2019年06月28日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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認知症対策/官民ファンド〜認知症対策は海外に目を向けるべき

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認知症対策 「共生と予防」課題多く
官民ファンド 役員報酬が最高 年2280万円

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▼認知症対策は、日本国内だけでは解決できない
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日経新聞は19日、
『「共生と予防」課題多く』と題する記事を掲載しました。

政府の関係閣僚会議で認知症対策をまとめた
新たな大綱を決定しました。

予防の定義を認知症にならないではなく、
認知症になるのを遅らせる、進行を緩やかにするとしたほか、
共生のための正しい知識の普及に努めることなどを
盛り込んだものです。

介護人材の不足や金融資産の滞留など、
答えの見えない課題は多く、日本社会の進む道のりは
険しいとしています。

2040年には、日本の65歳以上の認知症患者数は約800万人と
推計されています。

一方、介護保険法の規定では、
老人ホームなどの施設で要介護の入居者3名に対して、
介護する人(介護士)1人の割合で配置することが
最低基準として決められていますが、
手厚い介護の提供は困難なのが実情でしょう。

今回の認知症施策推進大綱を見て、
私がつくづく感じるのは、すべての問題を「わが町」
「日本国内」で解決しようとしているということです。

そもそも、この前提が間違っていて、
この問題は日本国内だけでは解決できないと私は思います。

解決策の方向性としては、2つあります。

1つは海外から日本国内に人を受け入れる方法です。

しかし、日本の介護士の免許取得が難しく、
研修を受けてもなかなか合格しないという問題があります。

そこで注目したいのがもう1つの方法で、
逆に海外の施設・サービスに任せるというものです。

私は10年ほど前に、チェンマイにある養老施設を
見学に行ったことがあります。

認知症のスイス人、ドイツ人、スウェーデン人などを
介護していたのは地元のタイ人女性でした。

1人の認知症患者に対して、8時間の交代制で
3人のタイ人女性が担当していて、24時間体制を実現していました。

1人当たり2万円/月ほどで、3人で6万円/月。

ドイツやスイスの年金の平均額が約24万円なので、
その他の食事代や部屋代などを含めても、
年金の半分ほどで事足りる計算でした。

食事の手伝いや散歩の同行などをしていましたが、
言葉が通じなくても全く不便な様子はなく、
見学に来ていた家族も安心していました。

夜は同じ部屋で眠り、
例えば認知症患者の方が夜中にトイレに行ったりしても、
すぐに綺麗に洗って片付けていました。

これが、本当の介護だと私は感じました。

これを日本国内で実現することは不可能です。

また、社会保障制度に見る「潜在扶養率」を見ても、
米国が3.1、ドイツが2.5、中国が4.9、
日本は1.8となっていて最も低い水準です。

2人に満たない現役世代が高齢者1人を支える計算ですから、
人手だけなく、財政的にも全く余裕はありません。

海外の施設に送るというと、
「現代版の姨捨山」などと批判する人もいますが、
日本国内のサービスレベルと比較して、
「どちらが姨捨山なのか」と言いたくなります。

特に東京都には養老施設が不足して、
近隣の施設に依頼することが多くなっていますが、
受け入れる側も人員不足で余裕がありません。

かつて群馬県の養老施設が火事を起こして
10人の方が亡くなったこともありました。

日本国内だけで解決しようなどと
考えるべきではない、と思います。

海外に目を向けたとき、
今ではタイも人件費が上がっていますから、
インドネシアやフィリピンを候補として考えても良いでしょう。

今回の認知症施策推進大綱には、
現実を踏まえた上で何ら抜本的な解決策が
見られなかったのが、非常に残念です。



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▼農林漁業成長産業化支援機構はファンドではなく、単なる天下り先
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農林水産省が所管する農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)が
約92億円の累積損失を抱えている問題で、役員が業績と関わりなく、
年2000万円を超える報酬を受けていたことが判明しました。

これに対して、吉川貴盛農相は18日、
「業績連動型になっていない。必要に応じて指導、
助言をしていかなければならない」と述べ、
報酬体系の見直しを示唆しました。

農林漁業成長産業化支援機構の業務内容としては、
農畜産物、水産物の生産(第1次産業)だけでなく、
食品加工(第2次産業)、流通、販売(第3次産業)にも
農業者が関わるという「農業の6次産業化」の支援となっています。

この国全体の方針に基づいて、極めて多額の資金を集めましたが、
そもそも農林漁業成長産業化支援機構は
「ファンド」と呼べる組織ではありません。

ファンドは利益が上がるまで給料が支払われないのが普通であり、
農林漁業成長産業化支援機構は単なる農林水産省の「天下り先」です。

天下り先ですから、固定給で当たり前だと思っているはずです。

それにしても、143件の出資で136億円を使い、
90億円の損失を計上というのはあまりにひどい結果です。

しかし、民間株主であるキッコーマン、キューピー、カゴメなどは、
相手が農水省ですから文句を言えない、というのが実態でしょう。

報酬体系の見直しという以前に、
「天下り先」としての組織体制を改めない限り、
何一つ問題は解決しないと思います。



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※この記事は6月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、認知症対策のニュースについて
大前が解説しました。

大前は
「すべての問題を日本国内で解決しようという前提が間違っている」
「言葉が通じなくても全く不便な様子はなかった」
と述べています。

問題を解決する際には、

「そもそも〇〇という前提は正しいのか?」

と前提条件を疑うことで、
物事の本質に気付き、解決につながることもあります。

2019年06月21日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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高齢ドライバー/デジタル課税〜高齢ドライバーの交通事故割合が高いわけではない

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高齢ドライバー 高齢者専用の免許創設を検討
デジタル課税 法人税、どこに消えた

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▼高齢ドライバーの交通事故割合は、若者と変わらない
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政府が今月下旬に閣議決定する成長戦略に、
高齢ドライバー専用の新たな運転免許を創設する見通しが
明らかになりました。

75歳以上を対象に自動ブレーキなどの安全機能がついた車種のみ
運転することができることなどを検討するもので、
高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、対応を急ぐ考えです。

高齢ドライバー用の制度に強制力はない予定なので、
全体として「緩い」ものになると思います。

こうした高齢ドライバー向けの対策は早く実施すべきですが、
過度に高齢ドライバーの事故だけを問題視するのではなく、
全体像を理解することが大事です。

まず年齢別の運転免許保有比率は、75歳以上は6.8%に過ぎません。

そして、年齢別の交通事故件数・割合を見ると、
75歳以上の数字は25〜29歳とほぼ変わりません。

日本の人口で高齢者の人数が増えているので、
高齢ドライバーの事故が目立つだけで、
事故割合そのものは大きく増えていません。

また、20〜24歳、16〜19歳という若い年代の方が
事故件数・割合は多いですし、飲酒運転・無免許運転など
無謀なものも多くなっているので、高齢ドライバーだけに
焦点を当てて問題視するのは少々違う、と私は思います。

高齢ドライバーの交通事故は、
いずれ自動運転が普及すれば解決する問題でしょう。

現状の対策で言えば、一律に高齢ドライバーを対象にするよりも、
「注意すべき人」を確認するべきです。

私も高齢ドライバーとして免許更新の際に
試験を受けた経験がありますが、一緒に試験を受けている人の中に
明らかに「この人の運転は危ないな」と感じる方がいます。

普段から周囲の人が見ていても、
こうした人の運転の危うさには気づけるはずなので、
そのときに忠告することができれば良いと思います。



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▼世界で公平に法人税を課税するためには?
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日経新聞は9日、「法人税、どこに消えた」と題する記事を
掲載しました。

これは2000年代までは、
企業の利益に比例して法人税の負担額が増えていたのに対し、
2010年以降はその比率が低下していると紹介。

多くの企業が知的財産権を税率の低い国に移しているのに加え、
経済のデジタル化でサービスの利用やお金の流れが
見えにくくなっていることが要因としています。

最近、日経新聞はデータをもとに
問題提起する記事を掲載していますが、
この記事は非常に良い分析をしていると思います。

政治家が企業人を喜ばせるために、法人税率を引き下げ、
本社機能を移してもらう動きが続いています。

日本でも、2007年から2018年で税引前利益は若干増加したのに、
企業の税負担額は減少するという事態が起きています。

かつて企業の税負担額は30%を超えていましたが、
今では20%程度に下がっています。

世界的にも法人税の減税競争は激しさを増しています。

製薬会社など多くの企業が本社機能を置いている
アイルランドが12.5%と低い水準になっていて、
スイスは20%、英国、チェコも20%を下回る水準で
企業を呼び込もうとしています。

かつて40%を超えていた米国と日本も30%を下回る水準まで落とし、
イタリアも同様に30%以下になっています。

また以前は50%を超えていたドイツでさえ、
30%程度に落とさざるを得ない状況になっています。

欧州の企業では、法人税率が高いドイツから
本社機能をスイスやオランダに移しているところが多く、
米国の企業はアイルランドへ向かうところが
比較的多くなっています。

その中でもGAFAは、オランダとアイルランドで
税法上の仕掛けを利用して、実質的に税金がかからないような
体制をとっています。

また、ウーバーは本国で利益を出さないようにして、
オペレーションをオランダに移し、
さらにタックスヘイブンの国を利用しています。

創業したときから、税金をなるべく支払わない
仕掛けを作っています。

このように「ちょっとしたテクニック」を使うだけで、
ある国には税金が納められないとなると、
不公平であり大きな問題です。

これを解消するためには、本社機能がある場所・国に関係なく、
全世界の利益に対してオペレーションの大きさで比例配分して
課税する方法しかありません。

たとえば、Amazonなら全世界における
日本のオペレーションの割合を算出し、
全世界の利益からその割合に応じて、日本で納税してもらいます。

これを「外形標準課税」と言います。

先日開催された、G20の財務相・中央銀行総裁会議でも
この問題はテーマになりました。

結論は出ていませんが、世界的に解決すべき
大きな課題であることは間違いないでしょう。



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※この記事は6月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、高齢ドライバーのニュースについて
大前が解説しました。

近年、高齢ドライバーの事故が目立っていますが、
10万人あたりの事故件数をみると、
若い年代の事故のほうがはるかに多いことがわかります。

このように、話題のニュースをそのまま受け入れてしまうと、
事実を正確に把握できない場合があります。

物事の実態を掴む際には、
絶対量で比較するのか、比率で比較するのか、
指標を選ぶところから始まります。

2019年06月14日(金) 

■ [1] 〜大前研一ニュースの視点〜
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ドラッグストア大手/TKP/LIXIL〜業界再編で生き残るには

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ドラッグストア大手 経営統合へ向け検討開始
TKP 連結営業利益100億円見通し
LIXILグループ 3つの役員人事案訝る異例の内容

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▼スギHDとココカラファインだけでなくマツキヨも統合し、3社でトップを狙え
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ドラッグストア大手のスギホールディングスと
ココカラファインは1日、経営統合に向けて検討を始めると発表しました。

2社で準備委員会を設け、7月31日をメドに基本合意書の締結を目指す考えとのことです。

ドラッグストアのビジネスモデルの特徴の1つは、
薬関連商品で利益を出せるため、その他の商品を安く販売できることでした。

この戦略は功を奏し、コンビニエンスストア市場を脅かすほどの売上に成長し、
店舗も順調に増えてきました。

しかし、ここにきてドラッグストア業界が過当競争に陥っています。

業界内の勢力図を見ると、ウエルシアとツルハHDがトップ争いをしていて、
マツキヨが5位、スギHDが6位、ココカラファインが7位となっています。

今回、スギHDとココカラファインが経営統合の検討をしていると報じていますが、
実は5位のマツキヨもココカラファインを狙っていると言われています。

スギHD、ココカラファイン、マツキヨの3社が統合すると、
売上高は約1兆5000億円になり、ウエルシアやツルハHDと比べても約2倍になり、
圧倒的なトップにたてます。

ドラッグストアの場合には、規模の経済の影響はそれほど働かないと思いますが、
それでも3社が統合した規模になると、購買力が著しく強くなります。

かつて購買力で差別化を図ることで、安売りを実現し、
売上高が業界初の1兆円を突破した当時のダイエーのような立場になれる可能性があります。

私なら、ここまで視野に入れます。2社で統合したところで、
売上は「1+1=2」という程度で、コストも2倍になるでしょうし、
それほど魅力を感じません。

もちろん本社機能を削ることができるでしょうが、
どうせ経営統合を図るならもっと大きな絵を描いて、
業界トップに躍り出ることを考えてほしいと思います。


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▼順調に成長するTKPには、さらに大きく成長できるチャンスがある
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貸会議室大手ティーケーピー(TKP)の2022年2月期の連結営業利益が
20年2月期予想より6割強多い100億円程度になる見通しです。

主力の時間貸し会議室では高水準な稼働率が続く他、
シェアオフィス事業の拡大も寄与するとのことです。

TKPは売上も営業利益も順調に伸びています。
日本リージャスを買収し、急成長を継続しています。

売上の内訳を見ると、室料以外に、飲料、宿泊、その他とあります。
その他に含まれるのは、研修のコーディネートや通訳、音楽照明などです。

このような室料以外の収益源も、今後は大いに期待したいところです。
地方大学の受験会場として東京のTKP会議室を貸し出していますが、
非常に面白いと思います。

市ヶ谷・四谷近辺にあるTKPの会議室を、
地方イベントの代用にするというのは、他にも需要があると思います。

また出張で東京に来たビジネスパーソンの宿泊施設として使ってもらうなど、
宿泊の分野を伸ばしていくこともできるでしょう。

ファーストキャビンなどと同様、安く泊まりたいニーズを捕まえることができれば、
大いにチャンスはあると思います。


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▼LIXILの今後は?会社側が提案するメンバーは豪華
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LIXILグループは先月30日、定時株主総会の招集通知を公表しました。
会社側が提案する8人、会社側と前CEOの瀬戸氏側の双方が提案する2人、
及び瀬戸氏側が提案する6人に分けて、
3つの役員人事案を諮る異例の内容となっています。

まず、会社側が提案している8人を見ると、
かなり強烈なメンバーが揃っています。

元リコー社長の三浦氏、元JVCケンウッド会長の河原氏、
ベネッセHD副会長の福原氏、元ミネベアミツミ専務の内堀氏、
前コニカミノルタ社長の松崎氏などです。

一方、瀬戸氏が提案するメンバーは、LIXIL社内の人が多く、
正直に言って面白みがないと感じます。

どちらのメンバーにも含まれている監査役の2人が、
瀬戸氏を支持しているということですが、私には理解できません。

それぞれの提案するメンバーを見て、
瀬戸氏の提案を支持するというのは、
経営者に対する感覚が鈍いとしか言えないでしょう。

会社側が提案するメンバーをまとめられる議長がいて、
実行できるCEOがいるなら、
かなり面白いことができるでしょう。

瀬戸氏が提案するメンバーとは「格が違う」と思います。

プロキシーファイトになるとのことですが、
常識的には会社側の提案が受け入れられるでしょう。

プロキシーファイトの結果、
どのような結末を迎えるのか注目したいと思います。


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※この記事は6月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はドラッグストア業界のニュースをお届けしました。

各企業の競争がさらに激しくなっています。

経営統合により規模を拡大することで、
コスト競争力を高めることができます。

さらに、次の一手を考えるためには、
将来のビジョンや戦略を描く力が求められてきます。

今後、社会にどのように貢献し、
どのように企業を成長させていくのか?

答えのない時代だからこそ、
自ら考え、次の一歩を踏み出していく必要があります。

2019年06月07日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米為替政策/米中関係/米中貿易〜ファーウェイ問題は一企業としての問題ではない

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米為替政策 半期為替報告書を公表
米中関係 ファーウェイ宛小包をアメリカへ誤送?
米中貿易 中国、レアアース利用に言及

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▼貿易不均衡よりも為替の問題のほうが重要
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米財務省は先月28日、貿易相手国の通貨政策を分析した
半期為替報告書を公表し、日本や中国など9カ国を
「監視リスト」に指定しました。

監視リストは「為替操作国」とは異なり
経済制裁を伴いませんが、対日貿易については
巨額の不均衡に引き続き懸念していると指摘しました。

中国を為替操作国として経済制裁しなかったのは、
米国の中国への態度が軟化したということではありません。

単にファーウェイなどを情報操作、スパイ活動の理由で
制裁しているので、混乱を避けるためだと思います。

米国はかつての日本に対して、プラザ合意という
為替政策を実施し、日本の息の根を止めにかかりました。

1ドル235円前後だったものが、一気に100円を割り込む
水準に落ちて、日本経済は壊滅的な被害を受けました。

今日までその影響は残っていると私は思います。

貿易不均衡の問題よりも、為替の問題のほうが
はるかに重大で大変なことでした。

結局、日本の場合には1ドル360円から80円まで動いたので、
今の中国で言えば1ドル2元前後の領域です。

今の1ドル6元前後とはレベルが違います。

日本も関税をかけられたり、数量規制をされたりしながらも
何とか頑張っていましたが、プラザ合意が決定的な制裁となり、
ほとんどの日本企業は生き残ることができない状態になりました。

それまでの2倍以上の価格で売らなくてはいけないのですから、
それは厳しい状況だとわかります。

一部、自動車などが何とか対応できた程度でした。

中国は、日本にとってのプラザ合意をまだ経験していません。

貿易不均衡と言われているうちは、まだ序の口です。

これから本当の正念場を迎えることになると思います。



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▼ファーウェイ問題の原因は、中国共産党にある
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ニューズウィークは先月30日、
「中国激怒 Huawei宛小包をアメリカへ誤送?」と題する
記事を掲載しました。

米宅配大手フェデックスが中国の本社や支社宛に送られた荷物を、
無断で米国へ送ったり、差し止めていたことが判明したと
紹介しています。

フェデックスは誤送を認め謝罪した後、
意図的に誤配送をしたわけではないと弁明しましたが、
中国メディアからは不満が噴出しており、
今やボトムアップの反米運動が火蓋を切る勢いだとしています。

私の感想を言えば、フェデックスは世界で最も
信頼できる配送会社であり、「誤送」なんて考えられません。

米国政府からの強い圧力が働いたのではないでしょうか。

日本でも商品の販売中止が相次ぐファーウェイですが、
極めて優れた企業だと私は思います。

私は90年代から、中国企業の中で世界化するとしたら
ファーウェイだろう、と言ってきましたし、近年も
私が主催する企業経営者の勉強会である「向研会」で
ファーウェイの工場見学に行きました。

ファーウェイの問題は、一企業としての問題ではなく、
中国共産党と中国メーカーの関係性における問題と
認識する必要があります。

顔認証システムであれ、ルーターであれ、
中国メーカーは、中国国内で活動するためには、
中国共産党とデータを共有することが求められます。

そして、製品の中にそれを実現するための仕組みが
組み込まれているのです。

ファーウェイの場合には、その「中国共産党仕様」の
商品を誤って輸出してしまった、あるいは
そういう仕組みが組み込まれていた痕跡が残っている
商品があった、ということで問題視される羽目になりました。

つまり、ファーウェイ問題は中国共産党が
作り出している問題であり、根本的に解決するためには、
中国共産党が中国メーカーを「悪用」して
情報を提供させるのをやめなくてはいけません。

中国共産党が、中国企業を歪めているわけです。

ファーウェイは、企業として非常に優秀で、
特に5Gの技術には特筆すべきものがあります。

北欧勢の企業に唯一対抗できる企業と言って良いでしょう。

米国や日本の企業にとっても安価で優秀な技術を
持っている企業なので、本来使いたいはずです。

しかし、そのためにはファーウェイは中国共産党との
つながりがなく、安全であることを自ら証明できないと
いけません。

それを実現するには、会社を「中国国内向け」と
「世界向け」に分けるしかないと私は思います。

そして、世界向けの会社は、ボードメンバーから
技術者に至るまでグローバル人材を揃え、
完全に別の企業として経営する必要があります。

ファーウェイ問題については、
中国政府もそうとう怒り心頭の様子ですが、
私に言わせれば、そもそもの原因を作り出しているのは
「あなた(中国共産党)自身だ」ということです。



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▼レアアースは米中貿易戦争に有効な対抗策になりうる
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日経新聞は先月28日、「中国、レアアース利用に言及」と
題する記事を掲載しました。

中国の環球時報の胡錫進総編集長が、米国へのレアアースの
輸出規制について「中国は真剣に検討している。」と
ツイートした一方、人民日報もレアアースによる
報復の可能性を示唆したとしています。

いずれも具体策には言及していないものの、
米中貿易戦争で中国の対抗策が手詰まりになっていると見られる中、
レアアースを持ち出して米国を牽制した形とのことです。

尖閣諸島問題で揉めたときには、日本も中国から
レアアースの輸出制限をかけられて脅されました。

しかし日本の場合には、レアアースを使わなくて良い
商品開発が進んだこと、また台湾企業経由の「抜け道」で
輸入することができたこともあり、それほど大きな影響を
受けることはありませんでした。

現在のレアアースの産出量は中国がダントツでトップですが、
ロシア、ブラジル、ベトナム、そして北朝鮮にも
埋蔵されています。

中国にとっても重要な輸出商品ですし、レアアースの
輸出制限をそれほど長引かせるつもりはないと思います。

とは言え、いきなりレアアースの輸出制限をされれば、
軍事関連製品でレアアースを使っているものが多い
米国は大いに困るはずです。

トランプ大統領が癇癪を起こすには、十分でしょう。

その意味でも、レアアースは米中貿易戦争の武器として
有効に使えるものだと思います。



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※この記事は6月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ファーウェイのニュースについて
大前が解説しました。

この問題について大前は
「一企業としての問題ではなく、
中国共産党と中国メーカーの関係性における問題と認識する必要がある」
と述べています。

問題を解決する際には
「どこに本質的な問題があるのか」
問題の所在を見極めなくてはなりません。

そのためには、
その問題と直接関係のある登場人物だけでなく、
ビジネスの全体像を把握する必要があります。

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