2019年11月29日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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トヨタ自動車/ウエアラブル端末/三菱ケミカルHD/
キリンHD/リニア中央新幹線〜戦略が欠如した買収劇

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トヨタ自動車 中国新車販売台数で2位
ウエアラブル端末 身につける端末、病気兆候つかむ
三菱ケミカルHD 田辺三菱製薬を完全子会社化
キリンHD ニュー・ベルジャンを買収
リニア中央新幹線 リニア、静岡着工見通せず

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▼中国で20年間苦労してきたトヨタ
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中国の新車販売台数でトヨタ自動車が
前年同月比5位から2位に浮上したことがわかりました。

SUVなど現地の若者向けのデザインが成功した他、
販売価格や豊富な品ぞろえ及び燃費の良さや
環境対応などが評価されたもので、数年来
力を入れている中国政府との関係強化策も
功を奏したとのことです。

トヨタはかなり出遅れて
約20年前に中国市場に参入しました。

当時から中国ではVWとGMが
圧倒的な強さを誇っていました。

そのGMを若干とはいえ、トヨタが上回り
2位に浮上したのは画期的なことだと思います。

前年同月比で見ると、トヨタ、ホンダが伸びていて、
GM、上海汽車が落ちています。

また、日本勢では
奮闘していた日産も落ち込んでいます。

この20年間、トヨタは「天津が第二の故郷」という
意気込みで、中国市場で奮闘してきましたが、
この結果は非常に評価できるものだと思います。



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▼ウエアラブル機器の技術は一筋縄ではいかない
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日経新聞は23日、
「身につける端末、病気の兆候つかむ」と題する
記事を掲載しました。

これは腕時計型血圧計などのウエアラブル機器を
健康管理だけでなく、病気の早期発見や発作の予知に
活用する動きが広がっていると紹介しています。

この分野には非常に難しい技術がたくさんあり、
シリコンバレーでは、血圧だけでなく
脈拍を測る技術など様々な研究が進んでいます。

日本では、偶然にも腕時計型の血圧計の精度が
通常の血圧計に遜色無いということで
商品がヒットしましたが、病気の早期発見や
発作の予知に活用するとなると、
もちろん血圧情報だけでは不足しています。

スマホにデータを飛ばし、様々な技術を使って
総合的な情報として管理できるレベルまで
達する必要があります。

そうなってくると、シリコンバレーの技術には
太刀打ちできないと感じます。



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▼三菱ケミカル、コクヨ、キリンの買収劇にみる買収戦略の欠如
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三菱ケミカルHDは18日、
56%強を出資する上場子会社の田辺三菱製薬を
完全子会社化すると発表しました。

TOBにより出資比率を100%に引き上げる方針で、
医薬分野で進む新薬開発のデジタル化に対応するため、
子会社化により総合力を高める考えです。

今でも連結対象になっていますから、
あえて100%子会社化するメリットがあるのか、
私には疑問です。

三菱ケミカルHDのセグメントは、ケミカルズ、
機能商品、産業ガス、ヘルスケアとなっています。

ヘルスケア分野の収益は出ているものの
落ち込んできているので、
ここにテコ入れしたいのだと思います。

報道では、三菱ケミカルから提供できる技術があり、
それにより総合力を高めるということですが、
私はそのような技術があるとは知りません。

この点も含め、100%子会社化することで
どれほどメリットがあるのか、疑問が残ります。

子会社化や買収によって、
実際にどのようなメリットがあるのか、
具体的にイメージできなくては、
単に2つが1つになったところで
効果はそれほど期待できません。

コクヨとプラスが争う形になった、
ぺんてるの買収についても同様の懸念を感じます。

文具大手プラスが筆記具大手ぺんてるの
株式買い付けに乗り出すことが
20日、明らかになりました。

プラスが設立した合同会社が、
1株3500円で12月10日までに買い付けることを
ぺんてるの株主に通知し始めたとのことで、
コクヨによる敵対的買収の対抗策となります。

ぺんてるの経営陣がコクヨに対して
良い感情を持っておらず、コクヨに通告せずに
プラスと交渉を開始したということでしょう。

プラスは株式を1/3まで保有する見込みとのことですが、
はたしてそこまで行けるのかどうか、わかりません。

私は、このような手に打って出る前に
もう少し話し合いをするべきだったと思います。

プラスがぺんてるを買収したところで、
その後の事業展開の広がりはそれほど期待できません。

一方、コクヨの事業規模は大きいですが、
国内がほとんどで海外はわずかです。

その点、海外で売上の半分以上を上げている
ぺんてるに期待したいのでしょうが、
このぺんてるのチャネルを
コクヨが有効活用できるとは限りません。

コクヨの主要商品は「紙」です。

コストが高いため、海外では非常に弱い状況です。

それをぺんてるのチャネルを使って
解消できるのか?というと、
私は全くイメージできません。

オフィス製品にしても、
海外勢には強い競合が目白押しです。

ぺんてるが海外に強いというだけで買収しても、
本当にコクヨにとってメリットがある活用が
できなければ意味がありません。

この点では、プラスも同様です。

また多少のメリットがあっても、
市場・業界内でインパクトを残せるもの、あるいは
将来そういった展望を見据えているものでないなら、
それほど魅力を感じません。

キリンHDによる米クラフトビール会社の買収が
発表されましたが、まさにこの事例です。

キリンHDは20日、米クラフトビール大手
ニュー・ベルジャン・ブルーイングを買収すると
発表しました。

海外子会社を通じて2020年3月末までに
株式を100%取得するとのことで、
全米に販売網を持つニュー・ベルジャンの強みを活かし、
海外のクラフトビール事業を拡大する考えです。

高級ビール路線のアサヒビールに対して、
キリンはクラフトビールを強化するという
狙いなのかもしれませんが、このような動きをとっても、
世界の強豪と比べると足元にも及ばないレベルです。

アサヒやキリンよりも、ジムビーム事業に
1兆円ほど突っ込んだサントリーのほうが、
展望が開けていると言えるかもしれません。



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▼川勝氏の本当の狙いは、リニア新幹線ではなく、新幹線のぞみ
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日経新聞は23日、「リニア、静岡着工見通せず」と題する
記事を掲載しました。

リニア中央新幹線の静岡工区が着工できていない問題の
打開を目指す3者協議について、静岡県の川勝知事が
協議に環境省や国交省の河川部局も加えるべきと
主張し始めたと紹介。

川勝氏は、リニアの工事が大井川の水量に
悪影響を及ぼすと反対姿勢を示しており、
事態のさらなる混迷を懸念する国交省は難色を示していて、
3者協議の枠組みは宙に浮いた状態としています。

川勝氏の狙いは、リニアではなく、
東海道新幹線の利便性向上のための交渉でしょう。

リニア中央新幹線は地下も深いですし、
地理的にも不便で利用者が増えるとは思えません。

静岡県にとっては、リニア中央新幹線にこだわらず、
JR東海の新幹線を一部でも停車させるようにすることが
重要です。

JR西日本では一部の新幹線のぞみが
福山などに停車します。

JR東海でも同様に、
浜松や静岡で停車するようになれば、
静岡県にとっては大きなメリットです。

現在、JR東海の新幹線のぞみは、
新横浜を出発後、名古屋まで停車しません。

県をまたぐ新幹線の距離では日本一の長さです。

リニア中央新幹線にからめて、
残土置き場問題などを提示していますが、
本命はそれを交渉材料としてJR東海に働きかけ、
何本かに1本は、浜松や静岡に停車する
新幹線のぞみを実現すること、
それが川勝氏の狙いだと私は思います。



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※この記事は11月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は国内文具大手のニュースを大前が解説しました。

大前は、
「コクヨの商品を売るにあたって、
 ぺんてるのチャネルを活かすことができるのか疑問」
と述べています。

協業によって相手企業の強みがそのまま
手に入るわけではありません。

シナジーを発揮するかを見極めるためには、

「その特長の背景には何があるのか」
「その特長はいつどのような時に発揮されるのか」

など、深く広く把握する必要があります。

2019年11月22日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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NEXTユニコーン/ウェルスナビ/国内ネット大手
〜ヤフーとLINEの経営統合は上手くいくのか

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NEXTユニコーン 上位20社で企業価値計1兆円超
ウェルスナビ 第三者割当増資で40億円調達
国内ネット大手 経営統合へ向け協議

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▼日本のユニコーン企業が定着してきた
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日本経済新聞社がまとめた「NEXTユニコーン」調査で
企業価値を推計したところ、上位20社の合計は
前年より2割増加し、1兆円を超えました。

人工知能(AI)やフィンテックの分野で
伸びが目立っています。

しかし海外では、元ユニコーンを巡る懸念も
広がっており、これまで価値を押し上げてきた
投資マネーがしぼむ可能性もあるとしています。

上位10社の顔ぶれを見ていると、
上位企業が定着してきたという印象を持ちました。

エリーパワー、オリガミなどは
今後の成長性に疑問がやや残りますが、
プリファード・ネットワークス、TBM、
スマートニュース、ビズリーチなどは
安定感があります。

その1社でもある、資産運用を自動で指南する
「ロボットアドバイザー」を手掛けるウェルスナビは、
先日、第三者割当増資で約40億円を調達しました。

増資による資金調達は5回目で、
融資を含めた創業からの資金調達は
累計約148億円とのことです。

注意すべきなのは、ロボットによる
AIアドバイザーという見え方になっていますが、
実際のところ、その資産運用の中身を見ると
米国のETFの割合が非常に多くなっていることです。

米国の株価が史上最高値をつけているので、
資産運用の成績が良くなるのも当然といえます。

今後、トランプ政権がひっくり返る事態などが
発生して、米国の株価が下落することがあったとき、
対応できるのかどうかはわかりません。

今のやり方では難しいのではないかと私は見ています。

先行きに若干の不安はあるものの、
ウェルスナビはすでに累計で
約148億円もの資金を調達しています。

これは芝山社長の賢いところでしょう。

良い運用成績を出せているうちに
資金調達を済ませ、今後問題が起こっても、
すでに我慢する力を持つことができている状態を
作り上げています。



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▼ヤフーとLINEが経営統合しても、一体化経営は難しい
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検索サービス「ヤフー」を展開する
ZホールディングスとLINEは14日、
経営統合に向けた協議を進めていると発表しました。

両社はそれぞれ、親会社のソフトバンク、
ネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立。

その傘下に持株会社を置き、ヤフーやLINEを
子会社化する案が検討されているとのことです。

今後の展開としては、まずはPayPayを中心に
どこまでサービス展開を広げていくことが
できるのか?というのが焦点になってくると思います。

しかし、そもそもこの2つの組織が一体となって
上手く機能するのか?という点に
大きな問題がある、と私は感じます。

2つの全く異なる魂を持った人たちが、
50%ずつの株式を持ち合って上手く機能するとは、
私には思えません。

さらに言えば、すでにヤフーの親会社である
Zホールディングスは多くの企業・サービスを抱えて、
現時点でも空中分解してもおかしくないと思います。

Zホールディングス傘下には、
eコマース・インターネット広告のヤフー、
電子決済サービスのPayPay、映像配信のGYAO、
電子コンテンツのイーブックイニシアティブジャパン、
さらにはアスクル、一休、ジャパンネット銀行、
ワイジェイカード、ZOZOなどがありますが、
それぞれがシナジー効果を発揮して
お互いに連携が取れているとはいえないでしょう。

一方のLINEは、どちらかといえば
サービスを絞って展開してきています。

両社の魂には大きな違いがあると感じます。

資金があるから買収するというだけでは
収集がつかなくなり、下手をすると
ライザップと同じ轍を踏む可能性があります。

大切なのは「核」になるものを置いて、
それを中心に組み直すことだと私は思います。

例えば、アスクルに焦点をあてて徹底的にやれば、
企業関連のサービスは取り込めます。

アスクルを使ってくれている企業の社員にも
メリットがあるようなサービスという視点で考えれば、
新たな文房具も開発できるでしょうし、
社員向けの旅行サービスも展開できるはずです。

ところが、現状においては「核」が定まっておらず、
いきなり社員向けに「一休」の高級ホテルを
紹介するということになってしまい、
これではニーズが合わない状況になっています。

むしろ、競合サービスである
楽天トラベルのほうがニーズに合致しています。

このようにZホールディングスの中においても、
各サービスの連携が取れていない状況で、
出生の異なるLINEと統合しても、
一体化経営を行うのは非常に難しいと思います。

8000万人のユーザーを誇るLINEを取り込めば、
ヤフーが一時的に利益を上げることは
簡単にできるでしょうが、
それによってZホールディングスの中にある、
別のものが犠牲になる可能性もあります。

こうした問題にどのように対応していくのか、
この点が重要です。

鴻海にしてもアリババにしても、
多くのサービスを展開していますが、
基本的に一人の人間が構想していくことで、
「核」が定まり、「軸」がぶれない展開が
可能になっています。

指揮命令できる人は一人のほうが良いと思います。

強者を2つ合わせても上手くいきません。

「1+1=2」にならず、1.6くらいで不完全燃焼して
終わってしまうことは多くあります。

現状を見ている限り、ヤフーとLINEの経営統合は、
1.6に留まってしまう可能性が高いと私は見ています。



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※この記事は11月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はウェルスナビのニュースを大前が解説しました。

大前は
「いま資産運用の成績がいいのは当然」
「米国の株価が下落することがあったとき、
 対応できるのかどうかはわからない」
と述べています。

好調な成績が今後も継続するかは、
慎重に見極める必要があります。

「好調の理由は外部要因か、内部要因なのか」

を把握することで、そのサービスの価値を
本質的に理解することができます。

2019年11月15日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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三陽商会/富士フイルムHD/キーエンス/
国内上場企業/ソフトバンクグループ/楽天
〜三陽商会の復活は厳しいのか

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三陽商会 「バーバリー後」三陽商会なお苦境
富士フイルムHD 米ゼロックスの買収断念
キーエンス キーエンス株が一時前日比10%高
国内上場企業 2期連続の最終減益見通し
ソフトバンクグループ 営業赤字155億円
楽天 約1030億円の減損損失計上

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▼三陽商会復活の道は残されている
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日経新聞は先月31日、
「『バーバリー後』三陽商会なお苦境」と題する記事を
掲載しました。

三陽商会の2020年2月期業績見通しが
4期連続で連結最終赤字となることを受けて、
岩田功社長が2020年1月1日付で辞任すると紹介。

2015年に英高級ブランド・バーバリーとのライセンス契約を
終了して以降、後継ブランドが育成できていないことなどが
響いたものですが、衣料品分野では百貨店が苦戦する一方、
ネット通販の普及により新たなビジネスモデルが台頭しており、
アパレル大手の収益構造の変更は
容易ではない現状にあるとしています。

時価総額は約182億円にまで落ち込んでいます。

しかし、売上高は約1200億円から600億円程度に
落ち込んだものの、そこを維持しています。

売上で600億円というのは立派な数字です。

現在は赤字に転落していますが、
この600億円の売上を維持できているのであれば、
黒字に転換することは可能だと私は思います。

売上が半減した状況に対処できていないことが問題であり、
コスト構造を見直すなど収益化の道は残されているはずです。

ネット通販の普及によって厳しいという見方ではなく、
600億円の売上を維持できているという点に着目して、
それに見合うコストにするように努力すべきだと思います。



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▼ゼロックスブランドが使えなくなる事態をどう乗り切るか?
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富士フイルムHDは5日、
事務機器大手の米ゼロックスの買収を断念する一方、
ゼロックスとの合弁会社・富士ゼロックスの株式25%を
ゼロックスから買い取り、完全子会社化すると発表しました。

これにより富士フイルムは、2018年の買収契約破棄に伴う
ゼロックスへの損害賠償請求を取り下げますが、
ブランドや販売地域を定める契約の更新など
中長期的には不確定要素が残る現状になっています。

富士フイルムの古森会長は米ゼロックスの買収を
強く推進しようとしていましたが、さすがに難しいとなって、
約2500億円で富士ゼロックスの株式25%を買い取り、
完全子会社化することで決着することになりました。

富士フイルムは、
米ゼロックスと英ランク・ゼロックスが株式25%ずつ、
富士フイルムが株式50%を保有しスタートした企業です。

今回の買収により、
それぞれのテリトリーという制約はなくなり、
富士フイルムは世界中で展開できるようになります。

しかし、大きな問題が1つ残されることになります。

それは、約1年後から「ゼロックス」ブランドを
使用できなくなる、ということです。

世界的には「ゼロックス」という名称を断って
いずれかのブランドのOEMを請け負うなどの
展開を考える必要があります。

富士フイルムのセグメント別の業績を見ると、
ドキュメントソリューション、
ヘルスケア・マテリアルズ(メディカル)、
イメージング・ソリューション(カメラ)という
3本柱で成り立っています。

ドキュメントソリューションの売上が大きいものの、
メディカルも成長していてかなり利益を伸ばしています。

イメージング・ソリューションは、
売上は低迷していますが営業利益は回復してきています。

キヤノン、ニコンを始め、
この業界では多くの企業が苦戦しています。

なぜ、2500億円もの資金を投じて、
ここで勝負をしたいのか私には疑問です。

2500億円も支払うのであれば、
少なくとも日本とアジアにおいては、
引き続きブランド名を利用できる契約にするべきで、
今後の大きな焦点になってくると思います。



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▼好調キーエンスにも中国市場で苦戦の要素あり
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1日東京株式市場で、キーエンスの株価が急伸し
一時前日比10%高の7万5470円と上場来高値を更新しました。

前日発表した株式分割に伴う実質増配を好感し、
買いが集まったもので時価総額は9兆558億円と
ソフトバンクグループを抜いて4位となりました。

もともと高い収益性を誇る企業で、
西日本では長らく時価総額1位を維持していました。

上場来高値ということですが、現状においては、
中国経済の失速、米中貿易戦争の煽りを受けています。

中国側の設備投資も少なくなってきているということ
ですから、株価よりは実態は厳しいかもしれません。

それでも収益性の高い超優良企業であることは
間違いありません。



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▼ソフトバンクと楽天にとって、ウーバーとリフトは悩みの種
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日本経済新聞社が決算を発表した
上場企業972社を対象に集計したところ、
2020年3月期の純利益は前期比4%減と、
2期連続の最終減益となる見通しが明らかになりました。

世界的な自動車販売の低迷や米中対立を懸念した
設備投資の減少で、幅広い製造業で
利益が減少することなどが響く見通しです。

製造業以外でも、厳しい状況が見て取れます。

ソフトバンクグループは、
前期1兆4000億円の黒字から一転して
半期で155億円の赤字に転落しました。

ウィーカンパニーの時価総額の下落が
大きく影響しています。

その他ソフトバンクグループの保有株式を見てみると、
アリババ:約13兆円、ソフトバンク:約5兆円、
ビジョンファンド:約3兆円、スプリント:約3兆円と
なっています。

借入が大きい企業ですが、これらの保有株式を見ると、
そう簡単にひっくり返ることはないと思います。

とはいえ、ビジョンファンドの投資先については、
今後も注意が必要でしょう。

上場した企業の騰落率を見ても、
ゲノム解析のガーダントヘルス社は伸びているものの、
その他はほとんどがマイナスになっています。

その典型例がウーバーです。

同じような投資でいえば、
楽天もリフトの株価下落の影響を受けて、
1030億円の減損損失を計上するとのことです。

前期リフトの株価が値上がりし、
1100億円の評価益を計上したばかりだというのに、
今回で帳消しです。

ソフトバンクにとっても楽天にとっても厳しいのは、
ウーバーとリフトのいずれも、
その株価が大きく下落しているということです。

激しいシェア争いの中、両者譲らぬ姿勢を見せていて、
ドライバーに高い給与を支払う一方、
顧客単価を上げることができていません。

結果として、共倒れの様相を見せています。

両者が結託すれば独禁法に抵触してしまうでしょうから、
いい加減やめたいと思いながらも、どちらかが倒れるまで
やりきるしかない状況になっています。

ウーバーイーツなど、派生するサービスで
利益を出そうと必死になっていますが、
根幹となるビジネスモデルが単純なので、
いかんともしがたいところでしょう。

楽天にとってのリフト、
ソフトバンクにとってのウーバー、
いずれも非常に頭が痛い問題になっていると思います。



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※この記事は11月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、三陽商会のニュースを大前が解説しました。

大前は
「『600億円の売上を維持しているところ』に着目すべき」
と述べています。

同じデータでも、捉え方によっては
課題設定のところからずれてしまいます。

また、「ありたい姿」をどう定義するかによって、
どんな課題を解くべきなのかも変わってきます。

2019年11月08日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中関係〜米国の投票率が低い歴史的な理由とは

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米中関係 米副大統領の激烈批判に習近平政権はどう反論したか

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▼ペンス大統領は誕生するのか?そのとき、トランプ大統領はどうするか?
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現代ビジネスの情報サイトは先月29日、
「米副大統領の『中国共産党激烈批判』に、
習近平政権はどう反論したか」と題する記事を
掲載しました。

トランプ氏の弾劾の可能性と合わせて、
ペンス大統領誕生の可能性も浮上してきたと紹介。

ペンス氏は先月の演説で中国を激烈に批判しました。

実際、中国は通商強硬派のトランプ氏よりも
軍事強硬派のペンス氏を恐れているとしています。

共和党が賛成に回り、
トランプ大統領が弾劾されることになれば、
米国の歴史上でも初のことです。

もしそのような事態になれば、
副大統領が大統領を引き継ぐことになるので、
ペンス大統領が誕生することになります。

先日のペンス氏の演説を聞いていても、
ピーター・ナヴァロ氏さながらの
「中国嫌い」の姿勢を見せていました。

中国としては、傷に塩を塗られているように
厳しく責められている状況です。

例えば、「香港抗議デモに暴力を使えば、
貿易協議の合意は一層難しくなる」など、
米国がどのような関係性があるのかわかりませんが、
厳しい意見です。

また、「米国は経済的利益だけで
中国を自由で開かれた社会に変えられるとは
期待していない」というのは、
いざとなれば「力」で押し切るという意思を感じます。

「一帯一路の表面上の目的は経済だが、
結局は軍事目的」という点は、
私も以前から指摘していることで頷けますが、
全体として中国に対して非常に厳しい内容でした。

ペンス氏本人がインディアナにいた頃は、
ここまで中国嫌いの発言をしていなかったので、
ピーター・ナヴァロ氏の影響が大きいのだと思います。

加えて、副大統領としてトランプ大統領を
サポートしつつ、それを上回ることを言う必要があると
感じているのでしょう。

ニューズウィーク誌が表紙にペンス氏を掲載し、
大統領になる可能性を示唆するなど、
次期大統領としての可能性を
メディアも報じ始めています。

前副大統領アル・ゴア氏は、
目立つキャラクターで知られていましたが、
ペンス氏はどのような人物なのか、
あまりよく知られていません。

キリスト教徒でおとなしいイメージがあり、
ここまで中国に対して強い姿勢を見せる人物とは
思いませんでした。

日本に対しては、
地元にトヨタの工場があることもあり、
マイルドな態度を見せています。

トランプ大統領の弾劾について、
共和党から3人が賛成に回りましたが、
20人が賛成に回ったらトランプ大統領は
「詰み」になります。

おそらく、それが現実味を帯びてきたら、
その段階でトランプ大統領は
自ら投げ出すのではないか、と私は見ています。



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▼米国の投票率が低い歴史的な理由とは?
 /日本で投票率を高めると有利な政党は?
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米国では投票率が50%を下回っているため、
全体の25%でマジョリティを確保することが
できる状態です。

それゆえ、トランプ大統領の支持率が
40%を維持することが可能になっていました。

この投票率の低さを
問題として指摘する声もあります。

世界的に見ると、自然に高い投票率を
維持しているのが北欧の国々です。

一方、シンガポールやオーストラリアは
投票率を高める仕掛けを作っています。

例えば、90%以上の投票率を誇るシンガポールでは、
投票に来ないと役所に呼び出されて理由を聞かれます。

オーストラリアでは、もっとシンプルで
投票に行かないと20ドルの罰金を科されます。

米国の投票率が低いのは、登録制のためだと思います。

選挙権を登録する必要があり、
これを面倒だと感じる人は多いでしょう。

まず、これを登録させるための
キャンペーンを打つなどの仕掛けが必要です。

もう少し根本的な観点で言えば、
今の選挙システムそのものが時代に合っていません。

歴史的に言えば、米国では女性に選挙権はなく、
一部の富裕層のみに選挙権が与えられていました。

そこから選挙権が開放されたため、
「選挙には喜び勇んでいくもの」というのが
前提となっているのが、今の選挙のシステムです。

現状を見てみると、
選挙に参加できるようになったものの、
現実は変えられないし、
政治家は汚いと国民が感じてしまったため、
どんどんと投票率が下がっています。

キャンペーンなどの対策も大切ですが、
過去の前提から作られたシステムを
根本的に変えることが、より重要なことだと思います。

今の米国で投票率を上げれば、
共和党にとっては不利になるでしょうから、
このタイミングで動議を上げても
否決される可能性が高いでしょう。

もし実行するなら、タイミングを見計らいつつ、
民主党から動議を上げてもらう手順を踏むべきです。

ちなみに日本においては、
投票率が上がると自民党が有利になります。

私はかつて自民党の中曽根元首相にアドバイスをして、
投票率を上げる施策を打ちました。

今でも、隠れ自民党は多く、
投票率が上がると自民党が有利になるはずです。

逆に、投票率が低いと
公明党などの組織を持っている政党に有利になります。

例えば消費税の税率引き上げにかけて、
「選挙で投票してくれたら2%還元」という策を
私なら考えるかもしれません。

この手の方法はたくさんあり、
日本でも投票率の低さを真剣に見直すつもりがあるなら
様々な施策を考えてみるべきでしょう。



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※この記事は11月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は米国の投票率について大前が解説しました。

大前は
「いまの選挙システムそのものが時代に合っていない」
と述べています。

システムが作られた当時は理にかなっていても、
それがいまの世の中に合っていない場合は
根本的に見直す必要があります。

小手先の対策をとるのではなく、
そのシステムが作られた背景から理解することが大切です。

2019年11月01日(金) 
【1】今週の 〜大前研一ニュースの視点〜
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≫サブスクリプション/ダイナミックプライシング/
 米ボーイング/米ウィーカンパニー
 〜生活の自由度が高くなる新サービス

サブスクリプション 集合住宅の入居者に家電のサブスクサービス
ダイナミックプライシング ノジマやビック、瞬時に価格変更
米ボーイング 「737MAX」の制御システム 2016年に欠陥認識か
米ウィーカンパニー SBグループのもとで経営再建

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【2】問題解決力トレーニングプログラム より
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【7】あとがき
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■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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サブスクリプション/ダイナミックプライシング/
米ボーイング/米ウィーカンパニー
〜生活の自由度が高くなる新サービス

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サブスクリプション 集合住宅の入居者に家電のサブスクサービス
ダイナミックプライシング ノジマやビック、瞬時に価格変更
米ボーイング 「737MAX」の制御システム 2016年に欠陥認識か
米ウィーカンパニー SBグループのもとで経営再建

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▼家電のサブスクリプションサービスは、自由な生き方につながる
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リコーリースと日本総合住生活、ピーステックラボの3社は、
12月から集合住宅の入居者向けに家電などのレンタルサービスを
開始すると発表しました。

ピーステックラボが運営する高級家電などの個人間レンタルサービスを
リコーリースが管理・運営する賃貸マンションに導入するもので、
将来は都市再生機構(UR)が運営する団地などへの導入も
目指すとのことです。

最近のマンションの中には、自ら発電施設と蓄電池を保有し、
その電力を活用しているところがあります。

すでに電力代金はマンション価格に含まれていて、入居者は
将来にわたって電気代金を支払う必要がない、というものです。

これは良い発想だと思いましたが、
今回の家電サブスクリプションと合わせると、
さらに利便性が高くなります。

入居するときに、冷蔵庫などの家電を購入する必要がありませんから、
それだけでも手軽に引っ越しができるようになるはずです。

電気や家具も最初から揃っていれば、
さらに引っ越しが楽になります。

一昔前、人生の大きな買い物として家を購入し、
そこで死ぬまで暮らすのが普通でしたが、
こうしたサービスが出てくることで、
その考えも古くなりつつあります。

住む場所を手軽に自由に選べて生活の自由度が高くなるので、
私は非常に良いことだと思います。

学生時代にはスーツケース1つで何度も引っ越しをした
経験がありますが、あの頃の身軽さを思い出してしまいます。



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▼ダイナミックプライシングは、あらゆる業界に広がっていく
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日経新聞は先月21日、「ノジマやビック、瞬時に価格変更」と
題する記事を掲載しました。

家電量販大手のノジマが全184店で商品表示をデジタル化した
電子棚札を導入したと紹介。

ほぼ全ての商品の値付けを、
本部からの遠隔操作で変更できるようにしたもので、
商品の売れ筋や在庫状況、競合店やネット通販の価格などを
総合的に分析し料金に反映させるというものです。

ダイナミックプライシングは、
システム開発・運用コストが高くつきますが、
収益が最大化するという大きなメリットがあります。

売り切ってしまえば、在庫も残りませんし、
商品の腐敗もありませんから、コスト削減にもつながります。

私はこれまでにも何度か説明してきましたが、
ダイナミックプライシングは非常に応用範囲が広い技術で、
これが広がっていくのは当然の流れだと思います。

家電だけではなく、
野菜や魚など生鮮食品もイメージしやすいでしょう。

夕方になって生鮮食品の価格を下げているのは
同じ考え方です。

しかし、現状ではいくつかの商品を
まとめて値下げしています。

本来なら、1品ずつ価格を調整して販売したいところです。

それをシステム的に実現できる時代になってきています。

その他の事例では、ビックカメラ、ローソン、
akippa(駐車場予約)、福岡ソフトバンクホークスの
チケットなどがあります。

ダイナミックプライシングは
スマホとの相性が良いのも特徴です。

QRコードで値段が表示され、スマホでそれを読み取って、
そのまま自動的に決済すれば非常にスムーズです。

さらに、ダイナミックプライシングの値段は、
「特定の人だけ見ることができる値段」であれば良く、
一般に公開する必要もありません。

その意味でも、スマホを活用したリアルタイムの
ダイナミックプライシングは、非常に使いやすいはずです。

まだ業界全体としてシステムが未熟で、
この業界のスタンダードとなるシステムがありません。

今後、スタンダードとなるシステムを
作っていく必要があると思います。



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▼瀬戸際を迎えたボーイング社/投資の真骨頂を問われるソフトバンク
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2度目の墜落事故を起こしたボーイングの新型機
「737MAX」について、認証手続き中だった2016年に
当時のテストパイロットが制御性システムについて
「ひどいものだ」などと評するメッセージを
同僚に送っていたことがわかりました。

ボーイングは数ヶ月後に
このメッセージの存在に気づいたとしていますが、
連邦航空局(FAA)は報告が遅れた理由の説明を求めています。

現在、米国の耐空証明において、
ボーイング社は自動承認に近い状況なのだと思います。

許可する人もボーイング社や米軍からの天下りが多いなど、
様々な事情が入り組んでいるのでしょう。

結果として、三菱には厳しく、
ボーイングには甘い、という状況が続いています。

今回の「737MAX」については、
テストパイロットから指摘があったにもかかわらず、
規制当局を欺いて耐空証明を取得したということです。

これだけでも大きな問題ですが、
さらに事故後のボーイング社の対応が最悪でした。

事故を起こしたのが途上国だったことを理由に、
パイロットの経験不足が原因ではないか?と、
ごまかそうとしました。

最終的には自分たちのミスを認めましたが、
非常にひどい態度だと言わざるを得ません。

大きな補償を背負い、売上も上がらず
損失を計上する事態になっています。

ボーイング社は、商用機、防衛・航空宇宙、
サービスなどで売上をあげていますが、
売上も利益も圧倒的に大きいのは商用機です。

ですから、「737MAX」を販売できないとなると
かなり苦しい状況になるのは間違いありません。

株価は下落していると報じられているものの、
長期スパンでみると、騒がれるほど大きな下落ではありません。

もしかすると、トランプ大統領による
何かしらの救済への期待もあるのかも知れません。

いずれにせよ、信頼も失墜し、
大きな収益源を失う可能性があり、
ボーイング社は正念場を迎えています。


米ウィーカンパニーは、ソフトバンクグループのもとで
経営再建を進めると発表しました。

ソフトバンクグループが、ウィー株を追加取得するほか、
ウィー創業者のアダム・ニューマン氏が
取締役から退くとのことで、ソフトバンクグループは
総額95億ドルを投じることになります。

この投資によって、ソフトバンクグループは、
ファンドではなく、ソフトバンク本体が
約5000億円のリスクにさらされることになります。

これはグループ全体にとっても大きなリスクです。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド全体への
影響を考慮して、ソフトバンクグループとしては
「伸るか反るか」の判断をした、ということでしょう。

最悪、この程度の損失なら
ソフトバンクグループとして耐えられるという
計算もあると思います。

ただし、ウィーワークと同様に、
「株価は高いが利益が出ていない」という
他の投資案件もあります。

それらが上手くいかないとなると、
事情は変わってくるでしょう。

ソフトバンクグループによる
投資の真骨頂が問われるタイミングかもしれません。



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※この記事は10月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はサブスクリプションのニュースを大前が解説しました。

近い将来、
「引っ越しはカバン1つがあたりまえ」
になる時代が来るかもしれません。

「あたりまえに我慢していること・不便に感じていること」を
考え直すことで、新たなサービスに繋がる可能性があります。

顧客価値を高めると同時に、
マネタイズ方法を工夫することで、
ブレークスルーが生まれます。

2019年10月18日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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人口動態統計/消費増税/ベンチャー投資/デジタル課税
〜市場が利益を得られる「新しい枠組み」

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人口動態統計 1-7月の出生数51万8590人
消費増税 キャッシュレス急拡大
ベンチャー投資 官民ファンド、遠い累損解消
デジタル課税 国際課税の枠組み案公表

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▼日本の人口減は構造的な問題
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厚生労働省の統計によると、
2019年1〜7月の出生数は前年同期に比べて5.9%減り、
51万8590人となったことがわかりました。

2016年に100万人を下回ってからわずか3年で、
90万人を割る公算が大きくなっているもので、
第二次ベビーブーマーや団塊ジュニアと呼ばれる
世代の女性が45歳以上になったのに対し、
20代、30代の女性が減少していることなどが
要因と見られています。

これは日本にとって深刻な問題です。

2025年までに700万人の人口減が予想されていて、
これは埼玉県の人口に匹敵します。

2005年に死亡数が出生数を上回り、
それ以降も死亡数は増加を続け、
出生数は減少し続けています。

日本の人口減は物理的な現象と言えます。

また婚姻件数も減っていて、
出生年齢が上がっている点も心配な要素です。

母の年齢別出生数を見ると、
かつては25〜29歳の年齢層が70万人を超える出生数で
トップでしたが、今では30万人弱まで大きく減っています。

現在は30〜35歳の年齢層が最も多くなっています。

日本は戸籍の問題があり、事実婚を阻害しています。

日本の人口減は構造的な問題であり、
政府が正面から取り組む必要があると思います。

例えば、フランスは結婚しないで子供を生む女性が非常に多いです。

こうした状況を許容する少子化対策によって、
フランスは1994年には1.65まで下がっていた出生率を、
2010年には2人を超える水準まで改善させています。

日本でも、フランスと同じくらい
抜本的な対策を打つ必要があると思います。



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▼まだ日本はキャッシュレス化後進国の水準
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日経新聞は8日、
「キャッシュレス急拡大」と題する記事を掲載しました。

1日の消費増税にあわせて政府主導で始まった
キャッシュレス決済のポイント還元制度を追い風に、
現金を使わない決済が急増しています。

しかし、還元される時期が各社で異なるなど、
様々なキャンペーンが乱立して消費者にわかりにくいといった
課題もあり、定着には一段の周知が必要としています。

もちろんわかりやすく周知することは必要ですが、
それ以前の問題があります。

日本のキャッシュレスが6割増加したと言っても、
全体のわずか30%弱に過ぎず、まだまだ低いということです。

キャッシュレス決済が96%になっている韓国はもちろん、
いまだにインドより低い水準です。

まずこの認識を持って、もっとキャッシュレス決済の割合を
増加させていくことを考えるべきでしょう。



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▼官民ファンドの実態は「官」ファンド、成功するわけがない
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日経新聞は7日、
「官民ファンド、遠い累損解消」と題する記事を掲載しました。

スタートアップ企業などに投資して産業を振興する
官民ファンドで、コンテンツ分野や農林水産分野など
4機構の累積損失が膨らんでいて、2018年度末までの1年間だけで
6割増えて合計367億円になりました。

事業の実態を知らない役員が
出資先に無理な要求を突きつけているなどの問題も発覚しており、
官民ファンドが適度な利益を出していくためには
長期的に取り組む人材が欠かせないとしています。

経産省のクールジャパン機構は179億円、
農水省のA-FIVEは92億円の累積損失を計上しています。

彼らは予算を確保するのは上手かもしれませんが、
ビジネスセンスやビジネスの判断能力はありません。

だから、こんな累積損失を計上する結果を招くのだと私は思います。

産業革新機構にしても全く同じです。

官民ファンドなどと言われますが、
実際のところは「官」の力が強く、「民」の影響力はありません。

「官」主導になっているため、出資した値よりも安い場合には
上場させない、といったおかしなルールも適用されています。

私も彼らと関わった経験がありますが、
最後に助けてくれる味方なのか、それとも手を離して
見放す敵なのかわからない、といった印象があります。

最初は良い顔をしていても、
最終的に「恥をかきたくない」という行動が多いと感じます。

ベンチャー投資には、特にリスクがつきものです。

リスクを低減するには、選別能力や経営者を見極める
能力が必要ですが、彼らにはほとんどありません。

ゆえに、官民ファンドという名の
「ほぼ官ファンド」にベンチャー投資を任せること自体に、
大きな問題があると私は思います。



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▼デジタル課税=外形標準課税を世界的に合意すべき
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経済協力開発機構(OECD)は9日、
GAFAなど巨大IT企業を念頭に置いたデジタル課税について
国際ルールの原案を公表しました。

本社や工場などの拠点がなくても
利用者がいる国で一定の売上があれば、
それに応じて法人税を課せられるようにするもので、
来年1月に大枠合意し来年末までに正式合意を目指す考えです。

これは、外形標準課税という方法です。

サイバー企業は様々な国でサービスを展開します。

例えば、ウーバーなら、法人税率が低いオランダに
世界の事業を統括する本社を置き、それにタックス・ヘイブンの
バーミューダを組み合わせて節税しています。

それに対して外形標準課税では、日本で操業している
割合を算出し、それに比例して再配分をします。

つまり、操業の割合=外形として課税する、というわけです。

全てのビジネスはお客さんがいて成立するのだから、
それに比例して利益を払うべき、という考え方です。

GAFAなどの他のサイバー企業も、アイルランドと
オランダを組み合わせるなどして節税をしていますが、
同様の考え方を適用するべきだと私は思います。

利益を得る権利があるのは、市場です。

現在の状況では、サービスが提供されている市場ではなく、
税率が安い国が利益を得ています。

正しく市場が利益を得られるような
「新しい枠組み」を固めることは非常に重要ですし、
世界的に合意するべきことだと思います。



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※この記事は10月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はデジタル課税のニュースを大前が解説しました。

サイバー社会が前提となったいま、
税金のルールが変わろうとしています。

税金だけでなく、
たとえば個人情報に関するルールなど
ビジネス環境では常に変化が起きています。

ルールが変わる中で、いかにチャンスを見つけるのか。

リスクを減らしながらも、積極的なチャレンジをしなければ、
生き残っていくことはできません。

2019年10月12日(土) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米ウィーカンパニー/ソフトバンクグループ/
ベンチャー投資/米ウーバーテクノロジーズ〜株式市場の存在意義とは

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米ウィーカンパニー アダム・ニューマンCEOが辞任
ソフトバンクグループ 孫正義が狙うLINE買収
ベンチャー投資 「上場で成長」今は昔
米ウーバーテクノロジーズ サブスクリプションを本格開始

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▼投資先の雲行きが怪しいソフトバンク・ビジョン・ファンドの打開策は?
─────────────────────────
米ウィーカンパニーの共同創業者、アダム・ニューマン氏は
先月24日、最高経営責任者(CEO)を辞任すると発表しました。

当初、9月中の新規株式公開(IPO)を目指していましたが、
赤字が続く事業や企業統治について、
機関投資家から疑問の声が相次ぎ、IPOを延期。

米メディアは、筆頭株主であるソフトバンクグループが、
ニューマン氏の辞任を求めていたと報じています。

赤字ではあっても将来性を期待され高い時価総額を設定された
ウィーカンパニーには、筆頭株主でもあるソフトバンクも
大いに期待していたはずです。

しかし、近年この類の企業が上場しても、
その後の調子が良くない状況があります。

ウィーカンパニーも赤字のまま、
競合に対する明確な差別化もできない状態で、
企業価値もピーク時の1/3に下落し、
さすがに不安を払拭できなくなったのだと思います。

安売りをやめ、黒字化の目処が立つまで上場を延期するように、
ソフトバンク・ビジョン・ファンドが強制したと言われています。

そのソフトバンク・ビジョン・ファンドの
投資先企業の一覧を見ると、有望と言われるユニコーン企業が
たくさん並んでいます。

しかし、3兆円規模の投資を受けている半導体テクノロジーの
アームについて、当時取締役を務めていた日本電産の永守氏が
「自分なら3000億円でも買わない」と話していたこともあるなど、
その投資価値については疑問視する声もありました。

そして、ユニコーン企業のチャンピオンとも言われる立場だった
ウィーカンパニーの問題が起こってしまいました。

そんな中、文春オンラインは4日、
「ソフトバンクグループの窮地で孫正義が狙うLINE買収」
と題する記事を掲載しました。

ウィーカンパニーの上場延期などを受けて、
ビジョンファンドが投資する他のユニコーン企業にも
疑念が持たれ始めています。

この危機を乗り切る奇策として、
孫正義氏が狙っているのがLINEで、
もし買収が実現すればアマゾンにも対抗できるとする
関係者の見方を紹介しています。

Weibo(ウェイボー)とも親しいソフトバンクの孫正義社長なら、
韓国系の企業であるLINEとも話をまとめられる
可能性がある、ということが背景にあるのでしょう。

たしかに、その可能性はありますし、
実際ソフトバンクがLINEを買収しSNSを手に入れると
大きなプラスになると思います。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドに多額の出資をしている
みずほ銀行も背中を押していると言われています。



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▼未公開時に高い時価総額を想定された企業が収益化しない現実
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日経新聞は6日、『「上場で成長」今は昔』と題する記事を
掲載しました。

世界の未公開企業がベンチャーキャピタルから
調達した資金額は、2018年2580億ドルとなり、
上場時の調達額2236億ドルを上回りました。

金余りの中、利回りに飢えた投資家が
成長著しいベンチャー企業への投資に殺到していることが
要因です。

こうした投資は過剰評価になりやすく、
企業が生む富も特定の人間に集中しかねない問題もあり、
資本主義を支えてきた株式市場の存在意義が
あらためて問われているとしています。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは
10兆円規模の大きなファンドです。

他にも、ブラックストーン、ベインキャピタルなど
ベンチャー企業に多額の投資をするベンチャーキャピタルが
多数あります。

これらのベンチャーキャピタルには、資金も情報も
集まってくるため、Cラウンド、Dラウンドの
ベンチャー企業に多額の資金を投じます。

これが上場前のベンチャー企業に
異常に高い企業価値が想定される要因です。

最終的な上場前の想定時価総額は、
最後に投資した人の1株あたりの価格で決まるため、
金余り状態のベンチャーキャピタルが高値で投資すると
そのまま高い時価総額が設定されてしまうわけです。

このように機関投資家の「金余り現象」のために、
実態以上に時価総額が上がり上場しますが、
いざ上場すると今度は一般投資家が相手になります。

一般投資家から見れば、収益が出ていないなど
価値を感じない場合が多く、
一気に株価が下落するというのが典型的なパターンです。

日本でもNTTの上場時に言われたことですが、
一般投資家が上場直後の株を買うと損をすると言われる
所以です。

今は、世界的にこういう現象が多発しています。

上場後の時価総額の伸びを見ると、
1990年上場のシスコシステムズ、
1997年のアマゾン、2002年のネットフリックスまでは、
上場前に比べて上場後の伸びが大きくなっています。

しかし、2004年アルファベットの上場以降は、
未公開市場での企業価値の伸びが大きく、
上場後は伸び悩むパターンになっています。

これは株式市場の存在意義を問われる
由々しき問題だと思います。

現状としては、株式市場は、
巨大なファンドが素人の一般投資家に売り逃げするために
使われているに過ぎないと言われても仕方ありません。

上場前に大きく期待されながら苦戦している
ユニコーン企業の代表例が、米ウーバーテクノロジーズです。

そんなウーバーテクノロジーズは先月26日、
「サブスクリプション(継続課金)」型のサービスを
本格的に始めると発表しました。

月24.99ドル(約2700円)を支払うと、
ライドシェアを使うたびに割引が受けられたり、
ウーバーイーツの配達手数料が無料になったりするとのことで、
まずサンフランシスコなど米国内の10都市で始める
見込みです。

この施策は、競合であるリフトも
すでに実施していることです。

結局、現時点で言えば配車アプリで
収益を上げることができず、
ウーバーイーツ、そしてサブスクリプションモデルで
現状を打開したいということでしょう。

サブスクリプションモデルで定額支払いをしてくれた人には、
割引サービスの提供、ウーバーイーツの配達料の無料化などを
考えているそうで、実現すれば一定の評価は得られると思います。

しかし、問題はトータルで黒字にできるかどうかでしょう。

黒字の目処が立たなければ、
また新しい企業が収益の見通しもないまま
終わっていくことになるかもしれません。

時価総額が数兆円を超えるともてはやされても、
実際には収益化しないという
お粗末な話の1つになる可能性もあるでしょう。

これは、GAFAが乗り越えてきた道でもあります。

苦戦が続くウィーカンパニー、ウーバーテクノロジーズなどが、
この壁を乗り越えることが出来るのかどうか
注目したいと思います。



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※この記事は10月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はベンチャー投資について大前が解説しました。

大前は
「機関投資家の『金余り現象』によって、
ベンチャー企業が過剰評価されやすくなっている」
と述べています。

ベンチャー企業の企業価値とは何か?
その価値を見極めるためには、どのような情報が必要なのか?

正しい価値を見極めるためには、
日頃から情報収集に力をいれる必要があります。

2019年10月04日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

米ウクライナ関係/2020年米大統領選/米トランプ大統領
〜米大統領選の先行き

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米ウクライナ関係 トランプ氏がゼレンスキー氏に圧力
2020年米大統領選 「ウォーレン大統領」実現に警戒
米トランプ大統領 会計事務所とバンス検事を提訴

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▼トランプ大統領とバイデン氏、ダブルノックアウトの様相
─────────────────────────
複数の米メディアは先月20日、トランプ米大統領が
野党・民主党のバイデン前副大統領の息子に関する
調査に協力するようウクライナのゼレンスキー大統領に
繰り返し求めていたと報じました。

バイデン氏はオバマ前政権の副大統領だった2016年、
ウクライナの民間ガス会社を捜査していた
同国の検事総長を解任させようとしました。

このガス会社の役員にはバイデン氏の息子が名を連ねており、
トランプ氏はバイデン氏が何らかの理由で
息子をかばう目的があったと見ているとのことです。

トランプ大統領弾劾に向けて、
民主党はこの1点に絞っていく模様です。

モラー検事が担当したロシア疑惑に比べて、
トランプ大統領とゼレンスキー大統領との対話記録など
明確な証拠が出ているのが特徴です。

その上、一度ホワイトハウスの命令で消去、
隠蔽しようとしたことまで密告者によって明らかにされ、
トランプ大統領とゼレンスキー大統領の
オリジナル会話データも提出されているようです。

それによると、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対して
軍事援助をネタに、6回にわたって
「バイデン氏の息子の疑惑を調べろ」と命じていたそうです。

そして、トランプ大統領の顧問弁護士の
元ニューヨーク市長ジュリアーニ氏と
米国務省ウクライナ問題特別代表のカート・ヴォルカ氏が、
具体的に指示を出したことも明らかになっています。

自らの政敵を蹴落とすために、国費を使い
外国の大統領に条件を突きつけているわけですから、
これは非常に大きな問題です。

来年の大統領選挙に向けて、
選挙民のトランプ大統領に対する心証が
著しく悪化する可能性は高いでしょう。

しかし、同時に民主党の筆頭候補であるバイデン氏も
外国の政府に圧力をかけていたとされていて、
トランプ大統領とバイデン氏がダブルノックアウトになる状況も
現実味を帯びてきています。



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▼根強いトランプ氏の支持層がどのような動きを見せるのか?
─────────────────────────
そうなると、民主党の有力候補になるのが
エリザベス・ウォーレン氏です。

ウォーレン氏は名うての富裕層嫌いで知られていて、
大統領になったら「増税」「GAFA分割」を実施するのではないかと
見られています。

ビジネス業界からみると、最悪の人物が
民主党から立候補してくる可能性が高まっています。

そして、早くも株式市場は反応を示し、
ウォーレン相場と称される乱高下の動きを見せています。

このウクライナ問題を巡って、トランプ大統領が
弾劾されるのではないかという意見もありますが、
現実的には可能性は低いと私は思います。

これまでにも、アンドリュー・ジョンソン氏、
ビル・クリントン氏、リチャード・ニクソン氏など、
弾劾されそうになった大統領はいました。

しかし、最終的には誰も弾劾を受けていません。

大統領弾劾には、上院の2/3の賛同を得る必要があり、
現実的にクリアするのは至難の業です。

今回も、共和党内で激しい分裂が起こらない限り
不可能でしょう。

弾劾を受けないにしても、これだけの問題が
明らかになっているので、トランプ大統領の支持者たちが
変わらず熱狂的に支持してくれるのかはわからないと思います。

また、もしかすると支持層から大きな反発を
受ける可能性があるのは、ウクライナ問題よりも
トランプ大統領の納税申告に関する問題かもしれません。

トランプ大統領は先月20日までに、
トランプ氏や一族の会計処理を担うマザーと
ニューヨーク地検のサイラス・バンス検事に対して、
会計記録や納税申告書を検察に提出しないよう求める
訴訟を起こしています。

ポルノ女優らへの口止め料支払いをめぐる捜査の一環として、
バンス検事がマザーに対し納税申告書の提出を命じていたもので、
バンス氏の行動にはトランプ氏の再選に打撃を与える
政治的な動機があるとともに、現職大統領に対する捜査の試みは
違憲と主張しているというものです。

これまでの大統領で納税申告書の開示を求められて
拒否した人物など、一人もいません。

このような対応を見ると、やはりトランプ大統領は
脱税もどきのことをやっていたのではないか?と怪しまれるのも
当然でしょう。

トランプ大統領の支持母体である「プアーホワイト」層の中には、
脱税していたとなると快く思わない人も出てくるでしょう。

その結果、反トランプになるのかどうかわかりませんが、
注目したいところです。



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※この記事は9月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は2020年米大統領選のニュースを大前が解説しました。

エリザベス・ウォーレン氏が大統領になる可能性に伴い、
株式市場は乱高下の動きを見せています。

一つの出来事がきっかけとなり、
次々に影響を及ぼしていくことがあります。

その影響を先読みすることができれば、
ビジネスを優位に進めることができます。

2019年09月27日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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サウジアラビア情勢〜ドローンが変える世界の軍事バランス

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サウジアラビア情勢 サウジアラムコ施設をドローン攻撃

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▼ドローン攻撃によって、世界の軍事バランスが大きく変わる
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サウジアラビア東部で14日、
国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が
無人機の攻撃を受け、出火したことが明らかになりました。

イエメンの反政府武装組織ホーシー派が
犯行声明を出しましたが、サウジアラビア国防省は18日、
攻撃に使用されたとする無人機や巡航ミサイルの破片を公開。

ホーシー派の犯行可能性を否定するとともに、
イランが関与したことの証拠だと主張しました。

今回使用されたドローンは、
航続距離1200kmとも言われています。

しかも、価格はわずか150万円程度で
製作可能というのですから、驚きです。

このドローンの活用は、世界の軍事バランスを
大きく変える可能性があると私は思います。

それほどに今回のニュースは重大な事件です。

例えば、日本は北朝鮮のミサイル攻撃対策として、
米国の陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)を、
萩と秋田に設置する方針を検討しています。

しかし、今回のドローンを使われたら、
イージス・アショアを無力化することが可能でしょう。

ドローンは低空で飛行するため、レーダーに引っかからず、
さらにステルス化することもできます。

イージス・アショアでミサイルを検知することはできても、
ドローンを検知して対抗することは難しいでしょう。

今回攻撃を受けたサウジアラムコの石油施設の様子を見ると、
攻撃力も十分にあるとわかります。

しかもドローンは、最後の瞬間に目視で操作できるため
攻撃の的中率が高くなります。

今回のサウジアラムコの石油施設への攻撃でも、
ミサイルの的中率は80%ほどでしたが、
ドローンからの攻撃は100%命中しています。

米国は日本に北朝鮮の驚異を煽って、
イージス・アショアを売りつけようと試みていますが、
それを根底からひっくり返す事態です。

価格も安く、若干知識があれば
組み立ててプログラムできてしまうのですから、
恐ろしい限りです。

現在、世界中で防衛策の基本となっているのは
ミサイル防衛システムです。

ドローンにはミサイルほどの圧倒的な破壊力は
期待できませんが、それでも今回のように、
軍事的に重要な拠点・施設をピンポイントで狙うには十分です。

今後は、世界中の国が軍事的に大きな変更を
余儀なくされることになると思います。

高額なミサイルの開発は不要になり、
ドローンを中心とした攻撃・防衛に
切り替わっていく可能性が高いでしょう。



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▼戦争も辞さない強気のイラン、話し合い決着を望む日和気味のトランプ大統領
─────────────────────────
今回のサウジアラビアの石油施設の破壊を受けても、
世界的に原油価格はあまり上がっていません。

サウジアラビアだけでなく、
ロシアや米国も多くの原油を産出できる時代だからでしょう。

実際、米国のトランプ大統領は備蓄している原油を出してきて、
この機会に一儲けしようという動きを見せています。

今回のドローン攻撃について、
ホーシー派はイエメン方面から飛行してきたと述べていますが、
サウジアラビアはイラン側から飛来してきたと主張し、
真っ向から否定しています。

シーア派の盟主・イラン、
スンニ派の盟主・サウジアラビアとしての対立そのものです。

イラクはフセイン大統領の頃には、
同大統領がスンニ派であったこともあり、
イランと戦争をする立場でしたが、
今では人口比率で多数派であるシーア派が名実ともに
マジョリティになりイランに取り込まれている状態です。

その他、シリアやイエメンについて見ると、
アサド元大統領はアラウィー派ですが、
現在のシリアのマジョリティはスンニ派。

イエメンはサウジアラビアの侵攻に対して、
イランのバックアップを得たホーシー派が対抗している状況です。

イランの遠隔操作にも関わらず、想像以上にホーシー派が
善戦しているため、実はサウジアラビアは
軍事的に弱いのではないか?と言われています。

そんな中東情勢において、今回の事件が発生しました。

イランは否定していますが、
イランが裏で糸を引いていると思っている人が多いでしょう。

イランは、もし戦争になるならそれも辞さず、という
強い姿勢を見せています。

意外にも、そんなイランの態度に及び腰になっているのが
米国トランプ大統領です。

今のタイミングで開戦してしまったら、
トランプ大統領の選挙期間中も
戦争が続くことになるのは間違いありません。

それは避けたいので、
何とか話し合いで決着するように促しています。

仮にイランに制裁を加えるとなっても、
トランプ大統領にできることは
「イランへの送金をできなくする」
「イランへの輸出を制限する」などの
間接的なことだけです。

そのため、いつもあれだけ強気なトランプ大統領が、
珍しく日和った態度を示しています。



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※この記事は9月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週はサウジアラビア情勢について大前が解説しました。

的中率が高く、価格も安いドローンによる攻撃は
世界の軍事バランスを大きく変える可能性があります。

ビジネスの場面でも、技術の発展によって
世の中の流れががらっと変わってしまうことがあります。

タイミングを見極めたうえで
有効な一手を素早く打てるかどうかが、
そのビジネスの今後を左右します。

2019年09月20日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米トランプ大統領/米大型ハリケーン〜トランプ大統領の支持率低下は当然

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米トランプ大統領 ボルトン大統領補佐官を解任
米大型ハリケーン ロス商務長官が進路予報の打消しを要請
米トランプ大統領 支持率38%で前回比6pt低下

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▼補佐官を糾弾する前に、自らのリーダーシップを発揮しろ
─────────────────────────
米トランプ大統領は10日、ツイッターで
「ボルトン大統領補佐官を解任した」と発表しました。

理由について、
「彼の提案の多くに私は強く反対してきた。
他の政権メンバーも同意しなかった」と説明。

ボルトン氏はこれまで北朝鮮やイランに対して
強硬姿勢をとっており、これらの政策への影響は必至です。

トランプ大統領は全てボルトン氏の過失だったという論調ですが、
私には全く理解ができません。

そもそも、大統領ならば
補佐官と意見が違えば議論して説得すれば良いはずです。

自分の意見を述べ、
まともに議論をして説得することすらできないのなら、
大統領として必要なリーダーシップの欠片もありません。

ボルトン氏の北朝鮮やロシア、
アフガニスタンへの対応を非難していますが、
元々ボルトン氏はそういう思想の持ち主ですから、
そんなことは容易に予想できます。

これは、中国に関するピーター・ナヴァロ氏に対しても
全く同様です。

そういう人たちとわかった上で役職につけておいて、
自分は何もせずに「彼らがミスをした」と糾弾するのは
おかしな話です。

就任から2年半で国家安全保障問題担当大統領補佐官が
3人も政権を去ることになります。

この異常性を見ても、
トランプ大統領に問題があると私は思います。



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▼トランプ大統領の支持率低下は当然
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トランプ米大統領が大型ハリケーン「ドリアン」の
誤った進路予想をツイートした問題で、
ロス商務長官が商務省の米海洋大気局(NOAA)に、
トランプ氏の発言と矛盾する予報を打ち消すよう
迫っていたことが判明しました。

また、ロス氏は担当者の解雇まで示唆していたとのことで、
民主党議員からは脅しが事実なら
ロス氏は辞任すべきとの声も上がっています。

もしロス氏が解雇まで示唆していたのなら、
私もロス氏は辞任すべきだと思います。

ロス氏と言えば「物言う株主」として一財を成した人物です。

今回の件など、ロス氏自身の仕事では
決してやらないようなことでしょう。

なぜ、そんな人物がトランプ大統領の下に就いた途端、
こんなみっともないことをやってしまったのか?

私には不思議で仕方ありません。

大型ハリケーン「ドリアン」の進路について、
トランプ大統領が気象当局と異なる予想をしたことから始まり、
このような大袈裟な事態に発展しています。

もはや「これが大統領のやることなのか?」と
言いたくなるレベルの話です。

米国では、主に民主党支持者で
反トランプ大統領の人たちが集まるサイトが
盛り上がっています。

トランプ大統領の顔写真などに、
シャーピー(マジックマーカー)で落書きをして、
トランプ大統領やその政策を揶揄するサイトです。

そのような流れもあり、
トランプ大統領の支持率も低下しています。

米紙ワシントン・ポストは10日、
トランプ大統領の支持率が38%で、
前回調査から6ポイント低下したとする
世論調査結果を発表しています。

中国との貿易戦争の結果も芳しくなく、
米国内の物価は高くなるのは確実ですから、
国民の警戒心も強くなっていると思います。

自分では何も理解していないのに、議会すら通さず、
勝手にツイッターで指示・命令を出す、という
強引すぎる物事の進め方にさすがに国民も
嫌気がさしてきたのでしょう。

全てのことを「ディール」として片付けようとする姿勢も、
大統領として相応しいものではありません。

本来、米国の大統領選挙は長期間に渡るため、
トランプ大統領ほど資質に問題がある人は
選ばれることはありません。

しかし、トランプ大統領は横車を押して、
ネットで情報操作を行い、
選挙戦を乗り切ってしまいました。

今では、そんな裏の事実も明らかになってきていて、
ここに来て、信用がガタ落ちして
急速に支持率が落ち込む結果となっています。

民主党側に魅力的な候補者がいないため、
トランプ大統領が再選される可能性もあると
言われていますが、私はそうはならないと見ています。

これだけ自分自身の意見も安定していない状態ですから、
さすがに息切れするのではないかと思います。

中国などはトランプ大統領が信用できないのは
しょうがないと諦めています。

次の大統領を待つしかないという態度です。



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※この記事は9月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はトランプ政権のニュースを大前が解説しました。

国家安全保障問題担当大統領補佐官の解任や
ハリケーンの誤った進路予想など、
トランプ大統領の迷走が続いています。

トランプ大統領の支持率はここに来て急速に落ち込んでおり、
大前は
「再選は難しいのではないか」
と述べています。

「何が何でも自分は悪くない」という姿勢は、
いくら情報を操作しても
周りの人々に伝わってしまうものです。

2019年09月13日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米中貿易/香港情勢/人民元相場
〜香港市民のアイデンティティは中国人ではなく香港人

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米中貿易 対中関税第4弾の正当性主張
香港情勢 「逃亡犯条例」改正案を正式撤回
人民元相場 中国、資金流出を警戒

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▼トランプ大統領は経済を引っ掻き回しているだけ
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米トランプ大統領は1日、
中国製品への制裁関税「第4弾」について、
「中国は自国通貨を切り下げているので、
実際は米国の関税を中国が払っている」と主張。

また「中国に対する高関税からの収入で
巨額のお金を手に入れている。
一部を農家に補助金として支給している」とし、
関税政策の正当性を主張しました。

関税を引き上げたことで
米国政府だけが丸儲けしている状態です。

トランプ大統領は「農家に補助金を」などと発言していますが、
選挙対策・アピールにすぎないでしょう。

トランプ大統領が行った関税政策は
ほとんど効き目を失ってきていて、
単に経済を引っ掻き回しているだけです。

それどころか、経済を理解していないトランプ大統領が、
五月雨に政策を実施し、経済に対して悪影響を与える
結果になっています。

さすがに、金融市場も「トランプ・リスク」を
明確に認識するようになってきていると感じます。

これから、米国では製造業も農業も、
さらに大変な状況を迎えることになると思います。



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▼香港市民のアイデンティティは中国人ではなく、香港人
─────────────────────────
香港の林鄭月娥行政長官は4日、
「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回したと発表しました。

また林鄭氏は政府と市民の対話の枠組みや
社会問題を討議する専門家の委員会を作ることも表明しましたが、
デモ隊側は他にも「暴動認定の撤回」や「デモ参加者の釈放」など
5項目の要求を掲げており、収束は見通せない現状です。

これに先立って、林鄭氏とビジネスパーソンの
私的会合の録音データが出回りました。

その中で林鄭氏は、自分だけの意見ならすぐに辞任して
香港の人に謝罪する気持ちがあるが、
「香港と中国」の2つに仕える身として
自分には自由度がない、と語っています。

今回の林鄭氏の「逃亡犯条例」改正案撤回の背景には、
こうした事態を受けて中国政府が撤回許可を出した結果でしょう。

実際、欧州にいた中国の李克強首相も
それに類する発言をしています。

事態が膠着したままだと、
米国のトランプ大統領が貿易問題に絡めて
中国への交渉材料とする可能性があるので、
中国としてはそれを避けたいという思いもあるはずです。

すぐに「逃亡犯条例」改正案を撤回していればよかったのですが、
タイミングとしては遅かったと思います。

すでに1000人以上の人がデモ隊と衝突して
逮捕される事態も発生してしまい、林鄭氏の辞任を含め、
さらに4つの要求を突きつけられる結果になっているからです。

香港市民へのアイデンティティ認識調査の結果を見ると、
「私は香港人」という認識を持つ人が増加しています。

つまり、香港と中国は違うと考えている人たちです。

現在、一国二制度の下、香港は1997年から50年間は
資本主義の継続が認められていますが、
それ以降は中国1国に統一される予定です。

1997年からすでに22年経過し、あと28年。

今、20代の香港の若者は
40代で社会主義の中国に統一される状況を迎えます。

香港の若者がお金のあるうちに
国外に脱出しようと考えるのは、自然なことでしょう。

そんな人たちを台湾が受け入れる姿勢を見せていますが、
台湾も「ネクスト香港」になると考えている人も多いですし、
実際どうなるかはわかりません。

そういう意味では、国外脱出先としては
カナダやオーストラリアのほうが無難でしょう。

もしかすると、近いうちに
香港から大量に若者が出ていくかもしれません。

そうなれば、デモ隊は下火になりますが、
より本質的な問題が残されることになります。

そのような状況で、中国自体は元安によって、
資金が海外へ流出する恐れが出てきています。

日経新聞は先月30日、
「中国、資金流出を警戒」と題する記事を掲載しました。

中国政府は海外送金や外貨売却が多い銀行の
評価を引き下げる新たな規制を導入しました。

米中貿易戦争が長期化するなか、
人民元相場では8月に1ドル=7元を突破し
11年ぶりとなる安値となったことを受けたものです。

現段階で、当局はこの水準を容認しているものの、
元安に歯止めがかからない状況は回避したい考えです。

安くなる前に人民元を外貨に替える人が続出するでしょう。

外貨で保有していれば、外国で運用することもできますし、
将来海外に高飛びするときの資金としても活用できます。



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※この記事は9月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は、香港情勢について大前が解説しました。

大前は
「近いうちに香港から大量に若者が出ていくかもしれない」
と述べています。

現在起きていることを考察することで、
次に何が起きるのか、ある程度合理的に
予測することができます。

未来は全く分からないという態度ではなく、
将来はこうなるのではないかと複数の選択肢をつくり
中長期的な視点をもって最善の一手を見極めることが大切です。

2019年09月06日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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原子力政策/原発事業〜原子炉開発は9電力とメーカーがすべて一緒にやるべき

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原子力政策 2019年の再稼働はゼロ
原発事業 原発共同事業化で提携へ

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▼高速増殖炉の開発が中止になると、日本がプルトニウムを抱える理由がなくなる
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日経新聞が報じたところによると、
2019年の国内原発再稼働数はゼロになる見通しが
明らかになったとのことです。

再稼働の審査に合格しても、地元の同意を得るための調整や
テロ対策などの工事に時間がかかっているもので、
温暖化対策やエネルギー戦略にも影響を及ぼしかねない状況です。

新たに再稼働できる見通しがたたないというだけでなく、
原子力規制委員会のテロ対策への対応などで、
すでに稼働済みの4基が停止するということですから、
非常に影響は大きいと思います。

かつて、日本の総発電量の約30%が原子力発電でしたが、
今では10%を割り込み、
来年はさらに半減する見通しになっています。

このような状況で日本にとって追い打ちをかけているのが、
フランスが日本と共同研究を進めていた高速炉実証炉
「アストリッド(ASTRID)」の開発中止を発表したことです。

高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まり、
国内で高速増殖炉を稼働させることはできない日本にとって、
フランスとの共同プロジェクトは重要な意味を持っていました。

高速増殖炉のプロジェクトに関わっているという理由があれば、
日本は国内にプルトニウムを保有・保存する
大義名分が成り立ちます。

これは日本にとってメリットが大きく、
経産省の狙いもここにあったと私は見ています。

フランスがプロジェクトを中止した今、
日本がプルトニウムを抱える理由がないため、
大量のプルトニウムを保有していれば、
何かしらの疑念を抱かせることになってしまうでしょう。

これは、日本にとっては非常に厳しい状況です。

高速増殖炉のプロジェクトを中止とするという、
今回のフランスの原子力・代替エネルギー庁の発表は
的を射たものでした。

それは、今世界的にはプルトニウムが余っているのだから、
その技術は温存するにしても、今すぐに資金を投じて
無理にプロジェクトを進める必要はない、というものです。

使用した燃料以上の燃料を生み出すことができる
夢の原子炉と言われる高速増殖炉とは言え、これは正論です。

日本がこの意見をひっくり返すことは難しいと思います。

原子炉が停止していくと、
まず二酸化炭素排出量への影響が懸念されます。

近年、二酸化炭素排出量は大きく伸びることなく横ばい状態ですが、
この先はどうなるのか注意したいところです。

また、原子炉以外の発電になると、
鉱物性燃料すなわち化石燃料を輸入する必要が出てきます。

これは輸入の増加と貿易不均衡を招きますが、
もはやこの道を避けることはできないでしょう。



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▼原子炉開発には、9電力とメーカーがすべて一緒にやるべき
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東京電力ホールディングス、中部電力、
日立製作所、東芝は先月28日、
原子力発電事業の共同事業化に向けた基本合意書を
結んだと発表しました。

「原発の建設や運営、保守、廃炉を
効率的に実施する体制の構築」を目指す方針で、
共同出資会社の設立も検討するとのことです。

私は東日本大震災が発生した当時から、
今後日本で原子炉の開発を進めていくなら、
日本にある9つの電力会社がすべて一緒にやるべきだと
主張してきました。

そして電力会社だけでなく、
日立、東芝、三菱などのメーカーも共同で取り組むべきだと。

特に、輸出産業として維持したいのであれば、
このくらいの体制を整えられなければ無理だと思います。

正直言って、東京電力、中部電力、
日立、東芝が手を組むくらいでは、効果は薄いでしょう。

福島第一原発事故において
東京電力の対応は世界中から非難を浴びました。

しかし、東京電力のエンジニアスキル、
オペレーションレベルは日本では随一であり、
東京電力だったからあの事故は何とか収束したとも言えます。

もし、他の電力会社だったら
もっとひどいことになっていたと私は思います。

電力会社もメーカーもすべて一緒にやるべきです。

今はどのメーカーも沸騰水型炉(BWR)と
加圧水型炉(PWR)のいずれも開発していますし、
メーカーが一緒にやるメリットは大きいと思います。

また、今の原子炉は輸出した場合、
オペレーションも同時に依頼されますから、
メーカーだけでなく電力会社も一緒にやるメリットも
大きいはずです。

フランスは政府主導で
1つの原子力開発体制を確立しましたが、
それでもまだ頼りないと感じるところがあります。

今から振り返ってみると、
日本では9電力それぞれに任せていたというのは、
とんでもないことだと感じます。



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※この記事は9月1日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週は原発事業のニュースを大前が解説しました。

大前は
「今後日本で原子炉の開発を進めていくなら、
日本にある9つの電力会社とメーカーがすべて一緒にやるべき」
と述べています。

問題を解決する際には、
最終目標をしっかり見据えたうえで
誰が主体となって取り組むのか
「主語」を意識することが大切です。

大きな問題に取り組む時こそ、
意識する必要があります。

2019年08月30日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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カジノ構想〜横浜にカジノを誘致するならノースピアを活用すべき

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カジノ構想 統合型リゾート(IR)を誘致方針

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▼大阪よりも横浜のほうがカジノ誘致に向いている
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横浜市の林文子市長は22日午後、
カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を正式に表明しました。

敷地面積47ヘクタールの山下ふ頭に整備し、
2020年代後半の開業を目指します。

林市長は「将来に渡り成長発展を続けていくためには、
IRを実現する必要がある」との結論に達したと
説明しました。

横浜港運協会会長・藤木氏は、
「賭博場にはしない」「ギャンブル依存症になったら大変」などと
山下ふ頭へのカジノ誘致に反対しています。

以前、林市長も藤木氏の勢いに押されて、
カジノ誘致については「未定」としていましたが、
横浜の将来を考えて必要だと考えを変えたのでしょう。

横浜にカジノが誕生する可能性を聞いて、
メルコリゾーツや米ラスベガス・サンズなども
興味を示しているとのことです。

メルコリゾーツの会長兼最高経営責任者であるローレンス・ホーは
マカオのカジノ王と言われるスタンレー・ホーの息子です。

彼らは近い将来
マカオのカジノライセンスを失う可能性もあるので、
カジノを移せる地域を探しているとのことです。

そうであれば、
日本の横浜は申し分ない地域だと思います。

トランプ大統領の後ろ盾であるアデルソン氏が経営する
ラスベガス・サンズ。

当初、大阪に進出する予定でしたが、
東京もしくは横浜に考えを改めたのでしょう。

大阪では夢洲という
非常に交通の便が悪いところにカジノを誘致予定でしたが、
横浜の山下ふ頭なら羽田からの利便性も高いですし、
大阪よりも魅力を感じるのは当然でしょう。

大阪は夢洲に万博もIRも持ってくると騒いでいましたが、
どうやら実現しそうにありません。

埋立地で余っている土地を使おうというのが、
そもそも考えとして甘いと思います。

大阪は2030年には人口1000万人を割り込み、
いわゆるメガシティから陥落する可能性があります。

府と市が一体となって取り組むぐらいでは意味がなく、
関西全体として一体になる必要があると私は思います。

例えば、関空からの利便性などを考えて
和歌山と協力して関西全体を盛り上げる施策を考えるなど、
できることはたくさんあります。



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▼横浜にカジノを誘致するなら、ノースピアを活用する
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横浜港運協会会長の藤木氏は
山下ふ頭にカジノを誘致することに渋っているようですが、
私が20年前に提案したように瑞穂ふ頭を使えば
この問題は解決できます。

瑞穂ふ頭はノースピアと呼ばれ、
いまだに米軍が占領している地域です。

かつて米軍は、海軍を横須賀、空軍を横田、
陸軍を三ツ沢(岸根基地)に置いていました。

この岸根基地からまっすぐ来ると
ノースピアに辿り着きます。

米陸軍は撤退したため、
今ノースピアは使われていません。

ここを活用すれば良いのです。

私が20年以上前に横浜の商工会議所に提案したのは、
ノースピアにカジノを作り、かつ
その際にパスポートを必須にするという方法です。

米軍が自ら占領している形を継続し、
パスポートで入場させます。

こうすると、入場する人の管理もできますし、
外国から来た人はそのまま入場することができます。

マリーナベイ・サンズも総工費は5,000億円ですが、
カジノの部分は200億円程度の規模ですから、
それほど大きくありません。

ノースピアでも十分に対応できるはずです。

藤木氏は山下ふ頭には国際展示場のようなものを作りたいと
思っているようですが、それは無謀だと私は思います。

国際展示場は、世界中に溢れているからです。

日本でも幕張、ビッグサイトにありますし、
ドイツでもミュンヘン、フランクフルト、
ハノーバーなど多くの地域にあります。

世界的に見て、
もはや国際展示場に行く時代ではありません。

もう少し現状を調べて出直してほしいと思います。

瑞穂ふ頭・ノースピアを使うというのは
奇抜なアイディアに思えるかもしれませんが、
構想力を発揮して考えれば、
実はオーソドックスな方法だとわかります。

藤木氏が心配しているギャンブル依存症や
人間の管理も全てパスポートで対応することができますし、
理にかなっているはずです。

こうした施設や都市計画を考える際には、
ぜひ構想力を持って新しいものを考えてほしいと思います。

どこか外国の施設をそのまま真似するようなものではなく、
もう一歩踏み込んだユニークな発想が重要です。

例えば、カナダのウィスラーは非常に良い例です。

ウィスラーの街を構想した人は
ノルウェーから来た方でしたが、
決してノルウェーを真似したわけではありません。

ウィスラーは素晴らしいスキー場になる山を持つ一方、
ゴミが溢れていました。

そこで、単にゴミを埋めてしまうのではなく、
表面を覆って建物を建て、
その下を駐車場にするという方法を取りました。

街の下全体に駐車場が広がっているのです。

もちろん駐車場は雪に埋もれないので、
出入りが楽になります。

これは非常に素晴らしいアイディアだと思います。

そして、冬などは夕方4時以降になると、
みんなが街の下に降りてきます。

そこには、ホテルもディスコも映画館も食堂もあって
賑わっています。

世界には例がないようなユニークな街になっています。

寒い山の上のみにホテルがあって
誰も下には降りてこない日本のスキー場とは対照的です。

かつて私が提案した横浜構想も、
誰の真似をしたものでもありません。

横浜へのカジノ誘致についても、
ぜひユニークな発想力を持って考えてもらいたいと思います。



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※この記事は8月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はカジノ構想のニュースを大前が解説しました。

IRについては、様々な利害関係が絡んでおり、
意見の対立も起きています。

こういった問題を解決するには、視点を変えて、
これらの問題を一網打尽にできる打ち手はないか、
考えてみることも大切です。

複雑な問題だからこそ、
考える力を発揮することができます。

2019年08月23日(金) 

■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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米ウォルマート/米ゼネラル・エレクトリック/
韓国サムスン電子/世界石油大手〜小売業界の巨大な戦い

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米ウォルマート 最終利益3800億円
米ゼネラル・エレクトリック GEの不正会計を指摘
韓国サムスン電子 ベルギーから半導体材料調達
世界石油大手 サウジアラムコの出資受け入れで合意

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▼ウォルマートVSアマゾンという巨大な戦いの分かれ目
─────────────────────────
米国のウォルマートが発表した2019年5月〜7月期決算は、
最終損益が36億1000万ドル(約3800億円)となりました。

生鮮食品や飲料の販売が好調だったほか、
成長分野のインターネット通販部門の売上高が
約37%増加したことなどが寄与したとのことです。

これはウォルマートにとって
久しぶりに良いニュースだと思います。

最近の業績推移をみると、
四半期ごとの売上純利益も落ち込んでいましたが、
ここに来て盛り返してきています。

特に、今回は通販部門の売上が好調だったという点が
重要だと思います。

量よりも質を重視していくというウォルマートの戦略が、
結果的に量にも反映されることを証明した形に
なったからです。

アマゾンのようにディスカウントで量を取りに行くのではなく、
自分たちの売りたい値段で質を追求しながらも
量を確保していくという戦略が功を奏しました。

ウォルマートとしては
久しぶりに手応えを感じているのではないかと思います。

長期的に株価を見ても、
アマゾンの株価が急騰してきたのに対し、
ウォルマートの株価は堅調に上げてきています。

これまでも継続していたアマゾン対策が
ようやく実を結んだ結果と言えます。

株式市場では、ウォルマートが
アマゾンの犠牲者になるというのが近年の定番でしたが、
今回の結果を受けてやはりウォルマートのように
自主店舗を持っているところが強いという風潮も
出てきています。

すなわち、現在の状況はウォルマートによって
アマゾンに歯止めがかかったという形です。

今まさにアマゾンとウォルマートによる
巨大な戦いにおける勝負の分かれ目が
訪れているのかもしれません。

そのように感じさせられる決算だったと私は思います。



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▼不正会計疑惑に、GEはどう答えるのか?
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米国の著名会計専門家ハリー・マルコポロス氏が15日、
ゼネラル・エレクトリックが巨額の損失を隠すため
不正会計を行っているとする報告書を公表しました。

報告書は175ページにのぼり、
ヘッジファンドと協力して7ヶ月かけて調査したということで、
不正額は発見できただけでも380億ドルに上るとのことです。

当然のことながら、
GE側は「解釈の違い」と否定しています。

詳細な分析結果として発表されている不正額は、
約4兆円ということですから、
これはかなり深刻な問題です。

これを受けてGEの株価は大きく下落しています。

数年前まで約30ドルだった株価は、
今では10ドルを下回る水準に落ち込んでいます。

レポート作成に協力したのがヘッジファンドですから、
株価の下落を受けて売り浴びせて儲けようという
目論見もあると思います。

しかし、これだけ詳細なレポートを提出されると、
ヘッジファンドの思惑はともかくとして、
今はGEが4兆円の不正額を掃き出して、
不正を白状するのかどうか注目されています。



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▼サムスンには、日本が輸出規制の抜け穴を提示
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韓国のサムスン電子が
日本からの輸出管理が厳格化されたフォトレジスト(感光剤)を
ベルギーから調達していることがわかりました。

調達先は2016年に日本の化学大手JSRと
ベルギーの研究センターIMECが設立した合弁会社とみられ、
半年から10ヶ月分を購入し、最先端の半導体チップ製造工程で
使用しているとのことです。

韓国に直接半導体を輸出するのを厳しく取り締まる一方で、
サムスンのように関係性を維持したいと思うところには、
日本が抜け道を作ってあげているという事でしょう。

サムスンはベルギーの会社から半導体を購入したそうですが、
航空機で送ってもらえばあっという間ですから、
日本の輸出規制という制裁は実質的に意味がないことになります。



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▼サウジアラビアの戦略の方向性が明確になってきた
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インドの財閥大手リライアンス・インダストリーズは12日、
サウジアラビアの国営石油会社・サウジアラムコが
リライアンスの石油関連事業に20%出資することで
合意したと発表しました。

出資額は150億ドル(約1兆5750億円)に上り、
これによりリライアンスは原油を安定的に確保する一方、
サウジアラムコは高まるインドの需要を取り込む考えです。

インド最大の財閥であるリライアンスは
最近業績が大きく低迷していました。

インドにとってみると非常に助かる話で、
リライアンスにとっても渡りに船といったところでしょう。

このようなサウジアラビアの動きを見ていると、
「他国に深く関与していく」という国家戦略が
はっきり見えてきたと私は感じています。



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※この記事は8月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はウォルマートのニュースを大前が解説しました。

ウォルマートとアマゾンの戦いに変化が出ています。

世の中のデジタル化が進む中、
店舗も含めて、いかに顧客に価値を提供するのか、
改めて考えさせられます。

小売店舗をどう生かすのか?
顧客データをどう生かすのか?

小売業界にさらなる進化が求められています。

2019年08月16日(金) 
■ [1]〜大前研一ニュースの視点〜
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NTT/インバウンド消費/JR九州高速船〜NTTの次の戦略は「金融」しかない

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NTT 見えぬ携帯の次
インバウンド消費 訪日客は西へ、消費は東へ
JR九州高速船 福岡-韓国・釜山航路に新型高速船導入へ

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▼NTTの次の戦略は、明確に「一手」しかない
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日経新聞は先月29日、
「NTT、孝行息子の衰え 見えぬ携帯の次」と題する記事を
掲載しました。

2019年3月期の時価総額で、
NTTが3年ぶりにNTTドコモを上回ったと紹介。

政府主導で進められた携帯電話の値下げが響くものですが、
5Gなど次世代技術の競争が激化する中、
ドコモの稼ぐ力は弱まっており、昨年6月に就任した澤田純社長が
グループの再構築を図れるか手腕が試されるとしています。

NTTの業績を見ると、
売上は約10兆円、営業利益は約1兆円です。

悪くない数字ですが、伸びてはいません。

これまで移動通信が伸びてきましたが、
今後は難しい状況が目に見えています。

世界化にも挑戦しましたが、
結果としては実を結びませんでした。

澤田純社長は
「ゲーム・チェンジを仕掛ける」と述べていましたが、
その方向性は1つしか考えられません。

それは、NTTが銀行になることです。

世界を見渡せば、資産運用、決済業務に
乗り出している企業がたくさんあります。

世界中の金融市場を直接相手にできる環境が整っています。

通信の次の戦略が見えないなどと
日経新聞には書かれていましたが、
戦略は明確で、金融の道しかないと私は思います。

ところが、現状ではNTT法があるために
NTTは銀行業務を行うことができません。

私ならまずこの法律を改正することから始めます。

NTT法は、かつて市内通話、市外通話など分かれていて
長距離通話という概念があった時代のものです。

現在の状況に合わせて改正することは
何ら不自然ではないでしょう。

ソフトバンクは投資会社になって、
PayPayなど金融業に乗り出しているのですから、
NTTも同じような道を歩むことができるはずです。

古い時代の民営化、分割の呪縛から解放されるべきです。

しかもNTTの場合には、
数十年分の電話料金の支払いデータを保有しています。

中国のアント・フィナンシャルと同じように、
個人の信用情報をガッチリ握っているということですから、
非常に大きなアドバンテージです。

料金回収の代行もできるでしょうし、
NTT法を改正してNTTを解放すればできることは無限です。

澤田社長流に言えば、
こうした過去の呪縛から「解き放して」くれれば、
簡単に「ゲーム・チェンジ」ができると思います。

私なら、中国と同レベルの自由度、
最低でもソフトバンクと同レベルの自由度を求めて動きます。



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▼訪日客を受け入れる西日本
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日経新聞は4日、「訪日客は西へ、消費は東へ」と題する
記事を掲載しました。

これは訪日外国人の数の伸び率で
東日本、中日本の伸び率が20%台だったのに対し、
西日本が41%だったと紹介。

一方で都道府県別の消費額では、
東京都が53.4%のシェアだったとのこと。

空港別の出入国数に照らすと、関空から入国し、
東京で買い物した後に成田・羽田から出国するという流れが
見て取れるとのことです。

もう1つ西に訪日客が多いのは、
福岡などに大規模な船に乗って観光客が訪れるからです。

数千人規模の乗客を運べる船もあるので馬鹿にできません。

インバウンド経済にも影響を与えうる存在です。

その意味でJR九州が発表した新型高速船
「クリーンビートル」も注目したいところです。

JR九州高速船は来年4月、福岡と韓国・釜山を結ぶ航路に
新型高速船「クリーンビートル」を導入すると発表しました。

1日2往復のうち、1往復を大型船に乗り換えることで、
1日あたりの定員を増やす計画で、JR九州の青柳社長は
「この船に乗ってオリンピックを見に来て貰えれば嬉しい」と
語りました。

以前のビートルが
鯨のようなものにぶつかるという事故を起こしたことも影響し、
新型ビートルは大型になっています。

現在、日本と韓国との関係性が悪化していて、
渡航注意情報も出ているので、
そもそも韓国から日本に来てくれる観光客が減るかもしれません。

その意味では、発表のタイミングが悪かったと思います。



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※この記事は8月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



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▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
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今週はNTTのニュースを大前が解説しました。

大前は
「世界を見渡せば、金融の道に進んでいる通信企業はたくさんある」
と述べています。

今後の戦略を考える際には
同業種の世界の企業の戦略が参考になります。

例えば、アリババやテンセントという名前はよく聞きますが、
知らないことも多いように感じます。

「これまでにどんなサービスを出しているのか?」
「そのために、どんな投資をしてきているのか?」

このお盆休みに、彼らのここ5年くらいの動きを
研究してみるのは、いかがでしょうか。

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