2019年08月30日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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カジノ構想〜横浜にカジノを誘致するならノースピアを活用すべき

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カジノ構想 統合型リゾート(IR)を誘致方針

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▼大阪よりも横浜のほうがカジノ誘致に向いている
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横浜市の林文子市長は22日午後、
カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を正式に表明しました。

敷地面積47ヘクタールの山下ふ頭に整備し、
2020年代後半の開業を目指します。

林市長は「将来に渡り成長発展を続けていくためには、
IRを実現する必要がある」との結論に達したと
説明しました。

横浜港運協会会長・藤木氏は、
「賭博場にはしない」「ギャンブル依存症になったら大変」などと
山下ふ頭へのカジノ誘致に反対しています。

以前、林市長も藤木氏の勢いに押されて、
カジノ誘致については「未定」としていましたが、
横浜の将来を考えて必要だと考えを変えたのでしょう。

横浜にカジノが誕生する可能性を聞いて、
メルコリゾーツや米ラスベガス・サンズなども
興味を示しているとのことです。

メルコリゾーツの会長兼最高経営責任者であるローレンス・ホーは
マカオのカジノ王と言われるスタンレー・ホーの息子です。

彼らは近い将来
マカオのカジノライセンスを失う可能性もあるので、
カジノを移せる地域を探しているとのことです。

そうであれば、
日本の横浜は申し分ない地域だと思います。

トランプ大統領の後ろ盾であるアデルソン氏が経営する
ラスベガス・サンズ。

当初、大阪に進出する予定でしたが、
東京もしくは横浜に考えを改めたのでしょう。

大阪では夢洲という
非常に交通の便が悪いところにカジノを誘致予定でしたが、
横浜の山下ふ頭なら羽田からの利便性も高いですし、
大阪よりも魅力を感じるのは当然でしょう。

大阪は夢洲に万博もIRも持ってくると騒いでいましたが、
どうやら実現しそうにありません。

埋立地で余っている土地を使おうというのが、
そもそも考えとして甘いと思います。

大阪は2030年には人口1000万人を割り込み、
いわゆるメガシティから陥落する可能性があります。

府と市が一体となって取り組むぐらいでは意味がなく、
関西全体として一体になる必要があると私は思います。

例えば、関空からの利便性などを考えて
和歌山と協力して関西全体を盛り上げる施策を考えるなど、
できることはたくさんあります。



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▼横浜にカジノを誘致するなら、ノースピアを活用する
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横浜港運協会会長の藤木氏は
山下ふ頭にカジノを誘致することに渋っているようですが、
私が20年前に提案したように瑞穂ふ頭を使えば
この問題は解決できます。

瑞穂ふ頭はノースピアと呼ばれ、
いまだに米軍が占領している地域です。

かつて米軍は、海軍を横須賀、空軍を横田、
陸軍を三ツ沢(岸根基地)に置いていました。

この岸根基地からまっすぐ来ると
ノースピアに辿り着きます。

米陸軍は撤退したため、
今ノースピアは使われていません。

ここを活用すれば良いのです。

私が20年以上前に横浜の商工会議所に提案したのは、
ノースピアにカジノを作り、かつ
その際にパスポートを必須にするという方法です。

米軍が自ら占領している形を継続し、
パスポートで入場させます。

こうすると、入場する人の管理もできますし、
外国から来た人はそのまま入場することができます。

マリーナベイ・サンズも総工費は5,000億円ですが、
カジノの部分は200億円程度の規模ですから、
それほど大きくありません。

ノースピアでも十分に対応できるはずです。

藤木氏は山下ふ頭には国際展示場のようなものを作りたいと
思っているようですが、それは無謀だと私は思います。

国際展示場は、世界中に溢れているからです。

日本でも幕張、ビッグサイトにありますし、
ドイツでもミュンヘン、フランクフルト、
ハノーバーなど多くの地域にあります。

世界的に見て、
もはや国際展示場に行く時代ではありません。

もう少し現状を調べて出直してほしいと思います。

瑞穂ふ頭・ノースピアを使うというのは
奇抜なアイディアに思えるかもしれませんが、
構想力を発揮して考えれば、
実はオーソドックスな方法だとわかります。

藤木氏が心配しているギャンブル依存症や
人間の管理も全てパスポートで対応することができますし、
理にかなっているはずです。

こうした施設や都市計画を考える際には、
ぜひ構想力を持って新しいものを考えてほしいと思います。

どこか外国の施設をそのまま真似するようなものではなく、
もう一歩踏み込んだユニークな発想が重要です。

例えば、カナダのウィスラーは非常に良い例です。

ウィスラーの街を構想した人は
ノルウェーから来た方でしたが、
決してノルウェーを真似したわけではありません。

ウィスラーは素晴らしいスキー場になる山を持つ一方、
ゴミが溢れていました。

そこで、単にゴミを埋めてしまうのではなく、
表面を覆って建物を建て、
その下を駐車場にするという方法を取りました。

街の下全体に駐車場が広がっているのです。

もちろん駐車場は雪に埋もれないので、
出入りが楽になります。

これは非常に素晴らしいアイディアだと思います。

そして、冬などは夕方4時以降になると、
みんなが街の下に降りてきます。

そこには、ホテルもディスコも映画館も食堂もあって
賑わっています。

世界には例がないようなユニークな街になっています。

寒い山の上のみにホテルがあって
誰も下には降りてこない日本のスキー場とは対照的です。

かつて私が提案した横浜構想も、
誰の真似をしたものでもありません。

横浜へのカジノ誘致についても、
ぜひユニークな発想力を持って考えてもらいたいと思います。



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※この記事は8月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はカジノ構想のニュースを大前が解説しました。

IRについては、様々な利害関係が絡んでおり、
意見の対立も起きています。

こういった問題を解決するには、視点を変えて、
これらの問題を一網打尽にできる打ち手はないか、
考えてみることも大切です。

複雑な問題だからこそ、
考える力を発揮することができます。

2019年08月23日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米ウォルマート/米ゼネラル・エレクトリック/
韓国サムスン電子/世界石油大手〜小売業界の巨大な戦い

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米ウォルマート 最終利益3800億円
米ゼネラル・エレクトリック GEの不正会計を指摘
韓国サムスン電子 ベルギーから半導体材料調達
世界石油大手 サウジアラムコの出資受け入れで合意

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▼ウォルマートVSアマゾンという巨大な戦いの分かれ目
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米国のウォルマートが発表した2019年5月〜7月期決算は、
最終損益が36億1000万ドル(約3800億円)となりました。

生鮮食品や飲料の販売が好調だったほか、
成長分野のインターネット通販部門の売上高が
約37%増加したことなどが寄与したとのことです。

これはウォルマートにとって
久しぶりに良いニュースだと思います。

最近の業績推移をみると、
四半期ごとの売上純利益も落ち込んでいましたが、
ここに来て盛り返してきています。

特に、今回は通販部門の売上が好調だったという点が
重要だと思います。

量よりも質を重視していくというウォルマートの戦略が、
結果的に量にも反映されることを証明した形に
なったからです。

アマゾンのようにディスカウントで量を取りに行くのではなく、
自分たちの売りたい値段で質を追求しながらも
量を確保していくという戦略が功を奏しました。

ウォルマートとしては
久しぶりに手応えを感じているのではないかと思います。

長期的に株価を見ても、
アマゾンの株価が急騰してきたのに対し、
ウォルマートの株価は堅調に上げてきています。

これまでも継続していたアマゾン対策が
ようやく実を結んだ結果と言えます。

株式市場では、ウォルマートが
アマゾンの犠牲者になるというのが近年の定番でしたが、
今回の結果を受けてやはりウォルマートのように
自主店舗を持っているところが強いという風潮も
出てきています。

すなわち、現在の状況はウォルマートによって
アマゾンに歯止めがかかったという形です。

今まさにアマゾンとウォルマートによる
巨大な戦いにおける勝負の分かれ目が
訪れているのかもしれません。

そのように感じさせられる決算だったと私は思います。



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▼不正会計疑惑に、GEはどう答えるのか?
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米国の著名会計専門家ハリー・マルコポロス氏が15日、
ゼネラル・エレクトリックが巨額の損失を隠すため
不正会計を行っているとする報告書を公表しました。

報告書は175ページにのぼり、
ヘッジファンドと協力して7ヶ月かけて調査したということで、
不正額は発見できただけでも380億ドルに上るとのことです。

当然のことながら、
GE側は「解釈の違い」と否定しています。

詳細な分析結果として発表されている不正額は、
約4兆円ということですから、
これはかなり深刻な問題です。

これを受けてGEの株価は大きく下落しています。

数年前まで約30ドルだった株価は、
今では10ドルを下回る水準に落ち込んでいます。

レポート作成に協力したのがヘッジファンドですから、
株価の下落を受けて売り浴びせて儲けようという
目論見もあると思います。

しかし、これだけ詳細なレポートを提出されると、
ヘッジファンドの思惑はともかくとして、
今はGEが4兆円の不正額を掃き出して、
不正を白状するのかどうか注目されています。



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▼サムスンには、日本が輸出規制の抜け穴を提示
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韓国のサムスン電子が
日本からの輸出管理が厳格化されたフォトレジスト(感光剤)を
ベルギーから調達していることがわかりました。

調達先は2016年に日本の化学大手JSRと
ベルギーの研究センターIMECが設立した合弁会社とみられ、
半年から10ヶ月分を購入し、最先端の半導体チップ製造工程で
使用しているとのことです。

韓国に直接半導体を輸出するのを厳しく取り締まる一方で、
サムスンのように関係性を維持したいと思うところには、
日本が抜け道を作ってあげているという事でしょう。

サムスンはベルギーの会社から半導体を購入したそうですが、
航空機で送ってもらえばあっという間ですから、
日本の輸出規制という制裁は実質的に意味がないことになります。



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▼サウジアラビアの戦略の方向性が明確になってきた
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インドの財閥大手リライアンス・インダストリーズは12日、
サウジアラビアの国営石油会社・サウジアラムコが
リライアンスの石油関連事業に20%出資することで
合意したと発表しました。

出資額は150億ドル(約1兆5750億円)に上り、
これによりリライアンスは原油を安定的に確保する一方、
サウジアラムコは高まるインドの需要を取り込む考えです。

インド最大の財閥であるリライアンスは
最近業績が大きく低迷していました。

インドにとってみると非常に助かる話で、
リライアンスにとっても渡りに船といったところでしょう。

このようなサウジアラビアの動きを見ていると、
「他国に深く関与していく」という国家戦略が
はっきり見えてきたと私は感じています。



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※この記事は8月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はウォルマートのニュースを大前が解説しました。

ウォルマートとアマゾンの戦いに変化が出ています。

世の中のデジタル化が進む中、
店舗も含めて、いかに顧客に価値を提供するのか、
改めて考えさせられます。

小売店舗をどう生かすのか?
顧客データをどう生かすのか?

小売業界にさらなる進化が求められています。

2019年08月16日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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NTT/インバウンド消費/JR九州高速船〜NTTの次の戦略は「金融」しかない

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NTT 見えぬ携帯の次
インバウンド消費 訪日客は西へ、消費は東へ
JR九州高速船 福岡-韓国・釜山航路に新型高速船導入へ

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▼NTTの次の戦略は、明確に「一手」しかない
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日経新聞は先月29日、
「NTT、孝行息子の衰え 見えぬ携帯の次」と題する記事を
掲載しました。

2019年3月期の時価総額で、
NTTが3年ぶりにNTTドコモを上回ったと紹介。

政府主導で進められた携帯電話の値下げが響くものですが、
5Gなど次世代技術の競争が激化する中、
ドコモの稼ぐ力は弱まっており、昨年6月に就任した澤田純社長が
グループの再構築を図れるか手腕が試されるとしています。

NTTの業績を見ると、
売上は約10兆円、営業利益は約1兆円です。

悪くない数字ですが、伸びてはいません。

これまで移動通信が伸びてきましたが、
今後は難しい状況が目に見えています。

世界化にも挑戦しましたが、
結果としては実を結びませんでした。

澤田純社長は
「ゲーム・チェンジを仕掛ける」と述べていましたが、
その方向性は1つしか考えられません。

それは、NTTが銀行になることです。

世界を見渡せば、資産運用、決済業務に
乗り出している企業がたくさんあります。

世界中の金融市場を直接相手にできる環境が整っています。

通信の次の戦略が見えないなどと
日経新聞には書かれていましたが、
戦略は明確で、金融の道しかないと私は思います。

ところが、現状ではNTT法があるために
NTTは銀行業務を行うことができません。

私ならまずこの法律を改正することから始めます。

NTT法は、かつて市内通話、市外通話など分かれていて
長距離通話という概念があった時代のものです。

現在の状況に合わせて改正することは
何ら不自然ではないでしょう。

ソフトバンクは投資会社になって、
PayPayなど金融業に乗り出しているのですから、
NTTも同じような道を歩むことができるはずです。

古い時代の民営化、分割の呪縛から解放されるべきです。

しかもNTTの場合には、
数十年分の電話料金の支払いデータを保有しています。

中国のアント・フィナンシャルと同じように、
個人の信用情報をガッチリ握っているということですから、
非常に大きなアドバンテージです。

料金回収の代行もできるでしょうし、
NTT法を改正してNTTを解放すればできることは無限です。

澤田社長流に言えば、
こうした過去の呪縛から「解き放して」くれれば、
簡単に「ゲーム・チェンジ」ができると思います。

私なら、中国と同レベルの自由度、
最低でもソフトバンクと同レベルの自由度を求めて動きます。



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▼訪日客を受け入れる西日本
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日経新聞は4日、「訪日客は西へ、消費は東へ」と題する
記事を掲載しました。

これは訪日外国人の数の伸び率で
東日本、中日本の伸び率が20%台だったのに対し、
西日本が41%だったと紹介。

一方で都道府県別の消費額では、
東京都が53.4%のシェアだったとのこと。

空港別の出入国数に照らすと、関空から入国し、
東京で買い物した後に成田・羽田から出国するという流れが
見て取れるとのことです。

もう1つ西に訪日客が多いのは、
福岡などに大規模な船に乗って観光客が訪れるからです。

数千人規模の乗客を運べる船もあるので馬鹿にできません。

インバウンド経済にも影響を与えうる存在です。

その意味でJR九州が発表した新型高速船
「クリーンビートル」も注目したいところです。

JR九州高速船は来年4月、福岡と韓国・釜山を結ぶ航路に
新型高速船「クリーンビートル」を導入すると発表しました。

1日2往復のうち、1往復を大型船に乗り換えることで、
1日あたりの定員を増やす計画で、JR九州の青柳社長は
「この船に乗ってオリンピックを見に来て貰えれば嬉しい」と
語りました。

以前のビートルが
鯨のようなものにぶつかるという事故を起こしたことも影響し、
新型ビートルは大型になっています。

現在、日本と韓国との関係性が悪化していて、
渡航注意情報も出ているので、
そもそも韓国から日本に来てくれる観光客が減るかもしれません。

その意味では、発表のタイミングが悪かったと思います。



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※この記事は8月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はNTTのニュースを大前が解説しました。

大前は
「世界を見渡せば、金融の道に進んでいる通信企業はたくさんある」
と述べています。

今後の戦略を考える際には
同業種の世界の企業の戦略が参考になります。

例えば、アリババやテンセントという名前はよく聞きますが、
知らないことも多いように感じます。

「これまでにどんなサービスを出しているのか?」
「そのために、どんな投資をしてきているのか?」

このお盆休みに、彼らのここ5年くらいの動きを
研究してみるのは、いかがでしょうか。

2019年08月09日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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安倍政権/ホルムズ海峡問題〜レガシー外交が失敗した理由は「順序」を守らなかったから

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安倍政権 「レガシー外交」は前途多難
ホルムズ海峡問題 有志連合3回目の会合

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▼安倍外交が何1つ上手くいかなかったのは、「順序」を間違えたから
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日経新聞は先月31日、
『「レガシー外交」は前途多難』と題する記事を掲載しました。

安倍政権は今回の参院選で勝利したものの、
残された2年あまりで処理するには壁の高い難題が多いと指摘。

ロシアとの北方領土問題、韓国との一連の対立などに加え、
今後本格化する日米貿易交渉では
大統領選挙を控えたトランプ大統領が攻勢に出ると見られ、
安倍外交はいよいよ正念場を迎えるとしています。

安倍首相は頻繁に海外に出かけてきましたが、
何も残らなかったと言えます。

2度目の首相指名を受けたときには、
北朝鮮との拉致問題とロシアとの北方領土問題という
2つを最大の課題として挙げていましたが、
結局2つとも解決する見込みはなくなってしまいました。

あれだけ動き回ったのは、
一体何だったのか?という気持ちになります。

私が思うに、理由ははっきりしています。

安倍首相には、米国のヘンリー・キッシンジャー氏のような
交渉官がいなかったからです。

キッシンジャー氏のような人がいればこそ、
ニクソン大統領のような人物でも、中国の周恩来と
交渉を上手くまとめられたのだと私は思います。

安倍首相の周りにいるのは、
外務省出身の谷内氏のような人物ばかりです。

これが最大の問題です。

このような状況の中で、外交交渉を上手くまとめるためには、
例えばロシアのプーチン大統領と
命がけで自ら交渉するしかない、と思います。

その場合には、同様に米国のトランプ大統領とも命がけで、
北方領土が返還されたときには
日米安保条約の対象外とする点について
交渉する必要があるでしょう。

米国からこの言質をとっておかなければ、
米軍の駐留を嫌うロシアは
絶対に首を縦に振ってくれないからです。

そして、これを実行するなら「順序」が大切です。

まず、中国との関係を良好にして
尖閣諸島など領土問題を解決します。

尖閣諸島を日米安保条約の対象として
米軍に守ってもらっておきながら、
返還された北方領土は別扱いとするのは無理があります。

谷内氏などは、
「北方領土に米軍駐留を求められたら、論理的に断れない」
ということをロシアに言ってしまうのですから、
話になりません。

そうではなく、まず中国との関係を良好にして、
その上で米国に交渉をするのです。

米国からは何かしらの「お願い」をされる
可能性もありますが、それも可能な範囲で
受け止める必要があると思います。

そして米国と話をつけてから、
ロシアに日ソ共同宣言に戻りましょうと
提案すれば良いのです。

全てをバラバラに行っているから上手く行かないのであって、
順序立てて実施していけば、上手く交渉できる可能性は
大いにあると私は思います。

北朝鮮について言えば、小泉元首相と同じように、
就任したらすぐに訪問するべきだったと思います。

何も出てこなければ、
国民に素直に謝るしかありません。

それでもすぐに動いていれば納得感はあるでしょう。

それをズルズルと後回しにして、北朝鮮との関係性も悪化し、
間を取り持ってくれる可能性があった韓国とも揉めてしまい、
もはや手がつけられません。

トランプ大統領に口を利いてもらうなどと
他人任せにするのはあり得ないと思います。

レガシー外交が失敗した理由は、
安倍首相が物事を進めていく「順序」を守らなかったからです。

この順序が違うだけで微妙に全てが変わってしまいます。

徒労が多かったと言わざるを得ないでしょう。

それを今さら再構築しようとしても、
もう遅いでしょう。

振り返ってみると、安倍外交の最大の問題は、
中国との関係性をこじらせたことです。

この件については民主党政権にも責任はありますが、
安倍首相としてはそれを踏まえて
何とかするべきだったと思います。



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▼海上自衛隊をホルムズ海峡に派遣するのは愚策
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米国が各国に参加を求める
ホルムズ海峡の安全確保に向けた有志連合構想について、
先月31日、中東バーレーンの米軍基地内で
3回目の会合が開かれました。

こうした中、日本政府は自衛隊を派遣する場合の
法的枠組みの整理に着手していますが、参加した場合、
イランが反発し友好関係が失われることへの懸念も強く、
まずは外交努力を重視しつつ現地の情勢や各国の動向を
注視していく構えです。

日本として大いに参考になるのは、
ドイツの選んだ方法です。

ドイツは、イランと交渉する余地があり、
ドイツの船を拿捕しないと約束させれば、
米国主導の有志連合に参加する必要はない、という
姿勢を示しました。

日本が米国に誘われるまま法律を整備して、
海上自衛隊の派遣をするという方法を取れば、
イランとの関係性は悪化します。

しかし、まだ日本とイランの関係性には「脈」があるので、
ドイツの方法を参考にすべきです。

「今は油を買うことはできないが、
トランプ大統領が退くのを待っている」など、
イランとの友好関係を維持することは可能だと思います。

米国に言われるがまま
海上自衛隊を派遣するのは愚策でしょう。

米国に強く要請されても
後方支援くらいに抑えられると思います。

米国には何か別の形で
要求を突きつけられる可能性もありますが、
それでもホルムズ海峡の問題については
米国との場外でイランとの信頼関係を維持していくのが
良いと私は思います。



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※この記事は8月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は安倍政権のニュースを大前が解説しました。

大前は
「外交交渉を上手くまとめるためには、順序が大切」
と述べています。

複数の問題が絡み合っているとき、
それぞれを独立事象として考えてしまうと
その取組の多くが徒労に終わる可能性があります。

ステークホルダーの利害関係をもとに各問題の絡み方を分析し、
どの問題から順に対処するべきか整理した上で
行動することが大切です。

2019年08月02日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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個人情報保護/東京電力HD〜現代における「優越的地位の乱用」は何か

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個人情報保護 「優越的地位の乱用」で指針案
東京電力HD 福島第二原発廃炉を正式決定へ

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▼個人情報の利用、ハッキングなどを対象にした新しい法案が必要
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IT大手による個人データの不適切な収集・利用を防ぐため、
公正取引委員会が検討している規制の指針案が先月16日、
明らかになりました。

これは、サイトでの購買履歴や位置情報を含め、
個人データを同意なく利用した場合、
独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」にあたると
規定するもので、公正取引委員会は8月にも指針案を公表し
年内にも実施する方針です。

これは重要かつ必要なことだと私も思います。

現代における「優越的地位の乱用」は何かと言えば、
収集したデータの勝手な使い回しです。

GAFAについては米国内でも問題視されていますが、
データを結びつけ、それを活用してポイントマーケティングを
仕掛けていくのは、とんでもない個人情報の侵犯です。

今現在においては、法律がずさん過ぎて対応できていません。

もっとルールを明確にし、必要に応じて
「反トラスト法」「独占禁止法」「個人情報保護法」など
何でも構いませんから、本格的に法律で縛るべきでしょう。

また同様に、法律が対応しきれていない問題の1つである
ハッキング行為についても、この機会に法律で
より厳密に規制することを検討するべきだと思います。

専門家の中には、ハッカーにやられたと認識している企業と
ハッキングされているのに認識していない企業しかない、と
話す人もいるほど、多くの企業がハッキングを
受けているとのことです。

個人情報の取扱いとともに、大きな犯罪でもある
ハッキングについても厳罰化するなど、
まとめて法案を作って欲しいと思います。



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▼1兆円という常識外の安全対策費を求められるのは、政府の対応に問題がある
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東京電力ホールディングスは先月24日、
福島第二原子力発電所の廃炉を近く決定すると
正式に表明しました。

また、この原発にある使用済み核燃料を保管する貯蔵施設を
敷地内に設置する考えも表明。

原発事故を起こした福島第一以外で
東電が廃炉を決めるのは初めてで、今後一般的な廃炉と同様に
1基あたり30年程度の工程で作業をすすめることになります。

福島第二原発は機能的には問題ありませんから、
使おうと思えば明日からでも稼働させることができます。

しかし、福島県民の感情を考えれば、
福島県知事が承諾する可能性はないでしょう。

そのようなことは、
東日本大震災直後からわかりきっていたことです。

他にやるべきことが山積みで遅くなったとはいえ、
今になってしまった東電の決定は
遅いと言わざるを得ないでしょう。

廃炉が決まれば、今後は燃料を取り出し解体し、
何もなかったように更地に戻します。

そこまでに約30〜40年の時間と、
2000〜3000億円の費用がかかると言われています。

それが4基あるわけですから、お金は全く足りません。

最近、東電は柏崎刈羽原子力発電所の6号機と7号機を
何とか稼働させたいと躍起になっています。

しかし、万一に備えて
「テロリストに襲われても冷却できるように」という
設備強化を迫られ、安全対策費として
約1兆1690億円もかかるとする新たな試算を出しています。

1基当たり約5500億円となると、
新しい原子炉を作るのと変わらない費用です。

今、中国ではウェスチングハウス社製の
加圧水型原子炉「AP1000」を何十基も建設中です。

この新型はどんなことがあっても、
最後まで冷却可能な設計になっています。

1基5500億円あれば、中国と同じ新しい原子炉を
作ったほうが安く上がるかもしれません。

安全対策費だけで総額1兆円超えというのは、
常識外の金額です。

このような事態を招いてしまったのは、
国民の不安・心配という感情があるため、
原子力規制委員会も厳しすぎるとも言える基準を
設けているからです。

例えば、対処すべきテロリスト攻撃も
定義があいまいなまま、最後には
「9.11のように飛行機が突撃してきたらどうするのか?」
というレベルまで対応することになり、その結果、
あり得ないほどの金額に膨らんでしまいました。

今の状況を見ていると、日本で原子炉を再稼働させるのは
もはや「経済的に」難しいと思います。

私は原子炉を稼働させられるなら、
そうするべきだと思っています。

原子炉を稼働させるメリットは無視できません。

一方で、国民が感情的に反対する気持ちもよくわかります。

そして、これは政府が福島第一原発事故で
何が起きたのか、という真実を国民に
真正面から説明していないからだと思います。

私はこのことを政府に何度も話し、
また原子炉を稼働させた場合、
どのように最終的な安全体制を構築するべきかという
方法についても説明しました。

地元、当事者、政府の3者間でどのような役割を果たし、
どのような組織を作れば良いのか。

政府には担当組織を作るように助言しましたが、
それすら担当者が変わり、今でも実現していませんし、
その他のことも何1つ形になっていません。

これではダメです。

福島原発事故と同じような状況になったら、
また混乱に陥るだけです。

私は基本的に原発賛成論者ですが、今の政府を見ていると
彼らに任せるのは不安だと感じてしまいます。

残念ですが、政府が今のままなら
やめたほうが良いと言うしかありません。



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※この記事は7月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は個人情報保護のニュースについて、
大前が解説しました。

大前は
「現代における『優越的地位の乱用』は何か」
と述べています。

過去に決められた規則は、
あくまでもその時代背景をもとに作られています。

その内容を現在もそのまま参考にするのではなく、

「現代にとっての○○は何か」

というところまで思考し、物事の本質を捉えることが大切です。

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