2018年05月18日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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武田薬品工業/リクルートHD/富士フイルムHD/米携帯電話大手〜武田薬品の未来は日本企業ではなくなる

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武田薬品工業 シャイアー買収で合意
リクルートHD 米グラスドアを買収
富士フイルムHD 米ゼロックス買収手続きに一時停止命令
米携帯電話大手 2019年に合併で合意

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▼武田薬品の未来は日本企業ではなくなる
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武田薬品工業は8日、アイルランド製薬大手シャイアーの買収で合意したと発表しました。
買収額は約460億ポンド(約6兆8000億円)で
日本企業による海外企業の買収では過去最大となります。

端的に言うと、これで武田薬品は今後日本人の経営者が主導する可能性は低く、
日本の企業ではなくなっていくことになると思います。
クリストフ・ウェバーCEOを選んだ時から、
このような道が決まっていたとも言えます。
ウェバー氏にしてみれば、依頼どおりにCEOも務めたし、
世界トップ10に入ったという自負があるでしょう。
もしクビになるなら、どうぞご自由にという心境だと思います。

シャイアーの買収にあたって厄介なのは、
企業の内部・中身が一体化していないことです。
シャイアーは、特殊な薬を開発していた小さい企業をいくつも買収を重ね、
最終的に税金の安いアイルランドへおさまっているという企業です。
武田薬品はまとまりがある良い企業ですが、
この買収により変質してしまうでしょう。そう考えると、
よほど天才的な経営手腕を発揮する日本人が現れない限り、
武田薬品を経営することは難しいと思います。
ルノー・日産連合と同様です。

武田薬品とシャイアーが合併すると、
売上高は約3.3兆円で製薬会社としては
世界で6位〜7位の巨大企業になります。
その規模の企業を牽引するという意味でも、
日本人経営者が誕生するのは難しいと感じます。

武田薬品の株価は下落傾向が見られます。
シャイアーは良い薬を保有していますが、
主なマーケットは米国なので、
日本のマーケットにおいての好材料とはなっていないのだと思います。


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▼リクルートであっても多国籍企業への適応は難しい
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リクルートホールディングスは9日、
米国のオンライン求人サービス大手グラスドアを
約12億ドル(1285億円)で完全子会社化すると発表しました。
グラスドアは現役社員や元社員の口コミを集め、
それをもとに求人企業とマッチングするサービスを展開しているということで、
2012年に買収したインディードとシナジー効果を発揮できるとしています。

CMでも話題のインディードをすでに買収しているリクルートですが、
資金は十分に持っているので、今後も世界一になるまで
拡大を目指していくことでしょう。
まだ世界トップのスイスのアデコに比べれば小さいですが、
それでもようやく6合目レベルに到達したと言えます。

今後は、より「人」の問題が顕在化してきます。
リクルートと言っても、アデコのような多国籍企業を
経営する体質は持っていません。
この問題をどのように解決していくのか。
経営は難しい局面を迎えます。
日本企業の多くが海外の企業を買収したあと、
この手の問題に躓いてしまいます。
リクルートは日本企業の中では柔軟な体質を持っていると思いますが、
それでもやはり難しい領域の問題だと私は思います。


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▼富士フイルムは撤退も考慮すべき
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富士フイルムホールディングスが
米事務機器大手ゼロックスを買収する計画について、
米ニューヨーク州上級裁判所は、先月27日、
ゼロックスに対して手続きの一時停止を命じました。
「ゼロックスの価値を過小評価している」とする大株主の評価を認めたもので、
これに対して富士フイルムは上訴する姿勢を示しましたが、
今後買収案の変更などを迫られる可能性もあります。

この動きは、カール・アイカーン氏が反対して
値段を釣り上げているだけでしょう。富士フイルムとしては、
釣り上がった高値で買収する結果にならないように
注意してもらいたいところです。

富士フイルムの古森会長の威信に傷がつくかも知れませんが、
無理に高値掴みをする結果を招くなら、
手を引くというのも選択肢の1つだと思います。
無理に意地をはるべきではないでしょう。


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▼孫正義社長はスプリントの経営再建に失敗した
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ソフトバンクグループ傘下で米携帯電話4位のスプリントと
3位のTモバイルUSが2019年を目処に合併することで合意したと発表しました。
合併に伴いソフトバンクは議決権を間接的に公使できる権利を
ドイツテレコムに付与する方針です。

ソフトバンクの孫正義社長は、
スプリントの経営再建に失敗したと言われています。
Tモバイルが契約者数を伸ばしているものの、
スプリントとTモバイルが合併しても、
上位2社であるベライゾンとAT&Tに追いつくことはできません。
つまり、3位と4位が合併しても3位のまま、という状況です。

孫正義社長としては、スプリントが原因となって
ソフトバンク自体の評価が伸び悩む事態を避けたいと考えた結果、
ドイツテレコムという選択肢が出てきたのだと思います。
もちろん、5G関連投資を一緒に進めるという必要性もあるでしょうが、
それが一番の理由ではないと私は見ています。

もっと別の奇策を狙っているとする記事もありますが、
もしそんなことが可能ならば、
スプリントがTモバイルの後塵を拝する結果になっていること自体が
あり得ないと私は思います。実際にスプリントの客数は減り、
安売りしているという事実もあります。

そのような状況で、スプリントのマルセロ・クラウレ氏を
ソフトバンク本体のCOOに選任しました。
私としては、ニケシュ・アローラ氏の失敗を思い出してしまいます。
今度こそ本当に大丈夫なのか?
不安を拭い去ることができない心境です。


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※この記事は5月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、注目企業を中心にお届けいたしました。

武田薬品工業はシャイアーの買収で合意し、
買収額は約460億ポンド(約6兆8000億円)で
日本企業による海外企業の買収では過去最大となります。

これに対して大前は、シャイアーの買収にあたって厄介なのは、
企業の内部・中身が一体化していないことであり、
よほど天才的な経営手腕を発揮する日本人が現れない限り、
武田薬品を経営することは難しいと指摘しています。

M&Aの成功の条件は、買収直後から経営力を発揮し、
経営資源を統合させるプロセス(PMI)を徹底し、
スピーディーに統合を完了させることです。

買収に成功したら終わりというものではなく、
早期にシナジー効果を実現するために、
経営トップの強いリーダーシップによって
迅速な統合を進めていくことが必要となります。

2018年05月11日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米フェイスブック/米クアルコム/米インテル〜自動運転ソリューションに向けて、自己責任問題について政府は真剣に考えるべき

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米フェイスブック 社員年収約2600万円
米クアルコム オランダNXP買収承認に慎重姿勢
米インテル 他社にない自動運転ソリューションを提供

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▼フェイスブックは、インスタグラムを伸ばすべき
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米フェイスブックが従業員らに支払った報酬の中央値が
2017年に24万ドル(約2600万円)だったことが分かりました。
米ツイッター(同16万ドル強)の1.5倍、
ソニーの3倍にあたるということで、
世界的にビッグデータ解析などの
専門人材の争奪戦が激しさを増す中、
各社の危機感が強まってきています。

個人情報の流出問題に揺れ、
株価も下落したフェイスブックですが、
それでも20億人を超えるアクティブユーザーを抱え、
利益は積み増しており、財務諸表は強い状況です。

フェイスブックがこれまでに買収した会社は数多くありますが、
その中で注目したいのがインスタグラムです。
利用するSNSの年代別の違いを見ると、
フェイスブックは65歳以上でも40パーセントが利用しています。
一方でインスタグラムは、65歳以上の人が利用する割合は小さく、
若者利用の傾向が明らかにフェイスブックより強くなっています。

今後フェイスブックが評判を落としていく可能性があるので、
若者層からの指示が強いインスタグラムを伸ばすのは
面白い選択になると思います。
しかも、インスタグラムであれば、
個人情報についての不安もより軽微でしょう。
フェイスブックが今抱えている厄介な問題を解決し、
その悪いイメージを払拭していくという意味でも
インスタグラムの活用は効果があると思います。

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▼NXP買収を中国政府が承認しないのは、米国政府への嫌がらせ
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米半導体大手クアルコムによる
オランダの車載半導体大手NXPセミコンダクターズの買収を巡り、
独占禁止法の審査を進める中国商務省は先月19日
「業界に深遠な影響を与え、競争に不利となるかもしれない」
と承認に慎重な姿勢を示しました。

メーカーの売上高を見ると、サムスン電子、インテル、
SKハイニックス、マイクロン・テクノロジー、クアルコム、
と続きます。そして、東芝とウエスタンデジタルが続き、
その下に位置しているのがNXPです。

NXPの規模は小さく、クアルコムがNXPを買収するといっても、
半導体業界の勢力図を大きく塗り替えるほど
影響力があるものではありません。
それにも関わらず、中国政府が買収を承認しないのは、
なぜなのか?

一言で言えば、これまで米国政府によって受けた
「嫌がらせ」のお返しといったところでしょう。
ZTEが部品調達などにおいて米企業との取引を
禁止されたこともありましたし、
シンガポールのブロードコムによるクアルコムの買収も、
米国政府によって承認がおりませんでした。

今後半導体業界では5Gの戦いが始まります。
その際には、中国のファーウェイとクアルコムが
競合するのは必至です。
クアルコムがNXPを買収することで、少しでも欧米系企業が強くなってしまうのを
中国政府としては防ぎたいと考えもあるでしょう。
中国政府の衣の下から鎧が見えているといった状態です。

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▼自動運転ソリューションに向けて、自己責任問題について政府は真剣に考えるべき
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米インテルの日本法人は先月17日、
「イスラエルの画像認識用半導体メーカー、
モービルアイとインテルの製品を組み合わせ、
他社にない自動運転ソリューションを提供する」
方針を示しました。
モービルアイはインテルが17年に買収した
画像処理半導体メーカーで、
次世代自動車向け半導体の覇権を巡り、
画像処理に強い米エヌビディアに対抗する考えです。

モービルアイとエヌビディア、
この2社が今後の画像認識の技術を提供する
という大きな流れになっています。各自動車メーカーも、
画像認識の分野においてはどちらの陣営に着くのかを
決めていくことになるでしょう。

今後の展開を考えたときに、
1つ大きな問題だと私が感じているのが
「事故が起こった際の責任」を誰がとるのか、ということです。
すなわち、自動運転という機械の判断によって
事故が発生したとき、
その事故の原因をどこに求めるのかということです。

機械を許可した政府なのか、
あるいはその機械の承認を求めたメーカーなのか、
あるいは機械を利用した配車アプリの会社なのか。
現時点においては、誰が責任を負うべきなのか
決着はついていません。
モービルアイにせよ、エヌビディアにせよ、
最終的な責任を誰が負うのか決まっていない中で、
激しい開発競争を行っています。

なぜなら、責任問題の決着を待っている暇などなく、
どんどん技術を前進させていかないと、
自動運転ソリューションで遅れをとることになり、
それは次の自動車市場全体の戦いにおける敗北を
意味するからです。

「機械の判断に対して誰が責任をとるべきなのか」
という問題については、
政府がもう少し真面目に取り組むべきものだと私は思います。



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※この記事は5月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、世界の注目企業を中心にお届けいたしました。

自動運転ソリューションに向けて、モービルアイとエヌビディアの2社が
今後の画像認識の技術を提供するという大きな流れになっています。

「機械の判断に対して誰が責任をとるべきなのか」という問題について
事故の原因をどこに求めるのかが決まっていない中で、
激しい開発競争が行われています。

しかし、どんどん技術を前進させていかないと、
自動運転ソリューションで遅れをとることになり、
それは次の自動車市場全体の戦いにおける敗北を意味すると
大前は記事中で指摘しています。

自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)が、
現在または将来にどのような影響を与えるかを
把握・予測することは、事業を成功に導くために不可欠です。

市場や自社に対してどのような影響が与えられるかを
事前にシミュレーションしておくことが重要です。

2018年05月04日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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朝鮮半島情勢〜南北の平和協定は、日本にとって大きな負担になる可能性が大きい

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朝鮮半島情勢南北首脳が11年ぶり対面

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▼南北の平和協定は、日本にとって大きな負担になる可能性が大きい
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韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、
先月27日南北の首脳としては11年ぶりに対面し、
金正恩氏は北朝鮮の最高指導者として初めて
板門店の軍事境界線を超えて韓国に入りました。
その後、両首脳は平和の家で約1時間40分
首脳会談を行ったほか記念食事や野外散策などで
さらに対話を重ね、夜には朝鮮半島の平和と繁栄に向けた
「板門店宣言」に署名しました。

私も「板門店宣言」を読みましたが、
かなり問題が多いと感じました。宣言の内容は、
終戦協定から平和協定という流れを、
中国と米国にも協力してもらいながら南北間で
実現していこうというものです。
今年中に平和協定まで実現させたいということですが、
何をもって平和協定の中身にするのか、
その具体的な内容や方法などについて言及されていません。

例えば、「非核化」は北朝鮮のみの非核化なのか、
それとも韓国も含めて朝鮮半島全体の非核化なのか。
このあたりは米国も懸念しているところでしょう。
今回の宣言で、文在寅大統領が署名したのは
韓国も含めて朝鮮半島全体の非核化です。
そうなると、米軍は韓国からの撤退を余儀なくされます。
仮に米軍が韓国に駐留するとしても、
核の保有は認められないでしょう。

この展開になったときには、日本にとっては
非常に大きな問題が生じます。すなわち、
中国、北朝鮮、ロシアに対する防衛の最前線が
日本になるということです。具体的には、
日本の佐世保と沖縄が核を保有する最前線基地になるでしょう。
これは日本にとっては非常に負担が大きいと思います。

米朝対談に臨むトランプ大統領の言動を見ていると、
「これまでの大統領にできなかったことをやりたい」
という功を焦る姿勢が伺えます。そうなると、
「自分は朝鮮半島の終戦宣言を平和宣言に書き換えた功労者」
になるため、韓国からの米軍撤退を受け入れてしまう可能性があります。
また米軍にとっては、
北朝鮮の短距離ミサイル1000発の射程圏にある
韓国にいることは非常にリスクが高く、
その意味でも韓国から引き上げることを
歓迎する気持ちもあるでしょう。


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▼今の流れのままだと、竹島問題も拉致問題も何1つ解決しない
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南北が平和協定を締結すれば韓国も北朝鮮の脅威から開放され、
北朝鮮のICBMの発射中止により米国も一安心でしょう。
しかし、いまだに北朝鮮には短距離、中距離ミサイル、さらには
ミサイル以外の大量の破壊兵器・化学兵器が残っています。
これらのターゲットになるのは日本だけになってしまいます。
日本としては、日本だけが丸裸にされているような
状況になるのを、指をくわえて見ているわけには
いかないと思います。

このような状況の中、
北朝鮮や韓国との交渉をどのように進めていくのか、
安倍首相にとっては大きな課題でしょう。
安倍首相は北朝鮮との拉致問題の解決に力を入れたいようですが、
北朝鮮側はスパイ容疑で逮捕した3人の米国人の開放や、
日本や韓国の離散家族の交流については明言する一方で、
日本と韓国の拉致問題については何一つ言及していません。
おそらく、拉致された人を探し出すのは現実的に難しく、
交渉材料に含めたくないのでしょう。
トランプ大統領としては、3人の米国人が解放されるだけで
十分な成果といえるでしょうから、
安倍首相が協力を要請しても日本の拉致問題の解決にまで
踏み込んでこない可能性が高いと思います。

韓国との関係においても、南北首脳会談の夕食会に
竹島を描いたデザートの飾り付けが出されたことに対して
日本政府は韓国に抗議しましたが、
そもそも会談が行われた部屋の置物に
竹島が描かれていることのほうを問題視するべきだと思います。

竹島問題について言えば、サンフランシスコ条約で
日本の領土として認定されているものです。
ところが、サンフランシスコ条約の発令直前に韓国が、
いわゆる「李承晩ライン」を国際法に反して
一方的に制定しました。
根本的な問題は、当時の鳩山一郎首相が抗議のために
海上保安庁を派遣したものの、
そのまま追い返されてしまったということです。
本質的に領土というものは、戦ってでも確保する必要があります。

韓国と北朝鮮がこのまま平和協定の制定へと動くとすれば、
竹島問題にせよ、拉致問題にせよ、日本は蚊帳の外に追いやられて、
何を言っても聞いてもらえない可能性が非常に高くなります。
それを踏まえて、安倍首相としては朝鮮半島や米国に対して
どのような外交交渉を行っていくのか、
重要な局面を迎えていると思います。



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※この記事は4月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、朝鮮半島情勢を中心にお届けいたしました。

11年ぶりの南北首脳会談が実現し、
韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が
共同宣言を発表しました。

朝鮮半島を中心とした東アジア情勢に大きな変化をもたらすとともに、
日本の外交・安全保障政策にも影響を及ぼすのは確実と見られています。

朝鮮半島の今後のシナリオについて記事中で言及していますが、
現在世界中で起こっていることや、今後起こりそうなことに注意を払い、
重要な変化を迅速に認識し、変化に適応することが大切です。

事前に複数のシナリオを想定し、
どの状況にも耐えうるようにすることで、
想定外の出来事でも慌てずに意思決定をすることができます。

2018年04月27日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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北朝鮮情勢/日米貿易〜トランプ大統領は、「TPPが何か」を本当のところは何も理解していない

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北朝鮮情勢 核、ICBMの実験中止を表明
日米貿易 「2国間貿易協定の方が望ましい」〜米トランプ大統領〜

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▼北朝鮮のICBMの実験中止は、まともに信じるべきではない
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北朝鮮の金正恩委員長は20日、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を
中止する方針を表明しました。「核武器の兵器化完結が検証された状況で、
北部核実験場もその使命を終えた」と述べたもので、
以降は強力な社会主義経済の建設と周辺国との緊密な連携と対話を
積極化する方針を示したとのことです。

この金正恩委員長の発言は信じないほうがいいと思います。
現在の北朝鮮の状況は、ICBMの開発が最終段階まで来ているものの、
最後に米国まで届くかどうかの瀬戸際で、そこに核を搭載して
米国本土で爆破できるかどうかという点についても、
最後の最後で苦戦しているのだと思います。

最後まで開発をしようとしていたのに完成しなかったとなっては立つ瀬がないので、
自ら「中止」したとすることで交渉材料の1つにできると考えたのでしょう。

この発言通りの方針であれば、ICBM以外の中距離、短距離ミサイルの開発も
やめるのが当然ですが、その点については一切触れていません。
また核放棄についても明言していません。

このような北朝鮮の背景を理解せず、トランプ大統領は脳天気に
「大きな進展で今後が楽しみだ」などと発言しています。
こんな北朝鮮の交渉術に引っかかってしまったら、不幸以外の何物でもありません。

これまでにも、北朝鮮との非核化交渉には失敗の歴史があります。
1994年からの米朝対話も、2003年からの6カ国協議も全て北朝鮮は反故にしてきました。
誰かがトランプ大統領にこの歴史を解説してあげるべきだと思います。

北朝鮮が恐れているのは、リビアのように米国主導で核放棄を強制されることです。
最低でも体制の保証を得たいと思っているでしょう。今回の金正恩委員長の発言の意図、
本当に意味するところを理解せず、トランプ大統領が信じてしまうのは、情けない限りです。
あまつさえ「この条件を引っ張り出したのは自分の功績」だと勘違いして、
秋の中間選挙に向けて好材料だと安く飛びつくのは、やめてもらいたいところです。


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▼トランプ大統領は、「TPPが何か」を本当のところは何も理解していない
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トランプ米大統領は18日、安倍首相との一連の会談後の共同記者会見で
「米国にとって2国間の貿易協定の方が望ましい」と述べ、
日米自由貿易協定(FTA)を含む交渉に意欲を示しました。
一方、安倍首相は「わが国はTPPが日米両国にとって最善と考えている」と強調。
自由貿易に関する認識の開きが浮き彫りになりました。

もともとトランプ大統領は選挙キャンペーン期間中からTPPを離脱すると公言し、
実際にTPP離脱のサインをしました。今になって、条件がよければ
TPPに復帰しても良いなどと発言していますが、正直に言ってトランプ大統領は
「TPPが何か」を本当のところは何も理解していないと思います。

例えば、TPPに関して「良い条件」「悪い条件」の具体的な内容について話してほしいと言っても
まともな回答は得られないでしょう。「今、なぜTPPがダメなのか?」と聞いても同様でしょう。
何も勉強せずに平気であれこれと発言してしまうのが、トランプ大統領の特徴です。

日本と米国との間に巨大な貿易赤字があり、これを是正することが重要だと、
トランプ大統領はしきりに訴えています。そして2国間協定(FTA)に追い込もうとしています。
FTAに関しては、過去の日米貿易戦争の頃に何度も検討したことがありますが、
米国は理不尽に業界の利益丸出しで交渉してくるため、非常にやりにくいところです。

そもそも、日本は過去30年間にわたって貿易赤字の解消のために米国と交渉を続けてきて、
自動車関連業界を中心に製造業の拠点の多くを米国に移しました。
その結果、米国で多くの雇用を創出しています。こうした貢献を全く知らずに、
貿易赤字を解消しろの一点張りで騒ぎ立てているのがトランプ大統領です。

30年前の無知な状況を繰り返しているだけで、勉強する気すらないのでしょう。
状況や相手のことを理解しようとはせず、とりあえず威圧的な態度を取って
相手から1つでも2つでも有利な条件を引き出そうという、
いわゆる「ディール」しかできない人物なのだと思います。

今米国は中国に対して、鉄鋼やアルミなどに関税をかけるなど貿易戦争を仕掛けていますが、
これは当然のことながら、中国に対してだけでなく、
オーストラリア、ブラジル、日本、シンガポールなど他国にも大きな影響を与えます。
それ故一筋縄ではいきません。

だからこそ、TPPで多国間協議をすることには大きな意味がありました。
そして、言い出したのはそもそも米国です。こうした歴史的な背景や意義を全く理解もせず、
勉強もせずに、言いたいことを言っているだけの人物など、私に言わせれば、
まともな話をするのは無駄だと思います。



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※この記事は4月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、世界情勢の話題を中心にお届けいたしました。

日米自由貿易協定(FTA)を含む交渉に意欲を示したトランプ大統領。
日本との自由貿易に関する認識の開きが浮き彫りになりました。

これに対して大前は、トランプ大統領は「TPPが何か」を
本当のところは何も理解していないと指摘しています。

今になって、「条件さえ良ければ」TPPへ加盟の可能性も
示唆しているトランプ大統領ですが、
意思決定を行うにあたっては、正しく問題を認識し、
問題を解決するための具体的な行動案を設計し、
その効果や影響、費やされるコストを評価し選択する必要があります。

このように、影響の連鎖の探求やリスク許容限界の設定などを
行ったうえで、意思決定を行うことが重要です。

2018年04月20日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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RIAZAPグループ/日野自動車/ファーストリテイリング/武田薬品工業 〜RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点

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RIAZAPグループ 湘南ベルマーレの経営権取得
日野自動車 商用分野で提携交渉
ファーストリテイリング 売上高1兆1867億円
武田薬品工業 「5兆円買収」でお粗末な市場対応

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▼RIZAPと武田薬品が仕掛けるそれぞれの買収の問題点
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フィットネスジム運営のRIZAPグループは6日、
Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表しました。
現在の筆頭株主である三栄建築設計と合弁会社を設立し、
ベルマーレが実施する約1億円の第三者割当増資を引き受けるとのことです。

今回の買収は金額がそれほど高くないので
目くじらを立てるほどのものでもないかもしれませんが、
お金が有り余っているという理由で買収をするのは
経営者として「緩い」と私は思います。
お金があると色々な人が近づいてきます。
大切なのは買収をした後の経営力があるかどうかです。

RIZAPの過去を振り返ると、これまでに成功した事業はほぼ1つだけで、
その他の事業はほとんど失敗しています。
経営で重要なのはKFSであり、そこに集中するべきです。
RIZAPはまだ無駄遣いをできるような時期ではないと思います。

成功したRIZAPのダイエット・減量事業にしても、
その成功ノウハウはインストラクターの教え方に依存する部分が大きいと私は感じます。
優秀なインストラクターであれば将来独立する危険性も高いですし、
その他の面も含めまだまだ企業として土台を安定させなければいけないでしょう。
むやみにあれこれと買収をしている暇はありません。

ビジネス・インサイダーは13日、
『「5兆円買収」でお粗末な市場対応』と題する記事を掲載しました。
アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を検討していると報じられ、
武田薬品工業の株価が急落しました。
買収額が約5兆3000億円にのぼることを嫌気したもの。
これを受けて行われたウェバー社長の説明も、
資金調達の方法に触れないなど不十分なもので
市場の疑念はさらに深まったとしています。

長谷川会長も退任し、ウェバー社長のタガが外れても
抑えることができる人がいないのだと思います。
ウェバー社長は目付け役がいなくなり、シャイアーを買収したら、
すべてが上手くいくという夢物語を見ているように私は感じます。

5兆円の会社を買収して、その後の勝算はどのように描いているのか。
武田薬品は2008年にミレニアム、2011年にはナイコメッドを買収し、
相当な資金を使いました。今ようやく落ち着きを取り戻してきたタイミングで、
5兆円の買収をする意義があるのか。不安視されても致し方ない状況だと思います。

純損益は回復したとはいえ、一昔前に比べると大したレベルではありません。
そして何より問題なのは財務状況です。かつては2兆円ほどあった現金も、
ナイコメッドとミレニアムの買収などもあり、今は2000億円ほどしかありません。

そんな状況にも関わらず、武田薬品は時価総額に対して
3〜5%という高配当をしており、
最近になって社債と借入が大きく増えているのも頷けます。

武田薬品の時価総額は株価が下落し、
約3.9兆円に落ち込んでいます。このような財務状況にあって、
自社よりも高い時価総額のシャイアーを買収することになります。
果たして資金調達はどうするつもりなのか?
ここが一番大きな問題だと思います。



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▼VWと日野という意外な組み合わせに期待/ユニクロの現状は柳井社長の思惑通り
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日野自動車は12日、独フォルクスワーゲンの子会社と
トラックやバスなど商用車の分野で提携交渉に入ると発表しました。
電動化や自動運転技術の開発、物流など幅広い分野で協業する方針です。
これについて日野自動車の下社長は、
「商用車の先進技術は乗用車の延長線だけでは対応できない」と述べ、
親会社トヨタとの連携だけでは生き残れないと強調しました。

フォルクスワーゲンもディーゼルの排ガス問題を乗り越えて上向いていたので、
この提携は少々意外でしたが、絶妙です。
世界的に見るとトラックやバスといった商用分野には、
スウェーデンのスカニア、ドイツのマンといった強豪がいます。
この欧州勢に食い込んでいくためには、
フォルクスワーゲンが日野自自動車と手を組むのは相性がいいと思います。

欧州では人手が不足しているので、
トラックやバスを連結するという需要が高くなっています。
日野自動車は技術力が高く、こうした需要に対応しやすくなるでしょう。
最終的には、自動運転で2台のトラックやバスを
連携するレベルまで目指していると思いますが、
大掛かりな実験は日本ではなかなか難しいので、
欧州に進出することは日野自動車にとってもメリットは大きいでしょう。

トラックの世界販売シェアを見ると、ダイムラーを筆頭に、
中国の第一汽車、東風汽車など、さらにはインドのタタと続いていて、
フォルクスワーゲンと日野自動車は10位前後に位置しています。
三菱ふそうも取り込み、圧倒的なシェアを誇っているダイムラーに対抗するためには、
フォルクスワーゲンと日野自動車が抜本的な技術提携をして
力を合わせる時期なのかも知れません。
ダイムラーへの対抗馬という意味では、
意外な組み合わせで面白いことになることを期待したいところです。

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが
12日発表した2018年2月中間連結決算は、
売上高が前年同期比16.6%増の1兆1867億円、
営業利益が30.5%増の1704億円で、中間決算として過去最高。
アジアなど海外事業の伸びが大きく、
中間決算では初めて海外売上高が国内売上高を上回りました。

柳井社長は、売上が1兆円突破したときに5兆円まで目指すと発言していました。
今順調に売上は2兆円をクリアし、利益も出しています。
そして、海外事業が国内事業を上回るというのも、
柳井社長の発言通りの結果になっています。
ユニクロの店舗数推移を見ると、海外が激増していることがわかります。
海外にも非常に大きな店舗も作っていますし、営業利益も十分です。
柳井社長が目指す目標に向かって、努力してきた賜物といえるでしょう。



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※この記事は4月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

Jリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得すると発表したRIZAPグループ。

これに対して大前は、まだ無駄遣いをするような時期ではなく、
経営で重要なKFSに集中すべきだと指摘しています。

KFSは、競争環境において他社との優位性を築くのに、
最も重要な要素となります。

経営には、必ず1つか2つの成功の鍵があり、事業というのは、
良いことを全部をやっていては駄目になります。

本当にこれだと思ったことを徹底して実行することで、
事業の成功に近づくことができます。

2018年04月13日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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自動運転規制/米テスラ/ライドシェア/ドイツ自動車大手 〜ライドシェアの未来像と日本メーカーにとっての危機とは?

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自動運転規制 自動運転事故は車の所有者に賠償責任
米テスラ 「モデルS」のリコール開始
ライドシェア 大手米ウーバーのアジア事業を買収
ドイツ自動車大手 移動サービス事業を統合

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▼ライドシェアの未来像と日本メーカーにとっての危機とは?
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東南アジア配車サービス最大手のグラブは先月26日、
米最大手ウーバーテクノロジーズの東南アジア事業を買収すると発表しました。
ライバルを買収し、東南アジア市場で圧倒的なシェアを確保する考えですが、
これについてフィリピン競争委員会は競争法に関する審査を終えるまで
フィリピン国内の事業統合を延期するよう命令を出したとのことです。

グラブは非常に大きな会社へと成長しつつあります。
実はこの買収の背景にはソフトバンクの差し金もあったのでは?
と言われています。ソフトバンクは、グラブにもウーバーにも投資をしています。
ウーバーは、中国市場を滴滴出行に売却する形で撤退しましたが、
フィリピンでも同じような形をとるつもりなのでしょう。

結果として、東南アジアはグラブ1社、
中国は滴滴出行1社が独占する形になります。
フィリピンでは選択肢が少なくなるということで、
今回の件がいわゆる独禁法に抵触するのではないかと指摘を受けています。

ライドシェアの会社は、今後車が自動運転になることで
さらに重要度が増していくと思います。
自動車メーカーは直接顧客とつながっていませんが、
ライドシェアの会社は顧客と直接つながります。
その点で、自動車メーカーよりも強さを発揮してくる可能性が高いでしょう。

独ダイムラーと独BMWは先月28日、ライドシェアなどの
移動サービス事業を統合すると発表しました。
ダイムラー子会社のカー2ゴーとBMW傘下のドライブナウを
軸に幅広いサービスで統合するもので、
BMWのハラルト・クリューガー社長は
「統合は新しい競合への強いメッセージだ」と語りました。

バンクーバーなどで私が見かけた光景から言えば、
カー2ゴーの影響は相当大きいと感じます。
約3000台のメルセデスがばらまかれていて、
消費者はスマホで予約して好きなときに乗ることができ、
自分で車を所有する必要はありません。
それでも都合がつかない場合には、
ウーバーを利用すれば事足りてしまいます。

ダイムラーとBMWが競合するのではなく、
統合するという選択肢をとったのは、
日本の自動車メーカーにとっては大きな脅威だと思います。
こうした移動サービスがさらに普及すると、
あえてトヨタや日産の車を選ぶ人は少なくなる可能性が高いからです。

ちょっとした距離を乗るだけであっても、もし選べるのであれば、
「ベンツSクラス」に乗りたいという人は多いでしょう。
逆に、安さを追求するのであれば、小さい車を選択すればいいだけです。
日本車は、高すぎず安すぎず、という中間層に位置しているので、
選ばれなくなる可能性が懸念されます。
日本のメーカーはこの脅威を感じて、準備をしておくべきだと思います。

外国勢に目を向けると、ディーゼルの燃費不正問題で
大炎上したフォルクスワーゲンが、生き残るのではないかと、
ビジネスウィーク誌で特集されていました。
一時期は倒産するかもしれないと言われていましたが、
一気にEVへ舵を切って将来像を示した戦略が功を奏した形です。

また、不正問題発覚で株価は下落しましたが、
中国市場で販売が好調だったおかげで
世界的に見ると売上はそれほど減少しませんでした。
中国では良くも悪くも、この程度の不正は
大きく問題視されなかったということでしょう。
逆に米国では不正について大騒ぎになりましたが、
もともと販売が不調だったので売上に対する影響は少なかった
という何とも皮肉な結果になりました。


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▼自動運転の賠償責任は、将来的に車種の売れ行きを大きく左右する
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政府は先月30日、自動運転中の車の事故について、
原則として車の所有者に賠償責任を負わせる方針を決めました。
これは運転手が乗った状態で限られた条件で運転を自動化する
「レベル3」までが主な対象で、メーカーの責任は車のシステムに
明確な欠陥がある場合のみとする方針です。

これは、もしかしたら大変な事態を招いてしまうかも知れません。
この場合、もし自動運転が可能な車種について
事故率のデータやレポートが発表されたら、
特定の車種に注文が殺到する可能性があります。

車の所有者として賠償責任を負わされるとしたら、
事故が少ない車種を購入したいと思うのは自然な流れでしょう。
もしそうなれば、統計的なデータや消費者レポートのようなものが
車のシェアに多大な影響を及ぼすことになるでしょう。

私としてはレベル3の自動運転くらいまでは、
このような規制については発表せず、
もう少し見守る姿勢を取った方が
良かったのではないかと思っています。

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米電気自動車(EV)専業のテスラは先月29日、
主力車種「モデルS」のリコール(回収・無償修理)
を始めたと明らかにしました。
寒冷地で使われる路面凍結防止剤の影響で
パワーステアリングのモーターを固定しているボルトが
腐食する恐れが判明したということで、
2016年4月以前に製造した12万3000台が対象となるとのこと。
ブランドイメージのさらなる毀損につながる可能性があります。

苦戦続きだった「モデルS」について、
ようやく量産のメドがついてきた矢先に、
このリコール問題が発覚しました。
米国の自動車メーカーの業績と時価総額を見ると、
テスラは売上高ではフォードやGMの10分の1にすぎないのに、
時価総額では両社に匹敵するほど評価されています。
一時期に比べると時価総額はやや下がりましたが、
それでも市場の期待は非常に大きいことが伺えます。

エイプリルフールの日に、イーロン・マスクCEOは
「イースターエッグを土壇場で大量販売するなど
資金調達に奮闘したにもかかわらず、
残念ながらテスラは完全に経営破綻してしまった」
と冗談ツイートをしていましたが、
テスラの置かれている状況を考えると、
こんな冗談はやめてほしいところです。
疑う余地がないほどIQが高いイーロン・マスク氏ですが、
EQはそれほど高くないのかもしれません。

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※この記事は4月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、自動車業界の話題を中心にお届けいたしました。

ライドシェアなどの移動サービス事業を統合する
と発表した独ダイムラーと独BMW。

これに対して大前は、ダイムラーとBMWが
競合するのではなく、統合するという選択肢をとったのは、
日本の自動車メーカーにとっては大きな脅威だと指摘しています。

今回のダイムラーとBMWの例のように、
グローバル化、競争激化、技術革新のスピードが上がり、
企業が自社の経営資源のみで成長を目指すことが
難しくなっていることから、戦略的提携が加速しています。

連携や提携で補完的な機能分担や価値提供を行うことで、
高い競争力を獲得し、競合に対する持続的な優位を
確保することができます。

2018年04月06日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米フェイスブック/個人情報流出問題/米アマゾン・ドットコム 〜 フェイスブック問題の本質は、「完全に」アカウント削除ができないこと

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米フェイスブック 時価総額約8兆4000億円減
個人情報流出問題 シリコンバレー、始まった「逆回転」
米アマゾン・ドットコム 時価総額約81兆8000億円

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▼フェイスブック問題の本質は、「完全に」アカウント削除ができないこと
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フェイスブックの個人情報が流出していたことが発覚して以降、
株価が先月27日までに18%下落し、時価総額も約8兆4000億円減少しました。
沈静化へ向けて、マーク・ザッカーバーグCEOは、
議会で証言する考えを示していますが、
一部の投資家からは今回の件を受けて、
米国内外でフェイスブックやグーグル、ツイッターに対して、
より厳しい規制が課されるのではないかと懸念が上がっています。

このフェイスブックの問題は非常に深刻です。
フェイスブックの株価を見ると大暴落というほどではありませんが、
18%の下落は大きいと思います。米国上場企業の時価総額を見ると、
アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフトに続いて、
バークシャー・ハサウェイが5位にランクインしています。
さらに中国アリババ、JPモルガン、ジョンソンアンドジョンソン、
エクソンモービルが上がってきています。
これまで上位はIT企業が独占してきましたが、
この1ヶ月間のIT企業の時価総額の下落は非常に激しいものになりました。

環境、社会性、ガバナンスの頭文字をとったESGという考え方があります。
投資判断として、財務諸表ではなく、ESG要素を考慮する投資を「ESG投資」と呼び、
2006年アナン国連事務総長(当時)が機関投資家に呼びかけたことでも話題になりました。
今後は、より一層この考え方が浸透してくるかもしれません。

今回のフェイスブックの問題で一番厄介なのは、
最終的に「完全に」自分のアカウントを削除することができない、
あるいは非常にそのプロセスが難しいということです。
単に自分のアカウントを削除しただけでは、自分とつながっている友達、
その友達とつながっている友達などのところに残っている情報までは削除されません。
そうした部分から、個人情報が漏れる可能性が残っています。

例えば私で言えば、過去に名刺交換などで知り合った人が数千人単位になりますが、
そのすべてにおいて私の情報を削除することはほぼ不可能だと言えるでしょう。

先日のビジネスウィーク誌に「Where's Our Digital EPA」
という記事が掲載されていました。
ここでは、デジタル社会でもEPAに匹敵する組織が必要ではないかと提言しています。

EPAは環境政策全般を担当する行政組織で日本の環境省に相当します。
人の健康や、大気・水質・土壌などに関する環境の保護・保全の役割を担っています。
「Where's Our Digital EPA」は、デジタル社会においても、
EPAのような存在が必要ではないか、ということです。
このままだと、フェイスブックという樽から汚れた油が流れ続けてしまう、と指摘しています。

フェイスブックは当初、個人情報を転売された自分たちは、
犠牲者であると発言していましたが、問題の本質はそこではありません。
フェイスブックに登録している人が、もう登録を抹消したいと思っても、
その情報を完全に削除できないということが
一番深刻な問題であるということが明らかになってきました。

日経新聞は、先月28日「シリコンバレー、始まった「逆回転」」
と題する記事を掲載しました。
個人情報の不正流出にからみ、規制論が高まる可能性がある一方で、
フェイスブックなどのIT企業が持つ高い技術力や
イノベーションを生む力は米経済の成長エンジンでもあり、
米産業の行方を決める歴史的な日になるだろう、としています。

かつてマイクロソフトは独占禁止法に違反しているとされ、
裁判を経験しています。あの時ビル・ゲイツ氏は弁護士に任せず、
裁判をすべて自分自身で対応していました。
今回のフェイスブックの問題で、ザッカーバーグCEOが
どのように対応するのかは注目したいところです。



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▼アマゾンの躍進に反比例で窮地に陥っているUPS
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先月20日の米株式市場でアマゾン・ドット・コムの時価総額が初めて
アルファベット(グーグルの親会社)を抜き、
アップルに次ぐ世界2位に浮上しました。
アマゾンは2月14日に初めてマイクロソフトを上回り、
時価総額で世界3位に浮上したばかりでしたが、
ネット通販とクラウド事業を柱に成長期待を背景に買いが続いています。

アマゾンの時価総額が大きくなる一方で、
米トランプ大統領は自身のツイッターで米アマゾンを名指しで
「税金を払っていない。数千の小売業を廃業に追いやっている!」などと批判しています。

税金問題以上に、深刻だと認識されてきているのがUPSの赤字問題です。
日本でもアマゾンのために、ヤマト運輸や佐川急便が大変な事態に陥りました。
ようやく値上げなどの対処をした結果、今は一息ついた状態です。

アメリカにおいてはアマゾンの影響力はさらに大きいですから、
UPSのような配送業者にかかる負担は遥かに大きなものになっています。
現状では、UPSは1個配送するたびに、1.5ドルの赤字になっているそうです。
超優良企業だったUPSが困窮しつつあります。

トランプ大統領の狙いとしては、配送業務に関わる多くの選挙民に対して、
自分がその処遇を改善したのだというわかりやすいアピールの場にしたいのだと思います。
私としてはこうしたアピールの仕方は賛同しかねますが、
トランプ大統領らしい分かりやすい方法です。
トランプ大統領の行動は99%について何一つ褒められたものではありませんが、
もしかしたら「UPSを救う」という1点において、
思わぬ役割を果たすかも知れません。



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※この記事は4月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、フェイスブックの話題を中心にお届けいたしました。

フェイスブックの問題は非常に深刻な問題となり、
大量の個人データを扱う企業全般への
規制論が高まる可能性がでてきています。

これら企業が持つ高い技術力やイノベーションを生む力は
米経済の成長エンジンでもあり、議会証言の日は、
米産業の行方を決める歴史的な日になるだとう、
としていますが、PEST分析のようなマクロ環境分析は
戦略立案において、非常に重要です。

自社で提供している製品、サービスや目の前の顧客だけをみていると
その市場の外側で何が起こっているのかが、見えなくなってしまいます。

環境の変化や事業活動に影響を与える要因を探り、
現在の環境とともに将来の環境に基づいて戦略を立案することが大切です。

2018年03月30日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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コンビニエンスストア/ドラッグストア/ハウステンボス/シマノ 〜コンビニ神話崩壊の兆し、勝利の方程式のほころび

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コンビニエンスストア コンビニ客減少続く
ドラッグストア ドラッグストアひとり勝ち
ハウステンボス お客と紡ぐ「100年構想」
シマノ 自転車、山登りも自在

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▼コンビニ神話崩壊の兆し、勝利の方程式のほころび
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日経新聞が報じたところによると、
コンビニ大手7社の既存店客数は前年同月比1.4%減となり、
16年3月から24カ月連続で前年を下回りました。
客数の集計を始めた2004年以降で最も長く前年比減が続いており、
ドラッグストアやインターネット通販の台頭に押され、
小売りの勝ち組だったコンビニの成長神話にも
陰りがみえてきたとしています。

コンビニがまだ普及していない地域もあるので、
そうした地域への進出を考えるとコンビニ業界全体としては
伸びていく可能性はあると思います。
しかし、既存店の客数がこれだけ落ち込んでいるというのは
かなり危機的な状況です。

このコンビニ苦戦の要因を作っているのが、ドラッグストアです。
ドラッグストア市場の2017年度の売上高は6兆8504億円となる見込みで、
2年連続で百貨店を上回っています。
粗利率の高い医薬品や化粧品で収益を確保し、
日用品などを安値で販売するモデルが成長の原動力になっていて、
今後はネット通販との競合や他業態の追い上げをどうかわすかが焦点になりそうです。

コンビニは、その名の通り利便性を売りにしていて、
決して価格そのものは安くありません。
一方、安い価格で勝負をしていたスーパーは自滅していきました。
こうした市場環境の中、ドラッグストアは医薬品・化粧品など
粗利が高いものを取り扱いつつ、
コンビニでも売っているような日用品などを
安く販売するという戦略を取りました。
これにより、じりじりとコンビニから
ボリュームを奪うことに成功してきたということでしょう。

コンビニの戦略は、セブン&アイ・ホールディングスの
鈴木敏文元会長が提唱した勝利の方程式があまりにも浸透しすぎました。
商品棚の管理、商品の回転の管理を重視し、
商品の価格にはそれほど重きを置いてきませんでした。
それは、生鮮食品などを極力避けてきたところにも表れています。

一方のドラッグストアは、
コンビニには置いていないような少し変わった商品や、
詰め替え商品を扱うなどの工夫をしてきました。
鈴木氏が牽引してきたコンビニの勝ちパターンの漏れている穴を
ドラッグストアは見事に突いてきたと言えるでしょう。


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▼ハウステンボスに城壁都市 お客と紡ぐ「100年構想」
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エイチ・アイ・エス会長兼社長の澤田秀雄氏は、
ハウステンボスを囲む城壁を作る計画を明らかにしました。
来場者からの寄付を建設費に充て、金額に応じて城壁に名前を刻んだり、
ICチップを埋め込んだりするということで、
城壁の中にはテーマパークや工場、
また独自の仮想通貨「テンボスコイン」が流通する
という構想を語ったとのことです。

今から数十年前、私は「お墓の問題」で似たような構想を描いたことがあります。
都心にはお墓がなく作ることも難しいので、
例えば利用しなくなったゴルフ場や
富士山の裾野といった地域にお墓を作る、というものです。
お墓の前で、おじいちゃんの生前の写真を見ながら、
楽しくピクニックをしてもいいでしょうし、
富士山の裾野ならBBQをしてから一泊できる施設を作ってもいいでしょう。

澤田氏の発想もよく似ていると思います。
日本のように寄付の文化が無い国民に対して、
寄付をしてくれたことに対して、
ちょっとしたお返しのような仕掛けをする、
というのも私もお墓ビジネスで考えたアイデアの1つでした。
澤田氏のハウステンボスのアイデアはさらに膨らんだものになっています。


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▼世界に誇るシマノの技術力による電動アシストに期待
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自転車部品で世界シェア8割を誇るシマノが、
電動アシスト部品の製造販売に乗り出しました。
国内ではママチャリの電動アシストが一般的ですが、
欧米では脚力が低下した中高年でも楽しめる
スポーツ車の新ジャンルとして注目を集めており、
シマノはガラパゴス化した国内市場に変革の風を吹かせたいとのこと。

世界最大の自転車メーカーと言えば、
台湾のジャイアント・マニュファクチャリングです。
この会社も自転車の部品はすべてシマノ製です。
それだけの技術力を誇るシマノが、
電動アシストに乗り出すというのは非常に期待が持てます。

欧米では中高年の人が電動アシストを利用しているということですが、
日本でも箱根や湯河原へ行くと自転車に乗っている中高年の方が増えていると感じます。
こうした人たちが電動アシストを利用することで、
自然に親しみながら自転車に乗る機会をより増やしていくというのは、
とても良いことだと思います。

自転車ギアの技術で世界最高水準を誇るシマノが、
本気で電動アシストに取り組んだら、
どのようなものを作ってくれるのか、
大いに期待したいところです。


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※この記事は3月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、コンビニやドラッグストアの話題を中心にお届けいたしました。

ドラッグストアやインターネット通販の台頭に押され、
小売りの勝ち組だったコンビニの成長神話にも
陰りがみえてきました。

これに対して、粗利率の高い医薬品や化粧品で収益を確保し、
日用品などを安値で販売するドラッグストアのモデルが
コンビニ苦戦の要因を作っていると指摘しています。

コンビニには置いていないような少し変わった商品や、
詰め替え商品を扱うなどの工夫をすることで、
コンビニの勝ちパターンの漏れている穴を突いてきたドラッグストア。

このように、戦略を描く際には、
市場のカギとなる場所を見つけることは非常に重要です。

ドラッグストアがじりじりとコンビニから
ボリュームを奪うことに成功してきたように、
市場のどこから進行して広げていくのか?
というようなストーリーを描くことが大切です。

2018年03月23日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中関係/日米関係/米韓関係/米通商政策 〜トランプ大統領は歴史を学び、少しでも知識をつけるべき

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米中関係 中国製品への追加関税
日米関係 日本がアメリカ車に「ボウリング球検査」
米韓関係 対韓貿易赤字を強調
米通商政策 米クアルコム買収阻止の大統領令に署名

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▼トランプ大統領は歴史を学び、少しでも知識をつけるべき
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米メディアが13日報じたところによると、
トランプ米大統領が検討する中国の知的財産権侵害への制裁措置を巡り、
追加関税の対象となる中国製品が最大600億ドル(約6兆4000億円)
に達する見込みが明らかになりました。
トランプ大統領は3月中にも制裁発動を決断する見通しで、
鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に踏み切る可能性があるとのことです。

このようなトランプ大統領の対応を見ていると、
実態をもう少し勉強してから数字を出してほしいと思います。
先日もトランプ大統領は、カナダのトルドー首相に対して
貿易赤字の不満を述べていましたが、
実態はトランプ大統領の発言とは異なっており、
後から米国政府が発言内容について修正をしました。

米国の貿易相手国別の貿易(財)収支を見ると、
財では中国やカナダに対して大きな赤字になっていますが、
サービス部門では圧倒的に米国が黒字になっています。
財とサービスを合計すれば、カナダに対して米国は貿易黒字の状態です。

トランプ大統領は事実を知らずにモノを言います。
これまでの小さなファミリービジネスの中では通用していたかもしれませんが、
米国の大統領としては明らかに資質を欠いていると感じます。

つい先日、日本に対しても驚くべき発言がありました。
日本がアメリカ製の車を国内市場から排除するために不当な検査をしているとし、
「アメ車に20フィート(約6メートル)の高さから
ボウリングの球を落として検査するんだ」と言い放ちました。

これに対して米政府は15日、
「トランプ氏の発言は冗談だった」と弁明しましたが、
冗談という以外には説明のしようがなかったということでしょう。
確かに非公開の場ではありましたが、それでも多くの聴衆がいる前で、
このような発言をするのは、まったく理解できません。

日本における自動車のメーカー別輸入車新規登録台数を見ると、
ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、BMW MINI、ボルボと続き、
米国車が売れていません。この点を指摘して、
米国車が売れないのは「何かしら日本側に問題があるからだ」
とフォードなどはよく主張します。

GMは中国でシェアを伸ばしていますが、
フォードはアジアで上手くいっていません。
日本も実質撤退している状況です。
フォードファミリーとトランプ大統領は親しい仲ですから、
トランプ大統領の発言の背景にはフォードのこともあるのかも知れません。

トランプ大統領の無知さ加減は、韓国に対しても発揮されています。
「私たちは韓国との貿易で非常に大きな赤字を抱えており、
一方では韓国を防衛している。貿易でお金を失い、
軍事費でもお金を失っている」と発言したそうです。

朝鮮戦争以降、米軍が韓国に駐留しているのは、
米ソ冷戦の最先端・橋頭保としての役割を果たすためであり、
米国の意思に基づいています。それを貿易問題と一緒に論じ、
あまつさえ批判するのは筋が違います。


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▼米国には歴史的に「難癖」をつける傾向がある
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トランプ米大統領は12日、シンガポール半導体大手
ブロードコムが提案している米クアルコム買収について、
国家安全保障上の観点から禁止する大統領令に署名しました。
この買収が成立すれば、今後10年以内に中国の同業ファーウェイが
関連技術を牛耳ることになるという懸念が背景にあるとのことです。

これもまた、歴史を全く知らないトランプ大統領が難癖をつけた事例です。
ブロードコムはシンガポールに本社がありますが、もともとは米国の会社です。
HPの半導体部門が起源となっているアバコがブロードコムを買収したのです。

税金の問題もあり、登記上の本社はシンガポールになっていますが、
ブロードコムのCEOはトランプ大統領に対して本社を
シンガポールから米国に移転すると表明しています。
それにも関わらず、今回ブロードコムの買収に難癖をつけたのは、
大手取引先にファーウェイが含まれているからでしょう。

ファーウェイは、創業者が人民解放軍にいた、
という理由で中国共産党との関係が深い、
との嫌疑からアメリカ市場からは実質的に閉め出されています。
トランプ大統領としては、この点を重視したのだと思いますが、
これも全くの見当違いです。

かつて富士通がフェアチャイルドを買収しようとしたとき、
米国から「国防上の理由」という何とも曖昧な理由で、
同じような難癖をつけられました。
歴史的に米国にはこうした難癖をつける傾向があります。
中国やシンガポールも米国の無知と戦う段階になったということでしょう。

ただし、トランプ政権になってから、
米国の無知さ加減は3倍ぐらいに増幅した印象です。
日本としては、安倍首相がトランプ大統領との
仲の良さを一生懸命アピールしていますが、
そんなことよりもやるべきことがあります。
日米間には、長い貿易戦争の歴史があります。
その歴史を踏まえた正しい認識を伝え、
トランプ大統領のおかしな発言に対しては、すぐに反論すべきです。
過去の歴史や実態を無視したトランプ大統領の無知な発言を
放置しておくべきではありません。

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※この記事は3月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米国の話題を中心にお届けいたしました。

トランプ大統領は3月中にも中国の知的財産権侵害への
制裁発動を決断する見通しで、
鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に
踏み切る可能性が明らかになりました。

これに対して大前は、実態をもう少し勉強してから
数字を出してほしいと指摘しています。

ファクトをしっかり把握せずに直感や感覚だけで判断することは、
よくある問題解決の失敗例としてあげられます。

また、問題を引き起こしている本質的な要因が不明なまま、
対症療法的に飛びついてしまうことも、同様です。

ビジネス上の様々な問題解決を行う際には、本質的な問題を発見し、
これに対して、仮説作成とファクトに基づく検証を繰り返し、
当を得た解決案を立案・実行することが重要です。

2018年03月16日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米朝関係 〜米朝直接会談の結果は、北朝鮮崩壊のシナリオしか考えられない

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米朝関係 5月にも米朝首脳会談

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▼米朝直接会談の結果は、北朝鮮崩壊のシナリオしか考えられない
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米政府は8日、トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩委員長の申し出を受け入れ、
直接会談に応じると発表しました。
米朝首脳会談が実現すれば歴史上初めてで、
朝鮮半島を中心とした東アジア情勢に大きな変化をもたらすとともに、
日本の外交・安全保障政策にも影響を及ぼすのは確実と見られています。

私はトランプ大統領の物事の進め方が好きではありませんが、
もしかするとこの交渉においては、トランプ大統領が圧勝してしまうかもしれません。
トランプ大統領はストリートファイターであり、
常にディール・交渉を前面に押し出してきます。
金正恩委員長との会談が実現した場合、
「ロケット開発、核開発をやめろ。やめなければ報復するぞ」
という態度で臨む可能性が高いと思います。

ここで金正恩委員長が受け入れなければ、
これまでのトランプ大統領のやり方からすれば、
すぐにでも戦争を引き起こす可能性があります。
「深刻さを見せつつ、すぐにでも殴り合う」
というやり方がトランプ大統領の特徴です。
私自身はこの手のやり方は全く好みではありませんが、
今回の北朝鮮との交渉においては功を奏するかもしれません。
その点から考えると、代理人ではなく、
トランプ大統領の特徴を活かして本人が交渉にあたるべきでしょう。

文在寅大統領の特使が北朝鮮に赴いた際に、金正恩委員長は
「体制が保証されるのであれば、核開発を中止しても構わない」
と述べたと言われています。この発言が本当であれば、
かなり深刻な内容を含んでいると思います。
つまり、金正恩委員長が亡命を希望しているのではないかということです。

現実的に、北朝鮮において金王朝が平和的に存続していくことは不可能です。
「体制を保証する」という「体制」とは金正恩委員長自身と
そのファミリーのことを指しているのでしょう。
北朝鮮においてはそれ以外考えられません。

2歩先まで考えれば、金正恩委員長が望んでいるのは
亡命以外にはないと私は思います。
トランプ大統領がこの事を見抜いていれば、
逃げ場所を用意してあげるということができるはずです。
トランプ大統領は交渉してうまくいかなければ、
その場で戦争を始めるという決断さえしかねない人物です。
金正恩委員長がトランプ大統領と1対1の会談に臨むのは、
かなりのリスクを負っていると思います。
それでも、金正恩委員長がトランプ大統領に呼びかけたのは、
国を空けて海外に行くことさえままならず、
体制が内部から崩壊する寸前の北朝鮮の状況では、
なんとか体制を保証してもらって逃げ場を確保したい
という一心からの行動だと思います。


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▼文在寅大統領との交渉を行っても、行き着く先は北朝鮮の崩壊
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現状においては、中国もロシアも蚊帳の外に置かれています。
中国は6カ国協議の議長として対話路線を押していましたが、
米朝直接対話となったらそのメンツは丸つぶれもいいところです。
もし米国がプレッシャーを弱めれば、
文在寅大統領と金正恩委員長の直接対話の可能性がありますが、
この場合でも最終的に行き着く先は北朝鮮の崩壊だと私は見ています。

文在寅大統領と金正恩委員長の直接対話を行ったとして、
次に考えられるステップは平和条約の締結、
国交の正常化、戦争状態の終結になるでしょう。
このシナリオの場合、北と南の間をある程度
人々が自由に行き来できるようにならざるを得ません。
そうなると、北朝鮮は半年も持ちません。

これまで北朝鮮は、国民に対して「南側(韓国)は貧しい」
と騙してきたわけですが、その嘘が露呈してしまいます。
そうなれば、ルーマニアのチャウシェスクと同様、
民衆蜂起によって体制が崩壊するのは目に見えています。

北朝鮮は、韓国と平和的な話し合いが行われたとしても、
その結果としては体制の崩壊以外に道は考えられません。
かつてのロシアやアルバニアの例を見ても、
厳しい情報統制をしていた国家が、それを維持できなくなったとき、
全体主義国家は脆くも崩壊します。
今の北朝鮮においても、国民に実態が明らかになれば、
いかにバカなことにお金を使って自分たちが
貧しい生活をさせられてきたのかと分かってしまうでしょう。

トランプ大統領と直接会談、文在寅大統領との直接対話のいずれの道を通っても、
北朝鮮の金王朝は終わる可能性が高いと私は見ています。
その可能性がいよいよ高くなってきたとき、
中国や韓国は、金一族を受け入れる姿勢を見せるかも知れません。
想像よりも早く、北朝鮮の金王朝は崩壊していく可能性が高くなっていると思います。


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※この記事は3月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米朝関係の話題を中心にお届けいたしました。

北朝鮮との首脳会談に応じると発表した米政府。

米朝首脳会談が実現すれば歴史上初めてで、
朝鮮半島を中心とした東アジア情勢に大きな変化をもたらすとともに、
日本の外交・安全保障政策にも影響を及ぼすのは確実と見られています。

北朝鮮の今後のシナリオについて記事中で言及していますが、
現在世界中で起こっていることや、今後起こりそうなことに注意を払い、
重要な変化を迅速に認識し、変化に適応することが大切です。

これは、経営においても同じです。

事前に複数のシナリオを想定し、
どの状況にも耐えうるようにすることで、
想定外の出来事でも慌てずに意思決定を行うことができます。

2018年03月09日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米通商政策/米トランプ政権 〜鉄鋼やアルミに関税を課しても、何1つ問題は解決しない

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米通商政策 鉄鋼、アルミの関税導入へ
米トランプ政権 クシュナー上級顧問の最高機密扱う資格取り消し

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▼鉄鋼やアルミに関税を課しても、何1つ問題は解決しない
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トランプ米大統領は1日、鉄鋼輸入品に対し25%、
アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を明らかにしました。
トランプ氏は「鉄鋼とアルミニウム産業をわが国の手に取り戻すだろう」
と語りましたが、中国、欧州、カナダなど主要な貿易相手国が
報復措置に出る可能性もあります。

この関税による規制は、トランプ氏が選挙中に公約していたものですが、
相変わらず思考能力がお粗末だと言わざるを得ません。
米国の雇用を守ると発言していますが、
関税を課すことで鉄鋼やアルミの値段が上がると、
例えば車の部品代金に影響し、最終的には消費者に全て還元されてしまいます。

世界の粗鋼生産能力を見てみると、ルクセンブルグのアルセロール・ミタル、
中国の宝鋼、河北鉄鋼、日本の新日鉄住金、韓国のボスコが上位を占めており、
米国の鉄鋼はすでに世界的に見るとマイナーになっています。
それらを守ってみたところで、それほど大きな影響は望めないでしょう。

既に米国産業は、海外から鉄鋼を輸入することで成り立っています。
トランプ氏は約22兆円の資金を投じてインフラ整備を進める
という強靭化計画を公約していますが、その費用さえも高くなり、
それを納税者が負担するということを意味します。

最終的には「止めておけばよかった」と後悔する可能性が高いと思いますが、
トランプ氏にはこの手を打つと次はどうなるのか?
という「次の段階を考える」という発想がありません。
町のチンピラの喧嘩と同じような発想で、
常に激情的な判断をしているため、今回もこのまま突き進むのでしょう。

米国の鉄鋼メーカーを見てみると、ニューコア、
アルセロール・ミタルUSA、USスチール、ジェルダウという上位陣のうち、
アルセロール・ミタルUSAはルクセンブルグ系、
ジェルダウはブラジル系であり、外資系企業です。
米国の鉄鋼会社を守っているつもりでも、
米国市場は既に外資系の手に落ちているというのが現実です。

米国からの鉄鋼の輸出先の上位は、カナダとメキシコ。
逆に米国の輸入元は、カナダ、ブラジル、韓国となっていて、
トランプ氏が頭の中に置いている中国は上位ではなく、
実はそれほど大きな影響力がありません。
そのことに気づいたのか、最近になって
「中国が過剰生産で値段を下げたことで、米国のメーカーが苦労している」
と発言内容を変えました。

各国の鉄鋼製品輸出における対米輸出シェアを見ると、
カナダ:約87%、メキシコ:約72%、ブラジル:約34%となっていて、
これらの国にとっては今回の関税の打撃は非常に大きいでしょう。
日本はそれほど影響を受けませんが、自動車業界で一部懸念が出てくるでしょう。
日本の自動車メーカーは、部品の現地調達率を高めてきました。
鉄鋼やアルミ関連の値段が上がると、
やはり最終的にはユーザーへの販売価格に影響してくることになります。

TIME誌は、トランプ氏が選挙の公約で救うと公言していた
「プアホワイト」に対して何一つ優遇するような政策を打ち出していない
と指摘する記事を掲載しました。減税にしても金持ち優遇の政策でした。
思い出したように「鉄鋼の関税を」とやっていますが、
この人たちの仕事は今や外資系メーカーによって支えられているという側面もあり、
トランプ氏の打ち出している政策は何ら意味を持ちえない可能性が高いと感じます。


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▼クシュナー氏の機密情報のアクセス格下げによるトランプ政権への影響
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米CNNが報じたところによると、トランプ政権のクシュナー上級顧問が
最高機密を取り扱う資格を失ったことが分かりました。
これにより、クシュナー氏が扱える政府の機密情報は大幅に制限されることになります。

今回はモラー特別検察官やFBIにも呼ばれた結果、
クシュナー氏はロシアとの接触が広いということで、
機密情報へのアクセスの資格を「最高機密」から「機密」
に格下げになったとのことです。

クシュナー氏は、イスラエルの問題などにおいて
サウジアラビアと交渉するなど、裏技の交渉が得意な人物です。
これまでトランプ氏が言ってきたことの多くは、
裏でクシュナー氏がお膳立てをしてきたことが殆どでした。
今回の機密情報の取り扱い資格の格下げにより、
今後クシュナー氏が能力を発揮するにも限界が出てくるでしょう。
これはトランプ政権にとっても痛手の1つになると思います。

先日、ヒックス広報部長が辞任し、
相変わらず1ヶ月で4人も辞任する事態が続いています。
まともな人物は、トランプ氏のサポートなどやっていられない
となって定着しないのも当たり前です。
トランプ政権は任命されていないポジションも多く、
任命されてもすぐに辞任し回転ドアのように人が入れ替わっていて、
全く安定感がありません。


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※この記事は3月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、トランプ大統領や米通商政策の話題を中心にお届けいたしました。

鉄鋼やアルミに関税を課す方針を明らかにしたトランプ大統領。

これに対して大前は、鉄鋼やアルミに関税を課しても、
何ら意味を持ちえない可能性が高いと感じると指摘しています。

問題解決を行うにあたっては、課題を定義し、
課題の構造化をした上で、実現可能性と効果のインパクトから
検討の優先順位づけを行う必要があります。

取り組みの効果が最もあがるように、
取り組み資源をどこに配分するか決め、そのために何を優先するか、
また、何に時間を使ってはいけないかを決めた上で、
解決策を立案していくことが重要です。

2018年03月02日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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朝鮮半島情勢/日韓関係/北朝鮮情勢 〜文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一

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朝鮮半島情勢 金正恩氏の親書手渡し
日韓関係 文在寅大統領が安倍首相に不快感
北朝鮮情勢 核開発は「再統一の野心から」

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▼日本射程内のミサイルは約200発。国防のためにもっと積極的な対応が必要
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平昌冬季五輪に合わせて韓国を訪問した金与正党第1副部長は先月10日、
文在寅大統領と会談し、金正恩委員長の親書を手渡しました。
金与正氏は口頭で『文在寅大統領に早期に会う用意ができている。
都合の良い時に北を訪問して下さることを要請する』
とする金正恩委員長のメッセージを伝え、これに対して文在寅大統領は
「これから条件を整え、実現していきましょう」と答えたとのことです。

現在北朝鮮のトップ数名がオリンピックの閉会式に参加するために
韓国を訪れていますが、おそらく閉会式だけでなく、
何らかのミーティングの場が設けられることは間違いないでしょう。

文在寅大統領の姿勢は、一貫して反米・親北です。
オリンピックが終わった後、米韓合同軍事演習が予定されています。
当然米国は予定通り実施の姿勢を見せていますが、北朝鮮は中止を求めています。
オリンピックへの北朝鮮選手団への派遣費用を3億円ほど負担するなど、
文在寅大統領は国連が禁止している北朝鮮との付き合いを続けています。
北朝鮮の非核化を目標とすることは国連の決議でもありますが、
今回のミーティングでも文在寅大統領が北朝鮮に
それを強く要求した報道は出ていません。

文在寅大統領の頭の中は、ほとぼりが覚めて
韓国と日本が手綱を緩めている間に北朝鮮に赴いて
関係修復を図りたいという思いが強いのでしょう。
北朝鮮に対する対話を重視した「南風政策」では、
過去に何度も騙されてきました。北朝鮮は、
援助を引き出しておきながら、結局は裏切って核開発を行ってきました。
文在寅大統領の対応を見ていて、日本を含め周辺諸国は
「また北朝鮮に騙されるのではないか」と警戒しています。

その文在寅大統領に対して、日本の安倍首相が米韓合同軍事演習を
冬季五輪後に予定通り実施するよう求めたことに、
文在寅大統領が不快感を示したと報じられています。
文在寅大統領は内政干渉だと主張しているとのことです。

北朝鮮が保有・開発した弾道ミサイルのうち、
韓国:約1000発、日本:約200発、米国:1発が
その射程範囲にあると言われています。
米国に届くミサイルの開発が成功したことで、
ようやく大きな問題となりました。
恐ろしいほどの数のミサイルが日本を射程圏内に捉えているわけですが、
今の日本ではこのミサイル攻撃にまともに対応できません。

抑止力とは、相手が攻撃してきた場合、軍事的な対応により損害を与えること、
またその姿勢を示すことで攻撃そのものを思いとどまらせることと定義されています。
しかし、今の日本の憲法ではこの抑止力を発揮することができません。
憲法においては専守防衛という概念ですから、
「1発だったら誤爆かもしれない。2発打たれたら本気と考えて対応する」
というようなほとんど冗談のような対応しかできません。

今の北朝鮮の軍事力を考えれば、抑止力だけではなく、
もっと積極的な対応が必要だと私は思います。
例えば、明確に北朝鮮のミサイルが日本を目指して
発射準備をしている証拠が見つかったならば、
こちらからミサイルあるいは戦闘機で
それらを破壊するという行動に出る必要があると思います。
こうした対応ができなければ、日本国民の安全は守れないでしょう。


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▼文在寅大統領が目指すのは、韓国が核保有国になるための半島統一
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河野太郎外相は先月16日、ドイツで開催された
「ミュンヘン安全保障会議」に出席し、
「北朝鮮は朝鮮半島再統一の野心があり、
目的達成のために核兵器を重要な手段と考えている」
と考えを示しました。また、米太平洋軍のハリス司令官も先月14日、
「長期的には北朝鮮が主導する『共産主義に基づく南北統一』を目指している」
との分析を示しました。

意外に感じる人が多いかも知れませんが、
「朝鮮半島を北朝鮮主導で統一するのも構わない」
という考え方を持っている文在寅大統領のような親北派の韓国人が一定数います。
これは北朝鮮と統一した結果、韓国が核保有国になれるからです。
韓国が核保有国になることは、米国が強く反対するため、
普通には実現することができません。
ところが、核を保有したままの北朝鮮と統一すると、
まるで裏口入学のような形で韓国は核保有国の仲間入りを果たせるのです。
河野氏が指摘したのはまさにこの点でした。

韓国の中には韓国が主導で、核を保有したままの北朝鮮を統一し、
やはり結果として韓国が核保有国になる
というシナリオ支持する人たちもいますが、
本質的に考えていることは同じです。
河野氏、ハリス氏という重要人物がこの点について
懸念する認識を示すのは当然であり、同時に非常に重要なことです。

文在寅大統領は、北朝鮮と仲良くして、日本や米国には気づかれないうちに、
韓国が核保有国になっていたというシナリオを
描いている可能性が高いと私は見ています。
「核なき統一」が日本と米国の主張であり、目指すべき形です。
韓国の考えているシナリオと日本・米国の考えているそれとの違いは、
今後さらに大きな問題となってくると思います。


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※この記事は2月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、朝鮮半島情勢の話題を中心にお届けいたしました。

韓国が核保有国になるための半島統一のシナリオに対して、
河野氏、ハリス氏という重要人物が
この点について懸念する認識を示しました。

これに対して大前は、韓国の考えているシナリオと
日本・米国の考えているそれとの違いは、
今後さらに大きな問題となってくると指摘しています。

北朝鮮の今後のシナリオについては、
自滅シナリオ、話し合いによる開国シナリオなど、
様々なシナリオが考えられます。

このようにあらゆるシナリオをあらかじめ想定しておくことで、
「想定外」の出来事を減らし、「立ち位置」の自由度を
増やすことが可能となります。

「もしも」の事態に真剣に取り組み対策を講じることで、
想定外の出来事に慌てることは少なくなります。

2018年02月23日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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韓国自動車/日産自動車/三菱重工業/トヨタ 〜韓国でポジションを確立できなかった日本の自動車メーカー

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韓国自動車 2017年のベンツ販売台数6万8861台
日産自動車 2022年までに中国に約1兆円投資
三菱重工業 三菱自動車株の売却検討
トヨタ ジャパンタクシーと資本提携

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▼韓国でポジションを確立できなかった日本の自動車メーカー
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韓国輸入自動車協会の統計によると、
2017年のベンツの販売台数は6万8861台と前年比22%増となりました。
日本での販売台数を抜き、過去最高を更新したもので、
韓国消費者のブランド志向や国産車が現代グループの
寡占市場であることなどが背景にあると見られています。

ベンツは若干日本を上回った程度ですが、
BMWにいたっては日本を大きく上回る販売台数になっています。
その他の海外自動車メーカーに目を向けると、
VWは韓国で販売していないため日本のみで、
ボルボとポルシェも日本が優勢、ランドローバー、
ジャガーでは韓国に軍配があがっています。
韓国の人口は日本の約3分の1、一人当たりGDPや収入なども合わせて考えると、
韓国における自動車の売れ行きは異常なものがあります。
ベンツやBMWの販売実数で抜かれたことは日本全体にとってショックです。

同時に、日本メーカーにとっては、日本車が韓国において
立場を確立できていないことも由々しき事態です。
日本のメーカーとしては、韓国においてベンツやBMWと
同じような高級車としてのポジションを確立すべきです。

日産自動車と中国の東風汽車集団の合弁会社は5日、
中国で2022年までに600億元(約1兆円)を投資すると発表しました。
40車種以上を投入し、そのうち半分をエンジンで発電して
モーターで駆動する「eパワー」搭載車種を含めた電動車にするとのことです。

中国におけるメーカー別自動車販売台数は、VWやGMなど外資系が強く、
日産(東風汽車集団の合弁会社も含む)はそれに次ぐポジションにいます。
ホンダ、トヨタは日産の下に位置しています。
日産は中国でかなりシェアを伸ばしていると言えます。
そして、その半分を電気自動車に注力していくということです。


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▼ウーバーでも滴滴出行でもなく、日本ではタクシー連合体を目指すトヨタ
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中国の滴滴出行は7日、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車連合など
自動車大手12社と提携し、電気自動車(EV)など
新エネルギー車のカーシェアリング事業に参入すると発表しました。
オープンなカーシェアのプラットフォームを構築し、
滴滴とカーシェア会社のアプリが連携し、
手軽に利用できるようになるとみられています。

中国において実質的に独占状態を築き上げている滴滴出行が、
カーシェアのプラットフォームを構築するということで、
自動車メーカー各社が滴滴出行の柳青総裁の軍門に下ったということでしょう。
中国ではウーバーも撤退し、滴滴出行の独占の牙城を崩すことは不可能な状況です。
各メーカーにとっても、致し方ない決断だったと思います。

トヨタ自動車は8日、日本交通のグループ会社で配車アプリを開発する
ジャパンタクシーと資本提携すると発表しました。
トヨタが第三者割当増資を引き受ける形で、約75億円を出資します。
これにより両社は相互のノウハウや技術を活かし、
配車支援システムなどで連携する考えです。

日本では2種免許が必要なため、トヨタとしてはタクシー各社を
実質的に束ねているジャパンタクシーに打診したのでしょう。
AIを使いながら配車システムを一緒に構築する狙いだと思います。
出来る限りトヨタ車を利用してもらいたいという意向もあるでしょう。

日本においては、ウーバーや滴滴出行のようなシステムではなく、
2種免許を守ってタクシーの連合体のような形態で、
同じくらい利便性の高いものを提供していこうという戦略です。
75億円の出資額は何とも中途半端だと感じます。
ちょっとしたシステムであれば、75億円も必要ありませんし、
逆に数千人の技術者を抱えるウーバーレベルの開発を目指すなら75億円では足りません。


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▼三菱重工の今後の経営はさらに難しくなっていく
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三菱重工業が、保有する三菱自動車株の一部売却を
検討していることが5日、明らかになりました。
主力の火力発電設備の需要現象や小型ジェット旅客機MRJの
開発の遅れなどで業績が低迷しており、
保有資産を見直し合理化を加速する考えです。

三菱自動車の株の問題ではなく、三菱重工そのものが心配になります。
宮永社長は6年目を迎えましたが厳しい状況が続きます。
MRJ事業は自ら管轄しながら、後退しているような状態です。
その事態に誰も異議を唱えないというのも、私には異様に感じます。

他にも、客船、原子炉などでもトラブルが続発しています。
三菱重工の収益を見ると、利益は出ていますが、
トラブルによって今後計上が見込まれる損金が大きいのだと思います。
今のタイミングで三菱自動車株を処分して資金を必要とする理由でしょう。

三菱自動車の株主構成をみると、日産自動車が33.9%を保有していて、
三菱商事と三菱重工を合わせて20%弱になります。
三菱重工が三菱自動車株を売却するなら、
三菱商事に預けて三菱全体として恥をかかないように、
などと考えずに日産に売ってしまうのは正解だと私は思います。

今後はコングロマリットディスカウントが効いてくる局面ですし、
三菱重工の経営の舵取りはさらに難しいものになっていくと思います。


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※この記事は2月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、韓国自動車業界の話題を中心にお届けいたしました。

韓国消費者のブランド志向や
国産車が現代グループの寡占市場であることなどが背景に、
日本車がベンツやBMWの販売実数で抜かれ
立場を確立できていない状況となっています。

これに対して大前は、日本のメーカーとしては、
韓国においてベンツやBMWと同じような
高級車としてのポジションを確立すべきと指摘しています。

ブランドを成立させるプロセスの中に、
自社のポジショニング(差別化)があります。

この差別性を行うにあたっては、
競合とは異なる差別性でユニークなもの、
さらに顧客が望んでいる差別性である必要があります。

ブランドを確立をするで、プレミア価格の実現や
価格の安定につながります。

2018年02月16日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米株式市場/国内株式市場〜今回の大幅下落はブラック・マンデーと同じ現象

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米株式市場 下げ幅過去最大の1175ドル安
国内株式市場 米市場下落で前日1071円安

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▼今回の大幅下落はブラック・マンデーと同じ現象
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5日のニューヨーク株式相場は、前週末の米雇用統計を受けて広がった
インフレ懸念をきっかけにパニック売りが加速し、
ダウ工業株30種平均の終値は前週末比1175.21ドル安と、
1日の下げ幅としては過去最大を記録しました。

今回の米株式市場の大幅下落は、
ブラック・マンデーの時と同じ現象だと私は見ています。
昨年の年末総括でも指摘しましたが、米国経済は通貨供給量が増え
金融経済と実体経済との間に乖離が出てきている状況になっています。

1987年のブラック・マンデーの一週間前に私は
ニューヨーク・タイムズにある記事を寄稿しました。
そこで指摘したのは、東京の地価が異常に高い状態であり、
それを背景として日本が米国のものを買い漁っているから、
米国の株価も上がっている、ということでした。

ニューヨーク・タイムズの記事には、強気の経済を象徴した牛(ブル)が、
日本円の紙幣の上に乗っている絵が掲載され、
いかに米国の株高が危うい状況にあるかを示していました。
当時、この絵がブラック・マンデーのトリガーを引いたと言われて、
私は米国の放送局などからかなり批判を浴びました。

今回もブラック・マンデーの時と同様、
金融経済と実体経済の伸びが異なる期間が数年続き、
両者の乖離が大きくなってしまい、その溝を埋めるために
株価が一気に下落したという状況です。すなわち、
金融経済が実体経済に近づくように調整されたということです。

「1日の下げ幅として過去最大を記録」と言っても、
必要以上に恐れる必要はなく、期待値で高くなっていた株価(=金融経済)が、
実体経済の水準にまで落ちてくれば、必然的にそこで落ち着きます。

ブラック・マンデーの際にも、ダウ平均は大きく下落しましたが、
そこで調整され奈落の底には落ちていません。
連鎖的に銀行が倒産するなどといった事態にもなりませんでした。
ここがリーマン・ショックと、ブラック・マンデー及び今回の下落の大きな違いです。

リーマン・ショックのときには、銀行はサブプライムローンなどの
「毒」をたくさん腹に抱えていて、構造的に大きな問題が存在しました。
ゆえに、それを解消するために多くの銀行が倒産する羽目になりました。

今起きている株価の下落はブラック・マンデーと同じ現象であり、
リーマン・ショックとは全く別物です。
金融経済が実体経済の水準に調整されればいいだけなので、
必要以上にパニックになる必要はありません。



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▼日米経済は連結経済であり、運命共同体
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トランプ大統領も安倍首相も、それぞれ日米の株価が高いのは
自分の政策のおかげだと主張していますが、全くそんなことはありません。
実体経済以上に、株価が上がることはありえないので、
今の株高を自らの業績に結びつけるのは勘違いも甚だしいところです。
2人ともこうした経済の基本的なことすら、理解できていません。

米国の株価の下落に引きずられるように、
日本の国内株式市場も大きく下落しました。
一部ではコンピューターによるアルゴリズム取引の機械的な売りが
要因とも言われていますが、この動きも87年のブラック・マンデーと同じです。

本来ならば、5パーセント以上下落するときに
ストップをかけるはずが、それがなされていないのです。
ロボットアドバイザーやAIが取引をやっていると、
こうした局面では「売り」一方になる傾向があります。
一旦落ち着くと、「そこまでひどい状況じゃない」と冷静になり、
翌日に値を戻す、ということを繰り返し調整します。

ブラック・マンデー、リーマン・ショック、東日本大震災など、
過去の日経平均の急落局面における下落幅と比較しても、
今回の下落もその範囲内に収まるものだと言えるでしょう。

80年代の日米経済は貿易摩擦などもあり、
喧嘩をしているように言われていました。
しかし、実際には飛行機の両翼のエンジンと同様、
日米経済は運命共同体であり、連結経済なのだと、
当時から私は主張していました。この関係性は今も変わりません。

今、米国経済においては、自動車ローン、学生ローン、
住宅ローンなども溜まってきていて懸念されています。
しかし、サブプライムローンの時のように、
それぞれがみじん切りにされて区別がつかない状態で、
トリプルAの格付けで売られるといった
イカサマ商品にはなっていないので、その点では安心していいと思います。

今回の日米の大幅な株価の下落については、
金融経済と実体経済の乖離から来る調整であり、
リーマン・ショックとは全く性格が異なるものだ
ということを認識しておくことが重要です。
この一週間の世界経済の動きは、ブラック・マンデーが起きた
87年と同様の動きであり、私は当時の一週間を思い出しました。


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※この記事は2月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、株式市場の話題を中心にお届けいたしました。

5日のニューヨーク株式相場で大幅下落した米株式市場。

これに対して大前は、金融経済と実体経済のずれが発生しており、
その溝を埋めるために株価が一気に下落したという状況で、
ブラック・マンデーの時と同じ現象だと指摘しています。

このように、起きている現象に左右されるのではなく、
ファクトをしっかり把握し、なぜそのような現象が起きたかを
冷静な視点で俯瞰して考察することが大切です。

同じように見える現象でも、構造の本質は異なってきます。
問題の構造分析を行い、それがどのような影響を与えるのかを
過去の歴史などから予測することが重要です。

2018年02月02日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ダボス会議/米通商政策/米税制改革〜ダボス会議で「孤立」したトランプ大統領。主張には根拠も一貫性もない

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ダボス会議 米大統領として18年ぶり演説
米通商政策 セーフガード(緊急輸入制限)発動
米税制改革 トランプ減税が変える租税回避の地図

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▼ダボス会議で「孤立」したトランプ大統領。主張には根拠も一貫性もない
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トランプ米大統領は先月26日、
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説し、
「アメリカ第一主義は孤立したアメリカではない」と語り、
国際的なルールや秩序の強化に積極的に関与する考えを示しました。
また中国を念頭に「いくつかの国は他国を犠牲にして
国際社会のシステムを食い物にしている」と述べ、
知的財産侵害などの「略奪的な行動」を非難しました。

トランプ大統領の演説を聞いても、
「結局、何を言いたいのか?」私には全く理解できませんでした。
「TPPに加盟するのか?」「パリ条約を離脱するのか?」
いずれも明確ではありません。
大統領就任当初、TPPもNAFTAもパリ条約も離脱すると息巻いて、
トランプ大統領は早々にサインをしていましたが、
今になって「条件さえ良ければ」復帰を考えてもいいと発言し始めました。

しかし、トランプ大統領が言う「条件」は曖昧です。
TPP、NAFTA、パリ条約、それぞれについても、
具体的にどこに問題があるのか指摘していません。
しきりに「米国にとって良いディール」であればと繰り返すばかりです。

そもそも米国の産業界にとっては、自由貿易が重要ですから、
TPP、NAFTA、パリ条約のいずれも大きな問題ではありません。
仮にNAFTA脱退ともなれば、逆に、これまで農産物を大量に購入してくれていた
メキシコを締め出すことになります。産業界からの批判を受けて、
トランプ大統領もようやく間違いに気づいたといったところでしょう。

また、トランプ大統領は石炭を復活させて
雇用を創出すると主張していましたが、
石炭産業で増加する雇用などたかが知れています。
雇用を増やすのであれば、農業のほうがよほど効率的です。

今になって、トランプ大統領も自分の間違いには気づいていると思います。
しかし、それを素直に認めずに「ディールの条件が良ければ」
といった曖昧な発言でお茶を濁しています。
トランプ大統領はダボス会議のような
理屈が求められる会議体には向いていないでしょう。
ダボス会議の最後に演説したトランプ大統領は、
「アメリカ第一主義は、孤立したアメリカではない」
と述べていましたが、多くの人がすでに帰っていて、
トランプ大統領が孤立した状態になっていたのは、何とも情けない情景でした。


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▼中国の貿易黒字は、台湾、韓国の一部を含んでいる
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米トランプ政権は先月22日、太陽光パネルと洗濯機の輸入急増に対応するため、
緊急輸入制限(セーフガード)を発動すると発表しています。
米国の貿易相手国別貿易収支(財)を見ると、
対中国の赤字が約3674億ドルで断トツになっています。
台湾(約149億ドル)韓国(約280億ドル)に対しても、
赤字であり貿易不均衡の状態です。

ただし、この統計は実態に比べてやや中国に不利な数字になっています。
というのは、台湾と韓国から中国を経由して米国へ輸出される額も大きく、
それが中国に対する赤字を膨らませているからです。
台湾の鴻海はiPhoneを中国で作って米国へ輸出していまし、
韓国企業も遼東半島で作ったものを米国へ輸出しています。

また中国側が主体的に米国へ売っているというよりも、
米国側(例えば、ウォルマートなど)が勝手に
中国製品を買いまくっているという面もあります。
中国からすると、米国に対して「売りまくれる」ほど、
中国企業の経営手腕は成熟してはいないと自覚しているところでしょう。
トランプ大統領には、こうした実態も全く見えていないと私は思います。

一方、米国の貿易相手国別貿易収支(サービス)では、
米国はサービスが強いので、中国に対しても約333億ドルの黒字です。
TPPはサービス部門を含んでいるので、
この点から考えても、米国にとっては有利だったはずです。

それにも関わらず、一度白紙に戻した上で、トランプ大統領は
「条件さえ良ければ」TPPへ加盟の可能性も示唆していますが、
今さら、米国が加盟してくるとなると、甚だ迷惑です。
もし米国が加盟するのであれば、トランプ大統領が言う
「良い条件」など考慮する必要はなく、
以前(米国も含め)12カ国で合意したものがあるはずですから、
それで再度合意するだけです。
日本は米国のTPP加盟を歓迎するような姿勢を見せていますが、
私に言わせれば、ころころと意見を変えるトランプ大統領など、
しばらく放っておけばいいのです。


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▼230兆円が米国に還流すると、米国経済の方向性は見えにくくなる
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日経新聞は先月22日、「トランプ減税が変える租税回避の地図」
と題する記事を掲載しました。
米国の税制改革がM&A(合併・買収)を活発にし、
節税を巡るマネーの動きにも変化を与えています。
法人税率が引き下げられるほか、米国本土とその他地域の資金のやり取りに
課税される仕組みが導入されることをうけたもので、
今後は「新たな租税回避地」となった米国を狙う買収が
増える可能性もあるとしています。

これにより、これまで租税回避地の集積地となっていた
バミューダを利用するメリットもかなり少なくなると思います。
米国企業が海外に保有する資金を換算(1ドル100円)すると、
アップル:約24兆円、ファイザー:約20兆円、
マイクロソフト:約14兆円など、
全体で約230兆円規模になると推定されます。

しかし、これはトランプ大統領が推し進める
雇用創出につながるものではありません。ビジネスウィーク誌は、
「アップルのキャッシュが戻ってくるとき」という記事の中で、
資金が戻ってきても工場が戻ってくるわけではないので、
雇用創出につながらないという点を指摘しています。
この点をトランプ大統領は誤解しないようにしてほしいところです。

もし米国に約230兆円の殆どが戻ってくるとしたら、
米国経済に与える影響は小さなものではないでしょう。
今、米国経済は緊縮に傾きつつ、金利も上げていこうとしている矢先に、
230兆円もの資金が市場に放出されるとなると、どうなるのか。
正直、かなり予測が難しい状況だと思います。


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※この記事は1月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ダボス会議や米国の話題を中心にお届けいたしました。

ダボス会議で、国際的なルールや秩序の強化に
積極的に関与する考えを示したトランプ米大統領。

それに対して大前は、TPPの加盟やパリ条約の離脱など
いずれも明確ではなく、「結局、何を言いたいのか?」
全く理解できないと指摘しています。

「条件さえ良ければ」TPPへ加盟の可能性も
示唆しているトランプ大統領ですが、
意思決定を行うにあたっては、正しく問題を認識し、
問題を解決するための具体的な行動案を設計し、
その効果や影響、費やされるコストを評価し選択する必要があります。

このように、影響の連鎖の探求やリスク許容限界の設定などを
行ったうえで、意思決定を行っていきます。

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