2019年01月25日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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奨学金制度/転職市場/国内金融業界/モラトリアム法〜キャリア向上と日本の金融機関が置かれた状況

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奨学金制度 保証制度の見直しに着手
転職市場 デジタル革命、越境転職促す
国内金融業界 金融×IT、銀行巻き返し
モラトリアム法 モラトリアム法、負の遺産

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▼奨学金は普通に銀行から借りるようにすべき
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日本学生支援機構が実施する貸与型奨学金について、
文部科学省が保証制度の見直しに着手することが分かりました。

長期の延滞が増加し、制度を圧迫している現状を踏まえ、
奨学金を借りるすべての学生から借入額に応じて
一定額を保証料として徴収する検討に入ったもので、
これにより制度は安定する一方、学生の負担は増える見通しです。

まず私が思うのは、奨学金の対象を大学と考えるのであれば
義務教育ではないのですから、本来は国が支援する必要はない、
ということです。

必要な人は銀行から普通にお金を借りれば良いのです。

そして、大学に通うことに価値があり、その価値が
上がったことで給与も高くなり、その分で返済ができるという
認識を持つことが大事だと思います。

そうなれば、銀行側としても貸出先がなくて困っていますから、
受け入れてくれるはずです。

公的な奨学金だと思うから返済が甘くなるのであって、
銀行であれば取り立ても行うでしょうから
返済率も改善するでしょう。

公的な就職先であれば返済を免除するなどの条件も
私は不要だと思います。



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▼異業種間の転職は、給与・キャリアの向上にも良い
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日経新聞は15日、「転職市場 デジタル革命、越境転職促す」
と題する記事を掲載しました。

2017年度に同じ業種の中で転職した人は、
2009年に比べて2.07倍だった一方、異業種への転職は
2.98倍にのぼったと紹介。

IoTやAIなどデジタル技術で事業を変革する動きが
各業種で広がり、データの取得や分析を行うエンジニアの
需要が高まっていることが要因で35歳を超えると就職先が
見つかりにくくなる年齢の壁も崩れ始めているとのことです。

これは非常に健全で良い傾向だと思います。

エンジニアの人がサービス業や銀行などの異業種に転職すれば、
そういう人材が不足していますから、大いに活躍が期待できますし
給与も上がり、キャリアも広がっていくと思います。

一方、サービス業などの業界にいた人がエンジニア業界に
転職しても、実際のサービスとして実現する内容などを
エンジニアに明確に伝えられるようになるので、
これも意味があると思います。

これまでの転職というと同業種間が多かったのですが、
このような異業種間の転職は非常に効果的だと思います。



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▼稚拙なAI融資から始まる日本/モラトリアム法は日本が抱え込んだ爆弾
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3メガ銀行と地銀など18社はベンチャー企業と新会社を
設立し、人工知能(AI)を駆使した中小企業向け融資に
参入する共通のデータ基盤をつくる見通しだと紹介。

日々の決済情報を審査に使えるよう解析するシステムを
開発する方針で、これによりAI融資で先行する
アマゾンやリクルートなど異業種組みに追いつきたい考えです。

中国のアントフィナンシャルに比べると、
ほとんど幼稚園のレベルですが、それでもこういうことから
始めていかなければ金融業界も生き残れない、
ということでしょう。

とても「銀行の巻き返し」とまでは言えませんが、
今後に期待したいところです。

日経新聞は15日、「地銀波乱 モラトリアム法 負の遺産」
と題する記事を掲載しました。

リーマン危機後の2009年12月、民主党政権が中小企業の
借金返済を猶予するよう銀行に求めた
中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の施行から
10年が経過したと紹介。

しかし、その後の稼ぐ力が回復せず、経営破綻に追い込まれる
企業が続出し地銀の不良債権処理損額は
2018年4-9月期に8年ぶりの高水準に達したとのことです。

2009年亀井静香元金融相がゴリ押しで主導したのが、
この中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)でした。

それまでは貸付先の企業の経営状況が悪ければ、
「破綻懸念先」への融資になり一定割合の貸倒引当金を
計上する必要がありました。

しかし、モラトリアム法を施行した貸出先については
「正常先」と見なして良いということで、貸倒引当金を
計上する必要もなくなり銀行の経営もずいぶんと楽になりました。

そして、企業も銀行から返済に追い立てられることがなくなりました。

しかし、40万社にのぼるモラトリアム法の対象企業のほとんどは
経営改善せず、まともに復活したところはほとんどありません。

こうなってくると銀行にも他人事ではありません。

今後、金利が上昇してくると不良債権を抱えて
大きな赤字を計上する銀行が増え、さらに取り立てできずに
倒産する銀行も出てくると思います。

これは日本が抱え込んだ大きな爆弾です。



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※この記事は1月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、日本国内の話題を中心にお届けいたしました。

大前は記事の中で、奨学金や転職市場についてそれぞれ
言及していますが、私たちがこれからのキャリアを考える上での
大切なポイントが含まれています。

奨学金については「大学に通うことで上がった価値で給与を高くし、
その分で返済ができるという認識を持つことが大事」と、
転職については「異業種間の転職は給与・キャリア向上に効果的」
と述べていました。

大学に行くにせよ、転職をするにせよ、いずれも手段であり、
その手段を選んだ結果、自分の価値をどのように上げ、
どのように人生の糧にしていくかを考えなければなりません。

「とりあえず大学に行く」や「市場が活況だから転職する」
という考えだけでなく、進学・転職して得たものをどう活用して
キャリアを広げ、さらに稼いでいくかを考えることが大切です。

それらを考えることで初めて、「自分で上げた価値で返済する奨学金」
や「給与が上がり、キャリアが広がる異業種への転職」という
選択肢が選び取れるようになります。

これからの時代、どこの大学・企業に属していたかではなく、
自分自身に力をつけて、自らの価値を上げていくことが
重要となります。

2019年01月18日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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レーダー照射問題/徴用工問題〜韓国の反日感情はそれほど大きくはない。日本は大人の態度で接するべき

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レーダー照射問題 国際違反を知られたくなかった韓国
徴用工問題 「判決は尊重せざるを得ない」

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▼韓国国内でも「恥ずかしい」という意見が大半
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JBプレスは8日、「レーダー照射:国際法違反を知られたくなかった韓国」
と題する記事を掲載しました。
韓国軍が海上自衛隊の哨戒機にレーダーを照射した問題で、
防衛省が公開した映像から韓国海軍の軍艦と北朝鮮の漁船などが
日本の経済水域に集まっていたことが判明しました。
韓国海軍が北朝鮮の漁船に燃料を提供するのを見られたくなかったため、
射撃レーダーを照射して追い払った可能性があるとし、
日本はこの国連制裁決議に反する行為の有無を
引き続き監視すべきとしています。

日本の経済水域で北朝鮮の漁船にトラブルが発生した時、
北朝鮮には助ける力はありません。そこで今回は、
韓国海軍が北朝鮮の漁船を助けるべく動いたのでしょうが、
北朝鮮の漁船に給油している様子が写真に収められていました。
この行為は、国連の北朝鮮に対する制裁決議違反になるので
韓国側は慌てたのだと思います。

さらに、今回日本の海自の哨戒機に対してレーダー照射する行為は、
韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)
にも違反しています。日本の海自からは3回ほど
周波数を変えて応答を促したそうですから、
当事者は違反を自覚しているのは間違いありません。

これを契機に安倍首相は韓国を責めるべきだ
という意見もありますが、私は放っておけばいいと思いますし、
文在寅政権は北朝鮮と一体化して統一コリアを目指す方向性ですから、
今さらこのような行為に驚くこともありません。

またこのような韓国の問題については、
国際社会はもちろん、実は韓国国内でも認識されています。
今回の事件について報じている中央日報の記事を見ると、
「韓国として恥ずかしい」という論調でした。
韓国の漁船がひっくり返っても韓国海軍が助けることはないのに、
北朝鮮の漁船を助けるためになぜ動いているのか全く理解できない、と。

ですから、日本があえてこれ以上追及してもそれほど意味がないと私は思います。

日本が韓国に期待するのは、
北朝鮮からの拉致被害者の奪還支援ですが、
文在寅政権になってからは完全に日韓の利害は一致していないので、
かなり難しいと思います。韓国自身も拉致被害者がいるのに
追及をしていないのですから、なおさらでしょう。

文在寅大統領が思い描くのは、
統一コリアを実現した上で韓国が主導し、
自分がその頂点に君臨することかもしれません。
金正恩委員長は北朝鮮でも尊敬されていませんから、
仮に統一コリアが実現したとしても
彼がトップに選ばれることはないと思います。

あるいは文在寅大統領はそこまで想定せず、
かつての上司でありノーベル平和賞を受賞した
金大中元大統領のようになりたいのかもしれません。



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▼韓国の反日感情はそれほど大きくはない。日本は大人の態度で接するべき
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韓国の文在寅大統領は10日、韓国大法院が日本企業に
元徴用工への賠償を命じる確定判決を出したことについて、
韓国は三権分立の国であり、韓国政府は司法判断を
尊重せざるを得ないとの認識を示しました。
また「日本の政治指導者が政治的な争点とし、
問題を拡散させているのは賢明ではない」
と述べ、日本側の対応を批判しました。

まず日本の報道では、文在寅大統領が「日本を批判した」
という点を大きく取り上げていますが、
実際の演説内容の9割は「経済問題について尽力する」
という内容でした。偶然、質疑応答の際に、
韓国語を話せるNHKの高野記者を指名してしまい、
そのような質問を受けたために回答したものでした。
むしろ文在寅大統領としては、
特に日本との問題に触れたいという意図はなかったはずです。

日本政府としては日韓基本条約の中で、
この問題はすでに解決済みと認識しています。
韓国側も日本から支払われた総額8億ドルの賠償金が
韓国の発展に貢献したということを、分かっている人は大勢います。

すでに終わっていることですから、取り立てて騒ぐ必要はなく、
この問題も放っておくのが一番良いと思います。
新日鉄住金が徴用工への賠償金支払いを命じられたと言っても、
はっきり言って蚊に刺された程度の影響しかありません。

文在寅大統領は日本との対立を煽るような態度を示すことがありますが、
実は韓国という国にとって最大の敵は韓国人です。
韓国で世論調査をすると、自国=韓国を嫌う人の割合はかなり高いのです。
韓国の社会は、良い大学を出て役人になるか
財閥に入るかしないと幸せになれないという構造になっています。
そのような構造に嫌悪感を持っている韓国人は大勢います。
日本人の話題を持ち出すのは、
この根本的な問題を解決することは出来ないので、
致し方なくやっているに過ぎません。

実際、韓国人のブログなどを見ると8割は
「韓国、いい加減にしろ」という論調で自国を批判しています。
政治の世界と一般人の感覚は大きく違います。

ですから、日本としてはあまり真剣に韓国に対して騒ぎ立てる必要はなく、
安倍首相も韓国を追及するような態度ではなく、
もっと大人な態度で落ち着くべきだと思います。
国籍別の訪日外国人の中で、韓国人は上位にランクします。
日本にとって韓国は「良いお客様」といえる面もあるので、
大事にするべきだと私は思います。



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※この記事は1月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、日韓関係の話題を中心にお届けいたしました。

日韓関係の話題について様々な報道がされていますが、
日本としてはあまり真剣に韓国に対して騒ぎ立てる必要はなく、
安倍首相も韓国を追及するような態度ではなく、
もっと大人な態度で落ち着くべきだと
大前は記事中で指摘しています。

昨今の国際情勢や、国内政治の状況の中、
今を生き抜くために個人でできることは、
『情報を集め、自分の意見を形成する能力を磨く』ことです。

報道を鵜吞みにし、目先の結果を見て騒ぐのではなく、
まず、事実を把握し、前提となる法律や制度にも
疑問を持つことが重要です。

自分で疑問を持ち、自分で調べるという姿勢が身につけば、
それだけで強力な力を持つことができます。

疑問を持ち、自分で調べ、自分の判断で生きていく
工夫をするための「自分で考える力」が大切です。

2019年01月11日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中関係/中国ファーウェイ問題/中国サイバースパイ/中国外資規制〜米中新冷戦の幕開けが日本に及ぼす影響は?

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米中関係 新冷戦に備えはあるか
中国ファーウェイ問題 中国政府がカナダ人13人拘束
中国サイバースパイ 「APT10」、暗躍の背景は
中国外資規制 外商投資法案の審議開始

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▼米中新冷戦の幕開けが日本に及ぼす影響は?
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日経新聞は先月24日、「新冷戦に備えはあるか」
と題する記事を掲載しました。これは米国が
5Gインフラの整備から中国のファーウェイを排除するなど
米国と中国が新たな冷戦に突入したと紹介。
こうした中、日本政府にとって重要なのは、
日本企業が誤って米国の規制を受けないよう情報提供することや
日米防衛産業の秘密保持を徹底することなどとする
専門家の見方を紹介しています。

この新冷戦の幕開けは、ペンス副大統領が
ハドソン研究所で行ったスピーチでした。
このスピーチは米中冷戦の宣戦布告と言っても過言ではない内容で、
米国で最も中国嫌い・台湾好きな
ピーター・ナバロ大統領補佐官の戦略を
下敷きにしたものでした。

ペンス副大統領のスピーチは、かつて英国チャーチル元首相が、
「鉄のカーテン」と称してソ連を批判して押し込んだのと
同じような影響があるとも言われています。

今後日本企業としては、不用意に中国企業と協業するだけでも要注意です。
日本企業経由で何かしらの米国の情報などが盗まれて中国側に渡った、
ということがあれば日本企業が米国から制裁を受ける立場になるからです。

かつての「東芝機械ココム違反事件」では、
日本から輸出された工作機械の取引が
対共産圏輸出統制委員会(ココム)の協定に違反している
として大問題に発展しました。同様のことが今後は、
「日米中」の間で起こる可能性があるということです。

世間を騒がせているファーウェイ問題は
顕在化したごく一部に過ぎず、
他にも潜在的に問題に発展する要素はたくさんあります。
日本としては常に注意する必要があると思います。

そのファーウェイ問題では
カナダが非常に困った立場に追い込まれています。

カナダ政府は3日、中国ファーウェイの孟晩舟副会長を
米国の要請に基づいて逮捕した昨年12月以降、
13人のカナダ人が中国当局に拘束されたと明らかにしました。
このうち少なくとも8人は解放されたとのことですが、
これに対して中国外務省は4日の会見で、
「提供できる情報はない」として明言を避けています。

こうした報復措置は中国の常套手段です。
日本バッシングが旺盛だった頃は、
日本企業の従業員が工事をしていただけで、
不審な測量をしているとして逮捕されたこともあります。
今現在の中国の報復対象はカナダと米国ですが、
今後はどこまで発展するのかはわかりません。

カナダとしては米国に依頼されたので逮捕したものの、
ここまで大きな問題になるなら手を引けば良かった
と思っているでしょう。とは言え、
米国に逆らうのも問題ですし、
中国も怖いし非常に困っていると思います。

まさに、今は米中の冷戦の入り口であり、
ここから始まっていくことになるでしょう。



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▼中国の監視の目は世界各国よりも、国内に向いている
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日経新聞は先月28日、
「中国サイバースパイ集団「APT10」、暗躍の背景は」
と題する記事を掲載しています。
これは米国司法省が先月20日起訴した中国人2人を
「APT10」のメンバーと断定し、
サイバー攻撃に関与したとして訴追したと紹介。
この集団の活動は、遅くとも2009年から確認されており、
各国の機密情報や先端技術を狙い、
これまで日本を含む12カ国が被害を受けたとのことです。

中国人2名が指名手配となり、FBIによって顔と名前、
簡単なプロフィールなどが公表されています。
これに対して、現在のところ中国側は無視しています。

実際のところ、中国政府とこのサイバースパイ集団の関わりは不明です。
中国政府がお尻を叩いて支援していたのか、
あるいはその情報を中国政府が活用していたのか、
判明していません。

ただし、1つ確実なのは中国政府の監視の目は
「外側」よりも「内側」に向いているということでしょう。
中国政府・共産党が最も恐れているのは、国内の暴動や扇動です。
共産党政府が崩壊するとしたら、国民が立ち上がったときです。
ゆえに中国政府は世界よりも、国内の監視に意識を向けています。
実際に予算上も、外側を監視する予算よりも
内部を締め付ける公安予算のほうが大きいと言われています。

日本も被害をうけたものの、その対応は呑気に過ぎます。
防衛予算の中で、サイバー防衛隊を150人から220人へ拡充する
とのことですが、少なすぎると思います。
北朝鮮でさえ、同様の部隊に3000人規模の人数を割り当てています。
電力システム、政府系システム、我々国民のクレジット情報のシステムなど、
国として守るべき重要なシステムがたくさんあります。
防衛省はもっと予算を要求して、しっかり整備してほしいところです。



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▼米トランプ大統領の圧力の成果!?
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中国の全国人民代表大会常務委員会は先月23日、
外資投資を保護する外商投資法案の審議を開始しました。
これは外資の技術を行政手段で強制的に
移転することを禁じることなどを盛り込んだもので、
2019年3月1日までの対中協議で米国が技術移転強制の改善を
強く求めていることを受けたものと見られています。

「今さら何を言ってるんだ!?」というのが率直な感想です。
自動車メーカーなどが中国に進出するときには
中国企業との合弁じゃなければ認めないなど、
今までの方針は何だったのでしょうか。

中国がWTOに加盟したときから、
この方針を貫いていれば良かったですが、
今になって言われても遅すぎます。
なぜ中国が今になって方針を転換したのかと思うと、
この点においてはトランプ大統領の圧力が
効果的だったのかも知れません。



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※この記事は1月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米中関係の話題を中心にお届けいたしました。

米国と中国が新たな冷戦に突入しようとしています。

この話題に対して大前は、ファーウェイ問題は
顕在化したごく一部に過ぎず、他にも潜在的に問題に
発展する要素はたくさんあるため、日本としては
常に注意する必要があると言及しています。

大前の指摘のように、日本や日本企業もかじ取りを誤れば
かつての「東芝機械ココム違反事件」のように
自らの首を絞める事態に直面しかねません。

このような環境の中、重要なことは、
世界中で起きていることや、起こりそうなことに注意を払い、
環境変化を迅速に認識し、変化に適応することです。

情報感度を常に高く持ち、
環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探ることで、
将来の環境に基づいて戦略を立案することができます。

2019年01月04日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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2018年の人気記事をピックアップ〜日産自動車/日ロ関係/米中ロ関係

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日産自動車 逮捕のゴーン会長を解任
日ロ関係 一切の前提条件設けず日ロ平和条約締結を提案
米中ロ関係 プーチン氏、打算の中国接近

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▼ゴーン氏の悪事は過去のこと。重要なのはルノー側との「交渉」の進め方
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※KON754(18/11/30)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。

東京地検特捜部は12月21日、
日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を
会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕しました。

国内の各メディアによると、ゴーン前会長は2008年10月ごろ、
自身の資産管理会社による投資で生じた
約18億5000万円の損失を負担する義務を
日産側に負わせた疑いで、同容疑者の逮捕は3度目。
関係者によると、「日産に損害を与えていない」
などと容疑を否認しているといいます。

ゴーン前会長と同社のグレッグ・ケリー前代表取締役は11月19日、
金融商品取引法違反容疑で特捜部に逮捕され、
12月10日に同法違反の罪で起訴。

また、特捜部は12月10日、同法違反の容疑で
ゴーン前会長とケリー元代表取締役を再逮捕し、
勾留期限だった12月20日に勾留延長を請求したが、
東京地裁は同日、12月21日以降の勾留延長を
認めない決定を行っていました。

今回の逮捕劇で、「ゴーン氏が悪い」というのは
すでに「過去形」で語られることであり、
今後の重要事項ではありません。
この問題はもっと色々な角度から見ることが必要です。

特に重要なのは、日産がルノーに対して
どのような「交渉」ができるか、ということです。
現状、ルノーは日産の大株主であり、
株式の43.7%(2018年9月30日現在。四半期報告書)
を保有していて圧倒的な主導権を持っています。
取締役会に役員も送り込んでいますし、
帳簿閲覧権も持っています。

私が日産側に立って交渉するなら、
まずルノーに大株主としての監督責任を強く追及します。
さらには、ゴーン氏はルノーが送り込んだ役員の一人ですから、
その点も強調して交渉に臨むでしょう。

そして同時に、昨年までの予定だった
ゴーン氏のルノーにおける任期が
2022年まで延びた理由も追及します。
マクロン仏大統領と会ってから、
急にゴーン氏の任期が2022年まで延びて、明らかに
ゴーン氏の態度がフランス政府寄りに傾き始めました。
昨年の5月に私が週刊ポストに寄稿した記事でも書きましたが、
ゴーン氏とマクロン大統領の間に何かしらの
「密約」があったのではないかと私は見ています。
ズバリ言えば、その内容はルノーによる
日産の完全統合だと思います。

マクロン大統領は、かつて経済・産業・デジタル大臣だった頃から
フランスに世界一の自動車メーカーを誕生させたい
と考えている人物です。ドイツ、日本、米国、
そして将来的には中国にも世界一の覇権を争う
自動車メーカーが存在します。これまでのフランスでは
その争いに参加することは難しい状況でしたが、
ルノー・日産・三菱連合となり、
それが視野に入ってきた今、マクロン大統領としては
長年の夢を実現させるべく動いていると思います。

これまでにもゴーン氏はフランス政府からルノーによる
日産の完全統合の打診は受けていたはずですが、
ずっとそれを拒否してきました。ところが、
昨年になって自分の人事と引き換えに
それを受け入れた可能性があります。

日産側はこの点を理解した上で交渉に臨まないと、
フランス政府・ルノー側の思うままに
完全統合されてしまうかもしれません。

この問題について世耕経済産業相も何やら発言していますが、
日産は政治家や役人の動きには特に注意すべきでしょう。
1980年代に東芝の子会社でもなく、独立した上場会社であった
東芝機械が不祥事を起こしたことがあります。
本来、東芝が責任を問われる必要はありませんでしたが、
当時の通産省は米国に媚を売って東芝の会長と
社長の首を差し出すような真似をしました。
政治家・役人というのは、こういうことをやりかねないのです。

こうした背景も理解しつつ、
日産は完全統合される道を避けるために、
どのような交渉のシナリオを描くのか?
非常に重要であり、かつ極めて難しい交渉が予想されます。

では、日産はどのような交渉を持ちかけるべきか?

今現在、ゴーン氏は日産の会長職と代表取締役を解任され、
ここまでは日産の取締役会の決議で可能でしたが、
取締役も解任するとなれば株主総会の決議が必要で、
臨時株主総会を招集しなければいけません。

株主総会の決議となったときに厄介なのは、
ルノーの持株比率です。ルノーは日産株の
43.7%を保有しています。過半数を超えるためには、
通常は株主総会を開いて委任状争奪戦
(プロキシーファイト)になりますが、今回の場合、
ルノーは43.7%でも過半数になれる可能性があります。

というのは、日産ほどの大企業になると
全発行株式を集めるのは難しいので、
かき集めたとしても80%程度になります。
そうなると、ルノーの持ち分43.7%で
過半数ということになってしまいます。
ルノーの賛成を得られなければ、
日産はゴーン氏もケリー氏も取締役を解任することはできません。

日産がこのシナリオを防ぐためには、
ルノーの株式を買い増し、ルノーの日産への
議決権を停止させることが必要でしょう。

また、ルノー側がゴーン氏とケリー氏の解任動議に
賛成したとしても、安心はできません。
代わりに新たにルノーから2人の取締役が送り込まれたら、
元の木阿弥だからです。日産側としては、
ルノーからの取締役は1人までにしてもらい、
代わりに会長職を渡すなどの交渉が必要でしょう。

そうなると、ルノー側から派遣する取締役の人数が減って、
日産によるルノー株の買い増しを
取締役会で決議されるかも知れません。
ルノーとしてはそのような事態を避けたいはずですから、
事前にそれだけは認めない契約を締結するように
求めてくる可能性があります。

私がルノー側の人間ならば、
日産の取締役会でマイノリティになるような事態は
何が何でも避けるように動きます。
逆に日産側の人間ならば、日産に対する完全子会社化をしない
という契約を取り付けるように動くでしょう。
それができないなら、今回の責任を大株主であるルノーに問い、
国際的な場で「争う」姿勢を見せます。
ルノーが送り込んだゴーン氏がどれだけ悪さをして、
日産の株主に被害を及ぼしたのかを交渉材料にするでしょう。

責任問題という意味では、ルノーから日産側の監督責任を
問われる可能性も十分にあります。そうなると、
西川社長も無傷ではいられないと思います。
そこまで見据えて、シナリオを描いて交渉していく必要があります。
繰り返しになりますが、これは非常に難易度が高い交渉になると思います。



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▼北方4島について、日本政府はずっと国民を騙している
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※KON744(18/9/12)、KON753 (18/11/23)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。

ロシアのプーチン大統領は2018年9月、安倍首相に対して、
一切の前提条件を設けずに2018年末までに
日ロ平和条約を締結するよう提案しました。
これは安倍首相が平和条約や領土問題の解決について
「アプローチを変えなければならない」と述べたのに対し、
プーチン大統領が賛同したもので、
まず平和条約を締結した上で
友人同士として意見の隔たりがある問題について
解決していこうというものです。

このプーチン大統領の提案について、日本のマスコミは
「なぜ安倍首相は反論しないのか?」と指摘していますが、
安倍首相としては「真実」を理解しているだけに
歯がゆい思いをしていることでしょう。
河野外相は日本とロシアの北方領土に関する真実について、
どこまで理解しているのかわかりませんが、
安倍首相はプーチン大統領との20回を超える
ミーティングなどを通して理解しているはずです。

日本の方針は
「北方4島の返還を前提にして平和条約を締結すること」
であり、これは以前からずっと変わらないもの。
菅官房長官などもこの趣旨の発言をしていますが、
そもそもこの認識が間違いであり、
日本政府がずっと隠してきている「嘘」なのです。

ロシア側の認識は
「北方4島は第二次大戦の結果、ソ連に与えられたもの」であり、
日本は敗戦国としてその条件を受け入れたわけだから、
固有の領土かどうかは関係がない、というもの。
ラブロフ外相もプーチン大統領も、
このような見解を示しています。
そして、このロシア側の主張が「真実」です。

終戦時にソ連と米国の間で交わされた
電報のやり取りが残っています。
ソ連のスターリンが北海道の北半分を
求めたのに対して、米国側は反発。
代わりに北方4島などをソ連が領有することを認めました。

この詳細は拙著「ロシア・ショック」の中でも紹介していますが、
長谷川毅氏の「暗闘」という本に書かれています。
米国の図書館などにある精密な情報を研究した本で、
先ほどの電報などをもとに当時の真実を
見事に浮かび上がらせています。

すなわち、北海道の分割を嫌い、
北方4島をソ連に渡したのは米国なのです。
今でもロシア(ソ連)を悪者のように糾弾する人もいますが、
犯人は米国ですからロシアを非難すること自体がお門違いです。

さらに言えば、日本が「北方4島の返還を前提」
に固執するようになったのも、米国に原因があります。
1956年鳩山内閣の頃、重光外相がダレス国務長官と会合した際、
日本はソ連に対して「2島の返還を前提」
に友好条約を締結したいと告げました。
しかし、ダレス国務長官がこれを受け入れず、
「(ソ連に対して)4島の返還」を求めない限り、
沖縄を返還しないと条件を突きつけました。

つまり、米国は沖縄の返還を条件にしつつ、
日本とソ連を仲違いさせようとしたのでしょう。
この1956年以降、日本では「北方4島の返還」が前提になり、
それなくしてロシア(ソ連)との平和条約の締結はない、
という考え方が一般的になりました。
1956年までの戦後10年間においては「4島の返還」
を絶対条件とする論調ではありませんでしたが、
この時を境にして一気に変わりました。

プーチン大統領の提案に対して、
マスコミも識者も随分と叩いているようですが、
1956年以降日本の外務省を中心に
政府がずっと国民に嘘をついてきた結果、
真実を理解せずに批判している人がほとんどでしょう。
プーチン大統領の提案は理にかなっています。
日本政府の「嘘」を前提にするのではなく、
とにかくまず平和条約を締結することから
始めようということです。

プーチン大統領の提案通り、まず平和条約を締結すれば、
おそらく「2島の返還」はすぐに実現すると思います。
残りの2島については、折り合いがつくときに返還してもらう、
というくらいで考えればいいでしょう。
相手がプーチン大統領であれば、
このように事を運ぶことはできるでしょうが、
別の人間になったら「1島」も返還されない可能性も大いにあります。

今、安倍首相は「とぼけた」態度を貫いています。
真実を理解しながらも、周りにはそれを知らず
理解していない人も多いでしょうし、
長い間日本を支配してきた自民党が国民に嘘をついていた
という事実をどう説明するか、
など悩ましい状況にあるのだと思います。

安倍首相に期待したいのは、
ロシアに対して経済協力などを続けながら、
とにかくいち早くロシアとの平和条約を締結して欲しい、
ということです。
それが実現できれば、安倍首相にとって
最大のレガシーになると私は思います。

北方4島の全てが返還されなくても、
それによってどれほどマスコミから叩かれても、
安倍首相とプーチン大統領の間で、
平和条約の締結を実現すべきです。
菅官房長官などは知ったかぶりをして、
4島返還について日本政府の方針に変わりはない
などと発言していますが、全く気にする必要はありません。

プーチン大統領の「どちらの主権になるかは明記されていない」
という発言は、日本に対する嫌がらせではなく、
日米安保条約の対象になるか否かを見据えたものです。
返還された島の主権が日本になると、
当然のことながら日米安保条約の対象になり、
米軍基地が置かれる可能性が出てきます。
そうなるとロシア国民に納得してもらえませんから、
プーチン大統領は困ります。

一方、北方4島は日米安保条約の「対象にならない」とすると、
今度は米国が許容できないはずです。
中国との尖閣諸島問題では日米安保条約の対象として
米国に庇護を求めていますから、
北方4島は対象外というのは虫が良すぎるということになります。

ロシアと米国のどちらも納得できる理屈が必要です。
例えば、沖縄返還と同様に「民政」のみ返還し、
「軍政」は返還しないという方法です。
この形であれば、米軍基地が置かれることはなく
プーチン大統領も国民に説明できるでしょう。
ただ、現実的に島民のほとんどがロシア人なのに民政だけ返還されても、
ほとんど意味がないという意見もあります。
いずれにせよ、北方4島の返還にあたっては、
日米安保条約の対象にならないような
プロセスや理屈が絶対に必要になってくると思います。

プーチン大統領の次を誰が担うのかわかりませんが、
仮にメドベージェフ氏が大統領になれば、
2島返還ですら絶対に容認しないでしょう。
プーチン大統領が在任中にまず平和条約を締結することは、
極めて重要だと私は思います。

というのも、中国がロシアに接近しつつあるので、
ロシアにとって日本の必要性が低下し、
このままだと日本にとってさらに厳しい状況になるからです。
東方経済フォーラムを見ていても、
プーチン大統領と中国は明らかに接近したと私は感じました。

中国は巨大な人口を抱える東北三省の経済状況がよろしくありません。
その対策として、極東ロシアへの投資に向けて動いています。
中国とロシアの国境を流れる黒竜江(アムール川)をまたいで、
現在両国を結ぶ橋を建設しています。
中国側とロシア側でそれぞれ資金を出し合っていて、
橋の建設には中国の技術が活用されています。

中国とロシア間の動きが活発化し、
中国から極東ロシアへの投資が拡大すると、
その貢献度はかなり大きなものになります。

日本も目を覚まさないと、全て中国に持っていかれてしまいます。
少なくともプーチン大統領は内心では親日派なので、
今のうちに早く動くべきです。
最後にもう1度述べておきます。安倍首相には、
どんな批判を受けても悪役になろうとも、
何が何でもロシアとの平和条約の締結を
実現させて欲しい、と思います。



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※この記事は2018年のクリックアンケートで反響が大きかった号をピックアップし編集しています




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