2019年03月29日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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株主還元/資金配分/米株式市場/米政策金利〜世界経済の現状と先行き

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株主還元 2018年度に世界で約265兆円
資金配分 米、自社株買いに規制論
米株式市場 米株の強みとコストの怖さ
米政策金利 政策金利を据え置き

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▼経済のソフト化によって大きな設備投資が不要になった
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日経新聞が21日報じたところによると、
世界の企業が行った配当と自社株買いの合計額は2018年度に
2兆3786億ドル(約265兆円)と過去最高となったことがわかりました。

金融緩和で資金が大量に出回っていることに加え、
産業構造の変化により企業が設備投資を行わなくなっていることが要因で、
投資家が株主還元ばかりを重視するようになれば、
特定の企業にお金が集中する富の偏在を生みかねない現状としています。

経済がソフト化し、大きな設備投資をする必要が
なくなったということが大きな要因になっています。

かつては100〜200億円の投資も当たり前だったシリコンバレーでも、
今は1〜2億円でも充分な案件が増えています。

企業が設備投資をしなくなったのではなく、
大きな設備投資の必要がない成長機会が増えた、というのが実態です。

ユーザーが買ってくれたスマホが設備投資の役割を果たすなど、
現在の設備投資は特定の企業が大きく実施するものではなくなっています。

「5G」の設備投資は従来型の大きなものですが、
それでも初期の頃の携帯電話網の設備投資額に比べると小さくなります。

経済のソフト化に伴い、企業には資金が余ります。

これを株主還元し、株価が高くなるという構図です。

株価が上昇することで「富の偏在」という問題が発生する、という
指摘もありますが、米国企業のように401Kを組み込んでいると、
むしろメリットを享受できます。

例えば、近年では株価が低迷していますが、GEは自社株を
401Kに組み込んでいて、ジャック・ウェルチ氏が経営者の時代に
株価は約30倍になりました。

この自社株を保有できた社員は、
もしGEを解雇されても困ることはなかったでしょう。

失業が増えても、早期退職を迫られても
個人として安心できるというのは非常に大切なことだと思います。



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▼競争力を前提とせず、給与・賃金を上げても問題は解決しない
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日経新聞は12日、「米、自社株買いに規制論」と題する記事を掲載しました。

米民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務が
企業は労働者のために資金を使うべきだとし、
自社株買い規制の必要性を訴えたと紹介。

トランプ大統領は、株式市場にショックを与えかねない政策には
慎重姿勢ですが、共和党内の一部にも規制に同調する動きが見られ、
背景には米国の深刻な格差問題があるとしています。

シューマー氏は金融関係では、特に大きな発言力を持つ人物です。

しかし、今回の発言にはもう1つ具体性がなく
説得力が欠けると私は感じました。

労働者のために資金を使うというのは、具体的に何を意味しているのか?と
考えると、おそらく「給料」のことだと思います。

しかし、そうであれば、一体どんな競争力を前提として
給料を上げることができるのでしょうか?

競争力を持つIT関係の米国企業は、すでに世界最高水準の
給料を支払っています。

世界的に競争力を失っている、下請け企業やレストランなどで
働く人の給料を上げるとなると、即インフレを招くことになるでしょう。

すでに多くの米国企業が競争力を失い、
中国からの輸入が止まらない時期に、このような発言をされても、
「結局、何をどうすれば良いのか?」というのがわかりにくいと思います。



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▼長期的に見ると、米国株・米国不動産は群を抜いて安定している
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日経新聞は24日、「米株の強みとコストの怖さ」と題する記事を掲載しました。

ウォーレン・バフェット氏が、
経営するバークシャー・ハザウェイの株主に年に1回送る手紙で、
『今年は「米国株に投資する強み」と「コストの怖さ」を指摘した』と
紹介しています。

株高が米国の多くの国民の幸せに結びつく構図が、
米株の長期上昇トレンドを維持させていることや、
売れ筋投信の多くが高コストのアクティブ型である日本の投資家こそ
コストの重要性を知るべきかもしれないとしています。

日本でも米国でも、運用成績が良い投資信託は、
ほぼ全てが「米国株」を組み込んでいます。

日本株なども良い時期はありますが、
長期間で見ると米国株だけが圧倒的な安定感を誇っています。

トランプ大統領は、米国が負けている感を演出していますが、
実際にはそんなことはありません。

GAFAを筆頭に、米国企業は最先端市場でも強いですし、
株価も上がっています。

競争力も圧倒的で、IT技術者などの給与もかなりの高水準です。

結局、ブラックマンデー、リーマンショックなど
大暴落があったとしても、10年、20年、30年という長い目で見ると、
「最も上昇しているのは米国株」というのが実態となっています。



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▼米国の政策金利据え置きは、決してマイナスのことではない
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米連邦公開市場委員会(FOMC)は20日、短期金利の指標である
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25−2.50%のレンジで
据え置く方針を全員一致で決定しました。

海外経済の成長鈍化が逆風となり、米国経済も予想より減速していることを
受けたもので、2018年12月に続く追加利上げも見送りました。

パウエルFRB議長の発表を見ていて、なぜ、わざわざ惨めな
言い方をしてしまったのだろう?と残念な気持ちになりました。

FF金利の誘導目標を据え置く理由を、
「海外経済の成長鈍化」と言う必要は全くありません。

私なら、このような言い方は絶対にしないでしょう。

日米欧の政策金利の推移を見ると、
ECBも日銀も0%あるいはマイナスに張り付いていて、
FRBだけが2.5%近辺まで上昇してきています。

これを根拠に、「米国企業は非常に好調であり、
これ以上金利を上げる必要性がなくなったので据え置く」と
発表するべきだったと思います。

海外経済の成長鈍化などと「他に原因」を求める必要はなく、
欧州、日本という巨大経済が停滞している中、
米国経済はよく持ちこたえていて、これを維持していく方針だ、と
言えば何も問題はなかったはずです。

また、中央銀行の総資産残高を見ても、FRBは残高を下げてきています。

この点もリスクマネジメントができているということを強調して
発表できたと思います。

一方、日本は大きな問題を抱えています。

日銀はいまだにマイナス金利を継続し、日銀が抱える総資産残高は
上昇していて、リスクは高くなっています。

日本としては、かなり重大な問題として受け止めて
対処するべきものです。



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※この記事は3月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は「お金」をテーマとしたニュースについて大前が解説しました。

お金の流れを把握するためには、
そこに登場する様々なプレイヤーを把握することから
始めなくてはなりません。

中央銀行、政府、企業、個人。

舞台は国内だけでなく、海外まで及び、
いまでは仮想空間にまで繋がっています。

お金がどこからやってきて、どこに行くのか。

これらを一つずつ紐解いていくことで
お金の流れを理解することができます。

お金の流れが変わる瞬間は、
世の中が変わる瞬間でもあります。

時代の潮流に乗るためには、
お金の流れを把握することも大切です。

2019年03月22日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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世界自動車大手/EU情勢〜迷走する英国に残された選択肢

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世界自動車大手 「合意なき離脱」なら英生産撤退の可能性
EU情勢 「今こそ欧州ルネサンスの時」

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▼期日が迫る英国のEU離脱。英国が取れる選択肢は?
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トヨタ自動車は6日、英国のEU離脱が「合意なき離脱」になった場合、
2023年以降に英国の生産から撤退する可能性があることを示しました。

EU離脱でEUとの間で完成車や部品の取引に関税が発生し、
英国の競争力が低下するためです。

企業は自衛の姿勢を強めている現状です。

インドのタタ自動車の傘下にあるジャガー・ランドローバーは、
約4,500人の人員削減で大幅な縮小路線を示し、
日産はインフィニティ、BMWはMINIの生産中止を発表しています。

ホンダ、トヨタも追随する動きを見せており、
ボクスホールのみが残るという状況になりつつあります。

40〜50万台の自動車を生産していた企業が、
次々と大規模な削減や撤退をするわけですから、
英国内は大変な状況になってしまうでしょう。

その原因になっているのは、もちろん英国のEU離脱問題です。

離脱までの期限が迫る中、英議会下院は14日、
EUからの離脱の延期をEUに求める政府動議を可決しました。

メイ首相の不人気な離脱案を20日までに承認し、6月30日までの
延期を経てEUを離脱するか、さもなければEUが設定する条件に従い、
長期の離脱延期を余儀なくされるか議会に選択を迫る内容です。

21日に始まるEU首脳会議の前に、依然として予断を許さない情勢です。

英国側は3月29日から6月30日までの延期を要請するとしていますが、
EU側からすれば、延期の明確な理由も示さずに
何を勝手なことを言っているのか、というところでしょう。

英国は議論の必要性を強調するかもしれません。

しかし、EUが合意できる内容は数年前に英国議会で否定されているので、
英国側の主張を鵜呑みにできないのも頷けます。

英国が取れる選択肢は2つあります。

1つは6月30日までの延期。

ただし、これにはEUの承認が必要です。

EUに承認されなければ、このまま3月29日がデッドラインに
なってしまいます。

もう1つの選択肢は離脱そのものを引き下げるというもの。

届け出そのものを引き下げれば、
英国民は落ち着いて再度話し合いをすることができます。

現在の状況からすると、野党を含め「再投票」に傾いており、
離脱ではなくEUに留まるという意見が約6割に達するのではないかと
見られています。

そのような結果になれば、以前の離脱合意の国民投票は
何だったのか、という意見もありますが、私に言わせれば、
2年半前のことであり、当時は議論が不十分だったと思います。

当時の英国民は、アイルランドの国境問題を筆頭に
EU離脱で生じる問題について十分に理解していたとは言えません。

ビジネスウィーク誌は、メイ首相は何とかEU離脱を
成し遂げるのではないかという論調の記事を掲載しているようですが、
私にはそうは思えません。

おそらく、一度EU離脱を引き下げる状況になり、
国民投票をすることになるでしょう。

そして、その状況になればメイ首相は辞表を出すしかないと思います。

私は当時から、再度国民投票をするしかない、と述べてきました。

3月29日の期限が迫り、いよいよ英国にはその道しか残されていないと
あらためて感じます。



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▼足元がおぼつかなくても、大胆な提案を繰り広げるマクロン大統領の二面性
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フランスのマクロン大統領は5日、EU加盟国の主要紙に寄稿し、
「今こそ欧州のルネサンス(再生)の時だ」と呼び掛けました。

5月の欧州議会選に向け、域内で勢いづく
右派ポピュリズム(大衆迎合主義)への警戒した内容で、
欧州の民主主義をサイバー攻撃や偽ニュースなどから守る
EU機関の新設などを提案しています。

以下が、マクロン大統領が提案している主な内容です。

・右派ポピュリズム(大衆迎合主義)への警戒
・シェンゲン協定(国境検閲無しで自由往来可能)の再検討
・欧州安全保障理事会の設置
・同一労働・同一賃金を保証するEU全体の社会的な盾の導入
・気候変動対策に融資する「欧州気候銀行」の創設
・デジタル巨人企業へのEUレベルでの監督体制の創設
・EU主要機関や加盟国、市民の代表者らが会する「欧州会議」を設置

「欧州会議」と「欧州議会(EU)」は何が違うのか?など、
個別に気になる点も多々ありますが、そもそもナポレオンの帽子をかぶって、
フランス大統領をやっているなどと揶揄されている人が、
よくこのようなことを提案できるものだと思います。

燃料税の導入だけでフランス国民にそっぽを向かれているなど、
足元がおぼつかない状況でも、このようなことを考える余裕があるというのは、
さすがに根っからの「エリート」なのだと感じます。

マクロン大統領の二面性がよく表れていると言えるでしょう。



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※この記事は3月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、英国のEU離脱問題について大前が解説しました。

3月29日という期限が迫る中、いまだに迷走が続いている英国。

このような事態になると、どれほどの人が事前に把握していたでしょうか。

2年半前に離脱合意した国民投票がありながら、
期限ぎりぎりまで方針が固まらない様子を見ると、
首相も国民もこの問題の重大さを十分に
理解できていなかったように感じます。

意思決定をする際は、感情に流されることなく、
その決断の影響範囲を見極めなくてはなりません。

そのためには、物事を俯瞰して捉えることが大切です。

どんな立場であれ、影響範囲を確認したうえで
決断を下すことが意思決定の基本となります。

2019年03月15日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ライドシェア大手/自動運転〜自動運転の世界で勝ち残るカギとは?

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ライドシェア大手 ウーバージャパンと第一交通産業 タクシー配車で提携
自動運転 グーグル系独走

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▼ライドシェアでは、自動車メーカーのブランドが通用しない
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タクシー大手の第一交通産業とウーバー・ジャパンは4日、
タクシーの配車サービスで提携したと発表しました。

国内の配車アプリを巡っては、日本交通系のジャパンタクシーが
先行していますが、ウーバーは第一交通との提携でサービスの
提供地域を拡大し、日本での影響力を高める考えです。

第一交通は北九州に本社を置く企業です。

私はよく九州に出掛けますが、
第一交通のタクシーを指名することも多いです。

というのは、QRコードやSuicaの決済に対応していて
利便性が高いからです。(地域によっては利用不可)

ウーバーは日本進出で苦戦しています。

日本の法律ではウーバーの運転手になるには、第2種免許が必要です。

ゆえに第1種・第2種免許を持たないと、
日本では白タク扱いを受けますが、世界的に見れば、
「空いている人」が運転してくれるというだけで
特に大きな問題とならない国もあります。

こうした規制があるために広がらない、日本における
ライドシェアの問題も、第一交通のような企業が介在すると、
少しは前進する可能性があるので、期待したいところです。

ユニコーン企業の時価総額ランキングを見ても、
ライドシェア企業の躍進が目立ちます。

滴滴出行が3位、楽天が投資している米リフトも
上位に食い込んでいます。

また、ライドシェアと自動車メーカーの時価総額を見ても、
ライドシェア市場の将来性を感じます。

現在の時価総額ではトヨタが断トツですが、
米自動車メーカービッグ3(GM、フォード、クライスラー)の
時価総額合計と、ウーバーとリフト2社の時価総額に類する
推計企業価値が接近してきています。

そして、ライドシェア市場が大きく成長していこうとしている傾向は、
自動車メーカーが多い日本にとっては、脅威以外の何者でもありません。

オーストラリアのライドシェアサービスでは、
ほとんど日本製の自動車を使っていないように見受けられます。

値段が半額で性能にそれほど大きな差がないため、
韓国製や中国製の自動車のほうが選ばれているのでしょう。

実際、お客さんもライドシェアを使うときに
自動車のブランドを気にする人は少ないでしょう。

私がよく見かけるオーストラリアで走っている
ウーバー車の多くは、韓国のヒュンダイ製です。

これからのMaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)の時代、
日本車は相当苦労することになると思います。

今後、車を作るメーカーはトラブルを抱える立場として、
一層厳しい状況を迎えることになるでしょう。



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▼自動運転では、走って実績を作った人が勝つ
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日経新聞は8日、「自動運転 グーグル系独走」と題する
記事を掲載しました。

米カリフォルニア州で公道試験を行う各社の報告を
集計したところ、昨年1年間の走行距離は、
ウェイモが地球50周分に相当する約202万キロメートルでトップでした。

実用化を控えた競争が激しさを増しているとのことです。

自動運転の世界では、「走って実績を作った人が勝つ」ことになります。

たくさん走行していれば、もちろん事故は起こります。

しかし、そのたびにその事故から学び、AIは賢くなっていきます。

その点で、グーグルのウェイモは、
グーグルストリートビューを撮影するために、
世界中を「自動運転」で走行していて、その実績は圧倒的です。

地球何周目かに相当する距離を走っているときに事故を起こしていますが、
それは目の前の車が急にUターンをしたといった「例外」的な状況に
対応できなかった事故でした。

この事故から、またウェイモのAIは一段賢くなったはずです。

このような例外的な事例のデータがたまらないと、
自動運転は安全にはなりません。

だから、頭で考えるだけでなく、とにかく走りまくった人が勝ちます。

昨年1年間のグーグルのウェイモの走行距離は200万キロで断トツです。

その他自動運転の走行距離の上位を見ると、
上位7位までは米国企業が占めていて、中国企業が
続いているという状況です。

すでに、相当遅れている日本ですが、
いまだに自動運転の危険性ばかりが強調され、
自動運転で走らせる場所すらありません。

ところが、中国などは国が奨励して
積極的に自動運転で走らせようとしています。

深センではバスの自動運転の実験が行われているなど、
省や市町村単位で許可しているところもあります。

日本は車を製造する技術は世界一かも知れませんが、
自動運転のトラックレコードには
トヨタや日産でさえも上位に食い込めていません。

いくらトヨタや日産の優秀な人が、
研究室で頭をひねって自動運転のシステムを作ったとしても、
間違いなく事故はおきるでしょう。

飛行機などの過去を振り返って見ても、
事故がないものは安全にはなりません。

だからこそ、実績が重要です。

今からグーグルのウェイモに追いつくのは、至難の業でしょう。

ウェイモが自動運転技術を盗まれたとして
ウーバーと裁判になり、大きな話題になりました。

ある意味、実績に基づいたデータと
技術の貴重さを物語っていると言えるでしょう。

自動運転において出来上がった新しい序列を見ると、
上位にいるのは自動車メーカーではなかったという
状況になっています。

米GMは善戦していますが、
それでもウェイモの3分の1の実績に過ぎません。

日本勢は絶望的です。

自動運転は、「石橋を叩いて渡っていて」は
絶対にうまくいきません。

まず、この事実を認識してほしいと思います。



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※この記事は3月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、自動運転の実用化に向けた各社・各国の動きについて
大前が解説しました。

記事の中で大前は、
自動運転は走って実績を作った人が勝つ、と述べています。

自動運転における走行実績のように、
「その業界で勝ち残るために必要なカギ」のことを
「KFS(Key Factor for Success)」とよびます。

そして現状、テクノロジーが変化する中で、
ビジネスのKFSは時々刻々と変化していきます。

自動運転において出来上がった序列のトップに
自動車メーカーがいないところにも、
KFSの変化がよく表れています。

このような状況下でKFSを強化するためには、
自社の能力を高めるだけでなく、
他社との提携も含めて自社がとるべき戦略の選択肢を洗い出し、
動いていく必要があります。

2019年03月08日(金) 
[1]〜大前研一ニュースの視点〜
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日産自動車/コンビニエンスストア/日本郵船〜世の中の変化は追い風にも逆風にもなる

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日産自動車 ゴーン前会長勾留100日
コンビニエンスストア コンビニ、「24時間」転機
日本郵船 豪華客船「飛鳥2」後継船建造へ

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▼ゴーン氏は絶対権力を手にしてから、おかしくなった
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毎日新聞は先月26日、「ゴーン前会長勾留100日」と題する
記事を掲載しました。

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が、
最初に逮捕・勾留されてから100日が経過したと紹介。

東京地検特捜部は引き続き捜査を続けており、
前会長の指示でオマーンの販売代理店に約35億円が
送金された目的は、前会長の私的な借金返済目的だったと
見ているとのことです。

日産の西川社長は、「日産の改革を行ったのは
ゴーン前会長の力だけではなく、それぞれの現場の力もあった」
などと発言していますが、これは不要な発言だと私は思います。

ゴーン前会長の就任最初の5年間の成果は
素晴らしいものでしたし、それは認めるべきです。

問題とすべきなのは、その素晴らしい成果に安住して、
日産の会長になり、そしてルノー会長にもなって、
絶対権力を手にした後のことです。

ゴーン氏の悪事が始まったのは、そこからです。

日産としても、絶対権力を手にしたゴーン氏を
あまりにも信用して任せすぎたというのは問題です。

日産も訴えられている立場なので、
西川社長自身も本当に何も知らなかったのかどうか、
しっかりと検証する必要があります。

西川社長は決して傍観者ではなく、当事者の1人であり
言い訳できる立場ではありません。

フランス側は、ゴーン氏の個人的な、
あるいはルノーを巻き込んだ悪事が明らかになるにつれて、
事件発覚当初とは違い、日産に協力する態度に変わってきました。

ゴーン氏の悪事もこれだけ出てくると、
さすがに全てが嘘ということはないでしょう。

また、ゴーン氏が行ってきた悪事を見ていると、
自らの生い立ちと関係しているものが多いと気づきます。

ブラジルで生まれたゴーン氏は、幼少期をブラジルで過ごし、
その後レバノンのベイルートで中等教育を受けています。

ブラジル、フランス、ニューヨークなど日産を通じて
多額の資金を投資させていますが、特にレバノンの
ベイルートに対する投資額は異常です。

また、この地域の人との付き合いの様子を見ても
異常だと私は感じます。

完全に日産のガバナンスが効いていない
状況だったことを物語っています。

ゴーン氏は陳述において、
「日産や日本を愛している」と述べていました。

しかし、結局のところ、
「一番愛していたのは自分だけ」だと感じてしまいます。



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▼コンビニ本部による契約を盾にしたゴリ押しは通用しない時代になってきた
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日経新聞は先月27日、「転機の24時間営業 コンビニ、
一部加盟店の反対先鋭化」と題する記事を掲載しました。

加盟店オーナーらが作るコンビニ加盟店ユニオンが、
終夜営業を見直すよう、最大手のセブン―イレブン・ジャパンに
要求したと紹介。

コンビニ各社は利便性と収益の基盤となる24時間を
維持する考えですが、人手不足や働き方改革の流れを受けて
逆風は強まっており、フランチャイズチェーン(FC)方式で
店舗を拡大してきたコンビニの急所にもなりかねない、としています。

コンビニは、本部が圧倒的に強い力を持ち、統制しています。

各店舗の商品の陳列についても本部の意向に逆らうことができません。

そうした契約書にフランチャイズオーナーはサインをしているからです。

先日、東大阪のセブンイレブンのオーナーが、
2月から営業時間を19時間に短縮すると公表しました。

当然、契約に従うなら違約金の支払いが発生し、
本部は時短営業を一切認めることはないでしょう。

ところが、セブンイレブン本部は一旦従来通りの対応を見せましたが、
方針を変更したかのように、24時間営業の見直しに向け、
時短営業の実証実験を開始しました。

これは、ブラック企業が世間で話題になり、人手不足で夜間に
働いてくれる人も少なくなってきている状況を踏まえ、
従来のような対応をすると「炎上」すると判断したからだと思います。

私も従来通りの対応のままだと「炎上」するだろうと感じましたし、
実際に「炎上」しかけました。

本部の統制だけでなく、現場の経営者の判断が入る余地を作らないと、
今後は上手く機能しないでしょう。

本部の命令で命に関わるような過剰労働を強いられるというのは、
やはり改善されるべきことだと思います。

有効求人倍率を見ても、商品販売の職種は2.5倍の数値になっていて、
特に人手不足が激しい状況です。

セブンイレブン本部は、今後も炎上しないように
丁寧に対応する必要があると思います。



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▼クルーズ船市場は、日本式にすることでまだまだ伸びていく市場
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日経新聞が先月27日報じたところによると、日本郵船が
豪華客船『飛鳥2』の後継船を建造し、2020年代半ばにも
投入する見通しが明らかになりました。

建造費は最大600億円になる見込みで、国内でも
クルーズ旅行の市場が広がっていることを受け、
既存船も運行を継続し、2隻体制にするとのことです。

日本郵船は三菱系の企業なので、
従来であれば三菱重工が製造するという流れです。

しかし、火事やトラブルを起こしたこともあり、
三菱重工そのものが大型客船製造から事実上撤退するので、
今回の豪華客船をどの企業に発注するかも気になります。

発注先の課題が残る一方で、
クルーズ船市場には大きな魅力があるのは確かです。

日本人のクルーズ乗客数の推移をみると、2002年の約15万人から、
2016年には25万人、そして2017年には30万人と増加しています。

私はさらに伸びると感じていて、
おそらく100万人を突破することはそれほど難しくないと思います。

というのは、今運行しているクルーズ船の多くは、
日本人のニーズを捉えておらず、そこを改善すれば
もっと多くの集客が見込めるからです。

今、日本人が乗っているクルーズ船のほとんどは、
イタリアやノルウェーなどの欧州系の豪華客船、
またはアメリカ系の豪華客船です。

ところが、これら欧米の豪華客船は、
日本人には「向かない」ところが多いのです。

例えば、夜になると正装して食事に行きますが、日本人は
ドレスアップするよりも、夜は浴衣を着てドレスダウンしたい、
という人も多いはずです。

またキャビアから始まるような豪華な食事をお腹いっぱい食べて、
その後ダンスに興じるというのも日本人には向かないと思います。

お風呂も大浴場で広々したものに入りたいと思うのが日本人です。

欧米の豪華客船とは違う、日本式の豪華客船で日本人らしいニーズを
汲み取ることができれば、さらに市場は拡大すると思います。

豪華客船の旅は、歩き回る必要もなく、
ボケッとしていても気持ちよく過ごせるので、
その意味でもポテンシャルが非常に大きい市場です。

ぜひ、日本人らしい過ごし方ができる
日本式の豪華客船を製造して欲しいと思います。



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※この記事は3月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、セブンイレブンやクルーズ船のニュースについて
大前が解説しました。

セブンイレブンのニュースの裏側には、
慢性的な人手不足と働き方改革の流れがあります。

クルーズ船のニュースの背景には、クルーズ旅行の
市場拡大があり、大前はさらなる市場の伸びについて、
理由とともに言及していました。

事業運営では、世の中の変化にあわせて常に進化するだけでなく、
世の中の変化を先取りして動くことが求められます。

そのためには、マクロな変化だけでなく、
日々の仕事で発見する新たな変化の兆しも見逃してはいけません。

次にとるべき行動のヒントは、
意外にも身近なところで見つかるものです。

2019年03月02日(土) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ホンダ/イギリス情勢〜ホンダの決断と英国のEU離脱に関係はあるのか

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ホンダ 2022年までにイギリス工場を閉鎖
イギリス情勢 最大野党・労働党8人が離党

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▼ホンダのイギリス工場閉鎖は、EU離脱の影響ではない
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ホンダは英国工場を2022年までに閉鎖すると発表しました。

欧州の四輪事業は販売低迷から赤字が続き、
工場の稼働率も低迷していました。

英国の欧州連合(EU)離脱に伴い欧州事業の不透明感が一段と
増したことから、英国における生産撤退に踏み切る考えです。

今回のホンダの発表は、「タイミングが悪かった」と思います。

日産が数週間前に、欧州市場向けのエクストレイルの生産拠点を、
当初計画の英国から日本の九州工場に変更すると発表していたため、
ホンダが工場を閉鎖して約4000名を解雇するということが、
より大きな事態として受け止められてしまいました。

そして何より、英国のEU離脱のタイミングと重なったことです。

英国メイ首相にも「ホンダの決定には深く失望している」と
言われてしまいましたが、今回のホンダの工場閉鎖は
英国のEU離脱とは本質的に関係ありません。

ホンダの世界戦略の中で欧州の事業展開が上手くいかないので
撤退する、というだけの話です。

実はホンダの車はあまり欧州では売れていません。

ホンダにしては珍しく買収なども仕掛けて、積極的に
欧州市場の開拓を試みましたが、英国での生産台数は
わずか年間16万台でトップのジャガー・ランドローバーが
約44万台、2位の日産もほぼ同じくらいの数字ですから、
半分以下の水準です。

ホンダが、発表のタイミングをずらして、
英国のEU離脱が何かしらの形で落ち着く3月29日以降にしていたら、
報じられているほど“衝撃”として受け止められることは
なかったでしょう。



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▼EU離脱の期限が迫る中、まず時間を止めることが大事
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英最大野党、労働党の穏健派議員8人は、党指導部が
EU離脱を支持していることや党内で人種差別、威嚇、暴言の
文化が拡大しているとして、先月19日までに離党しました。

一方、与党の保守党もメイ首相の離脱方針への反発から
議会採決への造反が相次いでおり、3月末に予定する
離脱に向けて、英国政界の混乱は一段と深まってきました。

最初に離党した7人に続いて1名加わり、合計で8人が
離党する事態になり、コービン党首には全く指導力がない
ということが判明してしまいました。

離党した8人が主張しているのは、
「再投票をやるべき」ということです。

同じ考えを持つ人は保守党の中にもいて、同様に3人が
離党しています。

議員全体の割合から見れば、11人はわずかですが、
今後この11人の勢いが増していく可能性は大いにある
と思います。

メイ首相を批判するコービン党首ですが、
もう1歩踏み込んで決断できていません。

「再投票する」とは明言せず、とりあえずメイ首相を
辞任まで追い込む動きを見せていますが、要するに
伝統的な野党のやり方を踏襲しているだけです。

また、他の内閣のメンバーも、日々意見が変わっている
ような様子で頼りになりません。

誰もが苦労しているメイ首相を目の当たりにしています。

しかし、メイ首相をクビにして自分が代わりに首相になろう
という人はいません。

誰も火中の栗を拾いたくないと思っているのでしょう。

メイ首相は、何度もEUに足を運んで相談していますが、
まともに取り合ってもらえていません。

メイ首相自身が英国議会で通せないものを、他国の人間が
合意したところで意味がない、とでも言われているのでしょう。

このような状況で、EU離脱の期限である3月29日は
刻一刻と迫ってきています。

期限を延長するなり、離党の届け出を撤回するなり、
何かしら時計の針を止める動きを取るべきだと私は思います。

とても期限までに事態を収拾できるとは思えません。

一方でEUから見ると、英国がEU離脱で苦しめば苦しむほど、
他の国の結束が強くなるという良い側面もあります。

例えば、デンマークなどは英国に続いてEUから離脱を
考えていた国の1つですが、これだけ苦労している姿を見て、
今はEU離脱はやめておこうという気持ちになっていると思います。

先日のフォーチュン誌に「アイルランドが冠をかぶる?」
という趣旨の記事が掲載されていました。

英国がEUを離脱した場合、アイルランドが取って代わって
漁夫の利を得るシナリオになるのではないか、ということです。

これは大いにあり得ると思います。

英国がEUを離脱するとなったら、スコットランド、
北アイルランド、ウェールズが英国から独立して、
それぞれがEUに残りたいというでしょう。

つまり、イングランドだけがEUを離脱するという構図です。

そのとき、中心勢力になるのは、アイルランドです。

しかし、もしその状況になると分かれば、そもそも
イングランドもEU離脱をするのをやめたいとなるでしょう。

何とも冗談でやっているのかと思うほど、おかしな事態になっています。



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※この記事は2月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ホンダの英国工場の閉鎖について大前が解説しました。

EU離脱の議論が大きく注目されている中でのホンダの発表に
英国では衝撃が走っています。

ただし、ホンダの撤退と英国のEU離脱を結び付けて考える前に、
なぜこのような決断をしたのか、冷静に考えることが大切です。

実際、ホンダのヨーロッパ戦略という文脈で読み解くと、
今回の発表は英国のEU離脱とは本質的に関係なく、
ホンダの世界戦略を踏まえた決断である、という事実が見えてきます。

目の前で起きている事象を本質的に理解するためには、
キーワードから身近なニュースに短絡的に紐づけるのではなく、
背景に何が存在するのか、丁寧に見極める必要があります。

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