2018年12月28日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中貿易戦争/中国諜報活動/台湾・鴻海精密工業〜ファーウェイが諜報活動に与せず、グローバル化する唯一の方法とは?

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米中貿易戦争 米中摩擦、衣料大国に恩恵
中国諜報活動 中国「国家情報法」、米に衝撃
台湾・鴻海精密工業 中国に最新鋭半導体工場新設へ

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▼電子部品などの製造は簡単に中国からバングラデシュなどに移せない
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日経新聞は13日、「米中摩擦、衣料大国に恩恵」
と題する記事を掲載しました。
世界のアパレル各社が中国から周辺国に
生産拠点を移す動きが加速しています。
昨今の人件費の高騰に加え、
米国が中国の通信会社に課した制裁が
各社の工場移転を後押ししており、
バングラデシュ、ベトナムの衣料品輸出のシェアが
急拡大しているとのことです。

と言っても、基本的に急拡大しているのは衣料関係のみで、
その他への広がりは期待できないと思います。
衣料関係の業務はミシンをかけるような労働集約型で、
このような業務については、バングラデシュ、ベトナム、
ミャンマー、最近ではエチオピアにも中国企業が進出しています。

しかし、部品を組み立てるような業務、
特に発注から出荷までの時間(ターンアラウンド)が
短い電子製品などになると、バングラデシュや
ミャンマーなどでは技術的に対応できないと思います。
加えて港湾施設の処理能力が中国ほど高いわけではありません。
中国は大連を皮切りに上海や深センに港湾施設を建設しましたが、
同じようなものを用意することはできないでしょう。

実際バングラデシュの輸出品目を見れば、
織物とニットが圧倒的に多くなっています。
日本も途上国のときには、絹織物など労働集約型のものが中心でした。
最初の日米貿易戦争は、日米繊維交渉だったのも、
その事実を物語っています。

中国は米国と激しい貿易戦争を繰り広げている中、
「中国製造2025」という目標を明文化し、
火に油を注いでいるような印象を受ける人もいるかも知れません。
しかし私に言わせれば、大半の経営者は数字目標を掲げるものであり、
それ自体は問題ではありません。

問題は、目標が現実に着実に進んでいることです。
時価総額が高い企業が続々と現れ、AI技術も発達し、
米国の予想をはるかに上回るスピードで成長しています。
この中国の成長そのものが米国の反感を買っているのだと思います。



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▼ファーウェイが諜報活動に与せず、グローバル化する唯一の方法とは?
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日経新聞は20日、『中国「国家情報法」米に衝撃』
と題する記事を掲載しました。
米国がファーウェイ製品などの締め出しを強化する背景には
2017年中国で施行された「国家情報法」に絡む危機感があります。
この法律には「いかなる組織及び個人も、
国の情報活動に協力する義務を有する」と明記されており、
通信機器などのハード面と人的情報活動の脅威に対し、
米国は中国への警戒をかつてないほど強めているとのことです。

ZTEやファーウェイの問題も絡んでいることですが、
そもそもこれは中国国内で実施されていることです。
中国では中国共産党が、国内の企業や反政府勢力の
台頭を抑えるために、国内の電子機器やサーバーから
直接データを取得できるようになっています。
ファーウェイなどがそのような施設を作り、
政府による諜報活動を可能とする
「仕組み」を提供しているということです。

こういう企業がグローバル化してしまうと、
「その仕組み」もそのまま世界に展開されてしまいます。
これを防ぐのは非常に難しいでしょう。
ファーウェイは非常に能力が高い企業ですが、
それでも一筋縄ではいきません。

もしファーウェイがグローバル化しようとするなら、
国内部門はZTEと合併し、残った部分をファーウェイグローバルとして、
ボードメンバーをグローバル化すること
(中国人だけにしないこと)が必須だと私は思います。

なお、中国政府が施行する「国家情報法」に対して米国は
「衝撃」を受けたとありますが、そんなはずはありません。
米国にしても、中国に負けず劣らず
同じようなことをやっているはずです。
サーバーも監視しているでしょうし、
エシュロンという仕組みもあります。
米国内ではテロ対策として常時監視は当たり前のはずです。

米国がやるのはいいが中国はダメ、
というのもおかしな話で、米国も中国も
どっちもどっちだと思います。



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▼鴻海が新設する巨大な半導体工場
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台湾・鴻海精密工業は、広東省の珠海市に
大規模な半導体工場を新設する見通しが明らかになりました。
新工場には子会社のシャープが持つ
半導体技術を活用すると見られ、
総事業費は1兆円規模にのぼる見通しです。

補助金や税金の減免などを通じて、
大半を珠海市政府などが負担する方向で協議しているそうで、
かなり巨大な工場になると思います。
珠海市は上海市と橋でつながり、
製造関連が活発化しているので今後も楽しみな地域です。

鴻海はTSMCやサムソンからも膨大な量の半導体を購入しています。
そんな中、シャープは鴻海グループの中で
唯一半導体を製造していたので、
このプロジェクトの声がかかったのでしょう。
鴻海が上手くシャープを立ててあげた形です。




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※この記事は12月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米中貿易戦争の話題を中心にお届けいたしました。

中国は米国と激しい貿易戦争を繰り広げています。

この話題に対して大前は、問題は、
「中国製造2025」という目標を明文化したことではなく、
米国の予想をはるかに上回るスピードで成長し、
中国の成長そのものが米国の反感を買っている
と記事中で言及しています。

米中対立の激しさが増す中、日本や日本企業も
かじ取りを誤れば自らの首を絞める事態に直面しかねません。

このような不確実な状況では、
PEST分析のようなマクロ環境分析を行い、
大局観を掴むことが大切となってきます。

環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探り、
現在の環境とともに将来の環境に基づいて
戦略を立案することが重要となってきます。

2018年12月21日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日欧貿易/憲法改正/税制改正/国内景気〜関税を下げても経済効果は期待できない

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日欧貿易 日欧EPAを承認
憲法改正 自民党の憲法形成案提示見送り
税制改正 2019年度税制改正大綱を決定
国内景気 景気回復が「いざなぎ景気」超え

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▼日欧EPAのインパクトは極めて小さい
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欧州議会は12日、仏ストラスブールで開いた本会議で、
日本とEUの経済連携協定(EPA)を賛成多数で承認しました。

日本は8日に国会承認を済ませており、
これにより日欧EPAは2019年2月1日の発効が固まりました。

この日欧EPAには、トランプ米大統領への対抗心もあって
欧州側も大いに喜んでいています。

欧州と日本を合わせると世界第2位の経済圏となり、
世界の自由貿易の4割に達するということで、
大きな影響を期待させる報道もあります。

しかし私は、この日欧EPAはそれほど大きな効果は期待できないと思います。

たしかに日欧EPAの対象で関税が低くなるものはありますが、
関税率などたかが知れています。

例えば20ユーロのワインの関税は、270円前後といったところです。
ところが、このワインが日本国内に流通するときには、
7〜8倍の価格に跳ね上がります。

これは、関税のせいではなく、独占的な輸入商社が価格を上乗せしているからです。

つまり本質的な問題は、特定の輸入商社に輸入業の独占を許していることです。
私が好きなルーチェというワインなど、現地にて19ユーロで売っているものが
あるECサイトでは18,000円ほどの値段になっています。
さらにそれが、高級レストランでは値段が上がって6万円程度になります。

その一方、港区のあるインターナショナルスーパーマーケットでは、
ワインなどのお酒の値段はかなり安くなっています。
これは、独占的な輸入商社を介さずに直接仕入れを行っているからです。

せっかく関税も下がるのなら、このお店のように、現地価格に輸送費を加えて
多少の利益を上乗せする程度で提供して欲しいものだと思います。
問題は関税ではないのです。


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▼日本の国会議員は、憲法改正をゼロから構想できるレベルではない
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臨時国会会期末の10日、衆議院で憲法審査会が開かれましたが、
安倍首相が意欲を示してきた「自衛隊の明記」などを含む
自民党の憲法改正案の提示は見送られました。

先月の憲法審査会で、与党側が合意を得ないまま開催を強行したとして、
野党側が反発したことを受けたものです。
国民投票法改正案の審議も再び次の国会に持ち越しとなりました。

自民党案を見ても反対している野党を見ても、何とレベルが低いことかと思います。
私は「平成維新」という本で今から約30年まえに、
「ゼロベースで憲法を構想するなら、こうすべきだ」というのを示しました。

憲法の議論をするなら、自分がゼロベースで構想を練ることが
できるくらいでなければお話にならない、と私は思います。

今回、安倍首相が指摘している憲法改正の4項目など、誤文訂正のレベルに過ぎません。

その上、それに反対している野党側も、手続き上の問題を指摘するくらいで、
どちらにしても全く憲法に対する構想を示すことができていません。

「自分たちなら憲法をこうする」という提案があるべきです。

このような状況では、今後憲法改正が俎上に載ってくることはないでしょう。
強引に進めることも可能ですが、最終的に国民投票で否決されるのがオチです。

おそらく能力的な問題として、今の日本の国会議員に任せることが無理なのだと思います。

憲法改正を実現できる方法があるとすれば、オンブズマンを作って原案を提出させ、
その原案を与党と野党が国会で審議・検討し、
そして最終的に国民投票にかける、という方法でしょう。

一度、オンブズマンに戻して原案を提出してもらわないと、
まともな議論が始まらないと思います。


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▼政府がすべきなのは、増税の目的を国民に説明すること
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自民党と公明党は14日、「2019年度与党税制改正大綱」をまとめました。
10月の消費増税に伴う駆け込み需要や反動への対策に重点を置いたもので、
自動車と住宅は消費増税後に購入すればメリットを得られる措置を拡充。
単年度ベースで自動車と住宅で1670億円の減税となる見通しです。

参議院選挙を睨んだ対策なのでしょうが、あまりに細かく複雑にやりすぎています。
飲食店で普通に購入したものは減税対象で8%になるのに、
それを店内で食べると外食扱いで10%が適用されるとか、
コンビニのイートインスペースはその適用範囲なのかとか、
細かい問題がありすぎて、誰も正確には理解できていないと思います。

自動車や住宅の減税策にしても、そんなことをするなら、
そもそも税率を上げた効果が薄れてしまって意味がないと思います。

政府がやるべきことは、意味不明に細かい規則や減税策を考えることではなく、
国民に「なぜ消費増税が必要なのか?」という理由をきちんと説明することです。

増税を契機にキャッシュレス化を進めるという話も出ていますが、
これも全体を複雑にしているだけです。

アジェンダが増えすぎて、狙いが多すぎて、意味不明になっています。
私に言わせれば、余計なことばかりやっています。

選挙対策とは言え、あまりにひどい状況に陥っていると感じます。


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▼平成の30年間は、失われた30年。景気回復など全くしていない
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内閣府は13日、有識者による景気動向指数研究会を開き、
2012年12月から続く景気拡大局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて、
昨年9月で戦後2番目の長さになったと認定しました。

またさらに景気回復が今月まで続いていることが確認されれば、
戦後最長に並ぶことになり、政府や民間エコノミストの間では
来年1月には戦後最長を更新するとの見方が強まっているとのことです。

それほど良い景気が続いているという感覚を持っている国民は、
誰もいないでしょう。

これは利用している「指標」が間違っているので、
これほど実態とかけ離れた発表になってしまっています。

平成になってからの30年間の事実は、日本は失われた30年と言っても良いほど、
世界の中で日本が最も衰退した期間だということです。

例えば、平成元年における世界の企業時価総額ランキングでは、
トップ10のうちエクソンモービルとIBM以外は全て日本企業でした。

それが2018年のランキングでは、トップ10のうち中国企業が2社で残りは全て米国の企業になっています。

この30年間の株価指数で見ると、ダウ工業株は同じ期間で価格が2倍になっているのに、
日本は2倍どころかマイナスになっています。

名目賃金でも、米国やユーロが2倍に上昇したのに、日本はマイナス7%です。
平成元年からの30年で見ると、日本経済で「上がった」ものなど1つもありません。

景気回復と言っても、30年前から比べればマイナスなのですから、意味がないことがわかります。

この平成の30年間は戦後経験したことがない30年間になりました。
企業でいえば、日本のトップであるトヨタ自動車が世界では26位です。

あれだけ強かった企業も世界から姿を消した日本において、
いざなぎ景気に匹敵する景気回復などとよく言えたものだと思います。


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※この記事は12月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、日欧貿易の話題を中心にお届けいたしました。

国会承認を経て来年の発効が固まった日欧EPA。
経済効果が期待されるとの声があがるなか、
大前はワインの例を挙げてそれに疑問を呈しています。

本当に関税が下がれば販売価格も下がるのか?
どのようなプロセスを経て販売価格は決定されているのか?

今回のケースに関しては、このような視点で冷静に考えることで
関税減のインパクトを想像することができます。

構造把握を通じて最も効果の出る箇所を理解し、
それに対して打ち手を検討することが問題解決において重要です。

2018年12月14日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ニセコリゾート/ハウステンボス〜ニセコ開発が進むのは再開発の自由度が高いから

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ニセコリゾート 外資に買われる「ニセコ」
ハウステンボス 復星集団(フォースン・グループ)から出資受け入れ

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▼ニセコ開発が進むのは再開発の自由度が高いから
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日経新聞は2日、『外資に買われる「ニセコ」』
と題する記事を掲載しました。
北海道の倶知安町とニセコ町にまたがる
ニセコ地区の不動産投資が加熱しています。
パウダースノーを求めて世界中から
スキーヤーが集まることに加え、
ホテルやスキー場で働く外国人も増加し、
ペンションやアパートが次々に建てられています。
地元ではインバウンド消費は歓迎するものの、
過度な開発が豊かな自然を損なう
との懸念も浮上しているとのことです。

倶知安町は地価上昇率が高く注目を集めている地域ですが、
私は現在の地価は「上がり過ぎ」だと感じています。
ニセコ以外にも北海道の中に良いスキー場はたくさんあります。
もっと東京に近い地域に目を向ければ、
越後湯沢、志賀高原、野沢なども、
ニセコに負けず劣らず良いスキー場だと思います。

その中で、なぜニセコがこれだけ注目を集めて開発されているのか?
というと、再開発の自由度が高いというのが大きな理由です。
ニセコは千歳から移動に2時間近くもかかりますし、
その途中非常に気温が下がる場所もあり、
利便性が高いわけではありませんが、
比較的自由に開発できるという点が
他のスキーリゾート地に優っています。

逆に、越後湯沢、志賀高原、野沢などの従来のスキー場は、
山の上の方にぐちゃぐちゃに固まってしまっていて、
全体を作り直すのが非常に難しい状態です。
ゆえに再開発の自由度が低く、ニセコを超える
ポテンシャルを持ちながら活かせていません。

越後湯沢駅の周辺など複数のスキー場がありますが、
バラバラに運営されていて、
お客を引っ張り合っている状況です。
だからそれぞれが行き詰まり、経営も傾いている状態です。
もし再開発が可能なら、私は200億円くらいあれば、
越後湯沢の町をまとめて再開発することができると思います。
2015年に北陸新幹線が開通した飯山駅の近隣にある
野沢温泉スキー場も、せっかくの新幹線開通という機会を
活かすことなく終わっています。

もしこれらの地域で再開発を自由にやらせてくれるなら、
1000億円規模の資金を投じても良いという人はいるはずです。
そうすると、カナダのウィスラーや
オーストリアのアールベルクのような
ハイエンドのスキーリゾートまで
視野に入れて開発できるでしょうし、
ニセコのみに開発が集中することもないはずです。

現在のニセコの地価やマンション価格は高すぎて、
私に言わせれば、全くお勧めできませんが、
マレーシアや香港などの外国人が資金を持ち込んでいるので、
日本としては外からお金が入ってくる
という点では良いのかも知れません。



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▼ハウステンボスも星野リゾートトマムと同様、経営主体は変わらず
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ハウステンボスは3日、中国の投資会社、
復星集団(フォースン・グループ)から
約25%の出資を受け入れると発表しました。
フォースンがHISや福岡企業5社から株式を取得するもので、
観光事業で世界展開をするフォースンと組み、
ハウステンボスは中国人観光客の取り込みなどを強化する考えです。

フォースンは2015年には星野リゾートから
星野リゾートトマムを買収している非常に積極的な企業です。
ヘルスケア事業を中心に大きな資金を作り、
今はレジャー関連事業に進出してきています。

星野リゾートトマムを買収した後も、
実際の運営は星野リゾートに委託するという方法を取っており、
今回のハウステンボスへの出資にあたっても
同様の方法を採用するのではないかと思います。

星野リゾートトマム(当時の名称は「アルファリゾート・トマム」)は
関光策氏が開発に着手してその歴史をスタートさせました。
気温はマイナス20度に達することもある厳しさで、
山の作りもスキー場としてそれほど優れているとは思えません。
それを星野リゾートが大規模な資金を投じてリニューアルしました。

星野リゾートトマムにしてもハウステンボスにしても、
フォースンが資金を肩代わりしてくれるのであれば、
経営は今まで通り自分たちでやれば良いのですから、
ありがたいことでしょう。



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※この記事は12月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、観光産業の話題を中心にお届けいたしました。

地価上昇率が高く注目を集めているニセコ。

ニセコが注目を集めて開発が進んでいることについて、
他のスキーリゾート地と比較し、
再開発の自由度が高いというのが
大きな理由だと大前は記事中で言及しています。

地域活性化の打ち手の一つとして考えられるのが
「リゾート開発」です。

しかし、記事中で紹介している従来のスキー場のように、
せっかくのポテンシャルがあっても
点で考え、バラバラと解決策を打ち出しても、
「インバウンド需要」を取り込むことはできません。

日本にある観光地のメリットを活かしながら、
世界の富裕層を日本国内に呼び込むことができるかが、
日本の地方振興にとって重要な鍵になると考えられます。

2018年12月08日(土) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日仏原発開発/中国原発市場/武田薬品工業/LINE/飲食店業界〜キャッシュレス決済で遅れをとる日本の現状。日本はまずシステムを構築せよ

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日仏原発開発 フランス政府が次世代原子炉開発を凍結
中国原発市場 中国、新型原発の稼働ラッシュ
武田薬品工業 シャイアー買収「賛成できない」
LINE スマホ決済で中国テンセントと提携
飲食店業界 「無断キャンセル」防止へ議論

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▼日本の原発計画はすでに詰んでいる。今後の原発の中心は途上国へ
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日本がフランスと進めている次世代原子炉開発について、
仏政府が2020年以降、計画を凍結する方針を
日本側に伝えたことがわかりました。
建設コストが増加したことや、原発依存度を引き下げる
フランス政府の方針などを受けたもの。
日本は2016年に高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を決め、
今後の研究開発にはこの原発のデータを活用する計画で、
日本の原子力計画への影響は必至と見られています。

日本がプルトニウムの備蓄を増やしていることについて、
かねてから欧州や米国から注意勧告を受けてきました。
日本としては高速増殖炉の開発を続けている
という大義名分を掲げてきたものの、
「もんじゅ」の廃炉が決定したことで
それも通用しなくなりました。

そこで、フランスの実証炉「アストリッド」に資金を投じて
一緒に開発を進める立場を取ろうとしていたのです。
しかし、フランスは原子力依存度を
現状の約70%から50%程度に落とすことを決定し、
この思惑も失敗に終わることになりました。

フランスはすでに「ラプソディ」「フェニックス」
「スーパーフェニックス」という
1000メガワット級の高速増殖炉の開発に成功していますから、
無理に「アストリッド」を開発する必要がありません。
「日本が資金を出すなら一緒にやってもいい」
くらいの考えだったのでしょう。
それを急に止めると言い出すあたりは、
マクロン大統領らしいなと思います。

日本では「日本の原子力計画に打撃」と一部で報道されていますが、
こんな都合がいいだけの便乗政策が中止になって
「打撃」と解釈するのは、私には理解できません。
プルトニウム備蓄の大義名分となる日本の全原子力政策が、
全面的にフランスに依存していたというのも悲しい話です。

結局、日本の原子力政策という意味では、
高速増殖炉もんじゅの失敗で
ゲームオーバーだったということです。
日本のプルトニウムの備蓄については
世界中から注目されていますが、この事態に至っては
備蓄し続ける正当な理由付けをすることは難しいでしょうから、
不要なものは返却するしかないと私は思います。

日本とは対象的に開発が進んでいるのが中国です。
日経新聞が報じたところによると、中国では9月から11月にかけて、
加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」を採用した
原発3基が商業運転を開始しました。
事故で電源が失われても自動で原子炉が停止可能な
次世代型の原子炉「第3世代プラス」と呼ばれるもので、
習近平指導部が打ち出す産業政策「中国製造2025」を背景に、
2030年には最大で現状の4倍近くの
1億5千万キロワットまで発電能力を引き上げる計画です。

この「AP1000」という原子炉は
米ウエスチングハウスが開発したものです。
もし今も東芝がウエスチングハウスを保有していれば、
ライセンス料だけで相当なことになっていたでしょう。
東芝としては泣くに泣けない事態でしょう。

世界各国の原子炉の建設状況、計画状況を見ると、
メインはロシアと中国、それに次ぐのがインドで、
ほぼこの3国に集中しています。結局、
発展途上国が原子炉の主力建設地域になってきています。
日本は計画中としているものがいくつかありますが、
実際に開発されることはないでしょう。

中国の原発開発状況を見ていると、
日本の川崎重工が開発した新幹線が
いつの間にか中国製として輸出されるようになっていた
パターンを想起してしまいます。
中国が原子炉の開発をマスターすると、
同じようなことが起こってくると思います。



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▼武田薬品のシャイアー買収は下手をすると「ルノー・日産化」する
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武田薬品工業の創業家で社長・会長を務めた
武田国男氏がアイルランドの製薬大手シャイアーの買収に
反対していることがわかりました。
武田氏は「医薬業界にはM&Aは必要」としながらも、
独自に分析した結果、シャイアーの案件は
リスクが高いと判断したとのことです。

武田国男氏は偉大な経営者ですが、
すでに海外(シンガポール)にいる身ですから、
負け犬の遠吠えのように見えてしまいます。
シャイアーは買収に次ぐ買収で大きく成長した企業ですが、
業績推移を見ると純利益の乱高下が激しいのがわかります。
今のタイミングは「高値づかみ」したような形になっています。
こういう点も買収に賛成できない理由になっているのだと思います。
とは言え武田国男氏を含め、創業家の株式保有比率は3%程度なので、
まず委任状争奪戦(プロキシーファイト)には影響しないレベルです。

武田薬品の社長は、武田国男氏から長谷川氏、
そして長谷川氏から同社初の外国人社長になった
クリストフ・ウェバー氏へ引き継がれています。
このシャイアー買収問題は、下手をすると
「ルノー・日産化」する可能性があるので、
その点は注意するべきでしょう。



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▼LINEはアント・フィナンシャルを目指せ
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LINEは中国ネットサービス大手のテンセントと提携し、
2019年から訪日中国人客にスマートフォン決済サービスを
開始する見通しが明らかになりました。
また、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)
と提携し銀行業に参入する計画も発表しています。

実務的なことで言えば、みずほとの提携は要らないでしょう。
アリババのアント・フィナンシャルと同じようなことをすれば、
LINE自体が金融機関のような仕事をすることは難しくありません。
おそらく、顧客の取引DBの情報などを
狙っているだけだと私は見ています。



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▼キャッシュレス決済で遅れをとる日本の現状。日本はまずシステムを構築せよ
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飲食店の無断キャンセル防止へ向けて、業界団体や弁護士、
経産省などが参加する検討会が開かれました。
会議ではコース料理を予約して
無断キャンセルした場合は全額を、
席だけを予約した場合も平均客単価の5割程度を
請求することなどが指針としてまとめられました。

年間被害総額は約2000億円ですから、
もちろんこの問題を解決すべく取り組むのは良いことです。
しかし、「指針をまとめる」よりも
「システムを構築」するほうが先だと私は思います。
というのは、すでに中国ではアント・フィナンシャルが
構築したシステムのおかげで解決しているからです。

お客さんは飲食店を予約すると同時に、
アント・フィナンシャルのシステムで
電子決済が完了してしまいます。キャンセルされても、
すでにお金を払ってもらっているので飲食店としては特に困りません。
実際には、このシステムが構築されたことで、
中国では飲食店の予約キャンセル数が激減しました。
日本にとっては羨ましい話です。

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