2019年04月12日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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楽天/独ダイムラー/米ボーイング〜コンピューターと人間の衝突

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楽天 有価証券評価益 約1100億円計上へ
独ダイムラー 中国・浙江吉利に小型車ブランド売却へ
米ボーイング 「737MAX8」墜落事故で装置の誤作動認め

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▼リフトで利益が上がったが、投資案件トータルで見ると?
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楽天は1日、米リフトの上場に伴い、2019年1〜3月期に
約1100億円の有価証券評価益を計上する見通しと発表しました。

一方、リフトの株価は上場2日目にして公開価格の72ドルを割り込み、
年内の上場を目論むスタートアップにとっての試金石となっています。

リフトの時価総額は、上場前の推計企業価値115億ドル予想に対して、
251億ドルまで跳ね上がりました。

今後のリフトの価値がどの程度になるのかは、まだわかりかねます。

楽天はリフトの株式を11.5%保有しているので、
時価総額が約2兆円なら有価証券評価益は2,000億円ほどに相当します。

楽天のリフトへの投資額は約300億円です。

この投資案件だけで見れば、大きく利益が出たと言えますが、
その他の投資案件で大きな損失が出ています。

代表的なものを挙げれば、バイ・ドット・コムに2.5億ドル、
プライスミニスターに2億ユーロ(のれん代172億円減損)、
コボに3.15ドル(のれん代78億円減損)の資金を投じていますが、
全く回収はできていません。

さらに大きいのは、
ベラルーシのバイバー・メディアに投じた9億ドルです。

現時点で214億の減損処理が行われています。

これらを合わせて考えると、この手の投資案件の結果としては
決して悪い結果ではありませんが、楽天の投資全体で考えると、
決して手放しで喜べないのではないでしょうか。



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▼スマートはベンツブランドの中で、お荷物だった
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独ダイムラーが小型車ブランド「スマート」の株式の50%を
中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団に売却する交渉を
進めていることが、先月26日明らかになりました。

ダイムラーは、ベンツ、マイバッハ、AMG、ふそう、
フレイトライナーなどの様々なブランドを保有しています。

スマートは40〜50年前のスバルを彷彿とさせる小さい車です。

私は欧州に旅行した際に、何度か運転したことがあります。

販売台数は、SUV、ベンツCクラス、
ベンツEクラス、ベンツA/Bクラスに次いでいます。

それでも、約10万台/年間に過ぎず、
ベンツらしくないブランドのため、ダイムラーにとっては
現実的にお荷物ブランドになっていたのは間違いありません。

ですから、浙江吉利控股集団への売却は
良い選択だったと私は思います。

そして、おそらく浙江吉利控股集団であれば、
スマートというブランドをもっと良い形で活かせるだろうとも感じます。



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▼ボーイング社の企業姿勢そのものに不信感を覚える
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米ボーイングのミューレンバーグCEOは4日、
新型旅客機「737MAX8」が昨年12月と今年3月に墜落した事故について、
失速を防ぐため自動で機首を下げる装置が
いずれも不正確な情報が元で起動したのは明らかと述べ、
誤作動が起きたことを認めました。

一方、「私達にはリスクを排除する責任があり、
その方法は分かっている」と述べ誤作動の再発防止に自信を示しました。

この事故の原因は、1994年に発生した名古屋空港の
エアバス(中華航空140便)墜落事故と酷似しています。

事故の根本的な原因は、
コンピューターによる自動制御と人間による判断の衝突です。

今回の事故は、コンピューターセンサーによって
機首を下げようとする自動制御の動きと、
パイロットの判断が対立したために起きています。

この問題は飛行機事故に限らず、
原子力発電所の事故でも発生しています。

米国のスリーマイル島原発事故では、自動制御に対して
オペレーターがパニックを起こして手動で動作させたために、
大きな事故に発展しました。

今後、車の自動運転が一般化していく際にも、
同じ問題に直面するはずです。

明らかにコンピューターが間違っているときには、
人間が正しい判断でオーバーライドする必要があります。

その意味でも、スリーマイル島原発事故のように、
人間がパニックにならないことも大切です。

今回の事故で言えば、訓練を受けたパイロットでしたから、
その判断を尊重して自動運転をオーバーライドできるように
設計しておくべきだったと私は思います。

初歩的な安全設計が欠如していたと私は思います。

また、こうした事実をボーイング社が理解していないと思われる点に、
私は大いに不安を覚えます。

以前JALとANAが購入したボーイング機のバッテリーから
出火した事故がありましたが、本当に原因を解明できたのでしょうか。

企業としての姿勢に誠実さを感じられません。

また、アメリカ合衆国連邦航空局 (FAA)は
「737MAX8の性能に問題を確認できない」としていましたが、
一体どういうことなのか?と思います。

もはやアメリカ合衆国連邦航空局 (FAA)の信頼は、
地に落ちたと言わざるを得ません。



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※この記事は4月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ボーイングのニュースについて大前が解説しました。

大前が記事中で述べているように、
「コンピューターによる自動制御と人間による判断の衝突」は
今後も起こりうる問題です。

今後AI化が進む中で、
私たちはいかに機械と付き合っていくのか。

コンピューターが判断を間違えてしまう時も、
本質的課題に対応することになるのは私たちです。

今後どんなに技術が進歩するとしても、
本質的課題を発見し解決する力は身につけておく必要があります。

2019年04月05日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ドイツ金融大手/決済サービス/三井住友カード/デジタル銀行〜テクノロジーの進化に揺れる金融業界

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ドイツ金融大手 独コメルツ銀行との統合交渉へ
決済サービス 米ワールドペイを買収
三井住友カード 米スクエアとの提携強化
デジタル銀行 タイで「スマホ銀」開業

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▼ドイツも英国系と同様、銀行の統合による大規模化の流れ
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経営再建中のドイツ銀行は先月17日、
ドイツのコメルツ銀行との統合交渉を進める方針を
明らかにしました。

ドイツ政府は、
これまで経済成長を支える強力な銀行が必要だとして
両行の統合に前向きな姿勢を示してきました。

ドイツ銀行は単独での再建が進まない中、
政府の後押しを得て統合に舵を切る考えです。

ドイツ銀行には、
ドナルド・トランプグループとの関係性もあるなど、
何をやっているのかわからない「悪さ」を感じてしまいます。

収益性も低く、
かつての負債処理が重くのしかかっている状況です。

セグメント別売上を見ると、
売上高が低い資産運用部門が唯一安定しているものの、
その他はアップダウンが激しくなっています。

最近の状況で言えば、
投資銀行部門は特に大きな損失を出しています。

コメルツ銀行との比較で見ると、売上高、時価総額、
社員数、営業拠点などはドイツ銀行が上回っていますが、
純損益になるとコメルツ銀行が優れています。

ドイツ屈指の銀行同士の大型統合ですが、
おそらく欧州委員会の承認も得られるでしょう。

両行が統合すると、ドイツの銀行も英国系の銀行と同様、
ますます大規模化していく流れになっていくと思います。

その中で懸念されるのは、
欧州の銀行に対する投資家の警戒心が強いことです。

ビジネスウィーク誌によると、欧州の銀行は
「ブックバリュー100に対して、マーケットバリュー80」と
なっています。

米国の銀行は
「ブックバリュー100に対して、マーケットバリュー140」ですから、
明らかに投資家の評価が違います。

この点は、欧州の銀行全体の課題と言えるでしょう。



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▼世界的な潮流は、クレジット決済からデビット決済
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米金融サービス大手、
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS)は
先月18日、決済サービス大手のワールドペイを買収すると発表しました。

負債を含めた買収総額は430億ドル(約4兆8000億円)で、
これにより電子商取引(EC)やオンライン決済の分野で
規模の拡大をめざす考えです。

私に言わせれば、
「なぜ、この期に及んでこんな買収をするのか?」全く理解できません。

決済手段の世界的な兆候を見れば、
主流になっているのは、クレジット決済ではなく、
特に中国を中心とするデビット系決済です。

私ならば、デビット系決済のサービスを自分で作ることを考えます。

さらに将来的なことを見据えても、
ブロックチェーンなどの技術を活用し、
ネットだけで決済が完結する時代になることは確実です。

そのような時代の流れがあるにも関わらず、
クレジットカード決済のワールドペイに
4兆円も支払う意味があるのか?ということです。

あえて言えば、現時点ではワールドペイは
決済行為の約半分ほどを握っているので、
まずはそこを抑えることから始めよう、ということ
なのかも知れません。

同じように、三井住友カードもクレジット決済という
古い発想に固執してしまったようです。

三井住友カードは先月26日、決済端末を提供する
米スクエアとの提携を強化すると発表しました。

4月から期間限定で中小企業などに
スクエアの決済サービスを無償で提供する他、
売上高30万円まで手数料を無料にするとのことです。

POSシステムがなくても、スマホなどで決済できる
スクエアのクレジット決済システムは
よくできています。

しかし、そもそも「クレジット決済」そのものが
問題になってきていると私は感じています。

デビットカードの決済手数料が安価にもかかわらず、
いまだにクレジットカードの決済手数料は
3%を超えるケースもあります。

未払いリスクをクレジットカード会社が負うことになるので、
その分手数料が割高になってしまうのです。

一方、デビット決済の場合には、
その瞬間に決済が行われるので、未払いのリスクはありません。

ゆえに、手数料を低く抑えることができます。

特に中国を中心とするデビット決済の流れが、
世界的にも広がっていくように思います。

こうした流れを見据えた提携とは思えません。

三井住友カードもスクエアも
旧態然としてクレジットカードに依存し続けるなら、
将来は明るくないでしょう。



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▼LINEは決済サービスに注力すべき
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日経新聞は先月20日、
『タイで「スマホ銀」開業』と題する記事を掲載しました。

シンガポール大手のユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)が
アプリだけで営業する銀行をタイで開業しました。

実店舗に行かなくても口座を開設できる他、ゲーム感覚の預金サービスや
チャットでコールセンターとやりとりできるアプリなどを備えています。

ネットバンキングの人口普及率が74%と世界首位のタイで、
利用者を拡大する考えです。

ユナイテッド・オーバーシーズ銀行は
シンガポール3大銀行の1つです。

預金サービスも全てスマホで行うというのは
非常に面白いと思います。

明らかに日本よりも進んでいます。

日本では銀行筋の力が強いため、
この手のサービスを展開しづらい面もありますが、
それでもLINEが積極的に手がければ良いのに、と私は思います。

国内月間アクティブユーザー数が7800万人に上るのが
強みになるでしょう。

なお、フェイスブックはLINEと同じような
コミュニケーションシステムからスタートして、
今では決済市場に積極的に参入しています。



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※この記事は3月31日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、決済サービスなど金融関連の話題について
大前が解説しました。

テクノロジーの進化に揺れる金融業界。

既存勢力と新たなプレイヤーの構図は、他の業界で働く人にとっても、
企業の生き残り戦略を考えるうえで非常に参考になります。

LINEとメルカリの提携が最近発表されましたが、
今後どのような一手を考えているのか。

一方、大手クレジットカード会社はどんな動きをとるのか。

「もし自分が当事者だったらどうするか(What if〜?)」

世の中で起きていることを、自分事として考えることで
戦略的思考を磨くことができます。

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