2019年07月19日(金) 
[1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ドラッグストア業界/医療費問題/かんぽ生命保険/
 ホテルオークラ/HIS〜業界を俯瞰する視野を持つ

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ドラッグストア業界 始動、ドラッグ大型再編
医療費問題 病院処方の医薬品 2016年度で総額5469億円
かんぽ生命保険 不適切な保険販売で改善策
ホテルオークラ アエオン社のホテル運営を受託
HIS ユニゾHDにTOB実施

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▼どうせ統合するなら、コンビニへの対抗まで見据えて業界トップを狙え
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日経新聞は4日、
「始動・ドラッグ大型再編」と題する記事を掲載しました。

ドラッグストア、食品スーパー、コンビニの商材の重なりが
顕著になっていると紹介。

出店に飽和感が出始めた各業種がお互いの領域に進出するため、
プライベートブランドの供給や店舗の融合を進めているためで、
今夏にはマツキヨとスギ薬局によるココカラファイン争奪戦の
結論が出るなど、業界の大型再編が始まる見通しとしています。

ドラッグストア市場の売上高や店舗数を見ると、
どちらも伸びています。

売上高は7兆円に迫る規模です。

このような状況の中、2社でココカラファインの争奪戦を
繰り広げるというのはもったいないと思います。

私なら、スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの全てが
一緒になることを画策します。

業界5位、6位、7位の3社が一緒になることで、
一気に1位のウエルシア、2位のツルハなどを超える規模に
なれるからです。

薬ジャンルの商品で利益を出せるため、
他の商品価格をコンビニよりも安く設定できるのが
ドラッグストアのメリットですが、このくらいの規模になると、
さらにコンビニに対して一定の力を持つことができるはずです。

小さくまとまるのではなく、
これくらい大きな視野で考えて欲しいと思います。



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▼日本の将来を考えても、市販薬の購入を促すことが重要
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市販薬があるにも関わらず、
利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が
2016年度で5000億円にのぼることがわかりました。

処方薬は自己負担が原則3割と市販薬より割安なことが
要因と見られますが、残りは税金や保険料で賄われるため
医療費の膨張につながっています。

風邪をひいて風邪薬を買うとき、
市販されていても、安く購入できるので、
わざわざ病院で処方してもらう人がたくさんいます。

こうしたことを抑制する必要があり、
そこで検討されているのが保険給付の見直しです。

例えば、テニスなどで痛めた部位に貼るような湿布薬、
アトピー性皮膚炎等ではない皮膚乾燥症に対する保湿剤など、
治療の根本に関わるものでないなら、
保険適用から除外するというものです。

主要国のGDPに占める医療費の割合を見ると、
米国がダントツに高く約16%、
欧州と日本は約10%に抑えられています。

しかし、日本の場合にはGDPが伸びておらず、
今後高齢者が増えていくので、この割合を維持するのが
難しくなっていくはずです。

こうした日本の状況を考えれば、
なおさら普通に市販薬で購入できるものを、
わざわざ病院に行って購入するのは避けるべきでしょう。



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▼かんぽ生命不正販売の根本的な原因は、過剰なノルマではなく経営陣
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かんぽ生命と日本郵便は10日、
不適切な保険販売が相次いで発覚した問題を受けて、
改善策を発表しました。

郵便局員への過剰なノルマが不正につながったと見て、
新たな契約を取った販売員に対する評価体系や報酬を見直す方針で、
二重に徴収していた保険料の返還も進めるとのことです。

営業ノルマでドライブをかけたことが不正につながったとのことですが、
かんぽ生命で起こっていたことは、本当に驚くべきことです。

結果、かんぽ生命は、保険料収入と経常利益が減少しているのに、
当期純利益は伸びているという異常な状態になっています。

どうしてこれほどひどいことが起こったのか?

かんぽ生命の役員構成を見ると、
約30名のうち16名は旧郵政省から、いわば天下りしてきた人たちです。

金融機関出身者もいますが、大半は金融の素人でありプロではなく、
まともな経営者がいないのです。

もともと単なる天下り先と思っている人たちですから、
売上を伸ばすとなっても、営業ノルマを課すことしか
考えられなかったのでしょう。

問題の根本はここにあります。

謝罪会見では頭を下げても、何も解決しません。

こうした素人経営陣は退き、
再出発するべきだと私は思います。



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▼今度こそ海外での成功を目指して欲しいホテルオークラ
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ホテルオークラは
ロシアの投資会社アエオンコーポレーションの建設するホテルの
運営を受託したと発表しました。

モスクワのシェレメーチエボ国際空港の近くに
300室規模の大型ホテルを建設する計画で、
和食レストランの他、温泉風の温浴施設も設け
日本流のサービスを提供するとのことです。

ウラジオストク、ハバロフスクなどを見ても、
ロシアにはあまり良いホテルがないので、
これは大きなチャンスだと思います。

モスクワ近辺なら、日本式サービスは受け入れられる可能性は
大いにあるでしょう。

ぜひここで成功してロシア全土に展開することを
期待したいところです。

ホテルオークラはこれまでにも中国上海、アムステルダムなど
積極的に海外進出を図ってきましたが、
大半は上手くいきませんでした。

今回は、同じ轍を踏まないように頑張ってほしいと思います。



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▼HISが敵対的TOBを仕掛けた背景・理由は?
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旅行大手HISは、ホテル事業などを展開するユニゾHDに対して
TOBを実施すると発表しました。

現在の保有比率4.5%から大幅な引き上げを目指すものですが、
ユニゾが提携協議に応じなかったとしており、
敵対的TOBに発展する可能性もあります。

ユニゾHDは興銀系の企業で、
不動産などをたくさん保有しています。

HISはすでに筆頭株主で、
その他は興銀系の企業が多くなっています。

借入が5000億円ありますが、含み益が2000億円ほどあるため、
株価が不当に安くなっていて、村上ファンド的に言えば
「狙い目」の案件と言えます。

HISの澤田会長が、
村上ファンド的な判断をしたということだと思います。

HISが展開している事業の伸び悩みが背景にあるのでしょう。

旅行事業などは値段が上がらずに過当競争に陥っていますし、
またハウステンボスも一時期の勢いがおさまり、
頭打ち状態になっています。

こうした状況を打開するために、HISの将来を考えたとき、
やらざるを得ないと澤田会長が判断したのだと思います。

ホテルそのものはインバウンド需要も高く、
圧倒的に数も不足していますから、リスクはそれほど高くありません。

しかし、敵対的TOBになったとき、
残り40%をHISが買い増していけるのかが問題です。

すでに値段が跳ね上がっているので、
私は難しいのではないかと見ています。



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※この記事は7月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ドラッグストア大型再編のニュースについて
大前が解説しました。

大前は

「私なら、スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの
 全てが一緒になることを画策する」

と述べています。

業界内の競合他社とは、対立するだけでなく、
同じ方向をむいて共に進んでいく、という選択肢をとることもできます。

広い視野を持ち、
他の業界にひそむ真の競合に気付くことが大切です。

2019年07月12日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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参院選〜参院選はすでに政策を論じる段階ではない

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参院選 21日投開票へ選挙戦開始

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▼すでに選挙戦では、政策を論じる段階ではない
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令和時代で初の国政選挙となる参院選が4日、
告示され選挙戦が始まりました。

与党は秋の臨時国会で憲法改正議論を進めるため、
3分の2の議席獲得を目指します。

野党は老後資金が2000万円不足するとの報告書で噴出した
年金問題や10月に予定されている消費増税などを
争点とする見通しです。

21日の投開票に向けて論戦が繰り広げられると
報道されていますが、私に言わせれば、
すでに政策の議論をする段階ではなく、
もう「間に合わない」状況です。

今さら、野党が何を言っても
国民はそれほど耳を傾けないでしょう。

消費増税はもちろん、
年金問題であっても争点にはならないと思います。

金融庁さえ正しく理解できていない問題なので、
まともに議論できる人は誰一人としていないからです。

選挙戦に突入したら21日の投開票まで、あっという間です。

どの政党も印象勝負に出ますから、
政策の議論をする暇はありません。

安倍首相ですら、改憲の内容を提示していませんし、
本気で改憲を実行する気があるのか、
私は疑問に感じています。

そもそも、もしやる気になれば、
現状でも3分の2以上の議席を確保しているのですから、
改憲の発議はできたはずです。

それでも、もし安倍首相が本気で改憲に乗り出すなら、
第9条を対象とするだけでなく、憲法の根本から
見直してほしいと強く思います。

トランプ大統領によって、
日米安全保障条約は片務的だと批判されていますが、
ここまで踏み込んで考えるべきでしょう。

そもそも今の日本国憲法は、
GHQが日本を占領していた時代に作り上げたものです。

憲法を書き上げた中心人物は、
チャールズ・ケーディス民政局次長という人物で、
当時39歳の弁護士です。

マッカーサーからは、「天皇制の保持」
「戦争の放棄」「封建制の廃止」という3点について
明確な指示があったと言われています。

率直に言って、日本国憲法を見ると、
ケーディス氏の日本に対する理解は非常に浅かったと思います。

例えば、日本国憲法第8章では「地方自治」について
規定していますが、項目が並んでいるだけでほとんど
中身がない、と私は思います。

地方自治の章にも関わらず、地方自治体の定義もなければ、
地方議会の権限も定義されていません。

そのため、地方自治とは程遠く、地方は中央政府が定めた法律の
範囲内で条例を作ることしかできません。

細かい点を挙げればきりがありませんが、
今日本国憲法について私が最大の問題だと感じているのは、
先進国となった日本が世界で果たすべき役割について
何も書かれていない、ということです。

第二次大戦の直後でしたから、当時の最大のテーマとして
「二度と戦争はしない」「軍隊を放棄する」と書いたのは
良いとしても、今は時代が違います。

今の日本そのものの状況も、日本を取り巻く環境も、
そして世界が遭遇している問題も大きく変わっています。

そのような中で、日本は世界に対して、
どんな役割を果たしていくべきなのか。

私は、これこそ憲法で規定すべきだと思います。

今の日本国憲法は、内向き、下向き、後ろ向きの憲法です。

そうではなく、これからの未来を見据えて、
世界の中の日本を位置付けた前向きな憲法であるべきだと思います。

私は拙著「平成維新」「新・国富論」、
そして「君は憲法第8章を読んだか」の中でも、
ずっと私なりの憲法を提言してきています。

今回の選挙で改憲を争点とするといわれても、
自民党が提示しているのは、
憲法9条という非常に狭い範囲のことでしかありません。

それではお粗末に過ぎます。

野党はさらにお粗末な対案しか持ちあわせていません。

本当に改憲を争点とするなら、
国民を巻き込みながら4〜5年は議論するべきです。

今回の選挙で軽々しく改憲論を展開するのは無理があるし、
全く意味がないと思います。



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▼日本の政治レベルを低下させた要因は?
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日本の政治レベルが著しく低くなった要因はいくつかありますが、
その1つが日本の役人の影響力が低下し、
レベルが下がったことです。

これは役人の人事権を取り上げてしまった
安倍政権にも責任があります。

従来なら、事務次官が握っていた人事権が
政治家に移ってしまったため、役人が政治家に頭が上がらなくなり、
その結果、数多くの「忖度」が生まれることになっています。

かつての誇り高き日本の役人なら、
政治家の言いなりにならなかったのですが、
今の役人はすっかり牙を抜かれてしまった状態です。

そして、日本の政治レベルを低下させた最大の要因は
小選挙区制です。

以前の中選挙区制なら1つの選挙区から
複数人の議員が選出されましたが、
小選挙区制では1人のみです。

約人口30万人に議員が1人という割合になります。

1つの選挙区から複数人選ばれていたときなら、
余裕がある人は金融や外交といった「広い」「外側」のことに
目を向けることもできました。

しかし、小選挙区制になったことで、
議員は広いビジョンなどを語っている場合ではなくなりました。

端的に言えば、
「おらが村にいくつの米びつを持ってきてくれるのか」というような
非常に小さいレベルの話に終始するしかなくなったのです。

小選挙区制により、
国会議員が矮小化してしまったと私は思います。

小選挙区制を変えない限り、
日本には大きな発想を持てる議員は現れないでしょうし、
現れても選挙で選ばれません。

小選挙区制によって、
日本という国が不可逆的に矮小化してしまったのは
本当に残念です。



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※この記事は7月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、参院選のニュースについて大前が解説しました。

大前は

「改憲するならば憲法第9条を対象とするだけでなく、
 憲法の根本から見直してほしい」

「日本が世界に対してどんな役割を果たしていくべきなのか、
 憲法で規定すべき」

と述べています。

問題を解決するときには、現状の争点にとらわれず、
広い視野と高い視座をもつことで、
物事の全体像を把握することができます。

物事の本質は、争点の奥に眠っていることもあります。

2019年07月05日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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参院選/日米安全保障条約〜トランプ大統領の本当の狙い

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参院選 立民・国民の公約、家計を重視
日米安全保障条約 「日米同盟の深化を確認」

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▼改憲を問うのなら、憲法の全体像を示せ
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日経新聞は先月24日、
立憲民主党と国民民主党が7月の参院選の公約で、
家計や消費を重視する政策を前面に打ち出したと紹介。

自民党が外交・安全保障を安倍政権の実績として強調しており、
同分野が争点になるのを避ける狙いがあるとしています。

参院選に向けた野党の動きを見ていて、
全くお話にならないと感じます。

社民党は無責任にも「最低賃金の引き上げ」などを
口にしていますが、具体的な実現案もない絵空事に過ぎません。

その上、政策で競うと言いながら、候補者にはタレントが多く、
とても政策に力を入れている姿勢とは思えません。

G20で安倍首相が大きく傷つくこともなく、
このまま参院選も自民党が勝利する流れになっていると思います。

そうなった場合、
自民党は国民に「改憲を問う」ことになるでしょうが、
私は大いに懸念を抱きます。

憲法9条ばかりに固執して、憲法の全体像を捉えていない議論が
展開される可能性が高いからです。

私は2016年に拙著「君は憲法第8章を読んだか」において、
憲法9条以外についても私なりの憲法の全体像を示しました。

しかし、自民党にしても野党にしても、
いまだに「自分たちなら、こういう憲法にする」というものを
示していません。

憲法9条だけでなく、全体像を理解し、
その指針を示すことができなければ、
「改憲を問う」意味はないと私は感じます。



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▼憲法を全く理解せず、お金のみを求めるトランプ大統領
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米ホワイトハウスは先月28日、
大阪市で行われた日米首脳会談を受けて、
「日米同盟に基づく世界規模での協力を深化させ
拡大させていく意向を確認した」と声明を発表しました。

トランプ大統領がこの数日間、日米安全保障条約を含む
主要国との同盟関係に不満を示していたのを受けたもので、
同盟諸国の懸念や不安を払拭したい考えとのことです。

憲法への不理解という意味では、
このトランプ大統領の発言・行動も、
まさにその典型例だと思います。

トランプ大統領の主張は、
日本は日米貿易で利益を出している一方、
安全保障については米国に頼り切っているのは
「不公平」だというものです。

日米安全保障条約に基づき、
米国は日本が攻撃を受けたら救済に行く必要があるが、
逆のときに日本は「知らん顔」をすることができる、というのです。

なぜ、このようになったのか?
トランプ大統領は全く理解していないのでしょう。

全く呆れるばかりです。

米国が日本を占領した際、日本に二度と戦争をさせないために、
紛争解決の手段としての戦争を永久に放棄するように
日本国憲法に記させたのは米国駐留軍です。

ここから、全てがスタートしています。

そして、サンフランシスコ平和条約の後、
日米安全保障条約を締結し、
米国が日本の安全保障を約束する代わりに、
日本は米軍の駐留を認めるなど応分の負担をするという
ことになりました。

こうした米国主導とも言える背景を無視して、
いまさら不公平と言われても日本としては
どうしようもありません。

そしてトランプ大統領としても、
日米安全保障条約の破棄を本気で考えているわけでもなく、
そのような発言は一切ありません。

日米安全保障条約を盾にして脅しながら、
米国の軍事商品を日本に購入しろ、というのが
トランプ大統領の狙いです。

G20で大阪に滞在した短い時間の中で、
トランプ大統領は他の国についても
同じ趣旨の発言をしていました。

記者が殺害された事件などで
関係が悪化していたサウジアラビアについても、
ムハンマド皇太子を批判することはなく、
米国製兵器を大量購入してくれたお客様という
姿勢を示していました。

貿易不均衡で揉めている中国の習近平主席に対しては、
米国の農民が困っているので米国産の大豆などを
大量に買ってくれと要求していました。

トランプ大統領の判断基準は、すべてお金です。

米国にお金を払ってくれるなら良い人、
米国にお金を払わせるなら悪い人、という図式です。

このような人物が、米国の大統領を務めているというのは、
あらためて驚くべきことです。

ところが、トランプ劇場の空気の中で再選する可能性もあり、
私としては米国民にしっかりと大統領を選ぶ目を
持ってもらいたいと願うばかりです。

トランプ大統領の日米安全保障条約に関する発言は、
低レベルでまともに受け止める必要すらありません。

しかし、日本国内で
この発言を歓迎している人たちもいます。

「右派」や「安倍的」な考えの人たち、
そして軍事産業やその周辺に関わる企業です。

もし日本が単独で安全保障を維持することになれば、
防衛予算の急増が必要であり、三菱重工、小松製作所などの
メーカーは大いに歓迎するかもしれません。

三菱重工は面倒なMRJの開発など即座にやめることができますし、
小松製作所もブルドーザーではなく戦車を製造するでしょう。

東芝も、防衛機器で大いに活躍できるでしょう。



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※この記事は6月30日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、日米安全保障条約のニュースについて
大前が解説しました。

大前は記事中で

「トランプ大統領は日米安全保障条約を『不公平』と言うが、
 これはもともと米国駐留軍が日本国憲法に記させたもの」

「トランプ大統領の本当の狙いは、
 米国の軍事商品を日本に大量購入させること」

と述べています。

交渉を受けた時には、その事柄の背景を理解するとともに
なぜ相手がそんな交渉を仕掛けてくるのか、丁寧に観察することで、
その真意が見えてくることがあります。

相手の本当の目的を見極め、判断することが大切です。

2019年06月28日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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認知症対策/官民ファンド〜認知症対策は海外に目を向けるべき

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認知症対策 「共生と予防」課題多く
官民ファンド 役員報酬が最高 年2280万円

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▼認知症対策は、日本国内だけでは解決できない
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日経新聞は19日、
『「共生と予防」課題多く』と題する記事を掲載しました。

政府の関係閣僚会議で認知症対策をまとめた
新たな大綱を決定しました。

予防の定義を認知症にならないではなく、
認知症になるのを遅らせる、進行を緩やかにするとしたほか、
共生のための正しい知識の普及に努めることなどを
盛り込んだものです。

介護人材の不足や金融資産の滞留など、
答えの見えない課題は多く、日本社会の進む道のりは
険しいとしています。

2040年には、日本の65歳以上の認知症患者数は約800万人と
推計されています。

一方、介護保険法の規定では、
老人ホームなどの施設で要介護の入居者3名に対して、
介護する人(介護士)1人の割合で配置することが
最低基準として決められていますが、
手厚い介護の提供は困難なのが実情でしょう。

今回の認知症施策推進大綱を見て、
私がつくづく感じるのは、すべての問題を「わが町」
「日本国内」で解決しようとしているということです。

そもそも、この前提が間違っていて、
この問題は日本国内だけでは解決できないと私は思います。

解決策の方向性としては、2つあります。

1つは海外から日本国内に人を受け入れる方法です。

しかし、日本の介護士の免許取得が難しく、
研修を受けてもなかなか合格しないという問題があります。

そこで注目したいのがもう1つの方法で、
逆に海外の施設・サービスに任せるというものです。

私は10年ほど前に、チェンマイにある養老施設を
見学に行ったことがあります。

認知症のスイス人、ドイツ人、スウェーデン人などを
介護していたのは地元のタイ人女性でした。

1人の認知症患者に対して、8時間の交代制で
3人のタイ人女性が担当していて、24時間体制を実現していました。

1人当たり2万円/月ほどで、3人で6万円/月。

ドイツやスイスの年金の平均額が約24万円なので、
その他の食事代や部屋代などを含めても、
年金の半分ほどで事足りる計算でした。

食事の手伝いや散歩の同行などをしていましたが、
言葉が通じなくても全く不便な様子はなく、
見学に来ていた家族も安心していました。

夜は同じ部屋で眠り、
例えば認知症患者の方が夜中にトイレに行ったりしても、
すぐに綺麗に洗って片付けていました。

これが、本当の介護だと私は感じました。

これを日本国内で実現することは不可能です。

また、社会保障制度に見る「潜在扶養率」を見ても、
米国が3.1、ドイツが2.5、中国が4.9、
日本は1.8となっていて最も低い水準です。

2人に満たない現役世代が高齢者1人を支える計算ですから、
人手だけなく、財政的にも全く余裕はありません。

海外の施設に送るというと、
「現代版の姨捨山」などと批判する人もいますが、
日本国内のサービスレベルと比較して、
「どちらが姨捨山なのか」と言いたくなります。

特に東京都には養老施設が不足して、
近隣の施設に依頼することが多くなっていますが、
受け入れる側も人員不足で余裕がありません。

かつて群馬県の養老施設が火事を起こして
10人の方が亡くなったこともありました。

日本国内だけで解決しようなどと
考えるべきではない、と思います。

海外に目を向けたとき、
今ではタイも人件費が上がっていますから、
インドネシアやフィリピンを候補として考えても良いでしょう。

今回の認知症施策推進大綱には、
現実を踏まえた上で何ら抜本的な解決策が
見られなかったのが、非常に残念です。



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▼農林漁業成長産業化支援機構はファンドではなく、単なる天下り先
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農林水産省が所管する農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)が
約92億円の累積損失を抱えている問題で、役員が業績と関わりなく、
年2000万円を超える報酬を受けていたことが判明しました。

これに対して、吉川貴盛農相は18日、
「業績連動型になっていない。必要に応じて指導、
助言をしていかなければならない」と述べ、
報酬体系の見直しを示唆しました。

農林漁業成長産業化支援機構の業務内容としては、
農畜産物、水産物の生産(第1次産業)だけでなく、
食品加工(第2次産業)、流通、販売(第3次産業)にも
農業者が関わるという「農業の6次産業化」の支援となっています。

この国全体の方針に基づいて、極めて多額の資金を集めましたが、
そもそも農林漁業成長産業化支援機構は
「ファンド」と呼べる組織ではありません。

ファンドは利益が上がるまで給料が支払われないのが普通であり、
農林漁業成長産業化支援機構は単なる農林水産省の「天下り先」です。

天下り先ですから、固定給で当たり前だと思っているはずです。

それにしても、143件の出資で136億円を使い、
90億円の損失を計上というのはあまりにひどい結果です。

しかし、民間株主であるキッコーマン、キューピー、カゴメなどは、
相手が農水省ですから文句を言えない、というのが実態でしょう。

報酬体系の見直しという以前に、
「天下り先」としての組織体制を改めない限り、
何一つ問題は解決しないと思います。



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※この記事は6月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、認知症対策のニュースについて
大前が解説しました。

大前は
「すべての問題を日本国内で解決しようという前提が間違っている」
「言葉が通じなくても全く不便な様子はなかった」
と述べています。

問題を解決する際には、

「そもそも〇〇という前提は正しいのか?」

と前提条件を疑うことで、
物事の本質に気付き、解決につながることもあります。

2019年06月21日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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高齢ドライバー/デジタル課税〜高齢ドライバーの交通事故割合が高いわけではない

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高齢ドライバー 高齢者専用の免許創設を検討
デジタル課税 法人税、どこに消えた

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▼高齢ドライバーの交通事故割合は、若者と変わらない
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政府が今月下旬に閣議決定する成長戦略に、
高齢ドライバー専用の新たな運転免許を創設する見通しが
明らかになりました。

75歳以上を対象に自動ブレーキなどの安全機能がついた車種のみ
運転することができることなどを検討するもので、
高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、対応を急ぐ考えです。

高齢ドライバー用の制度に強制力はない予定なので、
全体として「緩い」ものになると思います。

こうした高齢ドライバー向けの対策は早く実施すべきですが、
過度に高齢ドライバーの事故だけを問題視するのではなく、
全体像を理解することが大事です。

まず年齢別の運転免許保有比率は、75歳以上は6.8%に過ぎません。

そして、年齢別の交通事故件数・割合を見ると、
75歳以上の数字は25〜29歳とほぼ変わりません。

日本の人口で高齢者の人数が増えているので、
高齢ドライバーの事故が目立つだけで、
事故割合そのものは大きく増えていません。

また、20〜24歳、16〜19歳という若い年代の方が
事故件数・割合は多いですし、飲酒運転・無免許運転など
無謀なものも多くなっているので、高齢ドライバーだけに
焦点を当てて問題視するのは少々違う、と私は思います。

高齢ドライバーの交通事故は、
いずれ自動運転が普及すれば解決する問題でしょう。

現状の対策で言えば、一律に高齢ドライバーを対象にするよりも、
「注意すべき人」を確認するべきです。

私も高齢ドライバーとして免許更新の際に
試験を受けた経験がありますが、一緒に試験を受けている人の中に
明らかに「この人の運転は危ないな」と感じる方がいます。

普段から周囲の人が見ていても、
こうした人の運転の危うさには気づけるはずなので、
そのときに忠告することができれば良いと思います。



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▼世界で公平に法人税を課税するためには?
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日経新聞は9日、「法人税、どこに消えた」と題する記事を
掲載しました。

これは2000年代までは、
企業の利益に比例して法人税の負担額が増えていたのに対し、
2010年以降はその比率が低下していると紹介。

多くの企業が知的財産権を税率の低い国に移しているのに加え、
経済のデジタル化でサービスの利用やお金の流れが
見えにくくなっていることが要因としています。

最近、日経新聞はデータをもとに
問題提起する記事を掲載していますが、
この記事は非常に良い分析をしていると思います。

政治家が企業人を喜ばせるために、法人税率を引き下げ、
本社機能を移してもらう動きが続いています。

日本でも、2007年から2018年で税引前利益は若干増加したのに、
企業の税負担額は減少するという事態が起きています。

かつて企業の税負担額は30%を超えていましたが、
今では20%程度に下がっています。

世界的にも法人税の減税競争は激しさを増しています。

製薬会社など多くの企業が本社機能を置いている
アイルランドが12.5%と低い水準になっていて、
スイスは20%、英国、チェコも20%を下回る水準で
企業を呼び込もうとしています。

かつて40%を超えていた米国と日本も30%を下回る水準まで落とし、
イタリアも同様に30%以下になっています。

また以前は50%を超えていたドイツでさえ、
30%程度に落とさざるを得ない状況になっています。

欧州の企業では、法人税率が高いドイツから
本社機能をスイスやオランダに移しているところが多く、
米国の企業はアイルランドへ向かうところが
比較的多くなっています。

その中でもGAFAは、オランダとアイルランドで
税法上の仕掛けを利用して、実質的に税金がかからないような
体制をとっています。

また、ウーバーは本国で利益を出さないようにして、
オペレーションをオランダに移し、
さらにタックスヘイブンの国を利用しています。

創業したときから、税金をなるべく支払わない
仕掛けを作っています。

このように「ちょっとしたテクニック」を使うだけで、
ある国には税金が納められないとなると、
不公平であり大きな問題です。

これを解消するためには、本社機能がある場所・国に関係なく、
全世界の利益に対してオペレーションの大きさで比例配分して
課税する方法しかありません。

たとえば、Amazonなら全世界における
日本のオペレーションの割合を算出し、
全世界の利益からその割合に応じて、日本で納税してもらいます。

これを「外形標準課税」と言います。

先日開催された、G20の財務相・中央銀行総裁会議でも
この問題はテーマになりました。

結論は出ていませんが、世界的に解決すべき
大きな課題であることは間違いないでしょう。



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※この記事は6月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、高齢ドライバーのニュースについて
大前が解説しました。

近年、高齢ドライバーの事故が目立っていますが、
10万人あたりの事故件数をみると、
若い年代の事故のほうがはるかに多いことがわかります。

このように、話題のニュースをそのまま受け入れてしまうと、
事実を正確に把握できない場合があります。

物事の実態を掴む際には、
絶対量で比較するのか、比率で比較するのか、
指標を選ぶところから始まります。

2019年06月14日(金) 

■ [1] 〜大前研一ニュースの視点〜
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ドラッグストア大手/TKP/LIXIL〜業界再編で生き残るには

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ドラッグストア大手 経営統合へ向け検討開始
TKP 連結営業利益100億円見通し
LIXILグループ 3つの役員人事案訝る異例の内容

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▼スギHDとココカラファインだけでなくマツキヨも統合し、3社でトップを狙え
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ドラッグストア大手のスギホールディングスと
ココカラファインは1日、経営統合に向けて検討を始めると発表しました。

2社で準備委員会を設け、7月31日をメドに基本合意書の締結を目指す考えとのことです。

ドラッグストアのビジネスモデルの特徴の1つは、
薬関連商品で利益を出せるため、その他の商品を安く販売できることでした。

この戦略は功を奏し、コンビニエンスストア市場を脅かすほどの売上に成長し、
店舗も順調に増えてきました。

しかし、ここにきてドラッグストア業界が過当競争に陥っています。

業界内の勢力図を見ると、ウエルシアとツルハHDがトップ争いをしていて、
マツキヨが5位、スギHDが6位、ココカラファインが7位となっています。

今回、スギHDとココカラファインが経営統合の検討をしていると報じていますが、
実は5位のマツキヨもココカラファインを狙っていると言われています。

スギHD、ココカラファイン、マツキヨの3社が統合すると、
売上高は約1兆5000億円になり、ウエルシアやツルハHDと比べても約2倍になり、
圧倒的なトップにたてます。

ドラッグストアの場合には、規模の経済の影響はそれほど働かないと思いますが、
それでも3社が統合した規模になると、購買力が著しく強くなります。

かつて購買力で差別化を図ることで、安売りを実現し、
売上高が業界初の1兆円を突破した当時のダイエーのような立場になれる可能性があります。

私なら、ここまで視野に入れます。2社で統合したところで、
売上は「1+1=2」という程度で、コストも2倍になるでしょうし、
それほど魅力を感じません。

もちろん本社機能を削ることができるでしょうが、
どうせ経営統合を図るならもっと大きな絵を描いて、
業界トップに躍り出ることを考えてほしいと思います。


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▼順調に成長するTKPには、さらに大きく成長できるチャンスがある
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貸会議室大手ティーケーピー(TKP)の2022年2月期の連結営業利益が
20年2月期予想より6割強多い100億円程度になる見通しです。

主力の時間貸し会議室では高水準な稼働率が続く他、
シェアオフィス事業の拡大も寄与するとのことです。

TKPは売上も営業利益も順調に伸びています。
日本リージャスを買収し、急成長を継続しています。

売上の内訳を見ると、室料以外に、飲料、宿泊、その他とあります。
その他に含まれるのは、研修のコーディネートや通訳、音楽照明などです。

このような室料以外の収益源も、今後は大いに期待したいところです。
地方大学の受験会場として東京のTKP会議室を貸し出していますが、
非常に面白いと思います。

市ヶ谷・四谷近辺にあるTKPの会議室を、
地方イベントの代用にするというのは、他にも需要があると思います。

また出張で東京に来たビジネスパーソンの宿泊施設として使ってもらうなど、
宿泊の分野を伸ばしていくこともできるでしょう。

ファーストキャビンなどと同様、安く泊まりたいニーズを捕まえることができれば、
大いにチャンスはあると思います。


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▼LIXILの今後は?会社側が提案するメンバーは豪華
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LIXILグループは先月30日、定時株主総会の招集通知を公表しました。
会社側が提案する8人、会社側と前CEOの瀬戸氏側の双方が提案する2人、
及び瀬戸氏側が提案する6人に分けて、
3つの役員人事案を諮る異例の内容となっています。

まず、会社側が提案している8人を見ると、
かなり強烈なメンバーが揃っています。

元リコー社長の三浦氏、元JVCケンウッド会長の河原氏、
ベネッセHD副会長の福原氏、元ミネベアミツミ専務の内堀氏、
前コニカミノルタ社長の松崎氏などです。

一方、瀬戸氏が提案するメンバーは、LIXIL社内の人が多く、
正直に言って面白みがないと感じます。

どちらのメンバーにも含まれている監査役の2人が、
瀬戸氏を支持しているということですが、私には理解できません。

それぞれの提案するメンバーを見て、
瀬戸氏の提案を支持するというのは、
経営者に対する感覚が鈍いとしか言えないでしょう。

会社側が提案するメンバーをまとめられる議長がいて、
実行できるCEOがいるなら、
かなり面白いことができるでしょう。

瀬戸氏が提案するメンバーとは「格が違う」と思います。

プロキシーファイトになるとのことですが、
常識的には会社側の提案が受け入れられるでしょう。

プロキシーファイトの結果、
どのような結末を迎えるのか注目したいと思います。


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※この記事は6月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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▼今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はドラッグストア業界のニュースをお届けしました。

各企業の競争がさらに激しくなっています。

経営統合により規模を拡大することで、
コスト競争力を高めることができます。

さらに、次の一手を考えるためには、
将来のビジョンや戦略を描く力が求められてきます。

今後、社会にどのように貢献し、
どのように企業を成長させていくのか?

答えのない時代だからこそ、
自ら考え、次の一歩を踏み出していく必要があります。

2019年06月07日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米為替政策/米中関係/米中貿易〜ファーウェイ問題は一企業としての問題ではない

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米為替政策 半期為替報告書を公表
米中関係 ファーウェイ宛小包をアメリカへ誤送?
米中貿易 中国、レアアース利用に言及

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▼貿易不均衡よりも為替の問題のほうが重要
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米財務省は先月28日、貿易相手国の通貨政策を分析した
半期為替報告書を公表し、日本や中国など9カ国を
「監視リスト」に指定しました。

監視リストは「為替操作国」とは異なり
経済制裁を伴いませんが、対日貿易については
巨額の不均衡に引き続き懸念していると指摘しました。

中国を為替操作国として経済制裁しなかったのは、
米国の中国への態度が軟化したということではありません。

単にファーウェイなどを情報操作、スパイ活動の理由で
制裁しているので、混乱を避けるためだと思います。

米国はかつての日本に対して、プラザ合意という
為替政策を実施し、日本の息の根を止めにかかりました。

1ドル235円前後だったものが、一気に100円を割り込む
水準に落ちて、日本経済は壊滅的な被害を受けました。

今日までその影響は残っていると私は思います。

貿易不均衡の問題よりも、為替の問題のほうが
はるかに重大で大変なことでした。

結局、日本の場合には1ドル360円から80円まで動いたので、
今の中国で言えば1ドル2元前後の領域です。

今の1ドル6元前後とはレベルが違います。

日本も関税をかけられたり、数量規制をされたりしながらも
何とか頑張っていましたが、プラザ合意が決定的な制裁となり、
ほとんどの日本企業は生き残ることができない状態になりました。

それまでの2倍以上の価格で売らなくてはいけないのですから、
それは厳しい状況だとわかります。

一部、自動車などが何とか対応できた程度でした。

中国は、日本にとってのプラザ合意をまだ経験していません。

貿易不均衡と言われているうちは、まだ序の口です。

これから本当の正念場を迎えることになると思います。



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▼ファーウェイ問題の原因は、中国共産党にある
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ニューズウィークは先月30日、
「中国激怒 Huawei宛小包をアメリカへ誤送?」と題する
記事を掲載しました。

米宅配大手フェデックスが中国の本社や支社宛に送られた荷物を、
無断で米国へ送ったり、差し止めていたことが判明したと
紹介しています。

フェデックスは誤送を認め謝罪した後、
意図的に誤配送をしたわけではないと弁明しましたが、
中国メディアからは不満が噴出しており、
今やボトムアップの反米運動が火蓋を切る勢いだとしています。

私の感想を言えば、フェデックスは世界で最も
信頼できる配送会社であり、「誤送」なんて考えられません。

米国政府からの強い圧力が働いたのではないでしょうか。

日本でも商品の販売中止が相次ぐファーウェイですが、
極めて優れた企業だと私は思います。

私は90年代から、中国企業の中で世界化するとしたら
ファーウェイだろう、と言ってきましたし、近年も
私が主催する企業経営者の勉強会である「向研会」で
ファーウェイの工場見学に行きました。

ファーウェイの問題は、一企業としての問題ではなく、
中国共産党と中国メーカーの関係性における問題と
認識する必要があります。

顔認証システムであれ、ルーターであれ、
中国メーカーは、中国国内で活動するためには、
中国共産党とデータを共有することが求められます。

そして、製品の中にそれを実現するための仕組みが
組み込まれているのです。

ファーウェイの場合には、その「中国共産党仕様」の
商品を誤って輸出してしまった、あるいは
そういう仕組みが組み込まれていた痕跡が残っている
商品があった、ということで問題視される羽目になりました。

つまり、ファーウェイ問題は中国共産党が
作り出している問題であり、根本的に解決するためには、
中国共産党が中国メーカーを「悪用」して
情報を提供させるのをやめなくてはいけません。

中国共産党が、中国企業を歪めているわけです。

ファーウェイは、企業として非常に優秀で、
特に5Gの技術には特筆すべきものがあります。

北欧勢の企業に唯一対抗できる企業と言って良いでしょう。

米国や日本の企業にとっても安価で優秀な技術を
持っている企業なので、本来使いたいはずです。

しかし、そのためにはファーウェイは中国共産党との
つながりがなく、安全であることを自ら証明できないと
いけません。

それを実現するには、会社を「中国国内向け」と
「世界向け」に分けるしかないと私は思います。

そして、世界向けの会社は、ボードメンバーから
技術者に至るまでグローバル人材を揃え、
完全に別の企業として経営する必要があります。

ファーウェイ問題については、
中国政府もそうとう怒り心頭の様子ですが、
私に言わせれば、そもそもの原因を作り出しているのは
「あなた(中国共産党)自身だ」ということです。



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▼レアアースは米中貿易戦争に有効な対抗策になりうる
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日経新聞は先月28日、「中国、レアアース利用に言及」と
題する記事を掲載しました。

中国の環球時報の胡錫進総編集長が、米国へのレアアースの
輸出規制について「中国は真剣に検討している。」と
ツイートした一方、人民日報もレアアースによる
報復の可能性を示唆したとしています。

いずれも具体策には言及していないものの、
米中貿易戦争で中国の対抗策が手詰まりになっていると見られる中、
レアアースを持ち出して米国を牽制した形とのことです。

尖閣諸島問題で揉めたときには、日本も中国から
レアアースの輸出制限をかけられて脅されました。

しかし日本の場合には、レアアースを使わなくて良い
商品開発が進んだこと、また台湾企業経由の「抜け道」で
輸入することができたこともあり、それほど大きな影響を
受けることはありませんでした。

現在のレアアースの産出量は中国がダントツでトップですが、
ロシア、ブラジル、ベトナム、そして北朝鮮にも
埋蔵されています。

中国にとっても重要な輸出商品ですし、レアアースの
輸出制限をそれほど長引かせるつもりはないと思います。

とは言え、いきなりレアアースの輸出制限をされれば、
軍事関連製品でレアアースを使っているものが多い
米国は大いに困るはずです。

トランプ大統領が癇癪を起こすには、十分でしょう。

その意味でも、レアアースは米中貿易戦争の武器として
有効に使えるものだと思います。



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※この記事は6月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ファーウェイのニュースについて
大前が解説しました。

この問題について大前は
「一企業としての問題ではなく、
中国共産党と中国メーカーの関係性における問題と認識する必要がある」
と述べています。

問題を解決する際には
「どこに本質的な問題があるのか」
問題の所在を見極めなくてはなりません。

そのためには、
その問題と直接関係のある登場人物だけでなく、
ビジネスの全体像を把握する必要があります。

2019年05月24日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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スマートシティー/コクヨ/富士フイルムHD/
キーエンス/ソフトバンクグループ〜2つの事業提携とその先行き

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スマートシティー トヨタ、パナソニックが住宅事業を統合
コクヨ ぺんてるに101億円出資
富士フイルムHD 営業利益2098億円
キーエンス キーエンス、高収益の秘密
ソフトバンクグループ 連結純利益1兆4111億円

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▼トヨタとパナソニック、コクヨとぺんてるの事業提携の先行きは暗い
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トヨタ自動車とパナソニックは9日、
住宅関連事業を統合すると発表しました。

2020年1月に共同出資会社を立ち上げ、
トヨタホームやパナソニックホームズなど
両社の住宅関連子会社を移管する計画です。

移動サービスの台頭で、都市のあり方が変わる中、
両社の資源を融合させ、街づくりに絡む事業を強化する考えです。

日本の住宅メーカーは専業が強く、
トヨタもパナソニックも住宅関連事業に参入したものの、
どちらも好調とは言えません。

そんな「イマイチ」同士が手を組んだところで、
果たして結果は期待できるのか?というのが、私の率直な感想です。

パナソニックは家電を組み込んだスマートホーム、
トヨタはEV充電施設がある街づくりを目指していく。

トップ同士が会談をすると
「こうした社会を実現するために」という話になるのでしょうが、
それだけでは競争力は生まれません。

積水ハウス、大和ハウスなどに対抗できるでしょうか。

また日本は、都市部でマンションが増え、
全体的に新築住宅が増えるわけではない市場環境なのです。

この点を踏まえて、どのような戦略を考えているのか、
私にはわかりません。

私に言わせれば、今回の発表において
「両社ともトップになれなかった」という事実を
受け止めた発言がなかった点に懸念を感じます。

過去の失敗をどのように分析し、今後どのような戦略で
勝ちに行くのかを述べるべきだったと思います。

それをせずに、「スマートシティー」という言葉だけで
逃げたのは、トップが戦略を考えていない証拠だと私は感じました。


コクヨは10日、筆記用具大手のぺんてるに出資したと発表しました。

101億円を出資し、事実上の筆頭株主となる見通しで、
国内事業に軸足を置くコクヨと、
海外進出を積極的に進めてきたぺんてると協業の可能性を探り、
海外市場での存在感を高める考えとのことです。

この提携も良い組み合わせではないと思います。

たしかに、ぺんてるは海外展開に成功していて、
逆にコクヨは海外進出に苦戦しています。

しかし、ぺんてるの海外拠点を使うだけで
コクヨの海外展開も上手くいくと考えるのは、甘すぎます。

コクヨの国内の収益事業の1つは、事務機器です。

ぺんてるが主力とするボールペン販売とは似て非なる商品です。

単に拠点があるというだけで、
コクヨの事務機器も簡単に海外で販売できるとは思えません。

そもそも両社ともに今後間違いなく縮小していく市場に
身を置いているリスクについて、
どのように考えているのでしょうか。

鉛筆やペンでモノを書く機会が減り、
紙媒体も少なくなってきています。

同業を憐れむ程度の考えで、
手を組んだところで全く成功できるイメージがわきません。

新聞記者は、安易にシナジー効果が期待できるなどと書きますが、
この記事もその典型例でしょう。



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▼富士フイルムは、ビジネススクールの良いケーススタディになる
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富士フイルムホールディングスが8日発表した
2019年3月期の連結決算は、営業利益が前期から70%増の
2098億円となりました。

08年3月期以来、11年ぶりに過去最高を更新。

事務機事業での構造改革が進んだほか、
医療機器やバイオ関連のヘルスケア部門も
好調だった要因とのことです。

10年以上前からカメラなどの
イメージングソリューション事業の売上が減少していく中、
ヘルスケア事業、ドキュメントソリューション事業などを強化し、
見事に経営を立て直したと思います。

特に大きく業績が落ち込んだ同業のコダックと比較すると、
富士フイルムの健闘が讃えられるべきでしょう。

フィルムそのものがなくなっていく時代で、
デジカメ分野にも決して強くなかったのに、
よくぞ生き残ったと思います。

これはビジネススクールの立派なケーススタディになるでしょう。

よくこの手のケーススタディでは、
日米の差で比較されることがあります。

たとえば、日本では電線メーカーは
光ファイバーの担い手に転じることで生き延びましたが、
米国ではガラスメーカーが光ファイバーのメーカーになったため、
電線メーカーは没落しました。

今回の富士フイルムの例は、日米の差ではなく、
企業の経営力の差として良い事例になると思います。

富士フイルムとコダックの経営陣の差が、
今日の両社の違いを生み出したといえるでしょう。



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▼キーエンス、オムロン、ファナックの違いとは?
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日経新聞は8日、
「キーエンス、高収益の秘密」と題する記事を掲載しました。

多くのメーカーが相次ぎ下方修正に追い込まれた中でも、
キーエンスは2019年3月期に7期連続で最高益を更新した、と紹介。

背景には、データ分析と収集による営業の効率化や
顧客のニーズを的確に捉えた製品開発がある一方、
故障やトラブルがあっても部品を即日配送するなど
スピード重視の姿勢も顧客の信頼を得ている要因としています。

自ら製造するわけではないファブレス企業のキーエンスが、
これほど高収益を出し続ける要因は、
世界の7不思議の1つと言っても良いくらいだと私は感じています。

BBTでも社長を務めていた佐々木道夫氏を招聘して
話を伺ったことがあります。

しかし、「なぜ、キーエンスがすごいのか」
もう1つわかりませんでした。

逆に言うと、それがすごいことなのかも知れません。

キーエンスの特徴は、お客様に生産性向上の答えを届ける
ソリューション営業が秀でている点です。

このあたりは、創業者の滝崎武光氏の影響が
強いのだと思います。

競合のファナック、オムロンとの大きな違いにもなっています。

オムロンは似たような商品を販売していますが、
ソリューション営業ではなく、
部品などの単品売りが中心です。

メーカーのオムロン、ソリューション営業のキーエンス、
その間にいるのがファナックという競合関係です。

この3社の競合関係と売上・利益を見ると、
この業界の状況をよく理解できます。

売上高で見ると、
オムロン(約8595億円)
→ファナック(約6356億円)
→キーエンス(約5871億円)の順です。

しかし、営業利益と純利益では全く逆の順序で、
キーエンス(営利3179億円、純利2261億円)
→ファナック(営利1633億円、純利1542億円)
→オムロン(営利766億円、純利543億円)になります。

そして、時価総額もキーエンス(約8兆円)
→ファナック(約3.9兆円)
→オムロン(約1兆円)の順になっています。



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▼ソフトバンクが決算を「派手」にした理由とは?
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ソフトバンクグループが9日発表した2019年3月期連結決算は、
純利益が前期比36%増の1兆4111億円となりました。

ファンド事業の含み益が初めて1兆円の大台に乗り、
利益拡大をけん引しました。

孫正義会長兼社長はサウジアラビアなどと組んだ10兆円規模の投資ファンド
「ビジョン・ファンド」の第2号ファンドを
立ち上げる考えを示しました。

この発表には、若干の「トリック」があります。

それは、含み益を決算に入れていることです。

含み益は、あくまでも「含み」ですから
まだ「実現」してはいません。

ですので、含み益を連結純利益に入れずに
計算する、という考え方もあります。

ところが、今回はあえて含み益を入れて
計算する方法をとり、またヤフーも連結子会社化して
決算に入れ込みました。

これだけ「派手」な決算にしたのは、
何か理由があるのだと思います。

ソフトバンクの有利子負債は10兆円を超えています。

その大きな負債への心配を打ち消したいのかもしれません。

「ビジョン・ファンド」の第2号ファンドについては、
第1号と同じように上手くいくのか?というと
難しいと私は見ています。

10兆円規模の投資に値する、
ウーバーやWeWorkのような企業が世界を見渡しても、
見つからないからです。



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※この記事は5月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、事業提携のニュースについて大前が解説しました。

トヨタとパナソニック、コクヨとぺんてる、
どちらも事業提携で競争力を強化する方針ですが、
はたして上手くいくのでしょうか。

住宅市場は専業が強く、
トヨタもパナソニックも住宅関連事業が好調とは言えません。

コクヨとぺんてるは主力商品が異なり、
海外展開が同じように上手くいくとは思えません。

事業提携を検討する際には、

「提携することによって規模の経済が発揮できるのか?」
「双方の強み弱みを補う存在となれるのか?」

協業後の競争力を冷静に把握することが大切です。

2019年05月17日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中貿易〜追加関税の影響とその結末予測

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米中貿易 中国輸入品への追加関税25%への引き上げ発動

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▼米中貿易問題の今、そして次のラウンドでは中国側の妥協だけでは済まない
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米政府は10日、中国からの約22兆円分の輸入品にかける
追加関税を10%から25%に引き上げる制裁措置を発動しました。

米中高官が9日、合意に向けてワシントンで協議したものの、
中国地方政府が地元企業に出す産業補助金をめぐり激しく対立したことで、
トランプ大統領が強硬姿勢に転じたものです。

これを受けて、中国側があらためて報復措置を予告。

世界経済への悪影響が懸念されています。

今のところ、中国側の報復は効いていません。

米国が関税を上げた分、
中国の輸出企業が値引きして対応しているからです。

それゆえ、米国はインフレにならず、
低インフレの状態を保つことができています。

このような中国企業が妥協している状況は、
日本にとっても大きな問題です。

なぜなら、中国に部品を納品している日本企業も、
「中国企業の妥協」の影響を受けるからです。

しかし、次のラウンドはこのままでは済まないと思います。

というのは、米国側のインフレを誘発しやすい商品が
並んでいるからです。

たとえば、iPhoneのような製品です。

中国側も出荷価格を25%値引きすることは難しいでしょうから、
関税が上がった分、米国の販売価格が25%上昇することになるはずです。

そうなると、米国ではインフレが進み、
米国の消費者も黙っていないでしょう。

中国の劉鶴副首相の発言を聞いていても、
中国側の妥協だけで丸く収まることは、やはりないでしょう。

日本は日米貿易戦争で「天変地異」を経験しました。

これから中国は同じ経験をすることになるはずです。

そして、もしかすると日本企業よりも
大変な道が待ち構えているかもしれません。

日本企業は米国に言われるがまま、米国内で生産する
体制を整えるなど、生産基地をバラバラにすることで
結果的に生き延びることができました。

しかし、中国企業の場合、米国内で生産するといっても
米国側が歓迎しない可能性があると私は感じます。

たとえば、ファーウェイが米国で生産すると言って
承諾されるとは思えません。

現状、中国企業は米国に言われたとおりにしてきただけで、
自らグローバル化するプロセスを経験していません。

ですから、米国から関税25%という条件を突きつけられた時、
対応するのは非常に難しいと思います。

生産拠点をベトナムやバングラデシュに移すといっても、
今の中国と同じ規模の生産拠点にはなり得ないでしょう。

広東省だけで6000万人規模ですから、単純に比較すれば、
それだけでベトナム全体の規模になってしまいます。

また、高速道路や港湾などのインフラ整備の点を見ても、
ベトナムやバングラデシュは中国ほど進んでいません。

かつての日本のように、業務を自動化することで
関税を上げた25%分を吸収するという方法もありますが、
これも難しいと感じます。

そうなると、最終的には関税の上昇分は、
やはり米国の消費者が支払うことになってしまうでしょう。

一方、この関税は米国政府の収入になりますから、
政府は濡れ手で粟の大金を得ることができます。

この資金を使って農民補助をすることもできるでしょうし、
トランプ大統領の人気取りもできるでしょう。

私に言わせれば、このような形で
25%の関税上昇分の収入を得ることは、暴力団と変わりません。

米国暴力団と言ったところでしょう。

これが米中貿易問題の現状です。



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※この記事は5月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、米中貿易のニュースについて大前が解説しました。

記事中で大前は、
今後の追加関税に関する予測を述べています。

予測をすることで、
次の一手、二手先を事前に考えることができます。

これは、どんなビジネスでも同様です。

楽観的なシナリオだけでなく、
悲観的なシナリオも準備しておくことで、
次の一手が遅れることを防ぐことができます。

2019年05月10日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ウクライナ大統領/米朝関係/ロ朝関係〜ゼレンスキー氏大勝の背景

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ウクライナ大統領 ゼレンスキー氏が大勝
米朝関係 非核化交渉からポンペオ国務長官排除を要請
ロ朝関係 ウラジオストクで初の首脳会談

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▼ウクライナの利益誘導政治の歴史を一新させてほしい
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ウクライナ大統領選挙の決選投票が先月21日実施され、
コメディ俳優のウォロディミル・ゼレンスキー氏が
約7割の得票率で大勝しました。

ペトロ・ポロシェンコ現大統領も敗北を認め、
ロシアとの対立が続くウクライナを
政治経験がない大統領が率いることになります。

政治経験のないことを問題視する声もありますが、
ウクライナの場合には政治経験の有無は
特に大きな問題にはならないでしょう。

それよりも今回の選挙で大きなことだと私が感じたのは、
従来的な政治に染まった政治家が大敗北を喫したということです。

ゼレンスキー氏が、より一般民衆に近い自分の立場を
上手に利用した結果だと思います。

ゼレンスキー氏は、テレビ俳優で、
米トランプ大統領と同様に知名度が高い人物です。

あるテレビドラマの中で、
「偶然大統領になってしまうという役」を演じたことがあるそうで、
今回の選挙でまさにそのドラマが現実になった形です。

選挙においては、イホル・コロモイスキー氏という富豪の方が
財政面でバックアップしたと言われています。

コロモイスキー氏は、
ロシアとの会話を求める路線らしいので、今後ロシアに近づいて、
ミンスク合意に戻る可能性もあるかもしれません。

ポロシェンコ現大統領は、
一貫してロシアと対立する姿勢でしたが、
結局のところ、その成果としては何も残っていません。

ウクライナ国民はそれを不満に思っているでしょうし、
本心を言えば、ロシアと対立しても、
大きな意味はないと思っているはずです。

ゼレンスキー氏はそうした国民の心境に
うまく同調できたのだと思います。

ロシアのプーチン大統領との関係で気にかかるのは、
選挙直後にプーチン大統領が、ウクライナ東部地域の住民に
ロシア国籍を付与することを認める大統領令に署名したことです。

プーチン大統領の早とちりなのかも知れませんが、
いくら何でもタイミングが早すぎると私は感じました。

今回の選挙は、「出来合い」だったのではないか?と
勘ぐりたくなるほどです。

物理的な占領はしていないものの、ロシア国籍を与えることで、
パスポートの力で人を吸引しようという行為に対して、
他のウクライナの地域からも反発を招く可能性は高いと思います。

ソ連邦崩壊以降、ウクライナは政治家による
利益誘導の政治が横行してきました。

はっきり言えば、
ろくでもない政治家しかいませんでした。

今回、ゼレンスキー氏という「無色」の人が
大統領になることで、それが一新されることを願うばかりです。

一般常識がある人として、
良いスタートを切ってもらいたいと思います。



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▼北朝鮮に打てる手はなし。ロシアに協力要請しても無駄。
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非核化を巡る米朝交渉で、北朝鮮外務省の対米担当の幹部が
先月18日、2回目の首脳会談が物別れに終わった責任は、
ポンペオ国務長官にあるとして、交代を求める声明を発表しました。

これに対し、米国国務省は北朝鮮と建設的な交渉を行う用意があるとし、
あらためて非核化に向けた協議に戻るように呼びかけました。

北朝鮮の担当者のほうが、
ズレまくっていてお話にならないレベルです。

北朝鮮側の担当者が考えているのは、
金正恩委員長とトランプ大統領が直接2人で話し合えば
何とかなる、ということでしょう。

そのためには、前哨戦に登場するポンペオ国務長官や
常に隣にいるボルトン大統領補佐官が邪魔なのだと思います。

そもそも一番おかしいのは金正恩委員長ですが、
北朝鮮という国でそれを言うわけにはいきませんから、
無理やり今回のような要求を突きつけているのでしょう。

もちろん、こんな要求に応じて、
ポンペオ国務長官が退くことはあり得ないでしょう。

北朝鮮の金正恩委員長は先月25日、極東ウラジオストクで
ロシアのプーチン大統領と初めて会談しました。

その中でプーチン大統領は、北朝鮮が主張する
段階的な非核化を支持し、制裁と圧力路線を維持する米国を牽制。

一方、金正恩委員長は、
自らの立場を米国のトランプ大統領に伝達するよう
プーチン大統領に要請したとのことです。

要請されたプーチン大統領にしても、
現在の立場を考えれば、とてもトランプ大統領に
そんなことを言える状況ではありません。

私に言わせれば、そもそも金正恩委員長とプーチン大統領が
会談した理由すら理解できません。

金正恩委員長は、ロシアに足並みをそろえてもらって、
米国の制裁を打開できると思っているのでしょうか。

たしかに、米国の北朝鮮に対する制裁は
厳しすぎるという意見もあり、中国も同調しています。

とは言え、ロシアが勝手に制裁を解除すれば
米国からの締め付けは厳しくなるのは必然で、
ロシアとしては簡単に実行できるはずもありません。

それでも金正恩委員長がプーチン大統領に会いに行ったのは、
にっちもさっちもいかない状況で、
他にやれることもなかったからでしょう。

一方のプーチン大統領からすれば、
一帯一路構想の件で中国に赴く予定があったので、
そのついでに寄り道した程度だと思います。

この件に関して、
ロシア・プーチン大統領ができることはほぼありません。

今回の会談でプーチン大統領は金正恩委員長に
「6者協議」の復活を提案したそうですが、
まさに打てる手立てがないことを証明しているようなものだと思います。

6者協議は、米国、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、日本の6カ国で
北朝鮮の核開発問題について直接協議を行う会議体でしたが、
2009年北朝鮮は離脱を表明し、さらに「6者協議は永遠に終わった。
6者協議には絶対に参加しない」とまで発言しました。

ゆえに、6者協議を北朝鮮の発案で復活させるというのは、
さすがにあり得ない話です。

結局のところ今回の会談は、ウラジオストク好きのプーチン大統領が、
中国に行くついでに金正恩委員長を引っ張り出しただけ、というものに
過ぎないと思います。



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※この記事は4月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ウクライナ大統領選挙のニュースについて
大前が解説しました。

選挙結果には驚きますが、長年の流れを追っていれば、
今回の結果にも納得できるかもしれません。

目の前のニュースを単発的な事象として捉えず、
それまでの背景を含めてしっかり理解することは、
ニュースの本質を正しく見抜くことに繋がります。

そのためにも、常に学び続けることで、
教養を高めていく必要があります。

2019年05月03日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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LIXILグループ/TKP/日本電産〜TKPとリージャスのシナジー効果は期待できるか

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LIXILグループ 創業家・潮田氏が全役職辞任へ
TKP 日本リージャスHDを買収
日本電産 オムロンオートモーティブを買収

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▼LIXILグループの経営は、誰がやるにしても非常にむずかしい
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LIXILグループは先月18日、
潮田洋一郎会長兼CEOが、5月末に取締役を辞任し、
6月の定時株主総会を経て、会長とCEOからも退くと発表しました。

会見で潮田氏は、2019年3月期の連結業績が赤字に転落する要因は、
前CEO瀬戸氏の業務執行にあると強調。

自身が全役職から退くことで
瀬戸氏を任命した責任をとるとしています。

今期約500億円の赤字を計上した原因は、瀬戸氏を招く前にあり、
全てを瀬戸氏の責任とするのは間違いだと私は思います。

潮田氏は、自身の38年間の取締役人生の中で、
最大の失敗は瀬戸氏を招いたことだと述べています。

しかし、潮田氏が手がけたイタリアの
Permasteelisa S.p.A社の大型買収も結果として大失敗でしたし、
やはり瀬戸氏だけをクローズアップするのは違和感があります。

機関投資家はLIXILの経営状況に鑑み、
臨時株主総会を要求していましたが、
潮田氏・山梨氏の取締役退任が決まったので、
定時株主総会だけで収まるかもしれません。

ただし、大株主の状況を見ると、
アクティビストファンドが臨時株主総会を要求し、
潮田氏を追求する可能性もあると思います。

ちなみに、潮田氏の信託財産を扱う野村信託銀行の持分比率は
約3%に過ぎませんから、プロキシーファイトになった場合、
ほとんど力を持っていないと言えます。

また従業員持ち株会の2%も、
潮田氏を支持する可能性も低いと私は思います。

このような状況を受けて、
潮田氏は本社の移転やシンガポールの企業による買収など、
色々と画策しているという報道もあります。

しかし、今の状況で潮田氏や山梨氏が
状況を打開することは難しいと感じます。

とは言え、瀬戸氏が返り咲いたとしても、
この会社を経営できるのか?というと疑問が残ります。

LIXILは「ヤマタノオロチ」に例えられます。

頭がたくさんあって、制御不能ということです。

国内企業の合併だけでも未だにしっくり来ていないのに、
縁もゆかりもないグローエなども買収し、
グループ全体としてのまとまりがありません。

この会社の経営は非常に難しく、
まともに経営できる人はほとんどいないと思います。



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▼TKPのリージャス買収に、本当にシナジー効果はあるのか?
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ティーケーピー(TKP)は先月15日、
スイスのIWG傘下の日本リージャスHDを買収すると発表しました。

5月末までに発行済み株式の1万3700株を467億円で取得し、
完全子会社化とするものです。

TKPはレンタルオフィス市場での展開を加速する考えです。

TKPは売上も営業利益も驚くほど伸びています。

その状況からも、買収はもちろん可能ですが、
私はやや懸念しています。

というのは、TKPとリージャスではビジネスモデルが異なるため、
シナジー効果が本当に期待できるのかわからないからです。

TKPは貸会議室を展開しています。

料飲・ケータリングや宿泊などオプションをつけて
付加価値を提供しているのが秀逸ですが、
ビジネスモデルの根幹は会議室を貸すことです。

一方、リージャスのビジネスモデルは
WeWorkと同様にレンタルオフィスです。

一括して不動産を借りておき、
煩雑な不動産契約などを省き、それを貸し出します。

ネットで簡単に申し込めて非常に手軽で、特にスタートアップ企業や
フリーランスなどにはありがたいサービスです。

しかし今、レンタルオフィス市場の代表的な存在である
WeWorkに対して、三井不動産、住友不動産、森ビルなどが
大いに警戒していて対抗する動きを見せています。

乱戦模様になってきていて、今後も今までと同じような収益が
見込めるのか疑わしい状況になりつつあります。

また、TKPの売上が約300億円ですから、
リージャスはほぼ同程度の規模と言えます。

シナジー効果は一部あるにしても、
この点からもややリスクが高い買収だと感じます。

貸し会議室市場は、TKPがユニークに開発してきた市場ですが、
レンタルオフィス市場はそうではありません。

伝統的な企業がひしめきあうなど競合が非常に多い市場です。

今回のリージャスの買収も吉と出るか凶と出るか、わかりません。

それほど簡単にシナジー効果を期待できる状況ではないと
私は見ています。



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▼1000億円の買収額は高すぎる。永守氏には何か秘策があるのか?
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日本電産は先月16日、オムロンの子会社で、車載電装部品を手がける
オムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収すると発表しました。

買収価格は約1000億円を見込み、
これにより日本電産は重点成長事業と位置づける
車載事業を強化する考えです。

100社以上の企業買収で1つも失敗したことがない、という
日本電産の永守氏ですから、今回の買収も問題ないのだと思います。

しかし、単純計算すると買収額を回収するまでに数十年かかるので、
この点をどのように見ているのか、正直私には理解できません。

日本電産は売上高2兆円を目指して成長していますが、
本業の精密小型モーターが伸び悩んでいます。

そこで、M&Aで特に成長著しい車載などの事業に1000億円を投資し、
さらに大きく伸ばしていこう、ということでしょう。

オムロンオートモーティブの利益は30〜40億円程度です。

永守氏が経営するとなると、さらに利益を出せるのかもしれませんし、
あるいは永守氏には外から見えない別の秘策があるのかもしれません。

また、逆にオムロンの立場から見ても、
私には売却した理由がピンときません。

これから先、IoTが進み、自動車そのものがサイバー化していく
時代において、今回のオートモーティブが持つ技術や資産は
重要になってくると思います。

なぜ、その事業を今手離してしまうのでしょうか。

永守氏の狙いもオムロンの売却理由も、現時点で理解できませんが、
今後どのような展開を見せてくれるのか注目したいと思います。



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※この記事は4月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、TKPの買収の話題について大前が解説しました。

TKPはこれまで、貸し会議室市場という独自の市場を開拓してきました。

一方、リージャスが戦ってきたレンタルオフィス市場は
貸し会議室市場の近接市場ではありますが、
その特徴はTKPと異なります。

事業領域の拡大は、
企業の成長にとって有効な一手ですが、

「その市場での競合は誰なのか」

「KFS(Key Factor for Success/勝ち残るために必要なカギ)は何か」

を把握することで、
新たな戦い方が必要かどうかを見極めることができます。

2019年04月12日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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楽天/独ダイムラー/米ボーイング〜コンピューターと人間の衝突

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楽天 有価証券評価益 約1100億円計上へ
独ダイムラー 中国・浙江吉利に小型車ブランド売却へ
米ボーイング 「737MAX8」墜落事故で装置の誤作動認め

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▼リフトで利益が上がったが、投資案件トータルで見ると?
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楽天は1日、米リフトの上場に伴い、2019年1〜3月期に
約1100億円の有価証券評価益を計上する見通しと発表しました。

一方、リフトの株価は上場2日目にして公開価格の72ドルを割り込み、
年内の上場を目論むスタートアップにとっての試金石となっています。

リフトの時価総額は、上場前の推計企業価値115億ドル予想に対して、
251億ドルまで跳ね上がりました。

今後のリフトの価値がどの程度になるのかは、まだわかりかねます。

楽天はリフトの株式を11.5%保有しているので、
時価総額が約2兆円なら有価証券評価益は2,000億円ほどに相当します。

楽天のリフトへの投資額は約300億円です。

この投資案件だけで見れば、大きく利益が出たと言えますが、
その他の投資案件で大きな損失が出ています。

代表的なものを挙げれば、バイ・ドット・コムに2.5億ドル、
プライスミニスターに2億ユーロ(のれん代172億円減損)、
コボに3.15ドル(のれん代78億円減損)の資金を投じていますが、
全く回収はできていません。

さらに大きいのは、
ベラルーシのバイバー・メディアに投じた9億ドルです。

現時点で214億の減損処理が行われています。

これらを合わせて考えると、この手の投資案件の結果としては
決して悪い結果ではありませんが、楽天の投資全体で考えると、
決して手放しで喜べないのではないでしょうか。



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▼スマートはベンツブランドの中で、お荷物だった
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独ダイムラーが小型車ブランド「スマート」の株式の50%を
中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団に売却する交渉を
進めていることが、先月26日明らかになりました。

ダイムラーは、ベンツ、マイバッハ、AMG、ふそう、
フレイトライナーなどの様々なブランドを保有しています。

スマートは40〜50年前のスバルを彷彿とさせる小さい車です。

私は欧州に旅行した際に、何度か運転したことがあります。

販売台数は、SUV、ベンツCクラス、
ベンツEクラス、ベンツA/Bクラスに次いでいます。

それでも、約10万台/年間に過ぎず、
ベンツらしくないブランドのため、ダイムラーにとっては
現実的にお荷物ブランドになっていたのは間違いありません。

ですから、浙江吉利控股集団への売却は
良い選択だったと私は思います。

そして、おそらく浙江吉利控股集団であれば、
スマートというブランドをもっと良い形で活かせるだろうとも感じます。



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▼ボーイング社の企業姿勢そのものに不信感を覚える
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米ボーイングのミューレンバーグCEOは4日、
新型旅客機「737MAX8」が昨年12月と今年3月に墜落した事故について、
失速を防ぐため自動で機首を下げる装置が
いずれも不正確な情報が元で起動したのは明らかと述べ、
誤作動が起きたことを認めました。

一方、「私達にはリスクを排除する責任があり、
その方法は分かっている」と述べ誤作動の再発防止に自信を示しました。

この事故の原因は、1994年に発生した名古屋空港の
エアバス(中華航空140便)墜落事故と酷似しています。

事故の根本的な原因は、
コンピューターによる自動制御と人間による判断の衝突です。

今回の事故は、コンピューターセンサーによって
機首を下げようとする自動制御の動きと、
パイロットの判断が対立したために起きています。

この問題は飛行機事故に限らず、
原子力発電所の事故でも発生しています。

米国のスリーマイル島原発事故では、自動制御に対して
オペレーターがパニックを起こして手動で動作させたために、
大きな事故に発展しました。

今後、車の自動運転が一般化していく際にも、
同じ問題に直面するはずです。

明らかにコンピューターが間違っているときには、
人間が正しい判断でオーバーライドする必要があります。

その意味でも、スリーマイル島原発事故のように、
人間がパニックにならないことも大切です。

今回の事故で言えば、訓練を受けたパイロットでしたから、
その判断を尊重して自動運転をオーバーライドできるように
設計しておくべきだったと私は思います。

初歩的な安全設計が欠如していたと私は思います。

また、こうした事実をボーイング社が理解していないと思われる点に、
私は大いに不安を覚えます。

以前JALとANAが購入したボーイング機のバッテリーから
出火した事故がありましたが、本当に原因を解明できたのでしょうか。

企業としての姿勢に誠実さを感じられません。

また、アメリカ合衆国連邦航空局 (FAA)は
「737MAX8の性能に問題を確認できない」としていましたが、
一体どういうことなのか?と思います。

もはやアメリカ合衆国連邦航空局 (FAA)の信頼は、
地に落ちたと言わざるを得ません。



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※この記事は4月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、ボーイングのニュースについて大前が解説しました。

大前が記事中で述べているように、
「コンピューターによる自動制御と人間による判断の衝突」は
今後も起こりうる問題です。

今後AI化が進む中で、
私たちはいかに機械と付き合っていくのか。

コンピューターが判断を間違えてしまう時も、
本質的課題に対応することになるのは私たちです。

今後どんなに技術が進歩するとしても、
本質的課題を発見し解決する力は身につけておく必要があります。

2019年04月05日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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ドイツ金融大手/決済サービス/三井住友カード/デジタル銀行〜テクノロジーの進化に揺れる金融業界

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ドイツ金融大手 独コメルツ銀行との統合交渉へ
決済サービス 米ワールドペイを買収
三井住友カード 米スクエアとの提携強化
デジタル銀行 タイで「スマホ銀」開業

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▼ドイツも英国系と同様、銀行の統合による大規模化の流れ
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経営再建中のドイツ銀行は先月17日、
ドイツのコメルツ銀行との統合交渉を進める方針を
明らかにしました。

ドイツ政府は、
これまで経済成長を支える強力な銀行が必要だとして
両行の統合に前向きな姿勢を示してきました。

ドイツ銀行は単独での再建が進まない中、
政府の後押しを得て統合に舵を切る考えです。

ドイツ銀行には、
ドナルド・トランプグループとの関係性もあるなど、
何をやっているのかわからない「悪さ」を感じてしまいます。

収益性も低く、
かつての負債処理が重くのしかかっている状況です。

セグメント別売上を見ると、
売上高が低い資産運用部門が唯一安定しているものの、
その他はアップダウンが激しくなっています。

最近の状況で言えば、
投資銀行部門は特に大きな損失を出しています。

コメルツ銀行との比較で見ると、売上高、時価総額、
社員数、営業拠点などはドイツ銀行が上回っていますが、
純損益になるとコメルツ銀行が優れています。

ドイツ屈指の銀行同士の大型統合ですが、
おそらく欧州委員会の承認も得られるでしょう。

両行が統合すると、ドイツの銀行も英国系の銀行と同様、
ますます大規模化していく流れになっていくと思います。

その中で懸念されるのは、
欧州の銀行に対する投資家の警戒心が強いことです。

ビジネスウィーク誌によると、欧州の銀行は
「ブックバリュー100に対して、マーケットバリュー80」と
なっています。

米国の銀行は
「ブックバリュー100に対して、マーケットバリュー140」ですから、
明らかに投資家の評価が違います。

この点は、欧州の銀行全体の課題と言えるでしょう。



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▼世界的な潮流は、クレジット決済からデビット決済
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米金融サービス大手、
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS)は
先月18日、決済サービス大手のワールドペイを買収すると発表しました。

負債を含めた買収総額は430億ドル(約4兆8000億円)で、
これにより電子商取引(EC)やオンライン決済の分野で
規模の拡大をめざす考えです。

私に言わせれば、
「なぜ、この期に及んでこんな買収をするのか?」全く理解できません。

決済手段の世界的な兆候を見れば、
主流になっているのは、クレジット決済ではなく、
特に中国を中心とするデビット系決済です。

私ならば、デビット系決済のサービスを自分で作ることを考えます。

さらに将来的なことを見据えても、
ブロックチェーンなどの技術を活用し、
ネットだけで決済が完結する時代になることは確実です。

そのような時代の流れがあるにも関わらず、
クレジットカード決済のワールドペイに
4兆円も支払う意味があるのか?ということです。

あえて言えば、現時点ではワールドペイは
決済行為の約半分ほどを握っているので、
まずはそこを抑えることから始めよう、ということ
なのかも知れません。

同じように、三井住友カードもクレジット決済という
古い発想に固執してしまったようです。

三井住友カードは先月26日、決済端末を提供する
米スクエアとの提携を強化すると発表しました。

4月から期間限定で中小企業などに
スクエアの決済サービスを無償で提供する他、
売上高30万円まで手数料を無料にするとのことです。

POSシステムがなくても、スマホなどで決済できる
スクエアのクレジット決済システムは
よくできています。

しかし、そもそも「クレジット決済」そのものが
問題になってきていると私は感じています。

デビットカードの決済手数料が安価にもかかわらず、
いまだにクレジットカードの決済手数料は
3%を超えるケースもあります。

未払いリスクをクレジットカード会社が負うことになるので、
その分手数料が割高になってしまうのです。

一方、デビット決済の場合には、
その瞬間に決済が行われるので、未払いのリスクはありません。

ゆえに、手数料を低く抑えることができます。

特に中国を中心とするデビット決済の流れが、
世界的にも広がっていくように思います。

こうした流れを見据えた提携とは思えません。

三井住友カードもスクエアも
旧態然としてクレジットカードに依存し続けるなら、
将来は明るくないでしょう。



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▼LINEは決済サービスに注力すべき
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日経新聞は先月20日、
『タイで「スマホ銀」開業』と題する記事を掲載しました。

シンガポール大手のユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)が
アプリだけで営業する銀行をタイで開業しました。

実店舗に行かなくても口座を開設できる他、ゲーム感覚の預金サービスや
チャットでコールセンターとやりとりできるアプリなどを備えています。

ネットバンキングの人口普及率が74%と世界首位のタイで、
利用者を拡大する考えです。

ユナイテッド・オーバーシーズ銀行は
シンガポール3大銀行の1つです。

預金サービスも全てスマホで行うというのは
非常に面白いと思います。

明らかに日本よりも進んでいます。

日本では銀行筋の力が強いため、
この手のサービスを展開しづらい面もありますが、
それでもLINEが積極的に手がければ良いのに、と私は思います。

国内月間アクティブユーザー数が7800万人に上るのが
強みになるでしょう。

なお、フェイスブックはLINEと同じような
コミュニケーションシステムからスタートして、
今では決済市場に積極的に参入しています。



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※この記事は3月31日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、決済サービスなど金融関連の話題について
大前が解説しました。

テクノロジーの進化に揺れる金融業界。

既存勢力と新たなプレイヤーの構図は、他の業界で働く人にとっても、
企業の生き残り戦略を考えるうえで非常に参考になります。

LINEとメルカリの提携が最近発表されましたが、
今後どのような一手を考えているのか。

一方、大手クレジットカード会社はどんな動きをとるのか。

「もし自分が当事者だったらどうするか(What if〜?)」

世の中で起きていることを、自分事として考えることで
戦略的思考を磨くことができます。

2019年03月29日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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株主還元/資金配分/米株式市場/米政策金利〜世界経済の現状と先行き

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株主還元 2018年度に世界で約265兆円
資金配分 米、自社株買いに規制論
米株式市場 米株の強みとコストの怖さ
米政策金利 政策金利を据え置き

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▼経済のソフト化によって大きな設備投資が不要になった
─────────────────────────
日経新聞が21日報じたところによると、
世界の企業が行った配当と自社株買いの合計額は2018年度に
2兆3786億ドル(約265兆円)と過去最高となったことがわかりました。

金融緩和で資金が大量に出回っていることに加え、
産業構造の変化により企業が設備投資を行わなくなっていることが要因で、
投資家が株主還元ばかりを重視するようになれば、
特定の企業にお金が集中する富の偏在を生みかねない現状としています。

経済がソフト化し、大きな設備投資をする必要が
なくなったということが大きな要因になっています。

かつては100〜200億円の投資も当たり前だったシリコンバレーでも、
今は1〜2億円でも充分な案件が増えています。

企業が設備投資をしなくなったのではなく、
大きな設備投資の必要がない成長機会が増えた、というのが実態です。

ユーザーが買ってくれたスマホが設備投資の役割を果たすなど、
現在の設備投資は特定の企業が大きく実施するものではなくなっています。

「5G」の設備投資は従来型の大きなものですが、
それでも初期の頃の携帯電話網の設備投資額に比べると小さくなります。

経済のソフト化に伴い、企業には資金が余ります。

これを株主還元し、株価が高くなるという構図です。

株価が上昇することで「富の偏在」という問題が発生する、という
指摘もありますが、米国企業のように401Kを組み込んでいると、
むしろメリットを享受できます。

例えば、近年では株価が低迷していますが、GEは自社株を
401Kに組み込んでいて、ジャック・ウェルチ氏が経営者の時代に
株価は約30倍になりました。

この自社株を保有できた社員は、
もしGEを解雇されても困ることはなかったでしょう。

失業が増えても、早期退職を迫られても
個人として安心できるというのは非常に大切なことだと思います。



─────────────────────────
▼競争力を前提とせず、給与・賃金を上げても問題は解決しない
─────────────────────────
日経新聞は12日、「米、自社株買いに規制論」と題する記事を掲載しました。

米民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務が
企業は労働者のために資金を使うべきだとし、
自社株買い規制の必要性を訴えたと紹介。

トランプ大統領は、株式市場にショックを与えかねない政策には
慎重姿勢ですが、共和党内の一部にも規制に同調する動きが見られ、
背景には米国の深刻な格差問題があるとしています。

シューマー氏は金融関係では、特に大きな発言力を持つ人物です。

しかし、今回の発言にはもう1つ具体性がなく
説得力が欠けると私は感じました。

労働者のために資金を使うというのは、具体的に何を意味しているのか?と
考えると、おそらく「給料」のことだと思います。

しかし、そうであれば、一体どんな競争力を前提として
給料を上げることができるのでしょうか?

競争力を持つIT関係の米国企業は、すでに世界最高水準の
給料を支払っています。

世界的に競争力を失っている、下請け企業やレストランなどで
働く人の給料を上げるとなると、即インフレを招くことになるでしょう。

すでに多くの米国企業が競争力を失い、
中国からの輸入が止まらない時期に、このような発言をされても、
「結局、何をどうすれば良いのか?」というのがわかりにくいと思います。



─────────────────────────
▼長期的に見ると、米国株・米国不動産は群を抜いて安定している
─────────────────────────
日経新聞は24日、「米株の強みとコストの怖さ」と題する記事を掲載しました。

ウォーレン・バフェット氏が、
経営するバークシャー・ハザウェイの株主に年に1回送る手紙で、
『今年は「米国株に投資する強み」と「コストの怖さ」を指摘した』と
紹介しています。

株高が米国の多くの国民の幸せに結びつく構図が、
米株の長期上昇トレンドを維持させていることや、
売れ筋投信の多くが高コストのアクティブ型である日本の投資家こそ
コストの重要性を知るべきかもしれないとしています。

日本でも米国でも、運用成績が良い投資信託は、
ほぼ全てが「米国株」を組み込んでいます。

日本株なども良い時期はありますが、
長期間で見ると米国株だけが圧倒的な安定感を誇っています。

トランプ大統領は、米国が負けている感を演出していますが、
実際にはそんなことはありません。

GAFAを筆頭に、米国企業は最先端市場でも強いですし、
株価も上がっています。

競争力も圧倒的で、IT技術者などの給与もかなりの高水準です。

結局、ブラックマンデー、リーマンショックなど
大暴落があったとしても、10年、20年、30年という長い目で見ると、
「最も上昇しているのは米国株」というのが実態となっています。



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▼米国の政策金利据え置きは、決してマイナスのことではない
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米連邦公開市場委員会(FOMC)は20日、短期金利の指標である
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25−2.50%のレンジで
据え置く方針を全員一致で決定しました。

海外経済の成長鈍化が逆風となり、米国経済も予想より減速していることを
受けたもので、2018年12月に続く追加利上げも見送りました。

パウエルFRB議長の発表を見ていて、なぜ、わざわざ惨めな
言い方をしてしまったのだろう?と残念な気持ちになりました。

FF金利の誘導目標を据え置く理由を、
「海外経済の成長鈍化」と言う必要は全くありません。

私なら、このような言い方は絶対にしないでしょう。

日米欧の政策金利の推移を見ると、
ECBも日銀も0%あるいはマイナスに張り付いていて、
FRBだけが2.5%近辺まで上昇してきています。

これを根拠に、「米国企業は非常に好調であり、
これ以上金利を上げる必要性がなくなったので据え置く」と
発表するべきだったと思います。

海外経済の成長鈍化などと「他に原因」を求める必要はなく、
欧州、日本という巨大経済が停滞している中、
米国経済はよく持ちこたえていて、これを維持していく方針だ、と
言えば何も問題はなかったはずです。

また、中央銀行の総資産残高を見ても、FRBは残高を下げてきています。

この点もリスクマネジメントができているということを強調して
発表できたと思います。

一方、日本は大きな問題を抱えています。

日銀はいまだにマイナス金利を継続し、日銀が抱える総資産残高は
上昇していて、リスクは高くなっています。

日本としては、かなり重大な問題として受け止めて
対処するべきものです。



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※この記事は3月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は「お金」をテーマとしたニュースについて大前が解説しました。

お金の流れを把握するためには、
そこに登場する様々なプレイヤーを把握することから
始めなくてはなりません。

中央銀行、政府、企業、個人。

舞台は国内だけでなく、海外まで及び、
いまでは仮想空間にまで繋がっています。

お金がどこからやってきて、どこに行くのか。

これらを一つずつ紐解いていくことで
お金の流れを理解することができます。

お金の流れが変わる瞬間は、
世の中が変わる瞬間でもあります。

時代の潮流に乗るためには、
お金の流れを把握することも大切です。

2019年03月22日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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世界自動車大手/EU情勢〜迷走する英国に残された選択肢

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世界自動車大手 「合意なき離脱」なら英生産撤退の可能性
EU情勢 「今こそ欧州ルネサンスの時」

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▼期日が迫る英国のEU離脱。英国が取れる選択肢は?
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トヨタ自動車は6日、英国のEU離脱が「合意なき離脱」になった場合、
2023年以降に英国の生産から撤退する可能性があることを示しました。

EU離脱でEUとの間で完成車や部品の取引に関税が発生し、
英国の競争力が低下するためです。

企業は自衛の姿勢を強めている現状です。

インドのタタ自動車の傘下にあるジャガー・ランドローバーは、
約4,500人の人員削減で大幅な縮小路線を示し、
日産はインフィニティ、BMWはMINIの生産中止を発表しています。

ホンダ、トヨタも追随する動きを見せており、
ボクスホールのみが残るという状況になりつつあります。

40〜50万台の自動車を生産していた企業が、
次々と大規模な削減や撤退をするわけですから、
英国内は大変な状況になってしまうでしょう。

その原因になっているのは、もちろん英国のEU離脱問題です。

離脱までの期限が迫る中、英議会下院は14日、
EUからの離脱の延期をEUに求める政府動議を可決しました。

メイ首相の不人気な離脱案を20日までに承認し、6月30日までの
延期を経てEUを離脱するか、さもなければEUが設定する条件に従い、
長期の離脱延期を余儀なくされるか議会に選択を迫る内容です。

21日に始まるEU首脳会議の前に、依然として予断を許さない情勢です。

英国側は3月29日から6月30日までの延期を要請するとしていますが、
EU側からすれば、延期の明確な理由も示さずに
何を勝手なことを言っているのか、というところでしょう。

英国は議論の必要性を強調するかもしれません。

しかし、EUが合意できる内容は数年前に英国議会で否定されているので、
英国側の主張を鵜呑みにできないのも頷けます。

英国が取れる選択肢は2つあります。

1つは6月30日までの延期。

ただし、これにはEUの承認が必要です。

EUに承認されなければ、このまま3月29日がデッドラインに
なってしまいます。

もう1つの選択肢は離脱そのものを引き下げるというもの。

届け出そのものを引き下げれば、
英国民は落ち着いて再度話し合いをすることができます。

現在の状況からすると、野党を含め「再投票」に傾いており、
離脱ではなくEUに留まるという意見が約6割に達するのではないかと
見られています。

そのような結果になれば、以前の離脱合意の国民投票は
何だったのか、という意見もありますが、私に言わせれば、
2年半前のことであり、当時は議論が不十分だったと思います。

当時の英国民は、アイルランドの国境問題を筆頭に
EU離脱で生じる問題について十分に理解していたとは言えません。

ビジネスウィーク誌は、メイ首相は何とかEU離脱を
成し遂げるのではないかという論調の記事を掲載しているようですが、
私にはそうは思えません。

おそらく、一度EU離脱を引き下げる状況になり、
国民投票をすることになるでしょう。

そして、その状況になればメイ首相は辞表を出すしかないと思います。

私は当時から、再度国民投票をするしかない、と述べてきました。

3月29日の期限が迫り、いよいよ英国にはその道しか残されていないと
あらためて感じます。



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▼足元がおぼつかなくても、大胆な提案を繰り広げるマクロン大統領の二面性
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フランスのマクロン大統領は5日、EU加盟国の主要紙に寄稿し、
「今こそ欧州のルネサンス(再生)の時だ」と呼び掛けました。

5月の欧州議会選に向け、域内で勢いづく
右派ポピュリズム(大衆迎合主義)への警戒した内容で、
欧州の民主主義をサイバー攻撃や偽ニュースなどから守る
EU機関の新設などを提案しています。

以下が、マクロン大統領が提案している主な内容です。

・右派ポピュリズム(大衆迎合主義)への警戒
・シェンゲン協定(国境検閲無しで自由往来可能)の再検討
・欧州安全保障理事会の設置
・同一労働・同一賃金を保証するEU全体の社会的な盾の導入
・気候変動対策に融資する「欧州気候銀行」の創設
・デジタル巨人企業へのEUレベルでの監督体制の創設
・EU主要機関や加盟国、市民の代表者らが会する「欧州会議」を設置

「欧州会議」と「欧州議会(EU)」は何が違うのか?など、
個別に気になる点も多々ありますが、そもそもナポレオンの帽子をかぶって、
フランス大統領をやっているなどと揶揄されている人が、
よくこのようなことを提案できるものだと思います。

燃料税の導入だけでフランス国民にそっぽを向かれているなど、
足元がおぼつかない状況でも、このようなことを考える余裕があるというのは、
さすがに根っからの「エリート」なのだと感じます。

マクロン大統領の二面性がよく表れていると言えるでしょう。



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※この記事は3月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、英国のEU離脱問題について大前が解説しました。

3月29日という期限が迫る中、いまだに迷走が続いている英国。

このような事態になると、どれほどの人が事前に把握していたでしょうか。

2年半前に離脱合意した国民投票がありながら、
期限ぎりぎりまで方針が固まらない様子を見ると、
首相も国民もこの問題の重大さを十分に
理解できていなかったように感じます。

意思決定をする際は、感情に流されることなく、
その決断の影響範囲を見極めなくてはなりません。

そのためには、物事を俯瞰して捉えることが大切です。

どんな立場であれ、影響範囲を確認したうえで
決断を下すことが意思決定の基本となります。

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