2012年12月28日(金)
|
┏━■ 〜大前研一ニュースの視点〜 ┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ┗━┛『自民党安倍政権の政策動向〜直面する問題の原因を探る』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――
海外情報 海外メディアに頻出した「Japan Moves Right」 銀行出資規制 金融庁の5%ルール緩和案に賛否
------------------------------------------------------------- ▼ 安倍政権はそれほど右傾化した政策をとらないかもしれない -------------------------------------------------------------
YOMIURI ONLINEは19日、世界先読みバズワードとして 「日本の右傾化」を取り上げた記事を掲載しました。
今回の衆院選を報道した海外メディアに「右傾化」が頻出したと紹介。
米中は武力対立に発展することを警戒し、中国の脅威にさらされる 南シナ領域では歓迎する姿勢が見られたと分析しながら、 世界的に見れば今回の「右」は標準的な程度と結論づけています。
とは言え、このニュースは「読売新聞」ですから 「読売の立場からすれば標準的」な程度ということであり、 その点は注意して理解しておくべきでしょう。
安倍政権の右傾化については海外でも様々な報道がされていますが、 実際の政権運営においては、言われているほど右傾化した政策は とらないのではないかと私は思います。
かつて右翼で知られたニクソン大統領は、周囲の予想に反して 中国に接近し、米中国交の正常化を実現しました。
いわゆる、「第1のニクソン・ショック」です。
安倍総裁も似たような道を歩むのではないかと思います。 ロシアは森喜朗氏に、中国は高村氏に、そして新大統領と面識がある韓国、 米国は安倍総裁自身でしっかりとしたフォローが可能でしょう。
想像しているほど安倍政権は「右寄り」な政策にはならないのではないか、 と私は見ています。 ------------------------------------------------------------- ▼ 5%ルールの撤廃、モラトリアム法対応は自民党の重要課題 -------------------------------------------------------------
銀行の株式保有の上限を定めた「5%ルール」をめぐり、金融庁が 打ち出した規制緩和案が波紋を広げています。
一般の事業会社への出資上限を10〜15%に引き上げ、経営再建中の 会社には全額出資も可能にすることが柱になっています。
この問題は、民主党の置き土産の中で最も破壊力のあるもので、 自民党としては取り扱い要注意でしょう。
そもそもは、亀井氏が推し進めた中小企業金融円滑化法(モラトリアム法) が原因となっています。
約30万から40万社に総額約95兆円を「バラ撒いた」法律です。
この融資によって不景気を耐え抜き、数年後景気が回復して「優良企業」 になったときには返済してもらう、というロジックでしたが、 これは完全なペテンだと私は当時から指摘していました。
本来は1年間の時限立法でしたが、1年延長、2年延長と問題を先送りにし、 来年の3月いよいよ期限切れというタイミングです。
そこで「新たなペテン」として金融庁が考えだしたのが 今回の「5%ルールの撤廃」です。
このルールは、戦前日本の財閥による金融支配を瓦解させるために、 米国が指導したものです。
このルールによって銀行は、融資は行うけれども資本の支配は できなくなったのです。
つまり「5%ルール」が撤廃されると、融資を受けている会社が 「返済できない」場合、いわゆるDES(デット・エクイティ・スワップ) が行われます。
「貸出」が「資本」に変わるのです。
そしてその割合は5%をはるかに超えて70%〜80%、さらには100%に 達することも出てくるでしょう。
実際、資本金が3000万円しかない中小企業に5億円貸し出している 例もありますから、銀行の保有割合が100%になっても不思議はありません。
おそらくDESについては銀行側も難色を示すと思いますが、 では95兆円をどう処理するか?と言うと、ここに「解」はありません。
このままいけば、30万〜40万社のうちほとんどの中小企業が吹っ飛ぶこと になる可能性もあります。
これは民主党の最大の汚点であり、同時に自民党・新政権にとって 相当頭の痛い問題です。
来年の3月までに「5%ルールの撤廃」を行うのか否か、 自民党は早急に決断する必要があります。
このような事態を招いた亀井氏には大きな責任があります。
おそらく今頃は「もう担当ではないし、国民新党も離れているので、我関せず」 という態度でしょうが、釈明する義務があると私は思います。
このようなモラルハザードは二度と起こしてはいけないと思います。 これを教訓として、同じような事態が起こらないよう対策を講じるべきです。
自民党がこの問題をどう取り扱うか、非常に重要な問題です。
場合によっては、船出したばかりの安倍政権は「史上最大の倒産件数」を 記録することになるかも知れません。 ========================================================== この大前研一のメッセージは12月23日にBBT557chで放映された 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに 再構成しております。 ========================================================== ------------------------------------------------------------- ▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか。 -------------------------------------------------------------
民主党から政権を奪い返した自民党ですが、 早速厳しい選択を迫られます。 ここで私たちが気を付けなければならないのが、 現象だけを見て政党を評価してしまうことです。
自民党の決断によっては、致命的なダメージを受ける 企業が多く出てくるかもしれません。
しかし、そもそも自民党がなぜそのような難しい選択を しなければならないのか、問題の原因を作ったのは 誰なのかを考える必要があります。 | | |