2019年05月24日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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スマートシティー/コクヨ/富士フイルムHD/
キーエンス/ソフトバンクグループ〜2つの事業提携とその先行き

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スマートシティー トヨタ、パナソニックが住宅事業を統合
コクヨ ぺんてるに101億円出資
富士フイルムHD 営業利益2098億円
キーエンス キーエンス、高収益の秘密
ソフトバンクグループ 連結純利益1兆4111億円

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▼トヨタとパナソニック、コクヨとぺんてるの事業提携の先行きは暗い
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トヨタ自動車とパナソニックは9日、
住宅関連事業を統合すると発表しました。

2020年1月に共同出資会社を立ち上げ、
トヨタホームやパナソニックホームズなど
両社の住宅関連子会社を移管する計画です。

移動サービスの台頭で、都市のあり方が変わる中、
両社の資源を融合させ、街づくりに絡む事業を強化する考えです。

日本の住宅メーカーは専業が強く、
トヨタもパナソニックも住宅関連事業に参入したものの、
どちらも好調とは言えません。

そんな「イマイチ」同士が手を組んだところで、
果たして結果は期待できるのか?というのが、私の率直な感想です。

パナソニックは家電を組み込んだスマートホーム、
トヨタはEV充電施設がある街づくりを目指していく。

トップ同士が会談をすると
「こうした社会を実現するために」という話になるのでしょうが、
それだけでは競争力は生まれません。

積水ハウス、大和ハウスなどに対抗できるでしょうか。

また日本は、都市部でマンションが増え、
全体的に新築住宅が増えるわけではない市場環境なのです。

この点を踏まえて、どのような戦略を考えているのか、
私にはわかりません。

私に言わせれば、今回の発表において
「両社ともトップになれなかった」という事実を
受け止めた発言がなかった点に懸念を感じます。

過去の失敗をどのように分析し、今後どのような戦略で
勝ちに行くのかを述べるべきだったと思います。

それをせずに、「スマートシティー」という言葉だけで
逃げたのは、トップが戦略を考えていない証拠だと私は感じました。


コクヨは10日、筆記用具大手のぺんてるに出資したと発表しました。

101億円を出資し、事実上の筆頭株主となる見通しで、
国内事業に軸足を置くコクヨと、
海外進出を積極的に進めてきたぺんてると協業の可能性を探り、
海外市場での存在感を高める考えとのことです。

この提携も良い組み合わせではないと思います。

たしかに、ぺんてるは海外展開に成功していて、
逆にコクヨは海外進出に苦戦しています。

しかし、ぺんてるの海外拠点を使うだけで
コクヨの海外展開も上手くいくと考えるのは、甘すぎます。

コクヨの国内の収益事業の1つは、事務機器です。

ぺんてるが主力とするボールペン販売とは似て非なる商品です。

単に拠点があるというだけで、
コクヨの事務機器も簡単に海外で販売できるとは思えません。

そもそも両社ともに今後間違いなく縮小していく市場に
身を置いているリスクについて、
どのように考えているのでしょうか。

鉛筆やペンでモノを書く機会が減り、
紙媒体も少なくなってきています。

同業を憐れむ程度の考えで、
手を組んだところで全く成功できるイメージがわきません。

新聞記者は、安易にシナジー効果が期待できるなどと書きますが、
この記事もその典型例でしょう。



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▼富士フイルムは、ビジネススクールの良いケーススタディになる
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富士フイルムホールディングスが8日発表した
2019年3月期の連結決算は、営業利益が前期から70%増の
2098億円となりました。

08年3月期以来、11年ぶりに過去最高を更新。

事務機事業での構造改革が進んだほか、
医療機器やバイオ関連のヘルスケア部門も
好調だった要因とのことです。

10年以上前からカメラなどの
イメージングソリューション事業の売上が減少していく中、
ヘルスケア事業、ドキュメントソリューション事業などを強化し、
見事に経営を立て直したと思います。

特に大きく業績が落ち込んだ同業のコダックと比較すると、
富士フイルムの健闘が讃えられるべきでしょう。

フィルムそのものがなくなっていく時代で、
デジカメ分野にも決して強くなかったのに、
よくぞ生き残ったと思います。

これはビジネススクールの立派なケーススタディになるでしょう。

よくこの手のケーススタディでは、
日米の差で比較されることがあります。

たとえば、日本では電線メーカーは
光ファイバーの担い手に転じることで生き延びましたが、
米国ではガラスメーカーが光ファイバーのメーカーになったため、
電線メーカーは没落しました。

今回の富士フイルムの例は、日米の差ではなく、
企業の経営力の差として良い事例になると思います。

富士フイルムとコダックの経営陣の差が、
今日の両社の違いを生み出したといえるでしょう。



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▼キーエンス、オムロン、ファナックの違いとは?
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日経新聞は8日、
「キーエンス、高収益の秘密」と題する記事を掲載しました。

多くのメーカーが相次ぎ下方修正に追い込まれた中でも、
キーエンスは2019年3月期に7期連続で最高益を更新した、と紹介。

背景には、データ分析と収集による営業の効率化や
顧客のニーズを的確に捉えた製品開発がある一方、
故障やトラブルがあっても部品を即日配送するなど
スピード重視の姿勢も顧客の信頼を得ている要因としています。

自ら製造するわけではないファブレス企業のキーエンスが、
これほど高収益を出し続ける要因は、
世界の7不思議の1つと言っても良いくらいだと私は感じています。

BBTでも社長を務めていた佐々木道夫氏を招聘して
話を伺ったことがあります。

しかし、「なぜ、キーエンスがすごいのか」
もう1つわかりませんでした。

逆に言うと、それがすごいことなのかも知れません。

キーエンスの特徴は、お客様に生産性向上の答えを届ける
ソリューション営業が秀でている点です。

このあたりは、創業者の滝崎武光氏の影響が
強いのだと思います。

競合のファナック、オムロンとの大きな違いにもなっています。

オムロンは似たような商品を販売していますが、
ソリューション営業ではなく、
部品などの単品売りが中心です。

メーカーのオムロン、ソリューション営業のキーエンス、
その間にいるのがファナックという競合関係です。

この3社の競合関係と売上・利益を見ると、
この業界の状況をよく理解できます。

売上高で見ると、
オムロン(約8595億円)
→ファナック(約6356億円)
→キーエンス(約5871億円)の順です。

しかし、営業利益と純利益では全く逆の順序で、
キーエンス(営利3179億円、純利2261億円)
→ファナック(営利1633億円、純利1542億円)
→オムロン(営利766億円、純利543億円)になります。

そして、時価総額もキーエンス(約8兆円)
→ファナック(約3.9兆円)
→オムロン(約1兆円)の順になっています。



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▼ソフトバンクが決算を「派手」にした理由とは?
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ソフトバンクグループが9日発表した2019年3月期連結決算は、
純利益が前期比36%増の1兆4111億円となりました。

ファンド事業の含み益が初めて1兆円の大台に乗り、
利益拡大をけん引しました。

孫正義会長兼社長はサウジアラビアなどと組んだ10兆円規模の投資ファンド
「ビジョン・ファンド」の第2号ファンドを
立ち上げる考えを示しました。

この発表には、若干の「トリック」があります。

それは、含み益を決算に入れていることです。

含み益は、あくまでも「含み」ですから
まだ「実現」してはいません。

ですので、含み益を連結純利益に入れずに
計算する、という考え方もあります。

ところが、今回はあえて含み益を入れて
計算する方法をとり、またヤフーも連結子会社化して
決算に入れ込みました。

これだけ「派手」な決算にしたのは、
何か理由があるのだと思います。

ソフトバンクの有利子負債は10兆円を超えています。

その大きな負債への心配を打ち消したいのかもしれません。

「ビジョン・ファンド」の第2号ファンドについては、
第1号と同じように上手くいくのか?というと
難しいと私は見ています。

10兆円規模の投資に値する、
ウーバーやWeWorkのような企業が世界を見渡しても、
見つからないからです。



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※この記事は5月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、事業提携のニュースについて大前が解説しました。

トヨタとパナソニック、コクヨとぺんてる、
どちらも事業提携で競争力を強化する方針ですが、
はたして上手くいくのでしょうか。

住宅市場は専業が強く、
トヨタもパナソニックも住宅関連事業が好調とは言えません。

コクヨとぺんてるは主力商品が異なり、
海外展開が同じように上手くいくとは思えません。

事業提携を検討する際には、

「提携することによって規模の経済が発揮できるのか?」
「双方の強み弱みを補う存在となれるのか?」

協業後の競争力を冷静に把握することが大切です。

2019年05月17日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中貿易〜追加関税の影響とその結末予測

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米中貿易 中国輸入品への追加関税25%への引き上げ発動

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▼米中貿易問題の今、そして次のラウンドでは中国側の妥協だけでは済まない
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米政府は10日、中国からの約22兆円分の輸入品にかける
追加関税を10%から25%に引き上げる制裁措置を発動しました。

米中高官が9日、合意に向けてワシントンで協議したものの、
中国地方政府が地元企業に出す産業補助金をめぐり激しく対立したことで、
トランプ大統領が強硬姿勢に転じたものです。

これを受けて、中国側があらためて報復措置を予告。

世界経済への悪影響が懸念されています。

今のところ、中国側の報復は効いていません。

米国が関税を上げた分、
中国の輸出企業が値引きして対応しているからです。

それゆえ、米国はインフレにならず、
低インフレの状態を保つことができています。

このような中国企業が妥協している状況は、
日本にとっても大きな問題です。

なぜなら、中国に部品を納品している日本企業も、
「中国企業の妥協」の影響を受けるからです。

しかし、次のラウンドはこのままでは済まないと思います。

というのは、米国側のインフレを誘発しやすい商品が
並んでいるからです。

たとえば、iPhoneのような製品です。

中国側も出荷価格を25%値引きすることは難しいでしょうから、
関税が上がった分、米国の販売価格が25%上昇することになるはずです。

そうなると、米国ではインフレが進み、
米国の消費者も黙っていないでしょう。

中国の劉鶴副首相の発言を聞いていても、
中国側の妥協だけで丸く収まることは、やはりないでしょう。

日本は日米貿易戦争で「天変地異」を経験しました。

これから中国は同じ経験をすることになるはずです。

そして、もしかすると日本企業よりも
大変な道が待ち構えているかもしれません。

日本企業は米国に言われるがまま、米国内で生産する
体制を整えるなど、生産基地をバラバラにすることで
結果的に生き延びることができました。

しかし、中国企業の場合、米国内で生産するといっても
米国側が歓迎しない可能性があると私は感じます。

たとえば、ファーウェイが米国で生産すると言って
承諾されるとは思えません。

現状、中国企業は米国に言われたとおりにしてきただけで、
自らグローバル化するプロセスを経験していません。

ですから、米国から関税25%という条件を突きつけられた時、
対応するのは非常に難しいと思います。

生産拠点をベトナムやバングラデシュに移すといっても、
今の中国と同じ規模の生産拠点にはなり得ないでしょう。

広東省だけで6000万人規模ですから、単純に比較すれば、
それだけでベトナム全体の規模になってしまいます。

また、高速道路や港湾などのインフラ整備の点を見ても、
ベトナムやバングラデシュは中国ほど進んでいません。

かつての日本のように、業務を自動化することで
関税を上げた25%分を吸収するという方法もありますが、
これも難しいと感じます。

そうなると、最終的には関税の上昇分は、
やはり米国の消費者が支払うことになってしまうでしょう。

一方、この関税は米国政府の収入になりますから、
政府は濡れ手で粟の大金を得ることができます。

この資金を使って農民補助をすることもできるでしょうし、
トランプ大統領の人気取りもできるでしょう。

私に言わせれば、このような形で
25%の関税上昇分の収入を得ることは、暴力団と変わりません。

米国暴力団と言ったところでしょう。

これが米中貿易問題の現状です。



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※この記事は5月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米中貿易のニュースについて大前が解説しました。

記事中で大前は、
今後の追加関税に関する予測を述べています。

予測をすることで、
次の一手、二手先を事前に考えることができます。

これは、どんなビジネスでも同様です。

楽観的なシナリオだけでなく、
悲観的なシナリオも準備しておくことで、
次の一手が遅れることを防ぐことができます。

2019年05月10日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ウクライナ大統領/米朝関係/ロ朝関係〜ゼレンスキー氏大勝の背景

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ウクライナ大統領 ゼレンスキー氏が大勝
米朝関係 非核化交渉からポンペオ国務長官排除を要請
ロ朝関係 ウラジオストクで初の首脳会談

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▼ウクライナの利益誘導政治の歴史を一新させてほしい
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ウクライナ大統領選挙の決選投票が先月21日実施され、
コメディ俳優のウォロディミル・ゼレンスキー氏が
約7割の得票率で大勝しました。

ペトロ・ポロシェンコ現大統領も敗北を認め、
ロシアとの対立が続くウクライナを
政治経験がない大統領が率いることになります。

政治経験のないことを問題視する声もありますが、
ウクライナの場合には政治経験の有無は
特に大きな問題にはならないでしょう。

それよりも今回の選挙で大きなことだと私が感じたのは、
従来的な政治に染まった政治家が大敗北を喫したということです。

ゼレンスキー氏が、より一般民衆に近い自分の立場を
上手に利用した結果だと思います。

ゼレンスキー氏は、テレビ俳優で、
米トランプ大統領と同様に知名度が高い人物です。

あるテレビドラマの中で、
「偶然大統領になってしまうという役」を演じたことがあるそうで、
今回の選挙でまさにそのドラマが現実になった形です。

選挙においては、イホル・コロモイスキー氏という富豪の方が
財政面でバックアップしたと言われています。

コロモイスキー氏は、
ロシアとの会話を求める路線らしいので、今後ロシアに近づいて、
ミンスク合意に戻る可能性もあるかもしれません。

ポロシェンコ現大統領は、
一貫してロシアと対立する姿勢でしたが、
結局のところ、その成果としては何も残っていません。

ウクライナ国民はそれを不満に思っているでしょうし、
本心を言えば、ロシアと対立しても、
大きな意味はないと思っているはずです。

ゼレンスキー氏はそうした国民の心境に
うまく同調できたのだと思います。

ロシアのプーチン大統領との関係で気にかかるのは、
選挙直後にプーチン大統領が、ウクライナ東部地域の住民に
ロシア国籍を付与することを認める大統領令に署名したことです。

プーチン大統領の早とちりなのかも知れませんが、
いくら何でもタイミングが早すぎると私は感じました。

今回の選挙は、「出来合い」だったのではないか?と
勘ぐりたくなるほどです。

物理的な占領はしていないものの、ロシア国籍を与えることで、
パスポートの力で人を吸引しようという行為に対して、
他のウクライナの地域からも反発を招く可能性は高いと思います。

ソ連邦崩壊以降、ウクライナは政治家による
利益誘導の政治が横行してきました。

はっきり言えば、
ろくでもない政治家しかいませんでした。

今回、ゼレンスキー氏という「無色」の人が
大統領になることで、それが一新されることを願うばかりです。

一般常識がある人として、
良いスタートを切ってもらいたいと思います。



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▼北朝鮮に打てる手はなし。ロシアに協力要請しても無駄。
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非核化を巡る米朝交渉で、北朝鮮外務省の対米担当の幹部が
先月18日、2回目の首脳会談が物別れに終わった責任は、
ポンペオ国務長官にあるとして、交代を求める声明を発表しました。

これに対し、米国国務省は北朝鮮と建設的な交渉を行う用意があるとし、
あらためて非核化に向けた協議に戻るように呼びかけました。

北朝鮮の担当者のほうが、
ズレまくっていてお話にならないレベルです。

北朝鮮側の担当者が考えているのは、
金正恩委員長とトランプ大統領が直接2人で話し合えば
何とかなる、ということでしょう。

そのためには、前哨戦に登場するポンペオ国務長官や
常に隣にいるボルトン大統領補佐官が邪魔なのだと思います。

そもそも一番おかしいのは金正恩委員長ですが、
北朝鮮という国でそれを言うわけにはいきませんから、
無理やり今回のような要求を突きつけているのでしょう。

もちろん、こんな要求に応じて、
ポンペオ国務長官が退くことはあり得ないでしょう。

北朝鮮の金正恩委員長は先月25日、極東ウラジオストクで
ロシアのプーチン大統領と初めて会談しました。

その中でプーチン大統領は、北朝鮮が主張する
段階的な非核化を支持し、制裁と圧力路線を維持する米国を牽制。

一方、金正恩委員長は、
自らの立場を米国のトランプ大統領に伝達するよう
プーチン大統領に要請したとのことです。

要請されたプーチン大統領にしても、
現在の立場を考えれば、とてもトランプ大統領に
そんなことを言える状況ではありません。

私に言わせれば、そもそも金正恩委員長とプーチン大統領が
会談した理由すら理解できません。

金正恩委員長は、ロシアに足並みをそろえてもらって、
米国の制裁を打開できると思っているのでしょうか。

たしかに、米国の北朝鮮に対する制裁は
厳しすぎるという意見もあり、中国も同調しています。

とは言え、ロシアが勝手に制裁を解除すれば
米国からの締め付けは厳しくなるのは必然で、
ロシアとしては簡単に実行できるはずもありません。

それでも金正恩委員長がプーチン大統領に会いに行ったのは、
にっちもさっちもいかない状況で、
他にやれることもなかったからでしょう。

一方のプーチン大統領からすれば、
一帯一路構想の件で中国に赴く予定があったので、
そのついでに寄り道した程度だと思います。

この件に関して、
ロシア・プーチン大統領ができることはほぼありません。

今回の会談でプーチン大統領は金正恩委員長に
「6者協議」の復活を提案したそうですが、
まさに打てる手立てがないことを証明しているようなものだと思います。

6者協議は、米国、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、日本の6カ国で
北朝鮮の核開発問題について直接協議を行う会議体でしたが、
2009年北朝鮮は離脱を表明し、さらに「6者協議は永遠に終わった。
6者協議には絶対に参加しない」とまで発言しました。

ゆえに、6者協議を北朝鮮の発案で復活させるというのは、
さすがにあり得ない話です。

結局のところ今回の会談は、ウラジオストク好きのプーチン大統領が、
中国に行くついでに金正恩委員長を引っ張り出しただけ、というものに
過ぎないと思います。



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※この記事は4月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ウクライナ大統領選挙のニュースについて
大前が解説しました。

選挙結果には驚きますが、長年の流れを追っていれば、
今回の結果にも納得できるかもしれません。

目の前のニュースを単発的な事象として捉えず、
それまでの背景を含めてしっかり理解することは、
ニュースの本質を正しく見抜くことに繋がります。

そのためにも、常に学び続けることで、
教養を高めていく必要があります。

2019年05月03日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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LIXILグループ/TKP/日本電産〜TKPとリージャスのシナジー効果は期待できるか

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LIXILグループ 創業家・潮田氏が全役職辞任へ
TKP 日本リージャスHDを買収
日本電産 オムロンオートモーティブを買収

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▼LIXILグループの経営は、誰がやるにしても非常にむずかしい
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LIXILグループは先月18日、
潮田洋一郎会長兼CEOが、5月末に取締役を辞任し、
6月の定時株主総会を経て、会長とCEOからも退くと発表しました。

会見で潮田氏は、2019年3月期の連結業績が赤字に転落する要因は、
前CEO瀬戸氏の業務執行にあると強調。

自身が全役職から退くことで
瀬戸氏を任命した責任をとるとしています。

今期約500億円の赤字を計上した原因は、瀬戸氏を招く前にあり、
全てを瀬戸氏の責任とするのは間違いだと私は思います。

潮田氏は、自身の38年間の取締役人生の中で、
最大の失敗は瀬戸氏を招いたことだと述べています。

しかし、潮田氏が手がけたイタリアの
Permasteelisa S.p.A社の大型買収も結果として大失敗でしたし、
やはり瀬戸氏だけをクローズアップするのは違和感があります。

機関投資家はLIXILの経営状況に鑑み、
臨時株主総会を要求していましたが、
潮田氏・山梨氏の取締役退任が決まったので、
定時株主総会だけで収まるかもしれません。

ただし、大株主の状況を見ると、
アクティビストファンドが臨時株主総会を要求し、
潮田氏を追求する可能性もあると思います。

ちなみに、潮田氏の信託財産を扱う野村信託銀行の持分比率は
約3%に過ぎませんから、プロキシーファイトになった場合、
ほとんど力を持っていないと言えます。

また従業員持ち株会の2%も、
潮田氏を支持する可能性も低いと私は思います。

このような状況を受けて、
潮田氏は本社の移転やシンガポールの企業による買収など、
色々と画策しているという報道もあります。

しかし、今の状況で潮田氏や山梨氏が
状況を打開することは難しいと感じます。

とは言え、瀬戸氏が返り咲いたとしても、
この会社を経営できるのか?というと疑問が残ります。

LIXILは「ヤマタノオロチ」に例えられます。

頭がたくさんあって、制御不能ということです。

国内企業の合併だけでも未だにしっくり来ていないのに、
縁もゆかりもないグローエなども買収し、
グループ全体としてのまとまりがありません。

この会社の経営は非常に難しく、
まともに経営できる人はほとんどいないと思います。



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▼TKPのリージャス買収に、本当にシナジー効果はあるのか?
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ティーケーピー(TKP)は先月15日、
スイスのIWG傘下の日本リージャスHDを買収すると発表しました。

5月末までに発行済み株式の1万3700株を467億円で取得し、
完全子会社化とするものです。

TKPはレンタルオフィス市場での展開を加速する考えです。

TKPは売上も営業利益も驚くほど伸びています。

その状況からも、買収はもちろん可能ですが、
私はやや懸念しています。

というのは、TKPとリージャスではビジネスモデルが異なるため、
シナジー効果が本当に期待できるのかわからないからです。

TKPは貸会議室を展開しています。

料飲・ケータリングや宿泊などオプションをつけて
付加価値を提供しているのが秀逸ですが、
ビジネスモデルの根幹は会議室を貸すことです。

一方、リージャスのビジネスモデルは
WeWorkと同様にレンタルオフィスです。

一括して不動産を借りておき、
煩雑な不動産契約などを省き、それを貸し出します。

ネットで簡単に申し込めて非常に手軽で、特にスタートアップ企業や
フリーランスなどにはありがたいサービスです。

しかし今、レンタルオフィス市場の代表的な存在である
WeWorkに対して、三井不動産、住友不動産、森ビルなどが
大いに警戒していて対抗する動きを見せています。

乱戦模様になってきていて、今後も今までと同じような収益が
見込めるのか疑わしい状況になりつつあります。

また、TKPの売上が約300億円ですから、
リージャスはほぼ同程度の規模と言えます。

シナジー効果は一部あるにしても、
この点からもややリスクが高い買収だと感じます。

貸し会議室市場は、TKPがユニークに開発してきた市場ですが、
レンタルオフィス市場はそうではありません。

伝統的な企業がひしめきあうなど競合が非常に多い市場です。

今回のリージャスの買収も吉と出るか凶と出るか、わかりません。

それほど簡単にシナジー効果を期待できる状況ではないと
私は見ています。



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▼1000億円の買収額は高すぎる。永守氏には何か秘策があるのか?
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日本電産は先月16日、オムロンの子会社で、車載電装部品を手がける
オムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収すると発表しました。

買収価格は約1000億円を見込み、
これにより日本電産は重点成長事業と位置づける
車載事業を強化する考えです。

100社以上の企業買収で1つも失敗したことがない、という
日本電産の永守氏ですから、今回の買収も問題ないのだと思います。

しかし、単純計算すると買収額を回収するまでに数十年かかるので、
この点をどのように見ているのか、正直私には理解できません。

日本電産は売上高2兆円を目指して成長していますが、
本業の精密小型モーターが伸び悩んでいます。

そこで、M&Aで特に成長著しい車載などの事業に1000億円を投資し、
さらに大きく伸ばしていこう、ということでしょう。

オムロンオートモーティブの利益は30〜40億円程度です。

永守氏が経営するとなると、さらに利益を出せるのかもしれませんし、
あるいは永守氏には外から見えない別の秘策があるのかもしれません。

また、逆にオムロンの立場から見ても、
私には売却した理由がピンときません。

これから先、IoTが進み、自動車そのものがサイバー化していく
時代において、今回のオートモーティブが持つ技術や資産は
重要になってくると思います。

なぜ、その事業を今手離してしまうのでしょうか。

永守氏の狙いもオムロンの売却理由も、現時点で理解できませんが、
今後どのような展開を見せてくれるのか注目したいと思います。



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※この記事は4月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、TKPの買収の話題について大前が解説しました。

TKPはこれまで、貸し会議室市場という独自の市場を開拓してきました。

一方、リージャスが戦ってきたレンタルオフィス市場は
貸し会議室市場の近接市場ではありますが、
その特徴はTKPと異なります。

事業領域の拡大は、
企業の成長にとって有効な一手ですが、

「その市場での競合は誰なのか」

「KFS(Key Factor for Success/勝ち残るために必要なカギ)は何か」

を把握することで、
新たな戦い方が必要かどうかを見極めることができます。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2019年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月