2019年07月26日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

米経済/米移民政策/日米関係/ホルムズ海峡問題
〜批判をするだけでは何も生まれない

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

米経済 トランプ政権の財政放棄
米移民政策 帰って犯罪がはびこる国家を立て直したらどうか
日米関係 ハガティ在日大使が7月中に辞任
ホルムズ海峡問題 ホルムズ通過、迫る踏み絵

─────────────────────────
▼米国の株価が上がっているのは、景気が良いからではなく、単なる供給不足
─────────────────────────
英フィナンシャル・タイムズは12日、
「トランプ政権、財政規律を放棄」と題する記事を掲載しました。

トランプ政権の大型景気刺激策により、
短期的に米国経済は加速したものの、
この好況が長く続く可能性は低いと指摘。

失業率が低下したとは言え、
働き盛りの労働参加率は過去最高のときよりも低く、
企業の設備投資も歴史的に見て突出して高いとは言えません。

一方、連邦政府の歳入のGDP比率は2年前から低下しているとし、
どこかの時点で高インフレ高金利時代が訪れ、財政と金融への
信任が損なわれる事態に至るかも知れないとしています。

トランプ大統領は減税を推し進めていますが、
その減少した歳入に見合う経済の膨らみを
生み出すことはできていません。

米国の財政収支の推移は悪化の一途を辿っています。

これは、大きな問題だと思います。

それでも米国の株式市場で株価は上がっている、という
主張もあるかもしれませんが、この米国の株高は
経済が上向いているからではありません。

株式を発行するコストが高くなってきて、
企業は融資や社債によって資金調達する方向へ流れています。

そのため、株の数そのものが少ないのです。

この状況に超金融緩和が追い打ちをかけて、
限られた少数の株を求めることになり、
値上がりしているに過ぎません。

つまり、株の供給不足という理由であって、
米国の景気が良いから株価が上がったわけではないのです。

実際、米国企業の業績は悪化する見通しです。

こうした米国経済の実態を見ると、トランプ大統領は
来年の大統領選挙まで持ちこたえることができるのか、
疑問に感じるほどです。



─────────────────────────
▼トランプ大統領の移民への発言で、「覚醒」した識者もいる
─────────────────────────
民主党の移民系の女性議員グループが、トランプ政権の
移民政策を批判していることを受け、トランプ大統領は14日、
「国に帰って犯罪がはびこる国家を立て直したらどうか」と
ツイートしました。

これに対して民主党だけでなく、与党共和党からも
批判の声が上がりましたが、トランプ氏は
「米国が嫌いで不満があるなら出ていけばいい」と主張しました。

多くの人がトランプ大統領に対して、
何様のつもりだと反感を抱いたと思います。

独メルケル首相なども女性議員グループに賛同の意を示しました。

一方この発言で「覚醒」した識者もいます。

外国人が米国籍を取得するときには、
米国への愛情を宣言し、口頭試問も受けます。

それにも関わらず、舌の根の乾かぬうちに
米国を批判するというのは、おかしいのではないか?というのが
トランプ大統領の主張です。

「ここまで言ってしまうの?」というトランプ大統領らしい
物言いは、決して褒められたものではありません。

しかし、米国を批判するばかりの民主党の一部の若手議員は
バランスを持つべきだ、というのは一理あります。

そして、これは日本の政治家にも当てはまることです。

私はトランプ大統領を決して好きではありませんが、
こういう議論が生まれて活性化するのは良いことだと思います。

国の在り方について、
批判をするだけなら簡単ですが何も生まれません。

解決策を提案するなら良いですが、
批判のための批判を繰り返している人が大勢います。

私は拙著「新・国富論」以来、数十年にわたって
日本という国の在り方について問題を提起し提案してきました。

しかし、日本全体でこうした議論が
活発になっているとは言えません。

今回の参議院選挙でも、結局、
日本という国の基本的な問題をどうすべきか、という点について
何も議論が進まなかったのは、非常に残念です。



─────────────────────────
▼ハガティ在日大使の辞任発表について、日本は強く抗議するべき
─────────────────────────
在日米大使館は16日、
ハガティ駐日大使が7月中に辞任すると発表しました。

2020年の上院選に南部テネシー州から
立候補することを受けた動きとみられています。

当面は、ヤング首席公使が臨時代理大使を務めるとのことです。

トランプ大統領もハガティ在日大使も、
これは絶対にやってはいけないことをやってしまいました。

同時に、それに対して日本政府が抗議をしていないのも
おかしいと思います。

一国の大使の任命について、本人にも相手国にも知らせず、
大統領が「ツイッター」で発表するなど前代未聞です。

ハガティ在日大使が赴任した際には、
天皇陛下にも挨拶をしていますから、日本からすれば
「日本政府」「外務省」「皇室」まで
全てが無視されたということです。

これは明らかに外交上の儀礼に反しています。

しかし、安倍首相はトランプ大統領に文句を言えない人ですから、
いまだに何も発言をしていません。

日本政府は強く抗議をすべきですし、
そうしないのは100%おかしいと私は思います。



─────────────────────────
▼ホルムズ海峡でイランを追い込みすぎるのは危険
─────────────────────────
日経新聞は20日、「ホルムズ通過、迫る踏み絵」と題する
記事を掲載しました。

中東のホルムズ海峡を通過する原油への依存度が高いインドが6月、
タンカー護衛のため独自に艦船2隻をペルシャ湾に派遣した一方、
同じく依存度が高い中国はイランとの友好関係から
米国主導の有志連合から距離を置く姿勢を見せています。

米国にはホルムズ海峡での協調を大義に
イラン包囲網につなげる思惑も透けて見え、米国、イランの狭間で
日本を含めた関係国は結束を試されるとしています。

イランは自由に動ける部隊を保有しており、
影響力が大きいため、非常に厄介な状況が生まれつつあります。

ジブラルタル海峡の外側で
シリアに向かっているイランの原油輸送船を
英国が拿捕したことを受け、
今度はイランが英国タンカーを拿捕しました。

話し合いだけで解決できるのか、不安になります。

来年、大統領選挙を控えたトランプ大統領が、
今、本格的にイランと事を構えるとも思えませんし、
簡単に決着はつかないと思います。

イエメン、シリアでもイランの影響力は大きいため、
サウジアラビアが不安定化することもあり得ます。

あまりイランを追い込みすぎると、
イランには反発力があるので
大きな事態に発展してしまう可能性があります。

特にお互いに1隻ずつ拿捕している
英国とイランの動きには要注意でしょう。



---
※この記事は7月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は米移民政策について、大前が解説しました。

物事を批判的に考えることは悪いことではありません。

ただ、その批判は、
物事が好転に向かってほしいと考えての内容なのか、
それとも、単に相手の評判を落とすための内容なのかで大きく違います。

ある提案に対して批判的な意見を持った際には

「なぜそう思うか」
「自分ならどうするか」

自分の中で分解したうえで、論理的に提示することが大切です。

2019年07月19日(金) 
[1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ドラッグストア業界/医療費問題/かんぽ生命保険/
 ホテルオークラ/HIS〜業界を俯瞰する視野を持つ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ドラッグストア業界 始動、ドラッグ大型再編
医療費問題 病院処方の医薬品 2016年度で総額5469億円
かんぽ生命保険 不適切な保険販売で改善策
ホテルオークラ アエオン社のホテル運営を受託
HIS ユニゾHDにTOB実施

─────────────────────────
▼どうせ統合するなら、コンビニへの対抗まで見据えて業界トップを狙え
─────────────────────────
日経新聞は4日、
「始動・ドラッグ大型再編」と題する記事を掲載しました。

ドラッグストア、食品スーパー、コンビニの商材の重なりが
顕著になっていると紹介。

出店に飽和感が出始めた各業種がお互いの領域に進出するため、
プライベートブランドの供給や店舗の融合を進めているためで、
今夏にはマツキヨとスギ薬局によるココカラファイン争奪戦の
結論が出るなど、業界の大型再編が始まる見通しとしています。

ドラッグストア市場の売上高や店舗数を見ると、
どちらも伸びています。

売上高は7兆円に迫る規模です。

このような状況の中、2社でココカラファインの争奪戦を
繰り広げるというのはもったいないと思います。

私なら、スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの全てが
一緒になることを画策します。

業界5位、6位、7位の3社が一緒になることで、
一気に1位のウエルシア、2位のツルハなどを超える規模に
なれるからです。

薬ジャンルの商品で利益を出せるため、
他の商品価格をコンビニよりも安く設定できるのが
ドラッグストアのメリットですが、このくらいの規模になると、
さらにコンビニに対して一定の力を持つことができるはずです。

小さくまとまるのではなく、
これくらい大きな視野で考えて欲しいと思います。



─────────────────────────
▼日本の将来を考えても、市販薬の購入を促すことが重要
─────────────────────────
市販薬があるにも関わらず、
利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が
2016年度で5000億円にのぼることがわかりました。

処方薬は自己負担が原則3割と市販薬より割安なことが
要因と見られますが、残りは税金や保険料で賄われるため
医療費の膨張につながっています。

風邪をひいて風邪薬を買うとき、
市販されていても、安く購入できるので、
わざわざ病院で処方してもらう人がたくさんいます。

こうしたことを抑制する必要があり、
そこで検討されているのが保険給付の見直しです。

例えば、テニスなどで痛めた部位に貼るような湿布薬、
アトピー性皮膚炎等ではない皮膚乾燥症に対する保湿剤など、
治療の根本に関わるものでないなら、
保険適用から除外するというものです。

主要国のGDPに占める医療費の割合を見ると、
米国がダントツに高く約16%、
欧州と日本は約10%に抑えられています。

しかし、日本の場合にはGDPが伸びておらず、
今後高齢者が増えていくので、この割合を維持するのが
難しくなっていくはずです。

こうした日本の状況を考えれば、
なおさら普通に市販薬で購入できるものを、
わざわざ病院に行って購入するのは避けるべきでしょう。



─────────────────────────
▼かんぽ生命不正販売の根本的な原因は、過剰なノルマではなく経営陣
─────────────────────────
かんぽ生命と日本郵便は10日、
不適切な保険販売が相次いで発覚した問題を受けて、
改善策を発表しました。

郵便局員への過剰なノルマが不正につながったと見て、
新たな契約を取った販売員に対する評価体系や報酬を見直す方針で、
二重に徴収していた保険料の返還も進めるとのことです。

営業ノルマでドライブをかけたことが不正につながったとのことですが、
かんぽ生命で起こっていたことは、本当に驚くべきことです。

結果、かんぽ生命は、保険料収入と経常利益が減少しているのに、
当期純利益は伸びているという異常な状態になっています。

どうしてこれほどひどいことが起こったのか?

かんぽ生命の役員構成を見ると、
約30名のうち16名は旧郵政省から、いわば天下りしてきた人たちです。

金融機関出身者もいますが、大半は金融の素人でありプロではなく、
まともな経営者がいないのです。

もともと単なる天下り先と思っている人たちですから、
売上を伸ばすとなっても、営業ノルマを課すことしか
考えられなかったのでしょう。

問題の根本はここにあります。

謝罪会見では頭を下げても、何も解決しません。

こうした素人経営陣は退き、
再出発するべきだと私は思います。



─────────────────────────
▼今度こそ海外での成功を目指して欲しいホテルオークラ
─────────────────────────
ホテルオークラは
ロシアの投資会社アエオンコーポレーションの建設するホテルの
運営を受託したと発表しました。

モスクワのシェレメーチエボ国際空港の近くに
300室規模の大型ホテルを建設する計画で、
和食レストランの他、温泉風の温浴施設も設け
日本流のサービスを提供するとのことです。

ウラジオストク、ハバロフスクなどを見ても、
ロシアにはあまり良いホテルがないので、
これは大きなチャンスだと思います。

モスクワ近辺なら、日本式サービスは受け入れられる可能性は
大いにあるでしょう。

ぜひここで成功してロシア全土に展開することを
期待したいところです。

ホテルオークラはこれまでにも中国上海、アムステルダムなど
積極的に海外進出を図ってきましたが、
大半は上手くいきませんでした。

今回は、同じ轍を踏まないように頑張ってほしいと思います。



─────────────────────────
▼HISが敵対的TOBを仕掛けた背景・理由は?
─────────────────────────
旅行大手HISは、ホテル事業などを展開するユニゾHDに対して
TOBを実施すると発表しました。

現在の保有比率4.5%から大幅な引き上げを目指すものですが、
ユニゾが提携協議に応じなかったとしており、
敵対的TOBに発展する可能性もあります。

ユニゾHDは興銀系の企業で、
不動産などをたくさん保有しています。

HISはすでに筆頭株主で、
その他は興銀系の企業が多くなっています。

借入が5000億円ありますが、含み益が2000億円ほどあるため、
株価が不当に安くなっていて、村上ファンド的に言えば
「狙い目」の案件と言えます。

HISの澤田会長が、
村上ファンド的な判断をしたということだと思います。

HISが展開している事業の伸び悩みが背景にあるのでしょう。

旅行事業などは値段が上がらずに過当競争に陥っていますし、
またハウステンボスも一時期の勢いがおさまり、
頭打ち状態になっています。

こうした状況を打開するために、HISの将来を考えたとき、
やらざるを得ないと澤田会長が判断したのだと思います。

ホテルそのものはインバウンド需要も高く、
圧倒的に数も不足していますから、リスクはそれほど高くありません。

しかし、敵対的TOBになったとき、
残り40%をHISが買い増していけるのかが問題です。

すでに値段が跳ね上がっているので、
私は難しいのではないかと見ています。



---
※この記事は7月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は、ドラッグストア大型再編のニュースについて
大前が解説しました。

大前は

「私なら、スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの
 全てが一緒になることを画策する」

と述べています。

業界内の競合他社とは、対立するだけでなく、
同じ方向をむいて共に進んでいく、という選択肢をとることもできます。

広い視野を持ち、
他の業界にひそむ真の競合に気付くことが大切です。

2019年07月12日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参院選〜参院選はすでに政策を論じる段階ではない

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参院選 21日投開票へ選挙戦開始

─────────────────────────
▼すでに選挙戦では、政策を論じる段階ではない
─────────────────────────
令和時代で初の国政選挙となる参院選が4日、
告示され選挙戦が始まりました。

与党は秋の臨時国会で憲法改正議論を進めるため、
3分の2の議席獲得を目指します。

野党は老後資金が2000万円不足するとの報告書で噴出した
年金問題や10月に予定されている消費増税などを
争点とする見通しです。

21日の投開票に向けて論戦が繰り広げられると
報道されていますが、私に言わせれば、
すでに政策の議論をする段階ではなく、
もう「間に合わない」状況です。

今さら、野党が何を言っても
国民はそれほど耳を傾けないでしょう。

消費増税はもちろん、
年金問題であっても争点にはならないと思います。

金融庁さえ正しく理解できていない問題なので、
まともに議論できる人は誰一人としていないからです。

選挙戦に突入したら21日の投開票まで、あっという間です。

どの政党も印象勝負に出ますから、
政策の議論をする暇はありません。

安倍首相ですら、改憲の内容を提示していませんし、
本気で改憲を実行する気があるのか、
私は疑問に感じています。

そもそも、もしやる気になれば、
現状でも3分の2以上の議席を確保しているのですから、
改憲の発議はできたはずです。

それでも、もし安倍首相が本気で改憲に乗り出すなら、
第9条を対象とするだけでなく、憲法の根本から
見直してほしいと強く思います。

トランプ大統領によって、
日米安全保障条約は片務的だと批判されていますが、
ここまで踏み込んで考えるべきでしょう。

そもそも今の日本国憲法は、
GHQが日本を占領していた時代に作り上げたものです。

憲法を書き上げた中心人物は、
チャールズ・ケーディス民政局次長という人物で、
当時39歳の弁護士です。

マッカーサーからは、「天皇制の保持」
「戦争の放棄」「封建制の廃止」という3点について
明確な指示があったと言われています。

率直に言って、日本国憲法を見ると、
ケーディス氏の日本に対する理解は非常に浅かったと思います。

例えば、日本国憲法第8章では「地方自治」について
規定していますが、項目が並んでいるだけでほとんど
中身がない、と私は思います。

地方自治の章にも関わらず、地方自治体の定義もなければ、
地方議会の権限も定義されていません。

そのため、地方自治とは程遠く、地方は中央政府が定めた法律の
範囲内で条例を作ることしかできません。

細かい点を挙げればきりがありませんが、
今日本国憲法について私が最大の問題だと感じているのは、
先進国となった日本が世界で果たすべき役割について
何も書かれていない、ということです。

第二次大戦の直後でしたから、当時の最大のテーマとして
「二度と戦争はしない」「軍隊を放棄する」と書いたのは
良いとしても、今は時代が違います。

今の日本そのものの状況も、日本を取り巻く環境も、
そして世界が遭遇している問題も大きく変わっています。

そのような中で、日本は世界に対して、
どんな役割を果たしていくべきなのか。

私は、これこそ憲法で規定すべきだと思います。

今の日本国憲法は、内向き、下向き、後ろ向きの憲法です。

そうではなく、これからの未来を見据えて、
世界の中の日本を位置付けた前向きな憲法であるべきだと思います。

私は拙著「平成維新」「新・国富論」、
そして「君は憲法第8章を読んだか」の中でも、
ずっと私なりの憲法を提言してきています。

今回の選挙で改憲を争点とするといわれても、
自民党が提示しているのは、
憲法9条という非常に狭い範囲のことでしかありません。

それではお粗末に過ぎます。

野党はさらにお粗末な対案しか持ちあわせていません。

本当に改憲を争点とするなら、
国民を巻き込みながら4〜5年は議論するべきです。

今回の選挙で軽々しく改憲論を展開するのは無理があるし、
全く意味がないと思います。



─────────────────────────
▼日本の政治レベルを低下させた要因は?
─────────────────────────
日本の政治レベルが著しく低くなった要因はいくつかありますが、
その1つが日本の役人の影響力が低下し、
レベルが下がったことです。

これは役人の人事権を取り上げてしまった
安倍政権にも責任があります。

従来なら、事務次官が握っていた人事権が
政治家に移ってしまったため、役人が政治家に頭が上がらなくなり、
その結果、数多くの「忖度」が生まれることになっています。

かつての誇り高き日本の役人なら、
政治家の言いなりにならなかったのですが、
今の役人はすっかり牙を抜かれてしまった状態です。

そして、日本の政治レベルを低下させた最大の要因は
小選挙区制です。

以前の中選挙区制なら1つの選挙区から
複数人の議員が選出されましたが、
小選挙区制では1人のみです。

約人口30万人に議員が1人という割合になります。

1つの選挙区から複数人選ばれていたときなら、
余裕がある人は金融や外交といった「広い」「外側」のことに
目を向けることもできました。

しかし、小選挙区制になったことで、
議員は広いビジョンなどを語っている場合ではなくなりました。

端的に言えば、
「おらが村にいくつの米びつを持ってきてくれるのか」というような
非常に小さいレベルの話に終始するしかなくなったのです。

小選挙区制により、
国会議員が矮小化してしまったと私は思います。

小選挙区制を変えない限り、
日本には大きな発想を持てる議員は現れないでしょうし、
現れても選挙で選ばれません。

小選挙区制によって、
日本という国が不可逆的に矮小化してしまったのは
本当に残念です。



---
※この記事は7月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は、参院選のニュースについて大前が解説しました。

大前は

「改憲するならば憲法第9条を対象とするだけでなく、
 憲法の根本から見直してほしい」

「日本が世界に対してどんな役割を果たしていくべきなのか、
 憲法で規定すべき」

と述べています。

問題を解決するときには、現状の争点にとらわれず、
広い視野と高い視座をもつことで、
物事の全体像を把握することができます。

物事の本質は、争点の奥に眠っていることもあります。

2019年07月05日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参院選/日米安全保障条約〜トランプ大統領の本当の狙い

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

参院選 立民・国民の公約、家計を重視
日米安全保障条約 「日米同盟の深化を確認」

─────────────────────────
▼改憲を問うのなら、憲法の全体像を示せ
─────────────────────────
日経新聞は先月24日、
立憲民主党と国民民主党が7月の参院選の公約で、
家計や消費を重視する政策を前面に打ち出したと紹介。

自民党が外交・安全保障を安倍政権の実績として強調しており、
同分野が争点になるのを避ける狙いがあるとしています。

参院選に向けた野党の動きを見ていて、
全くお話にならないと感じます。

社民党は無責任にも「最低賃金の引き上げ」などを
口にしていますが、具体的な実現案もない絵空事に過ぎません。

その上、政策で競うと言いながら、候補者にはタレントが多く、
とても政策に力を入れている姿勢とは思えません。

G20で安倍首相が大きく傷つくこともなく、
このまま参院選も自民党が勝利する流れになっていると思います。

そうなった場合、
自民党は国民に「改憲を問う」ことになるでしょうが、
私は大いに懸念を抱きます。

憲法9条ばかりに固執して、憲法の全体像を捉えていない議論が
展開される可能性が高いからです。

私は2016年に拙著「君は憲法第8章を読んだか」において、
憲法9条以外についても私なりの憲法の全体像を示しました。

しかし、自民党にしても野党にしても、
いまだに「自分たちなら、こういう憲法にする」というものを
示していません。

憲法9条だけでなく、全体像を理解し、
その指針を示すことができなければ、
「改憲を問う」意味はないと私は感じます。



─────────────────────────
▼憲法を全く理解せず、お金のみを求めるトランプ大統領
─────────────────────────
米ホワイトハウスは先月28日、
大阪市で行われた日米首脳会談を受けて、
「日米同盟に基づく世界規模での協力を深化させ
拡大させていく意向を確認した」と声明を発表しました。

トランプ大統領がこの数日間、日米安全保障条約を含む
主要国との同盟関係に不満を示していたのを受けたもので、
同盟諸国の懸念や不安を払拭したい考えとのことです。

憲法への不理解という意味では、
このトランプ大統領の発言・行動も、
まさにその典型例だと思います。

トランプ大統領の主張は、
日本は日米貿易で利益を出している一方、
安全保障については米国に頼り切っているのは
「不公平」だというものです。

日米安全保障条約に基づき、
米国は日本が攻撃を受けたら救済に行く必要があるが、
逆のときに日本は「知らん顔」をすることができる、というのです。

なぜ、このようになったのか?
トランプ大統領は全く理解していないのでしょう。

全く呆れるばかりです。

米国が日本を占領した際、日本に二度と戦争をさせないために、
紛争解決の手段としての戦争を永久に放棄するように
日本国憲法に記させたのは米国駐留軍です。

ここから、全てがスタートしています。

そして、サンフランシスコ平和条約の後、
日米安全保障条約を締結し、
米国が日本の安全保障を約束する代わりに、
日本は米軍の駐留を認めるなど応分の負担をするという
ことになりました。

こうした米国主導とも言える背景を無視して、
いまさら不公平と言われても日本としては
どうしようもありません。

そしてトランプ大統領としても、
日米安全保障条約の破棄を本気で考えているわけでもなく、
そのような発言は一切ありません。

日米安全保障条約を盾にして脅しながら、
米国の軍事商品を日本に購入しろ、というのが
トランプ大統領の狙いです。

G20で大阪に滞在した短い時間の中で、
トランプ大統領は他の国についても
同じ趣旨の発言をしていました。

記者が殺害された事件などで
関係が悪化していたサウジアラビアについても、
ムハンマド皇太子を批判することはなく、
米国製兵器を大量購入してくれたお客様という
姿勢を示していました。

貿易不均衡で揉めている中国の習近平主席に対しては、
米国の農民が困っているので米国産の大豆などを
大量に買ってくれと要求していました。

トランプ大統領の判断基準は、すべてお金です。

米国にお金を払ってくれるなら良い人、
米国にお金を払わせるなら悪い人、という図式です。

このような人物が、米国の大統領を務めているというのは、
あらためて驚くべきことです。

ところが、トランプ劇場の空気の中で再選する可能性もあり、
私としては米国民にしっかりと大統領を選ぶ目を
持ってもらいたいと願うばかりです。

トランプ大統領の日米安全保障条約に関する発言は、
低レベルでまともに受け止める必要すらありません。

しかし、日本国内で
この発言を歓迎している人たちもいます。

「右派」や「安倍的」な考えの人たち、
そして軍事産業やその周辺に関わる企業です。

もし日本が単独で安全保障を維持することになれば、
防衛予算の急増が必要であり、三菱重工、小松製作所などの
メーカーは大いに歓迎するかもしれません。

三菱重工は面倒なMRJの開発など即座にやめることができますし、
小松製作所もブルドーザーではなく戦車を製造するでしょう。

東芝も、防衛機器で大いに活躍できるでしょう。



---
※この記事は6月30日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は、日米安全保障条約のニュースについて
大前が解説しました。

大前は記事中で

「トランプ大統領は日米安全保障条約を『不公平』と言うが、
 これはもともと米国駐留軍が日本国憲法に記させたもの」

「トランプ大統領の本当の狙いは、
 米国の軍事商品を日本に大量購入させること」

と述べています。

交渉を受けた時には、その事柄の背景を理解するとともに
なぜ相手がそんな交渉を仕掛けてくるのか、丁寧に観察することで、
その真意が見えてくることがあります。

相手の本当の目的を見極め、判断することが大切です。

過去ログ 2010年12月 
2011年01月 02月 03月 04月 05月 
2012年05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2013年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2014年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2015年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2016年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2017年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2018年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月 
2019年01月 02月 03月 04月 05月 06月 07月 08月