仕方は賛同しかねますが、
トランプ大統領らしい分かりやすい方法です。
トランプ大統領の行動は99%について何一つ褒められたものではありませんが、
もしかしたら「UPSを救う」という1点において、
思わぬ役割を果たすかも知れません。



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※この記事は4月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、フェイスブックの話題を中心にお届けいたしました。

フェイスブックの問題は非常に深刻な問題となり、
大量の個人データを扱う企業全般への
規制論が高まる可能性がでてきています。

これら企業が持つ高い技術力やイノベーションを生む力は
米経済の成長エンジンでもあり、議会証言の日は、
米産業の行方を決める歴史的な日になるだとう、
としていますが、PEST分析のようなマクロ環境分析は
戦略立案において、非常に重要です。

自社で提供している製品、サービスや目の前の顧客だけをみていると
その市場の外側で何が起こっているのかが、見えなくなってしまいます。

環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探り、
現在の環境とともに将来の環境に基づいて戦略を立案することが大切です。

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