2018年11月30日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日産自動車〜ゴーン氏の悪事は過去のこと。重要なのはルノー側との「交渉」の進め方

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日産自動車 逮捕のゴーン会長を解任

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▼ゴーン氏の悪事は過去のこと。重要なのはルノー側との「交渉」の進め方
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日産自動車のカルロス・ゴーン会長と
グレッグ・ケリー代表取締役が金融商品取引法違反容疑で、
東京地検特捜部に逮捕されたことを受けて、
日産は22日臨時取締役会を開き、
両容疑者の解任を決定しました。
金融商品取引法などでは役員報酬を将来受け取る場合でも、
受取額が確定した年度に有価証券報告書に記載する
と規定しており、東京地検特捜部は、
ゴーン容疑者が高額報酬批判を避けるため、
過少記載を指示したと見て調べを進めています。

今回の逮捕劇を見ると、日産側が周到に
準備を進めていたことがわかります。
西川社長の記者会見ではゴーン氏による
会社の私物化について言及されていましたが、
私に言わせれば「ゴーン氏が悪い」というのは
すでに「過去形」で語られることであり、
今後の重要事項ではありません。
この問題はもっと色々な角度から見ることが必要です。

特に重要なのは、日産がルノーに対して
どのような「交渉」ができるか、ということです。
現状、ルノーは日産の大株主であり、
株式の43.7%(2018年9月30日現在。四半期報告書)
を保有していて圧倒的な主導権を持っています。
取締役会に役員も送り込んでいますし、
帳簿閲覧権も持っています。

私が日産側に立って交渉するなら、
まずルノーに大株主としての監督責任を強く追及します。
さらには、ゴーン氏はルノーが送り込んだ役員の一人ですから、
その点も強調して交渉に臨むでしょう。

そして同時に、今年までの予定だったゴーン氏の任期が
2022年まで延びた理由も追及します。
今年になってマクロン仏大統領と会ってから、
急にゴーン氏の任期が2022年まで延びて、明らかに
ゴーン氏の態度がフランス政府寄りに傾き始めました。
今年の5月に私が週刊ポストに寄稿した記事でも書きましたが、
ゴーン氏とマクロン大統領の間に何かしらの
「密約」があったのではないかと私は見ています。
ズバリ言えば、その内容はルノーによる
日産の完全統合だと思います。

マクロン大統領は、かつて経済・産業・デジタル大臣だった頃から
フランスに世界一の自動車メーカーを誕生させたい
と考えている人物です。ドイツ、日本、米国、
そして将来的には中国にも世界一の覇権を争う
自動車メーカーが存在します。これまでのフランスでは
その争いに参加することは難しい状況でしたが、
ルノー・日産・三菱連合となり、
それが視野に入ってきた今、マクロン大統領としては
長年の夢を実現させるべく動いていると思います。

これまでにもゴーン氏はフランス政府からルノーによる
日産の完全統合の打診は受けていたはずですが、
ずっとそれを拒否してきました。ところが、
今年になって自分の人事と引き換えに
それを受け入れた可能性があります。

日産側はこの点を理解した上で交渉に臨まないと、
フランス政府・ルノー側の思うままに
完全統合されてしまうかもしれません。

この問題について世耕経済産業相も何やら発言していますが、
日産は政治家や役人の動きには特に注意すべきでしょう。
1980年代に東芝の子会社でもなく、独立した上場会社であった
東芝機械が不祥事を起こしたことがあります。
本来、東芝が責任を問われる必要はありませんでしたが、
当時の通産省は米国に媚を売って東芝の会長と
社長の首を差し出すような真似をしました。
政治家・役人というのは、こういうことをやりかねないのです。

こうした背景も理解しつつ、
日産は完全統合される道を避けるために、
どのような交渉のシナリオを描くのか?
非常に重要であり、かつ極めて難しい交渉が予想されます。



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▼日産はどのような交渉を持ちかけるべきか?
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今現在、ゴーン氏は会長職と代表取締役を解任されました。
ここまでは日産の取締役会の決議で可能でしたが、
取締役も解任するとなれば株主総会の決議が必要で、
臨時株主総会を招集しなければいけません。

株主総会の決議となったときに厄介なのは、
ルノーの持株比率です。ルノーは日産株の
43.7%を保有しています。過半数を超えるためには、
通常は株主総会を開いて委任状争奪戦
(プロキシーファイト)になりますが、今回の場合、
ルノーは43.7%でも過半数になれる可能性があります。

というのは、日産ほどの大企業になると
全発行株式を集めるのは難しいので、
かき集めたとしても80%程度になります。
そうなると、ルノーの持ち分43.7%で
過半数ということになってしまいます。
そうなると、ルノーの賛成を得られなければ、
日産はゴーン氏もケリー氏も取締役を解任することはできません。

日産がこのシナリオを防ぐためには、
現在約15%保有しているルノーの株式を
25%まで買い増すことが必要です。
25%まで保有率を高めると日本の法律によって、
ルノーの議決権が停止するからです。

また、ルノー側がゴーン氏とケリー氏の解任動議に
賛成したとしても、安心はできません。
代わりに新たにルノーから2人の取締役が送り込まれたら、
元の木阿弥だからです。日産側としては、
ルノーからの取締役は1人までにしてもらい、
代わりに会長職を渡すなどの交渉が必要でしょう。

そうなると、ルノー側から派遣する取締役の人数が減って、
日産によるルノー株の買い増しを
取締役会で決議されるかも知れません。
ルノーとしてはそのような事態を避けたいはずですから、
事前にそれだけは認めない契約を締結するように
求めてくる可能性があります。

私がルノー側の人間ならば、
日産の取締役会でマイノリティになるような事態は
何が何でも避けるように動きます。
逆に日産側の人間ならば、日産に対する完全子会社化をしない
という契約を取り付けるように動くでしょう。
それができないなら、今回の責任を大株主であるルノーに問い、
国際的な場で「争う」姿勢を見せます。
ルノーが送り込んだゴーン氏がどれだけ悪さをして、
日産の株主に被害を及ぼしたのかを交渉材料にするでしょう。

責任問題という意味では、ルノーから日産側の監督責任を
問われる可能性も十分にあります。そうなると、
西川社長も無傷ではいられないと思います。
そこまで見据えて、シナリオを描いて交渉していく必要があります。
繰り返しになりますが、これは非常に難易度が高い交渉になると思います。



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▼ゴーン氏が居なくなっても、日産が傾くことはない
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世間ではゴーン氏が居なくなった後、日産は大丈夫なのか?
と心配する声もありますが、私は、全く問題はないと思っています。
そもそもゴーン氏がボロボロだった日産を
立て直したという認識が間違いです。
確かにゴーン氏は日産の「まずい部分」を直しました。
当時の日産には、官僚主義的な組合が多く存在しました。
また、関連会社、工場、あるいは下請け会社のトップには
日産本社社員の先輩たちがいたため、
本社が強い影響力を発揮することができない状況でした。
そうした「しがらみ」が日産を押しつぶそうとしていたのです。

当時の日産の社長だった塙義一氏は、
ゴーン氏を日産に連れてきた張本人ですが、
ある資料を読むと、ゴーン氏が実行したことは
塙氏も実行することは「可能」だったと述べています。
ただし、日産内部の人間である自分が実行すると
血を見ることになる、と。それゆえ、
日産内部の人間関係的な「しがらみ」がない
ゴーン氏のような部外者が必要だったのです。

そして、現実的に日産がV字回復を果たした
一番大きな要因は、日産の技術力が非常に高く、
元々日産が高いポテンシャルを持っていたからです。
ゴーン氏の経営手腕が優れていたからではありません。
その証拠に、ゴーン氏は同じように
ルノーの経営再建を図りましたが
日産のように上手く行っていません。

おそらくほとんどの人が、この事実を理解していないと思います。
ゴーン氏がいなくなったら日産が
オンボロ会社に戻るなどというのは、大間違いです。
今の日産は販売台数も伸びていますし、
かつてのように「しがらみ」にがんじがらめにもなっていません。

ゴーン氏が日本国内を軽視した結果、
今や日産の国内シェアは5位に落ちていて、
どちらかと言えば、日産は「世界の日産」
としての立場が強くなっています。
ルノーの利益に対しても、単純計算で、
2017年度の最終利益の約4割は日産が貢献しています。
このままルノーと日産が仲良くやっていけるのであれば、
それに越したことはありません。しかし、
そう簡単に話がまとまるのか、まだわかりません。

日産としては、受け身にならずに
「攻め」の姿勢を持つことが重要だと私は思います。
ゴーン氏が不正を働いたのは、本当に日産だけなのか?
ルノーでも同じようなことがないのか?
私ならすぐにルノーに調べるように要請するかもしれません。
非常に難しい交渉になる可能性が高いので、
日産としては自らのシナリオを持ち、
「攻め」の姿勢で臨んで欲しいと思います。

2018年11月23日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日ロ関係〜安倍首相は何よりも平和条約締結を重視すべき

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日ロ関係 ロシア・プーチン大統領と会談

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▼北方4島の返還は日米安保条約の対象にならない理屈が必要
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安倍首相とロシアのプーチン大統領は14日、
平和条約締結後に北方四島のうち歯舞群島と色丹島を
日本に引き渡すことを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に、
日ロ平和条約交渉を加速させることで合意しました。
安倍首相は会談後、「次の世代に先送りすることなく、
私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという
強い意志を大統領と完全に共有した」と語りましたが、
プーチン大統領はその後「日ソ共同宣言には、
引き渡す根拠やどちらの主権になるかは明記されていない」
と述べ、交渉には時間がかかる認識を示しました。

安倍首相もようやく日ロの歴史的な背景などを理解したので、
プーチン大統領の在任中に日本とロシアの問題を解決し
自らの功績を残しておきたいという思いで動いているのだと思います。

そもそもプーチン大統領は数年前にも「2島返還」については
承諾する姿勢を見せていましたが、外務省の谷内氏が
「(2島返還された場合)日米安保条約の対象になって
米軍基地が置かれる可能性」があると発言したために
交渉が行き詰まってしまったのです。
私は当時から諸悪の根源は谷内氏であると指摘していましたが、
今回初めて朝日新聞がこのことに言及する記事を掲載しました。

安倍首相はロシア問題について、
不思議なことに外務省・谷内氏に頼るところがあります。
私に言わせれば、そもそも日ロ関係について国民に嘘をついて
混乱させる事態を招いた張本人は外務省であり、
頼るべき相手ではありません。当時の重光外相は、
ダレス米国務長官から沖縄返還の条件として、
ロシアに対して4島一括返還を求めるように恫喝されました。
米国の意向によって日本は4島一括返還を主張するようになったのです。
このような背景を外務省は国民に明らかにしていません。

プーチン大統領の「どちらの主権になるかは明記されていない」
という発言は、日本に対する嫌がらせではなく、
日米安保条約の対象になるか否かを見据えたものです。
返還された島の主権が日本になると、
当然のことながら日米安保条約の対象になり、
米軍基地が置かれる可能性が出てきます。
そうなるとロシア国民に納得してもらえませんから、
プーチン大統領は困ります。

一方、北方4島は日米安保条約の「対象にならない」とすると、
今度は米国が許容できないはずです。
中国との尖閣諸島問題では日米安保条約の対象として
米国に庇護を求めていますから、
北方4島は対象外というのは虫が良すぎるということになります。

ロシアと米国のどちらも納得できる理屈が必要です。
例えば、沖縄返還と同様に「民政」のみ返還し、
「軍政」は返還しないという方法です。
この形であれば、米軍基地が置かれることはなく
プーチン大統領も国民に説明できるでしょう。
ただ、現実的に島民のほとんどがロシア人なのに民政だけ返還されても、
ほとんど意味がないという意見もあります。
いずれにせよ、北方4島の返還にあたっては、
日米安保条約の対象にならないような
プロセスや理屈が絶対に必要になってくると思います。




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▼安倍首相は何よりも平和条約締結を重視すべき
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ロシアとの2島返還の交渉が進んだ場合、
対象となるのは歯舞群島と色丹島でしょうが、
この2島は日本にとってそれほど利用価値は高くありません。
現実的に最もメリットがあるのは
国後島と色丹島の間にある「漁場」です。
歯舞群島と色丹島の2島返還であっても、
この漁場を使えるとなると
日本にとっては大いにメリットがあります。

ということであれば、政府の交渉もこの流れに乗りたいところですが、
地元の漁民が反対しているという話もあります。
国後島と色丹島の間にある漁場が使えるのはありがたいけれど、
日本中から漁師が押し寄せることになったら、
地元の漁師としてはデメリットが大きくなるということです。
日本側も一枚岩とはなっていません。

先日、私は網走から近い漁港で「ロシア産ウニ」
というものを見かけて、「なるほど」と思いました。
つまり、そのウニはロシアの漁師に獲らせて、
それを買っているということです。
北洋漁業は寒く危険ですから、ロシアから輸入するほうが
日本にとってもメリットが大きいかも知れません。

返還交渉が進むと、元住民の人たちが戻るのかどうかという
現実的な問題も出てくると指摘されていますが、
私はかなり限定的なものになると見ています。
今も約1万人の元住民が島の返還を求めていますが、
年齢はほぼ90歳近い人たちですから、
実際に移り住む人は少ないはずです。
また先ほど述べたように、
ロシアが軍政を残したまま返還するとなったら、
なおさら新たに島に移り住む日本人は少ないでしょう。
5〜10年後、住民の大半はロシア人というのが現実だと思います。
その人たちの福利厚生まで日本が考えるべきとなると、
日本側の負担も馬鹿にできません。

どうしても日本人は現実的な島の返還を求めがちですが、
ロシアと日本との関係性を改善していくことを考えれば、
象徴的な問題として平和条約を締結することのほうが重要であり、
安倍首相にとってもそれを実現できれば大きな功績になると思います。

もちろん2島を返還してもらうのは
象徴的な意味合いとしても良いですが、
例えば鈴木宗男氏が言うように
「2島先行返還で、残り2島についても継続交渉」
にこだわる必要はないと思います。
むしろ平和条約を締結すれば、その後しばらくの間は
ロシア人が島に残っているのも認めるくらいの
オプションを付けても良いと感じます。

領土よりも平和条約を締結し
ロシアと正常な関係性を築いていくことが、
何よりも重要だと私は思います。
ようやく安倍首相もこの重要性に気づいて交渉を進めています。
自らの実績にもなりますし、ぜひ実現して欲しいところです。




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※この記事は11月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、日ロ関係の話題を中心にお届けいたしました。

安倍首相とロシアのプーチン大統領が、
日ロ平和条約交渉を加速させることで合意しました。

この話題に対して大前は、
ロシアと日本との関係性を改善していくことを考えれば、
北方4島の返還よりも、象徴的な問題として
平和条約を締結することのほうが重要だと
大前は記事中で言及しています。

交渉は双方の問題解決を目指した対話であり、
双方の満足度を高めるような生産的な交渉を
目指すことが大切となってきます。

交渉の過程では何かしらの歩み寄りが必要となり、
相手にも同等の譲歩を求めながら、
ゆっくりと譲歩するのがよい交渉です。

互いの利害が尊重され、やり方がフェアで、
合意事項を守ると互いに信じられる交渉こそが、
双方に納得感をもたらすことができます。

2018年11月02日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日中関係/対中ODA〜新たな時代の3原則よりも、対中ODA終了が持つ重要性

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日中関係 7年ぶりに中国を公式訪問
対中ODA 日本のODA積極報道を指導

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▼新たな時代の3原則よりも、対中ODA終了が持つ重要性
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安倍首相は先月25日、日本の総理大臣として
7年ぶりに中国を公式訪問しました。
総理はまず李克強首相と対談し、東南アジアなど
第三国でのインフラ整備を通じた日中協力を強化し、
関係の改善を進める考えで一致。
また習近平国家主席とは約1時間20分会談し、
新たな時代の日中関係について
「競争から協調へ」などの3原則を確認しました。

最近中国における日本企業の活動も
円滑になってきたとも聞きます。
合わせて今回の安倍首相への「歓待」を見ると、
中国の日本に対する態度が全体的に軟化しているのでは?
と感じる人も多いでしょうが、
これが今後も続くのかどうかはわかりません。

中国はその時々・状況に応じて、政府がどのような態度で
受け入れるかという方針を決めて、
全員が忖度するという形を取ります。
もしかすると、何かまた日中間で問題が起これば
中国企業の態度も一変し、中国国民が日本企業に
投石するようなこともあり得ると私は思います。
とは言え、現時点で言えば
今回の安倍首相の訪中には意味がありました。

第三国でのインフラ開発協力に対する認識においては、
中国側の「日本が一帯一路構想に協力してくれる」
というものに対して、日本はそれだけは同意できない
と考えています。中国との間ですから、
こうした多少のズレは出てきますが、
それでも今回様々な取り決めができたことは評価して良いでしょう。

その中で安倍首相は新たな時代の3原則
(「競争から協調へ」
「お互いパートナーとして脅威にならない」
「自由で公正な貿易体制の発展」)を強調していましたが、
私がさらに重要だと感じたのは
「対中ODAの終了」というテーマです。

今回の首脳会談において、中国に対する
政府開発援助(ODA)を日中両政府は
2018年度の新規案件を最後に終了することになりました。
円借款供与額が上位の国を見ると、
トップにはインド、2位にインドネシア。
かつてトップだった中国は現在3位になっています。
さすがにこれだけ経済発展を遂げた中国に、
これ以上ODAを継続するのはおかしい
ということで「終了」することが決定しました。



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▼中国ODAの裏にあった歴史的な因縁と自民党内の利権問題
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日本によるODAの終了を受けて、
中国政府は共産党・政府系メディアに対し、
中国の経済発展に対する日本の政府開発援助(ODA)の貢献を
積極的に報じるよう指導したことがわかりました。

これは歴史的なことで、これまで中国は日本のODAに対して
感謝を示したことは一度もありません。
例えば、ベトナムであればODAで橋が完成すれば、
必ず「日本のODAで作られた橋」だと報道し、
日本からも誰かお祝いに駆けつけます。
しかし中国の場合には、「日本のODA」という発表はなく、
まるで中国共産党が作ったもののように報道してきました。

このような中国側の態度には理由があります。
中国は日本のODAを戦争に対する
「償い」として受け止めてきたため、
「当然」の権利だと認識してきたから、
日本に対する感謝を示そうとはしなかったのです。

田中角栄氏が日中関係を正常化する交渉を進める中で、
中国側から戦争に対する償いを求められました。
本来この要望そのものがおかしいものです。
というのは、中国共産党は戦争時の当事者ではなく、
当事者であった蒋介石は日本の償いは
不要という意見だったからです。

それを承知の上で、当時の田中角栄氏と周恩来氏などが
一計を案じて、ODAという形で中国を支援することで、
中国側の要望に対応することにしました。
中国からすれば、償いのために資金援助をするのは
当然だと思っていますから感謝するわけがありません。
また、このODAは自民党・田中派の利権としても活用され、
ODAが行われると、自民党・田中派に資金が流れるような
仕掛けがあったとも言われています。
このような事実を多くの日本人は知らないと思います。

こうした歴史的な因縁や自民党内の
利権に絡むドロドロしたものなど、
国民には表立って知らされない事実があり、
それがずっと継続されてきていました。
今回のODA終了によって、このようなものに
終止符が打たれるのは非常に良いことですし、
非常に意味があることだと私は感じています。



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※この記事は10月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、対中関係の話題を中心にお届けいたしました。

日本の総理大臣として7年ぶりに
中国を公式訪問した安倍首相。

安倍首相は新たな時代の日中関係について
「競争から協調へ」などの3原則を強調していましたが、
それ以上に「対中ODAの終了」というテーマの重要性に
ついて大前は記事中で言及しています。

交渉はビジネスを行う上で、
避けては通れない永遠のテーマであり、
交渉は双方の問題解決を目指した対話です。

「勝ち負け」として捉えられがちな交渉ですが、
駆け引きによって勝ち負けを決定するコンテストではなく、
当事者双方が意思決定者になり、
双方に納得感のある交渉こそがよい交渉です。

また、論理的な思考と明瞭な表現を行い、
相手の主張や考え方を知るための積極的な傾聴や
歴史的知識を知るなど事前準備を十分に行うことによって、
交渉力を高めることができます。

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